■『特捜エクシードラフト』感想まとめ8■


“あとにつづくぜレッダー
ゆだんをするなブルース
そいつはまかせろキース”


 ブログ「ものかきの繰り言」の方に連載していた『特捜エクシードラフト』 感想の、まとめ8(36〜40話)です。文体の統一や、誤字脱字の修正など、若干の改稿をしています。

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◆第36話「隊長が裏切った!?」◆ (監督:小西通雄 脚本:酒井直行)
 パトロール中の隊長、道に倒れた男を轢きそうになる。
 ……事故、あくまで事故ですよ、事故。急に倒れてきたのは相手の方です。
 慌てて車を降りた隊長は、倒れた男から催涙ガスを吹きかけられて昏倒……それは隊長を捕らえる為の罠だったのだ。意識を失い、 次に目を覚ました時、隼人は奇妙な装置を頭にかぶせられた状態で、椅子に縛り付けられていた。
 「お目覚めでございますか、ナンバー2。先ほどのご無礼、お許し下さい。あれからちょうど1年、お約束通り、お迎えにあがりました」
 慇懃無礼な態度を取る、先ほどの男。
 「何の事だかさっぱりわからないな、人違いしているんじゃないのか」
 「特捜エクシードラフト隊長、叶隼人、人違いではない」
 そこへ現れる、恰幅のいい中年。
 「なにぃ?」
 「叶くん、カオスという組織を、ご存じかね」
 カオス……それは、麻薬と武器売買を主体にヨーロッパを中心として拡大している、国際的な秘密結社。 中年の男・山崎はそのカオス日本支部のボスであった。
 この山崎、微妙に顔立ちが一色本部長代理に似ているのが、なんか面白い(笑)
 「そして叶くん、君の本当の正体は、我がカオス日本支部の、ナンバー2なんだよ」
 山崎によれば隼人はもともとインターポールに潜入捜査をしており、エクシードラフトの隊長に選任された折に、自ら過去の記憶を封印。 来るべき日の為に別人の記憶を持った叶隼人として、エクシードラフトの隊長を演じていたのであった。頑強に否定する隼人であったが、 なんと過去の自分からのビデオメッセージを突きつけられる。
 「やあ、元気にしてたか。驚いただろうが、ボスの話は全て真実だ」
 勿論これらは全て真っ赤な嘘。だが混乱する隼人は、息子を人質にとられカオスの言いなりになっている陣野博士の手により、 自分が真実カオス日本支部のナンバー2であるという偽の記憶を、植え付けられてしまう! 偽記憶の効果は丸二日あまり…… カオスの目的は、その間に、叶隼人/シンクレッダーによりエクシードラフトを壊滅させる事であった!!
 早速、行き過ぎた力が身を滅ぼすという教訓が(笑)
 隼人が連絡を絶って2時間あまり……シムの探査によって路上駐車されたバリアス7と、通信に応答しない隼人を発見した本部は、 耕作と拳が隼人を追うが、カオスのナンバー2であるという記憶を植え付けられてしまった隼人は、 未だかつて無い楽しそうな顔で「実装」。スクラムヘッドへと砲火を向ける!
 まあ子供番組としての配慮なのでしょうが、潜入捜査とか洗脳とか、全部最初に種明かしをしてしまうのは、やはり勿体ない所。 わかった上での、いったいどんな理由なんだ? というドキドキ感は欲しい所であります。
 こう見ると、誘拐犯扱いを受ける不思議空間の中でじわじわと主人公の身に起こった出来事を明かしていく 『ソルブレイン』第36話「誘拐犯は隊長!」は改めて意欲作だったのだなぁ。
 「エクシードラフトを壊滅させる事が、カオス日本支部のナンバーツーであるこの俺に、与えられた使命だ! わかったか!」
 ブルースとキースを抹殺するべく、襲い来るシンクレッダー。
 ……都合3回目の、仲間割れ?
 ジャケット変わってはいるものの、さすがにもう、インパクトは弱い(笑)
 「それは隊長を陥れる罠だ! カオスの奴らに偽の記憶を植え付けられたに違いない!」
 ごくあっさりと、真相に辿り着いてしまう耕作。
 「いったいどうすれば……」
 「思い出させるんだ…… 俺たちとの思い出を!  人々を救い、 悪を断つ為に身を投げ出して戦ったあの一つ一つを!」
 真実の記憶を取り戻させるべく、説得を試みるブルースとキース。
 「俺はこの身を犠牲にしてでも、隊長を目覚めさせるぜ!」
 力強くヘルメットを外す拳。耕作と拳は互い互いに過去の激闘を語り、隼人を目覚めさせようとする……と軽い名場面集。
 拳がヘルメット脱いでも耕作が脱がないのは、ジャケット着たまま中の人がアクションできるかどうかでしょーか?
 二人の話を聞き、混乱していく隼人の記憶。
 「エクシードラフトは、人の命を救う為に結成された筈だ! その人間が、人を殺せるのか……殺せるなら、 殺してみろぉ!!」
 「ひとのいのち……?」
 「たいちょーーー!」
 「たいちょーーー!」

