■『宇宙刑事ギャバン』感想まとめ5■


“あの人もどこかで 銀河を見上げ    
   俺の名を 呟いているだろうか
寂しさは愛を 強くしてくれる   
   笑って会える日を 信じていてくれ”


 ブログ「ものかきの繰り言」の方に連載していた『宇宙刑事ギャバン』感想の、 まとめ其の五(41〜44話&総括)です。文体の統一や、誤字脱字の修正など、若干の改稿をしています。

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〔まとめ1〕 ・ 〔まとめ2〕 ・ 〔まとめ3〕  ・ 〔まとめ4〕


◆第41話「魔空都市は男の戦場 赤い生命の砂時計」◆
 すっかり、ミミーさんが出社拒否状態
 その隙に、手作りサンドイッチでアピールするマリーンさん。
 油断なりません。
 パトロール中の烈は、車の前に飛び出してきた母子に頼まれ、河に落ちた子犬を助ける。だが、子犬と共に道に戻ると、 母子の姿は消え、なにやら奇妙な雰囲気が漂っていた……山の方へ逃げ出した子犬を追いかけた烈が落ちていた奇妙な砂時計を手に取ると、 そのまま魔空空間へと引きずり込まれてしまう!
 冒頭、自殺気味にジープの前に飛び出した母子の正体は、ダブルガール。子犬の方は現地調達な模様。烈が拾った砂時計は、 “赤い生命の砂時計”と呼ばれ、対象を生きたまま永久に魔空空間に閉じこめる事が出来る、魔女キバの罠。
 というわけで、大葉健二アクション祭回、再び。
 或いは、JAC祭。
 今回はちょっと、コメディ色強し。魔空空間に引きずり込まれた直後は状況を理解できていなかったのか、 いつもなら“殴って解決”の烈が、割と逃げ惑ったりします。慣れてくると反撃しますが。
 今回のマクーの出し物は、
海岸で円月刀を振り回すムスリム系の一団の襲撃→ビル街で虚無僧の銃撃→江戸村みたいな所でバイク武者→密室で格闘家とバトル (ブルース・リーの映画的な感じ)→少林寺風→幽霊屋敷→偽・烈→崖からジープ落下→蒸着!
 というラインナップ。
 江戸村でバイク武者、は取り合わせの妙で面白かったですが、全体的にはいまいち。
 どうしても二番煎じ感は否めませんし、小笠原猛(監督)も決して下手では無いですが、前回のアクション祭が名匠・小林義明、 入魂の1作といった、シリーズ全編でも最高クラスのエピソードだったので、比べる形になるのも厳しい。
 プロットが以前のエピソードほぼそのまま、という点も含め……なんかこう、 次期シリーズ立ち上げ中&クライマックス展開前で忙しい大先生にきちっと脚本書いてもらう為に休んでもらって、 その分を1話無理矢理でっちあげたような雰囲気。
 蒸着したギャバンの前に姿を見せるジゴクダブラー。
 他作品あるいは実際の映像フィルムを挟んで、ギャバンに襲い来る、ミサイル・戦闘機・戦車・ 戦国騎馬隊・鉄砲隊
 不覚にも、騎馬隊出てきた時は笑ってしまいました(笑)
 激しい爆発をくぐり抜け、ジゴクダブラーを撃破したギャバンはこの罠を作り出す砂時計をドルで攻撃。 「砂時計を守るんだ!」とサン・ドルバもマクー円盤部隊を出撃させる。
 ダブラーを先に倒した上での二段クライマックス展開なのですが、ドルが砂時計を追いかけるという絵は、いまいち、 盛り上がれませんでした(^^; 微妙に色々、残念回。
 ラスト、男くさい挿入歌をバックに、烈は助けた子犬とスローモーションで砂浜で戯れ、 何故かいきなり海に向けて

 「とうさーーーん」

 と叫ぶ。
 ……確かに、一視聴者として、ボイサーの事を忘れかけていたのは、否定しませんが。
 クライマックス展開に繋げるという意図だったのでしょうが、それならせめて、序盤で烈に父絡みの台詞を言わせておくとか、 魔空空間内でボイサーを思い起こさせるイベントを入れておくとか、そのぐらいの仕込みはしてほしかった所。

