■『ビーファイターカブト』感想まとめ4■


“私 信じてるよ 君がいつか
新しい ヒーローになる日を”


 ブログ「ものかきの繰り言」の方に連載していた『ビーファイターカブト』 感想の、まとめ4(19話〜24話)です。文体の統一や、誤字脱字の修正など、若干の改稿をしています。

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◆第19話「夏の彼女は人魚姫?!」◆ (監督:石田秀範 脚本:浅香晶)
 季節は7月に入り、甲平は水泳部の合宿でハワイアンズウォーターパークに来て…………プール掃除をしていた。という、 ハワイアンズウォーターパーク協賛回。
 そこに強力なエネルギー反応を調査に来るもまるで痕跡が見当たらないので遊んで帰る事にした、 というブラックアカデミア一行が加わり、これは出張と称して実体は観光旅行でした、という予算の不正流用で査問会議案件ではないでしょうか!
 合宿に加わっていたらしいゆいは早速健吾を引っ張り、蘭は何故かプールサイドで食いしん坊キャラにされ、博士はひたすらはしゃぎ、 取り残されて愚痴る甲平だったが、突如、マリナという少女にナンパされる。
 甲平は年頃の水着少女からナンパを受けているのにホント平坦な反応で、
 君のストライクゾーンは、
 上なのか!
 下なのか!(危険)
 かくしてリゾートを満喫する面々だったが……そこに差す不穏な影。
 「どこかの海の奥深く、人魚の里に住んでいる人魚族は、なんでも願いを叶える不思議の力を持つという。ゆけ、その力を手に入れるのだ」
 「地上征服の為、人魚の不思議な力、是非手に入れねば」
 それでいいのか。
 マザーから人魚探索を命じられた兄者とカマキリもまた強力なエネルギーに興味を示してハワイアンの地を訪れ、兄者、遂に顔出し!
 ほぼサングラス装着の為、顔出しというほど顔出しではありませんでしたが、まさかのロン毛・やたら色黒で女連れ(カマキリ娘偽装) ・派手な水着(恐竜の皮膚のイメージと思われる上着を羽織っており、素顔よりこちらのインパクトが強い)、 の3点装備でプールサイドを練り歩いている為、凄く遊び人風に(笑)
 スランプ気味の悪の組織が、真偽不明の地球上の伝説に活路を見出して迷走する、 というのはままありがちな困った展開なのですが、多くの絶滅種が居るのと同様、現生人類の知らない生物種が地球にはまだ存在しており、 それをマザーが認識している……というのは今作の世界観としてはそれほど違和感がありません。
 最近半ば無かった事にされていますが、そもそも喋る巨大な昆虫が存在する世界ですし、某宇宙的蝶々は、 魚と猿を融合してみたら面白ーい、ぐらいのノリで人魚の創造ぐらいしそう。
 マリナは甲平に、自分は種族に伝わる願いのペンダントで一時的に人間となった人魚であると告白し、
 (いったい何言ってんだコノコ)
 口に出さないのが、いいヤツだな、甲平……。
 リゾート地でビーファイターが遊びほうけているのを目にした兄者達は、 とりあえず目の前の障害を排除してしまおうとマリナを人質に取り、絶滅パイナップル怪人を召喚。
 「いでよ、パイナプラー!」
 は、色々台無しで面白かったです(笑)
 超重甲を封じられる甲平だがクワガーとテントウが参戦して人質を救出し、お約束のダンスショーに怪人乱入から、 パイナップル輪投げを喰らい、缶詰にされてしまうクワガーとテントウ。
 ゆるキャラ感漂うギャグ怪人だと油断していたら、一撃でクワガーとテントウが戦闘不能になってしまい、 なんか普通に地球征服できそうですね……。
 「どうだ、パイナプラーは見つけた人魚を缶詰にして、持ち帰る為に生まれた怪人なのだ」
 カマキリ娘は勝ち誇り、何ですかその技術の無駄使い(笑)
 残るカブトンのピンチにマリナはペンダントの力で第二の願いを発動し、迸る人魚サンダーにより兄者達は一時撤退。 マリナが人魚である事を信じた甲平は、メルザードに狙われるマリナに故郷の海へ帰るよう説得するが、 人魚の国の門が外界と繋がるのは一年に一度、七夕の日だけであり、今日一日出来る限り人間世界を見ていたい、と拒むマリナ。
 ここでマリナが、人間世界へ居残る気満々なのではなく、最初から帰る予定で一日限りの見学に来ていた、というのは若干ひねった要素。