 迸る、隊長好き好きオーラ

 そして隼人の脳裏には、陣野博士が偽記憶の中に仕掛けておいた、囚われの親子の映像がフラッシュバック。
 「ひとのいのちをすくうために……」
 ブレードを振り上げていたシンクレッダーの動きが止まり、そして膝をついた隼人はヘルメットを外す。
 隊長、愛と気合いでここに復活。
 気力を使い果たしてふらりと倒れる拳を支える。

 ……まずい、まさかここで、拳が真ヒロインに昇格するとは。

 正気を取り戻した隼人は、陣野博士が囚われの息子を助けて貰えるようにと仕掛けていた映像の記憶から、カオスのアジトを割り出し、 エクシードラフト突貫。バズーカ持ち出して抵抗したカオスであったが、怒れるエクシードラフトの敵ではないのであった。
 ……で、隊長、証拠物件(記憶改造装置)をサイクロンノバで完全消滅とかしないで下さい。 プライド的に許せないものがあったのかもしれませんが、警察として、確保をお願いします(笑)
 予告で煽った割には隊長もシンクレッダーもさして暴れないのが残念でしたが、いくら悪の陰謀で記憶を改変されたからといっても、 やりすぎると本格的に免職の危機になるので、仕方が無い所か。
 あと前回今回と、バトルジャケットにバージョンアップした要素が戦闘で全く意味を持っていないので、 意識的にトライジャケットでは対応しきれない敵、というのを本当は出して欲しかったところ。
 宇宙人やオカルトが出てこない限りはオーバースペックである、という事だけが裏打ちされていきます(笑)
 次回、不死身のブラックウェンズデーの正体は?!
 風忍・馬風破ですよね……。

