■『ビーファイターカブト』感想まとめ2■


“希望という武器がある限り
きっと僕ら きっと勝てる”


 ブログ「ものかきの繰り言」の方に連載していた『ビーファイターカブト』 感想の、まとめ2(7話〜12話)です。文体の統一や、誤字脱字の修正など、若干の改稿をしています。

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〔まとめ6〕 ・  〔まとめ7〕 ・ 〔まとめ8〕 ・ 〔まとめ9〕

◆第7話「友に捧ぐ怒りの鉄拳」◆ (監督:東條昭平 脚本:宮下隼一)
 登場当初は学究肌かと思われた健吾、軍隊ばりの戦闘訓練をこなしてきた上に、 跳び蹴りで岩石を木っ端微塵に粉砕する有名な空手家の弟子にして、その道場の師範代と判明し、 ますます筋肉の使徒に。
 そうだ筋肉は、真理に近づくための手段だ……!
 前作でいうところの大作ポジションなのでしょうが、やはり『ビーファイター』はマッスルと縁が切れないのか。
 その頃メルザードでは、
 「誰だ……人間を暴力と……破壊の大好きな、野獣に変えるのは、だぁれぇだぁ……!」
 女帝から、凄く細かな指定が入りました。
 誕生したヒトデ怪人は、変幻自在に姿を変えて獲物に取り憑き、心と体を操る能力を持っているとこれまた細かく説明が入り、 人間を野獣に変え、同士討ちさせる作戦の指揮を執ることになる魚次男。
 まずはアンモナイトが先行して地上に出現する姿が描かれるのですが、特にこれといってキャラクターの掘り下げは無し。 顔出しと着ぐるみの差かもしれませんが、恐竜コンビが割とフィーチャーされて肉付けされているのに対し、 海産コンビの方の肉付けが弱いままなのは気になる所です。キャリアのある声優(塩沢兼人&増岡弘) 任せみたいになっている部分もあるのかもですが。
 健吾の親友であり空手道場の跡取り・和也は、偉大すぎる父の影に苦しみ、空手道を見失っていた。 和也の妹から相談を受けた健吾は和也を説得しようとするが、逆に破門されてしまう。
 「危ないんじゃないの、ハッキリ言って、ここ」
 東條監督の中では蘭は、歯に衣着せないというか、周囲に配慮のできない子、という扱いなのか(^^; いやまあこれ、 貫けばキャラクターになりますし、天才プログラマーという設定を考えると、それらしいですが(長所に対する短所というのは必要ですし)。
 街でシャドー空手をしていた和也はヒトデに取り憑かれて公園で器物破損を繰り返し、更に和也の体から増殖したヒトデが、 街の人々に次々と取り憑いて広がっていく暴動。
 一般市民が暴力衝動に取り憑かれて……というのはよくあるシチュエーションですが、結構な人数が角材振り回して暴れ回っており、 かなり派手な事態になるのが凄く『ビーファイター』です(笑)
 敢えて名札を師範代の位置に戻した健吾が、和也を元に戻す為に友としてもう一度戦う事を決意する……というシーン自体は格好いいのですが、 和也はヒトデに取り憑かれる前から暴力的になっており、悪化はしているものの和也本来の暴走にヒトデ怪人が関係ない為、 その和也に(ビーファイタークワガーではなく)健吾として立ち向かう、というのはヒトデ怪人が蚊帳の外になっていて、残念。
 これが和也が表向きは昔のままだったけれど、ヒトデに取り憑かれた事で秘めたコンプレックスを暴力に転化した、というのなら、 健吾が本当の和也の姿を受け止めて正そうとするきっかけにヒトデ怪人がなる、という形で意味が出たのですけれど。
 「和也ー! 負けるな和也! 思い出せ! 和也!」
 師匠譲りの必殺電光蹴りを友にぶち込んだ健吾は、内臓破裂の懸念がある和也に、説得という名のラッシュ攻撃(笑)
 筋肉による肉体言語の駆使こそ、心に届く最良の手段……!
