■『特捜エクシードラフト』感想まとめ4■


“エクシードラフト エクシードラフト
未来を守る騎士達”


 ブログ「ものかきの繰り言」の方に連載していた『特捜エクシードラフト』 感想の、まとめ4(16〜20話)です。文体の統一や、誤字脱字の修正など、若干の改稿をしています。

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◆第16話「絶体絶命の愛」◆ (監督:簑輪雅夫 脚本:山田隆司)
 隕石に追突され、宇宙を迷走中のNASAのロケット、テラ3号。日本に墜落コースを取るその軌道を追っていたエクシードラフトは、 その中から「助けてー、助けてー」という通信をキャッチする。それは、テラ3号に乗り込んでそのまま取り残されていた宇宙用ロボット、 デュークの声だった。
 日向隊員、NASAでデュークのプログラムを担当していた過去が発覚。
 旧知の存在である愛からのシムを通した呼びかけに、シムの中に愛が居ると誤解したデュークはテラ3号の軌道を変更。 愛はそこに自分は居ないと呼びかけるが通信が途絶してしまい、テラ3号はシムへと急接近していく。 これに泡を食ったエクシードラフト本部。
 「やむをえん、撃墜しろ!」
 「しかし、警視監」
 「それでもエクシードラフトの隊員か!」
 相変わらずシビアな隊長、超速攻で、ロボットの人権 < エクシードラフトの頭脳、という判断をくだし、 射撃を命令。
 ためらう愛だったが結局は周囲の声に押されるようにシムからビームを放つが、テラ3号の撃墜に至らず、デュークを乗せたテラ3号は、 再び地球の大気圏突入コースを取る。
 「デューク、死なない。恨み晴らすまで、死なない」
 その中に、愛が自分を殺そうとした、と思い込んだデュークを乗せたまま。
 まあよくよく考えるとデュークも、愛が中に居ると思っているシムに突撃する事は無い気がするわけですが(笑)
 それを踏まえても、迷走中のロケットでどんな事故が発生するかわからない所まで考えて、という事ではあるのでしょうが。
 最初から心中する気だったら、また別の恐怖。
 「私がためらったばっかりに」
 「そんな事言っている場合か!」
 何の役にも立たないのに、周囲でやかましいだけの男達。ここは日向隊員、 イラッとして後日コーヒーに何か混ぜても許されるレベル。
 軌道の再計算の結果、テラ3号の墜落予定地点は周辺に被害が及ばない場所である事が確認される。 ところが墜落後の現場処理へ加わったエクシードラフトは、ロケットと分離した脱出ポット、 そこから歩み去った何者かの足跡を発見する……。
 SF映画に出てきたら、いかにもコメディリリーフ(そして最後にいい所を見せる)という、大きくて扁平な頭に寸胴体型、 というデザインのロボットが復讐鬼と化すという、すさまじい展開。
 憎悪に身を焦がすデュークは自衛隊みずほ基地で二人を射殺すると、大量の武器とジープを奪って逃走。番号案内で都内に住む全ての 「日向愛」の番号をチェックするとその自宅に押しかけ、次々と「日向愛」を拉致していく。
 人間の感情に近づける為に最新鋭のバイオコンピュータを搭載しているデューク、ひとりぼっちで宇宙の虚空に取り残されていた事と、 愛に裏切られたと思ったショックから、人間を殺すに足る殺意を抱くに至ったのでは……って、最新鋭とか御託はどうでもいいので、 最低限の安全装置を搭載してください!
