■『重甲ビーファイター』感想まとめ4■


“邪悪な闇に独り立つ 俺はどこから生まれ来た
明けない夜に独り惑う 俺はいつまで叫び続ける”


 ブログ「ものかきの繰り言」の方に連載していた『重甲ビーファイター』 感想の、まとめ3(19話〜24話)です。文体の統一や、誤字脱字の修正など、若干の改稿をしています。

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〔まとめ6〕 ・  〔まとめ7〕 ・ 〔まとめ8〕 ・ 〔まとめ9〕

◆第19話「誕生闇の新戦士」◆ (監督:金田治 脚本:宮下隼一)
 前回から巨大化したメガオーム様、どういう扱いになるのかと思ったら、要塞の屋根が開いてそこから上半身が覗く、 というのは格好いい。
 ジャマール要塞に、ジャマールの伝説的司祭にして異次元世界最大の暗黒呪術士・魔道士ジャグールが招聘され、はしゃぐルンバ。 今回初めて、ルンバに対してキャラクターがリアクションしますが、本当に何なのか、ルンバ(^^; 賑やかしにしては、 ここまで全く活用されていませんでしたが、少なくとも300年前から存在していてジャグールと顔見知りなので、 3幹部より凄いのかもしれないぞ、ルンバ。
 まあ、前回や前々回のやり取りから、ジャマールは割と幹部の出入りが激しい組織のようなので、 数多の幹部の栄枯盛衰を見届けてきた、ジャマールのゆるキャラマスコット的存在なのかもしれません。
 3幹部はメガオーム様から、新戦力導入の為の儀式を成功させよ、と指令を受け、カミキリムシを触媒に何やら呪術を始めるジャグール。 地球では異常発生したカミキリムシが次元の穴に吸い込まれていき、 「カミキリムシたちを助けてくれ」というグルの声を聞いた拓也と大作はその後を追うが、3幹部の妨害を受け、 拓也はジャグールの放った黒いカミキリムシによって手に傷をつけられてしまう。
 リストラ寸前だった3幹部は、これで任務達成という事になるのか……?
 だいぶん甘い裁定という感じになりそうですが、本人達も「もう、俺達、駄目じゃない?」みたいなノリだったので、 物語からの救済策なのか(笑)
 「生まれ出でよ邪悪なる者よ!」
 ジャマールでは儀式が進行し、傷の影響で拓也が藻掻き苦しむ中、ガオーム様が集めた虫エネルギーと呪術の融合により闇の戦士が誕生。 全身黒タイツの影人間が黒いビーコマンダーを構え、「邪甲!」と叫ぶと、 漆黒のジャマール産インセクトアーマーに身を包む!
 「地獄から生まれし破壊と殺戮の申し子よ。おまえのターゲットはビーファイター。ゆけ、奴等を抹殺しろ」
 儀式の終了と共に拓也は回復し、再び確認されたカミキリムシの異常行動を調査に向かったビーファイターは、 カミキリムシの墓標を目撃する。そして現れる、漆黒の影。
 「我が名は、ブラックビート。お前達ビーファイターを、地獄に送る為に、生まれし者」
 目には目を、歯には歯を、虫には虫を――ジャマールの生み出したインセクトアーマーは、恐るべき力で3人を圧倒する! と、 今回は完全に新キャラ登場編で次回へつづく。アクションも最後に少しだけで、ちょっと物足りない初登場なのですが、 今回も引き続き麗が不自然に登場しなかったりするので、その辺りの都合でドラマの構成が難しくなっていたりするのかも。
 色彩の影響もあってか、ビーファイター3人よりもスッキリして見えるブラックビートは、非常に正統派の格好いいデザイン。 声を務める咲野俊介さんというと洋画や海外ドラマのイメージが強かったのですが、東映特撮で悪の戦士をやっていたとは。
 儀式中に苦しむ拓也や、ブラックビートという名前など、その誕生と拓也とに何か関係づけられそうですが、次回、 本格的な動きが楽しみです。

◆第20話「激突!!黒の恐怖」◆ (監督:坂本太郎 脚本:宮下隼一)
 黒い戦士は自分で武器の名前を言ってくれないので、手持ちの銃は「ジャミングマグナム」、 右腕に付いた 高枝切りハサミ 伸縮するクローは「スティンガービュート」と、前回を振り返りながら字幕挿入。
 ブラックとブルーが一騎打ちを展開し、ビュートの名の通り、鞭状に可変するスティンガービュート。ちなみに、 ビュート=鞭という用法は、『秘密戦隊ゴレンジャー』のアカレンジャーの武器であるレッドビュートからいつの間にか広まった説があるそうで、 「ビュート」自体は完全な東映特撮造語だとか。
 銃撃戦、白兵戦、ともに圧倒的な強さを見せるブラックビートに押され、ビーファイターは煙幕弾で撤退。
 「無駄な事を。もはやこのブラックビートの前に、屈服するしかない。お前達には敗北と死、あるのみだ」
 ブラックビートは余裕を見せ、逃亡したビーファイターは、グルと向井博士とともに、カミキリムシ達の墓を作る。
 東映特撮名物:勝手にお墓の中でも、史上最大スケールでしょうか。
 「眠れカミキリムシ達よ。おまえ達の悲しみと怒りは忘れない。地球に生きる、全ての命がそれを受け継ぎ、戦い続ける。 眠れ……眠れ安らかに」
 矢弾尽き果て刀折れても憎しみの連鎖に終わりはなく最後の一匹が死ぬまで終戦の二文字はない! という相変わらずの昆虫魂ですが…………この世界のカミキリムシは、絶滅したのでしょうか(^^;
