■『ブルースワット』感想まとめ2■
“羽を傷つけ それでも鳥は
朝を待ち 飛び立つよ……”
ブログ「ものかきの繰り言」の方に連載していた『ブルースワット』
感想の、まとめ2(7〜13話)です。文体の統一や、誤字脱字の修正など、若干の改稿をしています。
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〔まとめ5〕 ・
〔まとめ6〕 ・ 〔まとめ7〕 ・ 〔まとめ8〕
- ◆Volume7「スクープ!!」◆ (監督:三ツ村鐵治 脚本:扇澤延男)
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スミレが出勤してくると、事務所で物凄くだらけている4人。スミレはそんな4人に、
エイリアンと宇宙船とおぼしき物が写っている写真を見せる。
「おまえどこで撮ったんだよこの写真?!」
「どこで撮ったのよこれスミレちゃん」
女の子の襟首を躊躇無く掴むショウとお姉様っぽくスミレの顎をくいっと摘まみ上げるサラ。
凄く、チンピラです。
写真は街で売られていたという話を聞いた3人は、スクープ写真のバラ売りをしている男を見つけると、
問答無用でシグが腹パンで気絶させ、ショウとサラが荷物をまとめて回収し、そのまま男を隠れ家へとご招待。
凄く、ヤクザです。
すんでの差でエイリアン達がその場にやってきて写真が本物だという事が示され、エイリアン達は写真を闇に葬り去る為に暗躍を開始。
一方シグにより、写真に写っているのがエイリアンが前線基地を造る際に用いるエネルギー鉱石シグマナインだという事が判明する。
UFOは他の惑星に基地を作りに行く途中で故障して地球に不時着したと思われ、修理して飛び立つ前にエネルギー鉱石をぶんどってやる、
と息巻くショウは男から撮影場所を聞き出そうとするが、写真で一儲けを企む男はそれを拒否して出て行ってしまう。
……てっきり監禁して尋問タイムが始まるのかと思ってドキドキしていたのですが、そこまで悪逆非道ではありませんでした。
どうもショウ達の中では、とりあえずエイリアンに気付かれて男が狙われないようにする為の非常手段だった模様です。
胸ぐら掴んで怒らせた責任を取り、出て行った男を追いかけて機嫌を取るショウ。
「がばがば儲けちゃって、どうするわけ?」
「日本を飛び出し、見つけに行くんだ。世界のどこかに、俺の本当の居場所がある筈なんだ」
社会から疎外されている者、という扇澤さんらしいテーマが入り、
これに“お金にこだわり夢を追い求めている(らしい)”ショウが共感する流れになるのかと思いきや……そうはならず。
ここからそういう組み立てをして、
ゲストを軸にしたドラマをやりつつレギュラーキャラをしっかり肉付けしていくが扇澤さんの得意技の筈なのですが、
ショウの初期設定はもう消す方向で行くのか?(^^;
そんなショウと男がエイリアンの刺客に襲われた所をシグとサラが助け、自分の命が狙われている事を知った男は、
写真を撮ったのが自分ではなく彼女であったと告白。だがその彼女は、3日前に、突然の飛び降り自殺で死亡していた。
2人が暮らしていたアパートに向かったサラとシグはアパートが荒らされているのを発見し、
写真を抹消しようとするエイリアンの魔手が既に男の身近に迫っている事を知る。
病院のショウと男は再びエイリアンの刺客に襲われ、今回のショウは生身でやられ役。
名乗りも無ければ派手な必殺技もないスワットスーツですが、生身よりは断然強い、という事がアピールされ、
これは良かったと思います。
3人は男をアジトに匿い、目撃者の証言などから彼女が自殺したのではなく、
口封じの為にエイリアンにインヴェードされ自殺を偽装された事が判明する……と、ここに来て、直球で重い話。
宮下さんが立ち上げで数話書き、扇澤さんが初登板で重いボールを投げ込んでくる、
という構成は前作『特捜ロボ ジャンパーソン』と全く同じパターン。
「泣くな! 泣くぐらいなら思い出せよなんでもいいから! 手がかりだよ。彼女が写真を撮った場所の手がかり!
愛してなかったのかよおまえ! 仇討ちたくねぇのかよ彼女の!」
「討ちたいよ仇……出来るもんなら、それが出来るんなら俺だってさぁ!」
必死に考え込んだ末、男はその場所の手がかりを思い出すが、復讐に逸り1人で飛び出していってしまう。
慌てて男を捜すブルースワットもセイジの解析により写真の場所に辿り着き、
最初から黙ってこの男は監禁しておいた方が良かったのでは(笑) まあちゃんと、
「写真だけで見つけ出すのはかなり難しい」と前半でセイジに言わせてはいるのですが。
1人木材で立ち向かうもエイリアンに男が処刑される寸前、駆けつけるブルースワット。
ここでエイリアンを追い払うのに使っているショットガンタイプの銃は、なかなか格好いい。ススキ野原でじみーな隠密戦が展開し、
何故か徘徊していたイグアナに心音を再生するレコーダーを巻き付ける囮作戦で、エイリアンをまとめて撃破。
ブルースワットが頭を使ったのは良かったのですが、何故、野原にイグアナ……(^^;
ブルースワットはロケットランチャーでUFOを破壊すると、エネルギー鉱石を強奪。
残った隊長格エイリアンを新兵器の冷凍弾で凍らせると、ショウが男に銃を握らせ、その復讐の連射で、
エイリアンは砕け散るのであった……。
後日、形見となった彼女のネックレスを手に、旅立つ玉井。
サラ「――どこまで行けばあるんだろ」
シグ「自分の本当の居場所ですか」
ショウ「彼女はこの写真に命を賭けたんだよ……彼女との約束の場所、見つけろよ〜〜〜」
ショウが写真を紙飛行機にして飛ばしてエンド。
お待ちかねの扇澤脚本に、三ツ村監督という、90年代前半のメタルヒーローシリーズでは最も期待値の高い組み合わせでしたが、
もう一つ。ゲストと主にショウが絡むのですが、特にショウとゲストが重なるわけでも対比されるわけでもなく、
これといった相乗効果が生まれませんでした。扇澤脚本に期待するハードルに対しては、
首をひねる出来(マイナス方向に弾けているわけでもなく、平凡という意味で)。
ショウはすっかり、“言葉遣いは軽いけど中身は真っ当”なキャラクターになっており、その辺りのショウのブレが、
話全体のまとまりの悪さに繋がってしまっている気がします。むしろこのタイミングの扇澤脚本には、
そんなショウに芯を入れてくれる事を期待していたのですが、その点ではがっかり。
なお今回、秘密の駐車場は、2話で出てきた廃工場にそのまま居座っていた事が判明。……うーん、なんかまだ、
何故か事務所に地下車庫がある、とかの方が良かったような気も(いやこれ、両方ある可能性もありますが)。色々と不安を増しつつ、
次回、妊娠。
- ◆Volume8「E.Tベイビィ」◆ (監督:三ツ村鐵治 脚本:鷺山京子)
-
見所は、チャイナドレスの久子さん。
ところで、六角(仮)に入っていたのは、前回最後にやられたエイリアンなのかどうか、少々気になります。少々だけど。
ブルーリサーチに「父親を探してほしい」と少年がやってきて、蒸発事件だから後始末が面倒くさそうと渋るショウとサラだが、
成り行きでシグが依頼を受けてしまう。
ショウとサラが嫌がった依頼をシグが受けて少年と向き合う、という構図は、
前年の『五星戦隊ダイレンジャー』における大吾さんポジションを思い出しますが、少々、手法が被りすぎではないか(^^;
少年の話からシグが怪しい医者を洗った所、その医者が健康診断を請け負った会社で、他にも複数の行方不明者が出ている事が判明。
少年の父親・倉橋は、エイリアンが手駒として用いる宇宙兵士バブリオの母胎となる適性を判断され、
寄生実験の被験者として拉致されていたのだった!