 進歩しすぎた人類の科学は、何度過ちを繰り返せば気が済むのか……!
 都内に残る「日向愛」は、本部の愛を含めて3人。エクシードラフトは手分けしてガードに当たり、 その一カ所でブルースとデュークが激突。「デュークさんよぉ、そんな動きじゃエクシードラフトの敵じゃないぜ」と調子に乗るブルース、 勿論やられる(笑) しかも、隊長が注意を促したシリコン弾ではなく、デュークの内蔵火器で。
 トライジャケットを損傷させるレベルの内蔵火器とか、何を目的で搭載していたのでしょうか……?  テラ3号はいったいどんな危険を予想していたのか。もしかして、外宇宙探検用のロケットだったのか、テラ3号。 クライマックスでのデュークの戦闘力を見ても、未知の宇宙生物とでも戦うつもりだったとしか思えません。
 ブルースを撃破したデュークは「(問題の)愛を連れてこなければ捕まえた二人の日向愛を抹殺する」と本部に直接電話、 デュークの説得を望むも軟禁状態だった愛は見張りの刑事二人と警視監を張り倒すと、本部を脱走。 コンバットスタイルへ変身すると警官隊を薙ぎ倒し、白バイを奪ってデュークの元へと向かう。
 レスキューシリーズといえば、本部長含めて“射撃の達人”というのがお約束でしたが、今作はメンバー揃って“格闘技の達人”なのか。 耕作もなんだかんだで生身でも結構強いですし……にしても、愛のコンバットスタイルは何なのでしょう。何か、 この近辺にこんな流行り物でもあったのか。
 あと愛は説得にこだわっていて、彼女の心情としてはわかる流れになっているのですが、この後のシーンも含めて愛の頭の中から 「デュークは既に自衛隊員二人を殺害しているという事実」がすっぽり抜け落ちているのは、いただけない。 そもそも「重傷」でも良かった所を台詞で「死亡」にして話を重たくした必然は今ひとつ。どちらかといえば、 愛の“困った人”度が上がってしまったような気はします。……まあ、隊長が超ドライな分、 周囲はウェットでないとバランス取れませんが!
 デュークと接触した愛は説得を試みるが、デュークは聞く耳持たない。工場に追い詰められた所でエクシードラフトが突貫し、 激しい戦闘が始まる。愛を助け出し、戦闘は野外へ。ブレードの一撃を受けながらも戦い続けるデュークは「エクシードラフト、 思い知れぇ!」と突撃(後の展開を考えると、もろともに自爆玉砕するつもりだったか?)を敢行するが、そこで愛が戦闘に割って入る。
 デュークが狂ったのは、彼をロケットの中に置き去りにした人間達や彼を殺そうとした自分のせいで、デュークは悪くない…… 愛は自らの頭に銃口を当て、死を持ってそれを償い、デュークの凶行を止めようとする。そのトリガーが引かれる寸前、 レッダーが拳銃を撃ち落とし、衝撃で倒れ伏す愛。
 「自分の命を捨ててまで君を説得しようとする、愛の気持ちをわかってくれ」
 レッダーの言葉、そして何よりも、命を賭した愛の行動に銃を下げるデューク。
 「(愛は)シムを守るためにやむなく命令で撃ったんだ」
 本人の思い詰めた様子にこれまでの言動を反省したのか、愛のフォローを入れる隊長。