 激闘の末に二人の拳がスパークしてヒトデ怪人が弾き出され、和也が正しい心を取り戻した事で悪に打ち勝ったという事なのでしょうが、 そもそもヒトデに悪の誘惑要素が無かった(強制憑依)為に、二人の関係とその改善は、少しずつ話と状況設定がズレてしまった感じ(^^;  空手対決は見応えあって、勢いは悪くなかったのですけれども。
 増殖ヒトデに取り憑かれた市民は、ビットが弱点は電気と分析した上で、 博士が人体にダメージを与えず子ヒトデだけに有効な電圧を計算して伝える、というのはチームワークが発揮されて良かったです。 こういった作戦要素は、博士の存在理由も含めて、今後も継続していってほしい部分。
 合流した3人は超重甲し、ネオビートマシン出撃。メカ部隊を蹴散らした後に、こいつも電ショックでいけるのでは?  と安易に属性攻撃をしてみるも反射されてしまうビーファイターだが、「俺はもう逃げない。父さん、健吾、見ててくれ」 と立ち上がった和也がチャージアップ。必殺電光三段蹴りに覚醒して怪人を吹っ飛ばし、弱った所をクワガーが必殺攻撃でフィニッシュ!  かくして昆虫魂は、新たな戦士候補をリストに加えるのであった……。
 和也はコンプレックスを乗り越えて立ち直り、盛り返す道場。二人の師匠はどこかで見覚えのある顔だなぁと思って調べたら、 ガイラー将軍(『宇宙刑事シャリバン』)でした。
 次回――迫り来る退学の危機! 小山内博士が他人事でナレーションしてはいけないのでは(^^;

◆第8話「カブトついに退学!?」◆ (監督:東條昭平 脚本:小林靖子)
 甲平の連日の遅刻早退が学校で問題になり、教頭先生の主導により退学処分が下されそうになるが、担任の平野先生の取りなしで、 1週間の補習とテストで何とかしてもらえる事に。
 「誰の為でもない。自分の為なんだぞ」
 コスモアカデミアに補習課題を持ち込む甲平の姿に、全く自責の念を感じる様子の無い小山内博士は、 人間として完全にどこか壊れています。
 「退学執行猶予中の甲平くん、補習三日目にして、既にグロッキー状態?」
 他人事だと思って茶化す蘭はもうここまで来たら、他人に配慮できないというこの路線を貫いていただきたい。
 健吾は健吾で、さらりと英文を解答すると気楽に励まし……この人達本当にあれだ、 学業とビーファイターの両立ぐらい出来て当たり前、ちょっと苦労するのは「青春のいい思い出」 ぐらいに認識しているんだ……!
 恐らくビーファイター活動の合間にアカデミア研究員としての通常業務をさらりとこなしている健吾と蘭はともかく、 指導者として部下を慮るべき博士は立場が違うので、小山内博士が下衆い事は変わらないんですが。
 メルザードでは、絶滅アリ怪人が産み出す灼熱卵を利用して火山大噴火作戦が進行しており、 地質学研究所から情報提供を受けた健吾と蘭は、不自然な反応を見せる火山のパトロールへ。
 健吾と蘭が黙ってパトロールを肩代わりしてくれている事をビットから聞いた甲平は、自分の不甲斐なさに憤る。
 「俺はみんなに、迷惑かけてる。学校なんて……」
 甲平は、ちょっと思考が飛躍しすぎる節が見受けられますが、本当にいい奴だなぁ……。
 未熟な若者を主人公に据えるスタイルだと、その青臭い言行を物語が肯定していく際に説得力の構築に失敗してしまうという事がしばしばありますが、 甲平の場合、若さと青臭さが、自分の考えが一番だと思い込む視野の狭さではなく、 周囲への配慮と繋がって時に自分を殺しかねない形として出ているのが好感の持てる所(例えば第4話でも、 健吾の事情をすんなりと飲み込んだり)。ある意味で「要領が悪い」といえるのも第5話をしっかり踏まえており、巧く繋げてきました。
 また、そんな甲平が数少ない自分勝手な振る舞いを見せている(自覚は薄いけど甘えている)相手が妹のゆいといえ、 身内の存在意義もしっかりと出ています。
 「甲平、お前が、何をやっているのか先生は知らん。しかし、学校は続けた方がいい。な、頑張れ」
 担任教師や、助っ人参加している部活の友人達に励まされ、甲平を取り巻く絆がしっかり描かれているのも良かった部分。
 改めて退学回避への意識を強くする甲平だったが、補習の最後となるテスト寸前、 健吾と蘭が火山地帯でメルザードと接触した事を知ってしまう。
 「みんなはただの高校生としてのお兄ちゃんの学校生活を守ろうとしてくれてるんじゃない!」
 教室を飛び出そうとする甲平を止めるゆいですが……その気があるなら、もう少し普段から手を回して!
 「地球の平和と、俺の学校生活なんて、比べものにならないんだ!」
 甲平の優先順位の付け方は付け方で間違っていないだけに、昆虫魂に選ばれてしまったのは一種の不測の事態とはいえ、 高校生にここまでの覚悟を押しつけているコスモアカデミアの暗黒ぶりだけが浮き彫りになります。
 (俺はビーファイターとしての責任を果たす!)
