■『重甲ビーファイター』感想まとめ8■


“BLACK BEET.! BLACK BEET.! 哀しみよ
愛を失くした 黒い戦士に ……十字架を!”


 ブログ「ものかきの繰り言」の方に連載していた『重甲ビーファイター』 感想の、まとめ8(43話〜48話)です。文体の統一や、誤字脱字の修正など、若干の改稿をしています。

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〔まとめ5〕 ・  〔まとめ6〕 ・ 〔まとめ7〕  ・ 〔まとめ9〕

◆第43話「見た!!黒(ブラック)の素顔」◆ (監督:坂本太郎 脚本:宮下隼一)

 シャドー:土屋圭輔

 という、70年代ばりに豪快なOPクレジットバレ(笑)
 恐らく1−2話のゲストキャラだった少女・はるかがカブトムシを抱えて再登場。舞にわざわざ初めましての挨拶はするのに、 はるかとカブトムシについての説明がほとんどないので困惑しますが、後半シャドーと拓也の殴り合いがだいぶ長々と回想シーン入るので、 1−2話の回想シーンを入れても良かったような(^^;
 もうすぐ冬だというのに、カブトムシが戻ってきたのは何か異常を感じたのではないか、と拓也達に相談を持ちかけるはるか。 1−2話のカブトムシと同じ個体だと確信を抱いている辺り、 アースアカデミアではなく他の機関に相談しに行った方が良いのではないかという不安を覚えますが、そんなカブトムシを飼育箱に入れて、 「二度と離ればなれになんかならないわ」と抱きしめるかなりサイコな姿を見るに、昆虫魂による神経汚染がもう手遅れなのかもしれません。
 はるかの話を聞いたビーファイターはジャマールに対するパトロールを強化するが、拓也は激しい痛みを感じて胸を押さえ、 シャドーもまた、海を見ながら同様の痛みに苦しんでいた。
 「俺の中で、何が起こってるんだ……!」
 一方ジャマールではメガオームが幹部の反対を押し切り、超低温気体弾を用いて地球全土を生物の住めない環境に変える事で地球を破滅させる、 氷河期作戦を発動。世界的規模の大寒波が襲来して東京は雪に白く染まり、瞬く間に零下25度と化した世界で、 アースアカデミアのエアコンやコンピューターまで停止してしまう。地球上の生き物がほぼ活動不能になる零下80度まで、 タイムリミットは残り数時間……。
 「これじゃ、地球征服じゃなくて壊滅作戦じゃない」
 「確かに、これまでのジャマールのやり口じゃないな」
 「そうか……セントパピリアだ!」
 3幹部の反応から、これまでジャマールが征服した次元から収益を得ていた事が明らかになり、 しかしガオームは地球を壊滅させる事でセントパピリアを誘き寄せようとする……と、前作『ブルースワット』が、 無血占領を旨としていた筈(それが作品としての肝でもあった筈)なのにその他の侵略勢力を派手に呼び込もうとするなど、 とっちらかって支離滅裂になった事を反省してか、ヒーローも侵略者も「征服」と「壊滅」は違うと認識している事、 目的の変更により作戦の性質も変化する、という点が物語として盛り込まれたのは良かった部分。
 ガオームの狙いに気付いたグルもアースアカデミアを訪れ、はるかのカブトムシが、 氷河期作戦の要となるジャマールの衛星をコントロールするアジトを発見してアースアカデミアに伝えに来る、 というのは第1話を意識したと思われる展開。
 3幹部により抹殺寸前だったグルとはるかを助けに飛び込むビーファイターだが、第43話にして、 インセクトアーマーは昆虫魂で動いているから寒さに弱い!という 凄くシンプルな弱点が発覚(笑)
 それを狙った3幹部が、変身したビーファイターに対して一斉に窓を叩き割る姿が、ひどく間抜け(笑) まあ前段階で、 地球氷河期作戦という高度なテクノロジーを披露してはいるのですが、終盤に敵幹部がヒーロー達を追い詰める手段が 窓を叩き割るなのは多分、『重甲ビーファイター』だけ!
 ビートマシンも寒くて沈黙し、頼みのメガヘラクレスもオートパイロット機能が出勤を拒否(笑)
 ……誰だ、この余計な機能付けたの。
 地球壊滅前に是が非でもブルービートの首を取ろうと執念を燃やすブラックビートの攻撃により、重甲解除に追い込まれてしまう拓也。
 「ブルービート、この世から消え失せろ!」
 だがまたしても、拓也に与えたダメージのフィードバックにブラックは膝を付き、その事態に疑念を抱く拓也は一つの推察に思い至る。
 「おまえの、おまえの正体は……」
 「やっとわかったか」
 自ら重甲を解除したシャドーが帽子を取ると、その下から現れたのは、拓也と瓜二つの顔!
 という驚愕の双子トリックに3幹部も含めて愕然とする中、それどころではない勢いで、地球壊滅の危機が迫っていた!
 「今こそいでよ、いでよセントパピリア……我が前へ、ガオームの前へ……」
 正直、ジャマールの作戦による地球の被害が甚大すぎてブラックの正体が霞んでしまった感がありますが、 このまま一気にクライマックス突入なのか。
 次回――えええええええええええええ。
 …………ガオーム様の、元嫁とかなのか。