◆第42話「烈よ急げ! 父よ」◆
 前回ラストのわかりやすいフリを受け、いよいよ、烈が行方不明の父に迫る!
 そして、
 祝・ミミーさん復活
 やはり、なんだかんだでミミーさんで無ければ締まりません。
 「素晴らしいニュースを持ってきたわ」
 「ほーー、婚約でもしたのかい?」

 はたかれる烈。
 烈は、本気なのか夫婦漫才なのか、さっぱり区別が付かないのが怖い。
 そして、

 祝・ハンターキラー復活

 復活……というか、暗黒銀河を彷徨っていた所を、銀河連邦警察のパトロールに保護(逮捕)されていました。
 「そういえば……ここの所、姿を見かけなかったが」
 烈にとっての、ハンターキラーさんの扱いが軽くて泣けます。
 コム長官の 拷問 尋問を受けたハンターキラーは、ボイサーの行方について「X計画」「剣山」 という言葉を口にする。ミミーさんは「体力の回復を待って尋問」と言っていたけど、全然、体力回復しているように見えないのは、 きっと気のせい。たぶん気のせい。気のせいじゃないかな。コム長官、えげつない。
 出番ここだけでしたが、ハンターキラーさんは、あのままだとあまりにも忍びなかったので、拾ってもらえただけで満足です、ハイ。
 ハンターキラーのもらしたマクーの「X計画」、それは星野スペースカノンを建造し、 地球に居ながら宇宙の他惑星を攻撃するというものであった。
 「バード星とか直接攻撃したいよね」とサン・ドルバのプレゼンを受け、建造を急がせるドン・ホラー。
 しかし、肝心要となるレーザー増幅装置の設計についてボイサーが口を割らない為、建造は難航していた。そう、 かつてマクーに暗殺されて研究を奪われた星野博士に託された秘密を、宇宙刑事ボイサーはその超人的な精神と体力により、守り抜いていたのだ!
 ここで遂に、ボイサー−星野博士−月子、と遠い昔に張った伏線カード発動。さすがに皆覚えてないだろうと思ったのか、 回想シーンが挟まれますが、えらく昔に1回だけ触れたネタなので、それは皆、忘れてますよね……というか正直、 回想で説明されてもいまいちピンと来ないというか、そんな話だったっけ感が強い(笑)
 マクーは結構、現地惑星の科学者とかその技術を活用するので、星野博士の特別さ、というのが薄いのがたぶん原因。 他と比べた場合に、「星野博士の研究は特別凄いんだ!」という差別要素を何とか表現して盛り込んでおけばもう少し印象的になったかもしれませんが ……まあどちらにせよ厳しいか。その辺りの事情のメッセンジャー役でもあった月子を、もう少し活用できていればなぁ。
 それにしても、宇宙的組織の筈のマクーが、征服の終わってない(上にギャバンが居る) 地球にそんな物を敢えて建造する必要があるのかと思ったのですが、きっと、立地条件の問題なのでしょう、と納得してみます。 そして殺した相手の名前を超兵器に刻むマクー、なんか律儀。
 コム長官からの連絡を受け剣山に向かった烈は、突如、人並み外れた跳躍力を誇るもじゃもじゃ頭の青年に襲われる。 彼の名は、伊賀 電。森林パトロールに所属し、ギャバンを最近続発する密漁事件の犯人と勘違いしたのであった。

