■『重甲ビーファイター』感想まとめ6■
“勝利への片道切符を 強く握りしめ……
誰もが知らない終着駅へ 未来を信じて!”
ブログ「ものかきの繰り言」の方に連載していた『重甲ビーファイター』
感想の、まとめ6(31話〜36話)です。文体の統一や、誤字脱字の修正など、若干の改稿をしています。
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- ◆第31話「危ないお嬢さま」◆ (監督:三ツ村鐵治 脚本:浅香晶)
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CGによって描かれた理想の美女、巷で噂のコンピューターマドンナは、舞の友人・白鳥美鈴にそっくり。
「ガオーム様、次の侵略作戦は、これでございます!」
「なんだ、それは?」
叩き上げの幹部がアイドルのポスター片手に走り込んできても一応話を聞くガオーム様は、
巨大化に合わせて堪忍袋の容量も大きくなったのか、序盤に比べるとかなり器の大きい上司路線に。
ギガロは合成獣マスクーダーを地球へ放ち、人間の姿で蛇丸美容クリニックを開いたマスクーダーが、
その能力で次々と訪れる女性を理想の美女――美鈴と瓜二つの容貌に変えていく。だがそれは美貌を餌に人間を釣る、
あくまで作戦の第一段階。マスクーダーに美女の仮面を貼り付けられた人間は、なんと洗脳されて人間爆弾となってしまうのだ!
美鈴のお嬢様エピソード含め、序盤コミカルな雰囲気から、同じ顔を氾濫させて人間社会に混乱を招く的な作戦かと思っていたら、
人間爆弾を都内の重要施設に向かわせ、一斉に起爆する同時多発テロを狙うという、有効かつ凄惨な作戦に。
舞と美鈴はマスクーダーのアジトを発見するも捕まってしまうが、マスクーダーがサンプルとした美女顔そのものである美鈴の容姿を利用し、
人間爆弾と勘違いさせて反撃に移る、というアイデアは悪くなし。
特別面白かったというわけではないですが、浅香脚本としては破綻が目立たず(要素の詰め込みすぎがなく)、
軽い単発エピソードとしては、ほどほどレベルの出来。難を言えば、屋敷を出る事を制限されている筈の美鈴が、
ビーファイターよりも先に街に溢れる自分と同じ顔に気付く所ですが、この辺りもう一つ、お嬢様設定そのものが活かしきれなかったのは残念。
次回、異次元漬け物屋に一目惚れする老いらくの恋、てこれはもう、扇澤脚本の予感が全開……(笑)
扇澤脚本と老人男性の相性があまり良くないのが気になる所ですが、さてどう転がりますか。
- ◆第32話「恋する漬け物!!」◆ (監督:渡辺勝也 脚本:扇澤延男)
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今回の迷台詞。
「地球人を、漬け物にさせはしない!」 (甲斐拓也)
アースアカデミアに市民から、街の風景を撮影していたら奇妙な光景が映っていた、というビデオが届けられる。
そこに映されていたのは、和服姿の老婆が、背中に背負った樽の中に人間を吸い込むという恐るべき映像であった。老婆の正体は、
次元から次元を渡り、その次元の土着生物を漬け物にして好事家へ売りつけている、異次元漬け物屋・ババンバ。
ババンバの漬け物樽の中身を確認しようとするビーファイターだが、よってたかって老人をいじめていると誤解を受け、
通りすがりの義侠心厚い丸川繁造老人にババンバの身許をかっさらわれてしまう。
若い頃に妻を亡くし、身よりも無く長く一人暮らし……という丸川に関する情報収集のやりとりを、
にこやかに河川敷を自転車で走る老人カップルの図に声だけ被せる、というのは面白い演出。
「うちはどこだい?」
「流れ者に、うちなんてあるかい」
「寂しい暮らしをしてたんだなぁ、あんたも」
ババンバの態度に一度はへそを曲げる丸川だったが、花を愛でるその姿に、ときめきゲージが急上昇。
「どうも、俺、あんたに、一目惚れ、しちまったみたいだな」
そして、いきなりの告白(笑)
丸川が席を外した隙にババンバの身柄を確保したビーファイターは、脅迫により漬け物にされかけていた人間を救出。
別の次元へ立ち去ると告げるババンバだったが、社長命令でやってきたジェラが今回も《交渉》スキルを発揮して儲け話を持ちかけ、
まんまと乗せられたババンバは拓也を樽に吸い込んでしまう!