◆第44話「生命の蝶現る!!」◆ (監督:坂本太郎 脚本:宮下隼一)
 サブタイトルからのBGMが勇壮で格好いい。
 「そうか……そうだったのか……おまえは俺の、クローン」
 「俺は、貴様を倒す。貴様を倒せば、俺は影から光、唯一絶対の存在になれるんだ。俺が俺になれるんだ!」
 シャドー/ブラックビートの正体――それは、ジャマールの科学と呪術によって生み出された拓也のクローンだった!
 再び邪甲したブラックビートの激しい攻撃が衛星のコントロール装置を破壊し、拡大した爆発によりアジトは崩壊、 行方不明になってしまう拓也。アカデミアでは超高熱気体弾の開発が進められるが、グルはセントパピリアの到来が近い事を告げる。
 「勘違いするな。セントパピリアは、破滅を食い止めに、現れるものではない。破滅したものを救いに、現れるのだ」
 予告から前作の悪夢再びが危惧されただけに、宇宙の彼方からやって来る超存在は人類文明の救世主というわけではない、 と先に釘を刺してきたのは正直ホッとしました(^^;
 大作と舞はビートマシンの再起動を試み、グルは寒いから働きたくないメガヘラクレスの説得へ、と、 超高熱気体弾を射出する為の切り札としてメカにスポットライトを当てたのは今作らしい良い展開。
 一方、行方不明となっていた拓也は、タイマンでの決着にこだわるシャドーに拾われていた。
 「俺は! 俺はおまえと戦いたくないんだ!」
 「ほざけ!」
 ……なんだか、「ほざけ」って凄く久々に聞いた気がします(笑) それはさておき、再び生身バトルに突入し、 一方的になぶられていた拓也だが、鍛え上げた筋肉がついついカウンターで反撃。
 「そうだ……それが貴様だ! いや、俺だ……貴様が生んだ、俺そのものだ!」
 シャドーは、自分の存在は闘争を求める拓也の 内なるマッスルの叫び 暗黒面だと指摘し、 ここで建物内部に雪が吹き込む演出が格好いい。
 いよいよ人類文明の崩壊が迫る時、地球に到来したセントパピリアは……顔出しの女性蝶々怪人でした。
 えー、予告で思いきっり出ていたので本編登場時のダメージは少なかったですが、 ここまで宇宙を舞う神秘的な光の蝶のイメージ映像だったセントパピリアは、どうして、 顔出しスーツのメルヘン怪人になってしまったのか。変わったトーンの喋り方といい、演劇っぽい造型なのですが、 物凄く地味というか変というか、ゴールドプラチナムとクイーンコスモを足して2で割った感じ(^^;
 「来た……遂に来た……捕獲作戦、発動!」
 ガオームの命令で蝶々女王を捕獲しようとする3幹部だが合体友情ネットをあっさり破壊されて失敗。 拓也とシャドーは蝶々女王により謎の世界へ招かれると、人類文明おしまいなのにどうして身内でつまらない争いをしているのかと問われ、 また、クローンであるシャドーの寿命が近い事が指摘される。
 再び友情ネットを放つ3幹部だが蝶反撃を受けて撤退し、続けて繰り出されたガオームツモ、まさかの失敗。 存在を賭けた宿命の戦いを続行する光と影は互いに変身し、これに緑と赤のビーコマンダーが反応すると、 ビートマシンとメガヘラクレスが再起動。
 「おぉ……儂の思いが、メガヘラクレスに伝わった」
 え?(笑)
 ブルービートが再変身するとビートマシンが再起動する理屈もさっぱりですが、 演出の流れを見る限りではグルが特に役に立たなかったのは間違いなく、どうしてこの台詞を入れた(残した)のか(^^;
 上では「メカにスポットライトを当てたのは今作らしい良い展開」と書きましたが、「地球に迫る最大の危機」に 「宇宙から飛来する超存在」と「それを狙って真の目的の為にガオームが動く」中で「シャドーの正体が判明」し 「超存在が戦いの意味を問う」が「ブルーvsブラックの死闘は続く」一方で、 「人類科学と昆虫魂の融合であるビートマシンにより大逆転」というのは、さすがに盛り込みすぎました(^^;
 クリスマス回的なメカプッシュ要素も含めた上で、今作これまでの物語を集約していき、
 〔アースアカデミアの開発した超高熱気体弾→切り札はビートマシン!←グルを象徴とした昆虫界の助力〕
 と、科学とオカルトの融合が地球を救う、という作品コンセプトを強く押し出した構図自体は綺麗なのですが、 あまりに色々な要素を入れすぎて、焦点が集約を通り越して散漫に。
 例えば「人類科学と昆虫魂の融合であるビートマシンにより大逆転」を活かすなら、 如何にして活動不能だったビートマシンが再起動するかが肝なのですが、 そもそもの活動不能要因と全く関係しないブルービートの復活と紐付けられてしまい、 「ブルーvsブラックの死闘は続く」という全く軸の違う所で展開していた要素と、最後だけ強引に絡めた為に完全に頓珍漢な事に。
 前回から、ジャマールの作戦規模とブルーvsブラックの対決を同時展開する事のバランスが非常に悪かったのですが、 セントパピリアも含めて全体の要素の接続が甘く、見た目は派手で盛り沢山だけど味の統一感が全くないフルコース、 とでもいったエピソードになってしまいました。
 緑と赤は青の救出に向かい、ブルービートは「ブラックビートの、怒りが、憎しみが、この俺に……。やめろ……やめろぉぉっ!!」 と叫びながら、勇者キャノン発動(笑)
 ギガストリーマーの呪いを受けながらも故意に直撃は避けた青だが、余波でも結構なダメージを受けた黒は捨て台詞を残して撤退。 合流した3人はメガビートフォーメーションを発動すると、高熱弾によりジャマールの衛星を破壊、 氷河期作戦を食い止める事に成功するのであった……。
 メカをしっかりと使ってくる展開自体は好きなのですが、セントパピリアが持ち込んだ、 愚かな人類がどーとかこうとかなテーマは今回の解決に全く影響しないなど、中身の一体感の無さが残念。
 ジャマールでは、ブラックビートにお仕置き光線を浴びせるガオームだったが、突如その体に異変が起こり、ブラックは反撃して逃亡。
 「わかったぞ……ガオームにも命果てる時が近づいていたのだ。セントパピリアを手に入れ、生き延びる事こそが奴の目的だったのだ」
 ある程度仕方の無い事ではありますが、ガオーム様の寿命宣言は、どうにも唐突(^^; まあ前半も昆虫魂の知識を得る事で、 ガオーム→メガオームにクラスチェンジしていたので、元々、多次元世界で様々な力を得て自身の存在をより強固にする事こそが目的、 と理屈は付けられますが。
 「俺の命も、セントパピリアを押さえれば……」
 一方、セントパピリアの問いに考え込んでいた拓也は、ビーコマンダーを置いて姿を消してしまう。
 (地球が破滅の運命を生み出したように、俺はブラックビートを――悪を生み出した。その俺に、正義の戦士として戦う資格は……無い!)
 自身の暗黒面を、人類規模の破滅の運命に重ね合わせるという、 持ち前のナチュラルマッドサイエンティスト気質を発揮した拓也、思いあまって退職、 という深刻な引きで次回へ続く――。

