■『特捜ロボ ジャンパーソン』感想まとめ3■


“君を追って ぼくたちも走る
特捜ロボ ジャンパーソン!”


 ブログ「ものかきの繰り言」の方に連載していた『特捜ロボ ジャンパーソン』 感想の、まとめ3(13〜17話)です。文体の統一や、誤字脱字の修正など、若干の改稿をしています。

戻る

〔まとめ1〕 ・ 〔まとめ2〕 ・ 〔まとめ4〕 ・  〔まとめ5〕 ・ 〔まとめ6〕
〔まとめ7〕 ・ 〔まとめ8〕 ・ 〔まとめ9〕 ・  〔まとめ10〕 ・ 〔構成分析〕


◆第13話「JP(ジャンパーソン)は超古代兵」◆ (監督:小西通雄 脚本:浅香晶)

 い、生きていたのか高井戸ぉ?!

 富岳山渓で超古代文明の遺跡が見つかり発掘された出土品の研究が進められ、その警備を指揮する事になる高井戸。
 (頑張るぞぉ、なんたって今回は僕が警備責任者なんだからな)
 警部が月の無い晩にパニッシュされたからね……。
 だがそこへ襲い来る、銃弾を跳ね返す迷彩服の襲撃部隊。スーパーサイエンスネットワークの送り込んだ彼等は出土品を奪っていくが、 もみ合いになった際に、出土品の一つである不思議なエネルギーを放つ指輪が、女性研究者・平野ユカリの指にはまってしまう。
 その途端、大ぶりな杖を持ち裾の長いローブ姿に変わるユカリ。
 「私は、私の名はメイリン」
 襲撃部隊のリーダー・大崎は彼女の指を切ってでも指輪を奪い取っていこうとするが、その時、 風を切るJPカード!
 「ジャンパーソン・フォー・ジャスティス!」
 襲撃部隊に立ち向かうジャンパーソンを見つめるメイリンは、「あれは……鉄鋼兵、何故ここに」と、不思議な事を呟く。 メイリンは超古代文明の神官であり、彼女によるとジャンパーソンは、彼等の文明が有していた鉄鋼兵なのだという!
 「私の使命は、再び悪がはびこる時、無敵の鉄鋼兵を目覚めさせ、共に戦う事」
 本来、神官と鉄鋼兵は同時に目覚める筈であった。
 だが何故か神官より先にジャンパーソンだけが目覚めたとすれば、誰かが制御装置を勝手に使っているのかもしれない。 メイリンは制御装置の安全を確認する為に高井戸とともに遺跡へ向かうが、大崎がその背に発信器を取り付けるのであった……。
 「ジャンパーソンは私たちの文明が残した無敵の鋼鉄兵士、鉄鋼兵なのです」
 ラスボスの正体は、超古代文明が作り出した究極の守護神だった。
 「世の中の悪を自動的に探知し撃滅する、善悪の判断回路を持った無敵の警備兵団、それが鉄鋼兵です」

 怖いよ!

 善とか悪とか大きな事を言って誤魔化していますが、つまるところ敵対する文明の発生を確認するとデストロイ、 と。
 しかし悪(敵対文明)が、鉄鋼兵の電子回路を混乱させる装置の開発に成功。それにより超古代文明は自分達の生み出した鉄鋼兵と戦う事になり、 結果、文明は崩壊してしまう。だが、最強の鉄鋼兵とそれを導く神官が一人だけ、 いずれいいタイミングで甦って再び世界に覇を唱える為 この世に再び悪がはびこったときにそれを撃滅する為、 未来へ向けて眠りについたのだった……。
 ここまで散々引っ張ってきたジャンパーソンの謎を、ポッと出のゲストキャラが、何の蓄積も裏打ちもないまま、 さも真実のように延々と語ってしまうという、非常に面白くない展開。この設定なら設定で、 面白く見せるやり方は幾らでもあると思うのですが、というか、どうしてこんな重要な回を、 メインライターの宮下隼一は書いていないのか。宮下隼一そんなに評価していないですが、多分ここまで酷くないものは書ける。
 探知機によって大崎一味に追いつかれる高井戸達だったが、駆けつけるジャンパーソン。 滝に滑り落ちたメイリンはジャンパーソンが無事に助けるが、高井戸は大崎一派に捕まってしまう。
 気絶したメイリンに手ですくった水を飲ませるのかと思ったら、顔に振りかけるJPさん。
 ……いや起きた、起きたけど。
 足を引きずって歩く女性に手を貸す素振りも見せないJPさん。
 相変わらず、クール。
 「目的地はもうすぐだ、頑張れ」
 一応、声はかけてみた。
 今回のジャンパーソンさんは凄く普通に喋る上に、その一つ一つの台詞が凄くつまらない為、とにかく非常に面白くありません。 互いに状況の説明は一切しないのに、メイリンとはやたら自然と意思疎通できるのは、神官と鉄鋼兵だから、 という事なのかもしれませんが。
 そして山の中に突然現れる、モアイ像(笑)
 ……時間か、時間が無かったのか?!
 遺跡の中に辿り着くジャンパーソンとメイリンだったが、そこへ高井戸を人質に一足先に入り込んでいた大崎が、 制御装置を手に姿を現す。
 「ジャンパーソン、麗子様の下僕となるがいい」
 大崎が制御装置を動かし、動きを止めるジャンパーソン。このままジャンパーソンは悪の手先となってしまうのか……?! だが、 おもむろに再起動したジャンパーソンは大崎の部下を蹴散らし、高井戸を救出。
 「私は、正義の為だけに戦う!」
 その時、制御装置を奪い取ろうと大崎に組み付いて投げ飛ばされたメイリンが触れた棺から、鉄鋼兵が目覚める!
 さんざん規定事項のように語ってきて、実は富岳山渓の遺跡と制御装置はジャンパーソンのものではなかったのだ、というのは、 今回唯一、面白かったところ。
 というか、JPさんが一端動きを止めたのって、ドッキリ?
 目覚めた緑色の鉄鋼兵はアイレーザーで大崎の部下達を消滅させるが、大崎の無茶なコントロールにより、暴走。 大崎を消滅させた後にジャンパーソンに襲いかかり、激突するジャンパーソンと鉄鋼兵。さすがのジャンパーソンも、 超古代最強のメカの前にそれなりにダメージを受けるも、最後はバルカンで蜂の巣にし、崩壊する遺跡から脱出する。
 「私は戦い続ける。全ての悪を倒し、私のような戦士が、必要なくなるその日まで」
 その言葉を聞いたメイリンは自分の役目が終わった事を知り、指輪を外してユカリに体を返して消えていくのであった……。
 結局、ジャンパーソンが何者なのかは、有耶無耶のまま終了。
 一応いまのところ、とりあえず超古代文明の鉄鋼兵っぽい、という事のようですが、全編通して、 あくまでメイリンが主張していただけであって、JPさんは肯定も否定もせず、 とんだ電波だった可能性も充分にあります。
 というか、ここまでやっておいて、後でどうにでもなるように、という非常に良くない落とし方。
 なんかもうよくわからない高井戸、すっかり普通に喋るジャンパーソン、と細かい部分も大きく減点。また、 結局一発ネタだからという事なのか、メイリンが終始、“自分達の文明”を「超古代文明」と称するのは、非常に冷めます。 そこは固有名詞を置いておく事で、人間のリアリティを出してほしい所。
 予告で盛り上げた分もありますが、あまりにも酷かった。
 そして高井戸もまた今回を最後にパニッシュされるのであった……。
 様々な混沌と謎を孕みながら、ラスボスの戦いは続く!
 どこから来てどこへ行くのか、それはまだ、誰も知らない。