 「人間も人魚もみんなこの地球に生まれた仲間じゃないか!」
 異種族への拒絶ではなく、同じ地球に生きる仲間として守りたいと思う甲平の真心を知るマリナだが、その足下に転がってくる小型のパイナップル。
 「青春だね〜。おじさん照れちゃってもう、大爆発」
 パイナップル(手榴弾)だけに! と、監督のセンスか声優のセンスかという気はしますが、浅香脚本回にしては面白い言い回し。
 「マリナちゃんは俺が守る。ふるさとに返してみせる。だって……だってマリナちゃんは、俺が初めて友達になれた、 人魚の女の子だから!」
 初めての人間の友達に対する異種からの思い、という定番を一周させて甲平の方からも投げ返させた、というのは、 浅香脚本にしては巧いテーゼの使い方。
 兄者が出撃させた戦闘機の攻撃はクワガーとテントウが阻んでノルマも綺麗に消化するが、パイナップル光輪を受けて缶詰にされてしまうカブトン。
 「へへひゃははははは、賞味期限が切れるまで、海の底で眠ってろ!」
 そしてまさかの海中投棄。
 今作あまり怪人の個性が強くないのですが、デザインから思い切ってギャグに寄せた結果、ここまで屈指の面白怪人に(笑)
 マリナは最後の願いを使って海底からカブトンを復活させ、「許さん!」からノーガード歩行で怪人に迫るカブトンはヒロイックに決まりました。 パイナプラーは怒りのカブトンパンチを受け、体液を撒き散らしながら爆死、という惨い最期に。……あれだ、何か思い出すと思ったら、 某ふ○っしーだ(笑)
 3つの願いを使ってしまった事でペンダントが力を失い、故郷へと帰れなくなってしまうかと思われたマリナだったが、 人魚の涙でペンダントは力を取り戻し、海へ。そもそも3つ目の願いが残っていないと人魚の里に帰れないという理由がよくわからなかったり (人間化は夕方に自動解除されると言っていたような……)、最後は適当な奇跡で解決、とペンダント周りはわやくちゃなのですが、 願いの力の発現があくまでマリナと甲平の間、個人レベルで収まっていたので許容範囲。
 人魚となって海へと帰っていくマリナを見送る甲平が爽やかすぎて友情以外の何も感じさせないのですが、
 だから君のストライクゾーンは、
 凄く上なのか!(待て)
 凄く下なのか!(待て)
 7月上旬なのに早くも夏休み感全開のタイアップエピソードでしたが(撮影時期を考えると、 マリナ役は5月ぐらい?に海に入っているのか)、バラエティ回としては案外と悪くなかったです。 こういうエピソードは怪人が面白いと結構何とかなるものだぁと改めて。また、遠回しに七夕モチーフのエピソードとして成立しているのは、 なかなか秀逸。
 次回も引き続き、ハワイアン。

◆第20話「河童訪ねて三千里!!」◆ (監督:石田秀範 脚本:扇澤延男)
 「河童は光線なんか吐かない!」
 前回に続いてすっかり観光気分の甲平達ですが、その滞在費はいったいどこから出ているのでしょうか?!
 甲平と蘭のみならず、ゆいまでもが夏の魔力でCG回収チャンス、と健吾に積極的にアタックを仕掛けるが、 生真面目な健吾は東京へ帰るべきだと主張。ところが責任者の博士は、双眼鏡で水着の女性達を物色中。
 …………この人、普段から最低なので、ギャグになりません……。
 昆虫魂を失いつつあるメンバーを引きずって帰り支度をさせようとする健吾だったが、河童を探す変な父娘と遭遇してしまう。
 「探し続けて10年、やっと旅が終わるんだね、父さん」
 「ああ。生け捕りにして見世物にすりゃ、千客万来、一攫千金。蔵が建つぞ、蔵が、あははははは!」
 中学生ぐらいの娘が凄くあっけらかんと、10年以上学校なんて通った事ない宣言をするのですが、 何よりその事に一切疑問を感じていない姿が完全に児童虐待の領域。甲平の出席問題も扱っているだけに、 フィクションもギャグも踏み越え気味なのですが、扇澤さんはこの辺り、妙に緩い傾向があります(^^;
 一攫千金の為に10年も放浪する生き方は間違っている、と憤る健吾だが、噂の河童がまさかの出現。 キャンプ客を狙う河童はビーファイターに向けて河童ブレスを放ち、デズルとドードが姿を見せた事で絶滅モンスターだと判明するが、 そこに問題の親子が闖入。
 「あいつは河童じゃない!」
 「あれを河童と呼ばずしてなんと呼ぶ!」
 「よく見てみろ!」
 「河童だ!」
 前回今回と、緩い方向へ突き抜けて変に面白い事に(笑)