◆第37話「復讐の爆走ロード」◆ (監督:三ツ村鐵治 脚本:中野睦)
 白バイとパトカーに追われる漆黒のライダー。対向車と衝突して吹き飛ぶも……走って逃げる。
 ライダーは、通称“ブラック・ウェンズデー”。この一ヶ月、決まって毎週水曜日の朝6:00に盗難バイクで第四京浜を暴走するが 警察から逃げおおせ、一般警察では手に負えないと、エクシードラフトに逮捕命令が下される。
 そのブラックのスーツが、開発中の衝撃吸収スーツに酷似している事に隊長が気付き、手始めに開発している稲垣博士に話を聞きにいく。 しかし衝撃吸収スーツは未完成であり、まだ複数回の衝撃吸収に耐えられる段階ではなかった。ではいったい誰が、 衝撃吸収スーツを完成させたのか……?
 尺の都合で仕方ない面もあるのでしょうが、これまでも何度か使っていますが“たまたま読んでいた雑誌に情報が……” パターンはやはり厳しくて、まだシムなど、スーパーコンピュータの出鱈目検索能力の方が納得いくような。
 翌週水曜日、ブラックを待ち伏せし、追撃するエクシードラフト。バイクで走るブラックを、ターボユニットでブルースが追いかける、 の図は面白かった……隊長ならマッハを超えられるから、すぐに捕まえられた気もしますが(笑)
 連携包囲でブラックを追い詰めるエクシードラフトだったが、突然投げ込まれた爆竹に気を取られた隙に逃げられてしまう。 爆竹を投げて逮捕を妨害した少年は、山口洋一。衝撃吸収スーツの研究者にして、稲垣博士の先輩にあたり、 半年前に死亡した山口シンイチ教授の息子であった。
 事件の裏にあったのは、研究を全て自分の功績にしようとする稲垣の欲望であった。稲垣と手を組んだ産業スパイ・シバタは、 山口教授の研究資料を盗む際に研究所に放火、博士は死亡。洋一の目撃証言があったにも関わらず、 警察は事件を漏電による失火として片付け、警察に強い不審を抱いた洋一は、事件の真犯人を暴き出す為に、 水曜日の朝6:00――研究所から火が出た時間に、衝撃吸収スーツを身につけたブラックウェンズデーを走らせていたのだ!
 しかし、山口博士の縁者に、ブラックウェンズデーと思われる人物は居ない。洋一少年が「お兄ちゃん」と強く慕うブラックは、 いったい何者なのか――?!
 「いったいブラックウェンズデーは誰なんだ?」
 と超直球で洋一少年に問いただすも、少年の根深い警察不信の前に、あえなく玉砕する隊長。
 ヒーロー達の所属組織に対してゲストが露骨に悪意を向けられる、というのはレスキューシリーズの面白い要素の一つではあります。 その点も汲み取った上で、一般の巡査警官を格好良く描いた前作第14話「愛を呼ぶ銃弾」という秀逸回もありました。
 「こうなったら今度の水曜日に決着をつけるしかない」
 と、ブラックを待ち受けるエクシードラフトだったが、警察の積極的な介入を受け、シバタが洋一少年と接触。 洋一少年を背にいつもと違う場所に現れたブラックは、約束の場所で、稲垣、シバタと対峙する。父殺しの真犯人をあぶり出す為、 虎口に飛び込む洋一、そんな洋一を脅して完成した衝撃吸収スーツを入手しようとする稲垣達。だが……
 「衝撃吸収スーツが本当に完成したと思っていたのか?」
 「馬鹿な、じゃあその男はどうしてビルから落ちて死ななかったんだ」
 「それはブラックウェンズデーが、ロボットだったからさ」
 ブラックウェンズデーの正体は、山口博士がスーツの実験用に作ったロボットだった! 洋一は、 衝撃吸収スーツが完成したように見せかける事で、真犯人の注意を集めていたのだ。
 人道的なのは間違いないけど、そのロボット組む予算で色々出来そうだよ?! と思ったのですが、この世界の標準から言うと、 顔も擬装していないし会話能力も持たないし、さして高性能ではない気がするので、 意外と安いのもかもしれないブラックウェンズデー。高性能なヒューマノイドロボットが溢れすぎて、「実はロボット」ネタはもう、 驚きが無いのが恐ろしい(笑)
 ちんぴら達に囲まれるも、ロボット大暴れ。大活躍するが、シバタの持ち出したバズーカで左腕を吹き飛ばされ、 洋一を守って崩れてきた鉄骨の下敷きになってしまう……そこへ駆けつける、エクシードラフト。
 えーなんか、シンクレッダーさんが、威嚇と言っていいのか悩むレベルで、 生身の人間に向けてバルカンカートリッジ撃チマシタ。
 稲垣達を逮捕したエクシードラフトは、ビルドライバーで鉄骨の下から洋一を救出。
 そしてシンクレッダー、
 工場の崩壊を食い止める為に

 屋根をサイクロンノバで消し飛ばす(笑)