◆第45話「聖夜のメモリー」◆ (監督:三ツ村鐵治 脚本:浅香晶)
 ビーコマンダーを捨てて職場を無断放棄した拓也を探すビーファイター、ビートマシンまで繰り出して、 物凄い 殺意 本気。
 (地球が破滅の運命を生み出したように、俺はブラックビートを、悪を生み出した……そんな俺に、正義の戦士として戦う資格は、ない)
 彷徨する拓也@サワオモードは、改めて、ちょっと自意識過剰(笑)
 そんな拓也がブラックビートとの宿命を回想したり、仲間達がブールービートと共に戦った日々を思い出したり、 と主題歌+挿入歌2曲をたっぷり使っての年末回想編。チョイスの都合で、レッドル@麗バージョンのシーンが結構多いのですが、 誰も麗には言及しません(^^; 一方、拓也がネガティブかつ過大な思い込みではなく、 実際にブラックビートがもたらした被害について責任を感じている、というのは頻繁に市街地が大破壊される今作の特性も取り込んで、 巧く転がしました。
 「俺は、俺はいったどうしたら……」
 クリスマスの街をさすらっていた拓也は、車に轢かれかけた少女・のぞみを助け、その際に壊れたブローチと同じ物を買ってあげると、 突然のナンパ(笑)
 つい先ほどまで損害賠償について深刻に悩んでいた所からの切り替えには明らかに現実逃避の香りが漂い、 物凄く精神が不安定な様子が滲み出ます。
 写真を持って拓也を探していた大作と舞は、のぞみと出会って拓也の情報を得、のぞみの家で待ち伏せ(笑)  向井博士もサンタ姿で合流し、クリスマスの夜に他人の家の居間で大迷惑なビーファイターだが、奥さん、 これは地球の平和を守るアースアカデミアの重大な任務なので黙って部屋を明け渡して我々の指揮下に入りなるべく普段通りに振る舞いなさい。 反抗の意思ありとみなした場合、対ジャマール法に基づき、300万円以下の罰金ないし5年以下の禁固刑に処するものとする。
 方々探し回ってようやくブローチを探し当てた拓也は、鍛え抜かれた昆虫魂によりこの待ち伏せに気付くと、 玄関先にのぞみ宛てのブローチとクリスマスカードだけを置いて逃げてしまい、 まあ回想編で大きな葛藤を乗り越えられても困るといえば困るのですが、引っ張り回した末に開始時点から1ミリも話が動かない展開には、 某『ジバン』の早川&まゆみ編を思い出してしまいます(^^;
 そして、歌謡曲調の挿入歌をバックに物陰で様子を窺いながら、
 「メリークリスマス……のぞみちゃん」
 と呟いて去って行く拓也が、凄く、変(笑)
 早く、外部から昆虫魂を強制注入しないと、このまま廃人になってしまうのでは。
 繋ぎの回想編にしても、拓也と絡むゲストの少女に『ビーファイター』らしいテーマや要素を与えるぐらいの事はしても良かったと思いますが、 ペットに犬を飼っているというだけでこれといって工夫は無し。……なんというか、 季節が冬に入ったので昆虫が出しにくいという、クライマックスで炸裂する恐るべき罠。
 ホワイトクリスマスの街を共に寂しくさすらう拓也とシャドーの運命が再び交錯する時、果たして如何なる決着が待ち受けるのか。 次回、最終決戦へ向けて動き出すジャマール、そして、ギガロ本気。