エイリアンが関与する可能性に俄然やる気を出したショウとサラを加えたブルースワットは、病院の地下室で被験者達を発見するが、
潜入がバレて医者&婦長エイリアンの襲撃を受ける。
マサカリで襲ってくる医者と、巧みに棒術を扱う婦長の姿がシュール。
「やめろショウ! インヴェードされた人間を傷つけてはいけない」
ただ毎度の事ながら、わかりきっている問題に全く対策を講じてくれない為、
この点もどうにも戦闘が盛り上がってこない原因になっています(^^; ブルースワットがそこの対策をしっかりしてくれれば、
エイリアンが地球人の体を使うのを諦めて正体を見せるのも、スムーズに繋がると思うのですが(一応、
地球人の体だと動きづらくて戦闘力は落ちるようですが、その辺りの流れが映像で組めていない状況が続いている)。
憑依を解いたエイリアンとひとしきり肉弾戦の後、倉橋の救出に向かうシグだが、
自分の体の異常を恐れた倉橋は病院を脱けだしてしまっていた。それを知ったエイリアンは再びインヴェードすると3人を閉じ込めて逃亡。
外からセイジに助けられた3人は、残された資料からエイリアンの目的に気付き、
完全に成長したバブリオが宿主を殺して外へ出てくる前に倉橋を見つけ出さなければ、と急ぐのであった。
一方の倉橋は別の病院で診察を受けた結果「妊娠」と診断されてしまう。これを耳に挟んだ通りすがりの主婦がマスコミに電話して大騒動になり、
マスコミや野次馬から逃げ惑う倉橋、というコミカルパートに。ここは音楽も軽い調子のものに変えて明確に分離した事で、
それほど悪くはなりませんでした。次回予告ではこの部分が大きく強調されていたのですが、
全体としてはあくまでアクセントといった要素で、早くも何となく、明るい部分をアピールしようという動きが出ているのか(^^;
倉橋は何とかマスコミをまくも、息子を人質にされてエイリアン医者に捕まってしまう。息子を逃がす為に奮闘するお父さんだが、
親子揃って大ピンチのその時、駆けつけるブルースワット!
少年めがけて迫る婦長の投げナイフを撃ち落とし、倉庫の入り口にシルエットで並ぶ3つの影、という非常にヒーローらしい形で登場。
ブルースワットは憑依を解いた2体のエイリアンを撃破し、残るは倉橋に寄生したバブリオを駆除するだけ……ここでシグ、
何故かセイジに追い出す方法を聞く。
倉橋の体をサーチし、腹部の温度が異常に高くなっている事に気付くセイジ。
「バブリオは寒がりか……ショウ、冷凍弾だ」
「OK! 冷凍弾か」
「待って下さい、冷凍弾を使えば、人間の倉橋さんが」
……ええ、そうですよね。
どんなガタガタの作品でも、綺麗な文法の力でとりあえずオーソドックスなエピソードを組み上げてしまうのを得意とする鷺山さんらしく、
親子の物語に少年と宇宙刑事の交流を絡め、『ブルースワット』にしては、ここまでそつなくまとめていたのですが、
セイジに丸投げするシグ・果てしなく下降していくショウの知力と、着地寸前で派手に転倒(^^;
ここでシグがバブリオの対処方法まで把握していると便利すぎるのかと思ったのかもしれませんが、
セイジも大概便利すぎるので大して変わりませんし、元々バブリオに関する知識を持っていたシグが把握していた方が、
自然だったと思います。病院の資料が出てきたのは、当然、その伏線だと思っていたのですが。
その後、3分なら、人体が冷凍弾による凍結に耐えられる事がわかり、3人は倉橋を冷凍。
寒さに耐えきれずに飛び出したバブリオの幼体をショウとサラが撃破している間に、シグが謎のパワーで倉橋を無事に解凍するのであった……て、
結局、宇宙パワー、便利(^^;
一応今回、解凍するとシグが消耗する、という描写をさすがに入れましたが、シグにしろセイジにしろ、
便利スキルのブレーキが見当たらないのも、作品として非常に困った所です。
バブリオの幼体がなかなか気持ち悪かったのは、今作のこだわる方向性として、良かったと思います。
こうして倉橋親子はエイリアンの魔手から救われ、憑依されていた医者と婦長も目を覚ます……のですが、
病院に帰ると何故か地下室があって見知らぬ患者達が虚ろな瞳で転がっているのは大丈夫でしょうか。
今作の場合、“侵略者の存在は秘密”が大前提なわけですから、
“侵略作戦の後始末”を物語に組み込むべきだったと思うのですが、
第3話でコンクリート詰めにして冬の日本海に放り投げてそれっきり、なので、つまり、
世間では覚えのない犯罪で逮捕者続出だけど、エイリアンは倒せたから問題ないし、俺たちブルースワットには関係ないぜ!
