■『ブルースワット』感想まとめ8■


“明日はきっと きっ きっ 良い事ばかり!”


 ブログ「ものかきの繰り言」の方に連載していた『ブルースワット』 感想の、まとめ8(46〜最終話)です。文体の統一や、誤字脱字の修正など、若干の改稿をしています。

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〔まとめ4〕 ・ 〔まとめ5〕 ・  〔まとめ6〕 ・ 〔まとめ7〕


◆Volume46「GP(ゴールドプラチナム)戦闘不能!」◆ (監督:石田秀範 脚本:浅香晶)
 前回ラストを受けてシグの体を検査するも、「専門の設備がないとわからない」とこぼすセイジを、 「何とかしろ」とショウが怒鳴りつけ、いや梨奈さんの研究所で調べてもらえば良いのでは…… とさっそく全力で地雷を踏みに行く姿は、もはや名人芸。
 調査研究班に所属するエイリアン・マニーがブルースワットに挑戦状を送りつけ、 ブルースワットのデータを元にした《挑発》の抵抗判定に失敗したショウの怒りの電波に応え、開始5分で駆けつけるお父さん。
 「うわ……プラチナム呼んじゃった」
 「早く来い!」
 コミカルな展開から、ショウが自覚的にお助けメカとして命令形でプラチナムを召喚するという、 絆も心の繋がりも完全粉砕する最悪の自虐ギャグこれまでのプラチナム召喚は何かも話の都合における茶番に過ぎなかったと露悪的に見せつけ、

 最後の一線を軽々と踏み越えてしまいました。

 Aパートがギャグ多めなのに対してBパートはシリアスに進むので、これが脚本ベースなのか、石田監督の仕業なのかわかりませんが、 今作中盤以降の最大の問題点を自分たちで嘲笑ってしまったのは、非常によろしくなかったと思います。
 誰が見ても茶番でも、この物語の中では茶番ではない、という一線は守り通して欲しかったです。
 ところがマニーの取り出したスペース掃除機はドラムガンファイヤーのエネルギーを吸収。実体弾さえ無効化し、 金色宇宙船ビームまで吸い込んでしまう。挙げ句にシルバニアまでエネルギーに還元し、トドメに全エネルギーを奪われてしまうプラチナム。
 「今のプラチナムはタダの金色の木偶人形さ!」

 お父さん、無職に。

 盛り上がったジスプが戦闘に乱入し、プラチナムを連れて逃走するブルースワット。
 「私がここで盾になる。君達だけで、逃げろ!」「犠牲は、最小限にとどめなければ。戦う力が残ってない今の私は、 戦士としての存在価値は、ゼロだからな」
 一応、第24話の、マフィアの計画を阻止する為なら現地人の1人ぐらい射殺しても構わない、 というプラチナムのシビアさを踏まえた台詞になっているのですが、その後20話以上、タダの凶悪な木偶人形だったので、 第46話にして実質的にほぼ初めて、プラチナムに宿る人格。
 「プラチナムは私たちの大切な仲間じゃないの」
 「仲間……」
 ブルースワットは一斉にプラチナムを 持ち上げ 励まし、プラチナムはこれまでの無法をセルフ回想。
 「仲間……君達の仲間!」
 例えば、これまでショウ含めてブルースワットをマフィア殲滅の為の道具としか扱っていなかったプラチナムが5人の心に感銘を受けて意識を変える、 或いは、これまでプラチナムを超越者としてしか見ていなかったブルースワットがそこにある人格と戦士の覚悟を見て意識を変える、 とか劇的な変化が起きればそこに物語のダイナミズムが生じるのですが、お互い一方的に根拠の描かれない親近感を抱いていた為、 それが一方通行じゃなかったんだ! とか第46話で言い出されても心の温度は一向に氷点下から上昇しません。
 この後、ジスプに雑に扱われたマニーが自棄になって全てを吹っ飛ばそうとするも、ショウが《挑発》をお返しし、 スペース掃除機を奪ってエネルギー逆流。プラチナムが復活してエイリアン軍団に処刑執行し、 妙にコミカルに描いたマニーはどうするのかと思ったら、ジスプの攻撃でざっくり死亡という、これといって面白くも何ともない展開。
 「これからも頼むぜ、プラチナム」
 「共に戦っていこう――信頼する仲間として」
 「プラチナム、なんかとっても嬉しそうだったわね」
 「我々との絆が、また一つ強くなったんですからね」
 0から1にね……!
 前回に続き、クライマックスを目前に控えて巨大な地雷の処理に当たった浅香さんは、まあ出来る範囲で頑張ったとは思うのですが、 根本的に1クール前でやっておいて欲しい内容の為、どうにもなりませんでした。
 次回は、扇澤さんぽい予告ですが、さて。