 まあ劇中の描写がこうである以上、コスモアカデミアには教育機関に手を回すまでの力はない、と見るべきなのかもしれませんが、 前作を踏まえて考える限り、コスモアカデミアは私設自警団でも秘密組織でもなく、 国家権力とも繋がりがある国際的な地球防衛組織の筈なので、なにもカブトンの中身だと明かさずとも、 アカデミアの特待選抜に選ばれたとかなんとか、法を曲げない範囲でフォロー出来ると思うというか、むしろ、 それぐらい出来ないと困る組織(メルザード被害の後始末などもしていると思われるわけで)なのが、 にんともかんとも。
 翌年、高校生戦隊である『電磁戦隊メガレンジャー』において、 背後組織であるアイネットがこっそりと便宜をはかっている節が見え隠れしていたのは、今作を踏まえていたのか(笑)
 甲平は現場に辿り着いて超重甲し、学校では教頭に厭味を言われながらも、甲平を待ち続ける担任教師。
 メルザードの繰り出す戦闘マシンに対してネオビートマシンで迎撃に……というのはここまで毎度繰り返されているのですが、 怪人とメカが全く連動していない為に、BFと怪人が対峙→おもむろに戦闘メカが出てくる→怪人を無視してビートマシン戦→ 適当に蹴散らした後にマシンを降りて怪人と戦う、というノルマ消化の為だけのパターンになっていて、 話の流れが完全にぶった切られてしまっているのが残念。戦隊と同じ事(怪人の巨大化) が出来ないので毎度物語にマシンを組み込むのも大変なのでしょうが、もう一工夫は欲しい部分です(^^;
 そんなこんなでノルマを片付け、アリに立ち向かおうとするBFだが、突如、体内の高熱に耐えきれなくなったアリが暴走を始め、 既に地中に産み付けていた卵が次々と大爆発。出撃前に魚次男が兄者への嫌がらせでアリに打ち込んだ発熱促進剤、 それはアリの能力を強化する代わりに、アリ自身の限界を超える所まで体内温度を上げてしまう効果を持っていたのだった。
 「まさかデズルの奴〜……」
 恐竜コンビも巻き込む大爆発の中、カブトンはコールドレーザーでアリを冷却し、カブトンランスでフィニッシュ。 消滅する化石素体の映像が定番化し、既に絶滅した種がベースとはいうものの、最後の一匹を改めて絶滅に追いやっている感じが凄く強いのですが、 全ては昆虫魂の元、新帝国ビートルによって統轄されるべきなのだ!
 「貴様、謀ったな………! 俺をうまく葬り去るつもりだったのか」
 「まさか。あんな副作用があるとは俺も知らなかったのさ。運が悪かったな兄者」
 「お気の毒様でゲスゲス」
 前回、海産組の肉付けが進まない事に不満を書きましたが、小細工を仕掛けてくれる姿で個性が強くなったのは、非常に良かったです。
 一方、アリを倒した甲平は、ビーファイターとしての使命を全うする為に、退学を受け入れようとしていた。
 「ビーファイターとして戦う為にも、鳥羽甲平は、捨てなきゃいけないんだ!」
 「それは違う! 戦うだけがビーファイターじゃない。喜び、笑い、泣き、怒る。おまえのほとばしる若い感情があればこそ、 インセクトアーマーはおまえを選んだ。甲平、まだ若いおまえには戦い以外の生活は大切なんだ。 おまえにはこれから知らなきゃいけない事がまだまだたくさんある。そして、そんな普通の高校生としての鳥羽甲平を、 一生懸命守ろうとしてくれる人がいるじゃないか」
 それを諭す博士がいっけん良い事を言っているような雰囲気なのですが、 言っている本人が一生懸命守ろうとしていないので、人の世への絶望から新たな絶滅モンスターが生まれそうな勢いです。
 追い詰めるだけ追い詰めてから土壇場で優しい言葉を投げかけるコスモアカデミア(小山内博士)のマッチポンプが吐き気がする程どす黒いのですが、 このやり口は、洗脳ではないのか。
 全ては、新帝国ビートルの為に!!