 正義とか悪とかではなく、純粋に強い力が、人を狂わせるのです……!
 事前にバルカンカートリッジを使っていなかったら、大胆なナイス判断、と思えたかもしれませんが、 直前にバルカンを乱射している為に、もう、オーバーキル兵器の暗黒面に飲み込まれたようにしか見えません。
 もはや、レスキューポリスシリーズ名物。
 洋一少年を遠ざけ、爆発の中から、ロボの上半身だけでも救い出すシンクレッダー。洋一少年の為に戦い、彼を守り続けたロボは、 その腕の中で機能を停止するのだった……。欲望、復讐、そして警察の怠慢が生んだ不幸に隼人は涙し、洋一は父の復讐の代わりに、 自分がかけがえのないものをまた一つ失った事を知る……と、最後は無言のロボが効き、私がこういうネタを好きなのもありますが (やや無機質系のロボットと人間の交流とか)、綺麗にまとまりました。
 ただ、クライマックスのロボはアクション含めて格好良かったけど、他はテンポ悪し。演出も物語も、全体通して、 だらだらとしてしまいました。今更ながら思うに、情報収集シーンはなるべく3人を分割しないと、画面上に最低4人 (うち最低でも男3人)というのは、やはり画面が重い。
 …………次回、また、扇澤さんがやってしまうのか……?

◆第38話「不発弾、出前一丁」◆ (監督:三ツ村鐵治 脚本:宮下隼一/鈴木康之)
 と思ったら、扇澤脚本では無かった。
 「たった今、根来商事で銃器の搬入が行われてるぜ」という密告電話を受けた耕作、「内偵通りだ」と単独で根来商事に向かい、 会社に運び込んでいる段ボールをあらためようとする。
 「捜査令状はお持ちかな?」
 「この箱から、銃や爆弾がごっそり出てきた時に、そんな強がりが言えたら、大したもんだ」
 ……いやでもね、耕作さん、幾らここが世紀末TOKYOディストピアだからといって、密輸した銃器の運び込みを、 真っ昼間から通りに面した玄関ではやらないと思うんですよ(笑)
 そして耕作が開いた段ボールの中から出てきたのは……「HAHAHA、これで今日から君もムキムキさ!」 的なバネのついた運動/健康用具のたぐい。
 根来商事から追い返された耕作、
 「馬鹿者!」
 と本部長に怒られるが、一方で内偵を知った上での罠の可能性が示唆される。根来商事が牽制を仕掛けてきたという事は、 既に武器は国内に運び込まれてどこかに保管されている可能性が高い。痛恨の捜査ミスはあったものの、 エクシードラフトは捜査の続行を決定する。
 まあ、世紀末TOKYOディストピアの税関が機能していないのは有名ですし。
 「おうらっしゃい、セクシードラフトのあんちゃん」
 五代作吾という老人のやっているラーメン屋台へ入った耕作、屋台を手伝っている少年・太郎と出会う。 作吾の住むアパートのお隣さんで、母親が遅くまで仕事をしている間に預かっている兼手伝いをしてくれているという太郎少年は、 作吾にとっては孫のような存在であり、また、勝の同級生。
 ここで、勝の塾のテストの話から東京大空襲に繋げ、作吾の友人で元大工のモキチも混ぜて、戦争ネタの伏線。
 そんなある日、取引前に根来商事が武器の確認を行っている現場を目撃してしまう太郎。作吾と一緒にエクシードラフトへ駆け込むが、 隊長と耕作が突入した時には、倉庫は既にもぬけの殻。根来商事の様子を確認しに行った拳も、怪しい荷物の運び込みを目にするものの、 先日の捜査ミスから中を確認するに至らず、社長のはったりに追い返されてしまう。
 取引を先延ばしにした根来商事は武器を一時的に社内に保管すると、目撃者である太郎を始末しようとし、 車で轢かれた太郎は意識不明の重体に陥る。
 …………目撃証言を「信じてる」とか言った割には一切ガードつけてないとか、本日は捜査ミスが多すぎやしませんかね、 エクシードラフトの皆さん?
 太郎が轢かれたのは根来商事による口封じに違いない、という話を漏れ聞いた作吾は怒りを燃やし、たまたま、 工事現場で不発弾が発見された現場に行き会う。
 「俺に任せとけ! 俺は、空襲をくぐり抜けてきた男だ!」
 パニック状態の作業員はついそれに従ってしまい、荷台に不発弾を載せたトラックで根来商事へとカチコミを敢行する作吾。 途中でトラックがエンストで停止してしまうが、ラーメン屋台を引いたモキチが現れ、二人は不発弾付き屋台を引っ張って、 根来商事へと突入する!
 屋台で突入する、というのが今回の面白い所の筈なのですが、そこに繋がる必然性が薄かったのは不満。 “不発弾の入手”が偶然に頼るのは仕方ないとして、それが屋台に搭載されるまでの顛末というのが非常に重要だと思うのですが、 それが“トラックのエンスト”で済まされてしまったのは残念。サブタイトルにまでしたわけですし、テーマとはまた別の面白さを、 その部分に何とか組み込んで欲しかったです。
 「爆弾が迫っているから早く武器を持ちだして逃げろ」という本部長からの電波的な連絡を鼻で笑って斬り捨てる根来商事だったが、 そこへ本当に、不発弾が乗り込んでくる。太郎の敵討ちだ、と信管を叩いてもろともに果てようとする作吾とモキチ。 そこへ駆け込んでくるエクシードラフト、そして勝。
 「お爺ちゃん! また、焼け野原を作るの?!」
 「親爺さんの家族を奪った焼け野原を、今度は親爺さんが作る事になるんだぞ!」
 「儂は…………儂は…………!」
 勝と耕作の説得を受けた作吾は崩れ落ち、不発弾の爆破は回避された……かに思えたが、それはそれとして、この場を切り抜ける為に、 事務所に堂々と置いていた段ボールの中から武器を取り出し、銃撃を開始する根来商事の皆さん。そして何を思ったのか、 先ほどまで怯えていた爆弾に向けて、手榴弾を投げつけるチンピラA。