◆Volume47「暴け!(秘)(○に秘)計画書」◆ (監督:石田秀範 脚本:扇澤延男)
 とてつもなく邪悪な蠢きを超感覚で捉えるシグ、という今回も実に手を抜いた導入で暗雲漂ったのですが、
 「何故だ……。準備は全て進んでいるというのに、どうしていまひとつ組織の中に緊張感が、 戦意の高まりが見えないのだ!」
 突然、凄く面白い事を言い出すクイーン(笑)
 実質的に組織壊滅寸前なのに社員にやる気が見られないのは、みんな転職先を探しているのだと思います!
 最終作戦を控えたクイーンは綱紀粛正に乗り出し、見せしめの為にぐうたら社員どもを大雑把に処刑しようとするが、 部下のピンチに急ぎ駆けつけるムッシュ&でこ男&六角。更にそこへブルースワットが乱入し、 命からがら逃亡に成功した2人のエイリアン、ジタンとコズマは身柄をブルースワットに拾われる。
 今作ここまで、エイリアンの人格を前面に押し出すエピソードはやり方が半端であまり上手く行っていなかったのですが、今回は、 まんまガンギブソンの兄貴分ジタン(CV:鳥居賞也)・恐らくエイリアン基準では美青年の気の弱い弟分コズマ(CV:関智一) が好キャスティングで、しっかり感情移入させる作劇が上手く転がりました。ジタンの方は鳥居さん前提のアテ書きだったのかも。
 なお、この年『機動武闘伝Gガンダム』のドモン・カッシュで一躍名を馳せ、翌年『超力戦隊オーレンジャー』でブルドントを演じ、 その後も数々の悪の組織に所属したりゴーカイチェンジしたり俺開眼したり今や東映特撮に欠かせない声優となっている関智一は、 今作が特撮初参加作品との事。
 「ずっと探してるんだ……落ち着ける場所を。スペースマフィアに入ったのもそうだった。どっかに、 自分たちに似合いの星が見つかるんじゃないかって」
 マフィアの一員だった事はさくっと水に流し、故郷を失った流れ者という2人の境遇に同情するブルースワット。
 「一つだけ、追っ手の来ない場所があるぜ」
 スペースマフィアの裏切り者となってしまった2人に、ショウは一つの提案をする。
 「いつでもないいつか。どこでもないどこか。こことは全く別の時空間だ」
 「行けるの?! そんな所」
 「ゴールドプラチナム、彼の力を借りれば恐らく」
 ショウが急に詩的な表現で適当な事を言い出しますが、毎晩毎晩、枕元に立つプラチナムが黄金白金教の教義を唱え続けているので、 こうなってしまっても仕方ないのです。許さねぇ許さねぇったら許さねぇ。
 「ギブアンドテイクといくぜ」
 一方的に借りを作ったまま逃げていくのは流儀に合わないと、ジタンはコズマを引っ張っり、 クイーンの最終作戦の内容を手に入れる為にアジトへ潜入。そこではムッシュがクイーンを挑発していた。
 「ご自慢の最終作戦を目前に、脱走者が出たとあっては、クイーンの威信も丸つぶれでないかと」
 「逃げた2人は貴様の部下。万一見つからぬその時は、貴様のその首を持って始末に変える」
 「なに?!」
 当然の反撃をされたのに、全く予想外の逆襲を受けた表情で引きつるムッシュは、 ここまでのムッシュで最高に面白かったです(笑)
 嫌味を言いに言ったら首が危なくなったムッシュ一行はアジトへ忍び込んできたジタン&コズマを目にするが敢えて泳がせ、 クイーンの最終作戦のデータを奪うに任せる。ジタン&コズマはその概要をブルースワットに伝えるも、 詳細を秘密にしたまま作戦の進行現場へ2人で向かう……と、ブルースワット、ゲストエイリアン、クイーン、ムッシュ、 の4者の状況と思惑が錯綜しているのは、今作にしては凝った展開。