◆第14話「爆破寸前の友情」◆ (監督:小西通雄 脚本:中野睦)
 今日も今日とて悪のロボットをパニッシュ中のジャンパーソンだったが、逃げられてしまう。損傷を負い、逃亡するロボット・U2 (外見は割と格好いい30がらみ)は、ジャンパーソンの攻撃によるショックからか記憶回路に変調を来し、 階段から落ちた少年・正彦を助ける。記憶を失い、自分が何者かを忘れるU2……その背後には、 ジョージ真壁からU2の破壊指令を受けた<ネオ・ギルド>の最新型暗殺ロボット・ドールマンの影が迫っていた。
 自分を助けてくれたU2を「おじさん」と慕い、家から工具箱を持ってきて修理を手伝う正彦少年。 <ネオ・ギルド>のロボットであった記憶を失っているU2だったが……そこへヤツが!  正義の鉄槌が! 振りかざされるジャスティック!

 廃工場で修理中のU2に問答無用で襲いかかってくるジャンパーソンが、超ホラー。
 正彦少年の視点で、いつも圧倒的な暴力にさらされる悪漢達の気持ちが味わえます(笑)
 記憶を失ったと主張するU2と、それをかばう少年の姿に、何がどうなっているのかと若干の困惑を見せるJPさんだったが、 ラスボスはいつだってクールでドライ。
 「おまえは特殊工作用ロボット・U2だ。町中で私が発見して、攻撃を加えた」

 一方的だ……!

 「わからない……何も覚えていない……」
 「君は帰れ」
 これから残酷シーンの時間だから。
 「やだ、ぼく、おじさんと一緒にいる。おじさん、僕を助けてくれたんだ。だから僕だって、助けてあげたい」
 「駄目だ、帰るんだ」
 もう少し粘るかと思われた少年、意外とあっさり帰る(笑)
 だがそこへ現れたドールマンが正彦を人質に。ジャンパーソンはU2を囮につかって正彦を救出すると、ドールマンと激突。 ここで投降する素振りを見せたU2を遮蔽物にして地面に伏せたジャンパーソンが背後から射撃、 というのは映画っぽいアクションでなかなか格好良かった。まあ、間違えてU2に当たっても問題ないし、 というJPさん視点含めて。
 正彦を連れて外に逃げ出したU2は記憶が甦り始める……それは、ジョージ真壁の指示で、 どこかに時限爆弾を仕掛けたというものだった。その場所は思い出せないが、爆発の時刻は午後2時ちょうど。
 宇宙パワー(違う)を発揮し、変身したドールマンを蹴散らしたジャンパーソンはその情報を聞くと、 スカイジェイカーを用いて上空から爆弾を捜索する。<ネオ・ギルド>に持たされていた発信器を破壊し、 廃工場で待機するU2と正彦……損傷に苦しみ(やったのJPさんですが)、悪のロボットであった自分の行為に苦悩するU2に、 父の形見であるBMWのエンブレムを見せて励ます正彦。
 滑らかさは少し物足りないですが、正彦がU2をやたらに慕うのを、お約束だから、とせず、父を早くに失っていた、 という背景とからめたのは悪くない所。惜しむらくはこの展開なら、 冒頭でいじめっことエンブレムを奪い合いになるシーンでエンブレムをもう少し強調しておいてほしかった。 何を争っていたのかわかりにくい絵だったので、てっきりもう、その話は無かった事になるのかと(^^;
 そんな二人の会話を聞きつけ、廃工場へ飛び込んでくるドールマン。正彦は渡されていた通信機でジャンパーソンを呼び、 久々にスカイジェイカーの機銃炸裂。ぽんこつ<ネオ・ギルド>製のドールマンがラスボスにかなうべくもなく、 ジャンデジックとジャンバルカンの二丁拳銃モードで、ドールマンは撃滅されるのであった。
 ドールマンの脅威は去った。だが、時限爆弾はまだ発見できず、タイムリミットまであとわずか。
 「俺の心臓部を切り開いて、記憶回路をハッキングしてくれ。俺の為に大勢の人間が死ぬ……そんな事は我慢できない」
 U2は弱った体(やったのJPさんですが!)を押し、自らを犠牲にしてでも、と情報の入手を要請。 その熱意にジャンパーソンはU2のコントールチップにアクセスして直接ハッキングを試みる。それにより明かされる、 数々の爆破活動に勤しんできたU2の過去……そして、ジョージ真壁の指示により今回爆弾が仕掛けられたのは、渋谷の国際会議場!  残された時間は後わずか、立ちはだかる暗殺ロボット軍団を蹴散らし、会議場に急ぐジャンパーソン。だが、 バラバラになった筈のドールマンの右腕だけが動いて、指先から放つビームでU2を攻撃。U2は正彦をかばってビームを受け、 正彦はジャンパーソンを呼び戻そうとするが、U2はそれを止める。
 「戻ってくるなジャンパーソン! 俺は、俺はどうなってもいい、爆弾を止めるんだぁ!」
 「あと2分……勘弁してくれU2。許さん、ネオギルド!」
 切り替えた怒りを、速攻で都合良く転嫁するJPさん。
 「勘弁してくれ」という語彙が、妙に面白い感じに。
 会議場の前で警戒していたロボットを瞬殺したジャンパーソンは、仕掛けられた爆弾の解除に成功。
 ……散々引っ張ってきた肝心の爆弾解除が指でスイッチ押すだけだったのはちょっと……(笑)
 そしてU2は、最後に正義の為に生きた事を誇りに思いながら、機能を停止する。
 死体を前に号泣する正彦に、正彦がハッキング中のU2へお守り替わりに握らせていたBMWのエンブレムを手渡すジャンパーソン。
 「正彦くん。このエンブレムの中に、U2の思い出が生きている。正彦くん、辛いだろうが勇気を持って、悲しみを乗り越えるんだ。 U2もきっと、それを望んでいるよ」
 なんかまた、心にもない綺麗事でまとめて誤魔化した。
 明らかにどこかの誰かがジャンパーソンのOSをアップグレードしていますが、いったい誰なんだ(笑)
 エピソードとしては程よくまとまっていたのですが、ケビンの回とコンセプトが被り気味で、 <ネオ・ギルド>編が早くもパターン化しているのは、気になるところ。「造られたロボットの悲しみ」は通しテーマという部分もあるのでしょうが、 どちらかというと、人間ではやりにくいネタをロボットに仮託した結果、似たようなテーマになってしまった、という感が強い。 一昔前ならU2のポジションは普通に人間だったと思うのですが、そこでワンクッション置かないと話が書きにくくなっている時代、 みたいなものをどうも感じます。
 後まあ、悪のロボットが記憶を失うと正義のロボットになる、というのはロボット性善説なのかもしれませんが、 「正義」と「悪」という概念の扱いが10年ぐらい戻ってしまって、物足りない所ではあります。 ややこしく踏み込みすぎた前シリーズを踏まえてシンプルにしようという事ではありましょうが、 もう一歩立ち止まって考えてほしいなぁ……という部分の脱皮には、00年代を待つ事になりますが。
 袋小路を嫌がったらまた別のいつか来た袋小路に突入してしまった、というのはこの時期の一種閉塞感かもしれません。


