■『ビーファイターカブト』感想まとめ6■


“世界中から今 勇者が集まる
夢は野望に負けないさ”


 ブログ「ものかきの繰り言」の方に連載していた『ビーファイターカブト』 感想の、まとめ6(31話〜36話)です。文体の統一や、誤字脱字の修正など、若干の改稿をしています。

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◆第31話「合体最強銃と哀戦士」◆ (監督:石田秀範 脚本:扇澤延男)
 哀 かなしみの哀 いまは残るだけ 名も知らぬ戦士を討ち 生き延びて血へど吐く
 と、脳内で井上大輔が歌い出すサブタイトル。
 ライジャの後継者争い脱落で我が世の春になるかと思いきや、ビークラッシャーの登場ですっかり存在感の薄くなっていたデズルが、 クラッシャーに対抗心を燃やして自ら出撃。親衛隊と共にクワガーを追い詰めるが、そこに新たな昆虫戦士が現れる。
 「音の戦士――ビーファイターミン!」
 黒とオレンジの配色で、ゲンジの2Pカラーのようなデザインの新たなビーファイターは、直剣二刀流と武術の使い手。 更に胸アーマーが左右に展開し、アクセルフォー……じゃなかった、音波攻撃ソニックプレッシャーという、蝉の戦士らしい攻撃を放ち、 デズル軍団を退ける。
 「私のこと、君たちの同志思わないでほしい」
 だが、本職は小学校教師だというリー・ウェン(李文)は、ビーファイターとして戦う事を拒否。戦いを嫌うリーは、 自分がどうして昆虫魂に選ばれたのかわからないとこぼし、3つ目の追加武装であるセミッションマガジンも引き渡さずにブラックアカデミアから立ち去ってしまう……。
 水鉄砲で遊ぶ子供達を見て「そんなに戦争ごっこしたいか」と呟くリーの描写に、『超人機メタルダー』の
 「そんなに戦争ごっこがやりたいか!」
 (から繰り出される春田純一の蹴り)
 を思い出してしまったのですが、何か更に元ネタがあったりするのだろうかと思って検索かけてみたら自分の感想が引っかかったので、 単なる偶然の模様。
 健吾は、リーが昆虫魂に選ばれたのは何か意味があるに違いない、と説得を試みるが、街にビークラッシャー、 そしてそれを制してデズルが出現。
 「俺は生まれ変わった。デズルにしてデズルにあらず、今の俺は、デズルザグレートなのだ!」
 ……かつて、これほどまで期待できないパワーアップ名称があったでしょうか、いや無い。
 ところが、出オチかと思われたデズルザグレートは、トンボマグナムもブライトマグナムも弾き返すという、予想外の強さを披露。
 「リーが居りゃあ! セミッションマガジンさえありゃあ!」
 ……早くも、「絶体絶命でも諦めない心」とか「メカだけに頼らず、心で判断する」とか放り投げて、 科学技術の恩恵にずぶずぶなんですが。
 リーに助けを求めるカブトンとテントウに対し、戦う意味を見いだせないリーを修羅の昆虫魔道に引きずり込んではいけないと止めるクワガー。 それを聞いたリーは頭をかきむしり、苦悶の中で戦う「理由」を自分の中に見つけだす――。
 「私わかってるよ……ビーファイターの戦い、この地球から全ての戦いを終わらせる為の戦い。私……私もそのビーファイターの一人よ!  同志ーーー!!」
 つまり、新帝国ビートルによる世界の支配と昆虫魂による人類の制御こそ、世界から戦いをなくす手段なのである!  起てよ同志諸君! ジークビートル!!
