■『ブルースワット』感想まとめ4■


“許さねぇ、絶対に許さねぇ!”


 ブログ「ものかきの繰り言」の方に連載していた『ブルースワット』 感想の、まとめ4(20〜26話)です。文体の統一や、誤字脱字の修正など、若干の改稿をしています。

戻る

〔まとめ1〕 ・ 〔まとめ2〕 ・ 〔まとめ3〕
〔まとめ5〕 ・  〔まとめ6〕 ・ 〔まとめ7〕 ・ 〔まとめ8〕


◆Volume20「シグ衝撃の過去」◆ (監督:三ツ村鐵治 脚本:宮下隼一)
 消し炭寸前に追い詰められた3人は、セイジが外から壁のもろい所を見つけ、銃連射でなんとか脱出。そして語られる、シグの過去。
 ――3年前、地球にやってきたシグ(本体)はスペースマフィアを追う為に地球人の体を必要としていたが、 おいそれと他人の生活を奪うわけにはいかないと、インヴェードの対象を決めかねていた。そんな時シグは、10年前に事故で脳死状態となり、 同じ事故で意識不明の重体となった息子が目を覚ました際に臓器提供のドナーとして冷凍睡眠される事になった男・広瀬剛の肉体を見つけ、 インヴェードする。ところがスペースマフィアのジスプも、広瀬の息子である意識不明の少年・ザジの体に憑依していたのだ!
 …………あれ、ジスプさん、人権派?
 「ザジ」という名前に関しては、フランス人とのハーフなので広瀬ザジで問題ない、としてきましたが、 マフィアの部下が誰も見ていない所で肉体の名である「ムッシュ・ザジ」と呼んでいる理由は不明(^^; というか、 設定変わったけどそこは黙ってスルーして下さい感全開。
 そして改めて光の戦士(by『特捜エクシードラフト』)であった事が判明したシグの正体ですが、この設定だとシグは本来、 インヴェード被害者について真剣に心を砕かねばならなかったのではないでしょうか
 テコ入れで設定を盛ったり修正したりするのは良いとして、物語の積み重ねの薄さが露骨に出てしまっています。 シグがザジを助ける事に強くこだわるのは、恐らく素体となった人間の意識に影響を受けているから、 というインヴェードにまつわる設定は汲まれているのですが。
 「どうして今まで黙ってたんだよ、シグ」
 「そうよ、水くさいわよ」
 「おまえの苦しみも、拉致されたスミレの苦しみも、言ってみりゃおれたち全員の苦しみだろ」
 「私たちはチーム。ブルースワットという名のチームよ」
 突然の熱い仲間意識に、草葉の陰で主任の魂が怨霊になりそうです。
 ショウに至っては、初期とはもはや別人ですが、最初の軽いキャラ造形は、そんなに受けが悪かったのか(^^; 素はこう、 というのは最初から変わってはいないのでしょうが、最近のショウは素しかありません。それとも寝ている間に、 スペース人格改造電波でも受けたのか。
 ブルースワットはエイリアンの誘いに乗り、シグとザジの戦いがスタート。
 「私は! 私自身の命を懸けて、この体を、この地球を守る! そしてその子の、ザジの体を取り戻す! おまえから、 スペースマフィアから!」
 お父さんは脳死状態でもはや提供用の臓器扱いという事でしたが、最終的にはシグが憑依していた事でなんやかやあって意識を取り戻す、 みたいなオチになるのかなぁ……。
 シグがザジと戦って時間を稼いでいる間に、スミレの位置をサーチしたサラとセイジが、地下のアジトへと突入。地上では、 ショウがシグのバックアップへと回る。クレジットを見ると、 スワット号の中の人は恐らく前作で地上最強の人類・マヤを演じた今井喜美子さんのようで、 スワット2vsエイリアン2体の肉弾バトルは見応えたっぷりですし、地上での戦闘も火炎たっぷりなのですが、 一方でブルースワット個々のヒーロー性が非常に薄い為、分割展開そのものが余り盛り上がりません。
 『ブルースワット』における、既存のヒーロー物フォーマットに乗らない作劇、を目指したのはわかるけれど、 ではどこで盛り上げるつもりだったのかがわからないという致命的問題点が、 テコ入れによる一山作りの中で、改めて噴出。
 今作はそもそも既存のヒーロー物文法においてクライマックスの焦点となる要素を排除している為、 ただでさえ焦点がぼやけがちなのですが、その代わりとなる要素が無い上で状況を分割してしまった事で、ますます散漫に。
 変身しない・揃って名乗らない・そもそもヒーローネームがない・派手な必殺技もない・重火器をガンガン撃つだけ、 という『ブルースワット』形式における盛り上がりの限界を、はからずも露呈する事になってしまいました。
 本来は、では代わりにどこに焦点を作るのか(或いは、ウィークポイントの設定を徹底するなどリアリティの統一による説得力の強化を行うのか)、 という形で今作は組み立てないといけなかったと思うわけですが(^^; フォーマットに甘えるのも良くはありませんが、 やはり20分強のアクション物には、物語の焦点は必要だと思うのです。
 結局今作、どんなに頑張ってアクションしても、クライマックスの焦点が無いので、 ただダラダラと戦っているように見えてしまうという。
 サラとセイジは冷凍睡眠装置を停止させて、キノコにされそうだった人々(これがまた、スミレ含めて3人で、 絵作りによる説得力も盛り上がりも全く無し(^^;))を救出するが、ジスプは再びザジに憑依し、六角達と撤退するのであった……。
 次回……これはまた、扇澤さんがやってしまうのか。

