■『ビーファイターカブト』感想まとめ9■


“行け 軽やかに 行け 爽やかに
そうさ 若さこそパワー”


 ブログ「ものかきの繰り言」の方に連載していた『ビーファイターカブト』 感想の、まとめ9(47話〜50話)です。文体の統一や、誤字脱字の修正など、若干の改稿をしています。

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◆第47話「BF(ビーファイター)の父 老師死す!!」◆ (監督:東條昭平 脚本:宮下隼一)
 神頼みも破れ、現生人類(ホモ・パピリア)を絶滅させる筈がむしろ自分たちが絶滅寸前のマザーメルザードは、 最強にして最大のパワーを持つ闇の波動獣・ダーグリフォンを誕生させる。
 「このダーグリフォンの超低周波で一掃してやる。喰らえ、闇のはどぉーーー!!」
 闇の波動=超低周波なのか(笑)
 闇の波動は一撃で高層ビルを吹き飛ばす破壊力のみならず、昆虫への特攻効果も持ち、 直撃を受けたビーファイターは超重甲が強制解除されてしまう大ピンチ。迫り来るダーグリフォンに追い詰められる3人だが、その時、 ニューヨーク本部から筋肉の使徒達がやってくる!
 「貴様の相手は俺たちだ! ダーグリフォン!」
 「覚悟しろよ、怪物野郎!」
 「舞ちゃんも忘れないでよね!」
 先代ビーファイター3人は、どこかの建物の屋上ドーム部分の外周という、なにやら凄い所にヒーロー仁王立ちし…… 拓也の人相はどうして出てくる度に悪くなっているのでしょう(笑)
 「重甲!」「重甲!」「重甲!」
 先輩3人はなんだかんだ好感度が高いのと、ここで流れる前作主題歌が熱い。
 先代ビーファイターが再登場し、ダーグリフォンに襲いかかる、筋肉!筋肉!筋肉!
 これを見ていたメルザードではBCが大至急加勢に行こうとし、サソリの戦士の誇りはどこへ消えたのか。……いやこの場合、 増援加わって6人となったBF相手にバランス取るべく、加勢に行く方がフェアなのかもしれませんが。
 だがマザーはそれを制止し、そうこうしている内に超低周波の攻撃で吹き飛ばされた先代BFは、 冒頭で見せていた超高周波発生キャノンを構えて反撃。
 「やはり超高周波を使ったか。狙い通りだ」
 うひょー! さすがマザー! そこに痺れる憧れるー! と、兄弟達はマザーの知謀を讃え、ずらりと雁首並べた幹部クラス6人が、 一斉にマザーに仕事欲しいと頼んだり、一斉にマザーに質問したり、一斉にマザーを褒めちぎったり、説明台詞を仲良く分け合ったり、 面白くない絵面で面白くない言葉を交わし続け、本当に残念すぎる扱い。
 結局、超低周波と超高周波のぶつかり合いはお互いに決め手を欠いて痛み分けに終わるが、 その衝突によって広がる謎の黒雲にマザーは満足げにほくそ笑む。
 「ゆけダーグリフォン! 死して残せ、闇の意思の勝利への道を!」
 一方ブラックアカデミアでは、ダーグリフォンを打ち破るべく、拓也が超高周波を光の波動にレベルアップさせようとしていた。
 「闇の波動=超低周波」の時点でだいぶ困惑しましたが、「光の波動=超高周波」なのか。この宇宙では、開闢以来、 超低周波と超高周波が戦っていたのか。そういう世界、にしてもさすがに意味がわかりませんが、とにかく光だ。
 「でも、どうやって?」
 「超高周波発生システムを、ブルービートのソニックフラップに組み込むんだ」
 そして光とは、鍛え抜いたマッスルだ。
 ダーグリフォンが再出現し、システム完成までの時間稼ぎに出撃する後輩3人。 拓也らはビーコマンダー格納状態のインセクトアーマーを改造していくが、光の波動もまた昆虫たちに悪影響を与え、 インセクトアーマーが耐えきれずに拓也自身の命が危うい可能性さえあった。
 「だが、これが俺の、地球の命を守る戦いを始めた、ビーファイター、ブルービートの使命なんだ!」
 そう、何千何億の昆虫たちが屍山血河を築こうと、最後に立っている者が居れば、それが勝利だ!
 第45話で甲平が前作のアンチテーゼに到達しましたが、別に拓也と話し合ったわけではないので、 もちろん拓也は何も変わっていませんでした(笑) むしろ、先鋭化していた。
 昆虫たちへの悪影響は何とかする、と老師が請け合い、赤と緑のソニックフラップを移植し、3倍のマッスルを得るブルービート。
 闇の波動=超低周波に始まり、光の波動も昆虫たちに悪影響、ソニックフラップの移植、 と画面の向こうの言葉遊びのような展開が続いてしまい、非常に置き去り気分。
 健闘虚しく、またも変身解除に追い込まれる後輩3人だが、そこへ先輩3人が駆けつける。
 「ソニックフラップ! 光の波動!」
 今、磨き上げた筋肉が光を生む!!