拓也を漬けて逃げるババンバ、それを追う大作と舞、ババンバに熱烈アタックを仕掛ける丸川が入り乱れ、恋と狂気が大混線。
「もう俺はびびったりしねぇ。本気で肚決めたからよ。てめぇと夫婦(めおと)になるってな!」
「このわけのわかんない爺め!」
ババンバの正体を見せられても怖じ気づかず、腹に膝蹴りを決められながらも追いかけ続ける丸川。
「お、お、俺と夫婦にー!」
凄く、タチの悪いストーカーです。
異世界から来た女性に恋をした男が……というプロット自体はよくある物なのですが、
その男女が老人になるだけでファンタジー感が凄まじく薄れて見えるのは、私の偏見なのか(^^; それはさておくにしても、
一体このエピソードはどこへ向けて見せようとしているのか。
「ブルービート甲斐拓也は間もなく死ぬ。漬け物地獄で悶え苦しみながらなぁ!」
ババンバの漬け物樽に封印を仕掛けたジェラは、嫌すぎる死因を宣告。
「この樽一つしかないんだ、あたしには……封印されたら、もう漬け物が作れなくなる。この樽は、あたしの命なんだぁ!」
地球産甲斐拓也漬け@濃厚な昆虫魂の味わい、で大儲けという話の筈が、ジャマールに利用された事を知るババンバ。
更にジャマール戦闘機が出撃し、「これがジャマールのやり方なんだ!」と緑が叫ぶのですが、
普段のジャマールはどちらかというと部下を使いこなす系の組織なので、現地雇用のアルバイトを使い捨てる今回の作戦は、
むしろ“らしくない”為、かなり粗雑(^^; 更に、甲斐拓也の大ピンチに、ブラックビートが何の反応も示さないというのが、
致命的に雑。
部屋にこもって新技の特訓でもしていたのか(^^;
「守り抜く、あの樽は、儂が守り抜いてみせるぞぉ!」
戦闘機の爆撃に巻き込まれた樽めがけて、丸川老人が愛の火薬ダッシュ。
「見ろ。爺さん、あんたの為に命がけなんだぞ!」
「なぜ信じる気持ちを、心を持とうとしないの!」
ここで、舞を掘り下げたゴルゴダル回を踏まえているのは悪くないのですが、基本的にそれどころではないので、凄く困ります。君ら、
一般市民の老人が爆撃の雨に飛び込んでいるのを、放置するな。
「守ってやっからよ。この樽が、てめぇの命なら、俺の命はてめぇなんだからよ」
「あんた……」
だが丸川は愛の力で樽の確保に成功し、その勇姿にほだされてしまうババンバ。
「守るんだ。樽も、樽の中の拓也も」
「あの二人の命も」
ビーファイターはようやくビートマシンを召喚し、かつてない扱いを受ける主人公。
「あたしなんかの為に戦ってくれているのか。こんな樽、あたしにはもういらない」
「ババンバ……」
「探してたんだ。本当はずっと探してたんだ……落ち着ける場所を、心を許せる相手を。それが今やっとこの地球で」
「そうよ。旅の終わりをてめぇは見つけたんだ」
二人は協力して石を叩きつけて樽を破壊し(封印とは何だったのか……)、拓也は浅漬け寸前で復活。
3人揃ったビーファイターがメガビートフォーメーションを発動してジャマール要塞を撤退させ、流浪の旅の末、
命同然だった樽の代わりに、自分の居場所を選んだババンバは、丸川老人と平穏な生活を手に入れるのであった。
社会に疎外感を抱く者達の共感と、静かに暮らせる此処ではない何処かを探す旅の終わり、という物凄く扇澤ワールドで、
何かを得る為に何かを失う事を選び、閉じていた世界から抜け出すという過程がヒーローの復活と逆転に繋がるというクライマックスもそこまで悪くない筈なのですが、
とにかく全体的に話運びが雑(^^;
そしてこの、執拗に感情移入を拒む造りは、一体どういう狙いなのか。
例えば、丸川とババンバの年齢を動かさないにしても、