 ジープの中を調べて誤解に気付いた伊賀は、土 下 座

 更に「思う存分殴ってくれ」と言うが烈に拒否された為、自分で自分を殴って深く反省する
 だから、武力にばかりステータスを割り振ると知力が(以下略)。
 伊賀の獣のような動きに翻弄され、割と攻撃を受けていた烈だがこの姿には毒気を抜かれ、なんとなく友好的なムードに。 山の動物たちが急速に減っているという情報を得て疑いを強め、剣山の探索を続行する。
 一方、折れた木に「どうした……誰にやられたんだ?」などと話しかけながら森をパトロールしていた伊賀は、マクーと遭遇。 構成員相手には互角の勝負を演じるが、バファローダブラー(なぜか背中はカブトムシ)の攻撃を受け、瀕死の重傷を負ってしまう。
 川岸に倒れていた伊賀を発見した烈は、まだ息のある彼を安全な場所へ運ぼうとするが、バファローダブラー以下に襲撃される。 伊賀を肩に担いだままで戦う烈のアクションが格好いいです。そして蒸着。伊賀を安全な所(?)に寝かせ、 ギャバンはバファローダブラーを撃破。その時に起きた爆発で、剣山に隠された秘密基地への入り口を発見する。
 父が居るかもしれない……! という興奮に、伊賀の事を忘れたのか、そのまま穴の中へ突入する烈。基地の中で、 星野スペースカノンの完成予想図と拷問椅子を発見するが、既にサン・ドルバは基地を破棄した後であった。 基地の自爆から辛くも脱出した烈は、マクーを追い詰め父を取り戻す意思を新たにする。
 捨てられたかと思った伊賀は、いつの間にやらドルギランに収容されていた(戦闘中に通信で救助を依頼したと思おう)。 だが彼の全身には特殊な毒が回っており、地球の医療技術では助ける事が出来ない。なんとか助けてやってほしいという烈の言葉を受け、 マリーンは伊賀を一時的に仮死状態にすると、彼を治療するべく、バード星へと飛ぶのであった……。

◆第43話「再会」◆
 シリーズ通して延々やたら長いサブタイトルをつけてきて、クライマックスでこのサブタイトル、見事。
 既に90%まで完成していた星野レーザーカノンであったが、肝心のレーザー増幅システムの設計図について、 囚われのボイサーは口を割らない。キバの調合した強力な自白剤すら通用しない状況に、サン・ドルバは苛立ちを募らせていた。一方、 剣山で父の救出に失敗した烈も、拷問により刻一刻と生命を削り取られているであろうボイサーの事を思い、焦りを隠せない。
 連日、ボイサーを探し続ける烈は、ある海岸で、沖の方から自分に呼びかけるボイサーの声を聞く(テレパシー的な何か)。
 沖合にあったのは、鬼首島。
 レーザーによる探査では怪しい建造物は発見されなかったが、島の周辺がコンクリートの防壁に囲われているのを怪しんだ烈は、 ドルギランで強行着陸。
 烈の予想は当たり、マクーの地上における総本部基地であった鬼首島は、着陸したドルギランに向けて激しく砲撃を開始。
 マリーンとミミーにドルギランを任せて離陸させると、ギャバンはギャビオンで出撃。敵の砲台を撃破すると、 更にスクーパーに乗り換えて基地へ突撃を仕掛ける。
 ……初めてちゃんと、ドルギランとギャビオンとスクーパ−が使い分けられた気がします。
 スクーパーレーザーによって、先週から引っ張っていた星野スペースカノンはあっさり爆発。鬼首島総本部基地も崩壊し、 サン・ドルバはボイサーだけでも魔空城へ連れていこうとするが、ギャバンに阻まれて失敗する。
 そして遂に、父が囚われる牢を発見する烈。
 いつもなら駆けていくギャバンが、牢の中で倒れ伏す父に恐る恐る近づいていき、母と自分の写真入りロケット(オルゴール機能付き)を開く、 というのは名シーン。オルゴールの音色に気付いたボイサーは瀕死といっていい傷ついた体を起こし、牢の扉越しにロケットを握り、息子の手を握る。
 今ここに、父と子、再会――!
 ドルギランに運び込まれたボイサー。
 ミミーさんは早速、未来舅にスープでアピールする。
 そこへ烈が連れてきた月子が登場し、再会を喜ぶ二人。ボイサーは、実はレーザー増幅システムの設計図は自分の頭の中には無い、 それがマクーの拷問に最後まで耐えられた理由だ、と謎めいた事を言うが、それ以上の言葉を続ける前に激しく咳き込み、 烈によってベッドへと運ばれる。
 「ギャバン、元気になったら……」
 釣りでも行こう、とか何かほのぼのとした親子の会話をするのかと思ったら、