◆Volume21「突撃爺ちゃん魂」◆ (監督:小西通雄 脚本:扇澤延男)
 うーん……扇澤さんが冴えないなぁ。元々3回に1回ぐらい大暴投する人ではありますが、 何だか今作では厭らしい部分だけが押し出されていて、それを覆う面白さが見えません。
 まあ、宮下さん以外の脚本陣は、参加する度に設定と作風が変わっている事にやや戸惑っている感じはあるのですが……(^^;
 なんだかすっかり、悪の組織のアジトみたいな場所にいるザジが宇宙から凶悪な戦闘モンスターを呼び寄せ、 功を焦った下っ端エイリアン4人が独断でブルースワットのアジトを探り出そうとして老人にインヴェード。 シグがそれを見破ってアジトの秘密は守られるが、送っていった老人が家で邪険な扱いをされるのを見かねて、 ショウがしばらく事務所で預かる、と言ってしまう……。
 息子夫婦が物凄く嫌な感じで、老人に同情を集める描写なのですが、 その老人は老人で事務所に厄介になるやスミレのお尻を触ったりしてしまうので、好感度が氷点下に。 約20年前という事もあり軽いギャグのつもりだったのかもしれませんが、この時点で、老人への好感の持ちようが無くなり、 見ていて非常に辛い事に(^^;
 下っ端エイリアン撃破に役立って調子に乗る老人だが、次の敵は凶悪な宇宙モンスター。ショウ達は断固として老人の同行を拒否し、 激戦の末、なんとかモンスターを撃破。厳しい態度を貫いたショウだが、 メットを外すと額には老人の書いた「必勝」のハチマキを巻いていた――というのはメット外しの演出を巧く活かして悪くなかったのですが、 とにかく老人の印象が悪いので、これといって嬉しくなりません。
 また、前半の下っ端エイリアン3体、後半のモンスターとの戦いの両方が、挑戦状が来る→それらしい場所に移動する、 と何の工夫も差別化もなく雑に戦闘に突入してしまい、非常に盛り上がりに欠けてしまいました。
 息子夫婦はただ嫌な感じに出てきただけでその後は一切関わりませんし、脚本・演出ともにパッとせず。良い所を探すとすると、 ショウの気のいい兄ちゃん度が上がったぐらいか。ショウは、気のいい兄ちゃん路線を行くなら行くで、しっかりやってほしいですが(^^;