 ちなみにデュークさん、命令出したの、その赤いヤツです。

 理性を取り戻し、かつて愛から学んだ「愛」を取り戻したデューク、だが……
 「大気圏に突入したショックで、解除不能の起爆装置が作動してしまいました」
 地球に降下した時から、その体内では自爆装置が非情な刻を刻んでいた!
 「ありがとう、愛。愛が死を恐れなかったように、デュークも死を恐れない。さようなら」
 デュークは海に飛び込み、爆死。その死に、愛はただ、嗚咽するのであった。
 …………えー、高度なロボットがすべからく機密保持の為に自爆装置を搭載しているのはレスキューシリーズのお約束ではありますが、 ちょっとしたショックで自動的に作動し、解除不能の爆弾を積んだロボットを宇宙調査用のロケットに乗船させているとか、 テラ3号プロジェクトから不穏な匂いしかしません。

 本当はこれ、ソ連に落とすつもりだったのでは。

 真の仮想敵は未知の宇宙生物ではなくて、共産主義のくそったれどもだった。
 (※本編放送時にソビエト連邦は既に崩壊してしますが、レスキューシリーズの世界観は、冷戦構造が継続、 というか悪化している国際情勢としか思えない)
 デュークのデザインと行動のギャップで面白く見せる話で、その点は成功。 高度なロボットとの友情/愛情をテーマに女性隊員にスポットを当てた(前作、前々作とは違う、 オペレーターとしての役割と能力も改めて強調)のも悪くは無かったのですが、 1クール過ぎても演技が上手いとか下手とかいうレベルを超越している 愛さんの喋りのせいで、盛 り 上 が ら な い。
 日向隊員は、棒とか芋とか大根とかでくくれない、全く別の何か。

◆第17話「シンデレラを救え」◆ (監督:小西通雄 脚本:鷺山京子)
 交通事故にいきあって救助に協力した拳は、入院した少女・ミカに『シンデレラ』の絵本をプレゼント。その頃エクシードラフトは、 慈善事業などに熱心を装うがその裏で細菌兵器P−6を諸外国に売りさばいている大鳥コンツェルン総帥・大鳥タヘイの尻尾を掴むべく、 国内にあるというその製造工場の場所を探っていた。
 ある夜の事、深夜に目を覚ましたミカは医者達の密談を立ち聞きしてしまう。それは、大鳥タヘイに深い恨みを持つ杉原という医師が、 病院の培養施設を借りてP−6を製造、それによって大鳥に復讐しようとしているというものであった。話の内容こそ理解できなかったものの
 「12時の鐘が鳴る時、階段の上でガラスが割れて死に神が……」
 という杉原の無駄に詩的な表現が大好きな『シンデレラ』の物語とミカの脳内でシンクロしてしまう。 熱を出して再び倒れたミカは、シンデレラが死神に追いかけられて殺される悪夢を繰り返し見るのだった……。
 ミカを見舞いに行き、シンデレラの悪夢について聞く拳。一方、大鳥コンツェルンに潜入捜査をしていた耕作が面倒くさくなって地下へ突入すると、 そこには推測通りにP−6の製造施設があった。警備に捕まってしまう耕作だったが、耕作からの連絡が途絶えた事で、隊長達も突貫。
 敵も味方も、細菌兵器の培養施設で気軽に銃をぶっ放さないでください(笑)
 一方、杉原の後輩で、それと知らずに杉原にP−6の培養設備を貸してしまっていた石塚医師が、 密談の内容を聞いていたかもしれないミカの身柄を、思いあまって拘束。ミカを救出した拳は、彼女の夢や様々な情報から、 消えた杉原医師が、P−6によって家族の仇を討とうとしている、という結論に辿り着く。その決行時間は12時――場所は、 「平和の像」の除幕式会場!
 「ミカちゃんが言っていたシンデレラは大鳥なんだ!」
 嫌な、シンデレラです。
 内戦の地で医療に従事していた杉原は、そこで多くの人々を、そして彼の妻子を細菌兵器P−6によって奪われた…… それをばらまいた元凶である大鳥に向けて、自ら製造したP−6を投げつけるが、寸前で飛び込んだ拳がキャッチ。 レッダーとブルースも駆けつけて杉原と拳に拳銃を向けた取り巻き達を逮捕するが、杉原は転がった小瓶を手に逃げた大鳥を追いかけ、 追い詰める。
 しかしそこに現れ、「シンデレラは殺しちゃいけないの」と、大鳥をかばうミカ。

 本当に、嫌な、シンデレラです。

 だが大鳥は、そんなミカを人質に取る。ためらう杉原を背後から護衛が銃撃し、こぼれ落ちるP−6の瓶。あわや拡散……という寸前、 キースが二人を助け、P−6もレッダーの射撃で燃やされて消滅。杉原の復讐は寸前で食い止められる。
 「死神になっちゃいけないんだ、絶対に」
 事件に巻き込んだ石塚医師、そして拳の説得を受け、うなだれる杉原……変わらず傲岸な大鳥だったが細菌兵器の製造容疑で エクシードラフトによって逮捕され、杉原は、それで良かったのだ、と自分を納得させるのだった……。
 きちっとテロの連鎖を断ち切るのを描くのは今作らしい所。
 これが前作だと、大樹が上からいきなり綺麗事で説教して(しかも真の悪は逮捕されなかったりして)、 うーん……という感じになりがちでしたが、少女の純粋な思いでワンクッション置き、医師としての心に訴えかけ、 きちっと悪人(大鳥)の逮捕まで描くという事で、綺麗事の厭らしさを減じました。
 どうあがいても20分強の中で生じる“綺麗事の厭らしさ”に対しては、その綺麗事を作品として貫き通すか、 色々なクッションを置いていくか、としなければいけないわけですが、そのクッションをしっかり置いていったエピソード。
 少女の使い方も面白く、潜入捜査パートが杜撰すぎたのが残念(^^;

