■『重甲ビーファイター』感想まとめ5■
“無敵のあいつが真剣になる
今こそ メガ・ビート・フォーメーション”
ブログ「ものかきの繰り言」の方に連載していた『重甲ビーファイター』
感想の、まとめ5(25話〜30話)です。文体の統一や、誤字脱字の修正など、若干の改稿をしています。
戻る
〔まとめ1〕 ・ 〔まとめ2〕 ・ 〔まとめ3〕 ・
〔まとめ4〕
〔まとめ6〕 ・
〔まとめ7〕 ・ 〔まとめ8〕 ・ 〔まとめ9〕
- ◆第25話「美しき逃亡者!!」◆ (監督:石田秀範 脚本:鷺山京子)
-
一撃で日本全土を破壊する威力を持つ、超エネルギー砲デスガオームの開発に関わる科学者ラーラがジャマール要塞から逃亡し、
シュバルツは戦闘メカ・ダンガーをその抹殺に向かわせる。故郷の次元に助けを求めるラーラの通信を傍受したビーファイターは、
ダンガーに襲われていたラーラを助けるが、地球にはラーラの求める次元移動装置は存在しないのだった……。
ジャマールからの逃亡者が、地球次元のテクノロジーレベルを誤解している、というのはちょっと面白かった要素。
ラーラの態度を見るに、次元移動装置は多次元世界では割と標準的な技術のようですが、これは、「地球次元人……闘争本能が肥大し、
兵器技術だけが異常に進化した危険な種族……!」みたいな感じなのか(^^;
「勝手な女だと思ってるでしょうね」
日本はデスガオームで消し飛ぶの待ったなしだけど、それはともかく私を故郷の次元に帰らせろ、
と一方的に主張した事に関して一応反省するラーラを、優しくなぐさめる拓也。だが、メガビートフォーメーションの事を知ったラーラは、
調整中だった絶対許さねぇセイバー(青)を奪い、ジャマールとの取引材料にしようとアースアカデミアから姿を消してしまう。
見た目が地球人女性と変わらないので油断したのでしょうが、さすがにアースアカデミア、無警戒すぎ。この辺り、
ジャマール野郎どもは絶対に許さねぇ! から、舞の加入→ゴルゴダルの件を経て、
異次元人の多様性をビーファイターが認識するようになった、とはいえますが。
「僕は君が悪人だとは思わない。ただ帰りたいという気持ちに負けて、自分自身を見失っていたんだ」
絶対許さねぇセイバーと引き替えに故郷の次元に帰ろうとするラーラだが、あっさりと裏切られて消されそうになった所で、
それを跳び蹴りで助ける拓也。
地球を救うのは、科学と筋肉の融合だ!
「ふふふふふふ、はははははははは。パルセイバーよりも、そんな女を選ぶとはな」
そこへ横から出てきて絶対許さねぇセイバーを拾うブラックビートの、ドサクサ紛れ感とお呼びでない感が物凄い(笑)
「僕が憎むのは、心の弱さじゃない。その弱さにつけこみ、真心を踏みにじるジャマールだ!」
実に正統派ヒーローの拓也は重甲し、ブルーvsブラック、緑&赤vsダンガーというマッチアップ。
「これじゃ攻撃できないわ」
「どっかに隙がある筈だ」
腕についたトゲを、几帳面に横を向いてから飛ばす、というこだわり仕様のダンガーの弱点は、
正面ではないでしょうか。
結局ダンガーは、トゲを飛ばした直後に隙があるという事で、二人のスティンガーコンボで撃破。
刻一刻とデスガオーム砲の発射が迫る中、ブラックビートに追い詰められていたブルービートだが、
ラーラが生命エネルギーを集めて放った指輪ビームが直撃し、情けなく吹っ飛ぶブラック(笑)
遂に、一般人にやられてしまいました(^^;
追撃でスティンガードリルを受けたブラックは、デスガオーム砲のエネルギー充填を確認すると、「これでおまえも終わりだ。
この手でその首取りたかったがな」と捨て台詞を残して逃亡(笑)
まあ、日本丸ごと吹き飛ぶ威力なので仕方がないですが、情けなさの加速が止まらなくて時空連続体を切り裂いてしまいそうです。
絶対許さねぇセイバーを回収したビーファイターは、メガヘラクレスを中心に青緑赤のビートマシンが合体する、
メガビートフォーメーションを発動。必殺のメガビートキャノンが火を噴くと、
放たれたデスガオーム砲を押し返して砲台の破壊に成功し、ジャマール要塞は撤退するのであった……。
予告のカットから期待していた合体攻撃ですが、胴体後部を開いたメガヘラクレスの上にビートマシンが単純に乗るだけで、
いまいち格好良くありませんでした(^^; エネルギーが連動しているような描写も薄いですし、もう少し合体感が欲しかったです。
特に今作、ここまでメカ描写が良かっただけに、残念。
そしてラーラは、冒頭で送っていた救難信号が無事に届いて故郷の次元からの迎えを受け、
3人はそれを見送るのだった……というオチなのですが、別離シーンの拓也とラーラの表情や仕草を見る限り、
拓也を救う為に指輪に全生命エネルギーを込めた(そういう台詞あり)ラーラが、本当は死ぬのを誤魔化して去って行こうとし、
拓也も最後にそれに気付いた、という描写に見え、かなり渋い演出。
エピソートとしてはそれほど面白くなく、拓也とラーラのロマンス要素もかなり強引だったのですが、
二つの解釈を可能とするラストの描き方は良かったです。
次回、「アースアカデミアに、突然大作の親父がやってきた!」。
- ◆第26話「蟹と水着と親父」◆ (監督:坂本太郎 脚本:浅香晶)
-
You count the medals 1,2 and 3 Life goes on Anything goes Coming up OOO!