 意外な新戦士との方針の違いという展開で、「戦う」信念と「戦わない」信念のぶつかり合いから新しい何かが生まれるのかと期待していたら、 最初からリーの中で答は出ていた、という解決にはガックリで、どうも扇澤さんのアベレージが冴えません。
 「戦う事悲しい。悲しい……悲しいから私の手で終わらせる!」
 つまるところ、ビーファイターそのものを揺るがす信念の衝突というよりも、たまさか運命に選ばれてしまった一般人の悲劇、 という題材だったようですが、30話越えてゲストキャラを通して炙り出すにしては、掘り下げ不足。もしかしたら扇澤さんの中で、 前作終盤のジプシー拓也の再挑戦という意図があったのかもしれませんが、今回も中途半端になってしまいました。
 「全ての戦い、終わらせる!」
 中身が中年(?)男性という事で、ヒーローらしさを補強しようとしたのか、妙に格好いいカットが多いミンはデズルに猛攻を浴びせ、 セミッションマガジンをクワガーへと託す。セミッションマガジンって何それ……と思っていたら、その正体は、 ずばりマガジン(弾倉)部分。
 インプットマグナムと組み合わせる事で、水や雷の力を発動させるセミマガジン。唐突に「水」とか「雷」とか漢字が浮かぶのは、 中国支部で開発されたからという事なのでしょうか……発動するとイメージ映像でデズルが吹き飛ぶという適当さと雑な汎用性が、 ウォンタイガー(『五星戦隊ダイレンジャー』)の「虎の子大秘術」辺りを思い出します(^^;
 3つの新装備を合わせて完成したインプットライフルは、玩具としての再現度優先だったのかもしれませんが、 ここに来ての新兵器にしては小ぶりでインパクト不足。折角の合体武器なのに、特にハッタリをつける事なくいきなり組み上がってしまうのも、 どうも盛り上がりません。
 衝撃の反動に耐えられるのはカブトンだけ、とライフルはカブトンに渡され、躊躇していた割に自分の名前をつけたカブトニックバスターが発射。 余裕を見せてノーガードで向かってきたデズルザグレートは文字通りに木っ端微塵に吹き飛び、大方の予想通り、 敢えない最期を遂げるのであった!
 「俺、怖いよ……」
 デズルザグレート(翌年の『電磁戦隊メガレンジャー』に登場する、究極生命体(失笑)を思い出すニュアンス)を撃破した喜びも束の間、 メタルヒーロー名物オーバーキル武装の余りの威力にカブトンが恐怖を感じる、というのは良かったです。
 「それでいいんだ」
 そこへ出てくる小山内博士。
 「武器を持つ事の重さ。引き金を引く事の重さ。それを忘れた時、どんな戦いも戦いの為の戦いでしかなくなってしまう」
 リーとの関わりで健吾もこれといって深まらないし、ここまでの展開は残念でしたが、戦いへの意識を改めて見つめ直すという、 このオチは良かったです。博士も厭味にならない程度に、それらしい役割を確保できましたし、これがもう少し、 健吾とリーの絡みと連結してくれれば良かったのですが。
 そして様々な前例を見る限りでは、カブトンは遠からずオーバーキル兵器の魔力に飲み込まれる可能性が高め(笑)
 ビーファイターが戦いに慣れすぎてその意味を見失ってしまった時、それに歯止めをかけられるビーファイターの良心回路がリーなのかもしれない、 と3人は去りゆくリーを見送って、つづく。
 一方メルザードでは、五体バラバラに吹き飛んだデズルをドードが回収。ライジャ同様、 要塞内部に保管してその復活を待つのであった……とビークラッシャーの代わりに新兵器の踏み台にされたデズルにも復活フラグ。 結局ここまであまり面白くならないままだったデズルですが、一時退場する事で、再登場時の爆発に期待したいです。また、 一度敗れ去るも復活の可能性がある事自体に、ライジャとデズルが何やら特別な存在である事が窺えますが、その辺り、 マザーの思惑と絡んで面白く繋がってほしい。

◆第32話「響け 美しき蝶の旋律(メロディ)」◆ (監督:三ツ村鐵治 脚本:浅香晶)
 ここまでの流れを復習し、3人の心強い同志の登場とオーバーキル武装の入手に意気上がるビーファイター。
 「いや、新たな仲間は4人居るんだ」
 「「「えぇ?」」」
 ……ええとマック、人数に言及していたと思うのですが。
 先輩登場後の怒濤の強化展開は、拓也が露骨に匂わせる→留学生変身→留学生帰国→さっそく次の戦士が現れて帰国→ またまた次の戦士が現れて帰国、と一切のインターバルが無くてどうも慌ただしいのですが、 細かい部分を調整する余裕のないまま突き進んでいる感。
 ところがフランス支部で研究されていた最後のメダルとそれに対応したコマンダーは3日前に行方不明になってしまい、現在捜索中。 通常業務をこなす甲平は、パトロール中に不思議な少女と出会い、成り行きで富士山麓へ同行する事に。
 少女の名は、ソフィー・ヴィルヌーヴ。甲平は全く知らぬ事だが実は世界的な天才ヴァイオリニストであった……と、 日本ランド(現:「ぐりんぱ」。富士急ハイランドと母体は一緒で、山梨側にあるのが富士急ハイランド、 静岡側にあるのがこの日本ランドとの事)タイアップによる、『ローマの休日』展開。
 (これだわ、このメロディ……)
 そしてソフィーこそ、3日前に突如飛来したコマンダーと蝶のメダルに選ばれた、新たな昆虫戦士だったのである!
