■『特捜エクシードラフト』感想まとめ2■


“心に沁みる コバルトの空
そいつはおれたちの 若さの色だよ”


 ブログ「ものかきの繰り言」の方に連載していた『特捜エクシードラフト』 感想の、まとめ2(6〜10話)です。文体の統一や、誤字脱字の修正など、若干の改稿をしています。

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◆第6話「トラック母ちゃん」◆ (監督:新井清 脚本:山田隆司)
 中東で活動する国際テロ組織・「砂漠の狼」の全世界的な取り締まり作戦が決行され、日本支部メンバーも全員逮捕に成功する。 だが、外国の支部から来日していた組織の一員・武藤が、新潟港へ持ち込んだ核弾頭を長距離トラックに運搬させ、 「砂漠の狼」メンバー解放を迫る。核弾頭を積んだトラックには時限爆弾、そして人質となるトラック運転手とその同僚…… はたしてエクシードラフトは、この大型テロを防ぐ事が出来るのか?!
 ちゃんと犯人との電話を引き延ばす本部長、優秀!(笑)
 先代は電話受けると「なんだと?!」「馬鹿な!」「おい!」ぐらいしか言わなかったから。
 テロ事件の中で、仕事をする母親の格好いい姿と耕作のキャラ立てを絡めて母子の絆を描き、 母ちゃんに恩義のあるトラック野郎達が集まって、デコトラ軍団が集結。それを利用して母ちゃんのトラックに取り付いたブルースが 時限爆弾を解除、なども格好良かったのですが、ちょっと前半のプロットに凝りすぎた気がします。
 レッダーが新潟で犯人逮捕に回り、お約束の爆発大脱出をブルースがやる、というのは面白かった。
 …………で、耕作も拳もトラック母ちゃんがちょっと着飾った途端に態度がえらく不自然になったけど……熟女好き?

 次回、隊長・逮捕。

 早いよ!!

◆第7話「隼人 指名手配!」◆ (監督:三ツ村鐵治 脚本:宮下隼一)
 見所は、手榴弾を華麗に回避する7年前の本部長。
 地球平和サミットの開催が迫る中、本部長と隼人は悪の組織“赤いスペード”への潜入作戦を決行する。 投降しようとした銀行強盗を偽装で射殺して緊急逮捕された隼人は、更に連行中にパトカーから脱出逃亡し、指名手配を受ける。 そんな隊長に接触してきたスペードの幹部……それは、7年前に死んだ筈のヒットマン、矢崎であった。
 矢崎役が春田純一さんという事もあってか、突然始まる、隊長と矢崎の殴り合い。
 格闘戦の最中、受けた傷が急速に回復する矢崎だったが急に苦しみだし、謎の錠剤を飲んで落ち着きを取り戻す。 矢崎にアジトに連れて行かれた隼人は組織に入れるかどうかのテストを受け、その条件として、本部長を撃ち殺す!