 この後、普通に外を歩くグル(恐らく、体育座りの体勢からお尻を浮かすような姿勢で歩いていると思われるのですが、 大変そう)の後ろを、アーマー来たままの3人がついていきながら会話するという凄く変な絵のシーンがあるのですが、今回、 完全に麗の出番が無いのでその都合かと思われ、色々と苦慮が窺えます。
 「あれがインセクトアーマーなら、俺たちが重甲するように、誰かが存在するんだ――それが、誰なのか」
 「そしてもう一つ。あの一連の出来事は、いったい何だったのか」
 ブラックビートの中身と、自らの謎の悶絶を拓也が気にする、というのは知力がアピールされて良かったです。
 その頃、要塞に戻ったブラックビートは3幹部の指揮下に入る事を拒否。
 「3幹部とは別の、新たな幹部。とでもお考えいただければ、幸いかと」
 焦る3幹部には慇懃無礼な態度で接するブラックは、メガオーム様自ら発案の作戦により、再び地球へ。それは、 マグマ活性装置により日本中の火山を一斉に噴火させ、文明を破壊する……のではなく、
 「その強大なエネルギーを、我がジャマール要塞が吸い上げ、地球次元そのものを、ジャマール次元に一斉転換するのだ」
 と一ひねり。
 息子の隆と休暇で山歩きをしていたアースアカデミア火山観測班の添田がこの火山の異常に気付いて本部に連絡を入れ、 麗は前回までと逆パターンで「先に現地に向かってる」事にされる一工夫。
 ジャマーに気付かれて添田は捕まってしまうが、逃げる隆を助けるビーファイター。
 「大丈夫か、隆くん!」
 と、所員の子供の名前をしっかり把握しているのが、ご都合というより、もはや凄くビーファイターです。
 ブラックビートが現れて吊り橋バトルとなり、ブルービートの危機に果敢に体当たりをする隆少年を「邪魔するな、 小僧」と容赦なく切り捨てようとするブラック。隆をかばったブルーは一緒に吊り橋から転落し、 ここにまさかのブラック追撃マグナムはビックリしました(笑)
 変な美学も持っていないようですし、一瞬も躊躇せずに落下した敵に追い打ちを入れるなど、かなり優秀です。
 ブラックは続けて緑と赤を銃撃し、吊り橋の上で結構な大爆発。恐らく煙だけ派手に出るようなタイプなのでしょうが、撃つ方も、 撃たれる方も、なかなか凄い。
 「勝利は我が手に」
 一方、街の上空にはメガオーム様が出現し、地上を大規模攻撃。折角なのでメガオーム様凄いをアピールした感じがありますが、 意外とフットワーク軽くて、ガソリン切れが心配になります(笑) 物凄く凶悪な見た目の半身の操り人形、 とでもいうようなデザインは面白いですし、どこかの次元に下半身があって合体したりするのか、ちょっとワクワク。
 「ひれ伏せ、人間ども。間もなくお前達の世界は消滅する。文字通り、我らがジャマールの世界が取って代わるのだ」
 人々に絶望が広がっていく中、やけに明るい音楽で再合流したビーファイターは、噴火を阻止する為にビートマシン発進。 赤と緑がマグマ活性装置を止めに向かい、青は黒の元へ向かうが、活性装置を目の前に、赤と緑の前にはジャグールが立ちふさがる。
 二つの戦いが展開し、青vs黒では、メガオーム進化にかこつけてもう無くなるかと思っていたガオームゾーンが発動。そして、 ジャグールに追い詰められた赤と緑を助けに、老師グルが登場し、ジャグールとマッチアップ。
 両者はそれぞれ「ビーファイターの生みの親」「ブラックビートの生みの親」として台詞が対比され、ああ成る程、 ジャグールってどうして「ジャマール」と被りまくっている名前にしたのかと思ったら、「邪グル」という事だったのか!
 マグマ爆発まで残り2分――
 「負けないでビーファイター! お父さんを助けて! 地球を守って!」
 「俺は、勝負を捨てない……最後の最後まで、地球の仲間の声が、命の声がある限り!」
 グルと邪グルの微妙なマッチアップでは光線の打ち合いの末にジャグールの杖が折れ、 その呻き声に反応したブラックが背中を向けた隙を突き、相変わらず一切の躊躇無く背後から切りつけるブルー(笑)
 ブルーはその勢いでビートルブレイクを炸裂させてブラックを撤退に追い込み、 本格的に価値が無くなってきたぞガオームゾーン(笑)  不意打ち込みですがいきなり一騎打ちで青が勝利してしまったものの、一応、スティンガーブレードにヒビが入り、 ブラックの強敵ぶりは継続アピール。
 緑と赤はマグマ活性装置の停止に成功し、ジャマールのマグマで次元転移大作戦の阻止に成功。 強敵撃退ついでにジョーカー(老師)リタイア展開かと思いきや、自己申告通り、 平然と生きていた老師はそれを静かに見つめるのであった……。
 もともと都合のいい老師が、前々回の昆虫魂再注入、今回のジャグール撃破と、好き放題なのはさすがにいかがしたものか(^^;  遠くから助言ぐらいならまだしも、安易な奇跡を連続で発動してしまい、ブレーキをかけるか、デメリットの明示は欲しい所です。 奇跡の燃料になるような老師とビーファイターの精神的繋がりが特に強調されているわけでもないですし、 それをやって老師にスポットを当てると今度は向井博士との関係性が薄くなってしまうというのも、痛し痒し。
 今回なら、「カミキリムシの仇!」と、むしろ老師の個人的怒りを強調してしまった方がまだ説得力が出たような。
 一方、老師に敗れ深手を負ったジャグールは、要塞に戻った所をブラックビートに射殺され、まさかの早期リタイア。……まあ、 幹部級が増えすぎるとやり取りが面倒くさくなる部分はありますが、その人、貴重な参謀要員だったのでは……?