 ブルービートは合わせた両手を前に突き出すポーズ――かめはめ波なのか波動拳なのか――で光線を放ち、いっそ、 ボディビルのようなポーズで光を放った方が世界観に合致したのでは、と思わずには居られません。
 立て続けに詰め込まれた新要素、手から光線を放つ先輩を観客席から見つめる後輩3人、 折角出てきたけどこれといって見せ場のない緑赤、と「どうしてこうなった……」が脳裏を高速で回転します。
 「闇の雲よ……もっと……もっと大きくなるー!」
 光と闇の波動の衝突によりマザーの求める闇の雲は急速に成長し、昆虫たちへの被害を食い止めるべく、その影響を一身に集める老師。 昆虫パワーを宿した青は至高の筋肉が生み出す光のオラトリオで闇の波動を上回り、 待ってましたと客席から飛び出した後輩達がダーグリフォンを撃破するが、限界に達した老師は遂に力尽きてしまう。
 「戦士達よ……地球の……生命たちを、頼んだぞ」
 あまりにも都合の良すぎるジョーカーキャラなので特別好きだったわけではない老師ですが、それにしても、酷すぎる最期(^^;
 ダーグリフォンの恐ろしさや、拓也が苦渋の決断として光の波動の使用を選ぶ、という要素がもう少し強調されていれば違ったかもしれませんが、 描写上はこれまで通りの都市破壊、最初から覚悟完了している拓也、すんなり同調する老師、と強調すべき部分が強調されない為に、 何もかも画面の向こう側で勝手に進行。
 「拓也……連れて帰ってくれ、あの場所へ」
 という台詞は良く、“地球の命を守る為の戦い”において深く通じ合う拓也と老師というのは伝わるのですが、 前作ならともかくスポット出演の今作にそれを持ち込まれても、話の軸がそこには無かったので、まるっきり劇的さを欠いてしまいました。 どうしても老師を始末したかったのなら甲平達と絡めて語るべきだったと思うのですが、究極的には、 ジョーカーである老師と先代3人@勇者キャノン持ち、というカードを葬り去る為のエピソードで、もはや彼らは、 特攻魂を捨てられない過去の遺物、という事なのか。
 「俺は……俺は泣かない。泣くもんか。敵を倒すその日まで、俺は戦う。戦い続ける!」
 5人が老師の亡骸を囲んで涙にくれる中、ひとりインセクトアーマーに身を包んだままのカブトンは、 決戦へ向けて意志を高めるのであった。
 ――後日、あの場所。老師の墓に手を合わせる拓也。
 「世界中で、雨が降り続いている。まるで老師、あなたの死を、悼むように」
 それは、そんなポエムな状況ではないのでは……。
 「教えてくれ老師! ……俺たちは、甲平たちは勝てるのか?! メルザードに、闇の意思に勝てるのか?! 老師、老師ぃ!」
 不在になった途端に急に皆がすがりついて存在感をアピールする、というのは某道士を思い出しますが、老師から帰る言葉はなく、 そして雨が降り続く……。
 「我が切り札は放たれた。いよいよ上がる、最終決戦の幕が。大いなる闇よ、我に力を!!」
 43−46話でキャラとテーマ性を強く押し出した単発エピソードに秀作が続いた所で迎えた最終章、ラストパスを受けた宮下隼一が、 きっちりと平常運行に戻してきました。
 45−46話と重量級の2本が続けざまに放たれたので見ている側も眩惑されそうになりましたが、前2話が無かったと考えると、 持て余されるキャラクター、軸が無いのに急に浮上してくるテーゼ、格付け不明瞭な新兵器での殴り合い……凄くいつも通りの 『ビーファイターカブト』です。

◆第48話「BF基地(ビートルベース) 大爆破?!」◆ (監督:東條昭平 脚本:宮下隼一)
 一週間、世界中でひたすら降り続く雨……それこそが、マザーメルザードが放った闇の切り札であった。熱を出して倒れたゆい、 そして健吾と蘭の体内に、見たこともない細胞が発見され、世界中から同じ症例の報告が続々ともたらされる。
 闇の雨を浴びた者の体内に根付く謎の細胞……前回、老師の死を看取る時にネオインセクトアーマーを着っぱなしだったので甲平だけは無事だったとされるのですが、 甲平、ずっとアーマー着っぱなしで基地まで戻ったのか。そして、この1週間、一度も雨に濡れた事がないのか。
 と、いきなり色々と無理のある展開。
 ゆい達に根付いた闇の細胞を通してビートルベースの所在を掴んだマザーは、カマキリとハチにネオビートマシン破壊を命令し、 精密検査中の健吾と蘭を残し、一人それを迎撃するカブトン。同時に、デズルとドードもBF基地に潜入すると小山内博士の身柄を拘束し、 博士に変装したデズルは司令室のコンピューターを操作して、基地の自爆装置を作動させる!