◆Volume22「シグよ さらば!?」◆ (監督:小西通雄 脚本:小林靖子)
 かつてスペースマフィアによって母星を征服された宇宙人が、地球人には無害だがエイリアンには猛毒となる宇宙植物J−3000を地球へと持ち込む。 100年に一度だけ雌花が開く今ならば、地球上でJ−3000の繁殖が可能である事をシグに告げ、息絶える宇宙人。 J−3000を繁殖させれば地球からスペースマフィアを撃退できるが、それは同時に、シグが地球に居られなくなる事を意味する。 ショウとサラは、地球人だけが助かって、シグを一人でスペースマフィアとの戦いに放り出すわけにはいかないと繁殖に反対し、 揉めている内にシグが誤って雄花の毒花粉を吸い込んでしまう。
 ショウとサラはその中和剤となる雌花を手に入れる為に、宇宙人が残した発信器の元へ向かうが……宇宙人が冒頭でJ−3000を植え、 そこに発信器を据え付けた理由が今ひとつわからなかったのですが、シグに受信装置を託そうとしていたので、 繁殖作業をシグにして欲しかったのでしょうか……?
 地球到着時から瀕死の重傷とかだったらまあわかるのですが、花を植えた後でマフィアエイリアンの攻撃を受けているので (追跡は受けていましたが)、演出の解釈が少しズレてしまったのか(^^;
 一方、マフィアもJ−3000の繁殖を阻止するべく動きだし、六角が鋭敏聴覚エイリアンを連れて発信器を辿り、 その回収を任された地球人の傭兵コンビが現場でブルースワットと衝突。
 どうしてこの傭兵達は、巨大なキネを持っているのだろう、と思ったら、火炎放射器の先端でした(笑)
 雄花は人間でなくては回収できない、という設定を使ってアクションシーンに変化をつけようとしているのですが、 ブルースワットを見た六角が現場判断で作戦を変更して聴覚エイリアンが正体を現すと、傭兵コンビはすぐに逃げ出してしまう為、 もう一つ広がりませんでした(^^;
 鋭敏聴覚エイリアン・ザイバーは割と格好いいデザインで、その狙撃に追い詰められたショウとサラは雌花を手に入れる為に二手に分かれ、 しばらく山中での激しい追跡アクション。ロープアクションに加え、六角エイリアンが川に落とされる所はさらっと凄いジャンプ (川岸の巨石から川の中へダイブ)をしており、今回の見所。
 エイリアンの追跡を振り切り雌花を手に入れるショウだが、実は雌花の方は地球人にとって毒であり、その毒を受けてしまう。 更に六角エイリアンの襲撃で大ピンチになるがそこへシグが駆けつけ、物凄い感じに崖を落ちていく六角エイリアンの着ぐるみ。
 シグは崖から転落寸前のショウの手を掴み、シグとショウの二人がお互いの手を握りながら片方でそれぞれ花を掴んでいるという、 何だか凄い絵に(笑)
 一方、サラは聴覚エイリアンの攻撃を受けてピンチになっていた。
 ショウとシグがそれぞれ中和剤となる花粉の効果で回復し、サラと合流。 スワットカーから大音量の音楽を流してエイリアンの聴覚を潰し、撃破に成功。そして残念ながら、 とんだ迷惑に終わった宇宙植物J−3000を焼却処分するのであった。
 外来植物による生態系の破壊、良くない。
 「別に宇宙まで守るなんてでけぇ事言うつもりはねえよ。ただ一人でも死なせたくない奴がいる限り、俺は戦いを止める気はない」
 戦いの目的は、地球からスペースマフィアを追い出す事ではなく、この地球でスペースマフィアを殲滅する事――ブルースワットは、 誓いを新たにし一層その絆を強めるのであった。
 物語が激しく蛇行する中で、チームとしての目的意識の明文化とモチベーションの再確認を行い、 合わせてショウの立ち位置をハッキリさせる、というのは後のシリーズ構成作品で見られる“チームとしての一体化”“戦う理由” を物語の中で重視する小林靖子の作風が窺える所。
 エピソード単体としてはあまり面白くありませんでしたが、やはりどうにも、 セイジとスミレがスワット装備を手にして山の中を走ってくるのは、無理がありすぎます(^^;  スミレは先日ブライアンの訓練プログラムをこなしてしいましたし、百歩譲って運動能力の部分では問題ないとするにしても、 それが緊迫した盛り上がりに繋がっているかというと、疑問。
 既にエイリアンの目の前で実質的な瞬間着替えもやってしまっていますが、スワットスーツを着用するというリアリティが、 物語としての面白さになかなか繋がってくれません。
 「変身」の排除によるテンポの問題、というのは『特警ウインスペクター』でもぶつかっていましたが、 より排除の方向性を進めた結果、更に固い壁に正面衝突しているというのは、いかがなものか(^^;
 次回、遂に事務所が大ピンチ。そして――……予告が嫌な予感しかしない(笑)