 コマンダーの示すビジョンと謎のメロディに導かれて日本までやってきたというソフィーの事情を知った甲平は、さっそく超重甲を指南。
 ……戦いを嫌うセミの戦士の葛藤を描いた次の回で、昆虫魂に選ばれたのだから、 とろくな説明もせずに変身を要求する甲平が超鬼畜。
 タイミング的には前回エピソードの詳細を知る前に脚本書いていると思うので浅香さんに全責任は無いのですが、 どうも全体的な調整の不足を感じます(^^;
 ところがソフィーは超重甲する事ができず、未だ昆虫エネルギーを内包したままの蝶のメダルを狙って迫り来るハチとムカデ。 甲平からの連絡で駆けつけた健吾と蘭に守られ、導かれるままにソフィーがバイオリンで謎のメロディを奏でると、 それに同調した調べが響き渡り、洞穴の奥で台座に突き刺さっていた剣が飛来する。
 宙に浮かぶ剣はソフィーを守り、蝶のメダルの力がビーコマンダーにチャージ。
 「生誕! 花の戦士・ビーファイターアゲハ!」
 蝶の羽の意匠という事か、顔の四方にひさしの突き出したパピヨン戦士は良く言えば個性的でエクストリーム。 メインカラーがクリーム色というのは柔らかさが出てなかなか面白いのですが、目をゴーグル型ではなく二つの瞳にしてしまったのは、 少し冒険しすぎたのでは。お陰で、アーマーを纏った変身ヒーローというより、星の海からやってきた助っ人宇宙人感が少々。  謎の剣を装備したアゲハは優れた聴覚で、ビークラッシャーの忍者担当という事になったハチの忍術を見破り、 インプットライフルが炸裂。ハチとムカデはいい所なく撤退するが、何故か剣はアゲハの手を離れて再び姿を消してしまうのだった……。
 追加戦士の4人目は一ひねりが加わり、更なる新アイテムと絡む形に。 とにかくモチーフが蝶なので不吉な予感しかしないのですが、果たして剣の正体は!
 ソフィー役はクレジットによると日本人の女優さんのようですが、欧州系の血が入っているのか、日本人離れしたそれらしい顔立ち。 台詞回しもフランス人お嬢様らしさを心がけている感じで悪くなかったのですが、 一部驚くシーンなどが演技しきれなくて地が出る感じになってしまっていたのは、少々残念。
 ライジャとデズルというカードを残している事を考えると、 このまま一気呵成の展開で3クール中にビークラッシャーが次々と片付けられていくという事になりそうですが、前作の二番煎じ、 因縁構築の不足と重なって、昆虫戦士vs昆虫戦士、のマッチアップがもう一つ盛り上がらないので、 謎の剣という要素でうまく弾みをつけてほしい。

◆第33話「つかめ!!伝説の神剣」◆ (監督:三ツ村鐵治 脚本:浅香晶)
 ビーファイターアゲハへの覚醒に喜び、有頂天で変身と戦闘のイメトレを繰り返すソフィー。……今こそ、 セミの戦士の説教が必要なのでは(笑)
 そこへ飛んできた老師から、富士山麓が“昆虫の聖地”と明かされ、謎の剣を呼び出そうとバイオリンを奏でるソフィーだが、 何故か剣は姿を現さない。
 「昆虫界は音楽家だらけじゃ。コオロギ、スズムシ、キリギリス、みんな、生まれながらの芸術家じゃ。 ちょっと特別な力を持てたからといって、すぐに浮き足立つような人間とは違う」
 老師がソフィーの思い上がりをたしなめるのですが、そもそも作品コンセプトとして、 “手に入れた力に舞い上がって慢心を抱くような人間は昆虫魂に選ばれない”のでは、と思うのですが、浅香さんの、 目先の展開(アイデア)を優先して土台や柱をあっさりハンマーで叩き壊す病が発症(^^;
 或いは前回もそういう可能性を匂わせる台詞がありましたが、重要だったのはソフィーの人格ではなく、ソフィーの音感だったのか。
 マザーによるセイバー捜索の命令を受けてビークラッシャーが出撃し、マザーに服従するというよりも、 自分たちの興味がある事を楽しむというスタンスだったビークラッシャーが、畏怖と同居する忠誠を誓っていたデズルが退場した途端に、 マザーに対する温度差が無くなってしまったのも違和感を覚えるのですが、これは演出サイドの問題もありか。
 ビークラッシャーの襲撃によりカブトンとアゲハは次々と川落ち。アゲハをかばった老師は囚われの身となり、 ジェットコースターにくくりつけられたり射的の的にされたりと、散々いたぶられる事に。
 2頭身に近い老師を鎖で縛り付ける絵があまり気持ち良くないですし、 ジョーカーキャラだった老師がやたらと狼狽しているのもやはり違和感なのですが、 物語の積み重ねを活用するのがあまり得意ではない浅香脚本と、『ブルースワット』以降どうも冴えない三ツ村監督の演出が、 非常に悪い形で科学反応。
 老師の真心を知り、自らの思い上がりを反省したソフィーが再びバイオリンを奏でると、ビーファイター+老師とビークラッシャーは、 謎の剣の眠る洞窟内部へとまとめて転移。
 「我は、アストラルセイバー」
 喋った。
 「遙か、遙か時の彼方……大いなる光と、大いなる闇の戦いありき」
 つまり……
 コプーは正義! ドルゲは悪!