 PCを操作しているのは、洗脳した博士ではなく変装したデズルで、以前に占い師になりきって地上で工作活動していた事はありましたが、 「兄者! この地上のパソコンというものは素晴らしいな!」とか、メルザードに持ち帰って自室でプログラムの通信講座を受けていたりしたのか。
 世紀末では当然のセキュリティの起動により、BF基地の自爆まであと15分。しかもそれは、 日本支部が自爆すると同時に、ネットワーク回線を通して世界中のコスモアカデミア支部(&ニューヨーク本部)の自爆システムが作動するという、 世界同時自爆プログラムであった!
 新帝国ビートルに、栄光あれーーーーー!!
 どれだけ後ろ暗いんだ、コスモアカデミア。
 物語最終盤、敵幹部の直接攻撃により大事な基地が大ピンチなのですが、とにかく敵の魅力が分散してしまっている為、 それぞれの格が物語を動かす重要性と噛み合わず、盛り上がってきません。加えて頭数の始末をつけるだけでプロットが細切れになってテンポも悪くなるという悪循環。
 拘束を脱した博士が司令室で自爆プログラムを解除しようと奮闘する、というのも何かも今更。
 整備ドックでは、カブトンに攻撃を回避されて同士討ちの形になったハチとカマキリが、死を覚悟。
 「こうなればネオビートマシンごと!」
 「ビークラッシャーとして、栄光の死を!」
 斜に構えた自信家集団→マザーの忠実な臣下→希釈しすぎて戦闘員同然、という変遷を得てきたビークラッシャーですが、 紆余曲折のキャラ付け破綻の末、昆虫魂に目覚める事に。
 「「うぁぁぁぁぁぉぉぉぁぁ!!」」
 「待て! 待てー!」
 爆弾片手に握ってよたよたと走るセミとカマキリ、それを追うカブトンの映像が悲しいほど間抜け……。
 ネオビートマシンはBC爆弾を手にしたセミとカマキリの肉弾特攻により吹き飛ばされ、 前半あれだけフォーカスされたネオビートマシンが、穴の空いた靴のように無惨に放り捨てられ、BC2名も殉職。今、 私の頭の中でリピートしているのは、『機動警視ジバン』の主題歌です……!
 なんとか世界同時自爆は解除した博士は、ゆいにビットと闇の細胞の分析データを託して脱出させ、 自らはギリギリまでBF基地の自爆解除を試みる。
 BF3人は基地に潜入していたデズル&ドードと野外で戦闘にもつれこみ、直接戦闘に参加したと思ったら、 カブトランサーにぐっさり突き刺されるドード。最後の力を振り絞ったドードがカブトンの動きを封じ、 攻勢にかかるデズルはしかし至近距離で銃撃を受けて後方に吹き飛んだ所、ドードに突き刺さったままだったランサーの 反対側がぐっさり。じたばたしていた所を主従まとめてインプットライフルで消し飛ばされるという、 ちょっと前例を思いつかないレベルの無惨な最期を遂げるのであった。
 溜まりに溜まったツケが自棄っぱちを感じる形で次々と精算。
 思えば……

 『機動刑事ジバン』:大惨事
 『特警ウインスペクター』:続編の都合で微妙な事に
 『特救指令ソルブレイン』:大惨事
 『特捜エクシードラフト』:炎の黙示録
 『特捜ロボ ジャンパーソン』:かおるエンド
 『ブルースワット』:大惨事
 『重甲ビーファイター』:炎の黙示録再び

 と、杉村−(扇澤)−宮下時代(堀学校期)の《メタルヒーロー》シリーズ最終盤(最終回)といえば、 ごく一部の例外を除いて大惨事をこそ基本とするので、90年代メタルヒーローの終焉を飾るには大惨事こそふさわしいという事なのか!
 「デズル……デズル……おのれぇ……!」
 BF3人はゆいと合流し、BF基地へとひた走る4人の目の前で、ブラックアカデミア日本支部、壊滅!
 もはや乾いた笑いしか浮かばないのですが、博士はキャラ的にあまり死にそうにないので、ひょっこり出てきそうなのが輪をかけます。
 そこへ最後の戦いを挑みにムカデが単身現れるが、闇の雨を浴びたその体内ではマザーの切り札――高性能の生体時限爆弾――が形成されている事が判明する。 闇の細胞の正体はその爆弾であり、あと半日でゼロアワーを迎えて一斉に爆発するのであった!