◆第8話「スペード最終作戦」◆ (監督:三ツ村鐵治 脚本:宮下隼一)
 本部長を射殺した事により信用を得た隼人は、スペードの一員として認められ、謎の頭痛に苦しむ矢崎は、 急に弱気になってそんな隊長に色々と相談する。
 隊長のカリスマは、どんな相手にも通用するのだ!
 混乱する矢崎の心につけ込み、アジトを抜け出した二人は、なぜかトラックで逃避行。 隊長は矢崎が苦しんでいる間に密かに本部に暗号通信を送り、エクシードラフトを呼び寄せる。 本部長の殉職により隊長が本気で裏切ったのでは……と疑いながらも呼び出しに応えた耕作、拳、 愛は姿を見せた隊長と矢崎に銃を向ける……だがその時、その場に現れたもう一人の人物、それは死んだ筈の桂木本部長だった!
 前回の射殺シーンで、お互いのアイコンタクトにより、とっさに隼人が本部長がいつも胸ポケットに入れているラジオを撃った為、 弾丸は貫通せずに無事だったが、弾着のショックで本部長は仮死状態になってしまっていた…………という事なのですが、 衝撃度と本当らしさを増す為か、本部長、霊安室に寝かされていたのですけど…… 死因はなんだと判定されたのでしょう。
 どう考えても、医者と隊長と本部長でぐるになって、耕作・拳・愛の3人を からかって遊んでいます。
 前回冒頭も、この3人にはなぜか、潜入捜査による事件の偽装だという事を伝えておらず、凄く、タチ悪い。
 それこそ、この前後編が、耕作・拳・愛に対する、エクシードラフトの最終入隊テストっぽいんですが。
 隊長、正統派のヒーローだと信じていたのになぁ……(笑)
 シムの解析によって判明した矢崎の正体……それは、今の矢崎は、7年前に死んだ矢崎のクローン、という事実だった!
 そしてスペードの最終作戦、それは、サミットに集まった各国の首脳をクローンと入れ替え、密かに世界を思い通りにするという、 恐るべきものであった。本部長からこの事実を聞かされた矢崎は、トラックを奪って逃走。 トラックに食らいついて荷台に乗り込んだ隊長は、スペードのアジトで矢崎と合流、何故か意気投合した二人は、アジトに襲撃をかける。
 ここは“自分がクローンだという真実を知らされたクローン体(クローンとしての寿命が近づいている)は、 ほぼ確実に制作者を裏切る”というステレオタイプに乗っかっているだけで、劇中での心理の流れが全く見えてこないのが、残念。
 か、隊長から変なフェロモン(主に男に有効)が出ている。
 二人の前に姿を見せる、“赤いスペード”のボス。車椅子に乗って現れたその男は――本物の矢崎であった!  7年前の事件で重傷を負いながら何とか生き延びた矢崎だったが、脳の一部を損傷、自分の足で歩く事もかなわない体となり、 自らのクローンを作り出すと共に、クローンによる世界の支配を計画したのであった。
 構成員の十字砲火から隼人をかばい、倒れるクローン矢崎。
 自分の中に生まれた感情は、人間のものなのか……?
 「おまえは人間だ。怒り、悲しみ、そして俺をかばってくれた。これ以上、人間らしい行為はない」
