ブログ「ものかきの繰り言」の方に連載していた 『特捜エクシードラフト』感想の、総括&構成分析。
- ☆総括☆
光の戦士きたぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!
……しつこくて、すみません。
いやだって、最後にまさか光の戦士が持って行くとは、さすがに思わず。スタッフの中では熱いネタだったのか、光の戦士。
最終盤のトンデモ展開(神と悪魔の戦い)が取り沙汰される事が多い本作ですが、実際通して見ると、 序盤から超能力の実在が明言されていたり(ラスト寸前のエピソードにもその設定は用いられる)、 途中で宇宙人が出てきてみな平然とそれを受け入れたり、 全編通してトンデモの種はばらまかれています。
ラストエピソード(ないし連作としての<炎の黙示録>編)の問題は、展開が無茶苦茶、というよりも、 単純に面白くない事。
脚本の構成は非常に雑ですし、演出的にも見るべきところは特にありません。
単独のエピソードとしても粗いし、特に、物語が全く、『エクシードラフト』という作品の集大成になっていない。
これが最大の問題。
今作においてはむしろこのトンデモな展開に眩惑される事なく、着地点の質の低さ、という点こそ語られるべきでありましょう。また、 今作の着地ミスというのはひいては、3年続いた《レスキューポリス》シリーズの着地ミスともいえ、 この点に関してはシリーズ3作に関わって多くの名作(&珍作)を生んだ扇澤延男脚本の第46話において、 はっきりと、“レスキューポリスの限界”として描かれる事になりました。
「俺には、最後まで、あの子の心を救えなかった……」
それを描く事が作品として果たして正しかったのかはさておき、特撮刑事ドラマの志向したリアリティが特に物語の結末を縛り、 狭めていき、結果的に作品に限界をもたらしてしまったのは確かといえるでしょう。
どだいリアルにやりすぎるとどうにもならない部分を、「ヒーロー」で突破する所 にこそ魅力があったかと思うのですが、“どうにもならない部分”のウェイトがシリーズを通して徐々に重くなりすぎた結果、 作り手が「ヒーロー」を見失ってしまったというのが、大きな要因かとは思われます。
本来、刑事ドラマに力点を置きすぎて迷走した前作『特救指令ソルブレイン』に対して、ヒーロー性を見つめ直して取り戻そう、 というのが今作の初期方針だったかと思うのですが、最終的にそこを突破しきれなかったのは、テーマの難しさ故か。 この辺りの点はまた詳しく、《レスキューポリス》シリーズ総括、としてまとめたいと思います。
最終的な着地ミスとは別に、前作・前々作を踏まえてという部分においては、前半は割とうまく転がせていたのは、今作の長所。 特に、継続的な敵組織が不在という事でどうしても唐突になりがちなパワーアップに関しては、 シリーズ3作の中では最も巧く挟みこんだと言えます。……まあそれも後半、トライジャケットの頃にはぞんざいになってしまうのですが(^^;
ただ、シンクレッダーは格好いい!
非常に格好いい。
本文でも書きましたが、トタン顔で線の細いレッダーがシールドつけてバランスが良くなり、 その上で正統派デザインのシンクレッダーにパワーアップする、というデザインの流れも非常に良かったです。
ヘビーサイクロン及びサイクロンノバは、やっぱりオーバーキル兵器になってしまいましたが。
玩具展開の関係で仕方ないとはいえるのですが、前作・前々作を踏まえて改善するどころか、 完全に同じ魔道に踏み込んでしまったのは非常に残念。
やはり、レスキュー、という要素で売っていくのは辛かったのでしょうか?