 「一緒に戦おうな……マクーと」

 マクーは自分が片付けるから養生してくれという烈に
 「儂もやるぞぉ」

 怖い、怖すぎるよ、宇宙刑事

 写真入りのロケットを見つめながら、烈が6歳の時に死んだ妻・民子に(回想シーンから鑑みるに、妻の死にともなって、 宇宙刑事をしながら子育てをするのを無理だと判断したボイサーが、烈をバード星へ送ったのか? ボイサーの語り口が、 烈は母がいつ死んだのか知らない風に取れなくもない感じなのですが、それはさすがに無理が出る気がするし)、 成長した烈の姿を見せてやりたかった、と呟くボイサー。
 烈もしばし母との日々を思い出し――
 そして、ボイサーの手からロケットが滑り落ちる……。

 宇宙刑事ボイサー、息子との再会を果たし、ここに死す。

 力尽きたボイサーの手の平に、レーザー増幅システムの設計図が浮かび上がる。彼は星野博士から託された秘密を特殊な方法で己の体に刻み込み、 命ある限り(体温がある限り)、表に出ないように隠していたのだった。
 「それが宇宙刑事さ……筋金入りのな」
 再会は果たしたものの、父は宇宙刑事としての正義と使命に殉じ、力尽きた。だが、父も母も自分の胸の中に生きている。 烈は立ち上がる。そして戦う。銀河の平和の為に――宇宙刑事として。蒸着せよ、ギャバン!
 今回特筆すべきは、基地への突入シーンで蒸着こそあるものの、戦闘シーン無し、という事。 特別出演の千葉真一演ずるボイサーとのドラマパートに時間を思いっきり割くという大胆な構成でしたが、溜めに溜めただけに、 いい父と子のシーンとなりました。
 次回、いよいよ最終決戦。

◆第44話「ドンホラーの首」◆
 富士山の裾野(多分、火力演習場)に、父と母の墓を作った烈はその墓前で改めてマクーの打倒を誓う。帰り道に捨て犬を拾い、 アバロン乗馬クラブへと向かうと、クラブには人影がなく、サン・ドルバからの挑戦状が。
 犬拾うの、何回目だ。
 そしてどうやら、拾う度に乗馬クラブへ押しつけていたらしい事も発覚。 それは会長の口からもとうとう「クビ」宣言が出るわけで。
 人質にされた乗馬クラブの面々(&月子&小次郎)を救うべく、罠とわかって敢えて乗り込む烈。
 ここは本当は、「何故今までやらなかったのか」という事になってしまうので、乗馬クラブ関係者は、人質にしてはいけない。まあ、 めいっぱい好意的に、マクーがそれだけ追い詰められている、と解釈してもいいですが。そうすると今度は、 一条寺烈という正体がばれているのにも関わらず、人質に取られるリスクを無視して乗馬クラブで働き続けているギャバンがどうなのか、 という話になってしまうので、やはり禁じ手。
 構成上の理由としては、セミレギュラーの面々に最後の出番、という事になるのでしょうが、それをするなら、 烈の正体バレをしても良かったのでは、と思います。
 スタッフもその展開は考えたのでは、と思うのですけど、なんか色々あったのか無かったのか。 なんにしろ「乗馬クラブ関係者を人質」は禁じ手なので、禁じ手を使うだけの展開、までは気を遣って欲しかった所。……最終回だから、 に集約されてしまうのでしょうが。
 ここで、走るサイバリオンに乗ったままのギャバンの立ち回りはこれまでに無いアクションで、格好良い。
 人質を取り返され、撤収するサン・ドルバ。前回の「X計画」の完全失敗に引き続き、人質作戦まで無様に失敗、 とうとうドン・ホラーから、

 勘当される。

 魔空城を追い出されるサン・ドルバ(2回目)、キバに先行きの見当を聞かれ、
 「銀河中を暴れ回ってやる」
 対してキバ、
 「みんながおまえをチヤホヤしたのは、おまえがドン・ホラーの息子だったからじゃ! おまえが勘当されたとなれば、 誰も相手にしてくれまい