(番組違う)
メガヘラクレスを発見し、メガビートフォーメーションにも成功して一息ついたビーファイター。そんな折、アースアカデミアに突如、
大作の父親が乗り込んでくる。
「さあ! 儂と一緒に帰るんだ!!」
漁師を継ぐのを嫌がって4年前に家を飛び出したきりの大作をようやく見つけ、連れ帰ろうとする大作父なのですが、
初対面の向井博士に「なんだ〜、このタコオヤジ!!」と罵声を浴びせ、口が悪くて不器用な父親、を飛び越えて、
ただのゴロツキです。
また現在の仕事を聞かれた大作が言葉を濁すのですが、ビーファイターは公認ヒーローなので、
険悪とはいえ親に隠す理由がさっぱりわかりません。
大作父の機嫌を直す為に何故か向かったプールでは大作が泳げない事が発覚。
大作父はプールでは特に何も悪い事をしていない他人の子供を「親の言う事を聞くのが当然!」
と叱って頭を鷲掴みにした上にそれに文句を言われると「子供が子供なら親も親!」と怒りだし、頭が固くて身勝手な父親、
を通り過ぎて、もはや警察を呼んでも許されそう。
子供に自分の願望を強制しようとする親、というのは、ままある反面教師的キャラクター像ではあるのですが、
年長者(多分)にも敬意を払わない・他人の家でもお構いなし、とただの笑えない非常識人となっており、
身内の親というゲストキャラクターの描写としては、率直に首をひねります。
ギガロの生み出したエビカニ怪人がプールを襲い、大作は特に躊躇わず、父親の前で重甲。……だから何故、先ほどは言葉を濁したのか。
植物に関わる仕事をすると大見得切って家出をしたのに今はビーファイターやっているから言い出しにくかった、
とかあるのかとも思ったのですが、ラストまで見ても特にそういう心理には触れられず。
なお父親はビーファイターを知らないという事にされましたが、今更、ちょっと田舎の漁師は知らない、
という事にするのは悪手も良い所だったような。
水への苦手意識からジースタッグがまともに戦う事が出来ず、カニの攻撃を受けてウォータースライダーを流される青と赤。
ヘドロ攻撃の実験に成功したエビカニ怪人は退却し、首都圏の水源を次々と汚染していく。
「どうだブラックビート、俺の見事な作戦は」
「他人の家を汚して、その住人を追い出そうという作戦など、俺の美学には合わんな」
「ふん、ワルに美学もへったくれもあるか」
ブラックビートに「美学」と言わせてしまったり、ギガロに「ワル」と言わせたり(地球人から見て侵略者である事と、
ジャマール側の自覚はまた別の筈)、この短いセンテンスにNGワードを二つも突っ込んでくる手並みは逆に凄い。
「親父の押しつけの生き方には従わない! 俺の道は俺自身で決めるんだ!」
プールでの役立たずぶりを槍玉にあげられ、強引にビーコマンダーを取り上げられる大作だが、毅然として出撃。
ビーファイターがカニを捜索している間に、博士が一応、大人の説得タイムを行うのですが、効果ゼロ。
ところが大作父は、カニの反応が地元の海辺で発見された事を知ると咆哮して飛び出していき、
よその水源がどうなろうと知ったこっちゃないけど自分の故郷が汚されるのは許さない、と身勝手な印象だけがどんどん強くなっていきます。
青と赤が戦闘機と戦っている間にカニを倒そうとする緑だがその前にギガロが立ちはだかり、無謀にもカニに立ち向かう大作父。
「ここは儂と大作の海だ! 大作が帰ってきたら、二人で漁に出るんだ! ずっと、ずっと楽しみにしてきたんだ!」
「親父……」
「そんなにこの海が好きなら、ここで死なせてやるだぎゃぁ!」