◆第46話「絶望!!重甲不能」◆ (監督:渡辺勝也 脚本:扇澤延男)
 「「「ジャマールホール?!」」」
 地球をまとめて死の星に変える事でセントパピリアを誘き寄せるべく、 存在するもの全てを飲み尽くす究極の次元の裂け目に地球を丸ごと飲み込ませる、ジャマールの最終作戦が発動。 メガオームは自らの生命エネルギーを用いてその核を作り出すと、ギガロとシュバルツにはホール拡大の為のエネルギー集めを、 ジェラにはブラックビートの討伐をそれぞれ命じて、地球へと出撃させる。
 「ゆけ、我がジャマールが誇る、3幹部どもよ」
 そうだったのか……(笑)
 初期は非常に感情的かつ場当たり的な命令で駄目上司の雰囲気が強かったガオーム様ですが、 メガオームにクラスチェンジ後は大物の貫禄と部下を手の平で転がす余裕を見せつつ、時々お茶目をしてみたりと、 なかなか面白いボスキャラになってくれました。ジャマール関係の描写は通してブレ気味なのですが、 今作はヒーローチームの立て直しが主眼だったので、これは仕方の無い所でしょうか(^^;
 そういう点では、ガオーム→メガオームへの変身により、誰も退場させる事なく一旦雰囲気を切り替えられたのは、 巧く機能したと思います。
 また最終作戦ジャマールホールが、明確な関連性の言及は無いものの、 一応ガオームゾーンと関係ありそうな異次元ネタになったのも流れを拾って良かった点。
 「我がジャマールにとって最終手段。ジャマールホールを作り出す事は、ガオーム様も命がけ。――ならば俺も。シュバルツ、 俺は生まれ変わる。よりガオーム様のお役に立てるよう、究極の合成獣へと」
 上司の意気に覚悟を新たにしたギガロは、至高の配合遺伝子をシュバルツに撃ち込ませる事でアルティメットギガロへと更なる進化を遂げ、 配色が紅白に。道中ブレた所もありましたが、決戦間近に同僚の手を借りてパワーアップするという、 ジャマール幹部はどこまでも仲良し路線。メガオーム様や不穏分子であるブラックビートも含めて、ジャマールは最終的にはなかなか、 まとまりのいい悪の組織になったと思います。
 ここに来ての大幅モデルチェンジによるギガロ最終決戦仕様も雰囲気を盛り上げてくるのですが……よりによって、 デザインにカニが混じっているのが凄く不安です(笑)
 その頃、一足先に地球へと向かっていたジェラは、ブラックビートと間違えて拓也を襲っていた(おぃ)
 そこへ目撃情報から拓也を追い詰めていた大作と舞が駆けつけ、勘違いに気付いたジェラは退却。拓也に職場復帰を求める大作と舞だが、 拓也は 昆虫魂の禁断症状に苦しんでいた ブラックビートの誕生に重い責任を感じ続けていた。
 「俺には……正義の戦士の資格はないんだ……」
 あくまでも悪いのはジャマール、と自分を納得させようと努力していたものの、 どうしても体が戦いを拒否する……と震える手を見せる拓也。
 これまで、「正義とは何か?」という部分には自明のものとしてテーマ性を置かずに来た今作ですが、ここで、 “自分の正義と表裏一体の破壊者”が現れる事で、ヒーローの孕む暴力性が抉られると同時に、 誰しもが持っている“自分の中の汚い部分”を主人公が目の前に突きつけられる、という展開。
 ブラックビートという形を取った人間の負の面を、揺らぎの少ない主人公であった拓也がどのように乗り越えるのかは、 楽しみにしたい所です。
 超存在であるセントパピリアが全生命の中からわざわざ拓也とシャドーに注目しているというのは無理を感じる流れではあったのですが、 ブラックビートを生命の負の要素の純粋抽出と置く事で、ミクロからマクロに重ね合わせる形になるのか(その点では、 拓也が先行してマクロとミクロを重ねすぎている感はありますが)。
 「俺はもう、お前達の仲間じゃない。ビーファイターじゃないんだ!」
 拓也は走り去ってしまい、悪い事にギガロとシュバルツが破壊活動を開始。ギガロが街を無差別攻撃し、 その際に生じる破壊エネルギー(と何かもやもやしているけど、人々の恐怖の感情?)をシュバルツが回収。止めに入った大作と舞だが、 昆虫パワーを吸い取られてしまい重甲解除、変身不能に。この危機にグルが乱入して一旦退却は相変わらず都合良く適当で、 グルの扱いは最終盤までどうにもなりませんでした(^^;
 「セントパピリアは……」
 その頃、羽を片手に秘境探検隊みたいになっていたシャドーは、今度こそ本物を見つけたジェラと激突。一方、 唯一起動可能となったビーコマンダーを扱える拓也を改めて捜し回っていた大作と舞は、再びジャマールの破壊活動に遭遇し、 生身でギガシュバに立ち向かう事に。
 「たとえ重甲できなくても……」
 「俺達はビーファイターだ!」