 まあこの後、現地であっさり合流してしまうのですが(^^;
 クイーン最終作戦の阻止の為にブルースワットは出動し、ザジの面倒を見るという名目でスミレを留守番させる、 というのも珍しい状況設定。何もかも今更という気はしますが、どちらかというと、 気がつくとザジがアジトに転がっているのを示すシーンがここしか作れなかったのかも。
 クイーンの計画とは、「マントル活性化による全地球大地震作戦」。 その準備を進める海底基地の入り口を発見したブルースワットはジタン&コズマと合流するが、そこでは既にクイーンが待ち受けていた。
 「いつもでない、いつか。どこでもない、どこか。そこで、明日を掴むのよ!」
 クイーンに一太刀浴びせようと、ブルースワットの援護を受けながら突き進むジタンだが、親衛隊にコズマが殺害されてしまう。 ショウの怒りの電波に応えてお父さんが仕送りに現れ、話が比較的まとまっている時ほど、台無し感が増すのは仕様です。
 ハイパーショウの攻撃を受けてクイーン達は撤退し、海中に向けてドラムガンファイヤーを撃ったら、 海底基地が大爆発(おぃ)
 もはや基地へ入り込む必要も無かったという、茶番×茶番。
 ジタンは花の種とコズマの死体を抱え、夢だった花いっぱいの世界を見せてやる、とプラチナムと共に時空の果てへ旅立つのであった…… なおプラチナムへの具体的な夜逃げの依頼内容やプラチナムが承諾したシーンが一切描かれていないので、連れて行かれた先は、 毎日16時間ベルトコンベヤーで流れてくるシルバニックギアの部品をひたすら組み立てる世界という可能性もありますが、 飛ぶ前に確認しよう契約書。
 「エイリアンの言葉じゃ、ジタンってどういう意味なの?」
 聞かれた意味がわからないという表情のシグに、地球ではフランス語でジプシーの事、と説明するサラ。
 「流浪の民だね。落ち着く所を持たない者達」
 「でもやっと見つけたんだ奴等は。落ち着ける場所を。……な」
 その光を見送る4人の姿を描いて綺麗に落としているようで、シグの反応は当惑なのですが、 あくまで地球人のセンチメンタリズムというか、エイリアンの言葉で意味を重ねるとやりすぎという判断であったのでしょうか。 物語としての意味と言うより、脚本家のテーマ性が押し出されている感じが強いですし。
 カメラ青年が「本当の居場所」を探しに旅立つ第7話、ロック青年が背伸びした夢を諦めて彼女と帰郷する第14話、 エイリアン夫婦が「残された時間、静かに過ごせる所へ」旅立つ第31話、 と今作の扇澤脚本回の約半分程度が“ここではないどこか”へ旅立つ結末なのですが、扇澤さんの中では、 わざわざ地球を侵略しにくるスペースマフィアという組織自体が、“宇宙の根無し草”という位置づけであったのかもしれず、 それと重ねた扇澤さんなりの通しテーマだったのかな、と。
 それが今作にとって適切だったかどうか、という事についていえば、今作における全体的な扇澤脚本の切れ味の悪さを見るに、 最初の入り方を失敗したのかも、という気はするのですが。
 ただ、随所に『ブルースワット』らしい雑さはあるものの、ゲストの好演もあり、今作の扇澤脚本回の中では、 初めて真っ当に楽しめる出来でした……『ブルースワット』基準ではありますが(^^;
 エイリアンアジトではムッシュがクイーンをせせら笑っていたが、クイーンは、 こんな事もあろうかと準備していたもう一つの最終作戦を高笑いと共に予告する。
 次回、部下を処刑されて怒れる上司ムッシュJ、更なる改造、そして反逆!