 多次元世界に幾つもの光の力が散らばったと語る昆虫神剣アストラルセイバーの声は、翌年の『電磁戦隊メガレンジャー』、 そして2000年には『未来戦隊タイムレンジャー』でボスキャラの声を演じる事になる大友龍三郎さん(個人的には、 『爆走兄弟レッツ&ゴー』の大神博士役でファン)。
 どうせだったら美少女バイオリニストに使われたい、とセイバーは手を伸ばしたサソリを拒絶し、 4vs4で激突するビーファイターとビークラッシャー。
 「アストラルセイバーは絶対に渡さねぇ!」
 てーててってててれてれてれてっててれ てーててってててれてれてれてっててれ!
 (過剰反応)
 アゲハはメダルと剣をカブトンにレンタルすると、お花キャノンを装備してカマキリを撃退し、カブトンが剣を使わないどころか、 インプットライフルはおろか個人の強化装備すら出番の無いまま戦闘終了(笑)
 折り返し地点まで引っ張った割には、先輩登場以降の今作はどうもドタバタしていて、 一つ一つのギミックの扱いがおざなりなのは気になります。
 ビークラッシャーは撤退するが、昆虫神剣は再び姿を消してしまい、ソフィーは剣を扱う鍵となるメダルを甲平に託して帰国。
 「今度会う時は、立派なビーファイターになってます」
 「お主はもう、立派なビーファイター。花の戦士、アゲハじゃ」
 ソフィーはLVが上がった!
 ソフィーは特攻精神を身につけた!!
 代わりに人間として何か大切なものをうしなった気がする!
 代わりに人間として何か大切なものをうしなった気がする!
 代わりに人間として何か大切なものをうしなった気がする!
 「ありがとうおじいちゃん!」
 ソフィーは高原を伸びる道路を歩み去って行き…………再会を約した清々しい別れ、という演出意図はわかるのですが、幾らなんでも、 土地勘の無いお嬢様を電車も路線バスも走っていなさそう土地で放流してどうするのか。昆虫魂に覚醒した今、 山野を突っ切ってフランスまで辿り着けるのか! 一番野生に近いゲンジは、迎えの車が来ていたのに!
 そうだまずは、立派なビーファイターとして筋肉をつけるのだ!!
 「アストラルセイバー……奪え! 奪え! 8枚のメダルを揃え、大いなる闇を迎えよ!」
 メルザードではマザーが大興奮、でつづく。
 ここしばらく、甲平・健吾・蘭が並んで立っていると妙に間抜けな絵に見えるのが気になっていたのですが、健吾が割となで肩で、 ワイシャツだと立ち姿があまり決まらない上に、服装が平凡すぎてヒーロー物としては背景に埋没してしまうのだな、と解決。 キャラクター的にあまり派手な服装には出来なかったのでしょうが、甲平と方向性が被り気味の事もあり、今回のように、 メインキャラが別に居て背後からそれを見守る描写が続くとますます埋没が進んでしまうので、もう少し、 服装にアクセントつけた方が良かったのではと思う所。

◆第34話「制圧!?BF(ビーファイター)敗北の日」◆ (監督:東條昭平 脚本:宮下隼一)
 OPにビークラッシャーと追加ビーファイター4人が加わり、劇中より一足早く8人が並ぶシーンなど、 結構格好いいマイナーチェンジ。そして本編では、秋モードで健吾に上着が戻って服装問題が解決。
 アストラルセイバーを手に入れる為にマックがメダルを集めて来日するが、それを感知したメルザードによりビークラッシャーの襲撃を受ける。
メダルを日本に持ち込んだ事が敵に知られている事にマックが驚くのですが、知られた理由は適当なメルザード監視カメラなので、 変にツッコませない方が良かったような(^^;
 マックは空港でナンパしていたスチュワーデスに変装したハチによりまんまとメダルを奪われてしまい、率直に、 どうせ集めて回るならゲンジに運ばせるべきだったと思います。
 そんなマックが表面は平静を装いながらも雪辱に燃える姿を、握力で湯飲みを砕く姿で描いたのは定番ですが格好良かったですし、 さりげなくマックに気を遣う甲平は毎度ながらいいヤツ。
 ビークラッシャーが所持するものと含めて7枚のメダルを集めたメルザード側には、 いきなり飛んできたアストラルセイバーが自己紹介を開始。メダルホルダーを首からぶら下げたサソリがセイバーを入手し、 マザーから最後のメダルを奪えと指示を受けたビークラッシャーは、ギドーバの大群を従え、大規模な地上侵攻を開始する!