そこにメインキャラの心情を寄せたり応援する理由を劇的に作る事で視聴者に感情移入のフックを与える手法はあるのですが、
意図的にそれを避けていると思われ、なんとも困惑するエピソード。
- ◆第33話「正義の非行少女」◆ (監督:渡辺勝也 脚本:宮下隼一)
-
表向きは不良の更生施設とされているサバイバルスクールは、実はジャマールが運営しているものだった。
スクールに潜入した舞はそこで、以前ハイキング中に揉めた事のあるヤンキー・岩田(演じるのは、宇宙で一番餃子を愛する天火星)
と再会。厳しい訓練の中で反目しながらも交友を深めていく2人だが、舞はジャマールの目的が、
闘争本能を引き出し操る意識操縦装置により、見所のある地球人を戦闘傭兵にする事だと突き止める!
スクールの長官役は恐らくジェラ役の方の顔出しで、遂に、傭兵現地調達。
拓也達に通信する舞だがそれがきっかけで潜入がバレしてしまい、岩田に外への連絡を頼んだ舞は他のスクール生徒達を逃がそうとする……
夜中、ジャマールの陰謀に気付いて意識操縦装置に爆弾を仕掛ける舞
↓
舞、現れたシャドウに敗北
拓也と大作、連絡が途切れたので突入するも洗脳済みのスクール兵士に攻撃を受ける
ジェラに見つかった岩田、意識操縦装置を使われ、怪人化
↓
夜が明けて、舞、岩田怪人と戦う羽目に
まだスクール兵士と戦っている男2人
↓
舞の仕掛けた時限爆弾が爆発して破壊される意識操縦装置
↓
洗脳が解除されるスクール兵士
…………え?
継続型の洗脳装置なの?(目的考えると物凄く効率悪い)
そして、舞は何時間後に爆発をセッティングしたの?
百歩譲って爆弾の時間は余裕を大幅に見積もったとしても、時系列で考えると、
岩田は間近に爆弾カウントダウン中の装置で洗脳された事になり、状況設定が酷すぎます(^^;
そしてビーファイターの潜入に気付いたのに、大事な装置に仕掛けられた時限爆弾に気付かないジャマールも間抜けすぎます
(逆説的に、だから時限爆弾の設定はそこまで余裕を持たせないのが普通となるわけで)。
撮影の都合により、強引に夜が明けてしまう、というのは時折ありますが、90年代としてはあまりに杜撰ですし、
一つ狂ったら全体が大幅に崩壊してしまいました(^^;
岩田の変身したナイトバイカーは割と格好良かったのですが、ブラックビートがわざわざシャドウの姿で闖入したのも特に意味が無かったですし、
色々と粗雑。渡辺監督は前年には『カクレンジャー』でローテ入りもしていた筈なのですが、
明らかに繋ぐ順序がおかしくなっていて話も無駄にとっちらかっていて、うーん……。
トドメに、ナイトバイカーを洗脳していたバイクを破壊して岩田が元に戻ると、
一言もなくジェラとブラックビートの姿が消えて大団円モードに入ってしまい、唖然とします(^^;
ここ数話、バラエティモードの単発エピソードの出来がいまいちで、物の見事に中だるみタイムに突入しているなぁ……。
- ◆第34話「コワ〜いペット」◆ (監督:坂本太郎 脚本:鷺山京子)
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ギガロは怪しいペット屋のオヤジに化けると、NASAが宇宙で見つけたと称して、毛むくじゃらの生物モジャを子供達に配り歩く。
だがモジャの正体は、攻撃を受けると相手の意識を奪うという別次元の生物であり、
ペット屋の言う通りにモジャを叩いて躾けた子供達が次々と意識を吸い取られてしまう。ギガロの真の狙いは、
子供達の意識を宿したモジャを合体させた怪物モジャンガをビーファイターと戦わせる事。モジャンガは、
吸い取った意識の望みと正反対の現象を起こす能力を持っているのだ!