 「地球を滅ぼすのは人間だ。何も知らず気付かぬ内に、自らの爆弾で、炎で、地上を破滅させるのだ。これこそ我が、 闇の意思の最終作戦だ」
 地球規模人間爆弾という作戦自体は面白いのですが、とにかく積み重ねの薄い作品という事もあり、 メルザードらしさ・闇の意志らしさというのを感じ取れず、最終作戦としての盛り上がりは今一歩。
 「あと半日の命か、ははははは、面白い! 今こそ我が使命を果たしてやる。虫けらどもを道連れに、地上を地獄に変えてやる!」
 体内の爆弾の存在を知り、これまた昆虫魂をヒートアップさせるムカデは人格が破綻しすぎてもはや誰だかわかりません。 第46話は46話で扇澤さんによる人格改造だったとはいえ、せめてもの一貫性を持たせるならこれはサソリの役割だったと思うのですが、 今回のサソリは本拠地に立っているだけで、BCはひたすらに虚無。
 「許さねぇメルザード! 人間は貴様等の、玩具なんかじゃない! 博士ばかりじゃなくゆいまで、俺の仲間達まで、許さねぇ!!」
 「行くぞ、ビーファイター!」
 単身突っ込んでくるムカデ、迎え撃つビーファイター、待ち受ける運命に座り込んで絶望するゆい、と、身内も人間爆弾に巻き込み、 その恐怖を示すゆいちゃんの位置づけは面白いのですが、どうしてここでムカデを相手に引っ張るのか……と激しく困惑しながら、つづく。

◆第49話「地球滅亡の夜明け」◆ (監督:石田秀範 脚本:宮下隼一)
 『特救指令ソルブレイン』での監督デビューから6年目にして、東條監督でも三ツ村監督でもなく、石田秀範がラスト2話を担当。
 「地球を滅ぼすのは人間……」とか言われると環境破壊ネタと絡めるのかと思うと全くそんな事はないメルザード最終作戦のタイムリミットが告げられ、 テンション高いムカデはビーファイターに猛攻を浴びせる。
 戦いを見つめるゆいの叫びが「お兄ちゃん!」の直後にムカデに人質に取られた後、「助けてカブト!」ってどうしてそうなってしまうのか(^^;
 「これが俺の戦い方だ!」
 と、数秒前までは単騎玉砕なにするものぞと最後の勇姿を見せていたムカデがあっという間に小悪党に成り下がり、最後の最後まで、 ビークラッシャーをどう見せたいのかさっぱりわかりません。
 ならばこれが正義の戦い方だとそこにメダルの戦士4人が駆けつけ、数の暴力で圧倒。 連続で必殺技を浴びてアーマーが砕けていき、瀕死になったムカデはマザーにより闇の爆弾を起爆させられ、あえなく爆死。
 「た、助けてくれ……助けてくれぇ!」
 ついさっき、ムカデが凄まじく強いのは心中覚悟だからだ! とBFが理由をつけていたのですが、 そんな事は全くなかった命乞いをしながら死亡し、何もかも一貫しません。死を前にして本音が出たともいえますが、 そもそも爆弾起爆しなくても全必殺武器を受けて残HP1になっていたわけで、最後の力で7人+ゆいを巻き添えにしようとするも果たせず爆死、 で良かったのでは。そして根本的に、やはりこれはサソリの役割だったのでは……。
 映像の都合で実にパッとしない爆発は、まだ爆弾は未完成だったからだ、とマザーがフォローを入れ、無惨な爆発に怯えるゆい (これは良かった)。
 「お兄ちゃん……あたし、死んじゃうの? 明日の朝、死んじゃうの?」
 「ゆいちゃん、怖いのはゆいちゃんだけじゃないよ」
 「僕たちもみんな、爆弾を抱えてるんだ」
 女子高生に平然と昆虫戦士の覚悟を強いる君たちが怖いな!
 ビーファイターもまた、甲平を除く6人全員が体内に闇の爆弾を抱えていた。そして、世界中の人々がそれと知らずに爆弾を宿している…… 誘爆を恐れずに戦えるのは自分しか居ない、と単身メルザード要塞に乗り込み、マザーが見せつけた起爆装置――闇の波動の結晶――の破壊を決意する甲平。 昆虫たちの力を借りてメルザード要塞への道を切り開こうとする甲平だが、一人では行かせない、と仲間達が駆けつける。
 「水くさいわよ、甲平」
 「おまえ一人を、行かせはしない」
 「一緒に、戦うぞ甲平」
 「負けたらドカンだろう、ムカデリンガーのように」
 「でも、心配なのは私達の命じゃない。街や、他の人達に対する爆弾の被害」
 ソフィーが経験を積んで戦士の覚悟を身につけているというのは、もっとしっかり掘り下げていけば面白くなった要素だったと思うのですが……
 「だからこそ、敵の懐に飛び込むんだ。敵の爆弾を抱えて!」
 覚悟とはすなわち、腹マイトによる特攻だ。
 小山内のオジキの仇じゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!!