◆Volume23「超時空の新戦士」◆ (監督:蓑輪雅夫 脚本:宮下隼一)
 エイリアンとの戦いの悪夢にうなされるショウに、呼びかける謎の声(CV:てらそままさき)。
 「私は見ている。いつもおまえを。おまえの戦いを。ショウ」
 ショウによるとこれで4度目という謎の声…………あー、2年前にも、似たような目にあった主人公が居たような(^^; もしかして、 始まってしまうのか、炎の以下略。
 そんな中、ザジが日本有数の企業グループ鬼塚コンツェルン会長・鬼塚剛三の養子になるというニュースが飛び込んでくる。 ザジが鬼塚の財力や組織力を利用して何かを企んでいるに違いない、と考えたブルースワットは鬼塚を誘拐し、 忍び寄るスペースマフィアの脅威を伝えようとする。
 鬼塚役は、なんとくしくも荒木しげる。さすがに20年経過しているので立派な中年になっておりますが、 視線の動きなど端々に漂う雰囲気は、そう思って見るとかつてのヒーローの面影を偲ばせ、 急に笑いながら無茶な理屈で状況を逆転しそうで困ります(笑)
 シグは超能力で鬼塚の脳に無理矢理スペース知識を流し込み、ブルースワット設立時における国連関係者の洗脳もとい特殊な交渉術の秘密が明かされましたが、 シグ、やっぱり、説明とか出来ない人。
 これにより鬼塚の理解と賛同を得たブルースワットは連絡先として事務所の名刺を渡すが、ここで鬼塚の態度が豹変。なんと鬼塚は、 地球人でありながら全て理解した上でスペースマフィアとムッシュ・ザジに協力していたのだ!
 「ま言ってみれば、私こそ悪魔、いや、エイリアンに最初に魂を売り渡した人間と、いうわけだ」
 衝撃の展開めいた流れなのですが、ブルースワットが一方的に鬼塚を被害者と断定して行動しているのがあまりに安易すぎて、 深読み抜きでガックリとしかしません。
 誰がエイリアンに憑依されているからわからないからこそ、細心の注意を払って世界の裏側で戦うのがブルースワットだった筈なのですが、 いかに最近は油断と隙だらけで、実質3割程度しか注意を払われていない設定とはいえ、 さすがに杜撰に投げ飛ばしすぎました。
 そこにムッシュ達が現れ、エイリアン軍団に囲まれるショウ達。「早く!」と言って車の蔭に入るとスワットスーツを着て出てきてしまうのも、 基本設定とそれを話に組み込む積み上げの失敗が露骨に象徴されてしまい、盛り上がりようがありません。
 同行していたセイジが囚われ、エイリアン軍団の猛攻に追い詰められたブルースワットに向け、 今作は今後こういう基本設定で物語を進めていきます、という内容を長々と語るジスプ。

 「遙かな昔――様々な銀河系から、犯罪者の烙印を押されて、追放された者達が、種族の違いを超えて集い、 我がスペースマフィアは結成された。星から星へと、欲望の赴くまま、我々は生き、進み、貪った。だがそんな我々を侵略者、悪と呼び、 自らの欲望に目を塞ぎ、下らぬ正義とやらの名のもとに、我々を殲滅しようとする、偽善者どもが現れた。それが貴様の居た、 スペーススワットだ。貴様等によって、我が本拠地は失われた。だがしかし、そのスペーススワット、貴様一人を除いて壊滅させた!  そして我々は、新たな本拠地としてこの地球を選び、侵攻を開始したのだ。今こそそれが実る。今こそ我々が、覇者となるのだ。 全宇宙、全存在の上に君臨する為の、第一歩を記す事になるのだ」

 全宇宙・全存在の上に君臨する為の第一歩が、新たな本拠地の建造って、正しい! 正しいけど、 何か間違えすぎていて、どこからツッコんでいいかわからないよ!!
 …………この人たちあれだ、たぶん地球征服の後、全宇宙に君臨するまで、数百年どころか数千年単位で考えているから、根本的に、 地球人と話が合わない。
 「俺は貴様等を倒す! 命に替えて、倒してやる! 倒してやるぅぅぅ!!」
 エイリアンに追い詰められながらも、全身全霊で吼えるショウ――そのショウの魂の叫びに応えて宇宙のどこかで次元がひび割れると金色の輝きが地球に突き刺さり、 謎の黄金戦士が光臨する!!
 「我が名はゴールドプラチナム。時間を、空間を、全てを超えしもの」
 「ゴールドプラチナム?! その声は」
 「ショウ、ナルミ・ショウ。おまえの怒りが、私をこの地へと呼び寄せたのだ」
 黄金超人はすごいじゅうをふりかざした! きんいろのせんこうがすぺーすまふぃあをおそう!
 エイリアンAはしょうめつした!
 エイリアンBはしょうめつした!
 エイリアンCはしょうめつした!
 ジスプたちはにげだした!
 ……ううむ、第23話まで来て、完全に話から振り落とされてしまいました(^^;
 私の中の、ネタとして受け止められる心の棚が全部踏み砕かれてしまったのですが。
 テコ入れ新戦士?にしても、色とか名前とか立ち位置とか、もっと色々あったと思うのですが…… どうして全身金色の時空を超えるストーカーという事になったのか。
 黄金超人は姿を消し、妙に軽い調子で(どうしてそんな演出にしたのか理解不能なノリで酷い)、 事務所がバレたのでスミレが危ない事を思い出したブルースワットは、火炎瓶を投げ込まれて炎上する事務所からスミレを救出。 再び身元不明で新聞種になるも、かろうじて身を隠すのであった。
 「ロンリーバトルが続くってわけか、これからも」
 そんな設定忘れているのかと思ったら、何故かここで拾い直すのですが(エイリアンに関する情報をパソコンから国連などに送っているが、 無視されるか握り潰すかされている事への言及など)、だとしたら鬼塚への対応がますますおかしすぎて、 拾い直さない方がまだ幾分マシだったと思います。
 「いや。俺たちは孤独じゃない」
 「プラチナム、ですね……」
 ショウに、あの金色について知っているのだろうと問われるも、いつもの調子で、いやちょっと噂に聞きかじったぐらいですよははははは、 と誤魔化すシグは、人間の信頼関係というものについて一度見つめ直した方がいいと思います。一方、 鬼塚の協力を得て何やら企むムッシュは、プラチナムの登場に盛り上がるのであった……。
 予告からそれなりに心の準備はしていたのですが、覚悟を遙かに上回るものが飛び出してきて、 そろそろ私の中の『ブルースワット』が最終回を向かえそうな勢いです……。