◆第18話「パパは嘘つき警官」◆ (監督:小西通雄 脚本:中野睦)
 新宿でビル火災が発生。消火に向かったエクシードラフトの前で現場から逃亡した男が、現場に倒れていた人物を暴行し、 火をつけた犯人だと思われ、非常線が張られる。耕作の友人である警官、加藤の息子コウイチは、 亡き祖父の作った人の本心を読み取るマシン・心理透視機を使って、他人の本音を読む事で、家庭での寂しさを紛らわせていた。 そんなコウイチは逃亡中の犯人に行き会い、
 「俺は犯人じゃない。よく見てくれ。俺が悪い事をするように見えるか」
 と無実を主張する犯人を透視機で覗いた結果、彼の口にしている事は真実だと(心に思っている事と同じだと)信じ、 傷の手当てなどに協力。逆に、「本当は犯人じゃないから逮捕しないなら連れて行く」と言ったことに対し、 父が口では「逮捕しない」と言いながら本心では(逮捕しなくては……)と考えている事を知り、父に裏切られたと思い込んでしまう。
 コウイチが心理透視機を持ち出している事に気付く父、しかしそれなら、容疑者として追っている男は無実なのか? 困惑する所に、 容疑者の情報が送られてくる。男は、サワダエイジ、詐欺と傷害で前科4犯。そう、 彼は「自分で作った嘘を思い込めるほどの天才詐欺師」だったのである。
 隊長がわざわざ「天才」と付けるのですが、詐欺がばれそうになると相手を暴力で黙らせようとするとか、前科4犯とか、 天才かどうかは……凄く、微妙。
 コウイチを上手く騙して逃亡に協力させたサワダは、アパートの一室に押し入った所で本性を現し、 住人を拘束するとエクシードラフト本部に電話をかけ、コウイチを人質に非常線の解除とセスナの用意を要求。 その上でコウイチから奪った心理透視機を利用して住人から現金と車を奪い、警察の目を空港に向けさせた所で車で逃走をはかろうとする。
 「こんな機械を信じたおまえが馬鹿なのさ」
 ところが、何故か住人をそのまま放置していった為、住人から警察への連絡で、逃走車のナンバーなどが露見。 隊長はセスナの要求はサワダによる陽動だと見抜き、シムを使って逃走車を追う。一緒についてきた父が犯人に突撃してナイフを奪い、 ビル炎上などあったものの、レスキューでコウイチは無事に救出、サワダは逮捕。
 「科学がいくら進歩しても、人間の心理はそれで割り切れないんだ」
 「装置なんかなくても信じ合う事が大切なんだよ」
 と隊長がコウイチを諭し、命がけで自分を助けてくれた父の姿に、親子は和解するのであった。
 ところで心理透視機の開発者が「おじいちゃん」というのが、このラストシーン以外では全て「おにいちゃん」に聞こえて、 このラストまで、いったい何がどういう関係なんだろう……コウイチの兄は天才少年だったの?! とだいぶ困惑してしまいました。 父には「祖父」と言わせるとか、誤解を招かないようにする手の入れ方はあったかと思います。
 そして犯人が道ばたに放り捨てた装置は、いずれ別の事件を招く気がして仕方が無い。
 とにかく犯人の造形と行動が支離滅裂。冒頭で、“意識不明になるぐらいに後頭部を強く殴った上で証拠隠滅のために放火” までしているのに、押し入った部屋の住人をそのまま放置していくとか、杜撰にも程がありすぎます。まあそもそも、 自分で火をつけといて爆発に巻き込まれて一緒に気絶するレベルの馬鹿、っぽい所はあるのですが、 それなら劇中でもっと杜撰な所を表現しないと、筋が通りません。
 要するに、詐欺師としても粗暴犯としても、造形が中途半端。
 現実の人間はそうかもしれませんが、それはフィクションにおいてはリアルではなく、単に物語が収まっていないだけなのです。
 “ある時は頭脳派の詐欺師”“ある時は粗暴犯”“ある時は三流詐欺師のチンピラ”という造形は単にシナリオの都合で 人物造形が歪められているだけであって、物語と登場人物が噛み合っていないから、筋が通らない。
 そしてフィクションであるからこそ、そのフィクション世界なりの筋を通さなくてはならないのです。
 まー、隊長が勢いで「天才詐欺師」とか言わなければ、もう少しマシだったのですけど(^^;
 事件と犯人像と物語のテーマが、全部しっちゃかめっちゃかで、反省シナリオ。