 「甲平、俺たち7人は、死ぬも、生きるも一緒。同じ、光の意志の戦士だ!!」
 すっかり第45話が無かった勢いですが、宮下さんの中で『ビーファイター』らしさというのは、結局こういう所に行き着くのかな、 と(笑)

「行くぞビーファイター!」
「「「「「「「超重甲!!」」」」」」」

 さすがに7人並びはそれなりに見栄えしますが、突然、メルザード要塞に突入できてしまうのは超・謎。昆虫たちが本気になれば、 いつでも突入可能だったのかメルザードス……。
 「とうとう来たかビーファイターめ」
 「爆弾を抱えたまま突入を……」
 「馬鹿な!」
 そして赤い二人、君らここに来て台詞はそれか……。
 やべぇやべぇよあいつら頭おかしいよ! と慌てるサソリだが、マザーから、闇のフィールドの属性効果があるから大丈夫むしろ超有利、 と言われ、よっしゃラッキーと出撃。そしてマザーは、最終作戦終了の暁には、とライジャを後継者へと使命する。
 もはやどうでも良くなっていた話ですが、最終回で何か意味が出てくるのか、 とりあえず目立つ要素は回収しておこうという宮下さんの意識か。
 メルザード時空で戦闘力3倍(気持ち)のサソリは7人のBFを相手に大立ち回り。
 「こいつ?! 俺たちの抱えた爆弾が怖くないのか?!」
 ……特攻してくるヒーロー達にこの期に及んでおののく敵幹部達も間抜けでしたが、ヒーロー達はヒーロー達で、 どうして爆発が怖くて敵がまともに攻撃してこないだろう、という予測前提なのか(^^;
 ライジャとミオーラも参戦し、なんだか、7人を迎撃する3人の方が格好良く見えるのですがどうしましょう。
 本来なら個人では勝てない強大な敵に力を合わせて立ち向かう(その結束こそが正義の強さだ!)、という状況が成立する筈なのですが、 限界まで希釈されたメルザード幹部にはもはや脅威のイメージがほとんど無い為、単純に、多勢に無勢にしか見えなくて困ります。
 メダルの戦士4人が足止めに残り、マザーの元を目指すカブトン・クワガー・テントウだが、 体内に闇の細胞を宿すクワガーとテントウが行動不能に陥ってしまう。メダルの戦士達、 そして世界中の人々も爆弾化してしまう絶体絶命の事態の中、唯一戦う力を持ったカブトンは、よく観察して、マザーの弱点を発見。
 要塞と繋がったエネルギー供給部分を破壊する事によってマザーに大ダメージを与え、 闇の細胞による支配力が弱まった事でメダルの戦士達が合流。4人は闇の波動(超低周波)を相殺する光の波動(超高周波)を放ち、 メダルパワーにより暗黒爆弾の起爆装置である闇の波動の結晶を破壊する。
 メダルの戦士達の着地としては悪くなかったのですが、その煽りを受けたカブトンとクワガーは、ラスボス戦で石化。 あちら立てればこちらが立たず、閉店セールが追いつかない、と結局最後の最後まで敵味方の頭数を持て余してしまいました。
 闇の結晶破壊の代償としてメダルの戦士達は戦闘能力を失ってしまうが、全世界の闇の細胞は消滅。闇の最終作戦は失敗に終わり、 メルザード要塞は地表へと墜落する。
 「勝った! 勝ったんだ!」
 カブトン達は要塞を無事に脱出、ゆいちゃんも笑顔で駆けつけ、みんな博士の事は150%忘れていたが (今回通して誰一人として博士に言及しない)、カブトンの立てたフラグに応え、 マザーメルザードが巨大怪獣ジャドーマザーラとして復活!
 「みんな、最終決戦だ! カブテリオ」
 ……みんな、とは。
 と思ったら、巨神召喚をサソリが妨害。そしてライジャとミオーラも参戦し、挟み撃ちに遭うBF3人。 巨大怪獣も大暴れして市街地を蹂躙し、どうするビーファイター?! で、つづく。
 マザー怪獣のデザインは、グロテスクかつ造形にもかなり力が入っていて、良かったです。

◆第50話「ラストバトル」◆ (監督:石田秀範 脚本:宮下隼一)
 「地上を焼き尽くし、暗黒の闇に閉ざしてやる。闇の意志の恐ろしさを、思い知らせてやる」
 マザー怪獣が大暴れする中、生き残りのメルザード幹部3名と激突するビーファイター。カブトンのマッチアップ相手は………… デスコーピオンでした。
 ……兄者ぁぁぁぁぁぁぁ!!(涙)
 テントウvsミオーラはわかるとして、最終回にして黒い十字架に取り憑かれた突発性戦士症候群のサソリ男に宿命のライバルの座をかっさらわれて座布団全部持っていかれてしまう兄者ぁぁぁぁぁぁぁぁ!!(涙)
 まあそのサソリは、割とさっくりカブトンランサーの直撃を受けて在庫処分されるのですが。
 「見事だ、カブト……! 最高の敵と戦って死ぬ……戦士として、本望だ……」