◆Volume24「地球征服0秒前」◆ (監督:蓑輪雅夫 脚本:宮下隼一)
 一週間の間にさすがに少し反省したのか、シグ、ゴールドプラチナムについて、 様々な宇宙と時空を行き来して侵略者と戦っている存在である、と説明。これまで地球に出現しなかったのは時空の壁を越えられなかったからで、 ショウの怒りと同調する事で、時空の壁を越えるエネルギーを得たのではないか、と辻褄を合わせるのですが、 現地の人が追い詰められないと登場しないヒーローという、とても困った存在に。
 ザジと鬼塚を探すブルースワットは鬼塚所有のビルへ突入し、鬼塚暗殺軍団と激突。JAC顔出し生アクション祭なのですが、正直、 前回の今回でどうしてこれなのか。物凄く、手当たり次第感が漂います(^^;
 戦闘中、ショウが六角とデコ男にさらわれ、ビルが大爆発。マフィアに切り捨てられた鬼塚からシグがスペース読心術でアジトの情報を得る、 とスペース超能力もどんどん好き放題に。
 ザジの目的、それは捕らえたショウを痛めつける事でプラチナムを召喚し、その際に生じる次元を割るエネルギーを吸収する事で、 マフィアの大船団を呼び寄せる為のスペースワープ装置を発動する事にあった。
 スーパーヒーロー出現時に発生するエネルギーを悪用する、というアイデア自体は面白いのですが、これ、 黄金超人が定番になってからこそ、それを逆手に取って活きる作戦であり、現状非常にあやふやな存在である黄金超人を、 ムッシュだけが凄く確定した存在として扱ってしまうので、取り残され感が加速します(^^;
 ショウを助けにやってきたサラとシグがピンチになり、その映像を見たショウの怒りが黄金超人を呼び寄せるが、 スペースマフィアはそのエネルギーを吸収してワープ装置を発動。そこへサラとシグが飛び込んでくるが、しぶとい鬼塚まで乱入し、 幹部達は正体を現すも膠着状態に。
 話が雑でも映像的に面白ければまだ見られるのですが、機械いじりの似合わない六角とでこ男、 自分のエネルギーが悪用されているのに虚空で棒立ちのプラチナム、武装が無いので手持ちぶさたに立ち尽くすショウ、と、 非常に冴えない画。
 ワープ装置の発動が迫り、面倒くさくなった金色が鬼塚ごとエイリアンを消し飛ばそうとするが、それを止めるショウ。
 「プラチナム! 甘かろうが辛かろうが、俺たちには俺たちの、ブルースワットの戦い方がある。そいつを忘れたら、敵と一緒だぁ!」
 台詞そのものはヒーローの信念を示して格好いいのですが、プラチナムの銃口の前に立つショウの背中を、 至近距離でムッシュ他2名が見つめているという、映像がとにかく間抜けすぎます。
 そこからショウがオーバーヘッドでヘルメットを蹴り飛ばして不意を突き、 サラとシグがコンピューターを破壊してワープ装置を停止に追い込むのですが、 一方的に助けられている相手に「ブルースワットの戦い方」と大見得を切った割には、 黄金超人は大雑把にオーバーキルだけどブルースワットはもう少し射撃が巧い程度の差でしかないですし、 雑にコンピューターを破壊したら雑に大規模作戦の装置が停止しまうという雑の替え玉無料みたいな展開。
 ムッシュ達は撤退し、鬼塚は業務上横領の疑いで逮捕され、ブルースワット5人は海を見つめる。