 今回の描写を見る限りでは、恐らくブラックとジャグールの間には呪術的繋がりがあって脳内に色々な声が聞こえてくるので、 プライベートを守る為にどさくさ紛れに暗殺した疑惑。
 ブラックビートだって、地上でアイドルの写真集に思わす目が行ってしまう事もあるのです!
 破壊と殺戮の昆虫戦士ブラックビートの本格活動編としては、アクションふんだんで満足の出来でした。名前の字面が被りすぎて、 感想書きとしてはちょっと困っていますがブラックビート。カミキリムシの英名はなんというのかと思ったら、 「Longhorn beetle」もしくは「Longicorn」(長い触覚に由来)だそうで、うーん、確かにこれは使いづらいか。 まあ今作、根本的な所で全員のモチーフが「ビートル」な為、「ブルー・(ジャパニーズライノセラス)ビート(ル)」 「G(REEN)・スタッグ(ビートル)」「レッド・(レディビート)ル」と微妙に名称パターンに変化をつけて誤魔化しているのですが、 元々は「色+ビート」にしようと思っていたけど戦隊になりすぎるので止めた、とかはあったのかなぁ。
 次回、新兵器登場は今回も魔道への誘いなのか?! 青いドリルが光って唸る!

◆第21話「極悪昆虫タッグ」◆ (監督:坂本太郎 脚本:扇澤延男)
 3幹部はブラックビートに嫉妬の炎を燃やし、ギガロは虫の力を持つ合成獣カマザキラーを作り出す。 昆虫の繁殖能力も備えたカマザキラー量産計画をプレゼンしてブラックの鼻をあかそうとするギガロだが、 だったら量産した怪人をブラックの部下に回してやれよ、と社長命令で嫌々共同戦線を張る羽目に。
 地球へ降り立ったカマザキラーは、卵管を射し込んで次々と人間の体に卵を産み付け、これがなかなかグロい。
 「卵を産み付けてやったのさ、この私のな」
 緑と赤もインセクトアーマーを貫かれて卵を産み付けられてしまい、 幼虫が苗床にした人体を引き裂いて誕生するまで10時間――という、かなりエグい展開。
 お腹が膨らむ描写も入り、大作はともかく、麗にはかなりのトラウマ案件では(^^;
 「俺はいいさ! けど……同じように苦しんでいる人達はどうするんだよ。試してみてくれよ先生! 俺のこの体使ってさ。 切り開いても何しても構わねえから、実験台にして、卵取り出す方法見つけだしてくれよ!」
 現代医学では卵の摘出は不可能、と告げられた大作は自ら犠牲になろうとするが、医者は首を縦には振らない。
 一方ジャマールでは、ブラックがギガロに「カマザキラーをしばらく、監禁しろ」と耳打ちし、母カマキリが死ぬと、 生命エネルギーで繋がったその卵が一瞬で全滅する、と敵サイドの会話で説明。
 「今は待つのだ。あの2匹が息絶えるのを。な、ギガロ」
 いっけん知性で合理的な判断を勧めたかのように見えたブラックビートだったが……
 「ジースタッグ、レッドル、そしてカマザキラー。これで邪魔者は全て封じた」
 それはあくまでブルービートの始末にこだわる個人的な目的の為であり、密かに再出撃したブラックはブルーを呼び出して一騎打ち。 現地からの中継映像で謀られたと知ったギガロはカマキリと共に地球へ向かい、 拓也が一人で出撃した事に気付いた身重の大作も乱入して一気に混線模様に。
 「なんで黙って行ったんだブルービート。俺も麗も、最後の一瞬まで、ビーファイターなんだぜ!」
 大作の台詞は格好いいのですが、この辺りはどうにも都合の為の都合の展開になってしまって、もう一つ上手くまとまりませんでした。 それぞれの欲望しか頭にないから破滅する悪、という構図ではあるのですが、緑と赤を倒して怪人の量産に成功すれば十分に大手柄なのに、 慌ててカマキリと一緒に出撃するギガロがさすがに頭悪すぎますし(^^;
 「この世に2人は要らない。貴様が消え、この俺が残ればいいのだ!」
 「どういう意味だ、それは……?」
 ブラックビートに追い詰められるブルービートだったが、激痛に苛まれながらもレッドルが新装備を手に到着し、 ブルービートは新たなスティンガーウェポン:スティンガードリルを装着。
 円錐一つではなく、2段式になっているのが格好いいドリルは、一撃でブラックのアーマーを切り裂き、 そのままの突撃技・ストライクブラストで、カマキリの外骨格を突き破って撃破。これにより生み付けられた卵は消滅し、 量産カマキリ大作戦は失敗に終わるのであった。
 ジャマールではメガオーム様にお叱りを受けるギガロが、ブラックビートの抜け駆けが悪いと言い訳するが、 当のブラックはそれを鼻で笑い飛ばす。
 「手柄? ふん、そんな物どうでもいい」
 「なに? どうでもいい?」
 「地位や名誉も、勿論、手下なども無用!」
 「なんだと?」
 「奴を、ブルービートをこの世から消せる機会さえあればいいんだ、俺には」
 「なぜにそれほど、ブルービートにこだわる?」
 「貴様はいったい?」
 「何者なのだ?」
 「だから――ブラックビートさ」
 この台詞が滅茶苦茶格好良かったのですが、ブラック全体の言行は、協調性ゼロ過ぎてとても困った感じに。