……ところが続く15話で、本作は恐るべき転換点を迎えるのであった……!


◆第15話「翼をすてた天使」◆ (監督:簑輪雅夫 脚本:扇澤延男)
 「私の名はエンジェル……といっても、私は天使ではありません。空も飛べない、この町工場で働く、ただの作業ロボットです」
 そう語るのは、白を基調としたデザインの割とスマートな人間大ロボット……と、ロボットの語りからという一風変わった導入。
 一見して大きくも特別儲かっているようでもないが、熟年の男二人と若い男二人で日々懸命に、しかし和気藹々と働いている、 雰囲気のいい町工場……
 「ここには、いつも笑い声があふれています。あの日私を拾ってくれた人達の、明るい笑い声が」
 2ヶ月前、西村ロボット工学研究所が大爆発し、所長の西村博士も死亡。その研究所で開発され、 ぼろぼろの姿で街を彷徨っていたエンジェルは、道で倒れた所を工場の人達に拾われたのであった。
 帰る場所も行く当てもない……って、研究所の所有物だったり、博士の私的な財産だったり、 差し押さえの対象だったりはしないのかロボット。この世界のロボットの扱いは、回が進めば進むほど、謎が深まるばかりです(笑)
 そんなエンジェルの姿に、いかにも昔気質で人情に篤そうな社長が言葉をかける。
 「おまえ、ここで一緒に働かねえか?」
 「私には、なんの特殊能力もありません。エンジェル……天使という名を持ちながら、翼さえない。私は出来損ないなんです」
 「だからどうしたよ?」
 「俺たちもみんな出来損ないだよね」
 「特におまえはな」
 「言うなよはっきりぃ」
 「出来損ないじゃない野郎がいるのかよ。みんな出来損ないよ。だからよってたかって助け合うんだろうが」
 と、如何にも扇澤脚本なやりとりを経て、エンジェルは工場の一員となる事に。
 なおこの町工場、東映怪人の声を数々あててきた二大ベテランとドラフトブルースと後の川崎省吾 (『メガレンジャー』)が一緒に働いており、一皮剥くと悪の秘密結社という可能性を微妙に捨てきれません(笑)
 「ここのみんなに拾われて、本当に私は幸せです」
 特に際立った能力を持たないとはいえ、人間以上の腕力を持ち、性格も善良なエンジェルはすっかり工場の欠かせないメンバーとなって日々を送っていた。 だが、そのエンジェルを見つめるセーラとマヤの姿があった……。
 と、予告の時点で色々わかってはいるわけですが、善良なエンジェルの日常、にきちっと尺を裂いた上で落としにくる、 というしっかりした展開。しかも問題は帯刀ではなくて、その後にラスボスが待ち受けている事であり、 視聴者の中で、待ち受ける悲劇的展開に対する心の準備が急ピッチで進みます。
 「エンジェルが見つかった?!」
 帯刀は、亡くなった西村博士のお友達、と称してエンジェルと接触。実はエンジェルは、帯刀が博士に発注して作らせた、 破壊工作用ロボットであった。
 「殺戮と破壊。その為だけにこの世に生まれてきたんだ、おまえは。で、手始めに君に頼みたい仕事だが……」
 「帰ります」
 「あら? ぼくちんに背くと、大切な物をなくす事になるよ?」
 「失うものなど、私にはない」
 帯刀に背中を向けたまま、首だけ返して告げるこのカットが格好いい。
 そしてまたこの時点では、「幸せ」とはいいながらもエンジェルがそれをまだ自分のものだと思っていない、というのがいい。
 だが、次々と道路に突き飛ばされる工場の人達。幸い軽傷で済んだものの……
 「物騒な世の中ですから、気をつけないと……一度あることは、二度も三度もあるっていうし」
 ナースコスプレのセーラさん、エンジェルにぐさり。
 「一度、だけだ……一度だけ、あの男の命令に従えば……!」
 町工場の仲間達を守るため、帯刀の卑劣な脅迫に屈したエンジェルは、その命令で、帯刀コンツェルンの買収を断った西部重工へと突貫。
 買収断った会社をロボットで襲撃しちゃうとか、そもそもそういう嫌がらせの為にロボット作らせたのかとか、 金を持たせてはいけない大人を地で行く帯刀さん。
 カタギに戻った元悪党が島抜けしてきた昔の仲間に脅されて悪事に手を染めざるを得なくなる、という、 鉄板の時代劇展開の亜種なのですが、ここで成敗しに来るのが、話の通じないラスボス という事に視聴者の心が震えるという、正義の甘さの余地を期待させない、今作の特色を活かした構成が秀逸。
 そして案の定、風を切るJPカード!
 「ジャンパーソン・フォー・ジャスティス!」
 「仕方なかったんだ……! 見逃してくれ!」
 パニッシャーの登場に後ずさるエンジェルだったが、勿論、ジャスティスの辞書に「容赦」の二文字は無い。
 「撃つな、撃つな、撃たないでくれぇ!」
 その時、追い詰められたエンジェルの胸部が開き、内蔵火器が自動反撃。
 「違う、撃つ気なんかなかったんだ!」
 むしろ小悪党な台詞とともに、ますます怯えるエンジェルの背中に、今度は翼が開く。
 「翼もあったのか……」
 やたらに“エンジェル”と“翼”にこだわっていたエンジェル、自分の真の姿がちょっと嬉しかったのか、割と気持ちよさそうに飛んで、 ジャンパーソンに飛び蹴り。そのまま逃走し、これで帯刀との関係もおしまいだ、と考えるが……勿論これで、 お付き合いが終わる筈はない。
 というかエンジェル、一回限りの仕事にするつもりだったら、覆面ぐらい被ろうな!
 帯刀は町工場の人達を暗に人質として、引き続き自分の命令に従う事を要求し、崖っぷちに立たされるエンジェル。
 ここで、4人の写った写真をマヤが拳銃で撃つ→写真に空いた銃痕の穴からエンジェルを覗く帯刀視点→帯刀を非難するエンジェル
 というのは、帯刀のえぐみが出て、秀逸なカット。