 言 っ ち ゃ っ た

 視聴者目線でダメなだけかと思っていたら、宇宙的にもやっぱりダメだった……!(笑)
 初登場回Aパートにおけるギャバンとの戦闘を頂点に、以降、ひたすら坂を転げ落ちてきたサン・ドルバの評価ですが、 とうとう身内からも駄目出しが入りました。
 やはりマクー最大の失敗は、昼間から女を侍らせて酒かっくらっているリアル駄目人間 を現場指揮官に据えて、ハンターキラーを左遷した事だと思います。ハンターキラーをあのまま使っていれば、 あと2クールぐらいは戦えた。
 多分、一番いい組み合わせは、ハンターキラー&キバ、ですが。
 どこまでも息子に過保護な魔女キバは、サン・ドルバにこの状況をひっくり返す策を授ける。
 それは、富士山麓に停泊中のドルギランに魔空城を突撃させ、ギャバンとドン・ホラーを相討ちさせよう、という恐ろしい作戦であった!
 憎きギャバンを仕留めるとともに、マクー総帥の座が転がり込んでくる可能性を目の前にして、サン・ドルバは父への裏切りを決意。
 「ラストチャンス、ラストチャンスを下さい、父上」

 土 下 座

 この作戦を表向きは了承したドン・ホラーであったが、キバとサン・ドルバの魂胆は見抜いていた。 ドルギランに奇襲をかけた所で逃げ出そうとした二人を光線で捕らえ、ギャバンを倒す以外に生き残る道はない、と出撃させる。
 遂に、ギャバンvsサン・ドルバ、最後の決戦。頭と生活態度はアレですが戦闘能力は高いサン・ドルバと、 魔女キバの繰り出す幻術との連係攻撃に苦戦を強いられるギャバン。火花をあげて切り裂かれるコンバットスーツ、 サン・ドルバの槍がギャバンを貫こうと迫るその時、一条の閃光が地上に舞い降りて、ギャバンの危機を救う!
 「宇宙刑事、シャリバン!」
 戦いの流れを取り戻したギャバンは、一気に反撃。ギャバン・ダイナミックが炸裂し、サン・ドルバ&魔女キバ、壮絶に爆死。
 余勢を駆って魔空城へ乗り込んだギャバンは、遂にドン・ホラーと直接対決。宇宙的犯罪結社の首領だけあって、 最後は堂々と部下を退がらせて一騎打ちに応えるドン・ホラーですが、動くのがタイツの両腕だけなので、いまいち、盛り上がりません。 ドン・ホラーの念力攻撃をかいくぐり、その体を貫くレーザーブレード。すると、ドン・ホラーの首が分離して浮き上がり、 文字通りの最後の戦い。こちらはそれなりに盛り上がって、必殺のギャバン・ダイナミックがドン・ホラーを砕く!
 ドン・ホラーの死とともに、生き残りの構成員もろとも崩壊する魔空城。
 ……こうして、 悪魔のような銀河最強の戦鬼 正義の心を持った銀河の守護者・宇宙刑事の 虐殺 活躍により、マクーは滅び去ったのであった。
 地上に戻ってきたギャバンを迎える、ミミー、マリーン、そしてコム長官と一人の青年。
 彼こそが、宇宙刑事シャリバン。その正体は、烈に救われ瀕死状態でバード星へと運ばれていた森林パトロールの青年・伊賀電であった!
 おおかた、運び込まれたバード星で
 「このまま死にますか?」
 「宇宙刑事になりますか?」
 という書類にサインを求められたに違いありません。
 或いは、仮死状態のままバード星で手術を受けて、本人も知らない間に、 「助けるにはこの方法しかない」 と生体改造された上で、目覚めたら「手術費用がこれだけかかったから」と莫大な医療報酬を請求されて、 借金漬けで銀河連邦警察の飼い犬になった、か。もしかたら、 ハンターキラーさんもそんな悲しい過去を引きずった上で銀河連邦警察を裏切ったのかもしれない。
 シャリバン/伊賀電は、新しく地球地区に赴任。これまで地球地区を担当してギャバンは、銀河パトロールの隊長に昇進するのであった。 「隊長」と呼ばれて挙動不審になり、「貴方のことよ」とミミーさんに言われて表情が微妙にひきつっていたのは、ここにきてとうとう、
 あれ? これってもしかして、コネ出世……?
 と烈も気付いたからに違いない。
 銀河連邦警察に所属する限り、尻の下に敷かれる人生が決定です。
 ミミーさんの里帰り中に、何か諦めたのか割り切って開き直ったのか、未来婿を自分の後継者とするべく着々と足場を固める事にしたっぽいコム長官は、 若者達の肩を抱いて笑う。
 「見ろよ、あの美しい富士を」
 何故か、宇宙的に考えると物凄いローカルな台詞で、コム長官が最後の台詞を持っていった!(除くナレーション)
 ――かくて、地球を巡るマクーの野望は潰えた。
 後任のシャリバンに地球を託し、ギャバンはより広大な、新たな戦いの場へと向かう。

 若さってなんだ 振り向かないことさ

 愛ってなんだ 躊躇わないことさ

 (最大の敵はもしかしたら身内に居るかもしれないが) 蒸着せよ、ギャバン!!