 ビーファイターが怪人に向けて突撃しようとする親子を止めている間に、河童怪人はその能力でキャンプ客達の尻子玉を抜いてしまう。
 「なによ?! 尻子玉って?!」
 「尻子玉は気力の源。さあ、我が子カッパラパ、人間どもを片っ端から腑抜けにしろ!」
 遠距離から解説を入れてくれるマザー(笑)
 「尻子玉抜きの恐ろしさ、わかったか。このカッパラパを使い、人間社会を地球規模の混乱に叩き込んでやる」
 前回は、一歩間違えば人魚も絶滅モンスターだったのかもしれない、というニュアンスが入っていましたが、 今回は河童が絶滅モンスターとして登場し、妖怪・幻獣モチーフがタイアップ編で続いたのは、ネタ合わせをしたと思われる所。
 ビーファイターが常識的な判断から怪人はたまたま河童に似た姿に合成されたものだと考えているのに対し、 メルザード怪人の生まれ方を知っている視聴者からすると絶滅種・カッパが存在していた可能性が高いと思われる、 という情報のギャップが父子がらみで軽いひねりになっているのですが、甲平達は本当にグルの存在を忘れているのではないか(^^; (よく考えると、甲平はグルに会った事がない?)
 地続きの続編設定の割には、最近“昆虫魂”という要素がまるで顧みられないのが少々気になるのですが、まあ、 昆虫魂は昆虫魂で破壊力高すぎて何もかも塗りつぶしてしまう要素なので、意図して避けているのかもしれませんが。
 ビーファイターは大人の事情により石炭化石館に立ち寄り、親子にメルザード怪人について説明するが、 親子はあくまであれは河童であると頑として譲らない。……そもそも河童が空想の生物なので、 「河童」と「伝承上の河童に酷似した絶滅モンスター」の境界線が非常に曖昧でカオスな状況になる中、 父が口走った女性の名前について健吾が問いかけ、父子が河童を探し求めるのは10年前に死んだ妻(母)の為だったとわかる。
 「私、昔、河童に会った事があるの……」
 「お母さんは嘘つきなんかじゃない」
 「証明する為さ。昔あいつの話を信じなかった、馬鹿にして笑ったそいつらの目の前に河童を連れていって、 あいつが嘘つきなんかじゃなかったて事を!」
 いっけん非常識で無茶苦茶な行動は死んだ家族の為だった、とちょっといい話の体裁を取って武装し、 健吾を上から目線の正論で人の感情を踏みにじる人間として殴りに行くのが既に毒なのですが、ちょっといい話の正体は、 いまわの際に妻が遺した言葉で狂ってしまった男の妄動なので、実に扇澤さんらしい、テクニカルな猛毒(^^;
 そんな猛毒に冒されて甲平が「すげぇじゃん」と父子を励ましてしまい、まずい方向へ転がっていくのかと思いきや、
 「間違ってる」
 と即座にきっぱり批難する健吾。
 「河童を探したければ、休みの日にすればいい。生活の全てを犠牲にするなんて、馬鹿げてる」
 「俺達の想い、他人にはわからねぇよ」
 「わかりますよ。でも……!」
 だがその時、河童怪人が国際会議場に迫っていると連絡が入り、3人は親子をその場に縛り付けて現場へと急ぐ。
 国際会議に集まった世界中の首脳の尻子玉を狙う河童怪人が、群がる警備員に向かって悠然と歩を進めながら
 「尻子玉抜き」
 を発動すると警備員がバタバタと無力化していく、というのが物凄い強キャラみたいで妙に格好いい絵に(笑)
 会議場を襲う戦闘機部隊をネオビートマシンで迎撃している内に河童はいよいよ首脳陣へと迫るが、 「やらなきゃならないんだ俺達はどうしてもぉ!」と自力でロープをほどいた父子がそこに乱入。 鬼気迫る表情で突撃してくる父子に向けて尻子玉抜きを放つ河童怪人だが、父子は幾つ尻子玉を抜かれてもその突進を止めない。
 「怪物のパワーが、全く通じない!」
 特殊能力を上回る父子の狂気にビーファイターが感心するのですが、いい話では全く無いぞコレ(笑)
 今回の怪人の特殊能力は、同じ扇澤脚本である前作第12話のナマケモノ怪人(人間のやる気を奪って自らのパワーにする) を彷彿とさせるのですが、その際の解決方法であった「昆虫魂による外部からの“やる気”強制補充」と今回描かれる「父子の狂気」 は狙ってなぞらえていると思って良いのでしょうか扇澤さーん(^^;