 隼人の言葉に満足し、微笑みを残して溶解していくクローン矢崎。
 後を追ってきたブルースとキースが駆けつけ、隼人もレッダーに実装。構成員を部下に任せ、赤いスペード・矢崎を追い詰める。
 「勝者などいない。もしもおまえが負けたのだとしたら、悪の道に走る前の、純粋だったおまえ自身に負けたんだ!」
 貧しさの中で生きる為に他者を蹴落としていた幼年期……しかしその中にも、人間らしい優しさの輝きはあったのではないのか?
 「思い出してくれ、矢崎!」
 レッダーの叫びに唇をふるわせる矢崎の瞳に、過去がよぎる。だが矢崎はレッダーに車椅子ビームを浴びせると更に逃走。 クローン培養施設を爆破すると、研究者達を助け出すエクシードラフトを見ながら、レッダーの呼びかけを拒否する形で、大自爆。
 こうして、犯罪結社・赤いスペードは壊滅するのであった。
 ……て、壊滅はやっっっ。
 いったい何がしたかったのだろうレベルで壊滅したというか、世界的な組織の割には、構成員少なかったなぁ(笑)
 さて序盤ここまで目立つのですが、前作で失敗したテーマ的な部分を意識的に拾いに行っている感じは良いと思います。 やはりこういう作品は、良くも悪くも主人公のヒーロー性に物語が寄っている所はあって、しかしそれでいいのだ、 という形で意図的に描く事で、前作との決別をはかっているように見えます。
 徹底的な悪・悔悛を呼びかけるヒーロー・必死の叫びは届いたのか届かなかったのか……・しかし最後まで、 ヒーローはヒーローらしい行動を貫く
 その大事な部分を守っているので、見ていて嫌な感じが残りません。
 前作は試みは悪くなかったのだけれど、どうにも踏み込み方が中途半端になってしまった結果、 その大事な部分を見失ってしまいましたが、かなり意図して踏まえた上で、“救い”を描いたように思えます。
 ただ、シナリオそのものは褒められた出来ではありません(^^; 終盤の隼人の台詞とか格好いいし好きなのですが、 どうしてもそこまでの積み重ねが足りない、足りなすぎる。肝心のところ(本部長まわり)が致命的におかしい点も含め、 全体的な緊張感の足りなさなど、前作の反省を踏まえただけ、のシナリオになってしまったのは残念。
 また、折角、昼行灯・食わせ物系で、大きく差別化をはかった本部長が、早くもすっかり正木化してしまったのは、非常に残念。 “隠れた実力者”みたいなのは良いと思いますが、結局今回も、射撃の名手で前線で格好良い所を見せてしまうのか、と。 本部長の殉職?!に対する感情移入もこの序盤でやられてもいまひとつ湧かず、中盤以降にやるような話を 序盤にやってしまってどうにもちぐはぐ、みたいな据わりの悪さもありました。
 なんにしろ、スペードは何をしたかったのだろう……(笑)
 いきなり隼人をナンバー-3に抜擢するほど、人材難だったのは確かみたいですが。
 或いは、隊長から妙なフェロモ(以下略)
 さて次回、扇澤脚本なら当たりパターンの予告でしたが、扇澤さんだったらいいなぁ。ゲストの遠藤憲一さんも含めて、楽しみ。