 全て台無しに(笑)

 レッダーは信管の作動した爆弾を抱えて外へと走り、根来商事の面々は、ブルースとキースが撃破、逮捕。 ターボユニットで採石場へ辿り着いたレッダーは、放り投げた爆弾をサイクロンノバで消滅させ、処理に成功。そして病院からは、 太郎が無事に意識を取り戻したと連絡が入るのであった……!
 プロットはわかるのですが、過去の戦争への怒りと悲しみと武器売買への憤りと少年の復讐、というのがうまくシンクロせず、 物語としての焦点が定まりきりませんでした。その為、クライマックスの説得シーンも、何をどうやって説得しようとしているのか、 若干ちぐはぐ。
 勝の思考として普通に考えれば、「そんな事をしても太郎が悲しむだけだよ!」みたいな台詞が最初に出てくるのが自然で、 それが一足飛びに「焼け野原」に繋がってしまい、なぜか作吾の復讐ではなく、作吾の復讐の結果、 を止めるような言葉になってしまっている。これは小学生としては弁が立ちすぎですし、そこを重ね合わせたかったのはわかるのですが、 劇中で重ね切れていない。
 やろうとした事が何となく見えるだけに、一歩二歩と足りない。
 あと、前半の方にやっていれば話は別だったかもしれませんが、爆弾の危険性を訴える横に、爆弾より危険な武器を持った人 (シンクレッダー)が立っているというのが、どうしてもギャグにしか思えませんでした(^^;

 結論:宇宙人が悪い。

 劇中のピントはともかく、締めのナレーションは格好良かったです。
 「エクシードラフトの活躍によって事件は解決した。だが、人々の笑顔の中に眠る、哀しみという名の不発弾は、 永遠に消えないのかもしれない。時がどんなに流れようとも」
 なお、この連名脚本は前作の42話、45話で、大きくやらかしているコンビ。その時に比べればだいぶマシではあるものの、 相変わらず色々と穴は多く、後ろの人は、いったい何なのだろう……。

