■『ブルースワット』感想まとめ7■


“俺は貴様等を許さねぇ! 許さねぇぜー!!”


 ブログ「ものかきの繰り言」の方に連載していた『ブルースワット』 感想の、まとめ7(40〜45話)です。文体の統一や、誤字脱字の修正など、若干の改稿をしています。

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◆Volume40「女王(クイーン)に罠を張れ」◆ (監督:三ツ村鐵治 脚本:扇澤延男)
 第1話の爆発事件を追うルポライターの見城守は、出版社に記事を持ち込むも荒唐無稽だと相手にされない日々が続く中、 ブルースワットとエイリアンの戦闘を目撃。
 「見られちゃしょうがねえな」
 「どうやら最初から説明する必要がありそうですね」
 突然、やたらにフレンドリーなブルースワット。
 謝れ、命がけで園児達を救ったケン石神に謝れ!!
 (ところで今更ですが、ケン石神が、あの光の戦士・デビッド秋葉の役者さんだったという事に気付きました)
 秘密の弾薬庫で補給を済ませたブルースワットは、アジトで見城にこれまでの経緯を説明する。
 「探していたんです。実は我々も」
 「取り上げてくるマスコミを」
 ………………えーそもそも、エイリアンとの戦いを信じて貰えるか貰えないかよりも、 “社会のどこにエイリアンが食い込んでいるかわからないから、信頼を置けるチームだけで戦うしかない” という物語だったと思うのですが、物語をまとめていくと同時にコンセプトを根こそぎ上書きしに来るという、 物凄い器用な展開(^^;
 ここまでの設定を考えると、明らかに見城の命が危ないのですが、やらたにこやかに巻き込むブルースワットの面々は、 度重なる戦闘のストレスで、遂に最後に残った人間性も捨て去ってしまったのか。
 ブルースワットへの取材を元にした記事を持ち込む見城だが、やはり相手にされない。というか、写真ぐらいつけてこい、 という最初の編集長が圧倒的に正しくて、エイリアンの情報操作の可能性を云々する遙か以前の段階で止まっています。 ……ブルースワットの指揮車は、エイリアンの画像データぐらい保存していないのか。
 そんな中、貴重な弾薬庫が爆破されるという事件が発生。マフィアの人海戦術による攻撃は、ブルースワットの補給を絶とうという、 ジスプの作戦だったのだ。マフィアからお馴染みの挑戦を受けてこれを撃退するブルースワットだが、 その戦闘を写真に収めていた見城は攻撃を受けてフィルムを駄目にされてしまう。
 戦闘を背後でアホみたいに棒立ちで見つめてる無力なメンバーがエイリアンに襲われる、 というのは今作のタブーなのですが安易に行ってしまっており、とにかく、総じて、 三ツ村監督と扇澤さんが冴えないのは、今作全体において辛い所の一つ。
 戦闘後、わざとらしく弾薬補給をアビールしたブルースワットは、ジスプ配下の監視者を罠にはめ、射殺。
 「鼠の方が賢かったようです」
 「やはりな」
 「そんな?!」
 自信満々で同じ作戦を連続でやって裏をかかれるなど、すっかりぼんくら扱いのジスプですが、近衛船団は瞬殺されているし、 この期に及んで呼び寄せる他の幹部が居るでもなし、スペースマフィアも悲しい組織です。
 現場を立ち去るクイーン親衛隊を目撃したブルースワットは、マフィアのアジトを掴むべく、その後を尾行する……のですが、 ここで尾行を思いつくなら、作戦成功したと思って浮かれているジスプの部下を何故あっさり射殺したのかとか、 珍妙な衣装で自動車を運転して帰る親衛隊とか、何もかも雑(^^;
 ショウは尾行中の車の中、弱気になる見城を励まし、これまでの戦いをいい話風にまとめる。
 「諦めたら負けだぜ、見城さん」
 これまで諦めずに戦ってきたからプラチナムに電波が届いて今がある、と綺麗に解釈できる事はできるのですが、なにぶん、 瀬戸際になったらビッグな存在が助けてくれるというのが物語の基本構造になってしまっている現在、 「諦めずに頑張ればその内でっかいパトロンがついてくれるぜ、見城さん」みたいなエールになってしまっており、 ヒーローとしてはさっぱり締まりません(^^;
 (なお各メンバーの回想シーンが、お父さん登場前の前半に偏っているのは、監督としても色々思う所があったのかなぁとは思ってしまう所)
 親衛隊を追ってアジトへ乗り込むブルースワットだが、それはクイーンの罠で、基地に仕掛けた時限爆弾が大爆発……という、 サブタイトルと真逆の展開(^^;