◆第9話「危険な家族ごっこ」◆ (監督:箕輪雅夫 脚本:扇澤延男)
 タレコミにより宝石強盗団の大物・堂島のアジトに踏み込んだエクシードラフトだったが、アジトはもぬけの殻。だがそこで3人は、 腹を刺された堂島の部下を発見する。病院に運び込んだ男の話によると、強盗団で仲間割れが発生し、 長井という前科者が大量の宝石を持ち逃げしたのだという……堂島は必ず、この長井を捕まえようとする筈。 エクシードラフトは堂島の確保の為にも、長井の行方を追う。
 その頃、長井(演ずるは後に妖怪軍団を率いる事になる遠藤憲一)は小学生が一人で留守番をしていた小田切という家に潜んでいた。 小田切家は父は研究者、母は教育評論家として忙しく働いており、一人息子のマモルが病気で学校を休んでも、 二人とも仕事へ行ってしまうような家庭。マモルにとって家族と言えるのは、父が作った家政婦ロボット・キーパーだけであった。
 キーパーは、人間大の着ぐるみロボット。掃除機のヘッド部分が左手にまんま付いていたり見た目は今ひとつよろしくないものの、 コミュニケーション能力も高く、かなりのハイテク。色が乳白色なのは、白物家電の一種という事なのか。
 悪党ではあるが非情ではなく、どこか脇の甘い長井は、そんなマモルにオーストラリアへの高飛びの予定を語る。
 「連れてってやるんだ、こいつらを」
 と懐から取り出した小さな二つの袋……それは、亡き妻子の遺骨であった。ところが、 一緒に持っていた筈のロケットを落とした事に気付く長井。くしくも小田切家の玄関先の植え込みに落ちていたロケットを見つけた 堂島配下が小田切家に突入。長井は慌てて車で逃げ出して追っ手を振り切るが(箱乗りで射撃してくる追っ手がとてもアクティブ) ……なんと後部座席にいつの間にかマモルとキーパーが乗り込んでいた!
 「連れてってほしいんだ、僕もオーストラリアに!」
 実は、かつて小田切家ではオーストラリアへの移住計画が持ち上がったが、母の心変わりで断念。仕事、 仕事で自分を見てくれない両親への嫌悪から、いつしかマモルにとってオーストラリアは夢の国となっていたのだった。
 逃亡の足手まといだ、と潜り込んだ倉庫でマモルとキーパーを縛りあげる長井だが、なら足手まといにならない所を見せてやろう…… とマモルの指示を受けたキーパーが、内蔵されたハサミでロープを切って脱出すると、コンビニで食料品を盗んで帰ってくる。 これに毒気を抜かれた長井は、夕方の船を待つまでの時間潰しもあってか、二人を自由にする。
 キーパー、映像上は念動でハサミを動かしており、どれだけ高性能なのか、 というか息子の為に個人用にこんなロボットを作ってしまう小田切父、危険人物。
 長井が妻子の遺骨を持ってオーストラリアを目指すのには、ある理由があった。かつて真っ当なサラリーマンだった長井は、 妻子をオーストラリア旅行へ連れて行く約束をしていたが、仕事にかまけて伸ばし伸ばしにしている内に、4年前、 妻子は交通事故で死亡。遺された長井は道を踏み外し、踏み外しながらも今、その約束を果たそうとしているのだった。
 マモルの境遇と、かつての自分の人生を重ね合わせる長井……。
 その頃、コンビニの防犯カメラにキーパーが写っていた事から、エクシードラフト本部にやってくる小田切両親。きつい感じの母親に、 マモルが長井の人質になっている件について、責任の所在を明確にするように言われてしまうエクシードラフト(笑)
 あー、『ソルブレイン』に一度ぐらい、こーいう人が欲しかったなぁ(笑)
 キーパーが盗みに入ったコンビニ近く、海岸エリアへ向かうエクシードラフト……本部を出る直前、耕作は足を止める。
 「病気で学校休んだ日ぐらい、一緒に家にいてやれよお母さん」
 それは小田切母を激昂させるだけであったが、母親を早くに亡くした耕作は、わかっていてもそれを言わずには居られなかった…… と「トラック母ちゃん」の回の設定を拾ったのは良かった。……いやまあ、これぐらいは普通の仕事ではありますが、なにぶん前作が、 キャラクターの連続性をほぼ全く拾わないという作品だったので、早い内に連続性を明確に見せてくれたのは良かったです。 扇澤さん以外の人も拾ってくれないと、全体としては安心できないですが(^^;
 「子供を失う悲しみを知ってる奴が、子供を人質になんかとるわけねえよ」
 海岸エリアを捜索しながら、やるせなくたそがれる耕作。
 彼は長井の行方を追っている際にその経歴を知った事から、長井がマモルを無理矢理人質にしているわけではないと考えていた。
 隊長もまた、コンビニに強盗に入ったキーパーがマモルについて何も伝えなかった事から、マモルは人質に取られたのではなく、 自らの意思で長井と一緒に居るのだと確信していた。
 「たとえ自分の意思で動いていようと、我々は守くんを長井から奪い返さなけりゃならないんだ」
 「どうして!」
 「そこまで言わせるな、俺に!」
 いやぁ、格好いいなぁ、隊長。
 語りを要求されるヒーローであり、しっかりと部下を叱るキャラクターでもあるが、しかし口に出して言っちゃあいけない事がある、 というスタンスが素敵。