◆第19話「光を破る侵入者」◆ (監督:三ツ村鐵治 脚本:宮下隼一)
 地球へ向かって落下する二つの発光体――ハイキングに来ていた会田家の父子、タカシとススムはその光を浴びて気を失い、 その三日後……会田家に突然入り込んできた赤いジャンパーの謎の男から暴行を受ける父タカシ。男の口にする 「半年前から受け入れ体制」「あれはどこにある?」という言葉の意味は? 光を浴びて以来、 不審な行動を取る父子には何が起こっているのか?
 と、謎まみれのサスペンス展開。
 パトロール中に事件に行き会った耕作と拳だったが犯人は素早く姿を消してしまい、タカシの「ススムを、助けてくれ……」 という言葉から、ススムの通う塾へと隼人が急行する。
 ショットガンを手に塾を襲撃する赤ジャンパーの男、そこへ姿を見せる、もう一人の男。「貴様か」「今度こそ逃がさん」 という言葉と共に二人の男は激しく戦い、駆けつけた隼人の姿を見て、二階から飛び降りて脱出する。男達はいったい何者なのか?  そしてどことなく様子のおかしいススムには何が起こっているのか? タカシは意識不明の重体となってしまい、 ススムをガードする耕作と拳だったが、黒ジャンパーの男にススムをさらわれてしまう。
 急報を受け、その前に立ちはだかるレッダー。車内のススムを救出するが、勢いで犯人の車を大爆破。……が、 黒ジャンパーの男は爆発の中から平然と姿を見せる。
 ……えーこれ、相手が規格外だから良かったものの、危うく犯人を抹殺するところだった気がするのですが、たいちょー。
 ブルースとキースも現場に駆けつけ、素直に逮捕される男。出張から帰国した本部長(祝・復帰)の情報により、 男の正体は中南米テロ撲滅委員会の秘密捜査官、デビット・秋葉である事が判明する。 そしてデビットの追っていた赤ジャンパーの男は、凶悪なテロリストのカルロス・東郷であった。
 しかしいったい、会田一家がテロリストとどんな関係があるというのか? デビットは会田一家がコカインの運び屋であったと主張するが、 妻は勿論それを否定。話を聞いた隼人は、会田一家が謎の発光体と接触していた事を知る。デビットはまだ何かを隠している、 そしてススムも……不可解な事件に困惑するエクシードラフトに、更に驚愕の情報がもたらされる。
 なんと、デビット・秋葉は半年前に殉職していた。しかも、銃撃戦でカルロス・東郷と相打ちになって。
 そう、デビットもカルロスも、既に死んでいる筈の人間だったのだ。
 慌ててデビットの牢に向かう耕作と拳だったが、超パワーで牢を脱出したデビットは二人を蹴散らすと、 メリケンサックから謎ビームを出してその場を逃走。ススムの元へ向かったに違いない、と隼人を加えた3人は警察病院へと急ぐのだった……。
 謎だらけの割り切った前編、半端にやられると消化不良になりますが、何もかもさっぱりわからないのでいっそ清々しいというか、 見せ場になるアクションはしっかり盛り込んであるので、年に1本か2本なら、こういう開き直った構成もいいかな、と。 サブタイトル詐欺ですが。