 必死に立ち向かうも幹部2人に一方的に嬲られる中で、同じ扇澤脚本という事もあってか、 シュバルツがマッチョ兄貴に言及したのは細かく良かったです。
 「動かない……体が、言うことを聞かない……。…………どうして俺に戦える? 一緒に戦う資格がある? 平和の敵、 ブラックビートを生み出してしまったこの俺に」
 これを物陰から見ていた拓也は、ジャマールの破壊行為に巻き込まれて怪我をした少年の叫びまで聞いたにも関わらず、 震えながらその場を逃げ出してしまう……!
 調子に乗ったギガシュバからジャマールホールについて聞き出した大作は、全滅寸前の状態からメガヘラクレスを召喚し、 オートパイロット、役に立つ。
 メガヘラクレスの砲撃を受けてギガシュバは撤退し、ここに向けて狙い澄ましたというよりは作ってしまった設定を拾ってみたという感じですが、 九死に一生を得る大作と舞。
 「ビートマシンは重甲しなくちゃ動かせない。でもこいつは、オートパイロットモードで動かせるんだ」
 「ありがとう、メガヘラクレス」
 「……しかし、これが限界だ。重甲も出来ない……ビートマシンも使えない。メガヘラクレスがあっても、 必殺のメガビートキャノンは撃てない。そんな俺達に、どう地球を守れってんだ!」
 即座に限界を指摘する事で、全面的に戦闘が茶番にならないように一応フォローを入れましたが、 やはりオートパイロットで動かせるようにしたのはまずかったのでは……? 感が強く漂います(^^;
 「拓也……どこへ行ったの?」
 どうせ居なくなるなら契約書に拇印を押してくれればビーコマンダーが新たな戦士と再契約できるのに、と思ったのか思わなかったのか、 その名を呟く舞だが、地球に残された唯一の昆虫戦士である甲斐拓也は、フラフラ歩いていた所をトラックの運ちゃんに拾われていた。
 「顔色真っ青だぜ? どうかしたのか?」
 「……仲間を……見捨てた」
 ここで拓也に、内心の葛藤だけではなく、ヒーロー失格の行動を自覚的に取らせた事で、 失意の拓也を追い詰めていく物語が、非常に締まりました。どうしても心の問題が本人の取りよう次第になってしまう所で、 それを具体的な行動に反映させる事で(助けを求める少年の叫びを聞いたのに応えられないシーンがまた効いている)、 誰の目にもわかりやすくなったのは、とても良かったです。
 「回れ……回れ……。全ての歯車よ……このガオームが、セントパピリア――永遠の命を手にする、 その時へと向かって」
 更にこの流れから、小刻みに場面転換をして主要キャラクターの姿をそれぞれ見せていったのは、 最終決戦手前の雰囲気が出て良い演出でした。……それなりに役に立ったギガシュバに対して、 ブラックに負けて岩場でヒクヒクしているジェラの扱いだけ酷かったですが!(笑)
 そしてカメラは再び舞と大作に戻り、拓也の捜索に使っている三人一緒の写真を手にしながら、 舞は拓也と共に過ごしてきた日々を思い返す……と、総集編で舞分が足りなかったと思ったのか、舞が入ってからの拓也回想。
 「大丈夫。拓也はどこかで元気にしてるよ」
 「うん……」
 前回ラストで使われた昭和歌謡風挿入歌が流れる中、写真を胸にかき抱く舞だが、 その拓也は完全に死んだ目になって逃避行の真っ最中であった…………
 昭和歌謡系メロディ・降りしきる雪・お台場の夜景・拾ってもらったトラックの助手席でプルプルする拓也・雪の中をどこかへ走り去るトラック・輝いていた頃の3人の写真
 が次々と映され、そのままつづく!
 このラスト1分、やり切った演出で物凄く面白かったです(笑)
 挿入歌の使い方を前回のラストに重ねてきた事もあり、OPクレジットで名前を確認しているにも関わらず、この1分間、 すっかり三ツ村演出を見ている気分になってしまいました(笑) 気分は『特捜ロボジャンパーソン』第36話。
 まだローテ入って3年目ぐらいの時期とはいえ、どうも『ビーファイター』(メタルヒーローの現場?) と相性の良くない感があった渡辺監督ですが、今回後半は良かったです。
 物語としても、時間をかけて拓也の彷徨を描き、そこへジャマールの今度こそ最終作戦発動を重ねる事で深刻な危機をうまく煽り、 予告も含めて最終決戦手前の溜めとしてはかなり盛り上がってきたので、次回の爆発に期待。また前回今回は、 要素としては存在しているのだけど、正直ノイズな所があるセントパピリアを無理に出そうとしなかったのも、 焦点が散らばらず良かったと思います。
 ……――いよいよ近づく地球最後の時、果たして、昆虫魂欠乏症になった拓也は戦う意志を取り戻す事が出来るのか?!
 「大きな虫が、飛んだり跳ねたりしている……あはは……大きい! カブトムシかな? いや違う、違うな。 カブトムシはもっと、ばぁーって動くもんな!」
 次回、シュバルツも本気。