何故か、ダイナマイトを積んだ漁船に乗せられて、沖へ流される大作父(^^;
大作は父親を助ける為に恐怖を乗り越えて海へ飛び込むのですが、海洋汚染を引き起こす作戦そっちのけで、
船へ向けて懸命に泳ぐ大作をぼーっと見ているカニ、という深刻に間抜けな映像。
「見ててくれ親父、俺の戦いを!」
無事に父親を助けた大作は再び重甲し、ビーファイター合流。
セイバーマグナムの熱湯ビームで甲羅を柔らかくしてからレイジングスラッシュでずんばらりんし、
ジャマールの海洋汚染大作戦は阻止されるのであった。
一応親子が和解して終わるのですが、「泳げるようになったし、しばらくビーファイター活動は認めてやる」というレベルであり、
樹木医としての大作は1ミクロンも認められていない(そもそも、その話が出てこない)という、
夏のバラエティ回にしても酷すぎるエピソード。
演出段階でもう少しどうにかできなかったのかと思う所ですが、浅香晶が出てきた途端に、
物語の軸すら消し飛ぶ――今回で言えば、親子の葛藤の要点は「泳げる」か「泳げない」かではない筈な上に、
父親が何も反省しないまま大作が一方的に歩み寄る構造になってしまっている――ので、概ね脚本が悪い気がします。
EDが変更され、メガオーム・ブラックビート・メガヘラクレスなど追加。
- ◆第27話「甦るトラ刈り魂」◆ (監督:坂本太郎 脚本:扇澤延男)
-
再生怪人に、どうして今作ここまでワーストクラスのエピソード登場のイカリボンバ? と不安を誘う次回予告だったのですが、
坂本演出と扇澤脚本が思わぬ化学反応を起こし、変な面白さがひたすら最後まで加速し続けて面白いという快作。
街にイカリボンバ2が出現し、出撃するビーファイター。
「奴はこの手で確かに」
と言って出てくる回想シーンがビートマシンによるで粉砕で酷い(笑)
ビーファイターは全く同じ戦法(マグネットによる吊り上げ→カブトとクワガタのビーム砲で撃破)で2代目をスクラップにするが、
バラバラになった2代目は、なんとその場で再生。そしてすかさず自爆。また再生。
「イカリボンバ2は何度でも自爆を繰り返すのだー。貴様等を粉々にするまでな〜」
初代同様、喋りも動きもコミカルなイカリボンバ2なのですが、死ぬ度に甦ってまた死ぬという、極めて凶悪な仕様。
敵を根絶やし尽くすまで玉砕と再生を繰り返すというのは、ある意味で、目には目を歯には歯を、
昆虫魂には昆虫魂をになっています(笑) ……扇澤さんなので、きっとわざとだ。
「自慢のインセクトアーマー、さて、何回の自爆に耐えられるかな?」
「2回目の自爆、ほらほらいくぞー」
「や、やめろ!」
敵のノリが軽い割に、かなりシリアスに追い詰められるブルービート。
「まさか、俺の獲物のブルービートがこのまま粉々に」
予想外の展開に、視聴者よりも焦るブラックビート(笑)
「あんなガラクタにブルービートは渡さん」
慌てて地球へ急ぐブラックだが、ブルービートは盛大な自爆攻撃を受け、続けて大ダメージ。ところがこの光景に、
今回冒頭からナチュラルに意識の存在を示される、まだ働けるのに捨てられた無念を抱える燃えないゴミ達が、強い興味を示す。
(羨ましい……期待されているこいつが、見捨てられる事のないこいつが……)
そしてその一つであるバリカンが、イカリボンバ2の再生に混ざってしまい、左手に融合。困惑するボンバだが、そのチャンスに、
盛り上がるゴミの山。
(バリカン、おまえに託す!)
(積もり積もった、私たちの悔しさを、涙を!)
(その全てを今、おまえに託す!)