 なお前回のジャグール抹殺に関してはメガオーム様からは全く言及なし。フリーダムな活動にも一切注意せずに好き放題させていますが、 実力を評価されているのか、それとも何か思惑があるのやら。アンチビーファイター存在としては、 その役割さえ果たしてくれれば問題ない、という事なのかもしれませんが、幹部としては凄く駄目ですよこの人(笑)
 ビーファイター側でも「なんか俺、あいつに特別絡まれるような事したっけ??」と拓也が首をひねって3人の疑念が募り、 今回の一連の台詞からすると、ブラックビートはまさしく、ブルービート/甲斐拓也の“影”なのか? と、 名称含めて両者の因縁は良い感じに深まってきました。前回不満を述べた「ブラックビート」という名前が、 ラストの台詞に繋がったのは、お見事。
 ただエピソードとしては、中盤以降どんどんテンポが悪くなってしまい、出産のタイムリミットが迫る中、 拓也と博士はアカデミアで手をこまねいていただけにしか見えなかったり、全体的にもう一つ。予告の内容からすると、 制作事情が色々厳しかった影響もあったのかなとは思われますが……。
 次回――残念ながら麗降板になってしまうようで、新キャラクター登場。

◆第22話「ヒロイン初体験」◆ (監督:三ツ村鐵治 脚本:宮下隼一)
 OPにドリルとナイフ追加。レッドルは新メンバー鷹取舞に入れ替え。
 「なんですって?! 麗が!」
 「アースアカデミアの南米支部に、転任?」
 「動物学者としての実績と、ビーファイターの経験を、買われたんだ」
 ビーファイターを、経験資格扱いで転任させるな(笑)
−−−−−
突然のお別れです。ごめんなさい。
迷いました。でも、向井博士とグルに勧められて、決心しました。
これも地球に生きる命の為の、大切な仕事です。
さよならは言いません。寂しすぎますから。
平和が戻ったら、笑顔で再会を。
それまで、拓也、大作、元気で頑張って下さい。
羽山麗
−−−−−
 しかもいつのまにか、グルに勧められてる……!
 向井博士は、絶滅を心配される動物の研究などで〜と言っていますが、これ、やはり、 前回のカマキリ怪人出産直前事件が重いトラウマになって心に深い傷を負ってしまったのでは。
 その為の転地療養だと考えると、2人に一切相談なく、顔を合わせもせずに姿を消す事に納得できるのですが(^^;
 「実はな、その南米支部から、麗と入れ替わりに、頼もしい味方がやってくるんだ」
 「しかし麗は、インセクトアーマーに選ばれた、ビーファイターなんです」
 「どんなに頼もしい奴だろうが、重甲は勿論、麗の代わりには、レッドルにはなれやしませんよ」
 「いや〜……人間じゃ、ないんだ」
 当然の反論に対し、頼もしい味方とは、南米支部でグルと共同研究した新兵器・昆虫ナイフと、ヘラクレスオオカブトメカだと説明。
 博士としては急な欠員から気を紛らす為に洒落たつもりだったのかもしれませんが、麗の代わりはメカって、 残された男2人の不審を煽るだけのような。
 「我が敵の鼓動が聞こえる……。目覚めよ、シュバルツ」
 ジャマールでは、頭に変なチューブを付けられていたシュバルツが、これまでよりも若干真剣みのあるトーンになって出撃し、 新兵器を運ぶ輸送機を空中で待ち受ける、という絵は面白かったです。
 「笹の葉爆弾」
 は意味わかりませんでしたが、この後の諸々を見ると放映が七夕の季節だった模様。
 ここで、野山をハイキングする少女――鷹取舞(19)が登場し、歌を唄ったり、兎と戯れたりと、麗との差別化として、 可愛らしい系をアピール。……麗も当初、イルカと戯れていたような記憶が無いでも無いですが、あれは、軍事用の訓練だったから(待て)
 「流れ星? あたしの彦星だったりして。願い事しちゃお」
 シュバルツに撃墜された輸送機から地上へ落ちた光を目にした舞は、 不思議な繭にくるまれた落下物を発見してアースアカデミアへと持ち込むが、ジャマール戦闘機部隊が街を攻撃し、 拓也と大作はその迎撃へ。
 「きついぜ、空からレッドジャイロの援護が無いと」
 うんホント、誰だよ現場に相談しないで勝手に転任させたの!
 「レッドルなしで、何とか撃退する事はできたが……」
 「これから先、いったい……」
 レッドルを戦死させての交代劇にしなかったのはスタッフの配慮(再登場の可能性を考慮?)だと思うのですが、ここはもう少し、 上手く転がせなかったものか(^^;
 向井博士とグルが、物凄く無能な上司化(或いは、深刻なトラウマを負った麗を守る為に、泥をかぶったのか)。
 シュバルツが地球の竹を参考にして作った新兵器バンブレラを用いて青と緑を苦戦させ、強化改造の印象付け。なお、 ジェラは異次元に武者修行と傭兵集めに、ギガロも異次元に新たな合成獣の素材集めにと、 3幹部それぞれのバージョンアップの説明と前振り。
 それを快く思わないブラックビートは
 「なにゆえガオーム様は役立たずどもをお見捨てにならん。ビーファイター抹殺は、俺一人で十分だ」
 との事ですが、それは多分、前回あなたが、実質的に会社の業績には興味がない宣言をしたからだと思います!