 クイーンを罠にかけようとしたらかけ返された、ならまだわかるのですが、 ブルースワットはクイーンを罠にかけようとしていないので、単なる嘘サブタイトルになってしまっており、どうしてこうなった。
 「誰が……誰が敗北なんかするかぁっ!」
 追い詰められたブルースワット3人が拳を握って立ち上がるのは悪くないのですが、例の如く例のように金色お父さんがやってくるので、 何もかも台無しに。
 せめてスワット2と3が刃物再びで独自アクションでも見せてくれれば良いのですがそんな事はなく、適当に光線銃を撃つだけ。 シルバニアが大暴れしている所にプラチナムが参戦し、合体攻撃を浴びせるとクイーンは撤退。改めてその戦いの光景を激写した見城は、 諦めずにそのフィルムを必ず公開してみせると誓うのだった。
 前回今回と、最終決戦を前にこれまでの劇中要素を拾って物語をまとめようとしている感じはあり、その姿勢は買いたいのですが、 拾う度に自分たちで設置した地雷が爆発して荒野だけが広がっていくという、ロンリーバトルはインフェルノ。 もう人間性なんていらない。

◆Volume41「襲来!!殺人昆虫」◆ (監督:蓑輪雅夫 脚本:中野睦)
 見所は、ショウのこぼした涙で生死の淵から甦るシグ。
 えーーーーーーー
 えーーーーーーー
 えーーーーーーー
 仲間の絆と男の友情で甦る、というのはまだいいとして、どうしてその「奇跡」演出を重ねたのか(^^;
 まあ、第9話(監督:小西通雄 脚本:曽田博久)でもサラの抱擁と涙でショウがチャーム状態から正気に戻ったので、 地球人類の涙はエイリアンやその特殊能力に対して何か特殊な作用を及ぼすのかもしれませんが。
 根本的な所では、第9話の時もどうかと思いましたが、涙をこぼして……演出自体、相当の積み重ねがあった上で1作品に1回、 許されるか許されないか、ぐらいの演出だとは思うのですけれども。
 買い出し中、スペース殺人昆虫ブラバムを目撃したシグはエイリアンの襲撃を受け、歩道橋上の戦いで、 スーツから解放された中の人(ロングの俯瞰で撮っているので恐らく吹き替え)が
 連続バック転の回転途中で背後のエイリアンの胴体を足で挟んで前方に投げる
 とか
 飛び回し蹴り気味のジャンプで右側のエイリアンに下半身を絡めると同時に上半身を左側のエイリアンに絡め、 そのまま前方に倒れ込むようにして巻き込み投げを放ち、着地直後に自身は回転して後方回避
 とか、凄まじいアクションを披露(勿論、着ぐるみで合わせている人達も凄い)。
 ブラバムの猛毒針を受けてしまったシグは、広瀬を助ける為に肉体から抜け出そうとし、 ブルースワットは傷口から“赤い血”を流すシグが意識不明で倒れているのを発見する……。
 クイーンの計画は、宿主に寄生して成虫となるブラバムを用いて地球人を全滅させつつ、 マフィアの労働力には人型の成体となったブラバムを用いるというもので、もう無血占領とかどうでもいい、と公式に宣言。
 ショウとサラはインヴェードを解いた筈のシグを探すが見つからず、セイジの解毒剤作成も手詰まりになる中、 病院の広瀬ボディをエイリアンが襲撃。間一髪間に合ったスワット1と2を広瀬のボディから放たれたスペーススパークが助け、 実はシグは広瀬ボディに隠れていた事が判明。ショウの懸命の救命処置と呼びかけにシグは意識を取り戻し、 その指示でマザーブラバムの念波キャッチ装置を作成したブルースワットは、ブラバム虫を操るマザーブラバムを強襲。
 頭数が足りずにマザーと警護のエイリアン部隊に苦戦するブルースワットだが、スワット1が毒針に追い詰められたその時、とうとう、 怒りの電波抜きでお父さんが仕送りに登場。
 毎度「絶対許さねぇ!」に持ち込むのも間抜けは間抜けでしたが、そのプロセスを完全に省いてしまう事で、 遂に茶番劇すら成立しなくなりました(^^;
 もうこれなら、前半にショウがシグを助ける打つ手無しで焦っている時に、 その憤りに応えてプラチナム降臨していた方がマシだったのでは。
 お父さんとブルースワットはブラバムとエイリアン軍団を撃破し、ブラバムの牙から作った解毒剤で、シグや寄生された人々も回復。 そして、実は広瀬の体から抜け出そうとしたが抜け出せないまま意識不明に陥っていたシグは、 赤い血の話を聞いて衝撃を受けるのであった。
 (私の体に、何か異変が起きているのか……?)
 クライマックスへ向けて今作では珍しい形で伏線が引かれ、シグがそれを自分の胸に納めたまま、次回へつづく。 ……シグが隠し事をすると大概ろくな事にならないのですが、大丈夫か?!