◆Volume48「反逆! 俺が王(キング)だ」◆ (監督:三ツ村鐵治 脚本:扇澤延男/増田貴彦)
 「なんと恐ろしい作戦だー」
 ホントこの時期何かあったのだろうか、というぐらい三ツ村監督回に単調な説明台詞が頻出する気がして引っかかります(^^;
 クイーンはマフィアの構成員すら怯えさせる空前絶後の最終作戦を前に改めて組織の引き締めを図るが、 その内容にますます叛意を募らせるジスプ。一方ブルースワットでは、シグが皆から、これ以上地球人の肉体と融合が進む前に、 おまえ一旦帰れ、と勧められていた。
 「自分の星に帰りたくても帰れなくなっちゃうのよ?!」
 地球人と融合していく=宇宙人としての生命力を失っていく、という解釈がなされ(前回も、 スペース超感覚が弱まっているという言及あり)、地球の為に戦うシグが故郷を失いつつある、というのはやはり、 放浪者と故郷というのが、扇澤さんにおける今作の通しテーマの模様。
 ザジの為にもここで帰るわけにはいかない、と強情を張るシグだが、それにしてもザジは、 お父さんに頼んで新しいカプセルを作って貰えないのか(笑) 多分ほいほい作ってくれると思うのですが。あと、 本来は病院で呼吸器などつけていないといけないのを、プラチナムパワーで生命維持しているという設定だった気がするのですが……。
 地球に呼び寄せたスペースマフィア最高の科学者ドクター・アルド(どうしてまだそんな人材を遊ばせていたのか……) の手で再改造手術を受けたジスプはブルースワットと激突するが、スペースマッスルを発動したシグの攻撃を受け、大爆死。 だがそれはブルースワットとクイーンを欺く為の偽装であり、クイーンの監視が離れた間に真の改造手術を受けながら、 ジスプはそれぞれに偽の挑戦状を送りつけ、ブルースワットとクイーン部隊を衝突させる。
 まんまと踊らされたとも知らず両者は激突し、その間に手術台で生い立ちを回想するジスプ。
 もともとジスプは貧困惑星の被支配階級の出身であり、その時に育まれたルサンチマンとコンプレックスこそが、 スペースマフィアにおけるジスプの原動力であり、そしてかつての支配惑星と酷似した地球の姿こそが、 自らの手で地球を支配するという執着の理由だったのである。
 と、無いよりはマシなジスプの背景が明らかに。
 「私は思った。支配とは、されるものではなく、するものだ」
 六角エイリアンらがジスプの言葉にしみじみ頷いており、腹心2人のやたら高い忠誠心は、 似たような過去を持った者の仲間意識――俺らで一緒に天下取りましょうやジスプさん!――であったのかもしれません。 ぽっと出のドクター・アルドも一緒になって頷いているので、映像はどうも間抜けになりましたが(^^;
 ブルーストライカーまさかの活躍を見せるもクイーンに苦戦するブルースワットだが、お父さん登場。 戦闘が激化したその時、高い所に現れたムッシュがブルースワットとクイーンにまとめて攻撃を浴びせる。
 「私は生まれ変わり、今の名は、キング・ジスプ!」
 妙に格好いいBGMと、ふんだんなスモークを背景にポーズを取るムッシュは割と面白かったです。そして、 てっきり演出かと思われたこのスモークが実はムッシュから噴出されており、 それを浴びたエイリアン達は次々とムッシュに忠誠を誓うように。親衛隊とシグまで洗脳されてしまう、という衝撃の展開なのですが、 ムッシュを讃えるその総数、9人という絵が切なすぎて泣けます(笑)
 「覚えていろ!」
 貴重な親衛隊にまで裏切られて、クイーン逃亡。クイーンとジスプの内部抗争も、そもそもクイーンが、 戦力の9割を失って初登場した為、大物が落ちぶれていく面白さというのが一切生まれず、どうにも盛り上がりに欠けます。 お互いの嘲り合いのレベルも実に低く、いただいたコメントで、スペースマフィア=宇宙のカラーギャング程度では説がありましたが、 最終章だというのに、完全にチンピラ同士の抗争に(^^;
 ジスプはジスプで、引っ張った挙げ句に48話で出てくる最終兵器が服従フェロモンという、物凄い手詰まり感。
 ジスプの背景を中盤ぐらいから少しずつ描いていれば、薬の力でしか王になれなかった男の虚しさみたいなものが表現できたかもしれませんが、 そもそもジスプをどう使いたかったのかという所に始まり、行き当たりばったりな物語の積み重ねの薄さを露呈しています。
 ブルースワットがとりあえずシグだけさらい、逃亡した所で、つづく。スーツ着ているシグを首筋へのチョップ一発で気絶させ、 そのまま担いで運ぶスワット2が格好良すぎ(笑)