 ブラックも参戦してビーファイターは一時撤退し、舞が拾ってきた繭(パルセイバー入り)をこじ開けられなくて困っている博士の下にはグルが登場。 輸送機が墜落した際に、パルセイバーに篭められた昆虫魂が自らを守る為に一種のバリアを作り出したのだと説明する。
 そこに舞がしれっとお茶を持って入ってきて、ビーコマンダーの反応を感じるグル。
 「うっそ、あたしが?! あたしがビーファイター?」
 ……グルを平然と受け入れるのが、戦士の資格なのか?!(笑)
 街ではビーファイターを呼ぼうとブラックが破壊活動を行い、そこに傘で飛んでくるシュバルツ。
 「ブラックビート〜、抜け駆けかーっ!」
 「目的は一つ、ブルービートの首。我が戦いに、ルールなどない!」
 独自の美学を持たない代わりに、独自の目的にしか興味が無いと判明したブラックビートですが、格好いい声と台詞回しで、 凄く駄目な内容を力強く口にするので、反応に困ります。
 「面白い! それならこっちもそうするまでだ」
 シュバルツは傘を用いてブラックビートを攻撃し、なんと拘束。
 「偉大なるガオーム様の使命を果たすのは、このシュバルツだ〜!」
 出世欲がベースにあるとはいえ、なんだかんだ高い3幹部のジャマールへの忠誠心と、 独自路線を突き進むブラックビートの行動理念の対比が強くなっており、これは今後の布石になりそう。
 シュバルツの破壊活動の中継映像が入り、巻き込まれそうになった犬の姿を見て駆け出す事で動物好きをアピールした舞は、 犬を救おうとシュバルツに角材投げ。
 「もう許さない、あたしが相手よ、ジャマール! ――重甲!!」
 拓也、大作に続いて舞も重甲を決め、今ここに新レッドルが誕生する!
 3人のビーファイターが揃った事でパルセイバーを包んでいた繭が消え、パルセイバーは自らビーファイターの元へ。 見た目てかてかしたナイフなのですが、ヘラクレスオオカブトの力が篭もっているという事で、 横から見るとカブトムシの姿を象っているのがちょっと面白い。
 パルセイバーを手にするも、バンブレラに苦しむビーファイター。だがその脳裏に、グルの声が響く。
 「ビーファイターよ……パルセイバーのパワーは、戦士達の声と心に反応して、増幅される。怒れ! そして叫べ!」
 つまり

 許さねえ! 貴様等絶対に、許さねぇ!

 てーててってててれてれてれてっててれ てーててってててれてれてれてっててれ!
 お願いだからもうやめて、そのフレーズ(笑)
 今回疑惑が急浮上しましたが、初登場時から激しく謎な存在の老師グルはもしかして、 多元世界におけるゴールドプラチナムの姿の一つなのでは(そういえば、いつも金色の光になって現れる……)。そう、 ゴールドプラチナムは、いずれ多元世界を襲う黙示録戦争に勝利する為に、様々な次元世界の戦士達を導き集めてる存在なんだよ!!
 (……拓也、ハイパー拓也……)
 ……えー、気を取り直しまして(というか、宮下さんはわざとやってるんですか?!)
 「「「パルセイバー!!!」」」
 新装備を構えたビーファイターは、竹を割って反撃開始。そこへ戒めを脱したブラックが乱入してくるが、 インプットマグナムとパルセイバーを組み合わせたセイバーマグナムの溜め撃ちが直撃し、だいぶ痛そうに撤退。
 「ブルービート、首は預けたぞ」
 新装備ラッシュの濁流に呑み込まれ、物凄い勢いで流れ星が燃え尽きそうになっていますが、大丈夫かブラックビート。
 「逃げたか……」
 「だいじょぶだいじょぶ、正義は勝つ! 次はぜーったいやっつけちゃうから。いこいこ」
 シュバルツも引き下がり、新レッドルの軽いノリに戸惑いながらも、引きずられていく男2人。
 「よくやった。これで、新しいビーファイターの誕生だ」
 「そっか。あたしの彦星は……ビーファイターだったんだ」
 ここを繋げてきたのは、上手かった。
 かくして新メンバーを加えたビーファイターは七夕の短冊に願いを込め、 そこへグルから「メガヘラクレスは生きているぞ」という報せがもたらされる。 輸送機と共に消滅したと思われた新型ビートマシンはいったいどこへ……と、更なる強化展開の布石を置いて、つづく。
 諸事情あっての麗降板・舞登場編でしたが、はからずも今作における、 ビーファイターというヒーローの代替え可能な性質が浮き彫りに。前回は大作の、 どうせ死ぬなら俺の腹をかっさばいて治療の為の実験台に使ってくれ、という叫びがありましたが、あれも、 たとえ大作は死んでもジースタッグは死なず、その執念は新たな昆虫戦士に引き継がれる…… というビーファイター×昆虫魂の思想性が背景にあると考えると、なかなかに恐ろしい。
 舞の加入もさして劇的な出来事が無いまま、「ちょうど手頃な素材がやってきた」というノリで昆虫魂に取り込まれてしまうのが、 いっけん軽くて明るい今作の裏側に潜む、血まみれの暗い澱みを感じさせます。
 新キャラ舞は、麗を継承するのではなく、思い切ってガラリと変えてきましたが、果たしてこれが吉と出るか凶と出るか。次回、 二代目レッドルに待ち受ける苦難、どんな肉付けをしていくのか、楽しみです。

◆第23話「怪人に花束を・・・」◆ (監督:三ツ村鐵治 脚本:扇澤延男)
 拓也達は輸送機の墜落現場付近でメガヘラクレスを探すが、空中から捜索する新レッドルはジャイロの操縦に苦戦。
 「誰よ簡単に操縦できるなんて言ったのー!?」
 ……うん、前任者が、ごく自然にドッグファイトしていたので、多分みんな勘違いしていた。