 脚本家が久々に参加(第18話以来2本目)の影響か、ショウがやたらにリーダーめいて高圧的に主導権を握り、 それに従うサラがまるで部下のように描かれていたのが、凄く違和感。
 シグの別行動から話を始め、本物のシグはどこに消えた? というミステリ要素を交えた展開は今作にしては面白かったのですが、 結局、シグとプラチナムの知識で解決してしまい、地球人類の努力が大勢にあまり影響しないのが残念。そこで、セイジが天才だから、 で解毒剤を作られるのも困りますが、ブラバムの生態からマザーの存在を推測し、 その細胞があれば分析して……ぐらいの事をサラとセイジが思いつく程度の役割分担はしても良かったのではと思います(^^; 今作、 チームプレイを強調する割にはとにかく役割分担のバランスが悪いので、物語としてテーマに繋がる積み重ねが機能していないのが、 ひたすら困った所(そしてお父さんで崩壊)。

◆Volume42「救世主は悪魔!!」◆ (監督:蓑輪雅夫 脚本:鷺山京子)
 第26話以来3本目の鷺山さんで、ここに来て久しぶりの脚本家が続きます。中身の方はこれまででも最低レベル、というか、 「最低」という言葉の定義付けについて国語審議委員会で三日三晩激論を交わす必要を感じるレベル。
 住人達が揃って危険を報せる夢のお告げを聞いた街に、幾ら何でもこれは酷い、というチープな見た目の怪物軍団が出現。 噂の真偽を確かめにやってきた完全武装集団(ブルースワット)、問答無用でこれを銃撃。
 単なる仮装集団かもしれないのに、いきなり撃つな。
 見るからにエイリアンではない、という事を強調する為に仮装させたのはわかるのですが、あまりに安っぽい為、 普段エイリアンと戦っているブルースワットが怪物と誤認するのが極めて不自然。
 幸いな事に相手は幻覚?で一切の攻撃が通用せず、衆人環視の前で一方的に叩きのめされるブルースワット。 残り話数も僅かという事で意図的なものかもしれませんが、その割には住人達のリアクションもこれといってなく、 行動の隠密性すら成り行きで思い切り放り投げられていきます。
 追い詰められるブルースワットだが、その時、不思議なハープの音色が響くと怪物軍団は消滅。音の元に集まった人々はそこに、 夢に現れた白いローブの女――ティアの姿を目にする。
 「危険を警告したのは誰? 貴方たちを救ったのは? では、私を信じて、従いますね?」
 夢で危険を告げ、怪物を追い払ったティアと、その言葉を素直に受け入れる少女の姿が、まるっきり、 ショウとゴールドプラチナムの引き写しという、戦慄の自爆テロ。
 「ちょっと待った。この話、なんか変だと思わないか。だいたいあんた、何者なんだ」
 「私は、平和と幸せをもたらす為に来ました。私に逆らうのは、悪の心を持つ証拠」
 難癖付けたブルースワットは逆に住人達から追われる羽目になり撤退するが、 フルフェイス+ボディアーマー+銃火器武装の自分たちが明らかに怪しい集団であるという現実をショウが完全に見失っており、 慣れって逆の意味で怖い。
 ティアの顔をコンピュータで画像解析したブルースワットは、クイーンと同一人物と断定。……つい先日、 エイリアンの証拠写真にまつわるエピソードをやったばかりなのですが、クイーンの画像データを所持している事が判明。 そうなると他のエイリアンの映像もライブラリ化してあると考えるのが自然で、それを提供しなかった君達は、 見城さんの熱いジャーナリスト魂を弄んで、陰でニヤニヤ笑っていたのか……!