 ちゃんと、竜馬さんと違う格好良さになっているのが、素晴らしい。
 エクシードラフトの小田切母への評価の低さは、全員やや感情的すぎるきらいはありますが(笑)
 一方、船の入港を待つ長井、マモル、キーパーの3人はすっかりくつろいでいた。長井が父、キーパーが母、マモルが息子、 かりそめの家族写真のフレームにおさまる3人。どうしても一緒にオーストラリアへ行きたいと決意を曲げないマモルの 「(両親を)捨てるんじゃないよ、とっくの昔に僕が捨てられてたんだ」という言葉に、マモルを連れて行く決意を固める長井。
 家族を失った男と、
 家族を見失った子供と、
 家族代わりのロボットの
 それは束の間の家族ごっこ。
 だが、いよいよ船が入港してきたその時、3人は遂に堂島一味に見つかってしまう。銃を手に乗り込んでくるちんぴら達、 「坊主、この裏から逃げろ、いいな」と自分が囮になってマモルを逃がそうとする長井だが、マモルはそれを拒否。 追い詰められる3人だが、そこへ、キーパーのコンピューター波長をシムに探知させる事で潜伏場所を特定したエクシードラフトが突貫。
 それを見て、算を乱して逃げ出すちんぴら達。
 まあ、拳銃が一切効かないあんなの(時間制限のないファイヤーが3体居るようなものである)が、 3人で突撃してきたら確かに怖い。
 堂島一味はあっさりと確保され、パトカーで現場にやってくる小田切両親。
 「坊主、遊びの時間は終わりだ」
 それを見た長井は、自分を慕うマモルを敢えて締め上げ、拳銃を突きつけて人質に取ったふりを装いながら彼等の前に姿を見せる。
 「キーパー、俺を突き飛ばして逃げろ」
 声を潜めて背後のキーパーに、拳銃を奪ってマモルを助けるようにと指示を出した長井は、嫌がるマモルにも両親の元へ戻るように説得する。
 ここで、長井とキーパー・マモルの小声の会話の合間に、長井を確保しようとするわけでもなく、棒立ちのエクシードラフト3人のアップを挟む事で、 エクシードラフトの面々にこの一連のひそひそ会話が聞こえている(のだろう)事を、台詞なしで表現した演出は秀逸。
 「いいか、泣きながらお袋の懐に飛び込むんだ。それで、全てうまくいく」
 「やだよ、そんなの」
 「あばよ、楽しかったぜ、家族ごっこ」
 自分が失った“家族”というものを、長井が信じている、というのも良い。
 葛藤の末、長井に体当たりし、マモルを抱えて両親の元へ走るキーパー。その腕の中でマモルは長井へ向けて叫び続ける。 銃と人質を失って両手をあげる長井をエクシードラフトは逮捕し、「おじさーーーん!」というマモルの叫びだけが響くのであった。
 長井を護送するパトカーの中で、彼に妻子の遺骨を渡す隼人。
 受け取った長井の一礼に、隼人はただ、黙って微笑む。
 そして長井は、出航していく船を見る。
 オーストラリアへ自分と“家族”を連れて行く筈だった、船を……
 同じ船を見送る小田切親子と、耕作。
 「ほっぽとくと、子供は船に乗っちまうんだぜ。一度港を離れたら、じたばたしても手遅れなんだ」
 「マモル……」
 立ち去る耕作。
 船を見つめ続ける、マモルとキーパー。
 そして少し離れた所に、小田切両親。
 ナレーション「――幻の船が、港を離れていった。少年の、本当に乗るべき船は、これから作られる。家族という名の、船が」
 と、家族の再生を暗示して終了。
 出だしはバタバタしていましたが、後半の盛り上がりはお見事。
 長井の当初のちぐはぐな感じが、終盤にぴたっと人格にはまっていく感じは、仮に遠藤憲一が狙って演じていたのだとしたら、凄いなぁ。
 その長井かキーパーが、守をかばって死ぬ(壊れる)、みたいな展開にしなかったのも良かったです。また、この手の話は犯人役を、 運が悪くて道を踏み外したけど実は善人、とかにしがちですが、長井が悪党である事には自覚的なところも良かった。
 予告から期待通りの扇澤脚本、そして期待通りの面白さ。
 いやーーー、実に良かった。
 90年前後の扇澤脚本のアベレージの高さは、東映特撮史において、語り継ぎたいレベル。
 まあ私も、東映公式Youtubeのお陰で知った脚本家ではありますが(^^;
 メタルヒーローシリーズに『メタルダー』からずっと参加しているものの、メインライターとしての参加が無いのが、 ネームバリューが今ひとつな所以でしょうか。これだけ書ける人なら、メインライターでという話も一度ぐらいあったかと思うのですが、 それが無いのは数を書けないタイプなのか、出来上がった世界観の中で書くのは得意だけど企画立ち上げとかには向かないタイプだったのかなぁ……。
 本当に、90年代に扇澤戦隊は見たかった。
 今からでも、扇澤ライダーは見たい。
 まあ若干、対象年齢どこだよ?! という傾向はありますけど(笑)  だから、今ならライダー。
 今作も、扇澤脚本は、楽しみに出来そうです。
 次回、
 レッダーvsブルース&キース!
 「想像を絶する、禁断の戦いが始まった!」
 ……んー、2週ぐらい前にも、やっていたよーな。
 隊長が部下に跳び蹴り、決めていたよーな。