 突然の転任で南米へ去った麗ですが、もしかしたら南米某国で発生したクーデター事件に、元学友である某国王族が巻き込まれ、 それを助ける為に、ビーコマンダーを置いて単身決死の救出作戦に向かったのかもしれないという気がしてきました。
 「ドナウ川近くの動物園では、ライオンがヒョウの檻に入り、出られなくなっています」
 影も形もないヘラクレス捜索を諦め気味の男2人だが、レッドルはひたすら前向きで脳天気。捜索を再開しようとしたその時、 巨大な手裏剣が3人を襲い、武者修行から帰ってきたジェラと、新たに連れてきた傭兵ゴルゴダルが姿を現す。
 「ねえ、だぁれ?」
 「ジャマールの幹部の中でも一番可愛げのねぇ野郎よ!」
 ギガロの方が可愛いのか。
 「そして最も残忍な奴!」
 ジェラ、ビーファイターからの評価高い(笑)
 しばらく戦地を離れていたジェラですが、レッドルを「小娘」呼ばわりし、どうやら中の人間が変わっているのは知っている様子。 シュバルツがしっかりと報告を上げたと思われ、悪の組織にしては情報の共有がしっかりしていますジャマール。
 「あたしが小娘なら、あんたはオヤジだし、あいつはおばさんじゃない」
 「なにー?! この私が、おばさんだと?! ジャマール一の美貌を誇るこのジェラに向かって、何を!」
 ジェラ、ついにノリが軽くなる(^^;
 傭兵とは金でジャマールに雇われていると聞いたレッドルは、ゴルゴダルと戦うのではなく、説得を試みる。
 「おじさんねー」
 「なんだよ?!」
 「恥ずかしくない? お金でひょいひょい雇われて、あんな生意気なおばさんの言われるままに人の次元荒らしに来て、 将来絶対悔やむと思う、そういう情けない生き方」
 更にレッドルは重甲を解除し、その中身に驚くゴルゴダル。
 「こんな娘が、戦士なのか……?」
 麗も若い娘ではあったと思うのですが、見た目幼い印象を与える上に劇中で年齢も明言されている舞という事で、 展開の中で新旧の女戦士を巧い具合に区別し、舞ならではの物語、という状況を作りました。
 「通じるわけないだろ! ジャマール野郎なんかに人間の説教が」
 「どうして?! 同じように、かけがえのない命をもって、生まれてきた者同士じゃない。怪物や怪人にだって、命はあるもん。 でしょ?」
 「「うん」」
 相手の目を見て話すべきだ、と重甲まで解除した舞の勢いに押され、頷いてしまう青と緑。
 怪物や怪人にも命はある、というのは悪玉/善玉の線引きをする事でフィクションを成立させている作品では地雷原なのですが、 悪に生まれた存在ではなく金で雇われた傭兵であるという設定と、戦士に選ばれたばかりの素人である舞を組み合わせる事で、 ギリギリ収めました。
 「だからね、おじさん。人はもっと、真っ当な生き方しなきゃ駄目なの。私の言ってる事、わかるよね?」
 舞の正面からの説得に、戦いが阿呆らしくなってしまったゴルゴダルは、戦闘を放棄。
 「こんなおめでたい小娘に邪魔をされては、戦意も萎えるわ」
 「おめでたい?」
 「名前を聞かせろ」
 「え、名前? 舞、舞って言うの」
 「マイか……ふふふふ、覚えておこう」
 ゴルゴダルは背中を向けて去って行き、出張から帰ってきたら新入社員に3日で職場放棄されたジェラも退却。
 「なんとなくわかりましたよ。麗の後釜に、何故あいつが選ばれたのかが」
 一度戻ったアースアカデミアでは、拓也・大作・博士が、戦いの中で忘れかけていた命の尊さを、舞に教えられた事を認める。
 その頃ジャマールでは、ゴルゴダルが契約金を返納。
 「あんな小娘が体を張って、必死で守ろうとしてる次元を、荒らす気にはなれないよ。いくら馬鹿野郎のこの俺でもな。はははははは」
 「貴様ぁ」
 「フッ、ジェラ、ご立派な手土産を、連れ帰ったものだな」
 本日も高枝切りばさみを磨くブラックビートはすかさず嫌味を飛ばし(ブラックビートのこの基本スタイル、 凄腕の戦士が銃や刀など愛用の武器を万全に手入れしているイメージなのでしょうが、なにぶん武装が内蔵型の為、 自分のボディを磨いているように見え、若干のナルシスト感が漂います)、 怒り心頭のジェラはゴルゴダルを退社させまいとするが、そこに出現したメガオームがゴルゴダルを攻撃。
 「ひとたび我らに魂を売り渡した貴様だ、逃がさん」
 「役立たずには、死あるのみか」
 「死なせはしない。修行の旅で私は悟ったのだ。もっと冷酷にならねばと」
 割と軍団員には慕われている描写のあったジェラですが、やはり独立採算の傭兵軍団長という事で、 これまでは雇った団員の福利厚生に気を遣っていた模様です。だが、これからは、定時退社など許さない!
 「こやつを道具として役立つようにしてやる」
 アースアカデミアでは、ゴルゴダルを説得して故郷の次元へ帰らせる事は出来ないか、とビーファイターが相談していたが、 そこに街で暴れ回るゴルゴダルの映像が中継される。
 やはり世の中、金か、金なのか?!
 現場へ駆けつけた舞は会話コマンドを使用するが問答無用で攻撃を受け、 投げ飛ばされた舞をキャッチしてナチュラルにお姫様だっこする大作がパワフリャァ。少々勢力が衰えてきましたが、やはり、 筋肉は宇宙を救うのです。
 重甲した青と緑は頭部の傷に気付いてビートスキャンし、ゴルゴダルがロボトミー手術を受けている事に気付く。 ジェラにナイフを突き立てられたゴルゴダルは、脳の言語中枢と記憶に関わる部分を破壊され、 戦闘マシーンへと変貌してしまっていたのだ!