 「もう俺たちは孤独じゃない。なんたってこいつは、地球だけじゃなく、宇宙全体の戦いなんだからな。だろ?」
 今、全てを超えし黄金超人と共に、ブルースワットの戦いは新たな局面を迎える。
 ブルースワットの戦いはこれからだ!
 −完−
 東映先生の次回作にご期待下さい!
 …………えー、ショウの台詞で強引に、プラチナムを“志を同じくする宇宙の戦士”扱いしようとしているのですが、 見ている側からすると、『機動戦士ガンダム』を見ていたらアムロのピンチに黄金バットが現れて、 嗤いながら3機のドムを5秒で消滅させていった感じなので、「俺たちは孤独じゃない」と言われても、反応に困ります。
 シンクロしているショウには何か通じるものがあるようですが、思想的にはいきなり対立していますし(^^;
 肝心のプラチナム自身も、宇宙の悪と戦っているらしいという噂で、 ショウの怒りに反応して地球にやってきた召喚ウルトラマンでしかないので、登場編にも関わらず、 本人のヒーロー性がさっぱり見えません。まずプラチナムとは如何なるヒーローか、を中心に描いてくれないと、 思い入れの持ちようが無いし、思想の衝突にも意味が生まれてこないのですが、本当にただ、 型どおりの「がんがんいこうぜ」と「いのちをだいじに」をぶつけただけで、無駄に安っぽくなってしまいました。
 プラチナムのキャラクターを強く押し出して力技で物語世界の枠を広げるのではなく、 主人公(ショウ)が共感する事でプラチナムがこの物語世界の住人である事を納得してもらう、という受けの手法なのですが、 ショウの同調とシグの噂話だけではあまりに根拠が弱く、むしろ一方的な共感を寄せるショウが一人で時空の壁を越えてしまった感じに(^^;
 1000歩譲ってプラチナムの扱いは置いておく(今後に期待する)にしても、エピソードとして単純に面白くなかったのは、 かなり致命的。アジトでのやり取りは映像含めて間抜けすぎましたし、敵の大規模作戦とその打破もさっぱり盛り上がらず。 以前から問題ではありましたが、ムッシュ達がよくわからないタイミングで正体出現と憑依を繰り返すのも、 話のテンポの悪さに拍車を掛けています。
 また、ゲストの鬼塚もこれといった悪の信念がなく、欲望に率直なだけの小悪党に転落。挙げ句、 ショウ達がシリアスだった分のコミカルパートを振り分けられてしまい、まったく面白くない事に。
 立て直しにテコ入れしようとした筈が、力を入れた瞬間にテコを置いた土台ごと踏み抜いてもう建物が残っていない感じで、 地に足のついた作劇を目指していた筈なのに、幾つかの路線修正を経た末、 宇宙の彼方から飛来した金色の超人が虚空に浮かんでいるという絵には、皮肉を通り越して自虐の趣すら漂い、 “そこまで言うなら戦艦に車輪をつけるけどそれでもいいのか”という故事を思い出します (『Vガンダム』は1993年か……93年はホント、悪魔の年だなぁ……)。
 さて、このままだと、ショウが「怒る!」と黄金バットもといビッグワンもといゴールドプラチナムが飛んできて事態を収拾して帰っていくという、 悪夢のような構造一直線ですが、果たしてをそれをどう回避してくるのか回避できるのか。3クール目の終わりぐらいならともかく、 まだ半分以上あるという現実が重い……!