◆第47話「勝利への復活!!」◆ (監督:渡辺勝也 脚本:扇澤延男)
 「思いたくない……信じたくない……あの子達にも明日が無いなんて」
 「そうさせない為に拓也を探してるんじゃない」
 すれ違った子供達の姿に決意を強くする、というのは『ビーファイター』らしい振り。
 その頃ジャマールでは、前回役立たずだったジェラがお仕置き光線を浴びていた。
 「ぬぁぁぁ!! 奴の首を獲らぬ限り、このジャマールに貴様の居場所はない! 忘れるな」
 ガオーム様の声がちょっと裏返り気味なのは、焦りの現れでしょうか。
 ちなみに、シュバルツ−アルティメットギガロ−ジェラ、が並ぶと、配色が、白−白赤−赤、になるのは、狙っているのか偶然なのか。 今回のエピソード内容もあり、色彩からも3幹部の結束が更に高まっているように見えます(笑)
 「ガオーム様がきつくおっしゃるのも、おまえの腕を信ずればこそだ、ジェラ。落ち込むな」
 倒れたジェラの肩をぽんぽん叩いて励ますギガロ(笑)
 「ギガロ……」
 君ら本当に最高だな!!
 「ひゃーははははへへへへへへへ。俺は今回のエネルギー集めが終わったら、ジャマールを抜けるよ」
 「「抜ける?!」」
 俺、この戦いが終わったら、死の星になった地球を譲ってもらってそこにメカだけの新世界を作るんだ……とドリームを語って丁寧に死亡フラグを立てるシュバルツ(笑)
 「夢がかなう! あ、夢がかなう!」
 「俺は、ガオーム様への忠誠心を証明する為に」
 「私は、ジャマール一の腕自慢の意地をかけ」
 それぞれの志を胸に、地球へ向けて出撃していく3幹部。
 「影として生まれたこの俺が……光に取って代わる、その為にも」
 一方、音楽性の違いから脱退した元幹部も、フワフワと荒野を彷徨いながら、 セントパピリアを手に入れて元気になるんだ……と命がけのドリームに最後の希望を託してすがっていた。
 そして、荒野をさすらう男がもう一人。
 (俺は、遂に街からも逃げ出した。誰とも、何者とも、もう関わりたくない。昆虫たちが、命ある者達が、眠りにつくという。俺も、 ここで長い眠りに……)
 夢も希望も失い、昆虫魂の燃え滓となった拓也は路傍で野垂れ死のうと倒れ込むが……これ、 カブトムシの魂に同調しすぎて、越冬できない体質になっているだけでは。
 ビーコマンダーに不備は無い!!(力強く)
 だがその時、地面に体を投げ出した拓也は、不審な光とジャマー達の姿を崖上に目撃。そこで目にしたのは、 ジャマールホール核へ投射する為にエネルギーを溜め込んだ、貯蔵タンクであった。拓也はこのタンクの場所を、 匿名でアースアカデミアへと連絡する……。
 「……罠じゃないんですか、なんかの?」
 「確かに、名乗りはしなかった……しかしだ。どうして私が、仲間の声を忘れるか!」
 「「拓也!」」
 ここの向井博士は、これまでで最高に格好良かったです。
 「行こう!」
 主題歌インストもばっちり決まり、タンクの場所へ向かった大作と舞は、荒みきった拓也と再会。……にしても、 前回ラストでトラックに乗せられていた割には首都圏に戻ってきてるし、匿名で電話した割には現場で待っているし、 どうにも拓也の行動は中途半端(^^;
 そこはせめて、日本海ぐらいまで行こうよ拓也!!
 ……まあ、日本海まで行った後、(やっぱりこの時期、海に身投げは寒いな……)と、 1週間かけて徒歩とヒッチハイクで首都圏まで戻ってきたのかもしれませんが。
 「私も大作も、とっくに諦めてたんだ昆虫パワー。でも、捨てちゃ駄目なんだよ希望って!」
 「絶望の底であがくのも、そこから這い上がるのも、そいつ自身の意志の問題なんだ! 握ってくれ……もう一度これを」
 「言った筈だ! 心も体も、言うことを聞かないんだって」
 「いつまでそうやって逃げ続けるんだ、自分から!」
 信じるべきは、心や体じゃない、内側から響いてくるマッスルの声だ!
 「お前達に何がわかる!」
 とうとう、大作を突き倒して渡されたコマンダーを投げ捨ててしまう拓也。そこへ街でギガシュバが暴れているとの連絡が入り、 大作と舞はエネルギー奪還を急ぐ事に。
 「俺と舞は必ず昆虫パワーを奪い返す!」
 「取られちゃったのは私たちのミスなんだもん」
 「てめぇで播いた種は、てめぇで刈り取らなきゃな!」
 二人は生身で警護のジャマーに突撃していき、響いてくる戦闘の音に悩める拓也。
 「……俺は、自分から逃げてるだけなのか? 奪われたものを、大作たちは命がけで奪い返そうとしている。 俺はそこまで必死になったか?! ただ街から逃げ、宿命から逃げ、そして自分からも…………俺は…………もう逃げはしない!!」
 戦意を取り戻した拓也は生身アクションで二人を助け、大作と舞は昆虫爆弾でタンクを破壊。 部分的にエネルギーをジャマールに回収されるも、昆虫魂を取り返す事には成功する。
 「俺に必要だったのは、逃げずに立ち向かう事だったんだ! 俺が……俺の遺伝子が、あのブラックビートを生み出してしまった事は、 事実だ。しかし、いや、だからこそ奴をこの世から葬るのも、俺自身じゃなきゃいけなかったんだ」
 奪われたら奪い返せ、責任を取る為に殺れ、例え百万の味方が死んでも、敵が全滅すればこちらの勝利だ!
 それが昆虫魂のジャスティス!!
 「俺はもう二度と、こいつを手放さない。行くぞ!」
 うーん……前回・前々回と、失意の拓也の彷徨を時間取って描いた割には、単に自分から逃げていたというだけの結論で、 拍子抜けする復活。
 繰り返し、拓也とシャドーを“光と闇”と表現してきたので、拓也が抱いた力を振るう事への恐怖を、 自分自身の暗黒面を見つめて乗り越える事で、力とは結局、使う者の意思次第である、というテーゼに着地させたのかとは思うのですが、 そのきっかけが「仲間との絆」一本だったのは、説得力不足。
 特に、「科学と昆虫魂」「自然と命」「子供を守るヒーロー」という、 今作で中心になっていた要素が全く活かされなかったのはガックリで、拓也が迷いを抱くという展開自体は良かっただけに、 そこから『ビーファイター』的なものの集大成に繋がらなかったのは非常に残念でした。
 描写の一貫性や伏線の積み重ねにはこだわりの薄い作品ですが、最終盤に来て、まとまりの弱さが出てしまい、今作ならでは、 という形に固まりきらず。
 1エピソードでは(当たり外れは別に)非常に物語の積み重ねを大事にした脚本を書く扇澤さんですが、 全体の流れをまとめていく作業はまた勝手が違うのか(^^; 今作では安定して良エピソードを送り出していただけに、ここで、 宙返りを決めるも着地したのが隣のマットだったみたいな解決になってしまったのは期待外れだったと言わざるを得ません。
 かくして甲斐拓也が昆虫戦士として復帰し、街で破壊活動を繰り広げるギガシュバの前に並ぶ3人。
 拓也が大作と舞を助けた際ジャマーには生身で立ち向かっていたので、 仲間の為に戦えるようにはなったけど変身にはまだ恐怖がともなうのかと思ったら、ここもあっさり変身(^^;