「助けを求める子供達の願いを逆に利用して、ビーファイターを封じ込めるのが今回の作戦だ。どうだ、手も足も出せまい!」
子供達がヒーローを応援すればするほどヒーローが苦戦する、というなかなか嫌らしい作戦で、ギガロが頭脳プレイ。
唯一モジャを叩かなかった為に意識が吸い取られなかった少年にモジャを見せられた大作は、「可哀想に。
お前達もジャマールに利用されてたんだな」とモジャと心を通わせ、その助けを借りてモジャンガの意識の中へ。
大作は変な扮装(バイキングのイメージ?)になったギガロおじさんと生身バトルを展開しながら、
囚われの子供達にビーファイターを応援してはいけない事を告げ、焦るギガロの動きから内部のコアにダメージを与える事で、
子供達の意識の解放に成功。
「ギガロ……子供達の純粋な気持ちを弄びやがって、許さねぇ!」
新挿入歌でメガヘラクレスが発進してジャマール戦闘機部隊を蹴散らし、特殊能力を発揮できなくなったモジャンガは……容赦なく粉砕、
てあれ、「可哀想に。お前達もジャマールに利用されてたんだな」ではなかったのか(^^;
都合よく元のモジャに分裂して子供達の手に戻りましたが、このオチだけ凄く雑だったのは残念。
まあ地球の技術だとモジャを元の次元に返せないので、なし崩し大団円しか無かったのでしょうが。
ここ数話の中では、可も無く不可も無いけど大きな穴も無い、という水準レベルの出来で、
不思議生物との交流を軸にしていつもながら文法の綺麗な鷺山さんらしい一本。
次回、新たなる昆虫戦士?!
- ◆第35話「カブト君まいど」◆ (監督:坂本太郎 脚本:宮下隼一)
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白いビーファイターとでもいった見た目で、微妙な関西弁を操る陽気な異次元調達屋カブトが地球次元を来訪。
道行く人々に気さくに声をかけ、意外に平然とスルーされている……と思いきや、ジャマール怪人と間違われ警察に追われる羽目に。
「いったいなんやねん、ジャマールって」
そのジャマールでは、シュバルツが人間の持つ好き嫌いという感情を操る作戦を発動し、自ら背中に装置を背負って出撃すると、
好き嫌い逆転ビームを発射。このビームを浴びた人間達は、新婚旅行へ向かうカップルは喧嘩別れし、泥棒と警官はワルツを踊り、
塾で勉強していた子供達はゲームセンターへ向かい……と大混乱。
警察からの連絡により、新たなジャマール怪人……と誤解されたカブトを探し回っていた拓也達は、
逆転ビームの効果により人々から声援を送られるシュバルツと遭遇し、ビーファイターに変身。
「出たな、お笑い3人組」
というのが恒例の文句になったようですが、明らかに3幹部を示すギャグになっているのは、果たしてアドリブなのか(笑)
シュバルツを止めようとするビーファイターだが、逆転ビームの効果により人類の敵と認識されたビーファイターに、
鉄パイプやナイフを振りかざして襲いかかる人々。
物凄くさらっと取り出すのですが、地球次元では、侵略者ジャマールの襲来にいつでも対応できるよう、
市民レベルでの自衛意識が日に日に高まっているのです。
自らの命と財産を守る為、鉄パイプぐらいは当たり前!