燃えないゴミの山から迸る謎のエネルギー(笑)
無機物が当たり前のように意識を持っていて不思議コメディ時空に片足を突っ込んでいるのですが、
“社会から疎外された者の悲哀”というのは実に扇澤ワールドで、ゴミ達の悲嘆にビックリするほど違和感がありません(^^;
謎のエネルギーを浴びたイカリボンバ2は、左手が巨大なバリカンと化したイカリバリカンとなると、心の声の赴くままに走りだし、
それを慌てて追いかけるシュバルツと、現場に置き去りにされたボンバの本物の左腕を回収するビーファイター。
「ふん、気にするほどの奴ではなかったわ」
ピーピングブラック、ホッと胸をなで下ろして、帰宅(笑)
街に繰り出したイカリバリカンは、次々と道行く一般市民の髪を刈っていき、ブルービートはその妄言から真相を察知する。
「ゴミとして捨てられた事への、怨念だ」
「怨念!?」
「その怨念が、イカリボンバの体に入り込み、奴を突き動かしているんだ」
「バリカンに、怨念なんてあるわけ?!」
美容院に乗り込んだイカリバリカンは、最新式の理髪用具を前に、大激怒。
「俺を見捨てたおまえ等を、俺を錆びつかせたおまえ等を、俺は揺るさん! 自爆!」
「危ない、伏せろ!」
いや、市民を助けろ。
面倒な事に自爆・再生能力は保有したままのバリカンにより、思いっきり吹き飛んで瓦礫の山と化す美容院。
……えーと……店員2人、死んでいませんか(^^;
今回面白かったのですが、ここだけが、どうかと思った部分。不思議時空に片足突っ込んだ坂本演出では、
これぐらいでは人死には出ないのかもしれませんが、ビーファイターに市民を助ける動きがなかったり、
やりすぎでよろしくなかったと思います。
美容院を吹っ飛ばしたイカリバリカンは大作行きつけの床屋を次の標的とするが、そこでは昔気質の店長が、
磨き抜かれた手動のバリカンを愛用しており、それに気付いたバリカンは「幸せ者だな、おまえは……」と言い残して退店。
「なんなの今のあれ? ジースタッグ」
「バリカンだ。……待て!」
「バリカン……?」
敵は7割ぐらいギャグなのに、ビーファイター側の対応が終始シリアスな為、謎の面白さに突入(笑)
「どうして俺に頭を刈らせない?! かなり錆びてるさ、電気じゃないさ、凄く古いさ、それでも俺は、バリカンなんだ」
「ガオーム様、どうかあの大馬鹿者の回収を」
バリカンに生まれた生き様を全うしたいと暴れ回るイカリバリカンだが、シュバルツのお願いに応えてガオームツモされ、要塞へ回収。
こいつどうしよう……と頭を抱えて考え込む、シュバルツ、メガオーム、ブラックビート。あまり途中から作戦に口出しはしない
(物理で手は出す)ガオーム様が会議に参加している姿が妙におかしく、個人的にはこの辺りから、
何やっていても面白くなってきてしまいました(笑)
「ブルービートだけは俺がいただく。それで良ければ知恵を貸すが?」
何かを閃く嫌味エリート。
「い、いや、だ、うーん……だ〜」
プライドが邪魔をする叩き上げ常務。
「シュバルツ」
社長、叱る。
「は! その手とは?」
ブラックのこだわりと一応の知性、シュバルツとの軋轢を巧く処理しつつ、途中で割って入るメガオーム様が素晴らしいマネジメント(笑)
ブラックビートはバリカンの怨念をむしろ強化して利用しようと提案し、今日は機嫌がいいメガオーム様は自らそれを実行。
メガオームのエネルギーを受けたイカリバリカンは、左手のバリカンが更に巨大化した、怨念の化身メガバリカンへと姿を変える。
塗り替え怪人という事でか3段階目の部分変化なのですが、バリカンが徐々に大きくなっていく、
というのが物語のクライマックスへ向けた盛り上がりとも重なり、良いアイデア。
「バリカン、教えてやるんだ貴様の実力を。今まで誰一人として刈る事が出来なかった頭を、
貴様のバリカンで見事に刈れ!」
捨てられたゴミ達の怨念が怪人を暴走させて次々と市民をトラ刈りにしていく、なんてプロットから、
決戦へ向けた格好いい台詞に繋がってしまう扇澤さんの台詞のセンスは、本当に恐ろしい。ブラックビートの、
落ち着いて考えると馬鹿なんだけど台詞回しがやたらに格好いい機能も見事に活用されています。
「俺はバリカンだ。最高のバリカンだ。人間どもに教えてやる。俺に刈れない頭などない事を!」
向井博士がアースアカデミアでボンバの左腕を解析している間、街をパトロールしていたビーファイターの前に姿を見せたメガバリカンは、
左手に鈍く輝く巨大な怨念の刃を打ち鳴らす。
「よし! こいつで刈らせてもらうのは、貴様らのその角だ!」
「「「角?!」」」
「角はインセクトアーマーの感覚中枢だ。失えばレーダーもサーチも、一切使えなくなる」
バリカンで頭を刈る→高難度の頭を刈れ! まではわかる展開として、それがギャグではなく、