◆第39話「飛べ!誓いの白球」◆ (監督:簑輪雅夫 脚本:鷺山京子)
 久々登場の鷺山さん、夢破れて転落した元プロ野球選手・安川と野球少年・ナオキの友情、という如何にもなエピソード。
 極めて強力なハイレーザー銃による宝石強盗事件が発生。
 「ヨーロッパの犯罪組織が開発に成功したという噂は、本当だったんですね」
 「しかも日本に持ち込まれていたんですね」
 ザ ル だ か ら ね
 事件の調査中、「おじさんを探して下さい」とナオキに頼まれる耕作。アル中の流れ者だった安川だが、ナオキの懇願でスイングを指導、 言われた通りに毎日100回素振りをするから、「今度の地区大会、見に来て下さい」と約束したのだが、 その安川が姿を消してしまったという……。その安川は、宝石強盗グループの仲間割れを目撃、 そこで手に入れた宝石を換金しようとしたが、消えた宝石を追う強盗グループに捕まってしまう。安川を追っていて、 流れで一緒に捕まってしまう耕作。
 ここで宝石強盗グループのボスがやたら綺麗なキックを耕作に炸裂させるのですが、 キャスト表記にスーツアクターさんの名前が目立つので、そういう回だったっぽい。
 安川の正体が、甲子園のヒーローで元プロ野球選手だった事に気付く耕作。プロの壁に阻まれ、 飲酒運転による事故で球界を追放された安川は金さえあればやり直せると宝石のねこばばにこだわるが、 「ナオキくんの手は、豆だらけだったぞ」という耕作の説得を受け、踏みとどまる。
 クライマックスは、宝石を隠した廃工場でバトル。
 シンクレッダーはサイクロンノバでハイレーザーを相殺。先代の得意技を見せました。
 強盗グループは御用になり、エクシードラフトに連れられ、約束の試合を見に駆けつける安川。 一打サヨナラのチャンスに起用されたナオキは、安川の教え通りのスイングで、見事なサヨナラホームランを放って大団円。
 ……と、毎度の事ですが鷺山さんが綺麗にまとめている時というのは、上手いとか下手とか面白いとか面白くないとかとはまた別に、 ツッコミにくい(笑) 良くも悪くも“約束事”に忠実かつ堅実というか。
 ツッコミというかシナリオとしては、見張りもつけずに耕作を放置しないでください、というのはあるのですが(^^;