 シリーズとしては90年代に入り、
 〔公のヒーロー→公のヒーロー→公のヒーロー→闇の正義執行人→蔭のヒーロー(戸籍上死亡)→公のヒーロー〕
 と官憲に所属しているか、社会的に死んでいるので法の枠外かが極端だった流れから、 高校生戦士という設定を巧く生かして“公私の間で揺れるヒーロー”を描いており、 ヒーローとしての覚悟決まりまくりの甲平が自ら社会性を捨て去ろうとするのに対し、周囲がそれを押しとどめようとする、 そこで甲平の若い覚悟が視野狭窄へと転じ、学生生活にはそれを広げる意味があるとしてきたのは鮮やか。
 「鳥羽甲平は、捨てなきゃいけない」という台詞が示す、古いヒーロー像へのアンチテーゼも嫌にならない形で入っており、 『ブルースワット』で見せた光に続き、翌年から戦隊シリーズに参加して大きな飛躍を遂げる小林靖子の片鱗が見えます。
 博士の言葉に懸命に自分をかばってくれた平野先生の存在を思い起こした甲平は、考えを改めて学校へと急ぐ。
 「平野先生!」
 「遅かったな甲平。テスト始めるぞ」
 「はい!」
 先生が何も聞かずに笑顔で迎える、というラストも爽やかで、またそれが、先生が甲平を信じているというその信頼に応える事、 になっていたのも良かったです。
 コスモアカデミアのエリート達の最低な対応のお陰で地雷気味になっていた“高校生戦士”という設定に敢えて正面から向き合った上で、 整合性を付ける為に設定面でフォローを入れるのではなく、鳥羽甲平とは如何なるヒーローか?  そして今作が大事にしているのはどういう精神なのかというのを描く(手法としては、すり替えている)事により、 改めてヒーローを立ち上げるという、ヒーローの理由を大事にする小林靖子らしさも見える、好エピソードでした。
 甲平が上がった分、小山内博士が地獄に落ちましたが、博士は地獄行きが相応なので、やむを得ません。
 次回――怪人と落語家、って、もうこれ扇澤さんしか書かないだろう、みたいな予告でしたが、さて(笑)

◆第9話「弟子入り落語怪物!!」◆ (監督:三ツ村鐵治 脚本:扇澤延男)
 注目は、健吾との差別化なのか、どんどんトンガっていく甲平の髪。
 元コスモアカデミアのプログラミング部門主任・榊原は、2年前にアカデミアを退職して現在は今今亭コン助という名で寄席に出ている落語家だが、 一向に上達しない事から遂に師匠から破門されてしまう。
 一方メルザードでは、マザーの手違いにより二つの化石が同時に取り込まれた事で合成怪人ネズガイラが誕生し、 長男次男が力を合わせて作戦の指揮を執る事に。これまでの流れから明らかではありましたが、陸の生き物ならライジャ、 海産物だったらデズル、という指揮権について明言。
 ネズミの敏捷さと貝のパワーを併せ持つネズガイラは従来の絶滅怪人を上回るパワーを見せるが、戦闘中に突如豹変。 テントウを情け容赦なく追い詰める残虐な人格と、テントウに謝罪を繰り返し愛と平和を唱える人格とが、 入れ替わり立ち替わり表に出て体を動かすという、人格分裂の様相を見せる。
 そう、合成の副作用により、ネズガイラは左半身が戦闘回路、右半身が自制回路という、二重人格の超怪物になってしまっていたのであった―― 風よ、雲よ、太陽よ、心あらば教えてくれ。なぜこの世に産まれたのだ!