「ブルービート!」
「ジースタッグ!」
「レッドル!」
「「「重甲・ビーファイター!!!」」」

 主題歌入れて盛り上げてくるのですが、拓也の彷徨がらみは、これといって面白くない形で落ち着いてしまいました(^^;
 復活した3人のビーファイターとギガシュバが激突し、シュバルツはバトルモードを発動すると、 自身のボディを武装パーツと強化融合させたシュバルツタンクの姿に変わる。
 「新しい世界の誕生だ。俺がメカ帝国の帝王になるのだ〜。生き物は全て生臭い。一匹残らず消してやる」
 狂気を前面に押し出すシュバルツに緑&赤が立ち向かい、青はアルティメットギガロと対決。
 「ガオーム様に刃向かうものは、このギガロが地獄送りにしてやる!」
 「どうしてそれほどガオームに忠誠を誓う?」
 「それが、俺の生き方だからよ。ただひたすら尽くし抜くのだ!」
 一方ジェラは再びブラックビートとまみえ、ガオームの目的はセントパピリアにしかなく、 何もかもその踏み台に過ぎないと煽られるが、裏切り者の言葉に耳を貸す気は無い、と否定。いざ切り結ぼうとした時、 耳をつんざくジェット音が木霊する。
 「ビートマシン……! ま、まさか、ギガロ達に何か?!」
 ホント仲いいな!
 「俺は死なない! メカは永遠よ」
 絶大な防御力を誇るシュバルツタンクだったが、クワガタタンクとテントウジェットがまさかの合体攻撃「「ファイヤークラッシュ!!」」を炸裂させ、 「お、俺は……永遠なのだぁ〜っ!!」と言い残して大爆発。
 シュバルツ自ら巨大戦闘兵器に、という展開はインパクトもあって面白かったのですが、どうにも動かしにくかったのか、 映像的にはもう一つ冴えないまま終わってしまいました(^^; 予算的な問題が色々あったのか、 タンクに向けたカメラがなんか不自然に遠いし……。
 残されたギガロはビーファイターとの決戦に挑むも、情け容赦なくノルマキャノンが炸裂。
 ここも対決の構図はある程度盛り上げてきているのですが、とにかくメタルフォーゼすると動けなくなってしまう為、 折角のハイパー化がファイナル勇者キャノンの予備動作にしかなっていないのが、残念。
 だが、これまで数多の敵をオーバーキルしてきた勇者キャノンの直撃を受けてもなお、立ち上がるギガロ。
 「まだまだ……貴様等を倒すまでは、俺は死なん……俺は死なん」
 その忠誠心を崖上から嘲笑するブラックビートだが、その時、ジャマール要塞が地球次元に姿を見せる。
 「見ろ! ガオーム様は、我ら部下を見捨てたりはしない」
 「ふんっ、そうかね?」
 「ギガロ……貴様の忠誠心、とくと見せてもらった。その命、大いに役立たせてくれるわ」
 だが、ジェラの期待とは裏腹に、ガオームは非情にもギガロの生命力をエネルギーとして吸い尽くし、 倒れたギガロは段階的に元の姿に戻ると、最後は骨になって死亡。
 「ば、馬鹿な……」
 ガオームの行為にショックを受けたジェラは、海岸線に戻るとがっくりと膝を付く。
 「そんな……己の体まで改造して、尽くし抜いた、あのギガロから……」
 「仲間の命だろうと利用し尽くす。それがガオームなんだ!」
 ここに来て、ラスボスの非情さに幹部が疑念を抱くという形で、 ジャマールはあくまで真面目な覇権主義集団として植民地ビジネスを展開しているのであって、 組織内部における倫理観がしっかりと存在しているという点が強く浮き彫りになり…………今更ですが、 もしかして『炎神戦隊ゴーオンジャー』のガイアーク3大臣って、ジャマール3幹部が多少影響を与えているのでしょうか?
 宮下さんが5本とはいえサブライターで参加していますし、仲良し路線とか、この辺りの線引きなど、妙に通じるものが(笑)
 「力を貸そう。ガオームを見限ったこのジェラが、今、この時より、おまえに」
 「ジェラ……」
 腹痛でシャドーの姿に戻った黒にジェラは手を伸ばし、海をバックのキラキラ演出で、手を握り合うジェラとブラック。
 最近扱いがおざなり気味だったジェラが面白いポジションに収まり、まさかのヒロイン度が急上昇(笑)  驚天動地のジャンプアップで、ヒロイン不在の昆虫荒野に、今、真紅の毒の花が咲く?!
 一方、拓也の職場復帰を喜ぶビーファイターだったが、メガオームが姿を見せ、エネルギー充填完了により、 地球を飲み込む巨大な次元の裂け目――ガオームホールが出現する事を予告する。
 「俺達は負けない」
 「希望は捨てない」
 「それがどんな脅威であろうと、命を我が物顔で操る貴様の企て、俺達ビーファイターが必ず叩き潰す」
 期待していた拓也の復活劇に関しては正直がっくりでしたが、ジャマールサイドの3幹部仲良し路線は極まって、妙に面白い事に(笑)
 ギガロの忠臣ぶりは特にアピールされていなかったので唐突ではありましたが、 狩られる側の存在からガオームの力で復讐を果たした恩義と思えば納得が行く範囲ですし、 マッチョを失って元々の狂気が拡大していくシュバルツ、蔑ろにされていたジェラの思わぬ変転と、それぞれの存在が活きました。
 ジェラがブラックに手を貸すのもやはり少々強引ではあるのですが、 同僚の復讐の為にブラックの力を利用しようと考えているならこれも頷ける範囲ではあり、 突如誕生したブラック傭兵コンビの行く末は楽しみです。
 次回――確かにタンク爆発時に白い光が転がってはいたのですが、予告の映像が凄まじい。そしてこの最終盤に、 どうしてそのサブタイトル(笑)