◆Volume25「進め凸凹探偵団」◆ (監督:三ツ村鐵治 脚本:扇澤延男)

 まさかの、OP乗っ取り!(笑)

 かくして歴史は繰り返すのか……まあ、ビッグワンの時ほど酷くはないのですが、そういえば、なんたる因果か、 『ジャッカー電撃隊』にビッグワンが初登場したのも第23話……そして黄金超人の使用武器が「グラビオン」で、 大鉄人17の必殺兵器とそっくりなこれは、1977年からの復讐なのか……?!
 プラチナムの侵食により、女性の手がエイリアンのそれに変わる、という映像が無くなってしまったので、 もう久子さん(仮)の再登場の目は完全に無いのでしょうか……なんだかんだ六角(仮)がほぼレギュラー化しているだけに、 とても複雑な気分になります。
 本編の見所は、ショッキングピンクのシャツを着こなすショウ……じゃなかった、 スワット3(たぶん竹内康博)のスーツアクション祭。
 飛び回し蹴りとかバック宙回避とかエイリアン軍団相手に大立ち回りを見せてくれますが、 シグがスペースマーシャルアーツで本気出す程、序盤は何していたのか感が募って困ります(^^;
 アクション面では更に、六角の相棒として出てきた女エイリアンが凄い勢いでプロレス技を繰り出してスワット1と3を投げ飛ばしていくのですが、 キャストは本物の女子プロレスラーとかなのかなぁ。
 スペースマフィアが人類を支配する為の恐怖電波発生装置を制作中にその電波が外部に漏れてしまい、 怪電波をキャッチしたブルースワットは発信源を調査に来るが、街では子供達の蒸発事件が発生していた。 実は強化途中で外に漏れた恐怖電波が感受性の強い子供にだけ影響を与えてしまい、 エイリアンは証拠隠滅の為にその子供達をさらって余計に事態を悪化させていたのである。
 謎の電波に気付いた天才少年・その親友である男勝りの少女・同じく親友である腕っ節の強い野球少年、 の3人組と出会ったブルースワットは蒸発事件を知り電波の発信源を突き止めるが、友達を助けようとする3人組が現場にやってきてしまい、 ドタバタしながらエイリアンの陰謀に立ち向かう羽目に……。
 「恐怖電波」という言霊から迸る、物凄いSRI臭……!(『怪奇大作戦』)
 毎回、地球を支配しようとするスペースマフィアの珍発明を嗅ぎつけたブルースワットがその完成を阻もうとする、 という展開になったら、それはそれで面白いかもしれません(笑)
 ショウとサラが完成した恐怖電波を浴びて戦闘不能になってしまい、その治療法をセイジが閃く、 という形で物語の中でセイジにスポットを当てたのは扇澤さんらしい所ですが、天才少年がいちいちセイジと全く同じ解決方法に辿り着くというのは、 凄く毒っぽくて、これまた実に扇澤さんらしい(^^;
 よくある露骨なテコ入れで子供ゲストと絡むのですが、一応秘密主義のブルースワットと子供ゲストの相性が当然のように悪く、また、 ただでさえ画面に収まりの悪い5人に一気に子供を3人足してしまった為、実に混沌として間の抜けた映像が続く事に。
 多少のリアリティを犠牲にしても、戦隊シリーズがメイン5人の服装の色分け(或いは統一感) に気を遣って画面を作っているのかがよくわかります。今作のちょっと年齢の高いお洒落衣装路線そのものは好きなのですが、 それによる絵作りと現状の路線が明らかに噛み合わなくなってしまっています(^^;
 それから、恐怖電波発生装置を作っていた博士が「用無しになれば、このざまだ……」と倒れていたのですが、 憑依されていたわけではなかったようで、さらっと、エイリアンに協力する地球人が居る、という形に路線変更するのか。
 シグの大活躍もあってセイジ達は恐怖電波の無効化に成功し、現場に駆けつけるスワット1と2。
 「甦ってきたぜ、恐怖のどん底からな! 強くて格好いいこの俺を、よくも無様にびびらしてくれたな! てめえら、 絶対に許さねぇ! 許さねぇ、絶対に許さねぇ!」
 登場3回目にして、ショウの私怨に反応して、黄金超人プラチナム、光臨。
 よろしくない意味で、脚本と演出の悪意しか感じないのですが。
 俺の名前は引導代わり、迷わず地獄にグラビオーンでエイリアン軍団は一掃され、六角と女子プロは逃げ出すが、 ブルースワットは恐怖電波装置の破壊には成功するのであった。子供達の恐怖状態も解消され、最後は少年達の活躍のご褒美にと、 ショウ&セイジお手製の車の玩具をプレゼントして、いい話風にしてまとめ。
 個人的に気になっていたブルースワットの新しい隠れ家ですが、ショウとサラが恐怖状態になった時に退却した場所を見るに、 どこかの廃墟に篭もっている模様。