 怪物軍団は実体の無い電気エネルギーの塊で、「あの怪物達もホログラフィ」と断言されるのですが、 先の戦闘で子犬が明らかに怪物の足に物理的に絡んでおり、これは何かの伏線かと思っていたら、最後まで見ても、 全く何の伏線でもありませんでした(愕然)
 単純に“ショウが少女の飼い犬を助ける”というシーンを作る為に、ホログラフィという設定を無視する、という酷い演出で、 蓑輪監督も鷺山さんも、どうしてしまったのか。
 作品によっては、どうしてもスタッフの熱量が下がってしまったのか、後半〜終盤になるにつれて演出が思考放棄ぎみになる、 というのは残念ながら時折見られますが、それにしても、最悪レベル。
 クイーンがわざわざ、遠回りなマインドコントロールを用いて一つの街を占拠した目的を探るべく、 真っ正面から突撃するブルースワット。
 街の中心に謎のタワーを発見するも、またも住人達に追われている最中に少女と接触したショウは、ティアを盲信する少女に対し、 誰かの言っていた言葉ではなく君の目で真実を確かめろ、と説得を試みるが、無惨に失敗。
 いっけん良い事を言っているのですが、少女は自身の目でブルースワットを一方的に叩きのめした怪物軍団をティアが消滅させた光景を目撃しているので、 そもそも、説得の内容が完全に明後日です。
 まあショウは、《挑発》にしかスキルポイント振っていないので仕方が無い。
 ブルースワットを追い詰めた住人達が「ティア様に教えられた念力だ」と手をかざすと、頭上から閃光が降り注ぎ、 ブルースワットは這々の体で退却。もちろん念力で光線が出ているわけではなく、頭上に隠れたUFOからの射撃なのですが、 その茶番の射撃係を担当しているムッシュの姿が、悲しすぎます。
 この機会にブルースワットを殲滅してやる、と息巻くムッシュだが、UFOの位置を悟られるわけにはいかない、 とクイーンに止められる。クイーンの計画、それは世界中に建設した700本の増幅装置を用いて、 UFOから放った殺人光線を10万倍に増幅する事により、一瞬で人類の半数を死滅させるという恐るべきものだった。 この街に完成しつつあるタワーこそ増幅装置の最後の一つであり、 クイーンはマインドコントロールした住人を人間の盾にする事でブルースワット対策としたのである。
 恐らく最終盤の反乱フラグで、事あるごとにクイーンから罵倒を受けるジスプですが、そもそもそんな大事なUFOを、 ブルースワット追い払うのに使わないでいただきたい(笑)
 案の定、セイジに察知される上空のUFOの存在。
 「じゃあ、あれはあの人達の念力なんかじゃなかったんだ」
 真顔で口にするショウは、そろそろシルバニアの副作用で脳の一部が溶けているのか。
 更に、SS−17から遅すぎる699本のタワーの情報がもたらされ、再び街へ向かったブルースワットは、結局、 煙幕弾を撃ちまくって正面突破を目指す。
 「人間に向けて撃つのは気が引けるわ」
 撃っていいのは、犯罪者と敵兵とテロリストだけだ。
 一方、ティアが飼い犬を蹴り飛ばした事で不審を抱いた少女は、 ティア=クイーンとその目的を知ってエイリアンに追われている所をスワット1のロープアクションで助けられる。 エイリアン軍団に囲まれてピンチに陥る二人の元へ、スワット2と3が駆けつけるのですが、二人とも、 タワーに突入しようとしていたのでは無かったのか。
 見えない所で二人が増幅タワーを破壊済みなのかと思えば、何のスペクタクルもなく発射されてしまう殺人光線。 増幅タワーが赤く輝き、苦しみ出す街の人々。「1分後には20億の人類が死滅する」と言いながらクイーンが現れてブルースワットを吹き飛ばし、 足下に転がってきた光線銃を拾った少女はそれをクイーンへと突きつける。
 「それで撃てるのか」
 「私はどうなってもいい。でも、おまえは許さない」
 突然、超ハードボイルドになる少女。
 この台詞だけ聞くと、全滅した住人達の仇を取ろうとしているようにしか聞こえないのですが、もう、死んだのか街の人達。 死滅したのか20億人。
 少女の銃撃でクイーンは正体を現し、その反撃から少女をかばって川へ落下するスワット1、と人類20億人死滅まであと1分未満、 という状況を全く無視したアクションシーンの連続で殺人光線が忘却の彼方に置き去りにされ、 編集時にシーンの前後左右を間違えたようなとっちらかった展開が続きます。
 そんな事をしている内に特撮時間にしても既に1分以上経っている気がしてならず、やはり、死滅したのか20億人。
 「クイーン……許さねぇ!」
 スワット1の怒りの電波でお父さんが仕送りに登場し、増幅タワーをダブル攻撃で1ミリの盛り上がりもなく一瞬で消滅させると、 ドラムガンファイヤーでUFOも撃墜。クイーンは、クイーン凄いぞビームを放つと撤退するのですが、特に捨て台詞を残すわけでもなく、 やはりもう、取り返しの付かない事態を招いてしまったのではないか人類20億。