 その頃、帰ってこないエンジェルを心配する町工場を、ヤツが訪れていた。
 「エンジェルというのはロボットか? そのロボットを探している」
 「奴が何かやらかしたっていうのか?」
 「どこへ行った」
 「だからなんの用だって聞いてるんだ!」
 「どこにいる!」
 このラスボス感(笑)
 エンジェルをかばう工員達に詰め寄られながらも、眉一つ動かさない(動かせないけど)のが、素敵。
 裏口から入ってきてその光景を目撃したエンジェルは、子供が生まれる予定の同僚・耕作(仮)が「あいつは本物の天使だ」 と言ってくれた事を喜びながらも、自分がここに居る事がその人達を巻き込んでいくという事実に思い悩む。 いっそ逃げ出してしまえば……しかしそれでも、事態は好転しないだろう。
 「何が天使なもんかっ! 逃げようが、あいつの命令通りに動こうが、どっちにしても俺は死神じゃないか!」
 「やっとわかったようだな。おまえにはね、デストロイヤーとしての運命しか与えられてないの」
 そこに現れ、エンジェルを嘲弄する帯刀。
 「そう、おまえは黒い天使だ」
 ここで帯刀を殺っちゃえば、万事解決するよーなしないよーな(笑)
 「何もかも破壊する……俺は、俺は生まれながらの黒い天使なんだ!」
 千々に乱れるエンジェル、ついに魔道へ。
 若干、「俺の右手が疼く……みんな、離れろ!」的なものを感じないでもありませんが(笑)
 善良そうなロボットが実は悪の目的で誕生した存在だった……というのはここまでにも何度かあったパターンですが、それを鏡として、 ジャンパーソンが孤独でなくてはいけない理由が描かれているのが、今回、踏み込んだところ。
 文字通りに堕天したエンジェルは帯刀の命令で次々と様々な施設を襲撃し、新聞報道でそれを見た町工場の仲間達は困惑するが、 耕作(仮)は、エンジェルを信じようとする。だが、正義の鉄槌はそんなエンジェルの元へ迫っていた―― 破壊活動を続けるエンジェルに向け、風を切るJPカード!
 「ジャンパーソン……」
 「なぜ破壊を重ねる。もうよせ」
 「おまえは正義に生きることを望まれて生まれてきた。俺は、破壊する事だけを望まれて生まれた」
 「裏切ればいい」
 「おまえは自分を裏切れるか? 正義を捨てられるか? 誰も背負って生まれた運命には、逆らえないんだ」
 「どう生きるかを決めるのは、自分自身だ!」
 「運命が全てだ!」
 胸甲の間に挟まったJPカードを、地面に投げ捨てるエンジェル。
 今回は通して、簑輪監督が気合いの入った好演出。
 完全決裂したジャンパーソンとエンジェルの戦闘開始。
 TVの前の良い子のみんなは、前回、もう少し話が通じそうだった時に問答無用で襲いかかった事は忘れてね☆
 翼を駆使しての3次元攻撃に、よろめくジャンパーソン。やはり、飛行タイプは苦戦フラグなのか? しかし、 JPさんにはサポートメカが揃っていた! 空を舞うエンジェルvsスカイジェイカーという、珍しい空中戦の末、 機銃がエンジェルの左翼を破壊し、地に墜ちるエンジェル。
 「よくも翼をぉ、俺の翼を!」
 「黒い天使に、翼はいらない」
 JPさん、詩的(笑)
 ジャンパーソンの攻撃はエンジェルの両翼をもぎ、追い詰められて地を這うエンジェル。その時――ジャンパーソンの脳裏に響く、 合成音声。
 (悪を、倒せ……悪を倒せ……)
 「?! この声は……」
 (完全破壊しろ)
 自動シークエンスで発射準備される、ニーキックミサイル。
 「撃つな、吹っ飛ばさないでくれ!」
 やけっぱちで破壊活動した割には、基本、潔くないエンジェル(笑)
 まあ今回、“翼”が悪の象徴とされているので、両の翼を失って、思春期を卒業した、というシンボライズの流れ、 という要素もあるのですが。
 「本当に粉々にする必要があるのか」
 (邪悪な犯罪者を許すのか)
 「許しはしない。しかし……」
 「ジャンパーソン……?」
 (完全破壊しろ。部品一個この世に存在させるな。 その為に俺は生まれたんだろ)
 ・
 ・
 ・
 おおおおお、す・ご・い!
 なんとまぁ
 ここで、こう来たかっ!!!!!
 いや凄い、これは凄い。
 いつものラスボス展開から思わぬ異変発生で、そこからこう持ってくるかっ。
 今作の根幹に関わってくるであろう部分なので、扇澤さん単独のアイデアというわけではないと思いますが、 ここまで基本的にロボット性善説であり、“悪のロボットとして作られなかったロボットはイコール正義のロボット”であり、 劇中で非業の最期を遂げた悪のロボットに「正義のロボットとして生まれてきたかった」と言わせてきた『ジャンパーソン』世界で、  “正義のロボットに生まれた”というのは本当に善なのか?
 という、正義と悪の根本的相対化がなされる。
 前回14話の感想で、 「「正義」と「悪」という概念の扱いが10年ぐらい戻ってしまって、物足りない所ではあります」
 と書きましたが、いやはや、思わぬボールが飛んできました。
 悪のロボットが正義に生まれ変わったのではなく、正義のロボットは本当に正義なのか? という所へ突っ込んできたのが素晴らしい。
 「その為に俺は生まれたんだろ」
 という台詞は、今作がここまでそれを全肯定していただけに、物凄く重い。
 たまたま「正義のロボットとして生まれてきた」為に、ヒーローとして祭り上げられ、 恥じる事なく自分の好きな事を好きなようにできると羨ましがられてきたジャンパーソンが、実は、 生み出された自分の宿命と戦っていた!
 ここで遂に、ジャンパーソンが口にしてきた「ジャスティス」という言葉に、重量が生まれる。
 それは誰かに与えられたのではない、ジャンパーソンが辿り着いた正義(多分)。