個人的にはオリジナリティとして、また、演出次第では充分に燃え展開となる要素として、バトルよりもレスキューを推してほしかったのですが、 レスキュー要素はシリーズ通してどんどんおざなりに。一応出したレスキュー用新ツールも、さして活躍しないまま終わってしまいました。 この辺りは、脚本陣が小道具を使う事よりもドラマにこだわりすぎてしまった、というのはあるかと思いますが。 うまく小道具とドラマを絡めた脚本には、もう少し挑戦してほしかった所です。
もう一つ、前作・前々作を踏まえた上での大きな特徴は、ロボット刑事を完全に廃して、人間3人のパーティとした事。 合わせて個人エピソード回を明確な形で展開し、構造としては戦隊寄りとなりました。特に前作が、 キャラクターの連続性があまりに蔑ろな作品だったので、これも良い改善だったとは思います。
それもあって世界観をリセットしたっぽいのに、最後に某本部長が出てきてよくわからなくなってしまいましたが(^^;
良し悪しとしては、その流れで見た目人間と区別つかない高性能サイボーグがはびこりすぎる事になり、 幾つかのシナリオで都合良く使われすぎた事ですが(この辺り、サイボーグが多発したのは、人間は殺しにくいけど、 ロボットという設定にすれば壊したりしやすい、という制作サイドの事情も多少影響あった模様)。
ロボット刑事が居なくなった事によりメカニック要員も役目を失い、代わりに女刑事+オペレーター要員が参加。また、 本部長も押し出しの強かった正木から、いっけん頼りなさそうな好々爺タイプに。特に本部長のイメージチェンジは面白かったのですが、 こちらも徐々に、それほどの特色が無くなってしまって残念でした。
変身メンバーは3人ではあるものの、隊員3人は同列ではなく、叶隼人隊長を頂点として、三角形を形成。
超人の隊長を大好きな部下二人
という構図は最後まで貫かれ、これは作品の特色となりました。 隊長は超人系かつ熱血、そしてどんな相手にも真正面から説教するというのが非常に格好良かったです。 これも前作の反省を踏まえただろう上で、なかなかいいヒーローになりました。
後また踏まえた上で巧く行かなかった点としては、継続的なエピソードの盛り込み。
序盤に<赤いスペード>、中盤に宇宙人、そして終盤に<炎の黙示録>編、と前後編でも解決せずに間を置いて再登場、 という要素を幾つか盛り込みましたが、どういうわけか、引いた次に出てきたらなんか勢いで片付いてしまう といった使用法の為、盛り上がるどころか非常に中途半端になってしましました。
やるのなら、もう少し長期的な視点で行ってほしかったところです。
この反省を更に踏まえて展開したのが、次作『特捜ロボ・ジャンパーソン』における、3大悪の組織ローテーション制、 なのかもしれませんが。
全体通して、前作を踏まえた改善点が前半は巧く転がっていたけど中盤以降おざなりになっていき、最終的に再び袋小路にはまった、 突き抜けようとしたけど巧く行かなかった、と言えるかと思います。
好きなエピソードは、なんといっても
第9話「危険な家族ごっこ」
第23話「死をよぶ愛の説得」
両方とも、扇澤延男のテクニックが唸る、傑作回。
この2本が抜けています。
究極的には、この2本見られただけでも面白かった、レベル。
改めて、扇澤延男は凄い。
「ヒーロー性とは何か?」という今シリーズの陥った迷走は次作『ジャンパーソン』において思わぬ形ではじけ飛ぶ事になりますが、 ヒーロー性の回帰という点で健闘した叶隼人はかなり好きでした。ラスト3話の話の出来がもう少しまともなら、 また作品全体の印象も変わったかと思うのですが、この際だから隊長無双になるわけでも、物語的集大成になるわけでもなく、 非常に中途半端かつ面白くなく訴えるテーマ性すら無い、という無残な形になったのは非常に残念です。
