■『重甲ビーファイター』感想まとめ3■


“倒せ 地獄の使者 晴らせ 黒い雲を
進め 僕らのヒーロー インセクトファイター!”


 ブログ「ものかきの繰り言」の方に連載していた『重甲ビーファイター』 感想の、まとめ3(13話〜18話)です。文体の統一や、誤字脱字の修正など、若干の改稿をしています。

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◆第13話「危うし重甲基地」◆ (監督:坂本太郎 脚本:宮下隼一)
 ジャマールの一番最初の攻撃で両親を失った少年、という際どい所を突いたゲストキャラが登場。
 「だからって、甘やかしていい事にはならないさ。それに……優しいだけじゃ、俺達ビーファイターのリーダーは務まらないぜ」
 新しい生活環境や学校に馴染めず、寂しさから拓也達に悪戯を繰り返す少年に対し、怒る大作と優しく接する拓也。
 既に直情径行キャラとして固まりつつある大作(強面)と対比する事で、にこにこ拓也の相手の事情を慮る優しさ、 というのがすんなり話に馴染みつつ、それを「甘さ」と見る大作の不満も嫌な感じにならずに収まりました。
 少年の「ビートマシンに乗りたい」という無茶な頼みにはさすがに言葉を濁す拓也だが、その頃、 パトロール中のビーファイターに尾行を繰り返していたジャマールでは、3幹部が新たな作戦をプレゼンしていた。
 「あのビーファイターの本拠地を壊滅する、一大プロジェクト〜」
 戦隊における台詞の分担と同じ手法なわけですが、流れるようなコンビネーションで3人揃って作戦を説明する姿は、 改めて凄く仲良し(笑)
 陽動作戦としてジャマール要塞が突入してダムに攻撃を仕掛け、ビートマシン出撃。しばらく使い回しのメカ戦闘の後、 逃げ遅れた職員を助けたブルービートだが、戦闘員の十字砲火を浴びて倒れ、 戦闘メカ・ガガミラーの体内に閉じ込められてその姿をコピーされてしまう。
 ジャマール要塞は撤退し、拓也の姿となった鏡怪人は重甲基地への帰還をしきりに促すが、 「木の治療があるから」と大作にすげなく回避されてしまう(笑) だがしかし、 こんな時の為に尾行により念入りに情報を集めていた鏡怪人は、悪戯少年を用いて搦め手からアースアカデミアへ潜入する事に成功。
 「見事だ、シュバルツ」
 先日笑われた事は水に流し、同僚の巧妙な作戦成功を讃えるギガロ……ホントに仲いいな君達。
 「ねえ、なんかおかしくない、拓也?」
 「知るか。学者なんて元々おかしな連中だよ」
 「自分だって学者みたいなもんじゃない」
 このやり取りも面白く、宮下さんもようやくノってきた感じ。……そして、 大作の学者属性が(本人以外に)忘れられていなくて本当に良かった!
 悪い表情をしつつもやっぱり地が笑顔なのが地味に怖さを増す鏡拓也は、 少年をけしかけてアースアカデミアから重甲基地への入り口を発見し、ビートマシン破壊工作の為にその本性を現す。
 「僕が拓也さんに甘えたばっかりに……僕のせいでビーファイターがやられちゃうんだ」
 少年はこの後、鏡怪人のビーム発射を体当たりで妨害し、若干の時間稼ぎに成功。 ゲストキャラを拾って変化を描くというのは基本中の基本ですが、とにかく前作では吹っ飛ばされまくっていたのに対し、 地に足の付けた作劇をやり直そう、という意識が見えます。
 偽拓也が花瓶の花を踏みつけた事に麗が決定的な違和感を覚え、駆けつけた大作と麗が変身するが、体内の拓也を人質に取る鏡怪人。
 「俺に構うな。俺ごと攻撃しろ!」
 「そんな……」
 「しかし……」
 「迷うな。俺達の命は、地球上全ての命を守る為にこそある。たとえ誰かが倒れても、最後の一人まで、戦って、 戦って、戦い抜く。それがビーファイターだ! 撃てぇ!!」