 そのまま少女を抱え上げて大団円みたいに済ませてしまうのですが、UFOで待機していた気がするムッシュの安否が心配です。
 暗黙の公認ヒーローのような言動と行動を取るショウ・無策の正面突入を繰り返すブルースワット・ 何者かがフィルムをすり替えたのではないかというほど繋がっていないクライマックス
 と、もはや頭痛もしないレベルの矛盾と破綻と設定無視が怒濤のように繰り出され、 底なし沼のサルガッソーの中でまだまだ手を緩めない最終盤! すっかり70年代作品と化していて、 ある意味、凄かった(^^;

◆Volume43「BS(ブルースワット)最期の日」◆ (監督:小西通雄 脚本:宮下隼一/井上一弘)
 見所は、
 「シグ……終わった。なにもかも。これがブルースワットの、いや、地球の運命だったのだ」
 「プラチナム、まさか、地球がスペースマフィアに」
 「これ以上の戦いは無益。さらばだシグ!」
 ハイパーショウが地雷で吹っ飛んだ途端に、ギブアップ宣言して帰宅するプラチナム(幻覚)が、 リアルすぎて爆笑。
 井上一弘の参加は、前年の『特捜ロボジャンパーソン』第34話「激闘にさよなら」以来(この時も宮下隼一と連名)。 第33話がシリーズ屈指のキチガイ回(愛・試練ダベ〜)だった為に、ジックキャノン初登場なのに印象が薄い、 という不幸なエピソード(^^;
 クイーンが送り込んだ刺客、大物エイリアン・ギルガから顔写真つきの挑戦状が届き、エイリアン軍団との戦いに臨むブルースワット、 という開始1分で脱力する導入。とにかく今作は、“楽に楽に”物語を作りすぎです。
 戦闘中、スペーススワットに殺された弟の復讐を目論むギルガの触手攻撃を受けたシグは、メット内部の映像がおかしくなる描写で倒れ、 目を覚ますとショウ達が全滅するシーンを目撃する……演出からは、幻覚(に類する何か)を見せられているのは丸わかりなのですが、 しばらく視聴者に対してもシグ同様、これは現実の出来事ですという体裁で進む為、爆死した仲間達を感傷的に振り返るシグ、 のシーンなどを見せられる事になり、物凄く苦痛。
 児童層がその気になってくれればいい、というのはまあそうなのですが、それにしても、Bパートでクイーンの狙いが見えてくるまで、 Aパート丸々虚構の茶番劇というのは、さすがに長すぎたと思います(^^; あと、シルバニアが地雷で倒せるのが疑わしすぎて。
 クイーンの狙いは、現実に任意の幻覚を重ねるギルガビジョンによりシグを騙し、ブルースワットのアジトへと案内させる事。 ブルースワットが壊滅し、地球が完全にエイリアンの手に落ちつつある世界でレジスタンスの戦士達と出会ったシグは、 彼らを秘密アジトへ連れて行くが、それこそ、スペースマフィアの真の狙いだった。
 レジスタンス達をアジトへ案内してしまうシグだが、そこにエイリアン軍団が姿を見せる。 ところがそのエイリアンに何故かショウ達の姿が重なり、何が真実なのかに混乱したシグは自らの足を撃ち抜くとその痛みで覚醒。 レジスタンス戦士の幻覚をまとったギルガらに騙されていた事に気付くのですが……いやなんかもう、ここまで突き止めたら、 ほぼスペースマフィアは目的を達しているのでは(^^;
 ちなみにギルガビジョンが解けた決定打は、すげー痛い、でしたが、幻覚の効果が薄れてきた理由は「時間経過」で、 特にショウ達の呼びかけとか思い出のアイテムとか巧みな伏線とか皆無なのが、『ブルースワット』クオリティ。
 「皮肉だギルガ。おまえが巧妙に作ったビジョンのお陰で、私は戦い続ける意志を捨てずに済んだ」
 特に金色の人がリアルでしたね……。
 のんびり向かい合っているけど、エイリアンさっきロッカーに爆弾仕掛けたような、と思ったら、 これはスイッチ一つで素人(セイジ)が解除(^^; そしてお父さんが仕送りに現れ、ギルガは別にシグが倒すわけでもなんでもなく、 ドラム缶焼却。
 1エピソードにおける因縁すら消化できなくて、完全にもう、作品として壊れ気味。
 そしてエイリアンアジトでは、クイーンの作戦失敗を嘲るムッシュが、エキサイトしていた。
 「そんなに欲しいならくれてやろう! ブルースワットの首は勿論、この地球も! 揃えて、献上してやろう。クイーンに!  俺が! 俺の作戦で!!」
 いい加減、反乱でも起こすのかと思えば、根が真面目なムッシュですが、全力で言う台詞の内容が泣けます(笑)
 次回予告ナレーション
 「スペースマフィア・ムッシュJは、クイーンに無断で、最強の電脳エイリアン、パルスを出動させた。パルスは、 核ミサイル基地に侵入しようと試みるが、ブルースワットは、この計画を防ぐ事が出来るのか。
 だが、
 何を間違ったのかパルスは、虫歯の男にインヴェードしてしまい、激痛に襲われる羽目に」
 …………あーもう、次回予告が最高に面白かったから、今回は満足(おぃ)
 熱いぜ、俺の作戦!