平均レベルは悪くなかっただけに、中盤以降に自壊気味になっていってしまったのが、なんとも惜しい。
それが、“レスキューポリスの限界”だったのでしょうが……というわけで今作を語りきるにはどうしても、 シリーズ3部作の総括が必要かと思うので、改めて3部作の総括を、別項で行いたいと思います。
後半の失速はあったものの『特警ウインスペクター』は非常に思い入れ深いので、その面からも、 シリーズを語り尽くしたい。
そんなわけで、やや中途半端な感も我ながらありますが、『エクシードラフト』総括でした。
- ★構成分析★
- 〔評〕は、大雑把な各エピソードの評価。◎……名作、○……それなりに面白かった、−……普通、×……駄目回。
ただし、どこに基準を置くか、を考えるとややこしくなるので、相対的というよりは印象評価だと思ってください。記憶と感想を 読み返してのものなので、微妙にリアルタイムで見た時と、違っている所もあるかもしれません。
話数 監督 脚本 メインキャラ 犯罪者など 評 1 三ツ村鐵治 宮下隼一 ―― 〔氷室三兄弟、人工衛星用バリア発生装置〕 − 2 三ツ村鐵治 宮下隼一 ―― 〔未来燃料RS−14、無重力砲〕 − 3 小西通雄 宮下隼一 ―― 〔高性能ヒューマノイド〕 − 4 小西通雄 宮下隼一 ―― 〔超能力少女〕 − 5 新井清 鷺山京子 ―― 〔人工衛星シーガル、誘導ロケット弾〕 − 6 新井清 山田隆司 ―― 〔国際テロ組織「砂漠の狼」〕 − 7 三ツ村鐵治 宮下隼一 隼人 〔赤いスペード、クローン人間〕 × 8 三ツ村鐵治 宮下隼一 隼人 〔〃〕 × 9 箕輪雅夫 扇澤延男 ―― 〔家政婦ロボット・キーパー〕 ◎ 10 箕輪雅夫 酒井直行 隼人 〔夢の世界〕 ○ 11 小西通雄 宮下隼一 ―― 〔ポセイドン〕 − 12 小西通雄 宮下隼一 ―― 〔〃〕 ○ 13 三ツ村鐵治 増田貴彦 拳 〔暗黒格闘技大会〕 − 14 三ツ村鐵治 酒井直行 耕作 〔麻薬密輸組織〕 − 15 簑輪雅夫 扇澤延男 ―― 〔武器密売グループ〕 × 16 簑輪雅夫 山田隆司 愛 〔宇宙用ロボット・デューク〕 ○ 17 小西通雄 鷺山京子 ―― 〔細菌兵器P−6〕 − 18 小西通雄 中野睦 ―― 〔心理透視機〕 × 19 三ツ村鐵治 宮下隼一 ―― 〔宇宙人〕 − 20 三ツ村鐵治 宮下隼一 ―― 〔〃〕 − 21 簑輪雅夫 宮下隼一/細野辰興 隼人 〔犯罪組織IASCO、1×1〕 − 22 簑輪雅夫 宮下隼一/細野辰興 隼人 〔犯罪組織IASCO、1×1〕 − 23 小西通雄 扇澤延男 耕作 〔悪徳警官〕 ◎ 24 小西通雄 中野睦 拳 〔情報攪乱カー〕 − 25 三ツ村鐵治 宮下隼一 ―― 〔偽警官、高性能ホログラム〕 × 26 三ツ村鐵治 宮下隼一 ―― 〔毒ガス発生装置〕 × 27 簑輪雅夫 酒井直行 拳 〔戦闘用サイボーグ〕 × 28 小西通雄 宮下隼一 光の戦士 〔宇宙人〕 − 29 小西通雄 宮下隼一 光の戦士 〔宇宙人、生体コンピューターウィルス〕 − 30 三ツ村鐵治 増田貴彦 耕作 〔武装マフィア〕 ○ 31 三ツ村鐵治 酒井直行 ―― 〔タイムマシン、光線銃〕 − 32 簑輪雅夫 扇澤延男 耕作 〔原子力装甲車〕 − 33 簑輪雅夫 宮下隼一 ―― 〔湯田、暗殺ロボット軍団〕 − 34 簑輪雅夫 宮下隼一 ―― 〔湯田〕 − 35 小西通雄 扇澤延男 拳 〔重力発生装置〕 × 36 小西通雄 酒井直行 隼人 〔カオス、記憶上書き装置〕 − 37 三ツ村鐵治 中野睦 ―― 〔ブラック・ウェンズデー〕 − 38 三ツ村鐵治 宮下隼一/鈴木康之 ―― 〔不発弾〕 × 39 簑輪雅夫 鷺山京子 耕作 〔ハイレーザー銃〕 − 40 簑輪雅夫 宮下隼一 隼人 〔国際的犯罪グループ〕 − 41 石田秀範 扇澤延男 拳 〔死の商人グループ〕 ○ 42 石田秀範 酒井直行 耕作 〔覚醒剤密輸グループ、チャイニーズマフィア〕 × 43 小西通雄 宮下隼一 隼人 〔レッドサンターズ〕 × 44 小西通雄 宮下隼一 隼人×光の戦士 〔レッドサンターズ、ブラックサンターズ〕 − 45 三ツ村鐵治 増田貴彦 耕作 〔スナイパーロボ〕 × 46 三ツ村鐵治 扇澤延男 隼人 〔超能力の魔獣〕 ○ 47 簑輪雅夫 宮下隼一/鈴木康之 ―― 〔神と悪魔がハルマゲドン〕 × 48 簑輪雅夫 宮下隼一/鈴木康之 ―― 〔〃〕 × 49 簑輪雅夫 宮下隼一/鈴木康之 ―― 〔〃〕 ×