 カブトン達はネオビートマシンで出撃し、マックはトンボウガンを手にビークラッシャーへと挑むが、 ヤンマ一人でどうにかなるわけがなかった。
 結局、戦闘機部隊そっちのけで加勢に向かうビーファイターだったが、セイバーを持って現れたサソリはビートマシンの攻撃を跳ね返し、 あまつさえインプットライフル、登場3回目で役立たずに(笑)
 「地球最大の危機……絶体絶命だ」
 世界各地の大都市もメルザードの同時侵攻を受ける中、メダルに反応して脈動する昆虫神剣。
 「解放せよ……大いなる力を……」
 「闇を振るわす内なる衝動! これこそ2億年前、我が誕生の際に刻まれた記憶! それが甦ろうとしているのだ……我が使命を告げんとして」
 「今こそ……今こそ語らん。大いなる力の秘密を。超次元昆虫伝説を」
 セイバーが突拍子もない事を口走った所で、つづく。
 次回――まさかの磁雷神。つまり聖徳太子は昆虫戦士だったんだ!!
 仕方ない部分もあるのですが、次回予告でいいとこ全て見せてしまうパターンの予感(^^;

◆第35話「闇を裂け復活の巨神」◆ (監督:東條昭平 脚本:宮下隼一)
 「遙かいにしえ、悠久の太古、全次元を見下ろす高みに、二つの意志があった」
 生命を産みだし育んでいこうとする光の意志と、全てを破壊し無に還そうとする闇の意志――二つの意志は様々な次元と様々な勢力を巻き込みながら、 永い永い戦いを繰り広げていた。光に与した勢力の一つ、昆虫次元は優れた戦士を多数抱えた光の陣営の最精鋭であり、 俺の勇者キャノンことビートイングラムは、もともと昆虫次元戦士の武器であった、と判明。
 光の意志は、全次元を巻き込んで広がる光と闇のハルマゲドンを終わらせる為に、使う者次第で全次元を滅ぼしかねない最終兵器を製造。 これにより闇の意志は滅び去り、荒廃した全次元に生命をもたらす為に放たれたのが、セントパピリアなのであった! と、 前作の要素を色々と拾って、宇宙的なスケールで連綿と続いていた光と闇の戦いに収束。
 設定としては、前作のみならず『エクシードラフト』『ブルースワット』も取り込めそう(同じ説明が出来そう)ですが、 そう見ると『ジャンパーソン』は宮下メタルヒーローの中では異色というか、大いなる光とか闇とか抜きで、 自らが命を捧げる正義を求めたジャスティスモンスターの物語なのだな、と改めて。
 そして、あまりにも強すぎる最終兵器――“大いなる力”――は、8枚の昆虫メダルを鍵としてアストラルセイバーに封印され、 いずこともなく姿を消したのだった……。
 だが、闇の意志はその壊滅直前に二つの切り札を用意していた。一つは、次元の狭間に生み出した、全ての生命を憎む生物・ガオーム。 そしてもう一つは、地球という星に生み出された、絶滅生物の母・マザーメルザード。
 これら闇の怨念の存在を感知した光の意志は、いずれ再来する戦いの可能性に備え、地球の聖地にアストラルセイバーを封印。その際、 地球に派遣された昆虫次元の戦士達は土着の生物と交わり根付き、その後の昆虫界の礎となったのであった……。
 つまり今作におけるキマりすぎの昆虫魂は、元をただせば昆虫次元の戦士達のスピリット!!
 生まれながらの特攻戦士、それこそが昆虫!!
 ……それにしても、話を聞く限り完全に光の陣営なのに、思いっきり闇の陣営に手を貸しながら何もかもペラペラ喋ってしまうアストラルセイバーは、 セキュリティーホールが大きすぎます。
 敵の手に渡ったら自爆が、世紀末TOKYOディストピアでは常識だったのに!