 つい数秒前まで「ビークラッシャーの一員として兄弟達の仇を討つ!」と息巻いていたのに、突然「死んでも満足!」と言い出し、 とにかくビークラッシャーは執着に一貫性が無いのが困ります。
 それから、カブトンランサーの威力も一貫性が無くて困ります(^^;
 もともと各種武装の扱いが大雑把な今作ですが、この最終盤、カブトンランサーがすっかり最強武器扱いなのは、見ていて非常に困惑。 ヒーロー物で必殺技の威力が勢いで変わるというのはよくある話ですが、そこに物語や情念の積み重ねがあればこそ見ていて説得力が増すわけで、 そういった情念の積み重ねにことごとく失敗している今作を、この最終回に基本武装が象徴する事に。
 「違う! 違う! 命は戦いの為に、死ぬ為にあるんじゃない。生きる為にこそあるんだ。それを……メルザード、闇の意志! 許さねぇ!!」
 よってこの辺りのテーゼも中途半端に混線したままで、戦い=死、とひとまとめにして否定してしまうのですが、 『ビーファイター』は昆虫魂を通して“生きるための戦い”を描いてきた作品なので、昆虫魂に対して、 未来へ向けた新しい道筋を提示できないまま終わってしまったのは実に残念。
 マザー怪獣がこれでもかと街に被害を与え、病院で「一年生になりたい」と怯える少年を、
 「僕も必ず一年生になれるわ。ビーファイターを信じましょう」
 と励ますゆいは、ビーファイターとはどういったヒーローか、という要素も入って良かったのですが、 こういった世界との関係性の要素も、今作の積み重ね不足ゆえに生かし切れず。
 ゆいちゃんのヒロイン力の高さはラスト2話をかなり助け、ヒロインとしての鳥羽ゆいはかなり健闘しましたが、 恋愛ネタはブレーキがかけられたのか、すっかりブラコン路線に戻ってしまったのは、ちょっと残念(笑)
 サソリを撃破したカブトンだが、さすがにクワガーを倒した兄者がその前に立ちはだかる。
 まさかのクワガーに敗北してリタイアにならなくて本当に良かったですが、足蹴にされているクワガーの方は中盤以降本当に不遇で、 このままでは健吾さんが色鉛筆の白のようなヒーローとして歴史に名を残してしまうその瀬戸際に祈るヒロイン。
 「このままじゃ地球は……誰か、誰か助けてお願い!」
 その時、不思議な事が起こり、病室で意識不明のマック達が何かに導かれるように目を閉じたままコマンドボイサーを掲げると、 次元の果てから飛来して地面に突き刺さったのはガイストアックス! そしてコマンドボイサーから放たれた4つのメダルの力がアックスに集まると、 真の姿を取り戻したクワガタイタンが光の巨神として甦る!
 つい数分前に確固たる象徴として“ビーファイターを”信じようと言ったヒロインが、 不特定の“誰か”に祈ってしまうと実質的な奇跡が起こってしまうという残念きわまりない展開。 せめてこれまでの戦いが育んできたBFを信じる人々の想いが光を生む、などの描写が入れば奇跡の下支えになるのですがそんな事もなし。
 世界中の人々の声援が……は第42話の月面決戦で用いて積み重ね不足から大失敗しているのですが、最終回にして、 新たな同志を求めてゴールドプラチナムが降臨したばりの事態に今作を象徴する基盤整備の不足がただただ浮き彫りになり、 しかし全ては、クワガーに見せ場を与えてほしいというヒロインの願いが生んだ恩寵……すなわちこれが、 真なるヒロイン力だ!!
 ヒロインの生んだ奇跡によりクワガタ神に乗り込んだクワガーは、大怪獣マザーと激突。長い尻尾を振り回す操演も格好良く、 マザー怪獣は本当に良い出来で、もはや勿体なさすら漂ってきます。
 カブトンvsライジャ、マザーvsクワガタイタン、テントウvsミオーラがそれぞれ激闘を繰り広げるが、次々と倒れ伏すビーファイター。 メルザード勢が「勝利だ」の大合唱をした所でアイキャッチからBパートへ。
 果たして、戦士達は力尽きてしまったのか――だが、
 「まだだ……まだだ! まだ戦いは、終わっちゃいねぇぞ」
 「私たち……地上に生きる、全ての生命に、選ばれた」
 「決して諦めず、希望を武器に戦い続ける!」
 「……それが俺たち、ビーファイターだ。ビーファイターだ!」
 「ビーファイターよ!」
 「ビーファイターだ!!」
 それぞれ深傷を負いながらも、諦める事なく立ち上がった3人は、敵の武器を叩き割り、断ち切る!
 カブトンとテントウにスーツアクションがある一方、ロボットの中で斧を構えているだけのクワガー、一周回って薄れる見せ場感。 ゆいちゃんのヒロイン力を持ってしても、これが限界なのか……!