 「DEDICATE MYSELF TO JUSTICE(私を正義に捧げる)
 ※JPカードに刻まれた文字。……まあ、一番大きくは、「WARNING!」て書いてあるんですが(笑)

 今後どこまで拾われていくかはわかりませんが、現時点では作品のメインテーマとなったようなので、この要素は是非、 真っ正面から掘り下げてくれる事を期待。6話、9話あたりも踏まえているのですが、12話、14話、と同テーマが続いたのは、 今回の為の布石だったのか! 振り返って誉めるべきかはともかく、色々な軌道修正について腑に落ちた気はします。まあ、 転換が早すぎて、失速しそうな予感は凄いするのですが…………が、頑張っていただきたい。
 またここで、凡百の脚本家なら「おまえ」と、脳内ボイスからジャンパーソンに呼びかけさせてしまいそうな所を、 「俺」とした所は、さすが扇澤延男。
 「黙れ……どうして今になって目を覚ます」
 (こんなものじゃ甘い……完全に木っ端微塵にしろ)
 膝ミサイルの起動を解除したジャンパーソンだが、謎の声はジャンパーソンの左手にジャンバルカンを握らせる。
 「私は昔の私ではない。もうおまえの声には従わない」
 だが、ジャンパーソンは自らバルカンを振り落とし、ジャンデジックだけをエンジェルへと向ける。
 「眠れ、黒い天使」
 ……まあ、やる事は変わらないんですが!
 光線銃を受け、崩れ落ちるエンジェル。
 「ジャンパーソン……同じロボットなら、俺も、俺もおまえのように生まれたかった。愛し愛される、そんなロボットに」
 ここまで劇中で何度か繰り返されてきた台詞が、これまでと全く別の意味を持ってくるという、このアクロバット!
 「エンジェル、私も生まれたときは違ったんだ……」
 「俺なんか、初めからこの世に生まれてこなきゃ良かったんだよな」
 ジャンパーソンの手の中で機能を停止するエンジェル……事件の結末は新聞に報道され、町工場の人達は背後の事情がわからない中、 やりきれない思いを抱えていた。
 「忘れろ……エンジェルは、エンジェルは、天国に帰っていったのよぉ。なにしろ野郎は、天使だもんなぁ……」
 だがその時、町工場を訪れたロボット……それは、破壊された筈のエンジェル!
 「一度は死にました。それをジャンパーソンが、生まれ変わらせてくれました」
 これまで一度もそんなサービスした事ないのに……これはこれで、脳の中の声に、昔の私ではないアピールをする為に、 JPさんが意地になったという気はします(笑)
 エンジェルの復帰を喜ぶ4人だったが、エンジェルは首を左右に振る。
 「生まれ変わっても、私の犯した罪は消えません。これから、自首します」
 「わかった。待ってるぜ。戻ってくるのをよ」
 「もうここには戻りません。私は、汚れた手を持つロボットです。皆さんには、ふさわしくありません」
 「エンジェル!」
 社長、エンジェルを平手打ち。
 「わかったような口をきくんじゃねえよ、このロボットが! 行き倒れになったのを拾ってやったのは、誰だ!  てめえみてぇな出来損ない、有り難く引き取ってくれる所がどこにある! この俺たちの他によぉ!」
 更に耕作(仮)に、出所してきた頃には生まれているであろう赤ん坊を、是非ともおまえの……天使の手で抱いてやって欲しいと言われ、 4人の心に打たれたエンジェルは、必ず工場へ戻ってくる事を約束、自分が生まれてきた価値を、 自分が手に入れた「幸せ」を信じるのであった。
 「私は……私は……やっぱりこの世に生まれてきてよかった。本当に」
 ありがとうございました刑事さん、もといジャンパーソンによってダークジェイカーで連行されていくエンジェル。 ますますこの世界のロボット法とかが理解不能になっていくと同時に、 これまでのJPさんが罪を償える可能性のあるロボットを私的に抹殺していた事案が浮き彫りになりますが、 フォージャスティスなので仕方ない。
 「エンジェル。私も決して、祝福されて生まれてきたわけではなかった。おまえと同様、忌まわしい生い立ちをもつ。 しかしそれを自らの意志で断ち切った。どう生まれたかが問題ではない。どう生きていくかが重要なんだ」
 連行する車内で自慢始まった(笑)
 このラストは、少し喋りすぎたかな、という気はします。わかりやすさを優先したのでしょうが、ここは敢えて語らずに、 先に回しても良かったような。ジャンパーソンの過去とシンクロした事で、当面の作品のテーマは完全にここになるようですが。
 この、修理されたエンジェルが町工場に戻ってくるという大団円は、 悪くはないけどさすがに都合が良すぎるけどそういう世界観という事で仕方ないかなと思ったら…… そこからもう3回転半ひねって刑事物にした!!!!!!!