 それともこれは、駄目父キャラの象徴たる、“隠されていたビデオメッセージ”の亜種なのか(笑)
 戦いが終わらないので業を煮やして、全次元を滅ぼしかねない最終兵器を作ってしまうとか、光の意志には怪しい匂いがぷんぷんします。
 まあ闇の陣営も闇の陣営で、ガオームもマザーメルザードも完全に使命を忘れていたので、 両者揃ってぽんこつなのか、2億年という時が悪いのか。
 状況不利を感じたビーファイターは一時撤退し、当然、破壊活動を続けるビークラッシャー。 このままでは地球はメルザードの手に落ちてしまう……意を決したマックの檄により、ビーファイターは一か八か、 アストラルセイバーを奪い返して大いなる力を目覚めさせるという作戦に打って出る。
 蝶のメダルを手にしたマックがビークラッシャーを挑発し、カブトン達が伏兵として攻撃。 その間にヤンマガサソリを不意打ちしてメダルを強奪する……という流れになるのですが、 そもそもビークラッシャーは地球の主要都市を人質に取っている状況なのでマックの挑発に乗る必要性が全く無く、 マックが最後のメダルを手にしてやってきて土下座で命乞いとかならともかく、逃げ出した時点で100%罠確定と、 乗せられるビークラッシャーがあまりにも頭空っぽすぎます。
 合わせて、ようやく一騎打ちでアクションしたサソリのマッチアップ相手が何故かカブトンではなくヤンマと、 ひたすら盛り上がらない展開。
 「カブト! 取り返したぞ!」
 「あいつ、やっぱり責任を感じてたんだ。任務失敗の」
 「それで、必死に挽回しようとこの賭けに」
 前回の件を拾った方が良いと考えたのでしょうが、この局面で蒸し返してコメントするビーファイター全員が凄く器の小さい事に(^^;
 強奪したメダルホルダーを手に、地面に突き刺さったセイバーに手を伸ばすヤンマだが、突然の雷光が直撃し、中空にマザーの顔が出現。
 「思い上がるな虫けらども!」
 「何者だ?!」
 意外や第35話にして、初顔合わせ。
 「おお、マザー!」「御自ら、地上にお姿を!」「それほどまでに、メダルを」「大いなる力を」
 これに対して、ビークラッシャーが台詞を4分割してわかっている事情を重ねて説明するのがどうにも間抜け。 ここ以外でもビークラッシャーは、すぐ近くにビーファイターが居るのにアストラルセイバーを4人でぐるっと取り囲んで話を聞くなど、 脱力する絵が多いのですが、一度に出すと台詞のカット割りが多すぎてテンポが悪くなる、悪役としての魅力も4分割、といいとこなし。
 結果論としては、ビークラッシャーはここまでに数を減らしておいて、ムカデ、カマキリ、ハチ、と次々と倒れた後、 その内蔵していたメダルを受け継いだサソリがアストラルセイバーを入手して最大の強敵として立ちはだかる……とでもした方が、 スッキリ収まって良かった気がします。
 マザーの介入により8枚のメダルがビークラッシャーの元へ戻ってしまい、とうとうセイバーの封印が解かれそうになるが、その寸前、 ゲンジ、ミン、アゲハの3人の昆虫戦士がビークラッシャーを襲撃。
 展開としては、心強い味方が帰ってきた! という展開なのですが、軒並み、 出てきたと思ったら帰っていったと思ったらまた戻ってきた、という忙しさでタメが無いので、どうにも盛り上がりに欠けてしまいます。
 リアルタイムだと約1ヶ月ぶりの戦士も居る事は居るのですが、先輩登場以後、あまりにも物語全体として緩急がなさ過ぎて、 急流に麻痺して平板に見えてしまう事に。
 玩具とか造形物とかキャスティングとか諸事情があったのでしょうが、物語としてはやはり、 先輩登場→(間)→メダルBF登場・インプットライフル入手→(間)→メダルに隠された真の秘密が明かされる・ アストラルセイバー登場、ぐらいの波をつけて欲しかった所です。
 最後の8枚目のメダルを投入した方の勝ちとする、というアストラルセイバーのがばがばのセキュリティが有利に働き、 カブトンは封印されていた大いなる力の解放に成功。
 「そりゃあ!!」
 カブトンが天に向かってセイバーを掲げると、巨大な黄金のカブトムシが浮かび上がる……!