 怪人も狼狽する気迫の突撃でとうとう網をかける事に成功した父子は達成感から憑き物が落ち、 気が抜けた所で怒れる河童怪人の逆襲にあってしまうが、助けに入ったクワガーが河童を撃破。しばらく落ち込んでいた父子だが、 河童の怪人が出現したという事はその素体となった河童の化石があったのでは、と気を取り直し、笑いながら去って行くのであった……。
 その後ろ姿をじっと見つめる健吾だったが、ラストは再びハワイアンリゾートでプールに浸かりながら、 「まあいいんじゃない?」で済ませ、最後にちらりと本物の河童?が顔を見せてオチ。
 父子への反応から、健吾の過去に家族絡みで何かあったのではないかと匂わせる振りが幾つかあるのですが、 全く踏み込まないまま放り投げて終了してしまうという困惑するラストで、そもそも先で拾う予定で入れたのか、 尺に収まらなくて濁してしまったのか、あまりに酷いネタだったので監督判断でオチが変更でもされたのか。
 なんにせよ、我に返ったところで今更10年に渡る妄執を捨てられず、再び自ら狂気に陥る事を選択した父の行く末は明るくないと思うので、 健吾がこっそり警察に通報して娘さんは保護されたと思いたい。
 布石を放り投げ気味の着地は残念でしたが、今作ここまでの扇澤脚本回では一番面白く、人が狂う瞬間と、 その狂気が剥がれ落ちて正気に戻る瞬間、そして再び狂気を選ぶ瞬間、を脚本を汲んでしっかり描写した石田演出も合わせて、 技巧の隙間に複数の悪意が覗く何だか凄いエピソードでした。
 それにしても、第19話時点で劇中日付が7/7(放映時リアルタイムに同じ)という事は、これからもう夏休みに入ってしまうわけで、 夏休み中は物語を大きく動かさないという基本パターンに従うと、夏休み明け(第27話?)まで、このノリで突き進むのか……?!

◆第21話「雨を呼べ泣き虫英雄(ヒーロー)」◆ (監督:東條昭平 脚本:小林靖子)
 猛暑の続く東京では深刻な水不足となり、気象ロケット・ナイルはなんでも知っているを打ち上げ、 人工降雨によりこれを打開する事に。だがその頃、メルザードでは熱風を吹き出す力を持ったコンドール怪人が誕生し、 この機に地上を渇ききった不毛の世界へ変えてやる、と出撃する。
 ……えー……猛暑と水不足にメルザードが噛んでいるのかと思ったら全くそんな事は無く、 地上の状況を征服作戦に利用しようというのは頭脳的とはいえますが、その為に雨が降っては困るからまずはナイルを破壊するのだ、 となると迂遠に過ぎるというかせせこましいというか、根本的な所でこの作戦、普通に雨が降ったらご破算なのでは。
 メルザード怪人のスペック的にやりすぎという判断があったのかもしれませんが、水不足に繋がる異常気象の原因がメルザード怪人、 とすればもっとスッキリ収まったように思えるのですが、どうしてこうなった。
 いっそ
 「今、地球は、その星に住む一部の人間達によって汚され続けている。光は陰り、大地は砕かれ、そして海は死んだ。 これらは全て自分の利益だけを求める、人間達の仕業であった」  (『正義のシンボル コンドールマン』ナレーション)
 という勢いで、猛暑の原因は人類による環境破壊だ、とでも持ち込めばまた別の方向性もあったかもしれませんが、 そういうテーマ性は一切なし。
 横糸として絡んでくるのは、泣き虫中学生・恭一とビットの友情で、パソコン通信で知り合った少年への激励機能を持つビット、有能。
 と思ったら、直接会いたいと言われて一方的に連絡を絶ち、甘い言葉をかけるだけかけてポイ捨てという、 なんという外道AI。
 「なんでだよ、会えばいいじゃないか。誰にも遠慮する事ないって」
 プログラムである為に人間として友達になれない事を気にして及び腰になるビット、という要素は面白く、 それを励ます甲平は毎度の事ながらいいヤツなのですが、後ろでうんうん同意を示す健吾と蘭は、今回完全に置物状態。 健吾はともかく蘭はビットの作成者であり、本来はもっと絡んでいって然るべきだと思うのですが、凄くやる気無し。
 ちなみに今回、妙に小山内博士の表情が挿入される回数が多く、今更ながら、本部で作戦指揮を執り若者達を暖かく見守る博士、 の印象操作を目論んでいるのか。良いか悪いかで言えば良いのですが、遅きに失した感も(^^;