それが俺たちのTRUE DREAM!
歴史に残るドライなヒーローチームが生まれているような。
それこそ、背後に組織があれば、バックアップメンバーが画面に映らない所で救出作業したり隠蔽工作しているのだろうと納得できるわけなのですが、
むしろ組織は壊滅したところから物語が始まっているわけで、
コンセプトから歯車が噛み合っていない――その設定ならば気になる所に手が入っていない――のを強く感じます(^^;
シグが最後に少年に向けて「まる」とやるのは、地球の変な文化を覚えた、とか前振りないと成立しないと思うのですが、
特にネタが繋がっていないので非常に謎な事に。少年との交流シーンがカットでもされた疑惑。
次回、ショウ、桃色の誘惑、もとい美人局に遭う。
- ◆Volume9「プリティガール」◆ (監督:小西通雄 脚本:曽田博久)
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新たに地球に派遣されてきた、スペースマフィア1の美女を出迎える久子さんと六角(まだエイリアンだった!)。
新エイリアンは“美女”という事で差別化を図ったのか、そろそろ怪人の押し出しを強くしようという事になったのか、全身金色で、
これまでとは一線を画すデザイン。
エイリアンが新たな侵略計画を練っているとはつゆ知らず、金欠に苦しむブルーリサーチでは、
1億円という桁外れの高額報酬に目がくらんだショウが、御曹司の理想の花嫁捜しを引き受けてしまうが……その条件、ざっと500項目。
女子大に潜入し、調査名目でセクハラを繰り返してははたかれるショウだが、そこへシグとセイジがやってくる。
「やったやったー! やったー! 見つけたよ1億円の美女」
「どうやって?」
「日本中の病院のコンピューターにハッキングして、健康診断のデータの中からぴったりの人を探し出したんだよ!」
今までで一番、セイジが面白かったです(笑)
「さすがコンピューターオタクのせいじくん」
「オタク? ハッカーと呼んでほしいなハッカーと」
セイジは便利キャラであるが故に特性を絞ってほしかったのですが、ここでようやく、
3話以降ひたすら散漫になっていたセイジの特技と性質が固まる方向に進んでくれました。
元々ブルースワット本部をハッキング盗聴していたのですが、そういった面を補強せずにただの天才便利キャラになってしまっていたので、
ここで「コンピューターに強い」「目的の為なら倫理観は踏み外し気味」という2点が強調されたのは良かったです。
セイジから情報を得たショウは、条件に合致する女性が働く保育園へと向かい、盗撮。…………そう、
エイリアンから地球を守るという使命の為なら、軽犯罪の1つや2つは見逃されるべきなのです。…………エイリアンから、
地球を守る……ため……?
「そう焦らないで。第一まだ、一番肝心の美人かどうか」
「お! おお〜。百点満点。文句あっか?」
「……(無言で首を左右に振る)」
呆れているようで、意外とノってるシグ(笑)
こうしてブルーリサーチは御曹司の理想の花嫁として、澄田瞳(なお演じるは、
後に『仮面ライダークウガ』でゴ・ジャーザ・ギを演じた、あらいすみれ)を紹介し、予想外にすんなり報酬の1億円をゲット。
乗り気でなさそうだったのに、山と積まれた札束を見て目の色を変えるサラ(笑)
勇気と志だけでは、ご飯は食べられないのです!!!
思わぬ莫大な収入にブルーリサーチは沸き返り(地球を守る為だから仕方ない、
とセイジがコンピュータースキルを駆使してナチュラルに脱税しそう)、そんな地球人達をにこやかに見守るシグ。
……そもそも2話でごくあっさりと事務所を用意したシグですが、この人、地球における金銭の感覚がわかっていないだけで、
実は莫大な預金が銀行に眠っていたりしそう。
バー○星の宝石は地球で売り捌くと一つ一千万円ぐらいになりますし。
そして瞳に求婚する御曹司だが――
「探していたのよ、おまえのような女を」
なんと御曹司は、美人エイリアンに憑依されていた! 全ては、自分が乗り移るのにふさわしい人間の美女を探す為の、
美人エイリアンの侵略作戦の一貫だったのだ!
これは面白かった。特に、敵対するエイリアンとエイリアンハンターがお互いに全く知らず面と向かって接触しつつ、
ブルースワットがエイリアンの侵略計画に関わっていく、という流れが秀逸。
御曹司は複数の興信所に調査を依頼しているという事に言及して都合が良すぎる度合いも下げていますし。
「宇宙の美女と地球の美女が1つになれば、誰もその美しさにはかなわない」
「美女探しの500項目の条件というのは、エイリアンがインヴェードし、最高のパワーを発揮できる女を捜す為だったんだな」
「エイリアンと瞳は、最高のインヴェード美女コンビというわけ」
瞳の肉体を手に入れた美人エイリアンは魔性のウインクで次々と科学者達を籠絡していき、ここに、美女×美女の、
地球の男を引っかけよう作戦が発動する!
作戦の馬鹿馬鹿しさがまた素晴らしいのですが、ここでエイリアンが自分たちを「エイリアン」と呼んでいるのはどうにもおかしくて勿体なかった点。
美人エイリアンに固有名詞を与えていない為に苦し紛れだったのでしょうが、もう、固有名詞を与えても良かったような(^^;
ブルーリサーチに保育園の同僚と園児達がやってきて、瞳が姿を消している事を知ったショウは御曹司の家に向かうが、
御曹司はブルーリサーチの事を全く覚えていない。異常に気付いたショウは生物科学研究所から白衣の男を連れ出す瞳を見かけで後を追うが攻撃を受け、
エイリアンが瞳に憑依している事を知る。
美人エイリアンは優秀な科学者達を集める事で、魔性の美女を大量に増殖して地球の男達を籠絡する、
インヴェード美女クローン計画を推進していたのだ!