 作戦前には、“使う者次第で全次元を滅ぼしかねない最終兵器”を解放していいのか、という葛藤が描かれていたのに、 メダルとアストラルセイバーを取り戻し、人数的にも有利になった状態で、1秒の逡巡もなく解放してしまい、 テーゼがぐっちゃぐちゃ。
 ギドーバの大群を倒すにはこれしかないという念押しとか、仲間が「おまえなら大丈夫だ」とカブトンを応援するとかあれば多少は違ったのですが、 そういった説得力の補強は皆無。
 またこれ以前にインプットライフルを通して、強すぎる力への恐れを忘れてはいけない、というのを描いており、 それを拾えば物語上のインプットライフルの必然性も生まれたのですが、全く拾われませんでした。
 「今こそ、今こそ解放される。光の意志によって作られし、大いなる力。大甲神カブテリオスが」
 カブトンが巨大カブトムシと融合するとそれは巨大な人型へと姿を変え、 どうにも磁雷神(『世界忍者戦ジライヤ』)を思い起こしてしまいます。
 「ば、馬鹿な! 大いなる力が、ビーファイターのものに!」
 おののくマザーですが、大いなる力にこだわらずにセイバー確保したまま物量で押しつぶす、が正解でした。
 「だ、大甲神、カブテリオス!」
 そして基地で驚愕する博士は、とことん戦力強化に関係しません(^^; 追い詰められた時に作戦を授けるわけでもなければ皆の背を押すわけでもなく、 この人は本当に、何のために基地に居るのか。
 「ビーファイターカブト、進め、戦え、カブテリオスと共に!」
 ストレートに格好いい系ではなく、少々クラシック寄りの勇壮なテーマソングをバックに動きだした伝説巨神カブオンは、 迫り来るギドーバの大群を、電光石火のカブオンソードの一撃で壊滅させる。
 余りにも圧倒的なロゴ・ダウの巨神に対して、メダルの影響で宿ってしまったと思われる特攻魂を発揮し、 雄々しく立ち向かうバッフクランのサムライもといビークラッシャーだったが、一斉攻撃をあっさり跳ね返されると、 反撃を受けて吹き飛び、かき消えるように消滅。
 …………て、あれ、リタイア?(^^;
 完全退場だとするとあまりにも呆気ない上に、巨大ロボットに対して人間大だと噛ませ犬としてすら成立していないのですが、 これならホント、4人揃って引っ張っている必要、全く無かったのでは。
 「おのれぇぇぁ、我が使命、我が野望、ここに潰えるのかぁぁ!!」
 そしてマザーも物凄く弱腰になって退散し、歓声をあげるビーファイター。
 「これで、戦いを終わらせる事できるネ!」
 そう、伝説の巨神の力が手に入った以上、新帝国ビートルによる地球の支配まで、あと一歩……!  圧倒的な力による完全平和が実現するのだ!!
 先輩登場以降の怒濤の展開が極まれり、という巨大メカ登場エピソード。流れで見てもエピソードで見てもとにかく忙しすぎて穴だらけなのですが、 ここ数話は雪山の急斜面を凄い勢いで滑り落ちている感。このままだと最低でも複雑骨折間違い無しの直滑降ですが、 果たしてターンやジャンプを決める事はできるのか。
 次回、復活の兄弟。そしてさよなら博士。

◆第36話「卑劣!!魔兄弟の逆襲」◆ (監督:石田秀範 脚本:小林靖子)
 OPにはまだ居るビークラッシャー、メルザード要塞内部で素体くん状態になっており、さすがに完全リタイアではありませんでした。 ……まあ、復活したら復活したで、どうにかなるのか、というか、せいぜい、メダルBFのマッチアップ相手ぐらいの扱いになりそうですが(^^;
 前回の戦いの後、フリオは鳥羽家に宿泊中。初登場回では野生の勘を磨き抜いた戦士みたいな感じだったのに、前回から、 陽気なメキシカン、に性格が変わっている気がしてなりません(笑)
 蘭がそんなフリオを日本見物に連れ出し、久々に甲平の学園生活、健吾はついつい基地でうたた寝……と、 激闘の連続に一つの決着がつき、緊張から解放された面々という描写が入ったのは緩急がついて良かったです。
 珍しく部下を気遣った博士は健吾の代わりにパトロールへと向かい、復活した巨神の力が、世界を平和に導こうとしていた……だが――
 「ビーファイター……」
 「ビーファイター……」
 「「ははははははははは」」
 「貴様等を、血の海に叩き伏せるまで」
 「貴様等の泣き叫ぶ声を聞くまでは」
 「「死ぬわけにはいかん」」
 メルザードに謎の黒い力の波動が近付き、ブラックアカデミアでは火山の異常活動が観測される。そして、 緊急を伝える通信を送ってきた博士は、血まみれで転がっているのを発見され意識不明のまま集中治療室へと運び込まれる。
 「一番苦しいのは、大切な人、なくす事」
 倒した筈のライジャとデズルが甦り、甲平達の関係者を狙っているのか? フリオの言葉にゆいを案じた甲平は学園へと走り、 焦る甲平の姿に兄弟の嗤いを被せるなど、今回は余裕のある演出で、畳みかける危機の煽り方が良い具合に機能。 そして甲平の後を追ったフリオの前に、甦った絶滅兄弟が姿を見せる!