◆Volume49「決戦! 王(キング)の最期」◆ (監督:三ツ村鐵治 脚本:扇澤延男)
 のっけからナレーションが「スペースマフィアを追われたジスプ」と大嘘ついていて困ります(笑) 前回のジスプは、 決起集会中に勝手に抜け出してこっそり改造手術を受けている所をクイーンに見つかって「ふーん、 勝手にすれば」みたいな扱いだった記憶なのですが。
 「皆の者、よく聞け! これまで私が展開してきた、地球侵攻作戦の数々。それにはただの一つの誤りもなかった」
 アジトで残り少ない部下から名前の唱和を受けるキングジスプは、そこから自己肯定しないといけないのか(笑)
 服従フェロモンの効果で自意識を失った配下に繰り返し讃えられる裸の王様ぶりと合わせて、キャラの肉付けとしては上手いのですが、 何もかも今更感が募るばかりです。
 ショウ達は「この私にあるのは、偉大なるキング・ジスプ様への忠誠心だけだ!」と凄く楽しそうなシグを念入りに閉じ込め、 服従フェロモンの成分を入手しようとドクター・アルドを探すが、ドクターは既に口封じの為に殺されていた。 ドクターの電子頭脳から記憶チップを取り出すセイジだが、アジトではシグが脱走してしまう……。
 「このゲームは貴様等が共にこの世から消え去るまで続くのだ!」
 あくまで仇敵同士の潰し合いにこだわるジスプは、シグを使って誘き寄せたスワット1と2に、 フェロモンで服従させたクイーンもぶつけるが、スワット1と2はあっさりと一時退却して罠にも何もなっておらず、 この終盤にも相変わらず敵味方ともに雑な戦闘が続きます。
 無事にアジトへ帰還するや早く解毒剤を作れと一方的にセイジを責めるショウは、シグへの友情からの苛立ちを表現しているのでしょうが、 目下認定している相手に当たり散らす感じの悪い姿が某剣崎さん(前半)を思い出して困ります。
 「たとえ威嚇にでも、シグを撃つわけにはいかねえんだよ」
 ショック弾とかインヴェード解除ビームとか考えられる手はあると思うのですが、インヴェード解除ビームの設定を活かすのではなく、 解除ビームの存在が既に新たな地雷になっているというのが、さすがの『ブルースワット』クオリティ。
 「シグの体は、大事な借り物だものね。このザジの父親、広瀬剛からの」
 急に人体に気を遣い、広瀬一家を襲った10年前の悲劇を振り返って設定を確認する2人だが、そこへシグとクイーンが乗り込んでくる。 シグの記憶がある以上、当然想定される事態だったと思うのですが、何の対策も講じていない無警戒ぶりが実に『ブルースワット』クオリティ。
 何度か書いていますが、今作、既存の作品とは違うパターンのヒーロー像を描こうとした筈なのに、 そのヒーローなりの戦闘の文法を全く設計しておらず、“限られた武装で未知の異星人と戦う”というコンセプトが全く活かせないまま、 ブリーフィングも偵察もしなければ待ち伏せやトラップとも縁が無く(トラップを仕掛けるヒーローはどうか、 というのは確かにありますが、しかしそういう事が出来ないなら何故この設定にしたのかという話になるわけで)、 武器の威力もその場の都合でコロコロ変わるという杜撰さの結果、何のスタイルも確立できないまま、 敵と味方の頭の悪さだけが最終盤に極まってしまいました。
 「ネズミとクイーン、刺し違えろぉ!」
 アジトを離れるもシグ&クイーン&エイリアン軍団に追い詰められるスワット1と2だが(なお、戦力を投入しすぎて、 刺し違えようが無くなっている事にキングは気付いていない模様)、Bパート明けにいきなりセイジが駆けつけて、 完成したフェロモン無効化スプレーで全エイリアンの魅了状態をあっさり治療するという、1コンマの盛り上がりも生じない展開。
 正気に戻ったクイーンは怒りの範囲攻撃を放ち、親衛隊と撤退。 銃火器を破壊されてしまったブルースワットは残りのエイリアン軍団と戦う為に、3人揃って日本刀を装備。
 ……えー…………(一度しか使ってないけど)シグの個性は…………。
 サラがナイフでショウはシルバニアパンチとか、せめて3人とも違う近接武器にすればいいのに、どうしてこうなるのか。 銃火器戦闘にこだわっていたならともかく、中盤一時期は格闘アクションを重視するなどアクション演出も場当たり的だった為、 「型」が無いから「型破り」にもならない、という典型例。更に悪い事に、劇中で既に一度使ってしまったアイデアな為に、 最後の最後で突然刃物を取り出した! というネタ的な盛り上がりすら生まれません(^^; 刃物戦闘を一度だけやって、 その後完全にスルーしていた事も、ここに来て見事な地雷に。
 ブルースワットはバッタバッタと雑魚エイリアン軍団を切り払い、何故かこの期に及んで生身棒術で攻撃してくるムッシュトリオ。
 絵としてはそれなりに格好いいのですが、それだけで許されるのは中盤までで、 最終回直前までエイリアンと人間の肉体の使い分けに物語上の合理的な理由が描かれない為、 物語として全く盛り上がりに繋がらないバトルは脳死寸前。
 そしてようやくエイリアンの正体を見せたと思った途端に、あっさり斬殺される下僕AとB。
 六角もでこ夫も、出たり出なかったりが激しいとはいえ、本作序盤から長らく出張っていたキャラクターなのですが、 一切合切が盛り上がらなくて、もはやスタッフの怨念と逃避を感じるレベル。
 なんとなく夕焼けでジスプと最後の直接対決になり、ジスプは3人の同時攻撃に貫かれながらも、倒れない。
 「ジスプ! 許さねぇジスプ! てめぇ絶対に許さねぇ!!」
 そして結局、お父さんを呼ぶ(笑)
 まあ、『ブルースワット』に確立している戦闘スタイルがあるとすれば、このオチだけなんですが。
 ほぼゴールドプラチナムのテーマと化している挿入歌「出発のサイン」は格好いいのですが、 とりあえずこれを流しておけば誤魔化せるので安易に連発されるという点で、『ジバン』主題歌と同じものを感じます。
 お父さんはサービスで飛び道具を直し、4人の一斉射撃がジスプに遂に致命傷を与える。
 「夢が……地球を支配する夢が、かなうと思ったのに……私は、キングジスプだぁ!」
 遂にジスプは爆死し、喜びの報告をした際にこぼしたシグの涙に反応するかのように、意識を取り戻してうわごとで父を呼ぶザジ。 一行は慌てて病院へ向かい、内臓移植の準備として広瀬の体から抜け出そうと踏ん張るシグだが、 何故かインヴェードを解除する事が出来ない。無理をすればシグが外に出る事は可能だが、その場合、 広瀬の体はぐっちゃぐっちゃになってしまう……広瀬の思いを無駄にしない為にも、そんな選択は出来ないシグは果たしてどうするのか?!
 というかあなた方、この状況を病院でどう説明するつもりなのか。