それを逆手に取り、博士に変装して待ち伏せするショウだったが、物の見事に魅了されてしまう。
セイジがさらわれた博士達の目撃情報からアジトの割り出しに成功し、ショウを置いて乗り込む2号と3号だが、
瞳様に貢ぎ物をしようとしたショウが、1億円の金庫をかついで現場にやってきてしまう。必死にショウを止めようとした末、
サラは平手打ち連打からまさかの抱擁。そしてこぼした涙が触れた時、我に返るショウ。
割と強引にサラのヒロイン推しが投げ込まれてきましたが、これまでのサラの描写を考えるとこれ、
「ジョニー! 気をしっかり持つんだジョニー! この戦争が終わって故郷へ帰ったら、
おっかさんに新しい暖炉を作ってやるって言ってただろ! じゃがいも農家のあの娘はどうするんだ、おいジョニー! ……畜生!
せめてモルヒネを打ってやれれば……!」
的な。
正気を取り戻したショウを加えたブルースワットは、完全装備でアジトへ突撃。
シグ「この世にはおまえより美しいものがあるんだ」
「なに?」
サラ「あ・た・し!」
「そんな馬鹿な」
サラを中心に3人が手を繋ぎ合うと、美人エイリアンの特殊スキル《魅惑のウインク》は無効化。
ショウ「このぬくもりが通い合う限り、負けるもんか!」
シグ「おまえの負けだ!」
エイリアンに立ち向かう力として人間の絆がどうこう、みたいなものがこれまでも描かれていれば良かったのですが、
全くそんな事は無いので、どうにも強引(^^; 例えば第3話で娘を前にした父親がエイリアンの憑依を解いていましたが、
そういった、人間のある種の感情がエイリアンに拒否反応を起こさせる、みたいな要素ないし作品としてのテーマ性が積み重なっていればまた違ったのですけど。
チャーム攻撃が効かないと悟り、正体を現すエイリアン。
「スペースマフィア1の、美女を見よ!」
「「「見たーくない!」」」
ここで主題歌→バトルに持って行けないのでギャグを入れるのは、演出陣の良く言えば試行錯誤、悪く言えば悩みと迷いが見える所。
「貴様ら、ただの人間じゃないなぁ!」
「エイリアンハンターのブルースワットとは、俺たちの事だよ!」
名乗りっぽい事をしつつもショウはおどけたポーズ、というのもパターン破りの意欲は感じますが、
同時に破ったパターンに変わる芯の不在が、今作の弱みになっているのも見て取れます。複数の型を一度に破ろうとしすぎて八方破れ、
とでもいうか。お約束の型を崩した代わりとなる面白みが、なかなか見えてきません。
意外と強かった美人エイリアンは念動で鉄条網を操り、引き裂かれて血まみれになるサラの足、
そのサラをかばってエイリアンの攻撃を受けたシグは踏みにじられて緑の血がこぼれる、と続けての流血表現。
靴を脱いで隠密不意打ちを行ったショウも超音波で破壊されたガラスを踏んで血だらけに……
というのはアクション面でハード路線を保持したかったのかもしれませんが、エピソード内容からは正直浮いてしまいました。
と思ったら、ショウ、靴を両手にはめて逆立ちでガラス地帯を脱出すると反撃に転じ、
久々にウィークポイントを撃ち抜いてエイリアンを撃破。
この辺りもどうも、演出面でのバランスの取り方――作風の方向性が一致していない気配を感じます(^^;
1−9話までで既に作品の雰囲気が二転三転しているのですが、これといった統一した指針無しに、
担当の監督と脚本にお任せしているのではないかという疑惑。バラエティ性を否定する気はないのですが、
どうも振れ幅の中心軸が見えません。
ブルースワットは爆発した基地から瞳を救い出して(各博士は正気を取り戻して個々に逃走)事件は解決するが、
金庫の中の1億円は、記憶に無いけど確かに小遣いが1億円減っている、と御曹司が取り返しに来るのであった……でオチ。
最後ギャグにしてしまいましたが、エイリアンに操られた人のお金を貰うわけにはいかない、とこっそり返却するブルースワット、
みたいな格好良さを見せても良かったような……ホント君達、
インヴェード被害者のその後の人生とか全く興味無いな!
これはこれで、貫けばスタイルですが(笑)
前年、『特捜ロボジャンパーソン』でキレキレのトンデモエピソードを連発していた曽田博久が参戦。
前半の切り口はかなり面白かったのですが、問題解決〜クライマックスへの流れで、急減速してしまいました。もう一繋がり、
欲しかった所です。
次回、予告の映像が妙に<レスキューポリス>シリーズ風味。
- ◆Volume10「ザ・ミッション」◆ (監督:小西通雄 脚本:小林靖子)
-
見所は、シグさんの各種コスプレ。女装もあるよ☆
シグはがっしりした体格なので、背広の似合う二枚目なのが素敵。また、私服の茶色の袖無し革ベストも似合います。
サラもショウもかなり衣装には気を遣っている感じで、お洒落路線なのは今作の良い所。ショウがミサンガをつけているのも面白い所ですが、
これは単なるワンポイントなのか、後々背景に繋がるのか。
中身が荒らされるだけで何も盗まれないという謎の倉庫荒らしが連続して発生。
評判が傷つくのを恐れて警察沙汰にしたくない貸倉庫会社の社長が提示した成功報酬500万円に目がくらんで……もとい、
被害に遭った日、倉庫の係員の記憶が消えているという情報からエイリアンの影を感じたブルーリサーチは調査に乗り出す事に。
前回と冒頭が被り気味ですが、むしろ上がってきた脚本を見てわざと並べたような感じ……にしても、
小西監督はどうして札束をそんなに強調するのですか(笑)
社長がブルーリサーチに調査を頼んできたのは、「会社の評判に関わるから警察沙汰にしたくない」という理由をつけてきたのは、
小林靖子らしい丁寧さが既に見える所。
ブルースワットの推測通り、謎の倉庫荒らしはエイリアンの手によるものだった。
係員に憑依して何やら仏像を探す2体のエイリアンの前に思いっきり完全武装で姿を見せるブルースワット。逃げたエイリアンを追い、
凄く楽しそうに「いただき!」と引き金を引くサラはやはり、血と硝煙の匂いに酔っているハッピートリガーなのではないか。
戦う理由? エイリアン野郎に好きなだけ鉛玉をぶち込めるからに決まってるじゃねぇか!!