 復活ライジャは立ち回りの都合もあってか、全体的にとげとげしくなった、悪くはないけど面白みもほどほどの、 正統派といえる強化デザイン。
 一方、デズルは目の部分が白いマスクに変わって大きく開いた口の部分で演技が出来るようになり、 すっぽりフードを被っているように見える立ち姿から、戦闘時は翼のようにそれを広げるとうねる触手のごときボディがあらわになり、 追加パーツで腕が長い、と異形感が増して非常に秀逸。長らく幹部キャラとしては色々と物足りないデズルでしたが、 ようやく塩沢兼人の声もはまって、このデザイン一つで一気に跳ねました。
 ライトニングキャノンの弾丸を一刀両断され、絶滅兄弟に敗れるゲンジ。学校へ向かった甲平は、ゆいの鞄と、ブレザーの上着を発見。 そして挑発するかのように、断崖絶壁へ吊り下げられたゆいの映像がブラックアカデミアへと送られてくる!
 博士の倒れているシーンでも血に濡れたトランシーバーが描かれましたが、人質として吊られたゆいちゃんも制服に血がにじんでおり、 石田監督がかなり攻めた演出。復活兄弟の悪意と脅威が強調されると共に、甲平達の憤りにもスムーズに同調できる流れ。
 「どうだこの趣向は!」
 ここしばらくすっかり存在感の消えていたミオーラとドードがしれっと現れ、誰一人としてフリオを助けに行こうとしなかった3人 (人の命は地球の重さ、戦士の命は羽毛の軽さ)は怒りの超重甲するが、そこへゲンジをひきずった絶滅兄弟が登場する。
 「見よ、灼熱のマグマの力を」
 「深海の闇の力を」
 2人並んだバーニングライジャとデズルザディープシーは、トンボウガンを弾き返し、カブトンランスの一撃を軽々と受け止めてみせる。
 「無駄だ。お前達に勝ち目は無い」
 ……というかこれは、仲良しパワーなのでは。
 マザーは執拗に否定していましたが、共に死の淵を覗いた事で生まれた絶滅兄弟の絆の力に見えて仕方ないのですが。 この世界の闇の陣営は、仲良しスクラムで力が高まるというのは前作で立証されていますし。
 すなわちこれぞ、
 「メルザぁぁぁド!」 「クロぉス!」
 「野郎、負けるかよ!」
 相手が熱い兄弟の絆なら、こっちは全てを蹂躙する圧倒的な破壊のパワァーだ! と伝説巨神を召喚しようとするカブトンだが、 デズルの攻撃でセイバーが海へと落下。3人は兄弟の攻撃に追い詰められ、電流まで流されたゆいちゃんは、 とうとう断崖絶壁から眼下の海へと転落してしまう。
 「もっと叫べ……もっと泣けぇ!」
 この光景に怒りの力を振り絞ったカブトンは起死回生の腹パンチで兄者をよろめかせると海へとダイブ。あの傷では助かるまい、 と余裕を見せる兄弟だったが……激しい水泡が浮かぶと、海の底からビィィィッグ・ワン!じゃなかった、 伝説巨神が立ち上がる。
 黒い甲神カブテリオスに乗り込んでゆいを救出したカブトンは、一片の慈悲もなくビーム攻撃を放って兄弟達を吹き飛ばすと、 迫り来るギドーバの大群もカブトニックボンバー。
 キャンペーン期間中にしても、“巨大な敵へのカウンター”ではなく、“一方的に蹂躙する為の巨大兵器”なので、 早くもデウス・エクス・マキナ化しているカブテリオスですが、色々と大丈夫か(^^;
 絶滅兄弟とお付きの2人はすごすごと引き下がっていき、ゆいは助かり、博士も峠を越える。
 ……博士は(それ以上言ってはいけない)。
 ビークラッシャーと入れ替わりで兄弟が復活し、第21話以来久々の小林靖子が、キャラクターを追い詰める手腕を発揮。 翌年、戦隊デビュー脚本となる『電磁戦隊メガレンジャー』第16話ででも、 追い詰められた主人公達のメンタル面をよりじっくりと炙り出すエピソードを書きますが(この回は、辻野監督の演出も良かった)、 これは後々にも繋がる、脚本家としての個性であろうなと。
 兄者はもともとポイントが高いとして、デザインの妙でデズルが一気に面白くなったので、 絆の力を得た復活兄弟の活躍には期待したいところです。下手にビークラッシャーが生きているのが、かち合いそうで不安ですが(^^;
 兄弟を復活させた黒い力の波動とは何なのか?! すっかり要らない子扱いのインプットライフルは無用の長物から栄光を取り戻す事は出来るのか?!  次回、更なる脅威がビーファイターを襲う!!

→〔その7へ続く〕

(2018年9月24日)
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