◆Volum50「大激突生か死か」◆ (監督:蓑輪雅夫 脚本:宮下隼一/鈴木康之)
 スペースマフィアの誘導により、ステルス状態で地球に迫り来る巨大彗星。クイーンの最終作戦とは、 彗星を地球に衝突させる事で人類を死滅させるという恐るべきものだった。
 一方、病院へ向かう指揮車の中では、「私はもう、99%人間です」とシグが広瀬の体を抜け出す事を諦め、 地球人・広瀬剛としてザジに臓器を移植する事を決断していた。
 「決心したのねシグ」
 「このまま人間に……地球人になるのねシグ」
 …………あ、あれ、なんか、どうせ広瀬さん脳死だからシグがパパになってもいいんじゃね、みたいな話になっている(笑)
 いや私ずっと、シグが地球人と融合する=広瀬人格に吸収されて消滅する(つまり脳死状態の地球人になる)、という形で理解しており、 周囲もシグもそこの部分で葛藤しているのだと思っていたのですが、全員、広瀬父の事など毛ほども気にしていなかったようで、 若くて可愛い女性以外のインヴェード被害者など、どうでも良いのです。……少しでも、 『ブルースワット』を好意的に解釈しようとした私が間違っていました!
 シグが迫られているのは「自分という人格が消滅してもザジを救うかどうか」だと思っていたのですが、 「故郷へ帰れるかどうか」だったのか。……いや、それもそれで大きな選択ではあるのですが、 シグの望郷の念とか一切全く分子レベルでも描かれていないので、 物語としての葛藤が一切全く素粒子レベルでも成立していません。
 宇宙パワーを失って別の生命形態になるというアイデンティティ喪失の問題などもこれといって描かれていない為に、 葛藤と選択による盛り上がりが皆無なまま、決断だけが一人歩き。
 病院に到着すると、シグやザジについて既に根回し済みであった事が判明。視聴者びっくりの展開を説明する為に、 何故かシグにも秘密で話が進んでいた事になるという、安定の脳死展開。
 「大丈夫。イナギ先生はフワ主任の親友だった人よ」
 そしてまさかの、主任が拾われたっっっっっ(笑)
 第1話で伝説を残したフワ主任の存在が約50話ぶりに持ち出され、ザジの手術受け入れに理由付け。
 その理由の為に作品コンセプトを崩している(事件を通して知り合った以外の人を信用するのは今作の「ロンリーバトルの原則」 に反する)のでまた困ってしまうのですが、一応ここに理屈を付ける必要がある、と今作が考えていたというのがビックリです。
 手術直前、シグはスペーススワットの隊員の証である戦士のナイフ(何故かクリスナイフ)をショウとサラにそれぞれ渡す。
 「手術が終われば、私はスペーススワットの元隊員から、人間に生まれ変わっています。ですからその前に」
 宇宙人シグとしての最後の時間に信頼の象徴を仲間に託す、というシチュエーションは悪くないのですが、 シグの“昔の仲間から今の仲間へ”という切り替えは既に第11話でやっているので、シグの心情としては随分とピンぼけになってしまいました。
 背後に流れる軍楽風BGMの、どこで使ってもどうにもならない感が更にそれに拍車をかけます(^^;
 いよいよ移植手術が開始されるが、ブルースワットの始末にこだわるクイーンの命令により、彗星の接近による異常気象を縫って、 エイリアン軍団が病院を襲撃。
 「地獄へ落ちろブルースワット! 地球と一緒に!」
 の台詞に合わせてやる事が、病院のブレーカーを落とすという、逆の意味で神がかった演出(笑)
 ショウ達の奮闘と予備電源により手術は成功するが、体を気体化したエイリアンが手術室に直接侵入。 だがザジの叫びに反応したシグが目を覚まして息子を守り、駆け込んできたショウ達と共に突き立てた3つの戦士のナイフがエイリアンの体を貫き撃破する。
 ここに来て、戦士のナイフが3人の絆の象徴としてやたらにアピールされるのですが、 上述したように既に第11話で描いた筈のテーマを、何故か片付いていない事にしてしまった為、 この数十話におけるブルースワットの仲間関係って何だったのかという事態に陥り、 目先のアイデアに飛びついてそれまでの物語を次々と茶番に変えていく 『ブルースワット』の真骨頂が炸裂。
 「これで全て消えました。かつて在った、宇宙人としての私の特殊能力が。人間に。この子の父親になる事で」
 「ようこそ、人間の世界へ」
 第50話に至っても、地球人以外は人間じゃない、と言っているようにしか聞こえないのですが、 この期に及んで志より器の問題を強調してしまう、かなり致命的な台詞。シグとの関係性においては、 そこを乗り越える事に意味があったと思うのですが、何もかも雲散霧消。
 「エイリアン」問題はずっと引きずっている今作ですが、「人間」=「地球人」という用法の意図はわかるにしても、 そこにはどうしても、人外/人間、という意識がつきまとって見えてしまいます。
 こういった単語の選択に関しては、脚本→台本→現場(アフレコ)、 という過程において必ずしも思惑通りに行かないというのはままありますが(わかりやすい例では、一人称がブレたり)、 それにしてもつくづく、言葉に対するデリカシーが足りません。
 手術の妨害に失敗し、わざわざ病院まで徒歩でやってくるクイーン一味だが、お父さんが出現したので退散。だが、 クイーンが置き土産にばらまいていた地雷を、シグが踏んでしまう!
 凄いぞー、第50話にして、ラスボスが嫌がらせで置いていった地雷を踏んでヒーロー大ピンチ、という渾身のリアリズム。
 自分たちで設置した物語上の地雷を次々と踏みに行っていた今作において、遂に劇中でヒーローが地雷を踏んでしまう、 という奇跡のシンクロに戦慄します。
 宇宙人の頃だったらスペース超感覚でこんなの回避できたけど地球人になった私には無理だったがザジを救えたので悔いなし!  とシグが爆死の覚悟を決めるのですが、その台詞は、先に言うから格好良くなる(「今の体ではこの熱量に耐えられないが、 それでも構わない!」的な)のであって、凡ミスの後に言ってもちっとも格好良くなりません(^^;
 「我らの、スペースマフィアの、完全勝利だ!」
 結局ブルースワットがどうでも良くなったのか、迫り来る彗星のステルスを解き、地球滅亡まであと24時間、 とアジトで喝采をあげるクイーン一味。エイリアン軍団がクイーンを讃える姿が完全にキングジスプと被ったのは悪の空虚さを表現したかったのでしょうが、 結局クイーンとジスプは同レベルでしたという扱いにしてしまったのは、嘘でも盛り上げるべき最終決戦前に失敗だったような。
 病院前では初使用の挿入歌をバックに地雷処理がひたすら続き、手を握り合った3人がジャンプした所で、つづく。