 宇宙センターが爆破された事でナイルの打ち上げが不可能になり、街はコンドール熱風による激しい乾燥により炎に包まれていく。 この危機を打破するにはなんとしてもナイルを打ち上げて雨を降らせる他ない。 オリジナルの打ち上げプログラムを入手したビーファイターは、センターと同系統のシステムを利用してナイルを打ち上げる事に…… と敵も味方もナイル打ち上げに焦点を合わせるのですが、肝心のナイルが冒頭になんとなくイメージ映像で出てくるだけで実質的に劇中に登場しない為、 幻の超兵器の噂を弄んでいるような事になってしまい、どうにも盛り上がり不足。
 これに恭一少年が巻き込まれ、最終的にはビットの声援で立ち上がった少年の活躍で打ち上げ成功、となるのですが、 一面炎に包まれた出口無しの空間! と恭一少年を追い込みすぎてしまい、 泣き虫少年が勇気を奮って立ち上がるどころの騒ぎで無くなってしまったのもマイナス。
 そして恭一がシステムを復旧したタイミングで、外でコンドル怪人に大苦戦していたカブトン達が急に気合いで反撃を始めるのですが、 二つの場面進行がクライマックスで一つに繋がっているようで、恭一サイドの出来事はカブトンサイドの出来事に何の影響も与えていない為、 実は全く繋がっていないという、上辺だけ見せかけた粗雑な構成で、どうしてこうなった。
 システム復旧→ナイル打ち上げ成功→降雨でコンドル怪人が弱体化、という展開なら二つの流れが繋がりますし、実際エピローグ前に、 降雨を喜ぶ人々のシーンも描かれるのですが、これ、脚本段階では雨中の戦闘になっていたのが、 なんらかの大人の事情で雨天戦闘が撮影できなかったりしたのでは。
 なお、「恵みの雨だわー」と手に手にバケツを持ちながら雨の中に飛び出す人々の喜びぶりが、若干『コンドールマン』世界っぽい(笑)
 最後は、プログラムと人間という壁を乗り越えて、ビットと恭一が友達になって大団円。……演出なのか脚本なのか、 スタンダードな交流エピソードにしては、随所に噛み合わせが悪くて盛り上がりに欠け、残念。
 ところで、ミオーラの武器が新しくなっている気がするのですが、気のせい?
 次回――「メルザード、炎の女将が相手よ!」
 『ビーファイターカブト』は、どこへ行こうとしているのか。炎の女将録が始まってしまうのか。

◆第22話「轟く三味線炎の女将」◆ (監督:東條昭平 脚本:宮下隼一)
 「探せ! 三味線狩りだ!」
 今作における割り振り的に、浅香さんか扇澤さんだと思ったら、宮下さんまでそっちへ行くのか……!(笑)
 久々にゲームセンターに出没する蘭だが、そこには凄腕の中年ゲーマーの姿が。もしや蘭を追って東京へやってきた長年の宿敵?!  と思ったら、中年・刈谷文三は蘭へ向かって丁寧に頭を下げる。
 「お迎えに上がりました、お嬢」
 一方――
 「なんですって、蘭が?!」
 「三日間の休暇を? 何かあったんですか」
 それはそこまで驚愕の事態なのか。
 「蘭が自分から休暇を申請した事なんて無かったじゃん」
 さすがブラックアカデミア。
 ところかわって、とある温泉旅館――若女将として宿を取り仕切る蘭。蘭の実家は草津の温泉宿であり、蘭は番頭の刈谷の頼みで、 入院した母の代理として旅館に戻ってきたのであった。
 天才プログラマーでゲーム好きの現代っ子である蘭が古風な旅館の跡取りだった……という展開なのですが、 あまりに淀みなく若女将業務をこなす為に、ギャップ的な面白さはこれといって無し。そして本編の狙いも、 この後全く予想と違う面白さに突き進んで行く事に。
 メルザードでは保護色能力と高い戦闘力を持つカメレオン怪人が誕生するが、ドードのおふざけがきっかけで、 三味線の音が弱点である事が発覚。
 「地上にあんな物があっては作戦に支障が!」
 「おのれぇ! えぇい! おまえを苦しめる物は全て破壊する。その上で存分にビーファイターを叩け!」
 兄者一行、地上の三味線を破壊して回る事に。
 「メルザードが日本各地で、三味線を壊しまくってる!」
 「何考えてるんだあいつら!」
 ドードがいきなり三味線を取り出して弱点発覚、は強引もいい所なのですが、そこはかとなく前回の、 日本日照り作戦を実行する為に人工降雨を阻止しようとする、と方向性が被っているのがおかしみを増し、何かまた、駄目な方向に面白く。
 長らく、1996年の東映ヒーローは、コメディ(『激走戦隊カーレンジャー』)とコメディ(『超光戦士シャンゼリオン』) の間を王道路線(『ビーファイターカブト』)が走っているという認識だったのですが、全部コメディでしたよ!