連係攻撃で1体を撃破するブルースワットだが、空き倉庫で取引中だった見るからに怪しげな男達をこの戦いに巻き込んでしまい、
3人を警察と誤解して銃撃してくる男達。
ショウ「何なんだよあいつら?!」
シグ「ただの、通りすがりでしょう」
サラ「ただの通りすがりが拳銃持ってるわけ?!」
まあ、世紀末TOKYOディストピアなら常識。
むしろ手榴弾を取り出さない辺り、ランクが低いとさえいえます。
(※「世紀末TOKYOディストピア」とは、バイオレンス溢れすぎる『特警ウインスペクター』〜『特捜エクシードラフト』の世界観につけた、
個人的な呼び名です)
予告が微妙にそれっぽかったのですが、やはりどうも、<レスキューポリス>シリーズを意識しているような。
作品コンセプトが違うので話の内容が似ているというわけではないですが、
『特警ウインスペクター』がきっかけで脚本家となった小林靖子の、<レスキューポリス>へのオマージュを感じます。
部下は銃を振り回しているけど、気の弱そうな故買屋の社長・須藤が逃げていたエイリアンにインヴェードされてしまい、
突然の銃撃を回避させる為に左右から腹を蹴飛ばすという新アクション。
男達はそれぞれ車で走り去るが、そこでエイリアンは、探し求めていた仏像を両者が取引しようとしていた事を知り、話は思わぬ方向に。
実はその仏像には、10年前に研究資料が破棄された、人間の思考能力を抑制する薬品の化学式が収められたマイクロフィルムが隠されており、
エイリアンはより効果的なインヴェードの為に、その薬品を作り出そうとしていたのである!
男達の素性と仏像の秘密を知ったブルースワットは、決裂してしまった両者の取引を成立させる事で、仏像と須藤エイリアン、
2つの問題を一度に解決しようとする。だが思わぬ出来事で余計な手を出すまでもなく取引が再開した事でシグが須藤一味に捕まってしまい、
エイリアンと関係なく、普通にゴロツキに袋だたきにされるシグ(^^;
須藤一味はシグの通信機を餌に、3人まとめて粉みじんに吹っ飛ばそうと罠を仕掛けて待ち構え、もくろみ通りに大・爆・発。
主導している須藤の中身はエイリアンなのですが、
平然とワイヤートラップで倉庫丸ごと1つ吹き飛ばす威力の爆弾を仕掛けている部下A(地球人)の姿が、
凄く世紀末です。
改めて仏像の取引を行う須藤だが、そこへ警察に扮装したブルースワットが現れる。ワイヤートラップに引っかかる寸前、
シグがテレパシーで内部の状況を伝え、サラとショウは罠の回避に成功。シグを救出した後、
目くらましの為にわざと爆弾を起爆させていたのである。
相変わらず便利すぎるシグの超能力で割と台無しですが、これはもう、シグの特殊能力として目をつぶるしかない所でしょうか(^^;
シグの場合、普段から有能な上で超能力まで持っていて、他にこれといって弱みが無い、というのが困った所なのですが。
3人は正体を現したエイリアンを撃破し、回収した仏像からマイクロフィルムを抜き取ると、それを破壊。
インヴェード被害者は元々後ろ暗い人だったので、取引相手と配下ともどもお縄にして警察に通報、というのは巧くオチました。
こうしてエイリアンの侵略計画をまたも未然に阻止したブルースワットであったが、事務所でくつろいでいると、
スミレが報酬の500万円が入るつもりで、高級ホテルにケータリングサービスを頼んでいた。
「スミレちゃん……ナンナノコレ」
「おまえどうするんだよ支払い!」
「嘘でしょーーー」
「早く次の仕事探しましょう」
段々、貧乏くささが板に付いてくるブルースワットであった。
……まあ、そこのメガネにちょちょいっとどこかの政府機関をハッキングさせて、機密資料でも売りさばけば(待て)
ところで今回、警察官の扮装の為にメガネを外しているシーンがあって始めて気付いたのですが、
セイジは『電磁戦隊メガレンジャー』(1997)の川崎省吾役の人か! 猿顔だけど彼女持ちで、
同じ猿顔系の主人公を絶望の淵に落とした川崎省吾!(その覚え方はどうかと思う)
『ジャンパーソン』第15話で街工場の職員でゲスト出演していたのは、この流れがあったのかしら。
前年『ジャンパーソン』第40話でデビューしたメタルヒーローシリーズの虎の子・小林靖子2本目の脚本。
デビュー作は面白いけど少々詰め込みすぎて尺の不足を招いている感じがありましたが、それに比べると今回はスッキリした内容。
抜群という程ではありませんでしたが、インヴェード被害者に関する工夫、
戦闘に巻き込まれた通りすがりの一般人?から思わぬ方向に転がる展開は光り、佳作といっていい出来。
次回――なんか、凄いの来た!
- ◆Volume11「イエスタディ・・・」◆ (監督:蓑輪雅夫 脚本:浅香晶)
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悪夢にうなされて跳ね起きるサラ……起きた瞬間に装着したままのホルスターから拳銃を抜くし、
ベッドには偽装でぬいぐるみを寝かせて本人はソファの陰で寝ているし、
ロサンゼルスはどこまで危険地帯なのか。
サラ、常に用心を怠らないプロフェッショナルというより、明らかに、もはや普通にベッドで寝られない人、
わかりやすい?所で例えると『フルメタル・パニック』(著・賀東招二)の相良宗介みたいな、
一般社会に適合できない戦闘機械になっているのですが、ロス市警は戦争しすぎです。
2年後――東京。
朝から射撃訓練に勤しむサラの姿に「サラはああして一日一回はぶっぱなさいと気が済まないんだぜ。本当は、
ただのガンジャンキー……」とショウが軽口を飛ばすのですが、多分、笑い事ではない。
サラが射撃訓練に使っていた古い拳銃に目を止めるシグ。
「こういう稼業長く続けてると、手放せない銃の一丁も出てくるのよ」
ロス市警は、内戦で人を撃ちすぎです。
「いや、戦士にはそういう銃の一丁ぐらいあるものです」
混ぜっ返すショウに対して、シグも変な宇宙銃を取り出す。それは、スワット銃の原型になった、
スペーススワット仕様のビームガンであった。そこへ突然、ブルースワットの秘密回線に送り込まれてくる挑戦状。
送り主の名はTRー99。世界中で要人暗殺を繰り返す国際的テロリストにして、サラがエイリアンの存在を知るきっかけとなった仇敵であった。
2年前、サラの所属していたチームはテロリストTR−99を追い詰めるが、反撃を受けて壊滅状態に陥る。サラ自身は、
TR−99に憑依していたエイリアンに殺されそうになった所を同僚のジョンに助けられ、ジョンは自爆特攻でエイリアンもろとも爆死。
ただ一人生き残ったサラはジョンの形見の銃を手にロス市警を退職する事になるが、TR−99とエイリアンは死んでいなかったのだ!