◆Volume51「グッバイ BS(ブルースワット)」◆ (監督:蓑輪雅夫 脚本:宮下隼一/鈴木康之)
 踏んでしまった地雷を起爆させない為に圧力をかけ(地雷処理の緊急手段としては間違ってはいない)、脱出に成功したと思ったら何故かいきなり銃を抜き、 爆発せずに済んだ地雷を撃って自ら爆破する、という開幕から愕然とするシーン。
 爆発の規模が不明なので、セイジとスミレに病院の人達の避難誘導をさせていた筈なのですが、いったい何をしたいのか。
 いやまあ、爆発しませんでした良かった良かった、だと絵的に全く盛り上がらない、というのはわかるのですが、それならこの、 シグが地雷を踏んでしまった! という危機状況の設定がそもそも選択ミスだったという事になり、 解除した地雷を振り向きざまに速攻で踏みに行く、最終回まで見事な『ブルースワット』クオリティ。
 「これで戦士のナイフも消滅しちまったか」
 「せっかく、シグに貰ったのに」
 「3本のナイフが一つになって戦った。戦士のナイフにふさわしい最後です」
 前回ぽっと出のアイテムで強引に盛り上げを作ろうとするこんな時まで、どうしようもない台詞しか割り当てられないサラの扱いは、 本当に酷い。
 そしていきなり、セイジの台詞でクイーンのアジトが判明し、アジトから彗星に向けて送られている誘導電波を止めるべく、 最後の決戦に出撃するブルースワット。各自のモノローグ&回想で一応盛り上げにかかり、 シグが広瀬剛の存在に言及した事にちょっとホッとしました(^^;
   クイーンアジトに突入したブルースワット(さすがにセイジとスミレはついてこなかった!) はエイリアン軍団を蹴散らして遂にクイーンの元まで辿り着くが、圧倒的な力を持つクイーンに追い詰められる。ここで、 クイーンが重力を操る描写はなかなか面白く、スワット1をぐりぐりと踏むクイーン。
 「この星の、新たな支配者クイーンに、許しを請え。そして死ねぇ」
 「ざけんじゃねぇ……! てめぇ一人で、何が支配者だ! 何がクイーンだ!」
 いつものようにお父さんを呼ぶのかと思ったら、怒りのショウは、まさかのバックブリーカーから大回転投げを決め、 クイーンを誘導装置に叩きつける。
 「この星は、地球はてめぇの玩具じゃねぇ!」
 プラチナム初登場の第23話から数えると、かれこれ半年ぶりに自分の力でピンチを乗り越えたスワット1は、 最終回でさすがに主人公らしくなりました。
 「クイーン、あの世で自分に仕えな!」
 光線銃の一斉射撃でクイーンと親衛隊を巻き込みながら誘導装置もろともアジトは大爆発し、 迫り来る彗星にもSS−17から放たれたレーザーが直撃する。……だが、彗星は既に、 地球衝突を免れない位置まで接近してしまっていた!
 「俺は、俺は信じねぇぞ。地球が、人類が滅亡するなんて、信じてたまるか、信じてたまるかぁ!」
 何故かここで、現実から逃避する主人公。
 「諦めない」ならわかるのですが、どうして「信じない」になったのでしょうか(^^; Aパートで折角いい所を見せたのに、 一瞬で台無しに。
 そんな他力本願の叫びに応え、地球へ降り立つプラチナム。……いや、カプセルで降りてこないで、 金色宇宙船ビームで破壊すればいいのでは。前回も、シグが地雷を踏む都合で戦闘が終わるとやたらそそくさと帰っていたのですが、 帰り道に彗星の一つや二つぐらいあっさり破壊できたと思われ(なにしろ、クイーンの近衛船団を瞬殺したという実績がある)、凄く、 挙動不審。
 「ショウ、これからは私が居なくとも、おまえ自身の意志でハイパーショウとなるのだ」
 「どういう事だよ? まさか?! プラチナム!」
 「プラチナム、自分の命と引き替えに?!」
 「彗星の衝突阻止を、いや、破壊を?!」
 次々と、勝手に煽るブルースワット(笑)
 あなた方明らかに、自分達の願望を伝えてますよね。
 煽るだけ煽った後、いやらしく形だけ止めようとする面々だが、ゴールドプラチナムの決意は固い。
 「忘れてはいけない。この星を救うのは、ショウ、サラ、シグ、セイジ、スミレ、君達だ」
 いや、救えてないからお父さんに頼る事になっているのでは。
 「私は、平和を願う者達の想いの結晶に過ぎない。悪を許さない怒りが――心があるなら、いずれ次なる私が誕生する。必ずや」
 突然、自分は概念的存在であると言い出したゴールドプラチナムは、カプセルに乗って彗星に特攻。
 主要キャラの自爆シーンの筈なのですが、すみません、正直、吹き出しました。玩具のギミック的都合ありきだったようですが、 あれだけ降下シーンが格好悪い(そして意味のわからない)カプセルを特攻兵器に使われても、 話の成り行きと合わせて変な笑いしか出ません。
 「救われたのね……地球が」
 「プラチナムのお陰で」
 「命と引き替えに」
 「おまえってやつはよ、プラチナム」
 最終回、超戦士の自爆を何もせずに見つめる主人公達……という歴史的大惨事が華々しく展開しましたが、 これは思えば、第1話の主任自害のメタオマージュ自虐パロディなのかと思うと、 徹底して『ブルースワット』らしいとも言えます。
 だがその時、お父さんを悼み感傷に浸る5人を、突然の攻撃が襲う。クイーンはまだ、生きていた!
 「私は死なん! 全ての生命体に、知性体に、悪の意志がある限り――我が生命は滅びない。甦る!」
 プラチナム同様、いきなり、自分は概念存在的だと主張し出したクイーンは、ブルーストライカー、 ガバナーに次々インヴェードして5人を攻撃、続けてシグやサラに次々と憑依し、身投げさせる。
 残るはショウ一人、だが……
 「許さねぇ、俺は絶対におまえを許さねぇ! 叩き潰してやる、叩き潰してやるぜ! クイーン!!」
 悪を許さぬ怒りの心――それに応えて時空の彼方から金色宇宙船がやってくると、今ショウは、自らの意志でハイパーショウとなる!
 あー……ここでショウが、亡きお父さんの志を継いで新たなヒーローになる、というのは、この最終回、というか、 物語全体をまとめるアイデアとしては悪くないのですが、残念ながらこの期に及んで、自力ではない(笑)