 たまらずメルザードは一時撤退し、ポンコツと化した怪人の責任を押しつけ合うライジャとデズル(笑)
 「黙れ! 再教育など必要ない。この子は今のままでよい」
 ところがてっきり粛正でもするのかと思ったマザーが意外なスタンスを見せ、 ダムを破壊せよと直接の指示を受けたネズガイラは再び地上へ。これと遭遇したBFがニードルビームを浴びせるが、 先の戦闘を物陰から見ていて、ネズガイラを二人の人物を絶妙に演じ分ける才能の持ち主と誤解した落語家が、 是非とも師匠にしたいと怪人をかばい、ネズガイラは落語家を人質に逃走する……。
 率直に、落語家、キチガイなのですが、コスモアカデミアのプログラミング部門は、 頭の配線の狂った人しか居ないのか。
 あの蘭がプログラマーとしては超一級と評価する元上司なので、何とかと紙一重の天才の可能性はかなり高いですが。
 ネズガイラに弟子入りを頼み込む落語家は、傷の治療をしようと薬局へ向かうと、 「うちの師匠は怪物ですから」と傷薬と包帯を買い込み、どうやら本当に頭のネジが数本抜けている模様。
 しかし蘭に見つかりそのままアカデミアへと連行されるが、人命よりも自分の落語、とトイレと偽ってそのまま逃亡。 その際に落としていった本を拾った蘭たちは、キチガイの夢が小学生の頃からずっと大事にしていたものだったと知る。
 「師匠になってもらえるなら、怪物でもいいって」
 「奪う権利なんて誰にもないよ。そんな一途な人間から師匠を」
 状況は全くそれどころではないのですが、小山内博士、 人間として信用できない上に指揮官としても無能すぎて、地球を守る最前線には明らかにふさわしくない人材です。 出来る限り早く更迭しないと色々危ない。
 「気持ちはわかります。でも……」
 「取り除きさえすればいいのよ。あの怪物から、凶暴な破壊性を」
 ビットと共にネズガイラの詳細な分析を始める蘭だが、その結果、時間が経つほどに戦闘回路が支配力を高めてしまう事が判明する。
 「さすがは偉大なる我がマザー」
 「こうなる事をはなから見抜いていたとは」
 ダムを襲撃するネズガイラを食い止めるべく3人は超重甲し、今回はネオビートマシンを削って久々にバイクが登場。 テントウスラッシュが炸裂してネズガイラはざっくり消滅し、掴み合いをしながら兄者と魚は撤退。この辺り、 いざとなったら躊躇なく抹殺するのは、さすが昆虫魂に選ばれた戦士です。
 師匠を失いがっくり落ち込むキチガイを、夢を諦めないでほしいと励ます蘭。甲平と健吾もエールを送るが……そのキチガイ、 調子に乗らせない方が良いと思うのですが。
 夢を追う者と支える者が居て、そんな世界を守る事が私の夢だ、と博士が良い話風にまとめるのですが、 個人の身勝手な「夢」の為にダム下流に壊滅的な被害が起きる寸前だった事が全く不問にされたまま「夢」だけが肯定されてしまうという、 酷すぎる話。
 扇澤さんで落語ネタというと『特救指令ソルブレイン』序盤の名編、第6話「バクダンと落語家」 を思い出してハードルが上がってはいたのですが、下をくぐるどころか思い切り場外に放り投げてしまいました(^^;
 怪人の二重人格を左右の向きで切り替え、それを落語をやっているように見せるというアイデアは面白かったのですが、 ビジュアル的な一発ネタであり、物語の方には全く落語要素が活きなかったのも残念。 感傷に振り回されて物事の重要性の判断を簡単に見失う、博士の最低ぶりだけが上昇してしまいました。 甲平の社会的フォローをしないで放置しているのも、この人、単に無能なだけだ。
 最初の次回予告以来、博士への好感度が落ちたままどころか、順調に降下しているのは、地味に辛い。

◆第10話「対決格闘技マスター」◆ (監督:三ツ村鐵治 脚本:浅香晶)
 世界選手権連覇を狙う柔道家、日本一といわれる剣術家らが次々と絶滅怪人ガンガルーに襲われ、失踪。 吸い込んだ者の力を自らのものとする能力を持ったカンガルーは、様々な格闘技術を身につけて自身を強化していき、 その最終的な目標はビーファイターを吸収する事による昆虫魂の入手にあった!
 健吾と蘭が連続行方不明事件の調査を開始している頃、甲平は今日も今日とて部活動に精を出し、 助っ人の筈なのに1年生の指導までする甲平は本当にいいヤツ。
 なおゲストの、甲平を慕うサッカー部後輩ズの一人が、後のブレイク限界ゴーオンゴールドな徳山秀典(当時14歳)。
 サッカー部の後は茶道部の助っ人(部室の模様替えでも手伝わされるのか?)に向かおうとする甲平だったが、 学校の卒業生である近所のボクシングジムの世界チャンプをガードする、と張り切っていた級友達が、 忠告を無視してガードに向かってしまった事を知る。事件にメルザードが関わっていたら危ない、 と後輩ズと共に慌てて追いかける甲平だが、目の前でガンガルーに襲われる、チャンプと級友達。
 (こいつらの前じゃ、超重甲できない)
 え? そうなの??(^^;
 やたらに正体を知られない方が無難というのは確かでしょうが、既にメルザードには顔割れていますし、 目の前で人命が危険にさらされている状況で優先するほどの秘密とはとても思えないのですが。
 性格を考えたら甲平の意志とは思えないので小山内博士から強く言い含められているのでしょうが、 甲平=カブトンである事を秘密にして守られるものって、(偶発的要因だったとはいえ) 高校生を戦士として戦わせている事を隠しておきたいというコスモアカデミアの世間体では。