 草津温泉にまで出没したライジャとミオーラにより蘭の三味線も破壊されてしまい、満を持してカメレオン怪人が登場。 兄者一行を追っていた甲平達が合流して3人はビーファイターに変身するが、カメレオン怪人の保護色はハイパービートスキャンでも見破れず、 大苦戦。旅館の従業員が巻き込まれた際に偶然鳴った三味線の音色にカメレオンが苦しんだ事で、 ジャミングビームによりなんとか一時撤退に成功する。
 甲平と健吾にも蘭の事情が説明されるが、家業に縛られるのが嫌で実家を飛び出していた蘭は、 家伝の三味線が破壊されてむしろ清々したと率直に口に出し、それを聞いた番頭は、蘭母が入院したというのは嘘だと告白。 蘭母は蘭を実家に連れ戻す為に、アメリカに近代的なホテル経営を学びに行ったのであり、伝統的な旅館を守りたいと考えていた番頭は、 蘭母には秘密で蘭に若女将をやってもらう事で、考え直してもらおうとしたのであった。
 周囲それぞれの勝手な思惑に飛び出した蘭は、タフで強い母親と向き合えずに逃げ出したのかもしれない、とこぼし、 両親が出張中の鳥羽家の事情も拾うなど、ただのアホ回ではなく、簡単に答の出せない家族それぞれの思い、 という要素を入れてきたのは悪くなかったです。
 「親も子もどっちも一生懸命にやってる。だから難しいんだ。でもそれだけでも素晴らしいんじゃないのかな。 たとえ一緒に歩けなくても。みんな、一生懸命なんだ。あなただけだ刈谷さん、そのどっちもよく知ってるのは。 番頭さんてのはそういう役目だ。私とよく似てる。はははははははは」

 似てないよ。

 前回今回と明らかに、小山内博士の軌道修正がはかられているのですが、見るからに年長な番頭に対する口調といい、 間を持って取りなすのかと思いきや自分を持ち上げる所といい、根本的な人間味の薄さが隠しきれません。
 ビットの調査により、三味線の音色の波長がカメレオン怪人の弱点だと判明するが、既に日本中の三味線は破壊し尽くされている!  対応策を練る前に、街に出現して破壊活動を始める兄者一行。
 「戦え! ビーファイター。街がどうなってもいいのか」
 「この地上に三味線がなくなった今、ガメレオーダは無敵。倒せるものなら倒してみろ!」
 カブトンとクワガーが立ち向かうもカメレオンの戦闘力に追い詰められたその時、 実家の蔵の奥から母親が大事に取っておいてくれた三味線を見つけた蘭が、炎の女将として推参。 華麗なバチ捌きでカメレオンを苦しめると大爆発に追い込み、テントウスピアーでフィニッシュ。かくしてメルザードの、 三味線全滅計画……じゃなかった、ビーファイター抹殺計画は失敗に終わるのであった。
 「ごめんなさい、刈谷。私、今の仕事に誇りを持ってるの。今、はっきりわかった」
 蘭は改めて旅館を継げないと自分の道を進む事をハッキリさせるが、アメリカの母からは「旅館は続けるので今の仕事を頑張れ」 とメッセージが届き、実は博士が蘭母を説得していたのでした、で博士に人情味を見せてオチ。
 …………これ、空気読まずにビットが博士の裏工作を明かしてしまった、みたいに描かれているのですが、 いいタイミングで種明かしをするように博士がビットをプログラミングしておいたが真相だと思います!
 今作で鬼門になっている東條×宮下コンビかつ、危なげなサブタイトルという事で期待しないで見たのですが、前回よりよほど面白く、 『ビーファイターカブト』は本当に、どこへ進もうとしているのか(^^;
 面白いに越した事は無いのですが、作品全体としては、面白さが物語としての積み重ねとあまり関係ない、 ネタの瞬発力勝負になっているのは気になる部分。
 前作が昆虫魂とか多次元世界とかの設定面をかなり押し出す作風だったので、 2年続けて同じ事をやるのを避けているというのはあるのかもしれませんが、それにしても世界観へのこだわりが薄すぎる気がして、 夏休み明けにシリアスな新展開が来るのか、だんだん不安になってきました!