 まあそこプラチナムも、「おまえ自身の意志で」と微妙な言い回しなのですが、 それを言うとこれまでも実質的に自分の意思でプラチナムを呼んでいたわけで別に強制的にハイパー化されていたわけでもなく、 台詞もこれまでと変わらない「絶対許さねぇ!」なので、特に劇的な変化が生じていません。この、 最後の最後まで劇的なダイナミズムと無縁なクライマックス、というのも実に『ブルースワット』クオリティ。
 ショウの怒りをプラチナムが仲介してスターフォートレスを呼ぶ事でハイパー化する……といった設定だったなら、 仲介なしでスターフォートレスを呼ぶ事が出来るようになった、という変化とショウ自身の意志の力を強調できますが、 そもそもハイパー化するのにスターフォートレスは必要なかったわけで(^^;
 そう考えると、そもそもスターフォートレスとはプラチナムの移動用ではなく、 万が一の時に自分が居なくてもショウがハイパー化できるようにプラチナムが用意していたという事になりますが、 どれだけ過保護なのかお父さん。
 その辺りを置いておくにしても、今作全体にこれといって統一したテーマが無いので、“悪を許さぬ怒りの心”に収束しようとしても、 当然綺麗にまとまりませんでした。特に、ショウの私怨に反応してプラチナムが来ちゃう、とかネタでやっていたのは致命的(^^;
 ただまあ、手元の具材で何とか、最後に話の大枠を作ってまとめようとしたセンスというか誠実さは、一定の評価をしたい所です。
 最近のインタビュー記事によると、この時期の宮下連名脚本は、 宮下さんがプロットを書いて若手や弟子筋が第1稿として膨らませたものを更に宮下さんが改稿していたそうですが、 『ジャンパーソン』の最終回なども考えると、着地はちゃんとさせよう、というのは宮下さんの意識の出た所か。
 スターフォートレスからエネルギーを受けたハイパーショウが放った超凄いビームによりクイーンはブラックホールに飲み込まれて消え、 喝采をあげるブルースワット。
 「だが、最後の最後までブルースワットの戦いが人々に知らされる事はなかった」
 と、初期設定を守り通したようなナレーションを被せ、後日談エンドへ。
 シグはザジと親子として地球人として生き始め、スミレは大学に戻り、セイジはパソコン教室の講師となり…… そしてショウとサラはスターフォートレスに乗り込み、プラチナムの意志を継ぐ者として宇宙へ旅立っていく――
 「だが、その喝采なき勝利を、地球も、宇宙も記憶に留めるだろう。死力を尽くして戦った戦士達の伝説を、永遠に。さらば、 ブルースワット!」
 ……さてここで、ゴールドプラチナムの“目的”を、思い出してみましょう。
 「ハイパーショウ。今日からお前も装備するのだ。私の同志として。地球を、宇宙を守る戦士として」 (第33話)
 そう、ゴールドプラチナムの真の狙いとは、お気に入りの地球人ショウを、自分の同志として迎える事にありました。
 そしてまんまと、ショウはゴールドプラチナムの意志を継ぐ者として大宇宙へ旅立つ事になります。
 第50話における妙に急ぎ足での帰還と地球へ迫る彗星の無視。
 衝突間近の彗星を素通りして地球へ降下してからのわざとらしい別れの会話。
 スターフォートレスを使わずカプセルで特攻。
 これら数々のゴールドプラチナムの不自然な行動から導き出される結論はただ一つ―― ゴールドプラチナムは生きており、自己犠牲は偽装工作に過ぎない。
 恐らく宇宙へ飛び出して三日後ぐらいに、しれっとショウ達の前に姿を現します。
 「プラチナム! 生きてたのか!」
 「そうだショウ。これからは、私と一緒にこの大宇宙で戦い続けよう。あ、その余計な女は地球に帰還びーーーーーむ」
 ぐっばい! ぶるぅーすわぁっと!!
 というわけで、最終回にして「真のヒーローに導かれた男が二代目を継承する物語」に仕立て直された今作、 上ではそれを誠実さと評しましたが、意地の悪い見方をすれば実は主人公はヒーローではありませんでした、 という自虐的なちゃぶ台返しであり、『ブルースワット』はヒーロー物として未完成だった という敗北宣言とも取れます。
 既存のヒーロー物の約束事を取り除き、新たなリアリティとそこから生まれるヒーロー像の構築を目指した今作でしたが、 地盤作りの不足から建物が根こそぎ倒壊。蛇行を繰り返した挙げ句に自虐と自爆の底なし沼にはまってしまったのは非常に残念でした。 ヒーローとは何か? をこねくりまわして袋小路に詰まってしまったのならまだともかく、ヒーローとは何か?  という入り口に辿り着けすらしなかったと思えます。
 別に何でもかんでも「ヒーローとは何か?」を問わなくても良いのですが、新たなヒーロー像を模索していた筈の今作が、 インヴェード被害者の無視や脳死した人体の乗っ取りなどの蛮行の末に、最後に辿り着いたのが“自己犠牲による彗星衝突の阻止”では、 正直お粗末。
 とにかく第23話以降、ゴールドプラチナム関連においては作り手の諦念や嫌悪感すら随所に感じられ、 作品として“壊れてしまっている”今作ですが、もう一踏ん張り、作品を壊さない為に戦って欲しかったです。
 問題は、ゴールドプラチナムで何もかもおかしくなったのではなく、ゴールドプラチナム登場以前から壊れかけていた、 という所でありますが、土台から基礎を全て抜く→地盤の再整備をしていないのに建物を建て始める→ 柱の寸法から歪んでいるのに無視して建築を進める→当然丸ごと倒壊→更に隕石が落ちてくる→何かも虚無の泥濘へ沈んでいく…… そんな作品でありました。
 具体的な問題点のまとめは、やっているときりが無くなりそうですが、その内、総括ないし反省会で。
 終盤、あまりの壊滅ぶりにかえって文章が長くなってしまいましたが、長々とお付き合い下さった皆様、ありがとうございました。

(2018年8月11日)

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