 何か改めて契約書をかわしている可能性もあり、この件に関しては小山内博士もコスモアカデミア上層部との間で板挟みなのかもしれませんが、 これ確実に、変に隠して傷口を広げるパターン。
 “秘密の高校生戦士”という甲平のポジションはどうにも、 初期コンセプトか何かが『ビーファイター』世界の設定と噛み合わないままあやふやに継続されている印象ですが、 余計な地雷を無造作に踏んでくるのは凄く浅香脚本です。
 甲平が電話ボックスを探している間にボクサーはカンガルーに吸い込まれてしまい、一足遅れで駆けつけたクワガーとテントウは、 世界レベルのボクシングに苦戦。カンガルーの真の狙いがカブトンの昆虫魂にあると知ったクワガーは、 取り込まれそうになる寸前に咄嗟に超重甲を解除して昆虫魂を守るファインプレイを見せるも、カンガルーに吸収されてしまう。
 いっけん、クワガー/健吾を吸収したのは無意味、みたいな処理をされるのですが、健吾、 跳び蹴りを放つと足が光って岩石を粉々に砕ける技を修得している空手の達人なので、凄く、強化したような(笑)
 残されたクワガーチェンジャーを確保したカブトンとテントウは一時撤退し、 博士は二人にカンガルーの弱点が判明するまで超重甲の禁止を指示。健吾および他の格闘家達が吸収されている事に対する扱いが凄く軽いのが引っかかったのですが、 「取り込まれた人達は生きている」みたいな分析シーンが尺の都合でカットされたりしたのでしょうか。……まあ、 クワガーに関して言えば、既に2代目はリストアップされているのですが!
 「和也くん、亡き健吾の為にも、君の電光三段蹴りを地球の未来の為に役立ててほしい。……というか、昆虫魂に選ばれた以上、 拒否は不可だ!」
 人は死して名を残し、昆虫魂は永遠に不滅だ!
 ひとまず怪我をした同級生を見舞いに行く甲平だが、後輩ズから友人達を見捨てて怪人から無様に逃げ出したボウフラ以下の臆病者め!  と冷たく蔑まれてしまう。
 「健吾……どうしたらいいんだ?」
 ここで甲平がクワガタチェンジャーに向けてこぼし、事情を知ったゆいがわざと知らないフリで明るく兄を励ます、 という流れは良かっただけに、甲平が「健吾の無事を知っている」のか「健吾の無事を信じている」のか、 という感情の掘り下げが足りなかったのは残念。
 メルザードがBFを誘き寄せる為に街を攻撃し、人々が避難する時間を稼ぐ為に、生身で立ち向かう甲平。
 「甲平が超重甲せずに戦ってるのか?! 甲平! 私との約束事を守ってるのか」
 ……どこをどう聞いても、甲平は約束を守らないと思っていたようにしか聞こえないのですが、 小山内博士はどこまで人間の底辺をゆくのか。
 そしてカマキリ、
 「なぜビーファイターにならん!」
 目的をバラしたからだと思います!
 「早く超重甲しろ。そしてその力を渡すのだ」
 「おまえらの勝手にさせてたまるか! カブトのパワーも、この地球も!」
 病院の避難が終わったと甲平に伝えに駆けつけ、わざわざ後輩ズをともなって甲平の勇姿を見せつけるゆいちゃん、 安定のブラコン路線。変に賑やかしアイドル化すると嫌でしたが、その要素はむしろ蘭に入り、 ゆいちゃんは気配りと知性を兼ね備えているのが、良い所。
 蘭もやってきて混戦になる中、甲平がオブジェをミラクルシュートすると、カンガルーの腹の袋にクリティカルヒットしたダメージで、 吸い込まれていた人々が解放される……と、ここまでそれほど悪くなかっただけに、解決が一気に勢いだけになってしまったのは残念。
 「そうだ甲平、チャンスが見えた! 今がチャンスだ!」
 健吾も復帰し、カンガルーの弱点部位を発見して超重甲する3人だが、そこに迫り来るメルザード戦闘機。 前回スキップしたので2話連続は無理だったのかもしれませんが、 カブトンの昆虫魂を吸い込む事が目的なのに何故か襲来する戦闘機→ネオビートマシンで適当に蹴散らす→マシンを降りて地上へ→ 回り込まれて「?!」みたいな反応を見せるカンガルー(笑)
 と、ノルマの為に物凄く意味不明な事に(^^;
 これは個々の脚本とか演出というより全体の責任ですが、日笠プロデューサーは割とその辺りの辻褄を気にしない方だったのでしょうか。
 カブトンはカンガルーを《挑発》して敢えて吸い込まれようとし、開いた袋をクワガーがセメントビームで石化。 無防備になったカンガルーをカブトンランスでフィニッシュし、メルザードの作戦は阻止されるのであった。
 後日、甲平に対する誤解を解き、謝ろうとする後輩ズを制して笑顔で練習を始める甲平、ひたすらいいヤツ……以前にゆいちゃんに 「乗せられやすくて、お調子者で、カチンて来る事もあると思うけど、でもあいつ、すっごくくいいヤツなんです、すっごく」 という台詞がありましたが、甲平は「格好いい」とか「好青年」というより、とにかく「いいヤツ」で、演出も脚本もそこが一貫しているのは良い部分。
 メルザード幹部陣が期待したほど面白くなってきてくれない中、甲平の好感度の高さはだいぶそれを補ってくれています。 甲平がいいヤツであればあるほど、小山内博士はじめコスモアカデミア上層部の下劣な暗黒ぶりが際だっていくのですが!