ビーファイターは守るべき市民に逆に襲われ、その光景を目にした通りすがりのカブトは、
ジャマールが人類の味方でビーファイターがその敵だと誤解すると、売り込みの為かそこに参戦。
「スーパーデリシャスキック!」などを放ち、案外強い。
戦闘中、シュバルツに素性を明かしたカブトは邪険に追い払われるが、そこに「俺にはそんなセコい作戦は関係ないが、や、
やっぱりちょっと気になるからちらっとだけ地球へ行こうかなぁ……た、拓也の為じゃないんだからね?!
この前みたいに知らない内に漬け物にされたら困るだけなんだから!」とやってきたブラックビートが現れ、
ぶちまけられた営業鞄の中に入っていた封印ぐるぐる巻きの大型の銃に反応。
時同じくして久々登場のグルが、そして自衛意識の強い市民達に一方的に叩きのめされているブルービートもまた、
この銃に反応する……それは、次元の覇者、真の勇者のみが撃てるという伝説の銃。
何かに導かれるかのように伝説の銃を手にするブラックビートだったが、トリガーを引いた途端に体中に衝撃が走り、使う事が出来ない。
「わかったぞ……この俺の血を騒がせながら拒む……持ち主がわかったぞ!」
ブラックビートはカブトを蹴り飛ばして銃を強奪し、一方、ビーファイター3人はひたすら市民に袋だたきにされていた。
いくらビーファイターが反撃できないとはいえ、決定的な逃亡を許さずに包囲戦術で的確に追い詰めていく市民が恐ろしく強く、
これだけ地球次元の一般市民の練度が高いなら、前回ジェラが、傭兵を現地調達しようとしていたのも頷けます。
「トドメだ……お笑い3人組!」
だがそこへ、とうとう挿入歌をバックに割って入る、働きたい時にしか働かない男。
「き貴様ぁ、邪魔はさせんぞ!」
「邪魔などせん。俺は俺の獲物を狩るのみ」
ブラックビートは久しぶりに、スキル:《格好良く言えば何でも許されると思う》LV5を発動し、
精神判定に負けたシュバルツは思わず納得。
「ゆくぞ、ブルービート! 次元の覇者、真の勇者を決めてやる!」
どうやら、キャッチコピーが気に入ってしまったようです。
「これは俺の……ブラックビートの銃だ。今こそそれを証明してやる」
一方……
「銭や、銭もらわんと!」
カブトが台詞とは裏腹にやたらヒーローぽい演出で瓦礫の下から復帰し、この戦いの場へ商魂たくましく駆けつける。
再び引き金を引いたブラックビートはやはり銃に拒絶されて派手に自爆し、そこへ飛んでくる老師グル。
「邪心ある者に、その銃は撃てん!」
「あ、あんた?!」
「……カブト?!」
目を合わせるカブトとグルの関係は前半の台詞で示唆されており、これは衝撃の展開でした(笑)
グルの姿を見てようやく状況を理解したカブトはブラックが落とした銃を拾うが、またも奪い取られてしまい、ブルーvsブラック、
久々の正面対決。
(呼んでる……俺の銃が、勇者の銃が)
幾つになっても男の子を刺激するフレーズに内心で盛り上がるブルービート……というか、拓也とシャドウの関係を考えると、
ブラックビートがこの銃にこだわっている理由はそもそも、拓也の男の子のロマンなのかも。
両者は激突し、懲りずに銃を撃とうとして、またも盛大に自爆するブラック(笑)
そしてブルービートは、ブラックビートの手を離れた伝説の銃を遂にその手に掲げる。
「俺の、勇者の銃。――ビートイングラム!」
ブルービートに直接、逆転ビームを撃ち込もうとするシュバルツだったが、新兵器ビートイングラムで撃ち返され、
装備を壊されて撤退。かくして人々の逆転現象も収まるが……そこへ、カブトが登場時に知り合ったゲストの少年が、
不仲だった両親が仲直りしたのにまた仲が悪くなった、と文句を言いに現れる。
これはなかなか面白いひねりだったのですが、いっけん喧嘩しているように見える両親は、実はどちらも子供の為を思っているんだよ、