 だから怖いよ。

 前回、外部から“やる気”を強制補充された甲斐拓也ですが、はたしてこれは、 拓也の意志なのか、それとも、昆虫魂なのか。或いは、甲斐拓也という人格に昆虫魂が融合した、 甲斐拓也’なのか。
 拓也の脳を解剖すると、中から昆虫がうじゃうじゃとぎゃーーー。
 まあ、会って5秒で巨大昆虫に順応など、拓也がキマりまくっているのは最初からであり、 そもそもビーコマンダーに選ばれたのもその昆虫魂との同調率の高さを買われてではありましょうが、今作におけるヒーロー観は、 兵士一人の犠牲で五百の敵を屠れれば重畳とか、10万人を捕虜にさせればむしろ我が軍の勝利みたいで怖すぎます(実際、 ここで拓也がリタイアしたら、ビーコマンダーは新しい適格者を探すのでしょうし)。
 80年代ほどあっけらかんと展開できない90年代の過渡期のヒーロー像として、英雄的正義の背景を補強する為に、 人の心と昆虫魂との同調、という要素を取り込んだアイデアは良かったと思うのですが、 昆虫魂の体質が捨て身すぎで“一人の英雄というより全体主義の生んだ偶像”に近づいている気がして、 なんだかとてもヤバい作品なのではないか『ビーファイター』。
 もしかしたら、『特捜ロボジャンパーソン』とは逆の方向から、ヒーローとは何か? を抉ろうとしているのかもしれません。
 「拓也……」
 「言ってくれるぜ。ただ優しいだけじゃない。自分の命さえ投げ出す覚悟と強さがあいつにはある。さすがは俺達のリーダーだ」
 甲斐拓也=普段ニコニコしているけどキレると危ない奴みたいな扱いに(笑)
 拓也の覚悟を聞いてインプットマグナムを手にした緑と赤は、超音波ビームで鏡の表面だけ割る事に成功し、拓也復活。 3人揃ったビーファイターは、鮮やかなスティンガーコンボで鏡怪人を撃破し、重甲基地の危機は辛くも回避されるのであった。
 ジャマールでは、失敗したシュバルツに対してガオーム様が初めてのお仕置き。ジャマールサイドの描写に関しては、 演出にお任せしている部分が大きそう。
 優しいお兄さんだけではない拓也の覚悟、ビーファイターの命がけの戦いを目の当たりにした少年は前向きに生きていく事を約束するが、 大作にしっかり悪戯。そんな大作に拓也が手を伸ばし、改めて手を繋ぐヒーロー達、でオチ。
 最後、麗が間に入って手を繋いだ3人が歩いていくというのは、 ちょっとした子供っぽさを入れる事で今作の爽やかな仲間意識を明るく描いて、良いカットでした。
 実質初といっていい拓也メイン回。個性を付加するというよりは、これまでの要素を踏まえつつ、 ヤバさを強調(笑) にこやかで心優しく自然を愛する男なのに、常に<正気度>がギリギリという、 甲斐拓也’はいったいどこまで走って行けるのか。
 昆虫の声に身を委ねるんだ!