 シグがビジョン世界で共闘するレジスタンス戦士達はJACの皆さん、全体的にエキストラと火薬も多めだったのは、 小西通雄監督の引退を意識して、予算多めだったのかもしれません。

◆Volume44「虫歯の電脳戦士」◆ (監督:小西通雄 脚本:宮下隼一/荒川龍)
 ここに来て、全く初見の脚本家が連名で登場しましたが、ブラックホールのような出来。 大きな物語がカタストロフしているのとは別に、個別のエピソードのクオリティをここまで下げられる、というのはある意味凄い。
 前回ラストの宣言通り「俺の作戦」に熱く盛り上がるムッシュは、独断で電脳エイリアン・パルスに命令を下し、 米軍の核施設のコントロールを奪わせて地球全土を核の炎に包もうとするが、それを察したクイーンに怒られ、 「マドモアゼルQにいえクイーンに」ネタ再び。台詞回しなどを見ると、クイーンはムッシュの勝手に怒ると同時に、 パルスを出撃させた事そのものに怒っている様子なのですが、その理由に関しては最後まで特に触れられず(^^;
 不審な電気信号を追っていたブルースワットはネットワークに潜入しようとしていたパルスを妨害し、 衝動的に自殺でもしたなくなったのか狭い地下空間でミサイルランチャーをぶっ放すスワット1だが、 ミサイルは何故かパルスの体内に吸収されてしまう。逃亡したパルスが通りがかりの歯痛のサラリーマンにインヴェードし、 スワット1は得意の《挑発》で追い立てようとするが、歯痛の影響で憑依解除できないままパルスは更に逃亡。
 「1人で先走らないで! 単独行動は厳禁よ!」
 合流するや否や、スワット2が女教師モードでスワット1を叱るのですが、これまで43話の諸々を考えてくると、 突然何を言い出しているのか凄まじく意味不明であり、台詞と言いやたらなオーバーアクションといい、今回サラがずっとおかしい。
 元々ブルースワットは、コミカル要素と、プロフェッショナル戦士の余裕みたいな表現として、 エイリアン相手にオーバーな身振りを見せる事はあったのですが、それを身内相手にやっていると、凄く馬鹿っぽいです。
 話数一桁台で演出も役者も手探り気味の頃ならまだわかるのですけど、小西監督もどうして今頃、こんな演技をつけているのか(^^;
 ショウは仲間達にパルスの状況を説明し、「奴は俺が撃った砲弾を、不発弾のまま腹の中に抱えて」いるそうで、 ブルースワットはシグのアイデアで不発弾の反応を追う。冒頭のパルスの電気信号を追えるのも謎でしたが、 不発弾の反応とか都合が良すぎて、幾ら何でも、1エピソードにご都合が満漢全席すぎます。
 ところがパルスがこうらくえん遊園地にコンクリート片(不発弾と同様の反応をするので、ミサイルの欠片なのか) をばらまいて反応が多数出現してしまい、手当たり次第に捜索中、ショウは歯痛サラリーマンの彼女にからまれる羽目に。
 「パルスはまだその人の中に?!」
 「やはり攪乱作戦。しかしなぜこんな手の込んだ事を。他の人間にインヴェードし直した方が早いのに」
 「確かに変ね」
 ……ええと、ショウの情報により、パルスが憑依を解除できない、という前提で探していた筈なのですが (ショウが似た男を勘違いするシーンまであり)、変なのは君達だ。
 彼女の発言から男が歯痛で苦しんでいた事がわかり、憑依が解除できない原因が推定されるのですが、 視聴者しか知らない情報→ブルースワットが疑問を抱く→真相が判明する、という過程において、 ブルースワットの行動に劇的な変化が一切無いので、視聴者との情報共有が全く面白くなっていません。
 本来なら、憑依解除できない事を知らないまま不発弾の反応だけを探し、ここでサラリーマンの体も危ない(&彼女の思い)を知り、 巻き込まれた命を救う為にテンション上がる、という劇的なダイナミズムが発生する筈なのですが、 ショウの発言と行動で前提条件が崩壊している為、壮絶に離陸失敗。
 また、気の弱い彼氏が、企画会議に出席するストレスから歯痛を起こした上に歯医者からも逃げ出すのを立ち直らせたい、 とゲストの人情要素を持ち込んでくるのですが、企画会議に出席する当日に歯の治療で外出そして逃走という設定が突飛すぎて感情移入しにくい上、 そんな彼女の姿に「愛してるのね」とコメントするサラさんは、昨夜ジャンボイチゴチョコレートパフェ練乳がけでも食べたのか。
 この、人間関係やキャラクター性を無視して、脈絡無くセンシティブなノーガードの殴り合いが始まる展開に何か既視感あるなぁ……と思ったら、 くしくも今作から10年後の『仮面ライダーブレイド』前半戦的なヤバさ(笑)