−完−


☆総括☆

 大葉健二バンザイ

 一言で集約すると、それに尽きます。
 作品の魅力の9割が、生身アクション及び蒸着後のアクションに集約される今作、やりきったスタッフと役者陣に拍手。
 さすがに週2ペースで一気に見ていると魔空空間バトルには少し飽きもくるのですが、それでも、手を変え品を変え、 遊び心と気合いの入った各種演出の溢れるパワーには感心させられます。そして、 週2ペースで見ていても全く飽きの来ない一条寺烈の生身アクションは、とにかく素晴らしいの一言。
 走り、叫び、転がり、飛び、後半ではよく、一人でもがく(笑)
 めいっぱい、楽しませてもらいました。
 一条寺烈ベストアクションは、なんといっても、ジープに上から乗る
 文字にすると何だかよくわかりませんが、ドアを開けて乗り込む(普通)のではなく、何故か転がりながら、 オープンになっている天井から乗り込む。ギャバンアクションの最高傑作だと思います(笑)

 シナリオに関しては、書いてなんぼの時代でも、その最右翼といえる上原正三大先生がメインライター(44話中37話) を務めているという事で、1話1話のエピソードは何だかなーという話は多いのですが、それでも後半は、 それほど大規模な時空間超越移動とかしないのは大先生なりに少し軌道修正があったのか。1話とか、勢い任せもいい所で、滅茶苦茶だったんですけど。
 今作、評価したいのは基本コンセプトが上手く出来ているところ。特に、敵対組織であるマクーの設定は非常に秀逸。
 「人類抹殺」や「単純な世界征服」ではなく、「地球の富を奪い、更には悪徳の栄える惑星とする事」。 これにより、大規模な破壊作戦や大量虐殺計画を行う必要性が無く、また組織の規模の割には細かすぎる作戦にも、 一応の説得力を持たせる事に成功しました。70年代的〜80年代的なるものの過渡期にあった悪の組織の設定としては、非常に優れています。
 途中で何度か、派手な作戦(及び派手な作戦に繋がりそうな策謀)を行って若干コンセプトからぶれますが、そのぐらいは、 特撮ヒーロー物の年間構成では許容範囲。
 また、頭脳労働はバード星に丸投げするというのも、地味に秀逸。情報の分析を基本的にコム長官&マリーンに任せる事で、 シナリオが非常にすっきりしました。お陰でミミーさんが役に立たなくなりましたが(笑) あと、 たまにギャバンが自力で情報収集する必要が出ると、「坂田くんはドリームバードの一員じゃないですか?」みたいに、 無駄に直球で困った事になりますが。その辺りも含めて、余計な頭脳労働をさせない事で烈のキャラクターを崩さず、 作中のアクション比率を高め、なおかつ一段上の立ち位置にあるバード星からの情報は正しい、 という劇中におけるポジショニングを確立させる事で視聴者も必要以上に悩まなくて済む、というこれは実によく出来た構造。
 難を言えば、シナリオ内の役割分担を明確に区分しすぎた影響もあり、一条寺烈、以外のキャラがどうしても描写不足になってしまった事。 アクション大重視という基本線を守り抜いた(そしてそれが作品最大の魅力である)事から仕方のない部分もあるのですが、 もう少しキャラクター同士の横の繋がりが描かれていればより面白くなったかもしれない、とは思わずにはいられません。それを、 ある程度補ってしまう程には、一条寺烈/宇宙刑事ギャバン、というキャラクターが魅力的ではあるのですが。