 というか、人の心とロボの心を救った!!!

 いやいやいやいや、ここで《レスキューポリス》にしてしまうとか(しかも『ジャンパーソン』世界と違和感ない範囲で)、 どれだけアクロバットなのか扇澤延男!
 本人も心の中で引っかかり、やり残した思いがあったのかもしれませんが、前作のメインキャストの一人がゲスト出演している回で、 『ジャンパーソン』世界を用いて、前作超えをはかるとか、滅茶苦茶すぎる。
 凄いわー、前回酷かったけど(良くも悪くもこの落差が持ち味ではある)、扇澤延男は、本当凄い。
 復活したエンジェルは、おそらくジャンパーソンによって戦闘能力が解除されているのでしょうが、 そういったロボットの機能として生まれ変わるだけではなく、刑務所でお務めを果たす事で生まれ変わってやり直す、 という要素が入っているのもお見事。これにより、ロボットがただの機能に左右される物品としてではなく、 一つの人格として存在する事が示されてもいます。
 とはいえ今後、悪のロボットをJPさんが救っていく人情展開だと、それはそれで相当うまくやらないと白けるのが目に見えているので、 どこにバランスを置くかに注目。今回も、主軸がロボットなのに時代劇に始まって刑事物で着地して前シリーズを拾ってしまうという離れ業あってではありますし、 毎度は通用しない。
 ただこの離れ業により、ここまでの14話が新しい別の意味を持ち、迷走著しかった今作が、完全に切り替わった、というのは、 実にお見事。
 なお普段はエンディング飛ばして予告を見るのですが、今回のエピソードは、そのままED突入すると、また実にいい。

あいつも夢を 見るのだろうか
誰かを愛して いるのだろうか

 ところで……
 JPさんは「どうして今になって目を覚ます」と主張してしまいたが、えー、今までも時々、目を覚ましていましたよね?  戦闘中とか、月のない晩とか。そこは正直に白状してほしい所です。
 「ジャンパーソン・フォー・ジャスティス!」
 次回、精神注入棒……!

◆第16話「熱闘ど根性ロボ」◆ (監督:簑輪雅夫 脚本:曽田博久)
 ジョージ真壁は考えた。
 「私はネオギルドのロボット敗北の理由を考えてきた……そしてわかったのだ、そのわけが。パワーが同じなら最後に物をいうのは

 精 神 力!!!

 その精神力が、足りなかったのだ!!」
 ……駄目だこの人、早く捨ててこないと。
 「そこでこの天才、頓田博士が開発したのが、ネオギルド精神注入棒! 強烈な衝撃を与えると同時に、感情回路に凶悪な感情、 不撓不屈の負けじ魂、或いはネオギルドへの忠誠心などが、反応するにように作られたメカだ! 強烈な衝撃を与えれば与えるほど、 憎しみや怒りの感情も強まり、不撓不屈の精神も鍛えられ、ネオギルド魂あふれる根性ロボットとなるのだ!」
 「叩き込め、ネオギルド精神!」

 駄目だぁぁぁぁぁぁぁ!!!