◆第40話「死の爆弾罰ゲーム」◆ (監督:簑輪雅夫 脚本:宮下隼一)
 いじめられっ子の少年・小出弘は、南米で連続した爆破事件と同じ手口で日本政府を恐喝していた爆弾屋・イヌイタツオが、 主犯格の国際的犯罪者・黒田タケシに射殺された所を目撃してしまう。死の間際にイヌイから爆弾の仕掛け場所を囁かれた弘は その場を逃げ出し、イヌイの裏切りによって爆弾の仕掛け場所がわからず、計画の狂った黒田達は弘を追う……。
 というか、仕掛けた場所を聞こうとしていた筈なのに、いきなり撃ち殺さないで下さい(笑)
 主犯グループが裏切り者をつい勢いで撃ち殺してしまうシナリオを、どうして2回続けてしまったのか(^^;
 爆弾の仕掛け場所を知りたければ言う事を聞け、といわんばかりに、エクシードラフト本部でふんぞり返る少年。愛はジュースを出し、 拳はホットケーキを作るが……隊長、起つ!
 本部コンピューターの大画面でやっているゲームをぶちっと切る隊長。
 「なにするんだ、王様に逆らうつもりか!」
 「君は自分のやっている事がわかっているのか。いいかよく見てみろ、君が爆弾の場所を教えてくれなければ、 午後3時にはこうなるんだぞ」
 凄惨な爆発現場をモニターに映し出す隊長。
 それを見た弘は、急に立ち上がる。
 「ああなりたくなかったら、僕についてこい!」
 エクシードラフト3人を連れて、弘が向かったのは学校。自分を「王様」、弘を「奴隷」と呼び、 ボールをぶつけるいじめっこグループに対し、「王様」は自分で、おまえたちがボールをぶつけられてみろ、 とエクシードラフトにボール投げを命令する弘。そこに「弘、こんなの遊びじゃないか」と出てくる、駄目な感じの教師。
 「やる方は遊びでも、やられる方は遊びじゃない! どんな気持ちか、やられてみればいいんだ!」
 前回の苛めネタが酷すぎたので、今回はとりあえずこういう台詞が出てきて、ホッとしました。
 主題被りとしては間隔が近すぎ、しかし急遽カバーしたと考えるには逆に間隔が狭すぎる気がしますが、 世間的にイジメ問題が大きくなった時期に別脚本家でたまたま主題が被ったのかなぁ……?
 弘の置かれた環境と、その為に歪んでしまった心を知った隊長は、渡されたボールぶつけ券を破り捨てる。
 「多くの人達の命を助けるのが、俺たちの仕事だ。だがその為に、一人の心を歪めていいということはないんだ。弘くん、 君が今まで何をされて、何を感じていたのか、よくわかったよ。でもな、こんな事をしても何の問題の解決にもならないんだ。 目を覚ますんだ」
 正面から説得をする隊長だが、弘は走り去る。
 「うるさい! こうなったら僕は何もしゃべらない! みんな、みんな死ねばいいんだ! 爆弾で吹っ飛べばいいんだ!」
 耕作と拳は弘を追いかけ、その間に弘の母親の話を聞きに行く隊長。弘は今度は、耕作と拳に万引きを命令する。
 ……せっかく隊長がきっぱり断ったのに、そこで悩むな二人(笑)
 だが、そこに襲いかかる黒田のグループ。手榴弾の攻撃を受けている間に弘が車で拉致され、しかし駆けつけた隊長は、 走り去る車の屋根に張り付く! しかも気付かれずにそのまま敵のアジトへご案内!(笑)
 今日は久々に、スーパー生身隊長DAYの模様。
 弘を救出する隊長だったが、アジトに潜んでいた黒田らに不意を打たれて捕まってしまう。
 「爆弾を仕掛けた場所は……知らない……僕は何も知らない!」
 黒田らに問われた際の弘の挙動から、爆弾はアジトに仕掛けられている事を見抜く隊長。弘少年は爆弾の場所を黒田達には話さず、 二人は縛られてアジトの床に転がされる。黒田達が時間潰しにトランプに興じている間、そっと弘に話しかける隊長。
 「死ぬつもりなんだな……それで君を苦しめた人間たちに思い知らせる、復讐するつもりだったんだな。甘ったれるな……!  そんな卑怯な手段で王様にならなきゃ、君は自分のやりたい事がやれないのか。言えないのか」
 弘母から、弘の家庭の事情――パイロットである父がアメリカの航空会社で働いており、仕事の忙しさから日本に残った母親とは、 実質的な別居状態――を知った隊長は、本当は尊敬する父親と一緒にアメリカに行きたかった弘が、 母の為に日本へ残る事を選んだのだろう、と問いかける。
 「君は優柔不断なんかじゃない……ただ心が優しいんだ」
 その心の優しさは、決して弱さではない、という隊長の言葉に、爆弾が間違いなくアジトに仕掛けられている事を告白する弘。 相手の隙をついてロープをほどき、弘とともに脱出しようとした隊長だが黒田達に追い詰められてしまい、その時、 弘が紙飛行機で外に助けを求める事を思いつく。
 父との思い出の紙飛行機、を事件の解決イベントとしてしっかり活用したのは秀逸。
 通りすがりの警官がSOSと書かれた紙飛行機を発見して、本部へ連絡。ブルース(隊長の居ない隙にバリアス7に乗ってみた)と キースが突貫し、黒田達はあっさり逮捕されるが、時限爆弾の爆発が迫っていた――!
 クライマックスに持ってきた時限爆弾の処理は、
 ハイパーサーチライトで発見
 ↓
 ハイドランダーで周囲を消火
 ↓
 ビルドライバーで鉄板を切り開く
 ↓
 グレネード冷凍弾で冷凍
 ↓
 サイクロンノバで消滅
 と、各種装備を使い切り。
 ……はいいとして隊長、証拠物件をことごとく闇に葬るのやめましょうよ(笑)
 こうして事件は解決。そして母親との話し合いにより、少年はアメリカの父のもとへ……母親も自分の事しか考えていなかった事を反省し、 家族も再生。
 少年は結果的に、いじめのベターな解決方法の一つとされる転校(精神的な脱皮をともなった上で)をする事になり、大団円。
 出だしの暗さが嫌な感じでしたが、最終的には綺麗にまとまって、悪くありませんでした。
 対象年齢関係なく、真っ正面から説教する隊長が素敵。
 隼人がいいのは、上から正論を押しつけるのではなく、誰が相手でも正対してぶつかっていく事。
 良いヒーロー像です。
 次回、面白そうなネタですが、さてどう料理されるか。

→〔その9へ続く〕

(2013年6月18日,2013年8月18日)
(2017年3月17日 改訂)
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