 全体の構成としては、いわゆるテコ入れ展開が、2回。
 13・14話のダブルモンスター登場編と、30話のサン・ドルバ登場編。
 それまで無双すぎたギャバンが、ダブルモンスター登場以後は、戦闘で少し苦戦するようになったというのは、 作品通していい構成になりました。シナリオ的にも、ダブルマン&モンスターの二重構造より、実際、すっきりしましたし。まあ、 ダブルマンのデザインが映えない、というのと、序盤は見ていても位置づけがわからない、とか諸処の理由もありますが。最初にもう少し、 ダブルマンとは何か、というのをわかりやすく呈示しておけば印象がまた変わったかもしれません。
 後半の問題児、サン・ドルバは、最初から駄目人間の予定だったのか、 新キャラを強調して演出していたらやりすぎてしまって駄目人間として始末するしかなくなった、のかは気になる所(笑)  まさか劇中でもはっきりと、駄目人間扱いされるとは思いもよりませんでした。結果的には、魔女キバが映えたので、 むしろ魔女キバの存在が幹部テコ入れだった、という事になりましたが。
 ハンターキラー好きだったので、サン・ドルバは一生許さない(笑)
 もう少し対立構造をあおった方が盛り上がったのでは、というのは、後続の作品を見ているから思う事ではありましょうが、 ハンターキラーとサン・ドルバ&魔女キバの対立構造をあおりつつ、サン・ドルバの胸へ芽生える父への叛心みたいな物を丁寧に描ければ、 終盤もっと格好良くなったかも……とは思わなくもありません。あまりギャバンから焦点を外してしまうと、 作品の長所が減じてしまうので、結果的には良くないかもしれませんが(^^;
 この辺りは、構成上の考慮点、という形で後の様々な作品に活かされていく部分となるのでしょう。
 上原正三については、色々と批判的な事を書いていますが、偉大な人物だと思っています。 70年代〜80年代の特撮ヒーローを語る上で決して欠かせない脚本家ですし、偉大だと思っているからこそ、 ツッコミも好き放題に書けるというか。良い意味でも悪い意味でも、大先生の系譜に連なる脚本家(曽田博久、高久進、杉村升など)で、 大先生ほど突き抜けた存在は居ないので。今更ですが、屈折した敬意だと思っていただければ幸いです。時代性を踏まえた上でも、 シナリオ展開粗いのは事実ですし(笑)
 しかし、サン・ドルバは最終的に、父を罠にかけようとした理由も駄目人間だからに集約されてしまったのはさすがに(笑)
 ネタ幹部としては、ネタ道を走りきりましたが。
 全話完結した所で何より惜しかったのは、やはり11話「父は生きているのか?謎のSOS信号」。
 この回で初登場する月子がそのままセミレギュラーとなり、エピソード自体がクライマックスに繋がるなど考えても、 この回が超ぐだぐだ回だったのは、実に勿体ない。
 伏線自体は、拾うかどうかも別に見切りで引いている所はあったかと思いますが、 月子をここでしっかり書いておけばその後のエピソードも色々な所で見方が変わってきたと思うので、 実はこの回が(結果的に)超重要エピソードだったと思うのですが、魔空空間的演出はさておくとしても、脚本が酷すぎた(^^;  前話の次回予告が凄く盛り上げていたので、一応、重要エピソードのつもりはあったみたいなのになぁ……。
 それでも、43話「再会」を盛り上げた、大葉健二&千葉真一の熱演は素晴らしいの一言。

☆好きなエピソード・ベスト3
  1. 第15話「幻?影? 魔空都市」
  2. 第43話「再会」
  3. 第14話「愛と悲しみの別れ とどめの一撃!!」

 演出の鬼・小林義明、入魂の15話は潔くストーリーを斬り捨て、全編ノンストップアクション祭で怒濤の如く最後まで展開した傑作回。 これぞ『宇宙刑事ギャバン』という1本。素晴らしい出来でした。
 43話はドラマ的集大成のエピソード。父と子、二人の宇宙刑事が遂に出会い、アクション重視だった今作が、 それを削ってまで二人のドラマに焦点を絞った名作。この回で巧かったのはドラマ部分に時間を取った事により、 ボイサーが「死ぬ」のか「助かる」のかを絶妙なラインで引っ張って、見る側の気持ちを揺れさせ、感情移入の気持ちを強くさせた事。 千葉真一の存在感あっての技でもありましたが、見事。正直盛り上がりすぎて、直後の最終回が若干おまけっぽくなってしまいました。
 14話は、ダブルモンスター登場の後編。ドラマとアクションのバランスの取れた回となり、潮健児の怪演も光りました。
 番外として、第21話「踊ってチクリ大ピンチ ハニー作戦よ!」。女王・曽我町子の降臨により、全編通して唯一、 大葉健二が“食われた”回。凄かった。卑怯だけど。凄かった。