 テントウの必殺攻撃を受けて、ミオーラは大爆死。序盤は絡みもありましたし、女性戦士としてラストのマッチアップには納得なのですが、 ミオーラが中盤以降ほぼ空気になっていた為にもう一つ盛り上がりに欠け、つくづくビークラッシャーは以下略。
 一方のライジャは、剣を折られ、カブトンの必殺攻撃を食らいながらも、死力を振り絞って立ち上がる。
 「我が名は、ライジャ。マザーメルザードの長男にして……闇の意志の戦士なり。マザーメルザードの長男にして、闇の意志の戦士なりぃ!!」
 折れた剣を手に、鬼気迫る表情でカブトンへと駆けるライジャ。
 「我が名はライジャぁ!!」
 最後に残った誇りを込めたライジャ捨て身の突撃と交錯したカブトンのランサーが一閃――
 「……マザー……マザー! 我が名はライジャ。闇の意志の戦士なり……」
 ライジャは天に向けて剣をかざしながら仰向けにどうと倒れ、遂に絶命する。
 ビークラッシャーは「執着に一貫性が無い」と上記しましたが、ライジャは、マザーメルザードの長男、 絶滅帝国の後継者としての執念を見せて最期を迎え、しっかりと焦点を合わせれば充分に魅力的な悪役だったと思うのですが、 終盤にサソリと役回りが重なってお互いに食いつぶしあっていたのは、本当に勿体なかったです。
 前回のマザーからの後継者指名もこれといって意味は出ずじまい。  で、今更ながら気付いたのですが、
 ライジャ/デスコーピオン:〔リーダー格、武人、赤〕
 ミオーラ/キルマンティス:〔冷徹、ある種の没個性に繋がる任務への忠実さ、緑というかカマキリ〕
 デズル/ムカデリンガー:〔サブリーダー格、卑怯上等、青・紫系〕
 ドード/ビーザック:〔トリックスター、コメディリリーフ、茶・黄色系〕
 と、BC4人のキャラクター性は、絶滅兄弟&侍従コンビから拡張されたのではないかと思われ、それはお互い、 食いつぶし合うわけだな、と改めて納得。というか、どうしてそんな事にしたのか……。
 見栄えする最期を遂げたのは良かったライジャですが、この決着で一つ気になったのは、瀕死のライジャに対してカブトンが 「もう勝負はついた」「(命を粗末にしやがって)馬鹿野郎……」といったリアクションを取っている事で、カブトンは、 ライジャが逃げたら見逃すつもりだったのか?
 ここでカブトンは、死力を振り絞って最後の一撃を放とうとするライジャと向き合おうとせず、言うなれば介錯を拒否します。勿論、 カブトンの側にライジャの最後の誇りを受け止めてやる義理はないですし、むしろそれを否定するのが最終的な甲平のスタンスではあるのですが、 では否定した先でどうするのか? というのは結局見えないまま、情に流されるままの言葉を口にするだけで終わってしまったのは、 鳥羽甲平というヒーローの着地として、残念。
 否定するなら否定するで、否定を徹底し、自らはライジャに攻撃しないぐらいの姿勢を貫いてほしかった所。
 ライジャとの決着を付けたカブトンは、満を持して真打ちカブテリオスを召喚。クワガタイタンと共にマザー怪獣へと挑み、 地上に取り残されるテントウ。
 果てしなく、締まりの悪い最終決戦。
 「地上に生きる全ての命の為に!」
 「今こそ、光の意志の、戦士の力を見せてやる!」
 今作終盤は戦闘の起伏も雑で、どんなに苦戦していてもBFが気合いを入れ直すと不屈の闘志で逆転できてしまうのですが、 カブト神とクワガタ神は熱い昆虫魂でバロムクロス。
 それにしてもどうしてカブトン達は、アストラルお爺ちゃんの昔話を聞いただけ、 こうまであっさり光の意志の戦士になりきっているのか。以前にも書きましたが、宇宙開闢からの戦いと今の自分たちの戦いを、 素直に重ねるにしろ一度は否定するにしろ、どう受け止めて消化するのか、というのは、カブテリオスの力を振るう事をどう考えるのか、 と合わせて1エピソード使っておいた方が良かったように思います。
 なればこそ、このクライマックスでの台詞も劇的になりますし、今作の場合は特にそれをやっておかないと、 いつまでも昆虫魂から逃れられないわけで。
 光の意志の名の下に、ばろぉーーーむしたカブト神とクワガタ神は両サイドからマザー怪獣を剣で貫き、ダブル必殺技。
 「闇も、影も、消える事はない。甦ってやる! 復活してやる……! いつの日か、必ず……必ず!!」
 さすがのマザー怪獣もこれに耐える事ができずに消し飛び、遂にメルザードは絶滅、 地球の生命達は大いなる闇の脅威に勝利するのであった。
 戦いを終えた甲平達の元には、マックらが意識を取り戻したという連絡が入り、そしてもう一人――ビートルベース爆発の寸前、 地下シェルターに転がり込んで生き延びたという小山内博士が右腕をギブスで吊った姿を見せる。
 個人的にどうでもいいのはさておき、甲平達にとっては一応、感動の生還と再会の筈なのに、 3人のリアクションがビックリするほど軽いのが、博士の人徳を伺わせます。
 一切の強化展開と関わらず、後半になればなるほど通信機握って難しい顔しているだけで何の役にも立たない小山内博士とは、 いったい何だったのか(一応、どさくさ紛れに世界同時自爆は阻止しましたが)。
 甲平達が感慨にふけっていると、虚空の一角に次元の亀裂が煌めき、それに吸い込まれるかのように消滅する、アストラルセイバー、 ガイストアックス、3つのコマンドボイサー。今度こそ本当に、戦いは終わったのだ……。
 「ただいま。帰ってきたで。よー頑張ったな、お父ちゃんも」
 同じ頃、グルの墓に元次元商人カブトが花を捧げていた。
 すっかり存在ごと抹消されたかと思われていたカブトが物凄く唐突に登場するのですが(「白いカブト」という、 実に不思議なクレジット)、タイミングから深読みすると、甲平達が「光の意志……?」と呟いた、 コマンドボイサーと神の装備を回収したのはカブト(白)という事でしょうか。とすると、 カブトは昆虫界から選ばれて各種次元を渡り歩く能力を与えられた、光の意志の依り代的存在なのか。 前作においてはグルと喧嘩して家出した事になっていましたが、非常に良いタイミングでビートイングラムを持って里帰りしてきたり、 光の意志に選ばれ、父親にも言えぬ使命を抱えて次元から次元を飛び回る、なかなか大変な人生を送っていたのかもしれません。
 恐らく昆虫界の中でも、光の意志との親和性が高い血統(老師は当然、その一人)が存在するのかと思われるのですが…… ゴールドプラチナムの正体は、老師の生き別れの兄だったりするのでは。
 そして卒業式――なんとか無事に卒業できた甲平は、インテリヤクザ先輩の誘いを受け、 コスモアカデミアが設立したアメリカの大学に留学する事に。
 結局、裏口でした。
 いや、この問題に関しては鳥羽甲平は一切悪くなく、ブラックアカデミアも当然の便宜をはかったと思います! 一芸入試枠なら、  「高校時代はビーファイターをやってました」で、堂々と表からですよ!!