意外と有効な狙いだったと転がるのが、今回の面白さ。
「それが狙い?」「それが狙いか!」
「その通り! イカリボンバ2〜、ずっぽりやっておしまい」
ここ数話、3馬鹿トリオを全員出さず、作戦担当+ブラックビートという形で省エネ&出番集中期間なのですが
(3馬鹿のやり取りは面白いけど黒含めて4人出すと台詞が分散しすぎるので、これは良いバランス)、
今回は出ずっぱりのシュバルツが絶好調。千葉さんはアドリブ含めてお任せ範囲も多そうですが、
スーツアクターさんとの呼吸も合ってきた感じで、千葉さん得意の甲高い絶叫とドスの利いた低い声の矢継ぎ早の切り替えが、
狂ったマシンとしてのシュバルツのテンションにもピッタリ重なってきています。
頭部狙いのバリカンの攻撃に苦しむ緑を助けようとする青の前には、黒がお邪魔虫。
「貴様の角だけは、この俺がへし折ってやる」
ここでもしっかり、主題と絡めて洒落た台詞にしてくるのがお見事。
なんとかメカバリカンをセイバーマグナムで粉砕するビーファイターだが、やはり再生。しかしその時、
本物の左腕に起こった反応から、向井博士が再生機能の仕組みを突き止める。イカリボンバ2は、
各パーツが磁力波を放つ事で再結合していたのだった。これを聞いたビーファイターは、ビートマシンを呼び出すと、
いきなりのメガビートフォーメーション。
「撃つなら撃て! 何度でも俺は再生する。そして貴様等の角を刈り、見捨てた人間どもを見返してやる。俺は世界一の、バリカンだぁ!」
対巨大兵器用の切り札かと思われたメガビートキャノンでしたが、怪人1体相手に、容赦なく発射。
遡れば初期宇宙刑事は頻繁に巨大兵器を繰り出していましたが、今後そういう路線で用いていく事になるのか。
「ぎゃははははは〜、この3馬鹿トリオがぁ! 無駄弾撃っちゃって〜。さあ再生しろ、イカリボンバー2ー! …………あら?」
自虐ネタと共に高笑いするシュバルツだったが、バラバラになったメガバリカンは無反応。
ビーファイターはメガビートキャノンを放つと同時に、メガヘラクレスの角から反磁力波を放つ事で再生機能を妨害していたのだ。
ここまでしっかり伏線が積み重ねられていたので、角から磁力が飛び出します、は唐突になってしまって惜しかったですが、これが、
科学と昆虫魂の融合だ!
主題歌まで流れだして勝ち誇るビーファイター……だが!
再生機能を失った筈のバリカンの刃が重苦しく蠢き、そのパーツがじわじわと一つに集まり始める。
「俺は、バリカン……世界一の……」
生まれてきた意味を全うできず、打ち捨てられたゴミ達の無念はそう簡単に消え去りはせず、再び形を取っていく。
どう生きるかを決めるのは、自分自身だ!
「なんて凄まじい執念なんだ……」
「俺は……バリカン……」
科学と昆虫魂の融合がコンセプトのヒーローですが、魂が科学を乗り越えるのも、凄く『ビーファイター』で、
非常に高い納得感があります(笑)
ビーファイターはセイバーマグナムを構え、今度こそイカリバリカンを完全破壊。
「眠れバリカン」
元はジャマール怪人だがそれを突き動かした怨念は人間の身勝手さと欲望が生み出したものだ、という事で、
仕草や台詞にやや情感をたたえる形でトドメを刺し、最後はちょっといい話風味に。
「どうやら勝負はまたお預けのようだな。ブルービート」
「お、お疲れ様でした」
ブラックは格好つけ、シュバルツは慌てて、ジャマール要塞へと帰還。残骸の中に残った錆びだらけのバリカンを拾い上げる大作、
からその古いバリカンを手にする床屋の娘(今回冒頭では、新しい道具に買い換えれば良いのに、
と言っていた)に重ねる形でシーンチェンジ。
「お父さん、そのバリカン、うちで使ってあげようね」
物を大切にする大事さを語る、ビーファイター。
「なんかあったんかい、トクさん。泣いちゃって」
「ねぇよなんにも。ただこちらの3人が、こいつの二代目を届けにきてくれただけよ」
こうしてバリカンは、再び役割のある居場所を与えられ、床屋の机で光を放つのだった――。
ナレーション「見捨てられていたバリカンが一つ、この日、2度目の人生を歩き出した」
……て、無機物なのに、扇澤ワールドに完全に収まった!(笑)
社会の落伍者の諦観と悲哀という、扇澤さんの通しテーマは今作ではかなりマイルドな形で組み込まれているのですが、
それが無機物に仮託される事で比喩として鮮明になり、「物を大事に」というシンプルなテーマと繋がった浄化と再生が綺麗にまとまりました。
台詞回しも冴え渡り、半分ぐらい不思議コメディに足を踏み入れつつ、7割方ギャグの怪人と終始シリアスな展開の戦闘のバランスも良く、
今作ここまで一番の傑作回かも。
――次回、夏の怪談回で炸裂するのは、拓也のモテパワーなのか、それとも、ウラメシエネルギーなのか?!