◆第14話「必殺地獄の迷宮」◆ (監督:渡辺勝也 脚本:宮下隼一)
 坂本監督に続いて、戦隊畑から渡辺監督が参戦。脚本陣のシェイプアップと並行して、演出陣の積極的な入れ替え意図が見えます。
 ビーファイターを倒すべく、ジャマール3幹部が直接出馬。 知り合いの少女・ミフユの見舞いに買ったオルゴール人形に仕掛けられた罠により、 拓也は不思議な閉鎖空間ジャビリンスへと閉じ込められてしまう……。
 「判決。被告人・甲斐拓也を、銃殺刑に処す」
 処刑人に撃たれた拓也が目を覚ますと何故か森の中に居て、謎の武士や褐色の女戦士(ジェラの中の人?)に次々と襲われ、 次に目を覚ますと夕暮れの野原で子供達に語りかけている紙芝居屋(千葉繁)……と目まぐるしく移り変わる奇妙な世界で不条理な攻撃を受ける、 というストレートな魔空都市オマージュ(『宇宙刑事ギャバン』第15話「幻?影? 魔空都市」)回。
 連絡の取れなくなった拓也を探して病院へ来た大作と麗もジャビリンスに飲み込まれ、自転車部隊に襲われるのは、 その監督を務めた小林義明オマージュか。
 もやもや空間で合流した3人は、棺桶から出てきた自分達の影と戦闘になり重甲するが、 再び移動した野原で巨大な子供達に捕まって標本にされそうになる……と、これは昆虫戦士である今作の特徴を取り込んで面白かったです。
 ピンに刺されそうになって遊園地に飛んだ3人は、アトラクションに弄ばれ、武士とピエロと女戦士に迫られ、再び夕暮れの野原に。
 「刻々と迫るタイムリミット〜。はたしてビーファイターは、ジャビリンスから脱出できるのか。その時、 現実世界にも異変が起こりました。ミフユちゃんの容態が急変したのです」
 「なに?!」
 病院から始まる、というのも元ネタオマージュだと思われるのですが、そこで発端の少女を巻き込む事で嫌な精神攻撃をプラスし、 ただのオマージュではない一ひねりを入れてきたのも良かった点。
 「実は、ミフユちゃんの命も、オルゴールと連動、同調していたのです。あの時、拓也はミフユちゃんの命のネジを巻いてしまったのでしたー」
 再び舞台は移動し、いよいよ3幹部と直接対決。幹部トリオ、まさかの仲良し腕組みハリケーン攻撃が炸裂する!
 (インセクトアーマーよ、逆転のチャンスを…………そうか!)
 絶体絶命のその時、突然、光る角。恐らく第3話で使ったものと同じ技と思われますが、マッスル振動波で窮地を脱したビーファイターは、 スティンガーウェポンで反撃。3幹部は撤退し、ビーファイターはジャビリンス脱出に成功すると呪いの人形を破壊し、 ミフユの容態も回復するのであった。
 一歩間違えると、少女の息の根を止める所だったと思うのですが、結果オーライ……でいいのか(^^;  折角の一ひねり要素だっただけに、雑な解決しか取りようが無くなってしまったのは、少々残念。
 なお、冒頭から知り合いとして扱われるミフユと拓也達の関係についての説明は潔く全く無いのですが、 ビーファイターが説明なく子供と知り合いなのは第1話からなので、許容範囲か。
 そしてジャマールでは、情けなく帰ってきた3幹部に、ガオームが大激怒。
 「我が忍耐、いつまでも続くと思うな! おのれ、ビーファイター〜〜!!」
 ……かなり気の短い、ガオーム様であった。
 たびたび戦力に不安を感じるジャマールですが、更に“上層部が現状に危機感を抱いている”事が明確となり、 ますます不安が募ります。なまじ作戦の方向性は悪くないだけに、予算を、もっと予算を!
 純然たるオマージュ回でしたが、元ネタが大葉健二の圧倒的魅力あってだけに、元ネタを知っているとインパクト不足は否めません。 逆に、元ネタを知っていると大体の事は、まあオマージュ回だし、で流せるのですが。 『ギャバン』が毎回の魔空空間のスペシャル版としての魔空都市だったとの比べると、 今作におけるガオームゾーンは積み重ねも物語における意味性も薄いので、その辺りはどうだったのかなぁ、とは。
 次回、ブタとアイドル……って、渡辺監督の本命はこっちか?!