以前に明かされたサラの「戦う事が虚しくなって放浪していた」という背景があんまりだと思われたのか、
矛盾をきたさない範囲で設定が盛られましたが、全部まとめて回想シーンでどさっと見せてしまう為、
キャラクターを掘り下げたというよりも、露骨に設定を追加しましたといった具合に(^^;
また、冒頭の悪夢にうなされて跳ね起きるシーンは“2年前のサラ”の筈で、2年後の東京で急に古い銃を持ち出す(シグが、
初めて気付いたという反応をしている)理由に繋がらないのですが、そこで時制を分断する必要はあったのか。恐らく、
サラの少々狂った起床シーンを描くに際して、ロス時代の家にしないと広さが不自然という演出の都合だったのかと思うのですが、
無駄に話の流れを悪くした気がします。
そんなサラの背景云々はまだいいとして、今回最大の問題は、
ブルースワットの秘密回線がエイリアンテロリストに知られている事。
スペースマフィアの指揮系統は恐らくセル組織型で、内部の功績争いでもあるのか、
縦はともかく横のセル同士の情報交換は全く為されていないようですが、それにしても、これはアウト。
暗殺エイリアンという役割を考えても命令なしで単独行動しているとは考えにくいですし、根本的に、
都合良く秘密回線を知った暗殺エイリアンが単独で戦いを挑んでくるという成り行きがエイリアン視点で意味不明にすぎます。
ここまで来ると、スペースマフィア内部に敢えてブルースワットを泳がせている一派が居ると考える方が自然ですが、
それはそれで、どうして情報を握りつぶしている一派が暗殺エイリアンを送り込んでくるのかわからず、この点があまりにもまずくて、
ここから先の話全体に乗れなくなってしまいました(^^;
挑戦状に応え、TR−99と対峙するブルースワット。2年前にジョンの自爆特攻によって木っ端微塵にされたTR−99は、
肉体をサイボーグ化して再生していた。
「殺人ビーム……もしかしておまえは、皆殺しのザイバー!」
ようやくエイリアンに個体名がつき、TR−99にインヴェードしているのもまた、凶悪無比の宇宙テロリストであった事が判明。
しかもザイバーは、スペーススワットを全滅させた宇宙暗殺者であり、怒りのシグと突然の宇宙格闘開始。
「地球のテロリストにインヴェードして、次々と暗殺を繰り返していたのはやはりおまえか!」
つい先ほど「もしかしておまえは」とか言っていたのに、いきなり「やはりおまえ」に変わったり、
そもそもTR−99(ザイバー)とサラ&シグが対決する事になったのは全くの偶然だったり、
物語として因縁を付けたいのか付けなたくないのか、
そしてバラバラになったTR−99の肉体をサイボーグ化して復活させたのは地球の技術なのかエイリアンの技術なのか、
そこにTR−99の精神は残っているのか、それはもはや有機体ではなく無機物にインヴェードしているのではないか、
と色々な要素がぐっちゃぐっちゃ(^^;
一つ一つの要素が整理されないまま“当然の事”のように進んでしまい、
おまけにサラとシグの過去の因縁をいきなり一人の敵に集中した上で、その因縁は回想シーンでまとめて投げつけられるだけなので、
こちらの整理が追いつきません。
トドメに、憑依を解いた後にTR−99ボディが独自にスワットに攻撃を仕掛けてくるのですが、
それは元々のテロリスト魂で攻撃してきたのか、サイボーグだから遠隔操縦可能なのか、描写からさっぱりわかりません(^^;
後半の映像を見ると、憑依を解かれたTR−99には意識が無いようなのですが、
そうするとそれはやり無機物にインヴェードしているのではないか。
それが可能になると物語の基本条件が全然変わってくるわけなのですががが。
……といった具合で、とにかく全編ぐっちゃぐっちゃのどっろっどろ。
スワット銃の通用しないテロリストエイリアンの攻撃を受けて3人は吹き飛び、逃走するサラとシグ。
瓦礫の下から自力で這い出したショウはセイジと合流し、ここでスワット銃の仕組みが唐突に解説され、銃を強化する事に。一方、
逃走中の二人は過去のトラウマに震えるサラをシグがひたすら励まし、かつての戦友ジョンの言葉を思い出したサラは立ち直ると、
トラップを仕掛けてテロエイリアンに痛手を与える事に成功。
二人はそれぞれの思い出の銃を分解合成する事でテロエイリアンに対抗できる武器を作り上げ、
「撃つんだサラぁ!!」と踏ん張りながら叫ぶシグさんが、超面白かったです。
サイボーグボディを破壊した二人は憑依を解いたエイリアンの反撃を受けるが、そこにショウとセイジが駆けつけ、
セイジが改造した銃でザイバーを撃破。サラとシグは思い出の銃を失う事になったが、仇敵を倒す事で過去に決着を付け、
明日を掴む為の新しい力を手に入れるのであった……。
今作らしく銃をキーアイテムに置き、思い出の銃を「過去」、新装備を「未来」になぞらえ、
過去を乗り越える事を強化イベントに絡めて肯定的に描こうとした意図はわかるのですが、
根本的に〔サラの過去の因縁・シグの過去の因縁・武器の強化イベント〕を一度にまとめてやろうとしたのが、大失敗。
諸事情あったのかもしれませんが、明らかに「物語」という入れ物に対して「要素」という具材がキャパシティオーバーしており、
蓋の閉まらない弁当箱のような事になっております。その上更に、
過去のトラウマが重ねて描写されるサラに対し表面上そういう様子は見せないシグとのバランスの悪さ、
首をひねるテロエイリアンの設定など、各種味付けにも失敗しており、得体の知れない和洋折衷幕の内になってしまいました。
……内容としては、残念以前の出来。
――次回、ヤツが帰ってきた!
「ショウと鳥羽、宿命のライバル、最終章!」
……て、100%、『エクシードラフト』の時の失敗パターンだーーーーー!