 第6話に続き、特別面白いというわけではないものの、余計な枝葉を繁らせずにシンプルにまとまった見やすいエピソードで、 今作ここまでのところ、浅香晶 > 扇澤延男という状況に、激しく困惑します(^^;
 扇澤さん、前作で働き過ぎた反動なのか、一本化したプロデューサーとあまり相性が良くないのか。『ジバン』から数えると、 <メタルヒーロー>シリーズを支えるローテ脚本家として8年目に入るので、勤続疲労的なものもあるのかもですが。 作品全体としてはそれなりに楽しんでいるので、扇澤さんの浮上を切に期待したい所です。
 次回――健吾に女の影。
 ……え、なんか、予告に見せてはいけないのではないかというシーンのカットが(^^;

◆第11話「涙の海を越えて撃て」◆ (監督:金田治 脚本:宮下隼一)
 見所は、ミニバンに正面から轢かれて倉庫の壁に叩きつけられるデズル。
 石油コンビナートから次々と石油が消失するという事件を調査していたビーファイターは、 現場で目撃した謎の女を追い詰めるが、女の正体はコスモアカデミアシドニー支部の構成員にして、健吾の幼なじみ・エリカ。
 シドニー支部からの協力要請の件が現場にうまく伝わっていないのですが……無能博士のせいでは。
 エリカが追っていたのは、シドニー支部で研究されていた特殊なバクテリア・イーター。 石油などを瞬く間に分解する性質を持つイーターは、使い方次第で環境保護に大きな役割を果たす事を期待されていたのだが、 メルザードによってそのサンプルを奪われてしまっていたのである。
 「我が子シーラガンザは、生きた化石シーラカンスに、人間どもがイーターと呼ぶバクテリアを取り込み、誕生した」
 ……そのレトリックはありなんですかマザー!!
 まあ、厳密に言うとシーラカンス目の中で、絶滅した科と現生種が存在しているわけなので、 これまでの絶滅モグラや絶滅ネズミもそういう理屈ではあるのでしょうが……持続しにくそうな怪人コンセプトではあったものの、 1クールの内にここまで崩壊するとはさすがに思いませんでした(笑)
 石油を分解して食い尽くしてしまう凶悪な怪物と化したシーラガンザに立ち向かうビーファイターだが、 シーラガンザの体内に取り込まれているイーターの確保に強くこだわるエリカは、独自に誘導電波を使用。 シーラガンザの身柄を抑えようとするが、その電波が超重甲の解除信号と同じだった事から、3人の変身が解けてしまう。 戦闘機部隊を放って一時撤退したデズル達もこれに気付き、シーラガンザを囮にして故意に誘導電波を使用させると、 超重甲できないビーファイターに襲いかかる……!