◆第48話「不滅合体走る首」◆ (監督:三ツ村鐵治 脚本:扇澤延男)
 扇澤さんまさかの3連投。
 ジャマールホール完成が迫る中、あくまでいつも通りにパトロールへ向かう舞。
 「わかってるもん私にだって。今更パトロールなんかしたって、無駄な事ぐらい。でも何もしないでただ破滅の時を待つなんて、 やだもん」
 あーでもないこーでもないと考えて足踏みするよりも、とにかく行動し続けようとする舞を学者組(一応、大作も含む)と差別化し、 その舞が茂みから伸びるケーブルの束と遭遇。舞が落としたビーコマンダーからの悲鳴を聞いた男2人が街で目にしたのは、 次々と人々をさらっていくケーブルの束、そして……それを操るシュバルツの首だった!
 拓也と大作は重甲し、シュバルツは物体X状態で逃走すると、マネキンとドッキング。 シュバルツがウェディングドレス姿やランドセル背負った小学生になるというギャグが挟まり、 それらを片っ端から躊躇無くぶっ飛ばしていく青と緑がなんとなく酷い(笑)
 その戦いをシャドジェラが目にし、シャドーの制止を振り切ってシュバルツを助ける為に乱入するジェラ…… 本当に仲良し。
 「生きていたのだなシュバルツ!」
 「メカは死なない。ネジ一本、歯車一個になっても永遠に不滅よ」
 2人は揃って逃走し、最終的に振り袖姿に落ち着いたシュバルツに招かれたアジトでジェラが目にしたのは、狩り集められた人間達 (舞含む)と、箱物家電その他の機械類の数々であった。
 「やっと完成したのだ〜。こここそ、このシュバルツ率いる、メカ帝国なのよ〜。あははははは」
 「これが、貴様が夢見たメカ帝国だと?!」
 「そうよ〜。全ての民よ心に刻め! メカが生き物どもに服従する時代は終わった! 今こそ、我らメカ自身が、 世界を動かすのだ〜!! ……大きな声出して驚いたかい我が帝国の民アドルフ。あは、なんて可愛いんだペティ! うふ。ふぅ、 怖がらなくてもいいんだよ〜、スージー」
 物言わぬ冷蔵庫やラジオに次々と話しかけ、既に狂っているシュバルツの姿が描かれるのですが、以前にイカリボンバ2のエピソードで、 捨てられた粗大ゴミ達に魂が宿っていた事を踏まえると、シュバルツの“自分だけの王国”の背景にある、 捨てられた者達の怨念というのは、命を燃やし尽くした執念である昆虫魂の鏡写しのようにも見えます。
 「どうだジェラ、どいつもちょっと無口だが、素直ないい奴ばかりだろ。うわはは」
 「シュバルツ、おまえ……」
 帝国臣民の為に人間から機械油を搾り取ると宣言したシュバルツにより、ジェラはその試運転と称して油絞りマシンに放り込まれ、 油断と優しさから大ピンチに陥るというヒロインスキルを発動!!
 そしてそれを助けに、超格好良くアジトに駆け込んでくるシャドーーー!(笑)
 「おまえを死なせはしない。共にガオームを見限った、仲間ではないか」
 「ジェラを返せぇ!」
 ジェラをマシンから助け出したブラックに迫るシュバルツの、もう何もかもわからなくなっている感が凶悪ですが、 2人の男に奪い合われるというジェラのヒロイン力のハイパー化が留まる事を知りません。
 そしてここで、狂ったシュバルツに殺されそうになる&シャドーに危機を助けられる事で、 前回時点ではシャドーを利用しようという考えでもおかしくなかったジェラが、 シャドーに対して恩義と戦友意識を持つようになると運んだのは、良かった部分。 逆にシャドーの方がジェラの事をどう考えているかはわかりませんが、もうこうなると、どう転んでもジェラはおいしい(笑)
 「ジャマールの中の人間関係、どうなっちゃってるの?」
 折角囚われてみたのに一向にヒロイン力が上昇する気配が無い舞ですが、アジト内部のシーンで、シュバルツの異常についてなど、 映像に重ねた説明台詞が多かったのは残念。
 「搾り取るならやーっぱり、人間の、油!」
 ブラックビートはジェラを連れて撤退し、ダメージを負うもテンション高く復活したシュバルツは太めのおばさんをマシンに投入。 一方、シュバルツを追っていた男2人は目撃情報を入手し、山腹に、物凄く巨大な、石像が。
 工事現場の作業員がごく自然に教えてくれるのですが、地元では、当たり前すぎる名物なのか。
 青と緑はアジトの強襲に成功し、舞はおばさんを救出。マシンを止めたら、 油分の少し絞られたおばさんが痩せて出てきたらどうしようかと思いましたが、さすがにそんなネタは突っ込んできませんでした。
 「あぁ〜……マリアンヌぅ……! よくもぉ……よくも我がメカ帝国の可愛い民達を! 許さん! ずぇったいに許さぁん!」
 にしても、軽くアクションも入ったけど、この振り袖の中身は、石垣さんなのでしょうか(笑)
 マネキンのボディを捨てた怒りのシュバルツは、ブルドーザーと合体。
 「貴様等ぁ! マリアンヌを、スージーを、ペティを、よくも踏みつぶしてくれたなぁ! 貴様達も同じ目に、ぺっしゃんこにしてやるぅ!」
 怒りのマシン帝王に対し、ビーファイター、筋力でこれを食い止め、押し返す! 趣向を凝らしたバトルで、久々にマッスルが大活躍。 更にパルセイバーでブルシュバルツを粉々にするビーファイターだが、シュバルツは巨大石像と合体し、不滅合体シュバルツオーに。
 これに対してノルマキャノンを放ったビーファイターは、弱った隙にビートマシンを発進。 シュバルツの巨大ロボ化という飛び道具を用いながら、ここできっちりビートマシンの見せ場となるメカ決戦を入れてくれたのは良かったです。 ビートマシンは次々とシュバルツオーに攻撃を放ち、そして――
 背後で流れる挿入歌の
 今こそー メガビートフォーーメーーショーン!
 の所で地平線の向こうからメガヘラクレスがやってくるのが非常に格好いい。
 陸の王者だ メガメガメガメガ メガヘラクレース!
 「そんなもので倒せるか俺を……メカは永遠の命。葬る事などできんのだぁ!」
 狂乱の舞踏を続けるシュバルツオーだったが、必殺のメガビートキャノン直撃で大爆発。地元の名物は木っ端微塵に砕け散り、 大気圏脱出速度に達したシュバルツの首は、そのまま地球の軌道を巡る衛星となるのであった……。
 「俺は死なない……メカは死なないのだ! 死にたくても……ネジ1本になっても……永遠に死ねないのだ……」
 永遠の命を求めるガオームと対比する形で、メカの永遠性を執拗に口にしていたシュバルツは、 “死なない存在”から“死ねない存在”へとニュアンスを変え、最後までユーモラスながらも、一抹の悲哀を漂わせる姿でリタイア。
 最終的に、元来抱えていた狂気の部分がより前面に押し出されるという形になりましたが、 メカの永遠を謳いながらも“最高のアニキ”であるマッチョは唯一無二である事を知り、それでいながら、むしろそれ故に、 自らを永遠の存在であると思い続けなければいけなかった矛盾は、狂気へ到達する他なかったのかもしれません。
 にしても今回繰り返されたこの台詞はどうしても、
(完全破壊しろ。部品一個この世に存在させるな。 その為に俺は生まれたんだろ)
(『特捜ロボジャンパーソン』第15話)
 を思い出さずにはいられませんでした(笑)
 シュバルツは前半は手探り感がありましたが、中盤ぐらいから千葉繁のブレーキが無くなってきたのにスーツアクターの演技も噛み合ってきて、 遊び心の強い印象的な悪の幹部となりました。
 ギガロに続いてシュバルツを撃破したビーファイターは、舞情報によりジャマールが内部分裂を起こしている事を知り、 そこに付け入る隙があるかもしれない、とにわかに活気づく。
 「私たち、まだ絶望じゃないよね!」
 一方、ジャマールホール拡大を続けるガオームは、己の体を襲う異変に動揺していた。
 「馬鹿な……この痛み、この苦しさ。我が寿命の限界、思ったより早いのか。ジャマールホールの完成を急がねば。 それには更なるエネルギーが。――奴だ! あいつを使ってそのエネルギーをかき集めてやる。もう一度吠え面かかせてくれるわ、 ビーファイターめ。ふふふふふふはははははは……」
 “永遠の命”というのは確かに恐るべきものなのですが、 ラスボスの目的が最終盤でかなり唐突に“永遠の命”になるのはどうしてもスケールダウン感が否めず、 またその入手方法が割と希望的観測に基づいているというのが、何とも苦しい所(^^;  ついでに“地球の命運”もかかっているので大問題に違いは無いのですが、やはりガオーム関連の伏線の少なさは足を引っ張ってしまっています。
 また、氷河期作戦の頃からガオームの問題とブラックビートの問題のスケール感が噛み合っていないのがクライマックスの盛り上がり不足を生んでいるように思えるのですが、 そこで2人の目的を重ねたら、ガオーム様の方が小さくなってしまったという……。
 それなりに光る要素がありつつ、そこそこのアベレージでここまで来ていただけに、最終盤、 噛み合わせたい歯車の歯の長さがちょっとずつ足りていないのが、なんとも惜しい。
 次回――老師グルに迫る危機? そして、ヒドラなのにクモ女とはこれいかに。

→〔その9へ続く〕

(2017年3月31日)
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