(演出担当/三ツ村鐵治:16本 簑輪雅夫:15本 小西通雄:14本 新井清:2本 石田秀範:2本)
(脚本担当/宮下隼一:25本 扇澤延男:7本 酒井直行:6本 鷺山京子:3本 中野睦:3本 増田貴彦:3本 山田隆司:2本 〔鈴木康之:4本 細野辰興:2本〕※ともに宮下隼一との連名)
前半の出来は平均的に良いのですが、今作のシナリオはとにかく、プロットは悪くないのだけどど肝心な所が抜けている といったものが多く、プラスマイナスすると、差し引きで、「○」はつけにくいなぁ、という感じに。
そんな中で○・◎をつけたエピソードとしては、扇澤脚本の傑作第9話、夢の世界に閉じこもる少年に隊長が説教する第10話、 パワーアップ展開としてはまとまりの良い第12話、裏も含めて色々と突き抜け具合をプラスに評価したい第16話、 本当の意味で心を救う事を問う傑作第23話、途中ぐだぐだなのですがオチが非常に良かったので甘めに第30話、 拳の二役で出来の良いスラップスティックコメディとなった第41話、レスキューポリスの限界を書いてしまった第46話、 といったところ。
10話を見た時は、酒井直行は期待できるのでは、と思ったのですが、その後はどうも期待外れに。
メイン回(隊長は、そうとうクローズアップされた回のみチョイス)の配分は、
〔隼人:10 耕作:7 拳:5 光の戦士:3 愛:1〕
隊長は別格として、見ている時の印象通り、耕作の方がメイン回が少し多いのは、背景がある分、話を作りやすかったからか。 土壇場で、亡き父がらみのエピソードを貰っている辺りは、おいしい(話の出来は悪かったですが)。
上でも書きましたが、前作がすかすかだったのを反省してか、キャラクターの連続性はかなり意識されており、 耕作の親のエピソードが何度か用いられる他、隼人も拳も共に、過去(エクシードラフト以前)にまつわるキャラクターとの絡みがありました。
愛のエピソードも前職がらみですし、回想シーンでキャラクターを造形してしまうのはやりすぎると安易ではあるものの、 意識的にキャラクターの過去を造ったというのは、反省を踏まえたという点で評価されて良いかと思います。
……てやっぱりどうしても、反省を踏まえた、が今作を評価する基準点になってしまうわけなのですが、 いやまあもう、仕方が無い(^^;
で、改めて考えるとラスト3話の出来が悪いのは、前作から鉄板で駄目な組み合わせの連名脚本というのを見るに、 宮下隼一は既に次作の立ち上げでそれどころではなく、駄目な脚本家の脚本にちょちょっと手を加えただけなのでは、 という気がしないでもない。
結果としてあんな事になったのと、その状況を見て、扇澤延男が46話に実質的最終回を持ってきたのかも、 とか思うと、色々と納得はいってしまいます。
終盤の失速、という点でも『特警ウインスペクター2』になってしまったきらいはありますが、この辺りに関しては、 《レスキューポリス》シリーズ総括の形で考察したい。
なんかこう色々と、まとめればまとめるほど、どうして踏まえた反省点を最後まで生かし切れなかったのかと、 もどかしい作品です(^^;
魂の兄弟達よ、いつかまた!
(2013年8月18日)
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