 次回――
 「人はいつか、自分一人で歩いていかなければならないんだ。ひとりぼっちで荒野に。自分自身に誇りを持て。男の生き方、 俺が見せてやる!」
 予告の甲平モノローグがやたら格好良くて、不安(え)

◆第23話「誇りの荒野を走れ!!」◆ (監督:三ツ村鐵治 脚本:扇澤延男)
 見所は、少年を鉄鎖で柵に縛りつけるカブトン。
 クラスで仲間はずれにされない為、いじめられない為に、悪ガキグループに加わってリーダーの言う事に従っている少年・関口俊と出会う甲平。 例え嫌々タチの悪い悪戯を命令されても、誰かの仲間に加わっている方がマシだと言う俊に、 人間は一人で歩いていかなければならないんだ、と諭す甲平の声は果たして届くのか……?!
 テーマ云々以前の段階で、丁寧にオコゼ怪人の能力を説明するデズル、それをオウム返しに繰り返す甲平、 など雑な見せ方のシーンが続き、気持ちが物語に入っていかないレベル。三ツ村×扇澤タッグでのこの出来は、 『ブルースワット』の悪夢を思い出す所ですが、突然なにがどうしたのか(^^;
 後半、強化されたオコゼ毒によって行動不能になってしまうシーンも、攻撃を受けて倒れた後に、即座に毒の説明を始めるクワガー (起き上がろうともしない内からアーマーの機能が麻痺と判定)、それを聞いたのに真っ正面から突撃してオコゼ毒を喰らうテントウ、 と非常に頭の悪い展開が連発。
 トドメに、一人残ったカブトンが回避したオコゼ毒が、背後で倒れっぱなしのクワガーに追い打ち、というシーンは描いて良かったのか(^^;  ヒーローが回避した攻撃が背後で動けない身内に当たる、てかなり酷いと思うんですが。しかもその直線上の背後には、 カブトンが縛り上げた少年が居るというレッドゾーン。
 この辺りはアクション監督の領分と重なっている所でしょうが、とにかく今回、やたらと配慮のない映像が目立ってクラクラしてきます。
 カブトンも遂にオコゼ毒に倒れ、メルザードに連れ帰って奴隷にしてやる、と現れるデズル。
 「誰が……誰が奴隷なんかになるもんか!」
 (どうして? 殺されるより、奴隷になる方が……)
 「誓え、奴隷になると」
 「ならん!」
 (奴隷になれば楽じゃないか!)
 奴隷、という単語が直球で飛び交っていて強烈ですが、扇澤延男が好んで描く“社会から落伍したアウトサイダー”が時に “奴隷にならなかった者”あるいは“奴隷にさえなれなかった者”であると考えると、ヒーローの言葉を通して、 社会システムの奴隷になるよりも、己の個性を貫いて荒野を歩け、というエールは、なかなか際どい。爪弾きにされても負けるな!  という意も含んではいるのですが。
 解毒剤を届けるまでの時間稼ぎに、奴隷になるって言っちゃえよ、と博士まで通信で促してくるが、 それを拒否したカブトンは気合いで麻痺毒を克服して立ち上がると、気合いで反撃から気合いでオコゼ怪人をフィニッシュ。 雑魚水軍も気合いで薙ぎ払い、その気合いに恐れをなしたデズルとドードは泡を食って逃亡するのであった……。
 前作だったら、昆虫魂、怖い! という話であり、拓也達の自然や生命への愛がその発動の背景となる所なのですが、 今作は何故か「昆虫魂」から目を逸らそうとしている為、今回はそこに“甲平の誇り”を代入。結果として、甲平が突然、 男は一人で行くものさ〜みたいな事を語り出すというかなり強引な構成になり、 昆虫魂に代わる、ヒーローの説得力となる作品の背骨とは何か? を物語として見失っている現状が赤裸々に。
 根本的な所で、世界観が地続きである以上、昆虫魂を無視すればするほど不自然なのですが、 商業的事情で(?)続編設定になったものの前作と同じ事はしたくない、という作り手の意識が非常に悪い方向出てしまっている気がします。
 勿論、ワンパターンに陥りすぎないようにする姿勢は素晴らしいと思うのですが、 そもそも最初に思いっきり前作の設定に乗っかって登場したヒーローなので、背骨を取り替えるならもっと大胆な切除手術をするしかないのでは。
 カブトン(甲平)の姿に荒野を一人で行く誇りを見た俊は、悪ガキグループと決別を宣言。 袋だたきに遭うも甲平から渡された無線機は使わず、
 「僕、呼べば必ず来てくれるって信じてた。信じてたから呼ばなかったんだ」
 というラストの台詞と、甲平に無線機を返すのは良かったのですが。
 ところで、
 「倒せたからいいものの、どうして私の言う事が聞けなかった!」
 信頼度が0だからではないでしょうか!