 洗脳パターンの亜流にしたらジェラのナイフ技術が謎な感じになりましたが、恐らく武者修行の旅で身につけた、 傭兵世界に伝わる、 ブラック社員 バーサーカー作成秘術なのでしょう。
 「舞、重甲しろ!」
 「重甲なんていらない。話をしたいのよ!」
 一度は気持ちの通じたゴルゴダルを止めようとする舞は説得を続け、苦悶するゴルゴダル。
 「おじさんあたしに聞いたじゃないか! あたしの名前教えろって言ったじゃない。だから教えた。舞だよって。 舞だよあたし……私の名前、呼んでよ」
 「………………ま……ま・イ……マ・イ……」
 ゴルゴダルは戦闘を止め、記憶の奥底から失われた筈のその名を呼ぶが、そこへジェラ、更にメガオーム様が登場。 今回のメガオーム様は、なんか煙吹いていて格好いい。
 「ジェラ、このガオームに学べ。底なしの残忍さとその喜びを」
 期待の新人幹部の会社への忠誠心が0なので、改めて社員教育だ!!
 メガオームのブラック洗脳ビームを浴びたゴルゴダルは、今度こそ完全な破壊と殺戮のマシーンと化し、重甲した青と緑と激突。 黄色い体液を撒き散らしながら、ひたすら「マイ」という言葉だけを繰り返して暴れるゴルゴダルだが、そこにはもはや感情も意志もなく、 記憶に刻まれた言葉をただただ口にしているだけ、という戦闘シーンは爽快感皆無のえぐさ。
 「あたしがやる! あたしがおじさんにしてあげられる、たった一つの事」
 その姿に覚悟を決めた舞は重甲し、ゴルゴダルをセイバーマグナムで撃破。
 レッドルに迫る咆哮から断末魔の悲鳴まで、全てが「マイ……マイ、マイー!」なのが実に凶悪。
 完全にトラウマ案件で、下手すると、来週には舞が北欧支部に転任しそうです。
 「舞……地獄を終わらせてやるには、ああするよりなかったんだ。な?」
 戦闘マシーンとして洗脳され、意志を奪われた地獄の中で、故郷に帰れずに死亡する、 というゴルゴダルの姿にはかなり強く「戦争」のイメージが想起されますが、名前は「ゴルゴタの丘」を思わせますし、 ラストで墓標代わりにされた武器の手裏剣は、十字架の見立てだったりするのか。この辺りひっくるめて何か、 オマージュ元があったりするのでしょうか。
 東映特撮名物:勝手にお墓(今回は仕方ない)に花を捧げ、笑顔を浮かべて立ち上がる舞。
 「……そゆことそゆこと。もうあんなおじさんの事なんか忘れてさ、メガヘラクレス、早く見つけなきゃ。ホントはあたし、戦うの、 好きじゃないけどさ……でも、許せないじゃん、ジャマールって!」
 ここでトーンを上げる台詞回しが秀逸。
 「おじさん、生まれ変わってでも何でもいいからさ、ちゃんと自分の次元に帰ってよね。寄り道なんかしないでさ。あ〜あ」
 墓標に軽く触れた舞は、拓也と大作に背を向ける。
 「やっぱり脳天気だよ」
 「違うさ」
 「……おじさんごめんね……撃って、ごめんね……」
 空を見上げ、舞は、ひとり涙を流すのであった……。
 ナレーション「――それは、戦士としての痛みを初めて知った、鷹取舞、19の夏の出来事だった」
 そのナレーションでまとめられると、戦場に立った以上、結論は、殺るか殺られるかだ! という感じがしますが、 ビーファイターなので仕方がない(おぃ)
 敵との交流→洗脳→撃破フォーマットとしては水準といった出来でしたが、舞にジャマールと積極的に戦う動機を与え、 同時にジャマールとは如何なる悪であるかを改めて描く事で、新戦士の足場をしっかり固めてきました。
 ラストの大作がちょっと鈍くなりすぎた感はありますが、苦境にあっても常に明るく振る舞ってみせるという舞の“強さ”を印象づけ、 ただ脳天気なだけでも考え無しの平和主義でもなく、自らの信念があって行動しており、 信じているものがあるから許せない事があるというヒーローとしての立ち位置を1エピソードで確立してみせたのは、 三ツ村×扇澤が、さすがの構成力。
 新レッドルの成立エピソードとしては、必要十分なエピソードとなりました。制作事情を考えれば、 さすがにここで大ジャンプは期待しすぎというものでしょうし、やはり今作では扇澤さんが、 毒牙を何本か引っ込めて安定志向で全打席出塁を心がけている感じだなぁと。
 次回――ギガロ、びっくりどっきり強化。

◆第24話「登場巨大カブト」◆ (監督:石田秀範 脚本:宮下隼一)
 「我らジャマールを阻むビーファイター。奴等の手足と羽を、むしり取ってくれる」
 ギガロが異次元旅行から戻り、社長企画による新たな作戦が発動。ビーファイターの動き(メガヘラクレス捜索) をいぶかしむブラックは作戦前の威力偵察を進言するが、ガオームにより却下。
 (その怒りと憎しみも、地球侵略の成就に繋がる。動きたくば動いてみよ、ブラックビート)
 どうやらガオームはブラックビートに敢えてフリーハンドを与えているようで、ちょっと器の小さくなりかけていた社長に、 ここでボスキャラとしての奥行きが出てきたのは良かったです。
 また、アップで見下ろすメガオームと、無言で佇むブラック、という対比の絵が格好良く、秀逸。
 リフレッシュ休暇から帰ってきて絶好調のギガロは自ら街を襲撃し、ビーファイター3人と互角に渡り合う他、 頭がぱかっと開いてガスを出すなど、強化された能力をアピール。基本、デザインは秀逸なギガロですが、 多くの生物を集めたキメラらしさがより強調されて良いギミックでした。更にジャマール要塞が地球次元に突撃し、 ビートマシンを召喚するビーファイターだが、それこそが、社長直々の周到なトラップであった!