◆第20話「時空を超えた友情」◆ (監督:三ツ村鐵治 脚本:宮下隼一)
 病室で目覚めたススムは、母親を遠ざけると3階の病室の窓から飛び降りて脱出。病室へ乗り込んだデビットは、 駆けつけたエクシードラフトにより今回も素直に逮捕され、レッダーはススムの行方を追う。
 「隼人ひとりでは東郷に、いや、東郷を名乗っているあいつには勝てん」
 「なんだと?」
 「隼人じゃない。ドラフトレッダーだ! 実装した俺たちに敵はない!」
 ブルースが言っても、激しく説得力が無い。
 「地球上ではな」
 謎の言葉とともに、手錠を粉砕するデビット。
 「隼人を助けたければ一緒に来い。そこで全てがわかる筈だ」
 「隼人じゃない。ドラフトレッダーだ!」というのを言わせたかったのでしょうが、デビットさんがいきなり「隼人」とか言い出すのは、 如何にも不自然(^^;
 一方、病院を脱けだしたススムは、工場の奥に隠した謎のトランクを取り出した所を、カルロスに見つかってしまう。 そのトランクの中身は、X−13。もし散布されれば東京が三日で草木も生えない荒野と化すという、恐るべき細菌であった!  囚われとなるススム、そこへ飛び出したが危地に陥るレッダー、壁をぶち破ってデビットが現れ、再びカルロスとメリケン対決が始まる。
 前回の塾での戦闘シーンもでしたが、ストーリーがわけわからない分、力の入った生身アクション。
 人類の科学力ではあり得ない現象が起きる激しい戦いの末、カルロスはススムをさらって逃走。
 果たして彼等は、いったい何者なのか……?!
 「宇宙生命体ですか!」
 「うむ」

 「秋葉と東郷が……やはりそうだったんですね」

 たいちょお?