と拓也が諭して子供が自ら両親の間を取り持ち、さらっと解決。これはこれでアイデアストーリーとして広げたら面白そうだったのですが、
今回に関しては、子供ゲストを出す縛りで出したような感じで、ほぼ脇道扱い。
もしかしたら、好き嫌いビームと家族ネタのアイデアストックが先にあって、新兵器登場エピソードにそれを活用した、
という形だったのかもしれません。
「ばいばいカブト、お父さんと仲良くしてね」
少年は笑顔で去って行き、拓也達は背中を向け合うグルとカブトに視線を動かす。
「100年前に家出して、久しぶりに帰ってきたと思ったら、このざまだ。わしゃ情けないわ」
「言うとくけどな。俺はあんたに会いに帰ってきたわけやないで」
「この親不孝者、ふん!」
「ほっといてんか!」
前半にさらっとカブトとその父親との不仲が示されているのですが、この親子関係は予想外すぎて面白かったです(笑)
既存キャラクターと繋げる事で突然の新兵器持ち込みの都合の良さを和らげる効果も出ましたし、
超然として何でもありだった老師に人間味が出たのも良し。まあ、老師の何でもありの都合の良さを親子2代に分散した、
とも言えるのですが、そもそも今作、老師の使い方に工夫が無かったので、これは良かったと思います。
- ◆第36話「見よ重甲超進化」◆ (監督:坂本太郎 脚本:宮下隼一)
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見所は、向井博士の入浴シーン(おぃ)
ブラックビートは前回の乱入をガオームに叱責され、ギガロは打倒ビートイングラムの為に合成獣ガガモスを地球へと送り込む。
一方その頃、アースアカデミアでは百年単位の親子喧嘩が続いていた。「カブトが100年前に家出」という、
ヒーロー物とはいえ普通誰かツッコみそうな所に全く誰の興味も向かない辺り、昆虫戦士達の適応力の高さが改めて異彩を放ちます。
「とにかく、俺はこんなヒゲオヤジ、父親とは思うてないの」
アースアカデミアを出て行くカブトにグルとの仲直りを進める拓也達だが、カブトは光の球に姿を変えると姿を消してしまう。
そして取り残された年寄り2人は、ひとっ風呂浴びていた。
「しかしなんというか、いつの時代も、親の心子知らずというか……儂にも、覚えがある。うんうん。本当は、期待しとるんだろ〜。
カブトを、跡継ぎにと。んー?」
「……背中でも流そう」
向井博士は出番もそれほど多くないですし、あまり細かく設定にこだわって描かれていないのでしょうが、割と年齢不詳(笑)
調べたら、演じる笹野高史は、当時47歳(!)。60と言われてもあまり違和感ないですが、
台詞もそのぐらいの推定になっていないか(笑)
カブトの前にガガモスが現れ、息子に迫る危機を感知したグルは風呂場からワープするとカブトをカバーリング。
「地球が征服されたら、母さんの墓参りができんぞ、カブト」
「知っとったんか!」
不仲の父が居る地球次元をカブトが訪れた理由が明かされ、雪解けする親子だが、
相手の攻撃を吸収して反撃する能力を持ったガガモスの前にグルが思わぬ大ピンチに陥ってしまう。
カブトはビーファイターを呼びに飛ぶがその間にグルはガガモスに吸収されてしまい、グルは自ら知性を捨て、
ただの巨大なカブトムシになる事で、情報漏洩を阻止。
ギガロはガガモスを街で暴れさせ、またも大破壊に見舞われる市街。もう何回目かわかりませんが、
一般市民達が武装を強化していく事に激しく納得です。
駆けつけたビーファイターはカブトの協力を得てガガモスに立ち向かうが、
インプットマグナムやスティンガーブレードを吸い込まれてしまう。ビートイングラムの光線すら吸収したガガモスは、
そのエネルギーにより、それらの武装を肉体に取り込んだ成虫ガガモスへと変貌。何故か走り去ったガガモスを追ったビーファイターは、
倉庫の中に転がる巨大なカブトムシを発見するが、それはギガロの罠であり、迫り来る火の手!