古くて新しい超次元の世界を、君は見たか!
- ◆第28話「真夏の純情幽霊」◆ (監督:金田治 脚本:宮下隼一)
-
ジェラは異次元傭兵シニガミアンの能力により、幽霊で人間社会を混乱させる作戦を発動。
「今からおまえは幽霊としてジャマールの為に働くのだ」
「冗談やないで! うちにはまだやり残した事が沢山あるんや。おまえ等のいいなりになってたまるか!」
ところが、気っぷのいい関西弁の女子高生幽霊・香に逃げられてしまい、香は、
死神傭兵との戦いで飛び交う煉瓦を受け止める拓也を気に入ると、熱烈なアタックをスタート。
幽霊騒動を真に受けないメンバーに幽霊がなんと言っているか教えろと問われ、「俺の事が、好きだって?!」と驚き、
痛い人扱いを受ける拓也(^^;
先日は異次元人女性の肩に手を置いてナチュラルにナンパしていましたし、大作の目が冷たい。
だがアースアカデミアを幽霊軍団が強襲し、それを退ける為ウラメシエネルギーを発揮した事で香の姿が全員の目に見えるように。
香からデートをせがまれた拓也は、自分たちの戦いは遊びじゃないと撥ね付けてしまうが、訪れた香の家で、
病気がちで若くして死んだ香が、一度でいいから恋をしたいという強い想いを抱えていた事を知る。
一方、アースアカデミアを飛び出した香に接触したジェラは、異次元世界で傭兵をスカウトして回る《交渉》スキルを発揮し、
香を調略。まんまとのせられた香はアースアカデミアに戻ると、ジャマールのアジトを発見したと伝える。
「信用してへんの?」
「いや、僕は信じる」
正統派主人公としての拓也は、ラーラの回も受ける形で、“信じる男”というポジションに収まってきました。
「さっきはごめん。ちょっと言い過ぎた」
「拓也さ〜ん」
「君達はまだ、生きているのと変わらない。その君達を救うのは、ビーファイターの仕事だ」
「仕事……?」
だが、女心には疎かった。
こじれた香は、ためらいながらもビーファイターを罠へと誘い込み、3人は幽霊達に重甲を阻止されると、
ビーコマンダーを取り落としてしまう。更に幽霊達のウラメシエネルギーを吸収して自らを強化する死神傭兵。
このままでは幽霊達は消滅してしまう……ジェラの甘言にそそのかされた事に気付いた香は幽霊達に呼びかけ、
コントロールを脱した幽霊達が3人を助けた事で、ビーファイター重甲。
香以外の幽霊達は、死神傭兵に操られて世間に悪さをしている部分しか描かれていないので、幽霊としてのスタンスがよくわからず、
支配下を逃れた途端に人助け、という流れがもう一つ弱くなってしまいました。そこまで描く時間が無かったのも確かなのですが、
もともと存在していなかった(?)幽霊達の消滅の危機を煽るというのも、何か根本的な所でズレてしまった気はします。
これなら最初から、目に見えない幽霊社会の存在を描いた上で、その幽霊達が怪人の力で強化洗脳されて悪さを……
という展開にした方が良かったような。もしかしたらそういう意図だったのかもしれませんが、描写の不足で扱いがハッキリしない為、
ラストの展開が効果的になりませんでした。
3人が重甲した所で青を倒しにお邪魔虫が登場し、「おまえ邪魔しにくんな」とジェラが怒っている真っ最中に、
更に戦闘機を投入する社長(笑)
メガビートキャノンを使用する為の都合全開で非常にテンポが悪くなってしまい、怪人はおまけ的に粉砕。
幽霊達は手を振って去って行き、拓也は残念に基づいたウラメシエネルギーの強さから最後まで残った香と遊園地デートに。
観覧車の中で姿を消し、拓也一人で下りてくる、というのはなかなか綺麗なオチでした。
後半の盛り上がりに欠けるものの、拓也のキャラクター性は補強され、夏の単発エピソードとしては可も無く不可も無く、
といった出来。そして次回――物語は遂に、ブラックビートの秘密に迫る!