◆第24話「夏休み!!怪談教室」◆ (監督:三ツ村鐵治 脚本:鷺山京子)
 健吾、小学校の女子トイレに突入。
 相変わらず年下にモテモテで、ゆいちゃんの視線が零下150度だ!
 ……女子トイレ侵入に関しては、我らが竜馬さんも経験があるので、問い詰めにくいのですが(おぃ)
 街の各地で次々とメルザード怪人が目撃されてそれに振り回されるビーファイター。 目撃情報の中心近くにある小学校で怪事件が起こっている事を知った健吾は学校の調査に向かうが、 その内部は怪奇現象の頻発する摩訶不思議な空間と化していた……。
 前回とは打って変わって、えらく凝った演出の夏休み怪談回で、冒頭、血の涙を流すマザーが超怖い。 内部で遭遇する怪奇現象のディテールが割と細かいのですが、時代的に学校の怪談がブームになっていた頃でしょうか。
 怪奇現象に怯える少女・チカコと、「この世に科学で証明できない事は無いし、そもそもこれメルザードの仕業だから」 というスタンスの健吾の組み合わせは、実はお化けが苦手でしたという定番のネタに行くことなく、 しかし健吾1人で味気なく突き進んでもいかず、と良い組み合わせになりました。
 お化け屋敷系ホラーとして力の入った映像が続くのですが、教室の扉を開けるとそこは遊園地で、 挙動の怪しい教頭先生がメリーゴーラウンドに乗っている、のは魔空空間すぎて逆に怖くなくなってしまいましたが(笑)
 外部と通信不能の小学校内部で、襲い来る黒マントの集団と生身で戦う健吾。
 ……そういえば、いっけん優しい科学のお兄さんと見せかけて、実態は軍隊ばりの訓練で心身を鍛え抜き、 飛び蹴りで自然石を粉砕する武闘派でした。
 思い出せ! 筋肉は正義だ!!
 教頭が小型のサンショウウオに操られている事に健吾は気付き、姿を見せたサンショウウオ怪人の、 複数のサンショウウオが絡み合って人型を為しているデザインが、非常にグロテスクで秀逸。
 霊魔力(深く考えてはいけない)を操るサンショウウオの能力により、街では亡霊怪人軍団が大暴れしてカブトンとテントウが大ピンチ。 健吾も襲い来る霊現象に追い詰められるが、それらはチカコが唱えたおまじないで退散。学校に起きていた怪奇現象は、 メルザードのトリックではなく、怪人の能力に引き寄せられていた本当の霊現象だったのである!
 学校は通常空間に戻り、変身したクワガーが怪人の本体を攻撃すると、亡霊怪人達も消滅。 合流したビーファイターはスクラム攻撃でサンショウウオをフィニッシュし、メルザードの亡霊怪人復活計画は阻止されるのであった。
 「この世の全てが、科学で解決できるわけじゃない。それが、よくわかったよ」
 相手が小学生という事もあり、健吾の対応が終始、石頭のオカルト否定というより、冷静で論理的な対応に見えるので、 一ひねりとオチはそこまで効果を発揮していないのですが、健吾の年下の女性キャラへの無自覚ジゴロぶりはますます上昇。
 健吾、「私、大きくなったら健吾さんのお嫁さんになる!」「嬉しいな、ありがとう」みたいな約束を、 世界各地で30人ぐらいとしているのではないか。
 ゆいちゃんの視線が華氏451度だ!
 冒頭、マザーの涙を見たデズルの「命を賭けて何でもやります!」というアピールに対し、マザーが物凄く邪悪な笑みを浮かべるので、 言質を取られたデズルがどんな酷い目に遭うのかと思っていたらこれといって何もなかったのは肩すかしでしたが、 夏休みバラエティ回としては十分な出来。
 次回――帰ってきた筋肉!
 君たちに足りないのは、 プロテイン 昆虫魂だ!!

→〔その5へ続く〕

(2018年7月23日)
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