 「かかったな……。ギガロ、今こそ新しいおまえの力を、見せてみよ」
 ギガロは頭から電磁ネットを飛ばし、ビートマシンを捕獲。マシンはそのままメガオーム様にツモされ、異次元空間に飛ばされてしまう!
 「ハエどもが……異次元プリズンで朽ち果てよ!」
 ビートマシン行動不能のチャンスを逃さず、一気呵成に街を蹂躙するジャマール戦闘機部隊。更にビーファイターも、 ギガロの繰り出す頭ネットに囚われてしまう。
 「負けてたまるか……!」
 「あたし達の命に替えても!」
 「この地球を、全ての命を守ってみせる!」
 早くも舞まで立派な戦士脳になっており、重甲する度に注入されていく昆虫魂による汚染、早い。
 命は尊いが、兵隊は使い捨て、それが、重甲ビーファイターイズム!
 ネットを切り裂いた3人は絶対許さねぇセイバーで反撃し、あっさりと吹き飛ばされるギガロ(^^;  新装備キャンペーンという事もあって威力の強調はわかるのですが、毎度「「「パルセイバー!」」」 という攻撃時の台詞はどうも間抜けで、何か、技名には出来なかったのか。
 そこに博士がヘラクレスの情報をもたらし、パルセイバーの反応を頼りにヘラクレス起動に向かうビーファイターだが、 物陰からこっそり様子を窺っていたブラックビートがその前に立ちはだかる。 3人に代わって人々の避難誘導を買って出た博士には立ち直ったギガロが迫り、容赦なく街を襲う爆撃、爆撃、 と三重の危機をこれでもかと煽り、引き続き、市街地の被害が激しい作品です。
 この調子で進むと、3クール目の終わり頃に
 「役立たずのビーファイターは解散しろー!」
 「「「そうだそうだー!」」」
 「アースアカデミアは税金の無駄遣いだー!」
 「「「そうだそうだー!」」」
 「ジャマールとは話し合いで和平の道を探るべきだー!」
 「「「そうだそうだー!」」」
 みたいにデモ行進が起こるのでは。
 ガオーム様は、地球に美形外交官を送り込んで、人類の心を掴むべき。
 先週念入りに手入れした甲斐があってか本日は好調のブラックビートだったが、そこに空気を読まない攪乱攻撃を仕掛けるレッドル。 戦いの最中に気さくに話しかける、というのは麗レッドルとの差別化も狙って持ち込んだのでしょうが、 赤がブラックに払いのけられた次のカットで、いきなり3人並んでセイバーマグナムを構えており、映像的にはだいぶ不自然に(^^;  まんまと直撃喰らってど派手に吹き飛んだブラックビートもかなり間抜けになってしまいましたが、シリアス次元の住人ほど、 舞につけ込まれやすいのか。
 ブラックを退けた3人はヘラクレスが自己修復中だった地下へと辿り着き、 あっという間にパルセイバーに食われ気味だったスティンガードリルを、純然たる掘削作業で活用したのは、アイデア。 入り口を掘り返したビーファイターはメガヘラクレスに乗り込み、今ここに、 3人乗りのスーパービートマシン・メガヘラクレスが覚醒する!
 「「「メガヘラクレス、起動!」」」
 操縦桿の間に、思いっきりキーボードが設置してあるのが、なんだか微妙に不安です……(笑)
 動き出したメガヘラクレスは、特撮でやたら足下がアピールされるのですが、本格大型多脚メカ、はなかなかの熱さで、 博士がギガロに追い詰められた所に地平線の向こうから現れる姿は、物凄い怪獣感。
 「なんだあれは?!」
 迫り来るジャマール戦闘機を相手に、「ジェットヘラクレス・リフトオフ!」で、上側の角が分離・反転して戦闘機として出撃。 新挿入歌をバックに、ビートマシンお披露目回同様の力の入ったミニチュアワークでドッグファイトが展開し、 これは格好いい。
 格好いい……のですが、ジェットヘラクレスの離脱時に、取り残されてコックピットで体育座りしている緑と赤が若干間抜け。
 (俺の座席の前に、操縦桿とか無いんだが、今、こっち攻撃されたら俺達どうなるんだ……?)
 命は尊いが、兵隊は(以下略)
 「行くぞギガロ!」
 「受けて立ってやる!」
 本気か(笑)
 気が大きくなっているのか、ジャマール戦闘機を撃墜したジェットヘラクレスに雄々しく立ち向かうギガロだったが、 容赦のない射撃を浴びて、そそくさと撤退(^^; ジェットは元に戻ってメガヘラクレスとなると、 角の先から放つメガキャノンで次元の亀裂を破り、3台のビートマシンの救出に成功するのであった。
 敵ボス直々の作戦で大ピンチから、逆転の新メカ登場で、しっかりと盛り上げてきました。今作はここぞのメカ特撮の出来が良いのが、 素晴らしい点。また前回今回で、舞を掘り下げる→新メカ登場編、という順番に出来たのも良かったです。
 次回――遂にモテるのか拓也?! 拓也の掘り下げも期待したいですし、予告の大技が凄く格好良く見えたので、そちらも期待大。

→〔その5へ続く〕

(2016年12月14日)
(2017年3月31日 改訂)
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