- ◆第29話「ライバル大激突」◆ (監督:金田治 脚本:宮下隼一)
-
「甲斐拓也……ブルービート……あいつを倒し、成り代わらぬ限り、俺は唯一無二の、絶対の存在ではない」
ブラックビートが要塞でひたっていると、そこへごつい機械を担いでえっちらおっちらやってくる3幹部。
「これぞ我ら3幹部が、久々に持てる力を結集、共同開発した、究極の新兵器」
主人公達より先に合体武器を開発するという展開、それを3人で構えている姿、そして台詞、と何から何まで面白すぎます(笑)
「空気圧を自在にコントロールできる、邪空砲だ!」
「これさえあれば、地球侵略はなったも同じ」
「問題はビーファイター相手にどこまで有効かという事だ」
全然、地球侵略、なってない……(笑)
最大の不安を口にした3幹部は、邪空砲をブラックビートへと向ける。
「……まさか」
「奴等と同じインセクトアーマー、実験台にはうってつけというわけだ」
身内の足の引っ張り合いに悪の幹部が合体武器を持ち出す、というのは作品のカラーが戦隊寄りになる中での意図的なパロディという感じがしますが、
この人達はやりそう、という説得力が素晴らしい(笑)
ブラックは邪空砲を撃たれる前に反撃して3幹部を拘束すると地球へ向かい、ちこくちこくー☆と出勤途中の大作を強襲。
救援に向かった舞も時限爆弾トラップにより瓦礫の下に埋もれ、同じく救援に向かった拓也の前には、黒ずくめの男が現れる。
「2人は、今頃、地獄の底だ。あとは、おまえ1人」
「誰だ、誰なんだ?!」
「シャドウ、とでもしておこうか」
と、ここまでは冒頭の3幹部から、生死不明の2人、拓也にも迫る危機、となかなか面白かったのですが、この後延々、
拓也とシャドウが思わせぶりな台詞を交えながら取っ組み合いを続けるシーンが、さすがに長すぎてダレました(^^;
「甲斐拓也、ブルービート、今日こそ、貴様の怒り、喜び、悲しみ、そして戦士としての能力……全てを見てやる、奪ってやる!」
激闘続く中、突然、お仕置きに現れるメガオーム様。
「許さん、ブラックビート。そこまでの独断専行を認めた覚えはない」
「俺はビーファイター、ブルービートを抹殺する為に生まれた。それが誰の意志か、忘れたとは言わせん。俺にはジャマールも、
ビーファイターも、正義も悪も関係ない。俺は俺である為に戦う。戦い続ける! 気に入らぬなら、今ここで、俺を処刑するがいい」
「そこまで言うなら戦え。だが、敗北は死。そやつの首を落とさぬ限り、おまえにも、明日は無い」
再び向き合う両者。
「――戦え、甲斐拓也。光と影、貴様と俺の、宿命の戦いを」
「光と影? 俺とおまえの宿命?」
「俺は貴様を倒す。そうしなければ、俺は俺になれないのだ」
シャドウが5発殴る間に、拓也が1発殴り返す、といった具合で、戦いは徐々にシャドウ優勢に。
(このまま傷の痛みを、死を、敗北を受け入れて何が悪いんだ。何が……!)