しかも、最初の一言で嫌な予感はしたけど、予想以上にばっちり予告で殺されるし(^^;
いや、見たら内容は面白い可能性はありますが、ありますが。歴史はかくも繰り返す、のか……?
- ◆Volume12「グッドバイ・・・」◆ (監督:蓑輪雅夫 脚本:宮下隼一)
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強力な幻覚剤・ハードエンジェルが南米やヨーロッパで次々と広まるが、
それはスペースマフィアが宇宙から持ち込んだスペースドラッグであった。そんな折り、
かつてショウのライバルであったエクストリーム賞金稼ぎ鳥羽が帰国。
鳥羽がヨーロッパ各国を転戦したルートと麻薬の拡散ルートが重なっている事に気付いたブルースワットは、
ショウが山田の扮装で鳥羽と接触するが、まるで別人のような鳥羽の態度に、鳥羽がインヴェードされているという確信を強める。
エイリアンの監視装置(超露骨)を取り付けられたショウが、モールス信号で仲間と連絡を取るというそれらしいシーンが描かれるのですが、
会話の合間に伝えたり、何かに偽装するわけでもなく、ひたすらモールス信号を叩きまくるので
(演出としてわかりやすさを重視したのでしょうが)、それ下手するとエイリアンにそのまま解読されますよね、と物凄く台無し。
そして監視を利用して鳥羽を誘い込む作戦にも関わらず、シグとサラが何故かスワットスーツを着用せずに合流ポイントにやってくる為、
更に台無し。
鳥羽役がスワット1号の中の人で、そんな鳥羽との生身アクション対決をやりたかったという映像的都合はわかるのですが、
その必然が物語として成立していない為、都合の為の都合のシーンになっており、非常に冷める展開です。
鳥羽は3人をまとめてエイリアンテープでぐるぐる巻きに拘束すると時限爆弾を仕掛けて去って行き、
更に鳥羽エイリアンの上役(ウイルス回などで出てきた、久子・六角とは別の男女)がブルースワットの存在を確認(した後、
「あと1分30秒で爆死するからOKでしょ」と都合良く帰宅)。
あわやブルースワット最終回のその時、駆けつけたセイジが冷凍弾で時限爆弾を停止させ、ナイフで3人の拘束を破るのだが……
ショウ「馬鹿野郎! 俺たちに構うな!」
……え、セイジが来なかったら今頃3人まとめて地獄で反省中だと思うのですが。
そして、セイジ一人に鳥羽を追わせてどうするのか。
いや、妊娠回でミサイルランチャーぶっ放していましたし、セイジにも最低限の戦闘訓練はしているのかもしれませんが、
その割には前回、ショウ「銃の一つぐらい撃てるようになっておけよ〜」セイジ「僕は頭脳労働担当だから」みたいな、
デリケートな要素にわざわざ触れた上でギャグ扱いにして放置という頭の痛いやり取りがあったばかりなわけですが。
基本的に後方支援役なのに話の都合で車を出入りし、その割にはブルースワットの3人が最低限の訓練をつけている程度の描写があるわけでもなく、
セイジに関してとにかく話の都合にいいだけの中途半端な状態を維持していたツケが出て、出来るから行く必然性も、
敢えて行く盛り上がりもどちらも生まれないという、ブレーキをつけ忘れたレベルの事故に。
幸運ロールに成功し続けたセイジは鳥羽のアジトを発見して3人に連絡するが、
未だ全く拘束から脱出できていなかった3人の前で冷凍弾の効果が切れ、時限爆弾が再び初めてカウントを始めてしまう。
「セイジのやつ、ミスったな!」
自 業 自 得
改めて時限爆弾が爆発する一方、セイジも鳥羽に見つかってしまい、正体を現したエイリアンに襲われるが、
そこへ爆死したかと思われた3人が駆けつける(なお、爆発回避の理由は、シグの超能力レベルですらなく、一切触れず)。
セイジを助けるも強力なエイリアンの攻撃にスワット1号がピンチに陥った時、
憑依が解けて正気を取り戻した鳥羽が渾身のバイクアタック。だがエイリアンの反撃を受け、1号、メット割れ。
ショウの素顔に気付いた鳥羽は再び1号をかばうと重傷を負いながらもエイリアンに大ダメージを与えるが倒れ、
怒りのショウはエイリアンを撃破するのであった。
「あんた……誰だか知らないが、伝えてくれ。あいつに、山田に、借り、返したかったって」
ショウに抱き起こされながらの鳥羽のこの台詞は良かったのですが、メットを外したショウに対して、
「ショウ……ナルミ・ショウ、やっぱりおまえだったのか。もう一度お前と走りたかった……勝負したかったぜ、ショウ」
と、お互いに気付かない振りを通すわけではないので、あまり意味の無い事に(^^; ここは、
あくまでショウに対する友情は表に出さず、山田へ借りを返すという形でショウを助ける鳥羽のひねくれた男の友情が格好いい所ではないのか(^^;
「OK、受けて立つぜ。勝負してやるぜ鳥羽! だから、だから死ぬんじゃねぇ!」
ショウの慟哭虚しく、鳥羽は息を引き取る……そして相変わらずその光景を、
ドライな無表情で見つめるブルースワットのメンバーであった……。
いや、かける言葉もない、という無表情なのはわかるのですが、どうしても第1話の大惨事を思い起こしてしまいますし、
前回サラが回想シーンで仲間の死に動揺しまくっていただけに、凄く、比較として他人事感が漂ってしまいます。
悲しみを露骨に見せない戦士のシリアスさを表現したかったのでしょうが、ここで3人の顔は映さない方が良かったような。
爆発現場に作った鳥羽の墓に手を合わせ、スポーツドリンクをかけたショウは、かつての二人が並んで写った写真を、
自転車と共にその墓に置いていく。
無言でスポーツドリンクをかける所など良いシーンではあるのですが、鳥羽が大事にこの写真を持っていたのかと思うと、
どうにも変な笑いが出ます(^^;
いやだって、ショウは鳥羽のこと友達だと思っていなかったので、二人の写真とか持っているわけないですし!