◆Volume26「真説・浦島太郎」◆ (監督:小西通雄 脚本:鷺山京子)
 夏だ! 海だ! 水着回だ!
 ……そういえば《メタルヒーロー》シリーズで水着回って、『機動刑事ジバン』(1989)以来でしょうか。
 前回の事件後、ブルースワットのサポーター(セイジとスミレと同格)扱いとなったらしい子供3人組が、 旅行先の勝浦でエイリアンに追われる老人と遭遇。夏休みキャンペーン中だからか、もうそういう方向性で行くのか、 「ブルースワットに、連絡しよう」という衝撃の展開。
 一方、街では猛毒を持った宇宙生物ダルが人間を襲い、ブルースワットはその発生源が勝浦であると突き止める。実は、 記憶のハッキリしない老人は海洋学者の浦野で、宇宙生物ダルが地球環境に適応できるようになる改造実験に協力、 エイリアンは品種改良に成功したダルをばらまく事で、人類を半減しようとしていたのである!
 エイリアンの攻撃を受けて何故か老化していた浦野博士は、エイリアンに騙された被害者かと思ったら、 2年前に不祥事を起こして研究所を解雇された後に消息不明となり、女子プロエイリアンに転がされて研究設備を餌に、 エイリアンの正体こそ知らないものの怪しい実験に協力していたという、筋金入りの駄目人間。
 老化と記憶の混濁で浦島太郎のつもりになり、竜宮城(エイリアンのアジト)で乙姫様(女子プロエイリアン)に、 何でも願いを聞いて貰っていた、と言うのですが、「何でも願い」って、湯水の如く金を使った好き勝手な研究、の事という(笑)
 一応最後に、命がけで解毒剤に必要なデータの回収に向かう事で、フィクション上の帳尻合わせはしますが(^^;
 急速に、地球人類に、ダメな人が増えていきます!
 見所は、ようやく投入されたアクション向けの挿入歌をバックに、ドロップキックから投げ落としのブレーンバスターなどを次々と炸裂させる、 女子プロエイリアン。
 ……挿入歌初使用で、目立つのはそちら側でいいのか(^^;
 ボディアーマーはともかく、あのヘルメットをつけたブルースワット相手に、 砂浜でバックブリーカーやパワーボムを決めるお互いの信頼関係はまさにプロの技で、見応え有りますが。
 そしてドライにプロフェッショナルなブルースワットは、見た目女性でも容赦なく3人がかりで組み付くと、 持ち上げて投げ飛ばすのであった(笑)
 ……その肉体は一般人の被害者の筈ですが、今作はこの辺りの面倒くさい設定を、面倒くさいから、 と露骨に投げ捨ててしまっているのが、どうしても評価しにくい所です。
 エイリアン軍団が海中から大挙登場して砂浜で大バトルとなり、射撃戦主体を諦めて、 比較的動きやすいと思われるスワットスーツで本気のアクション祭を始めると、そこは面白いので困ります(笑)  ……囲まれて大ピンチの所にセイジとスミレが助けに来てレーザーで一掃、という展開で台無しですけど。
 ダルのデータがあれば浦野が解毒剤を作成可能だという事で竜宮城へ突入しようとするブルースワットだが、 その前に女子プロエイリアンとその配下が立ちふさがり、またも大ピンチに。
 「やられてたまるか! 子供達を助けるんだ! やられてたまるか! 許さねえ! ……貴様等絶対に、許さねぇ!」
 今回は子供の為に怒ってはいるのですが、どちらにせよ、許さない本人が変身するわけでも何でもなく、 次元の彼方から銀河的黄金バットがやってくるという展開なのでひたすら漂う、どうしようこれ感。
 さすがに2回続けてグラビオン成敗!だとどうかと思ったのか、黄金上様は女子プロ正体の武器破壊に留め、 動揺したエイリアン軍団をブルースワットが射撃で殲滅していくのですが、ただでさえ曖昧なブルースワットの武装の攻撃力はますます適当になり、 やっている事は虎の威を借る狐なので、画面全体から寂寥感が漂います。
 そして女子プロエイリアン・ヤニミもあえなく爆死。……あれ、むしろ、六角とかより存在感あったのに(^^;
 ダルのデータは、裏口から潜入した浦野がバックアップを回収し、ブルースワットの活躍で爆発するアジトからの脱出に成功。
 前半にある、
 「逃げられた?! いつ? どこで?」
 「奴め、いつの間にか、秘密通路を見つけていたらしく」
 という頭の悪い会話が、「岬の裏に回って下さい。換気口があるんです。私はそこから脱出したんです」という伏線に繋がるのですが、 浦野の回想シーンだと、用済みになって始末されそうになり逃げ回っていたら海に落ちているので、 物凄く意味不明な事に(^^; ……まあもはや、そういう所を気にする作品では無くなりつつありますが。
 かくして浦野の作った解毒剤によりダルに噛みつかれた人々は無事に回復し、折角なので子供達と海で遊んでいくブルースワット。 何故か老化していた浦野は何故か元に戻り、人生やり直す事にしました、でオチ。
 今回やたらと、35歳の浦野について、「若い」「まだ若い」「実は若い」が繰り返されるのですが、誰か何か、 嫌な事でもあったのでしょうか……(笑)
 なんかこう、一回底を突き抜けたので、こういう作品だと思えばこれはこれで見られるような気もしてくる、 ゴールド上様登場後の2エピソード。上様召喚に関しては作劇としては酷いとは思いますが、 そもそも『ブルースワット』的な戦闘をあまり面白いと思っていなかったので(隠密戦闘の描写としては低レベルですし)、 ブルースワットがよくわからなく逆転するよりも、正直、むしろ説得力が上がって安心感はあります(笑)
 このまま、“こういう作品”としてクオリティが上がっていけば楽しみようも出てきそうな気もしますが、どうかなぁ……。

→〔その5へ続く〕

(2016年8月16日)
(2018年8月11日 改訂)
戻る