「行け、カブト! グルを助けろ!」
「せやけど……」
「グルはおまえの父親であり、俺達ビーファイターの生みの親でもあるんだ!」
ここで老師グルを改めて物語の中に落とし込んでくるのですが、転がっているのが、本当に巨大なカブトムシ(ピクリともしない)の為、
なんだか凄い絵のシーンに。
カブトはグルを抱えて脱出し、その涙でグルは復活するが、そこに迫るギガロの攻撃。ビーファイターもガガモスに歯が立たず、
かつてない窮地に追い込まれる5人。怪人がオーバースペック気味に強く、切り札のグルも既に消耗、
と新兵器登場の次の回でヒーローを徹底的に追い込む展開で盛り上げてきたのですが……
「許さないジャマール!!」
いきなり立ち上がるブルービートの周囲に揺らめく昆虫エナジー。
「俺が、インセクトアーマーが、ブルービートが、進化、成長する……」
ここまでやって、グル親子の物語などとは一切関係なく、ただ怒りのエネルギーでパワーアップ、
という物凄いがっくり展開。冒頭のビートイングラム試し撃ちシーンで、「なんだか眠っている真の力が、
俺の成長で引き出されそうな気がする」的な発言はあるのですが、拓也の精神的成長に焦点が当たっているわけでもないので、
ただ単にマジックアイテムを手に入れて今までの経験値でクラスチェンジしました、というだけの話になっており、
パワーアップ回としては非常に残念な出来。
「メタルフォーゼ!」
話の出来とは裏腹に、追加武装がついてフルアーマー化したスーパーブルービート自体は格好いいのですが、
背中に大きく翼を展開すると3割増しぐらいで格好良く見える理論の力なので、
激しいアクションを捨てに行っている感じなのが気になります(これで立ち回りもこなしたら凄いけど)。
ブルービートのスーパー化により、微妙に寸詰まりだった勇者の銃がバレル展開してパルセイバーと合体、
ファイナルモードになると一撃で蛾を粉砕し、緑と赤、棒立ち。
それを覗き見していたブラックは「父親か……」と、思わせぶりな台詞と共に姿を消すが、ブラックビートの父親は、ガオーム、
という事になるのか……?
かくしてビーファイターは最大の窮地を乗り越え、カブトはグルと共に母親の墓参りをすると、調達屋を辞め、
地球次元を守れる戦士になる為の修行の旅に出ると宣言。レッドルはグルの奥さんがモチーフだった、という衝撃の事実が明かされ、
つづく。
物語に都合のいい情報提供キャラやジョーカーキャラには、“どうやって愛嬌をつけるか”がポイントになるのですが、
もはや遅すぎたものの、グルにその愛嬌をつけたのと、そこに向井博士を絡めて使ったのは、良かったと思います。
そちらへ合わせた焦点が、肝心のパワーアップと全く繋がらないという、エピソードとしては非常に残念な事になりましたが(^^;
また今作の流れとしては、「拓也だけが真の勇者」である理由も「拓也だけがスーパー化する理由」も非常に薄いので、
その点を全く補強できなかったのも、辛い所。敢えて言えば、最も昆虫の声に身を委ねているのが拓也ではあるのですが。
……拓也、最終的に、ブルービートの姿から元に戻れなくなるのでは。
メガヘラクレスもブルー1人で動かせるようですし、本格的に緑と赤の存在が軽くなってきたのはさすがにだいぶバランス悪いので、
なにか今後フォローが入ってくれるのは期待したいです。この辺り、玩具展開や予算の都合もある問題ではありますが、
むしろ隊長が別格扱いだったにも関わらず、部下2人もマイナーチェンジレベルとはいえスーツ強化された
『エクシードラフト』は偉かった(お金があった?)なと思ってみたり。
次回――その人の中身、雷忍ワイルドでは。
→〔その7へ続く〕
(2017年2月20日)
(2017年3月31日 改訂)
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