 物語のポイントとしては、「変身不能で大ピンチ」であり、その状況を招く原因に「エリカの背景」を持ってきているのですが、 幼い頃の健吾とエリカの交流は回想シーンで尺取ったのに、肝心のエリカの事情(環境保護活動中の両親の死) は博士の雑な説明で済まされてしまう為に、エリカの事情に極めて共感しにくく、そんなエリカの事情を酌んで、 命がけで配慮する健吾までなんだかなぁという感じに。
 その為、変身不による生身アクションも、“生身アクションを見せたい都合で話を引っかき回している”ように見えてしまい、 本末転倒で盛り上がりに欠けてしまいました。
 トドメに、エリカがシーラガンザにぐさっと刺され、怒りの健吾が超重甲して怪人をフィニッシュした後、 体内から飛び出したイーターをコールドビームで確保してしまい、 イーターを入手する為にシーラガンザを生きたまま捕まえようとした事で現場が混迷、 という今回の展開全てが茶番だった事になってしまい、大惨事 on 大惨事。
 宮下さん名義で鈴木康之が書いたのではないかと疑念を抱くレベル。
 本来なら両者の間を取り持って作戦を調整すべき上官が無能だった為に、あたら若い命を散らせる事になってしまいました。
 挙げ句、健吾がエリカの亡骸をお姫様だっこして海を見つめ、そこにバラードが流れるという無理矢理感傷的なシーンに、 博士が「若者よ、泣くがいい。だが、希望を捨てるな。希望がある限り……」と俯瞰視点のナレーションでまとめてしまい、 博士の人間味の薄さが青天井。
 小山内博士、“科学者として踏み外している”のではなく、“人間として壊れている”のですが、意図して外道を働いているのではなく、 自分の傍観が引き起こした事態に一切の痛痒を感じないという生き物で、人間として大事な部分が、 誰かに売却されてしまっているようです。
 まあ、ナレーションはナレーションであり、劇中の小山内博士とは別人である、と受け止めた方が良いのかもですが、 本当にこれは大失敗だったと思います(^^;
 エリカの行く末を露骨に見せてしまった酷い次回予告に始まり、エリカというキャラクターの見せ方が雑な為に、 ゲストの事情を知ったビーファイターが敢えて生身で戦う、という形も成立せず、まとわりの悪いエピソードでしたが、 良かった点を挙げると、Aパートの内に物語上の意味を持たせてネオビートマシンを出した事。 これはここまでの問題点を一つ修正してきました。
 にしても、イーターはどう考えても環境保護の切り札どころか国際紛争の火種になりかなねい、 具体的にはあらゆる国家に対して脅迫材料に使えるという抗核バクテリアばりのヤバいブツで、 科学は簡単に暴走するし過ぎた力は身を滅ぼすしつまり本当の怪獣は人間なんですよ?!
 そう、全ては新帝国ビートルの為に!!
 次回――魔空空間回?

◆第12話「謎?!化石の夢幻迷宮」◆ (監督:金田治 脚本:鷺山京子)
 ビーファイターを倒す為、悪夢の迷宮を作り出すサボテン怪人が生み出され、健吾と甲平が次々と迷宮送りにされてしまう。
 フルネームから学校まで100%割れている上に、甲平がゲスト少年の前では躊躇無く変身する為、 甲平の“秘密のビーファイター活動”の線引きがますます地雷に(^^;
 むやみやたらと正体をバラさない方が確かに無難であり、しかしいざという時には躊躇しない今回の方が自然なわけですが、 “敵に素性が割れていても基本的に身の回りに直接攻撃はされない”という部分は旧来のお約束で処理されているのに、 “多少身近に正体がバレてもそれで騒ぎにならない”というお約束の方は曖昧な扱いになっている為、 甲平メイン回とそれ以外の回でリアリティラインがズレてしまっており、見ていて凄く不安定で落ち着きません。
 たまたま怪人の素体となった化石の一部を持っていた事から、サボテンの迷宮に入り込めるようになった少年ヒロシは、 2人を助ける為に蘭と一緒に迷宮に乗り込む事に。迷宮で合流する4人だが脱出前に化石の欠片を壊されてしまい、 荒法師軍団に追い詰められてしまう。
 「君、ヒーローになりたいって言ったよね? なれるんだよ。誰だってヒーローになれるんだ。どんな時でも、 絶対に希望を捨てない人間を、ヒーローって言うんだよ」
 少年を励ます蘭の台詞そのものは良く、子供達へのメッセージとしても成立しているのですが、 蘭がこの台詞に至る流れが綺麗に組めていない為に、もう一つ盛り上がりに欠けてしまったのは残念。予算やスケジュールの都合なのか、 太秦?を舞台にした悪夢の迷宮も、不条理展開としては物足りない出来。
 最終的に、勇気を奮い起こした少年が、迷宮の要であるサボテンマークを破壊して、迷宮の脱出に成功。
 「ザボデーラ! どんな悪意も朝の光に敗れるように、希望こそが悪を打ち砕くのよ! この地球は、ビーファイターが守ってみせる!」
 左手で怪人の武器攻撃を受け止め、右手のアイアンクローで顔面を握り潰す、 というのは凄くビーファイターぽかったです(笑)
 次回、小山内博士メイン回? 果たして博士の株は多少なりとも上がるのか、それともどん底まで堕ちるのか。

→〔その3へ続く〕

(2017年10月2日)
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