 最近ちょっぴり、隊長の事が信用できません(笑)
 半年前、デビットとカルロスの相打ちの際にも、謎の発光体騒ぎが確認されていた。そして見つからなかった二人の死体…… そして今回の発光体騒ぎと関連づけ、インターポールは彼等の正体を宇宙生命体と結論づける。
 「どこかの惑星から来た生命体が、4人の人間に入り込んだ……」
 謎解きそのものは、前回から一番ストレートな展開なのですが、何がビックリって、そのど真ん中の直球を、 全員が平然と受け止めている事。
 そ、そうか、「地球は狙われている」のですね。
 これで16話のデュークに強力な火器が内臓されていた事も、シムにビーム兵器が取り付けられていた事も (これは隕石対策とか言い訳は効くのですけど)、説明がつきます。
 地球には、しばしば異星人が訪れているのだ!
 「秋葉に会いにいくぞ」と本部を出る3人、シーン切り替わると、デビットと共にタカシの病室に居るのですが…… いつどこで会ったの? もしかしてデビット、倉庫での戦いの後、また素直に牢に入ったのでしょうか。
 デビットが捕まりたいのか逃げたいのか情報を提供する気が有るのか無いのかさっぱりわからないのは、全体通して困りもの。 基本的にはエクシードラフトを信用していないし馬鹿にしているという事ではあるのでしょうが。
 「君たちはある種の意識生命体だ」とまた適当な感じに言い出す隊長に促され、タカシ(の中の宇宙生命体)を目覚めさせるデビット。
 その口から語られた真相は、会田父子に取り憑いた宇宙生命体も実の父子であり、父は金の為に凶悪な宇宙細菌X−13の運び屋を行っていたという事。 しかし一緒に地球へ来た息子がX−13を隠してしまった事から取引相手のテロリストに襲われる羽目になったのであった。 カルロスの正体はX−13を材料に宇宙の様々な惑星を脅迫するテロリストであり、デビットはそれを追う宇宙刑事であった……と、 前回、仮に置かれた絵図が宇宙規模でそのままだった、という種明かし。
 宇宙にも普通に金目当ての犯罪がある、という構図を盛り込んだのは面白い。
 タカシから、本来の取引場所であるカルロスのアジトを聞いたデビットは、ススムからトランク(X−13入り) の暗証番号を聞き出そうとしていたカルロスと対峙。
 「貴様か、決着を付けるか」
 「我々の惑星を地獄に変えた貴様の息の根を止めるまで、何度でも」
 再び激しくぶつかり合う二人。遅れてエクシードラフトも突貫。
 というか、かなり邪魔しに来た感じ。
 「撃つぞ! カプセルは爆発する。子供は死ぬぞ!」
 「やってみろ。俺も貴様を撃つ」
 ススムを人質にするカルロス、そのカルロスへ銃(メリケンサック)を向けるデビット。子供を犠牲にできない、 とデビットを必死に止めるレッダー。
 「ここでこいつを逃がせば、この地球も我々の惑星と同じ運命を辿る。その次は別の惑星。それを阻止するためなら、 多少の犠牲も仕方はない」
 だが、生命は地球の重さ、だからこの手を差し伸べるのだ。
 「一つの命を守れなくて、この地球を守る意味はない。それが俺たちの気持ちだ、エクシードラフトなんだ」
 レッダーの説得を受け、遂に銃を下ろすデビット。その隙にカルロスはススムを撃つが、間一髪、 ターボユニットを起動してレッダーが少年を救出。大炎上する工場からカルロスは逃走、ススムをブルースとキースに託したレッダーは、 鉄骨の下敷きになったデビットを救い出すのであった。
 ヒーローの綺麗事としては正しいのですけど、こういう展開の場合、その場で“両取り”出来ないと、 今後常に「カルロスの悪事による被害」と「ススムの命」が天秤にかけられてしまう危険性があるので、 そこまでしっかり覚悟して書いているのかについては、若干不安。勿論、だからと言ってススムを犠牲にしていいわけではないのですが、 宮下脚本はその辺りのバランス感覚が微妙に悪いからなぁ……。
 あと、目の前で銃を向け合っている割には、説得シーンが冗長になってしまいました。演出として棒立ちカットになってしまったのも、 いただけない。この辺りのメタルヒーローものでは最も演出の面白い、三ツ村監督だっただけに、残念。
 「見直したよ。地球のポリスも捨てたもんじゃない。エクシードラフト」
 地球と異星、立場は違えど同じ刑事として隼人を認めたデビットは、会田親子の中の宇宙生命体を回収すると母星へと送還。 逃亡したカルロスを追う為に地球へとどまり、エクシードラフトも彼への協力を約束するのであった。引きネタ第二弾は、 まさかの「宇宙人」。
 前回はサブタイトル詐欺でしたが、今回はサブタイトルがエンディングまで語ってしまいました(笑)
 最終盤のトンデモ展開が語り草になる今作ですが、中盤にも結構、トンデモ展開しているなぁ(^^;
 そして大抵のトンデモを平然と受け入れてしまう、エクシードラフトの面々の心の強さ。
 しかし次回、

 た、隊長に女の影?!

 ……そして、ロボット刑務所、っていったい。

 ※余談
 「デビット・秋葉」ってどうも聞き覚えあるなぁ……と思って過去の感想を眺めていたら、 前作『ソルブレイン』41話に登場した国際窃盗団の悪役が、「デヴィッド・式場」でした。あと、ヘンリー・鳥羽(第37話)も居た。 まあ過去シリーズの悪役の名前など逐一チェックしないのでしょうが、前作ぐらいは気にしてもいいような、微妙なかぶり方。 というかそもそもどうして、謎の日系名前が多いのでしょうか。国際犯罪っぽい雰囲気は出したいけど、 完全に横文字だと視聴層に馴染みにくいので配慮、とかそういう縛りでもあったのか。

→〔その5へ続く〕

(2013年5月24日)
(2017年3月17日 改訂)
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