☆好きなサブタイトル・ベスト3
  1. 第39話「学校から帰ったらぼくの家はマクー基地」
  2. 第3話「大変だ!黒星博士のベム計画を阻止せよ」
  3. 第7話「怪物がひそむ花びらに少女は口づけした」

 39話の、タイトル聞くだけでとても嫌な感じ、は絶品(笑)
 7話はサブタイトル詐欺の名作(笑)
 ギャバンはとにかく、予告詐欺が多い。
 番外として、43話「再会」。そこまでの長さを踏まえて、の名サブタイトルなので。
 ちなみに、全44話と中途半端な話数の今作ですが、放映期間そのものは3/5〜2/25なので、特番なりで何話か潰れた模様。 この頃はまだゴールデンタイム(金曜19:30〜20:00)にやっていたので、そういう事もありました。

☆好きな台詞・ベスト3
  1. 「(ギャバンを)社会的に抹殺してやろうと思います」(第8話/ハンターキラー)
  2. 「それが宇宙刑事さ……筋金入りのな」(第43話/ギャバン)
  3. 「みんながおまえをチヤホヤしたのは、おまえがドン・ホラーの息子だったからじゃ! おまえが勘当されたとなれば、 誰も相手にしてくれまい」(第44話/魔女キバ)

 社会的抹殺宣言は、大先生の味が最高に炸裂した一言だと思います(笑)
 43話は、マクーの拷問に耐えたボイサーについて。44話は、最終回にして衝撃の身内からのダメ出し。
 あと、台詞では無いですが、秘密結社“アルファ”(マクーの隠れ蓑)が日本政府に出した要求 「富士山をアルファの所有物にしろ」(2話)も、突き抜けていて、振り返ると好き。劇中で見ると反応に困りますが。
 おまけで、会話ならやはり、17話のこれ。

マリーン「ギャバンね、ミミーは恋をしたのよ」
ギャバン「ええ?! 恋!」
マリーン「春の目覚め」
ギャバン「なぁんだ、そういうわけだったのかぁ……(ぽむ!)……長官、ひとおもいに結婚させちゃいますか!」
コム「おいおいギャバン、いくらなんでもそいつは乱暴すぎるよ」
ギャバン「じゃあ、別れさせるんですね」
コム「待て待て。それじゃミミーが可哀想じゃないか」
ギャバン「じゃあ、どうするんですか?!」

 傑作(笑)
 −−−−−
 配信による約半年、楽しませていただきました。
 率直な所、各エピソードの出来、という点においては楽しめたかどうかの平均値を出したらそれほど高くないとは思うのですが、 全てを帳消しにする充実のアクション、それだけで満足感を得られるパワーに乾杯。そして43話であのドラマを見せられては、 総合評価としては文句が出ません。快作でありました。
 改めて、2011年にこの作品を堪能させてくれた「東映特撮 YouTube Officia」に感謝。
 〔東映特撮 YouTube Officia〕
 また、毎週感想執筆中に、色々とコメントを下さったBeniさん、ありがとうございました。貴方のツッコミがなければ、 ずっと「スパイラル・キック」→「ファイナルキック」と思いこんだままだったと思います(笑)





●おまけ:『宇宙刑事シャイダー』<劇場版>ちょっぴり感想●
シャイダーに決闘を申し込む、銀河の賞金稼ぎ、流れのガンマン、オメガ。
「俺はギャバンに負けた……」



「その時はこのショットガンが無かった」

「おまけにシャリバンにまで負けた」



「その時はこのロケット弾を装備していなかった」

……

駄目だこの負け犬

映画の出来は、特に書くこともないレベル、という事で。

(2012年1月7日)


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