そして、なんだか全てが面倒くさくなってしまう拓也。だが拓也は、水たまりでじたばたしている虫や足下に咲く花を見て、
この自然を命を守らなくてはならないと、再び立ち上がる。
正統派ヒーローとして劇中で最も粘り強く最後まで希望を捨てない拓也が、変身不能でほぼ一方的に殴られているにしても、
いきなり弱音を吐くのはかなり違和感で、戦う理由との繋ぎ方もだいぶ強引になってしまいました。
話の流れと演出からすると
ダメージとそれにともなう流血により昆虫魂の汚染が薄れ、正気に戻る拓也 → だが、
そうはさせじと飛来してくる昆虫 → 甲斐拓也、おまえは、最後の最後まで、
こうやってもがいてもがいてもがき続ける宿命なのだっっっっっ ↓
昆虫魂・再注入! (ぴかーん)
に見えるんですが(笑)
再起した拓也に強烈な手刀の一撃を浴びせるシャドウだが、何故かそのダメージがフィードバック。
一瞬の隙をついた拓也は決死の体当たりでもろともに地上へと落下し、傷だらけになりながらも奪われたコマンダーを回収する。
「邪甲!」 「重甲!」
いよいよお互いのインセクトアーマーを纏ってぶつかり合う両者だが、そこへ縛めを解いた3幹部が乱入。
邪空砲により押しつぶされそうになる青と黒だったが、瓦礫の下から筋力で復帰したレッドルが邪空砲を破壊。
コマンダーを取り戻した大作も変身して、3幹部は退散する。仲間を制して一騎打ちを続けようとする青だったが、
黒もツモられてジャマール要塞へと帰還。
「何を企んでいる。この俺に、ブラックビートに何をさせるつもりだ!」
「本当の戦いはこれから始まる。光と影たる、お前達の本当の戦いも、これからだ」
要塞ではメガオーム様が思わせぶりな状況をひたすら煽り、地球では拓也が、互いに負った同じ傷に困惑を深めるのであった……。
「何かが、何かが始まろうとしている……」
果たして、甲斐拓也とシャドウ、光と影の関係や如何に?! と、
1話まるまる使って拓也とブラックビートとの因縁をたっぷり深めたのですが、それ以外に何の内容も無いエピソード(^^;
両者の因縁を深める必然はあったのでしょうが、劇中半分ほど殴り合っているだけなのは、さすがに途中で飽きてきてしまいました。
おまけに、処刑とか宿命とか盛り上げた割には、最終的にガオームツモによる回収で誤魔化してしまい、
大きな話の筋に変化が無かったのもマイナス。布石のエピソードにしても、もう少し、別の事件と絡めるなどしてほしかった所です。
次回――まさかのガオーム様予告乱入で、総集編風味?
- ◆第30話「13怪人大武闘会」◆ (監督:三ツ村鐵治 脚本:浅香晶)
-
メガオームにツモられたビーファイター3人は、第64041回ゴーストゾーン武闘大会に特別ゲストとして強制参加させられる事に。
そこでは、勝ち残った物だけが生き返るという特典を賭けて、13ゴースト怪人が激しい戦いを繰り広げていた!
過去怪人再利用という事で総集編風味なのかと思ったら、過去映像は使わない真っ当なバトルが繰り広げられ、
次々と怪人やビーファイターが1対1の戦いを繰り広げるのは、最強決定戦のような風味があって、なかなか燃えます。
そんな中、大作は、唯一の新規キャラ・傭兵剣士シンバッドと戦士として認め合う事に。
青と赤が自爆攻撃でリタイアし、決勝で対決する事になる2人。
「待て、あんたとは戦いたくないんだ」
「おまえに戦う気がなくても、俺はおまえを倒す!」
「そんなに生き返りたいのか?! 金と出世の為に!」
いや、金と出世関係なく、生き返りたいのでは。
戦闘中、落とした首飾りを拾ったシンバッドは、その真の目的がジャマール内部で出世する事によりガオームに近付き、
侵略された故郷の次元の復讐をする事だと告白。当然それを耳にした進行役のシュバルツはエクストラプレイヤーのデスマルトを乱入させるが、
そこに自爆に耐えていた青と赤も駆けつける。
コンセプトは悪くなかったと思うのですが、ガオームゾーン的な異空間なのに、ふらふら歩いていると対戦相手以外と出会ってしまい、
青と赤も突然やってくるなど、話を成立させる為にゴーストゾーンの設定が“トーナメント戦が成立しない”レベルにぐちゃぐちゃなのが、
勿体ない(^^; ここをもう少しきちっとしたルーリングで組めれば、もっと面白くなったと思うのですが。
「仲間か……しばらく忘れていた言葉だ」
ビーファイターと共闘するシンバッドだが、デスマルトの攻撃で致命傷を受け、最後の力を振り絞って特攻。
デスマルトが爆発した際に生じたエネルギーでビーファイターは通常空間へと帰還すると、
メガビートキャノンでゴーストゾーンを吹っ飛ばし、打倒ジャマールを改めて強く誓うのであった。
色々な怪人を見せるアクションシーンは凝っていましたし、ゲストのシンバッドも格好良く、もう一歩全体が洗練されていれば、
という惜しいエピソード。ゴーストゾーンに呼び込むのを緑だけにすればだいぶスッキリしたと思うのですが、
さすがに青と赤の出番が減りすぎるので、難しかったか……その割に、ラストバトルでは青と赤の出番が無くて首を捻るのですが(^^;
→〔その6へ続く〕
(2016年12月14日,2017年2月20日)
(2017年3月31日 改訂)
戻る