 これまでネタにはしてきましたが、
 精神注入棒→日本軍ネタ→竹槍で爆撃機を落とす系
 と、どうやら公式に駄目な組織扱いになってしまったぞ<ネオ・ギルド>! そしてジョージ真壁!
 ジャンパーソンとパワーが同じという、どう考えても間違った前提から精神論に走ってしまった真壁さん、 頓田博士の開発したネオギルド精神注入棒を、強面のロボットR3号(演ずるは、悪役商会・丹古母鬼馬二)へと叩き込む!
 ネオギルド魂を叩き込まれたR3号は、レオタード姿で街を襲撃。そこへ現れたジャンパーソンは破壊活動を止めようとするが、 その脳裏に再びあの声が響く――……!
 (悪を倒せ、悪を倒せ、悪を倒せ……)
 ラスボスモードに突入したジャンパーソンはR3号を滅多打ちに殴り飛ばし、ジャンパーソンは自らその制御不能な執拗な打撃に困惑する。 これで機能を停止したかと思われたR3号だったが、こぼれだした自らのオイルで「ど根性」とオイル文字を書き、立ち上がる。
 戦闘をモニターしていた頓田博士は、これに大喜び。
 「ど根性、これまでに自らを奮い立たせるために、ど根性などという文字を書いたロボットが居たでしょうか!」
 ……うん、まあ、たぶん居ないね…………。
 「これぞネオギルド魂です! <ネオ・ギルド>のロボットの新しい歴史が、今始まったのです!」
 なんか段々、俺、間違った研究に予算使っちゃったかも……という顔になる真壁さん。
 不屈の根性で立ち向かってきたR3号を、再びラスボスモードで滅多打ちにするJPさん。
 「またやってしまった……」
 いや、いつもと寸分変わらない気がするのですが。
 ところが、ジャンパーソンの攻撃を受けて吹き飛んだR3号はその場を走り去ると、何故か自分の砲撃で怪我をした人達の手当を開始する。
 「失礼な、私は白衣の天使、ナイチンゲールよ」
 なんと、精神注入棒の作用により、R3号の感情回路には、悪の感情だけではなく善の感情も混ざってしまったのだ。 ここは理屈は脇においておいて、衝撃をうける度にころころと性格のかわるR3号、そして劇中初、 状況についていけずにちょっと困惑するジャンパーソンを楽しむところ(笑)
 頓田博士の精神注入棒により、今度はドラキュラのつもりになったR3号はジャンパーソンに取り押さえられるが、頭を打って、 なんと無邪気で善良な幼稚園児の精神になってしまう。勿論、見た目は厳つくむさ苦しい中年男のまま!
 「子供になってしまうなんて」
 思わず、物陰から様子をうかがってしまうJPさん。
 謎の声の影響による自身の不調もあり、今回のジャンパーソンは受け身気味。14話までのジャンパーソンだったら、
 「中年のロボットは、幼稚園児にはなれない」
 と一撃で粉砕した事かと思われますが、15話以降のジャンパーソンは新ジャンパーソンなのです。
 すっかり幼稚園児と化したR3号は、マコちゃんという幼稚園児と仲良くなるが、母親と保母さんに追い払われ、泣き濡れる。 ……R3号を監視していたジャンパーソンは、ロボットが涙を流す姿に、「またマコちゃんと遊べるさ」と励まし優しく接するのだが、 「悪を倒せ」の声とともにパニッシュしてしまわないか、自らの状態も危惧するのであった。
 翌日、自転車のブレーキの故障でトラックに突っ込みそうになったマコちゃん母子の危機を救ったR3号は、「3ちゃん」として、 マコちゃんの家に迎え入れられる事に。1200%不審者なのですが、度量が広いぞ、マコ母……!
 その姿を窓の外から見つめるすっかり保護者状態のジャンパーソン、R3号と「やったね」 「いえーい」みたいに窓越しにわかりあっているのですが……えー……状況証拠的に真っ黒なのですが、 R3号がマコちゃん宅に迎えられる為に、自転車に細工したよね?
 ジャスティスに、多少の犠牲はつきものだ…………!
 R3号の幸せそうな様子を見てその場を離れたジャンパーソンは、精神注入棒を持ってR3号を探す頓田博士(&暗殺ロボット2体)を発見。 「R3号にかまうな。もうそっとしておいてやれ」と注入棒を奪って頓田博士を妨害するが、またも機能不全に陥ってしまう。 そしてそこへふらふらとやってきたのは、マコちゃん宅で電池を食べてしまって追い出され、失意に沈むR3号であった。
 ここまで結構、人間とわかりあうロボットが多かった中で(それ以前の問題も多々あるとはいえ)、 ジャンパーソンが混乱しているこのタイミングで、人間とわかりあえなかったロボット、を入れてきたのは面白い。
 頓田博士に精神注入されたR3号、今度はターザンに、遠山の金さんに、ガガーリンに、一乗寺烈に……と次々と精神が入れ替わり、 混乱の末にオーバーヒートしてしまう。
 「俺はいったい誰なんだぁー」
 というその叫びに、自らを重ね合わせるジャンパーソン。ここで急にナレーションで誤魔化してしまったのは、まあ、 曽田脚本っぽいといえばぽいのですが、何とかしてほしかったところ。
 「3ちゃんだよ、君は3ちゃん」
 今日は優しいジャンパーソンの呼びかけに、3ちゃんであった頃の精神を取り戻すR3号。 マコちゃんと遊んだ思い出を空中に投影すると、「楽しかったぁ……」の言葉と共に突然倒れて、あっさり爆発。
 「3ちゃん!」
 善良になってしまったロボット、をどう解決するのかとおもったら、非常にあっさり自爆(^^;
 「この、おんぼろロボットがぁ!」
 「それが仲間に対する言葉かぁ!」
 初めて、感情を込めて絶叫するジャンパーソン。
 (悪を倒せ、悪を倒せ……)
 「俺には俺のやり方があるんだ……!」
 大魔王モードに入ったジャンパーソン、内なる正義の声に反攻しつつも、襲いくる暗殺ロボットを、ぐっしゃぐしゃに。
 「これは、あの声のせいではないぞ。けっしてあの声のせいでは」
 ……うんまあ、いつもと寸分変わらないよね。
 しかし、響き続ける声……遂に“人間”である頓田博士に銃を向けるジャンパーソン。
 (悪を倒せ、悪を倒せ……)
 放たれた攻撃が消滅させたのは、その横に転がっていた精神注入棒。
 だが、こんな事ではジャスティスは満たされない。
 ニーキックミサイル・デュアルレーザー・ジャンバルカン・ジャンデジック……武装解放・ JPフルバーストモード展開!!
 内なる正義の声のもと、頓田博士に向けられる照準、必死にそれを抑えるジャンパーソン。
 「消えろ! 俺の目の前から消えてしまえ! 早く、早く! さもなくば、どうなっても知らんぞぉ!」
 頓田博士は逃げ出した所を警察によって逮捕され、JPフルバーストは不発に終わる――。
 突然、悩めるヒーローと化してしまったジャンパーソンですが、15話を経たことで、これまでと全ての意味が変わってしまったので、 これもあり。
 いや改めて、14話までと、15話以降では、ジャンパーソンが毎度
 「ジャンパーソン・フォー・ジャスティス!」
 と自ら口にする事の意味まで、遡ってまるで違ったものに変わってしまったので、なんとも凄い。
 今の今まで、デストロイでカタストロフでノーブレーキだと思われていたジャンパーソンのジャスティスは、 あれで当社比30%ぐらいに控えめだった!
 ラスボスの本気はまだまだ全然これからだ!!
 ……という一面も含め、理不尽気味な断罪者かと思われたジャンパーソンは、 実は“他者の正義”に飲み込まれる可能性を常に秘めており、それ故に自ら「正義のために」と叫び続けねばならない、 という姿は「正義の為に作られたロボット」に一抹の悲しさを漂わせます。
 またその為に、外部から別の精神を注入される事で感情回路がおかしくなり、混乱した精神の中で自我を崩壊させていくR3号に対し、 ジャンパーソンは一方的に思い入れ、その死に慟哭する……と、物凄い一気に人間くさくなってしまったジャンパーソンが、しかし、 その感情の高ぶりを見せたのは、むしろロボットゆえである、という構成はなかなか面白い所。
 通常の一話完結形式を取って脚本家もそれぞれ違いますが、14−16話に関しては、 15話を軸にした連続性のあるエピソードとして組み込まれたものかと思います。
 で、そういう軌道変更を控えていたという前提で見ると、13話のやっつけ感も、高井戸を始末した感も、 なんとなく腑に落ちてくる(笑)
 にしても、情緒不安定なJPさんはヤバすぎるので、誰か早く何とかしてください。
 次回、初公開JP基地!
 よりも、また新しい武器持っているのが気になる(笑)
 (※これは予告だけで、本編には出てこず)
 ところでジャンパーソンの出鱈目な武装展開はどうにも『宇宙家族カールビンソン』(あさりよしとお)の、おとうさん、を思い出すのですが、 あれやっぱり、位相空間に収納しているんですかね。