思い出の写真みたいに捧げているけど、そもそも鳥羽の車の中にあった写真なわけですよこれ(笑)
ショウが立ち去った後、何故かそこに現れたスミレは写真を目にして二人の関係に気付くと、
図書館で過去の新聞を調べてショウの前歴を知る。その流れはまずいのでは……と思ったら、スミレはとうとう、
地質学研究所(元ブルースワットの隠れ蓑)の爆発事件に辿り着いてしまうのだった!
ここで、最大級の地雷を自ら爆破処理しに行くという勇気ある(或いは無謀な)一歩を踏み出すのですが、
スミレが突然鳥羽の事を気にして嗅ぎ回っているという、どうにも不自然すぎる展開(^^; まあ、
前回の鳥羽登場時に恐らく今回の流れまで考えていなかったのだろうと思われるのですが、
例えば何かの拍子に鳥羽がスミレを助ける絡みとかちょっとでもあったなら全然違うのですけれども、すべからく、展開の為の展開、
都合の為の都合になっており、実に雑。
そして、病院で少年の肉体に憑依しているマフィアの大物が姿を現し、ブルースワットの生存を遂に知ってしまう。
「抹殺しろ、抹殺しろ、抹殺しろ……」
今、ブルースワットに最大の危機が迫る!
“引いたキャラクターの再登場と死”をスプリングボードにして新展開に繋げる、
というのは『特捜エクシードラフト』の反省を活かした作劇だと思うのですが、個人的には、予告の見せすぎも含め、
死ぬ為に再登場させるという、キャラクターの使い方がまず好みではありません。
その上でせめて、憑依が解けた後にセイジを助けて時間を稼ぐ、とかあれば鳥羽単独の格好良さも出せたと思うのですが、
強引にショウをかばって死ぬ、という道具のような使い方で、もうとにかく全編が雑のオンパレード。
前回もそうでしたが、回想シーンを突っ込んでキャラクターと人間関係を掘り下げたつもりになる、というのも典型的な悪手ですし。
また前回今回で、シグのみならずショウとサラにも、近しい人をエイリアンによって殺害される、
という因縁が付加される事になったのですが、動機のわかりにくいヒーローが共感されにくいのでわかりやすい動機を設定しました、
というテコ入れ臭が非常に露骨。そういうのは仕方ないとは思いますが、もう少しスマートに組み込めなかったものか。
この急ピッチの解体工事と再建作業の行き着く先はどこなのか。とにかく雑すぎて既に柱が曲がっている気がしますが、
前衛的でアートな建物として完成する可能性もないとはいえないかもしれないない。
まあ思えば、『特捜ロボジャンパーソン』も14話までは目隠しして密林を全力疾走しているような作品だったので、
今作もここから巧く方向性が定まってくれるかもしれませんが……『ジャンパーソン』の場合は疾走中に木にぶつかっても沼にはまってもそのまま走っていたけど(焦点を失った目)。
次回――刺客現る。
- ◆Volume13「デス・トラップ」◆ (監督:三ツ村鐵治 脚本:宮下隼一)
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地球にやってきた3体のエイリアン、とりあえず山の中で派手に爆発を起こして力見せをし、
それを目撃してしまったハイカーに憑依する。一方、UFO目撃の情報を聞いたブルースワットは確認の為に出撃するが、
それを追跡するバイクの影があった……。
公道を力強く走るスワットスーツに関しては、これまではまあ、
やむを得ないお約束として流していましたが、事務所を張っていた人影に、完全武装で出撃した所を尾行される、
までやるとさすがにギャグ。
とにかく、秘密のゲリラ活動、というコンセプトを演出レベルで全く活用出来ていないのは気になります。
セイジが足止めした尾行者の正体はスミレで、セイジに例の新聞記事を突きつけると、そのまま指揮車に乗り込んできてしまう。
その頃、先行したブルースワットはエイリアンの待ち伏せを受けていた。地球に飛来した3体のエイリアンは、
ブルースワット抹殺の為の刺客であり、今後の侵略活動の為に育成中のエイリアン狙撃部隊だったのである!
と、前回ラストに登場したマフィアの大物ムッシュ・ザジの主導により、ブルースワットへの直接攻撃、という展開。
エイリアンの扱う戦闘用シミュレーションフィールドに閉じ込められた3人は分断されて激戦を繰り広げ、
戦闘アクションそのものは頑張っているのですが、何故か途中で一人だけ放り出されるショウ。
直前にエイリアンに少しダメージを与えているのですが、描写を見る限りでは、それが影響を与えたようには見えず、
非常に謎です(^^; そして、後からやってきたセイジとスミレに拾われたショウが、
外からシミュレーションシステムのポイントを破壊してサラとシグを救出し、
合流した3人は2体のエイリアンを撃破……とそのまま逆転に繋がってしまい、盛り上がりも何もない、単純に締まらない展開に。
最後に残った1体(途中でショウを放り出した上で放置したので仲間2体が死ぬ原因を作ったエイリアン)
はショウとの一騎打ちに敗れた所を、飛来したUFOの爆撃で死亡。ブルースワットは、
言語や空間を超えて宇宙レベルで効果を発揮するショウの《挑発》スキルでUFOを建物内部に誘い込むと、
第2話の使い回しっぽい映像を交えつつ、UFOを撃破するのであった。
「ごめんね、今まで隠してて」
「さっきはスミレさんのバックアップで勝利を収める事が出来ました。これからはチームメイトです」
「ホント!? 嬉しい〜」
「おいおい、シグ」
「事実を知った以上、行動を共にした方が安全です」
そもそも何故スミレを雇っていたのかという問題に関しては一切触れないまま単純にわかりやすい所に収まるスミレ。
ブルースワットの総数(5名)を知ってスミレがひっくり返るのは面白かったですが、
これまで1クールの扱いは何だったのか。
スミレに関しては今回、バイクで尾行したり、爆撃の中を走り抜けてミサイルランチャーをブルースワットに届けたりと妙にアクティブになっているのですが、
立場変更に合わせて能力値も修正した感じに。
強敵に対する逆転の成り行きは適当無比、スミレのパーティインに特にこれまでの物語が活かされるわけではない、と、正直、
単純に面白くないエピソード(^^; 病室ではムッシュ・ザジが立ち上がり、「いずれ必ず息の根を止めてやる。
覚えておくがいい」的に息巻くのですが、さてはて。
→〔その3へ続く〕
(2016年4月21日)
(2018年8月11日 改訂)
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