 せめて彼女を好感度の持ちやすい造形にすればいいのに、「なによもぅ!」的な口調できゃんきゃん騒ぐ突っかかり系で、 ショウでなくても好感度上がらないし、彼女の好感度が上がらないと彼氏への好感度も上がらないという、無間地獄。
 更にそこへ、パルスの身体構造や現状をどうやって把握したのやら、「(ミサイルがパルスの) 神経組織に突き刺さってるのがわかったんだよ!」とセイジが駆けてきて、エピソードが発狂状態。
 監督も演出段階で話の辻褄合わせる努力は当然しないといけないわけですが、脚本があまりにも意味不明なのでそのまま撮った、 という忘我の境地を感じないでもありません。
 懸命に努力した結果、これが限界だった可能性もありますが。
 まあそこを抜きにしても、歯痛に苦しむパルスが放つ電波で無駄に出る街の被害とエピソード内容のバランスの悪さ、 「歯がー!」と騒ぐサラリーマン@パルスを繰り返し見せられても何も面白くない、終始おかしいサラ、など演出面もかなり酷いのですが。
 ブルースワットは、パルスリーマンが米軍のコンピューター施設と勘違いしてゲーセンの筐体をハッキングしようとしているのを発見し、 ショウが得意の《挑発》で、どうせだったら俺にインヴェードしてみろと煽るが(不発弾ミサイルを撃ち込んでしまった責任を取る、 というスタンスは一貫)、パルスを消そうとするクイーンの刺客の邪魔が入って失敗。
 パルスが米軍ネットワークへの侵入を諦めていない事を知ったブルースワットは罠を仕掛け、散々大騒ぎした末に、 麻酔弾をサラリーマンに撃ち込んだらあっさり外に出てくるパルス。 信号化してケーブルの中に入り込むパルスだがその回線はセイジの手で既に遮断されており、パソコンから飛び出すとそこは荒野。
 「ミサイル基地じゃない!」
 「その通り! ここは俺とおまえの、バトルフィールドだ!」
 気取った台詞を言わせようとしたら斜め上に転んだこの感じが、また厳しい。そしてどうせシルバニアでロンリーバトルするのだから、 一騎打ちにもつれ込むのかと思いきや、すぐにスワット2と3が駆けつけてしまい、格好つけようとした台詞の一つすら機能しません。
 更に「電気信号化してケーブルの中に入ったら腹の中の不発弾は液状化して爆発の心配はなくなる」 から敢えて一度パルスをケーブルの中に入れた筈なのに、ショウがパルスに捕まると「あと5分で爆発します!」とか言い出し、 途中で別のフィルムに代わっているのではないかと不安になってきました。
 〔パルスの中に吸収される→不発弾だった→パルスの神経組織に突き刺さってる→信管が起動してあと2時間で爆発してしまう→ パルスが電気信号化したら液状化→パルスが実体化したら一緒に実体化〕
 ……特殊なのは、パルスではなくて、ブルースワットのミサイルの方なのかもしれない。
 トドメに、ショウがピンチに陥ったらプラチナムがやってくるのは全視聴者が知っているので、 ここで爆弾を持ち出してもスペクタクルは一切増加しないのですが、 一つ騒ぐ為ごとに一つ前のシーンを無意味にしていくという悪夢のドミノ倒しの果てに、 騒ぎそのものが無意味、という凄惨な着地。
 勿論、ショウがピンチなので呼ばれもせずにお父さんがやってきて、パルスは大宇宙ジャッジメント。
 最後はサラリーマンと彼女が再会して歯医者の前でドタバタして、オチだけ楽しげな雰囲気で終了するのですが、 もちろん今回のエピソードのどこにもサラリーマンが成長する要素は無かったので、2人の関係性は何も変化せず彼氏は歯医者から走って逃げようとし、 本当にただドタバタしているだけで終わる、という徹頭徹尾、虚無しかないエピソード。
 “物語の面白さ”というのがどういった要素で発生するのか、逆に何を壊すと“面白さ”が発生しなくなるのか、 というのがよくわかる反面教師サンプルとしては参考になりますが、閑話休題コメディ回で済ますにはムッシュの立場が悪化しすぎですし、 第42話の更に下をくぐってくるとはさすがに思いませんでした。
 次回、まさかのあのキャラ復活。

◆Volume45「狙われた肉体(ボディ)!」◆ (監督:三ツ村鐵治 脚本:浅香晶)
 見所は、ジスプに体を乗っ取られたシグの、二重人格演技。
 「やめろー、やめるんだ」「ふはははははは」
 は熱演・好演で、面白かったです。
 ムッシュの人も気合い迸りまくりの熱演が続くのですが、演技にキャラクターの厚みがついていってないのが勿体ない(^^;
 一方、サラはすっかり「OK!」と言うだけの人になっていて、可哀想すぎます。どうしてここまで扱いが悪くなったのか、サラ。 思えば基本的にサブの立ち位置とはいえソルジャンヌ(『特救指令ソルブレイン』)も扱い悪かったし、あまり堀プロデューサーが、 女性戦士が好きでなかったりするのでしょうか……。