◆第17話「初公開JP(ジャンパーソン)基地」◆ (監督:三ツ村鐵治 脚本:宮下隼一)
 ジャンパーソンにサブマシンガンで立ち向かう、勇気あるチンピラ達に乾杯。
 「人間!」
 サーチしたJPさんも、勇気と言う名の無謀に驚愕の反応。
 無論、自動小銃で武装した程度のただの人間などラスボスにとっては「戦闘力5……ただのゴミか」以下の存在であり、 あっさりと制圧。だが、一味のボスを締め上げようとしたジャンパーソンの脳にまたも響く、抹殺指令。 そしてジャンパーソンの脳裏に浮かぶ、謎の訓練施設?の光景。
 ロボットを次々と爆殺したりビルが吹き飛ぶ映像が挿入されるのですが……ロボット虎の穴?
 ラスボスだ、おまえはラスボスになるのだ!
 ジャンパーソンの出身地としては、凄く納得が出来るのですが(笑)
 (なぜ揺れる……どうして躊躇する! おまえは、悪を倒す、 ただそれだけの為に生まれてきたのではなかったのか! 悪を倒せ、悪を倒せ……)
 JP脳からの呼びかけが「俺」なのが凄く良かったのに、あっさりと「おまえ」にしてしまう宮下隼一(^^;
 「違う、違う、今の俺は、もう、違うんだ……!」
 一度は押さえ込んだ筈の正義執行の呼び声、それを封印、いや今度こそ追放しなければ、今までの戦いが無に帰してしまう…… 混乱し機能不全を起こしながらも何とかそれを脱しようとするジャンパーソンだったが、一味のボスには逃げられてしまう。
 男の正体は、国際兵器マフィアの幹部、ジェフ・ゴンドウ。
 来日した謎の女を追ってジャンパーソンと戦闘になったという情報に、動き出す三大悪の組織。
 帯刀と真壁はだいたい部下が居るのですが、麗子様だけ身近に人が居ないので、いつも一人芝居で大変そう。
 その頃、ジャンパーソンに救われた謎の女はどこぞの海岸に居た。そして彼女が辿り着いたのは、洞穴の奥に隠された、 ジャンパーソンの秘密基地!
 デスクの上に、小さな鉢植えで紫色の花が飾ってあるのが、泣かせます。
 「久しぶりね、ジャンパーソン」
 「よく来てくれた、かおる」
 女の名は、三枝かおる。国連の研究員であり、ロボット工学の若き天才とうたわれる人物であった。
 遂に登場したジャンパーソンの直接の知己!
 本当は旧知の仲だったのに通りすがりに助けただけで無関係っぽく装っていたのは、今作の徹底したところ。 ジェフ・ゴンドウの件からかおるの素性を洗った帯刀は、かおるとジャンパーソンの関係はわからないまでも、 何らかの繋がりをそこに推測し、ジャンパーソンの正体をたぐりよせる餌とするべく、ゴンドウに接触をはかる。 同様の情報を得た真壁と麗子様は、この状況を様子見。
 「俺は怖い。自分自身が怖いんだ、かおる」
 かおるが来日したのは、内なる正義の声に悩まされるジャンパーソンを検査する為だった……しかし、 検査の結果は異状なし。

 つまり、平常運行。

 俺の中の何かの責任にしているだけだった!

 ジャンパーソン・フォー・ジャスティス!

 困惑するジャンパーソンに向けてかおるは、ジャンパーソンがただのロボットではなく極めて人間に近い精神構造を持っている為に、 表面に出ない心の奥底の傷があるのではないか、と指摘する。
 「精神的外傷……トラウマという事か」
 トラウマを持つロボット!
 容赦なく無慈悲で殺伐とした正義の使者が一転、心に傷を持った迷えるロボットに、という凄まじい大転換。 海岸でたそがれるジャンパーソンは、またも響く内なる正義の声を振り払うべく、決意を強くする。
 「俺は勝つ! 俺自身に、必ず、必ず勝つ、勝ってみせる」
 そして何故か、ジャンデジックで海を撃つ。
 撃ちまくる。
 ひたすら撃つ。
 なんか格好いい音楽が流れ始めたけど、とにかく撃つ。
 ジャンデジックだけでは満足できなかったので、ジャンバルカンも取り出して撃つ。
 どんどん撃つ。
 ひゃっはー、邪悪は消毒だーーーっ!!
 社会の悪を殲滅する代わりに、浜の生態系を根こそぎ破壊するジャンパーソン。
 通りすがりの正義の味方に見られたら、そのまま戦闘に突入しそうな光景です。
 怒りとか悲しみとか慟哭の思いを乗せて、とかではなく、無言で撃っているのが超怖い。
 一方、もはやお馴染みになりつつある変なコスプレでゴンドウに接触するセーラ、そして更に変なコスプレで登場する帯刀。
 ……帯刀コンツェルンは、コスプレ路線で行くのか。
 まあ、表の世界では有名企業家なので、変装しているという設定なのでしょうが。
 追い詰められていたゴンドウは帯刀にそそのかされて、かおるのたった一人の肉親である、弟の周平を拉致。国連の暗号無線を使って、 JP基地のかおるに、「弟の命が欲しければジャンパーソンの製造データを持ってこい」と脅迫。だがそのゴンドウの背広には、 セーラが密かに超高性能爆弾を取り付けていた。ジャンパーソンの製造データを入手すると共に、みんなまとめて抹殺しようという、 帯刀、悪魔の所行!
 無駄弾撒き散らし中のジャンパーソンには黙って、単身、呼び出しの場所へ赴くかおる。 スッキリして基地に戻ったジャンパーソンは異変に気付き、無線の録音を聞いて、かおるの後を追う。
 ど派手にサイレンを鳴らしながら!
 周辺関係者が出てきた途端に人質にされるという、実にえぐい展開。
 次回、遂にラスボス誕生の秘密が明かされる!
 なお今回、以前からそうだろうとは疑われていましたが、JPさんが基地で色々な無線を傍受している事がハッキリ明らかにされました(笑)

→〔その4へ続く〕

(2013年9月8日,2013年10月14日)
(2017年4月20日 改訂)
戻る