 「お父さんとお母さんによろしくね、お兄ちゃん」
 ゆいは笑顔でそんな甲平を送り出し……て、え、ゆいちゃん、女子高生一人で日本残るの?
 てっきりすれ違う形で甲平両親が日本に帰ってくるのかと思ったら堂々の一人暮らし宣言ですが、 なんか餌付けされた蘭が半ば同居で寝泊まりに来そうだったり、 ブラックアカデミア日本支部が全力を持って不審者を蒸発させる世紀末では当然のセキュリティ(例のレーザー他)を仕掛けそうだし、 跳び蹴りで岩を砕く男とラブラブだし、むしろお兄ちゃんなんていらない。
 (ありがとう昆虫たち。ありがとう命たち。……ありがとう仲間達。今日、俺の卒業、俺の旅立ち)
 卒業式の日に仲間達と撮った写真を見つめる甲平を乗せた飛行機はアメリカへと飛び立ち――主題歌をバックに、 名場面集が始まって流れ出すスタッフロール。名場面集に博士とネオビートマシンのパートもあったのは良く、 最後は7人のビーファイターが並ぶカットでエンド。ラスト、カブテリオスのアップで終わる寸前だったので、ホッとしました(笑)
 作品に関しては正直、カブテリオス登場→軽い気持ちで濫用→クワガタイタンとダブルKO、辺りで完全に心が離れてしまい、 以降はだいぶネガティブな視点で見てしまいましたが、 テーマ的な基盤の脆さ・希釈されきったキャラクター・昆虫魂に対する定まらない姿勢と、 今作の悪い所が全て集約されたラスト4話でした。
 世界観を継続した続編、というのは、設定面での新奇さを出しにくい・雰囲気を継承しつつも新しい要素を入れなくてはいけない・ 役者顔出しの都合から前作の人気キャラをほいほい出せるというわけでもない、 と特撮ヒーロージャンルにおいてはむしろデメリットの方が目立つのでは、とさえ思えるのですが、 前作の核であった昆虫魂と多次元世界を掘り下げるわけでもない・かといって今作独自のテーマを積み上げるわけでもない という今作の根幹にある問題点が、最後まで足を引っ張った印象。
 勿論、テーマ性を高々と振り上げる作品が常に優れているというわけではなく、しかし軽快なエンタメ作品(無論、 軽快なエンタメである事とテーマ性が両立しないわけでもない)として面白かったかといえば、前半と後半のちぐはぐさ、 忙しすぎてそれぞれのギミックの扱いが軽すぎる後半戦、魅力を失っていく悪役達(当然それに立ち向かうヒーローの姿も面白くならない)、 と欠点が目立ちます。
 そしてそれが何に起因するのかといえば、『ビーファイターカブト』という物語としての芯の弱さ、 それ故にそこで生きるキャラクター達にも一本の芯が通らない、という点に突き詰められるのかと思います。
 だから今作は、キャラクターが何を言っても、そこに信念や執着が宿らない。
 或いは、それを信念や執着にする為に物語が機能しない。
 むしろその情念の排除こそが、今作の目指した所であった可能性もありますが、 個人的な好みとは正反対なのが実に残念な事でありました。
 さてこれで、戦隊に比べると抜けの多かった《メタルヒーロー》シリーズを、 『超人機メタルダー』〜『ビーファイターカブト』まで10年分見る事が出来たのですが (この間の戦隊を全て見ているというわけではないので、むしろメタルヒーローの方を多く見た事になっているかも)………… もしかすると、『特捜ロボ ジャンパーソン』は奇跡の傑作だったのでは。
 一つの時代の区切りとして、この10年の中期《メタルヒーロー》総括をしてみたい気もしますが、とりあえず、意識だけ。
 以上、『ビーファイターカブト』感想、長々とお付き合いありがとうございました。
 新帝国ビートルに栄光あれ!!

(2019年6月11日)
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