◆第10話「隼人の一番長い日」◆ (監督:箕輪雅夫 脚本:酒井直行)
 勝の頼みで、心臓の病気で入院し、手術を翌日に控える正彦少年のもとへ見舞いに行くエクシードラフト。 エクシードラフト大好きの正彦は大喜びするが、翌日に控えた手術を嫌がり、母親や医者、はてはエクシードラフトにまで
 「みんなして僕を騙そうとしている」
 と苛立ちをぶつける。その様子に、
 「甘えるんじゃない!」
 と隊長、一喝。
 キレた、隊長、キレた(笑)
 うん、隊長は、相手があんまりだと、部下だろうが子供だろうが、キレるのがいいところ(笑)
 「手術が怖くて逃げているだけの、弱虫秒という病気にかかってるだけの病人だ」
 と正彦に勇気を持って手術を受けるように諭す隼人だったが、
 「隼人さんなんか大っ嫌いだ」
 と面と向かって言われて、ちょっとショック(笑)
 その夜……
 「嫌だ、手術なんて、嫌だ……」
 明日なんて来なければいい、と病室のベッドで苦悶する正彦。
 「耕作達の言うように、少し、強く言い過ぎたかもしれない……しかしわかってくれ、正彦くん……」
 自宅でちょっぴり反省する隊長。
 しかし隊長、どうして深夜12時にジャケット姿でベッドに転がっているのか(笑)
 もやもやした世界の中で、日付が変わろうとする柱時計を、叩き壊す正彦。
 そして翌日……
 昨日の事が気になって、手術が終わった頃の時間に病院に向かった隼人は、壊れた時計を見る。そして正彦の病室に入ろうとするが、 何故か201号室は立ち入り禁止。拳に呼ばれて202号室に入ると、そこにはなぜかベッドの上で跳ね回る正彦の姿が。 正彦は手術を受けた後ではないのか……? ところが、「手術は明日でしょ」と部下二人。
 今日は4月4日……? と混乱する隼人に向けて、「実装してみせて」と昨日と同じ無茶を言ってくる正彦。 それは無理だと隼人が告げると、「ならここで事件事故が起こればいい」という正彦の言葉に応えるかのように、突然、 先日逮捕した筈の連続ビル爆破犯人タケダが、ダイナマイトを手に病院の前に現れる。
 ダイナマイトの爆風を浴びると変身している、という凄くファンタジーな実装をしたレッダー、ブルース、キースは、タケダを確保。 ところがその途端、タケダもトライジャケットも、まるで舞台の役目は終わった、と言わんばかりに消え失せてしまう。
 「いったい、なにがどうなっているんだ……?」
 奇妙な出来事の数々に、201号室へと向かう隼人。そこで見たのは、ベッドで眠り続ける正彦の姿だった!
 そして現れた“もうひとりの正彦”が、念動力で隼人を病室の外へと吹き飛ばす。
 「4月4日が永遠に続くこの世界に、ずっとずっと住むんだからね」
 それは手術を拒む正彦が作り出した幻影なのか異世界なのか……
 「こんな世界に逃げ込んでも、君の心臓は絶対に治りはしないんだぞ!」
 と勇気を持って手術を受けるんだ、と正彦を説得する隼人は病室のドアを開けて無理にでも正彦を目覚めさせようとするが、 その前に立ちはだかるのは、ブルースとキース。攻撃を受けた隼人は外の車で「実装」し、今ここに、レッダーとブルース、 キースの対決が始まる!
 2対1の激しい立ち回りですが……エクシードラフトって大抵のちんぴら達との戦闘力の差が激しいので、本格的な直接戦闘って、 ほぼ初めてに近いレベルのような……それが、これで、良いのだろうか……(笑)
 むしろ、直接的な立ち回りが設定上やりにくいので、それで作った話と見るべきなのか。
 前にも一度やりましたが、レッダーのスーツで飛び回し蹴りする中の人、凄い。トライジャケットが見た目より軽いのかもしれませんが、 それにしても、凄い。
 二人の攻撃にさすがに苦戦する隊長だったが、
 「ブルース、キース、悪く思うなよ」
 と言ったと思ったら、飛び道具で瞬殺。
 この現実主義が堪りません(笑)
 夢の世界を終わらせるべく、正彦の元へ向かうレッダー。シャドウ正彦の激しい念動攻撃にヘルメットが吹き飛ぶが、 それでも隼人は前進し続け、説得を諦めない。
 「君は永遠に弱虫で平気なのか? 平気なのか?」
 復活したブルースとキース、そしてレッダーの傷ついた姿に、自分の好きだったもの、本当の勇気を見つめ直したシャドウ正彦は、 攻撃を止める。ドアを開けようとした隼人を「待って、僕が、僕が起こすよ」と制し、ペルソナは一つとなるのだった……。
 そして、今度こそ翌日、4/5……正彦はエクシードラフトの面々に見送られ、勇気を持って手術室へと向かう……と、 一切の超科学アイテムが出てこなかった事に加え、隼人が囚われた世界に関して、劇中での説明を全くつけなかった、 という点で《レスキューシリーズ》というくくりで見ても、珍しいエピソード。
 もっとも、超能力が存在しているのはハッキリしているので、正彦の潜在的な超能力が、手術を前にした過度のストレスと 隊長にキレられたショックで発動した、という所でしょうか。
 隊長は途中で「俺たちみんなが囚われた」と言っていましたが、多分、現実からこの世界に引きずり込まれているのは、 正彦と隊長だけだったのではないかと。
 危うく植物状態の隊長が自宅ベッドでジャケット姿のまま発見されるという、 エクシードラフト最大の危機になる所でした。
 また、こういった関係者コネで個人を“特別扱い”するネタ(エクシードラフトによる病気の子供の見舞い)は、 物語上のルールに無自覚に大穴を空けあけがちなのですが、姉(日向愛)が一線を守ろうとするシーンを入れた点は、評価したい。

→〔その3へ続く〕

(2013年5月24日)
(2017年3月17日 改訂)
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