 クイーンに表立って喧嘩を売ってみるも、むしろ力の差を見せつけられたムッシュは、 クイーンの地球大破滅作戦の前に自らの手でブルースワットを葬り去ろうと禁断のインヴェード能力強化活性剤・JXを用いて多重合体エイリアンを作りだし、 自らは強化したインヴェード能力によってシグに憑依。その手でザジを殺させようと洞窟へと向かい、それを追うスワット1と2。
 「おまえは梨奈さんの所へ行くんだ」
 とセイジはかつてインヴェード被害者問題についてショウが反省するきっかけとなった遺伝子工学の研究者・奥山梨奈の元へ向かう事になり、 シグと梨奈が共同である研究を進めていた事になるのですが……梨奈さん、 エイリアンから身を隠すためにアメリカに逃げたのではなかったか。
 確認したら第33話ラストで「アメリカへ研修に旅だった」ので、劇中時間とリアル時間が同一だと考えても3ヶ月、 同一でなければ劇中では更に時間経過していると考えても良く、帰国している事そのものはそこまでおかしくもないのですが、 そもそも物語都合(ショウといい雰囲気にしてしまった)で強引に国外退去させたゲストキャラを、 再び物語都合で何の劇的な出来事もなく引っ張り出すというのは、あまりにも扱いが雑にすぎます(^^;
 しかもあれだけご執心だったショウが、何の反応も示しませんし……まあごく当たり前のように存在が処理されているので、 実は研修は2週間ぐらいで、帰国後普通にショウと付き合っているのかもしれませんが(或いは、ショウがフラれた)。
 根本的な所で言えば、主目的は「エイリアンから身を隠す」であり、「アメリカへの研修」は建前なので、 やはり普通にその辺りをフラフラしていては駄目だと思うのですけれども。
 この適当な再登場にブルースワットだけが勝手に納得して見ていて置いてけぼりにされた所に、 「いよいよの時」とか言われてますます困惑が増す中、梨奈が持ち出したのは、ミール獣の歌声を解析した新装備。 それをドラムガンナーに装着する事で、インヴェード解除ビームを放つ事が出来るのだ!
 ここでミール獣を拾い、インヴェード人質問題も解決できるようになり、とこれまでの要素を拾って繋げようという姿勢は面白いのですが、 梨奈の扱いが致命的に雑な為、それらをまとめて納得させる物語としての劇的さが足りません(^^;
 ミール獣の歌声再現の為に研究室でピクピクしているシグは面白かったですが!
 インヴェード解除ビームによって合体エイリアンは分離され、ジスプもシグから憑依解除。シグに蜂の巣にされるジスプだったが、 今日もやたら忠誠度の高い部下2人のお陰で撤退するのであった……モブ部下達もJXによる融合を受け入れるし、 ジスプはどういうわけか部下には慕われています(笑)
 最後に、研究中にシグの細胞を分析した結果、シグと広瀬の融合が進んでいる、という事実が梨奈から明かされ、 クライマックスで散々、インヴェード解除ビーム→ジスプ耐える→シグ耐える→どうしておまえは耐えられるんだ→ザジへの愛だ!  みたいな事を繰り返していたのに、実はシグが耐えられたのは融合が進んでいたからで愛とか関係ありませんでした! という、 いい話クラッシュ(笑)
 いや個人的には、無定見に、愛の力だ! で片付けるのは好きではないので、その根拠が物語の大きな伏線と繋がっていた、 というのは今作にしては練った展開だったとは思うのですが、解除ビーム我慢大会のくだりが長かったのと、 メンバーがみな愛の力に感動した! みたいな描写の後に種明かしをする為、 今作における散漫さ――だから一体どういうテーマを見せたいのか、というまとまりの悪さの方が目についてしまいました。
 スミレは多分、空気読めこの学者馬鹿、と梨奈にミサイルランチャーを打ち込みたい気持ち。
 演出といえば、合体エイリアンの強さを強調する為に、早めに出てきたプラチナムとシルバニアのWショットでも倒せないというくだりがあり、 その後、解除ビーム我慢大会の所でプラチナムも手持ちぶさたにその様子を眺めているのですが、どうしてここに来て、 プラチナムの無敵性を下げるのか。もはや今更すぎて、ブルースワットと一緒にうろうろしていても全く画が馴染まず、 あまりにも遅きに失したと思います。
 次回、そんなプラチナムが大ピンチ?! でどう転んでも地雷の予感。

→〔その8へ続く〕

(2018年8月7日)

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