◆第15話「翔んだアイドル」◆ (監督:渡辺勝也 脚本:扇澤延男)
 街に出現した合成獣ブーブーブーの鼻息を浴びた人間は、ブヒブヒ、としか喋れなくなってしまう。
 「私はブタじゃない! 人間の声を返して!!」
 筆談で事情を聞いた被害者の、必要以上に悲痛な叫びが、なんとも扇澤さん(笑)
 「ブーブーブーよ、人間どもから声を奪え! 片っ端からブヒブヒにするのだ。はっはははは」
 言語というコミュニケーション手段を奪う事で人間社会に致命的損害を与える恐るべき作戦…………の筈なのですが、 「ブヒブヒ」という言霊が強烈(笑) この役回りをシュバルツではなくギガロに持っていく辺りが、今作は巧い。
 「なんとも珍妙な作戦だが」
 「しかし、確かに人間どもを混乱に落とし込む事ができる」
 「混乱が頂点に達したその時こそ、我らが侵略の手を、一気に伸ばすのだ」
 ……ジャマール、作戦は毎度悪くない所を突いているし、初動の手際も悪くないのですが、どうしてここまで、 弱腰に落ちぶれてしまったのか(涙)
 開戦直後の電撃作戦に失敗し、予算と兵力不足から決定的な打開策を打ち出せない内にじり貧になっていく、 ってジャシンカ帝国(『科学戦隊ダイナマン』)と同じパターンですが、果たして、ジャマールに希望の火が灯る時はあるのか。
 語感の間抜けさの一方で街に確実に混乱が広がっていく中、自動車整備工の気のいい青年・小泉守は、 声がブヒブヒになってしまいマスコミに追われる憧れのアイドル・矢野かおるを助け、2人は逃避行。守は、 子供には好かれるけど同僚にはいびられ、自分にあまり自信がなくて今居る場所に疎外感を覚え、 何もいい事はないと言いながらも田舎への仕送りの為に仕事を頑張っている、という実に扇澤造形。
 ビーファイターはブタを見つけて重甲するが、そこに飛んでくる緑のマント。
 「ブーブーブーを倒せば、浴びせた鼻息の効果は消え、人間どもに声は戻る。しかぁし!」
 「しかぁし!」
 「人間を全てビヒブヒにするまで、こいつを倒させはしない」
 ここまで、展開は割と雑なのですが、ノリノリのギガロを中心に、変に面白い(笑) また、この先の伏線になっているのですが、 状態異常の回復方法を宣言しているのは、地味にポイント。
 ジャマール戦闘機が出撃し、ビートマシンで迎撃している内に、ブタは逃走。 空から捜索を続けたレッドルが不時着した戦闘機が修理されているのを発見して3人で向かうと、 そこでは守がジャマール戦闘機を飛べるようにしようとしていた。
 人目を避ける逃避行−修理の特異な整備工−ビーファイター妨害の為に出撃した戦闘機、と別々の展開を一つに繋ぐ持って行き方は、 さすが鮮やか。
 「二人で逃げる事にしたんだ。誰も追ってこない、誰も居ない、遠い所へさ」
 「逃げる必要なんかない。戻るんだ、彼女の声」
 「怪物を倒しさえすれば」
 「……倒さないでよ、その怪物!!」
 そしてこのひねり。
 「声が戻れば、彼女は僕なんかの側から去って行くよ! ……また手の届かない世界の人になっちゃうよ」
 「マモさん……」
 「もうすぐなんだよ……。もうちょっとで、修理が終わるんだ。飛べるんだ。飛んでいけるんだ、二人で。翼の限り、遠い所へさ」
 前作『ブルースワット』から、この「ここではないどこかへ」というテーゼがやたらストレートに押し出されるのですが、若干、 過剰になっている気はします(^^; まあこれは、私が扇澤延男に注目して見ているからで、あくまで1年間の中の数話、 としてはそれほどでは無いといえるでしょうが。
 今回に関しては、当然アイドルの快復を喜ぶと思われた好青年が、 自分の欲望に負けてしまう……悪の存在を具体的に描くヒーロー物において、“間接的な悪の誘惑”に話の焦点を移動させる、 という構成はお見事。
 そして――ヒーローは、それを許すわけにはいかない。
 「相手の不幸につけ込むような、そんな寂しい夢は見ないで! 私は怪物を倒す。被害に苦しんでる人の為に。そしてマモさん、 あなたの間違った夢を終わらせる為にも」
 ブタ出現の報に向かったビーファイターは、食物を汚染して被害の拡大を企むブタを阻み、麗、火薬ダッシュから、 大ジャンプで土管の上にひらり。
 「ブーブーブー、罪のない人達の声を、奪い取るなんて許せない! おまえをこの手で倒す――重甲!」
 更に、3方ズームアップから主題歌2番に合わせての変身、という超ヒロイック演出。
 加えて、前回今回と、風邪でも引いたのか麗の声がえらくハスキーで、なんだか『ジェットマン』のマリア似…… と思っていたら、麗役の女優さんが第14話で撮影中に負傷し、かつてマリアを演じていた佳山まりほ(当時)が代役で声をあてていたとの事。
 その影響でただでさえ高かった麗の女戦士度が更に上がっているのですが、今作自体が作風を戦隊に寄せているのに加え、 今回は戦隊畑の渡辺監督に対するオーダーもあったのかと思われ、ここ数年の《メタルヒーロー》シリーズにおける、 女性戦士ポジションが冴えない流れを改善しよう、という意識はやはり強く感じられます(『特捜ロボ ジャンパーソン』の三枝かおるは、 女性戦士でもないのに凄い存在感を醸し出しましたが)。
 (寂しい夢でも、しがみつくしない人間も居るんだ……)
 主題歌そのままで場面を切り替え、食料調達から戻ったかおると共に、修理を続ける守。
 「飛ばしてみせるからね、必ず。行こうよね、遠い、遠い所へさ」
 一方、ブタを追い詰めるビーファイター。
 「人間ブヒブヒ化作戦も、ここまでよ」
 ガオームゾーンが発動し、巨大ブタが火を噴くのは、『ギャバン』そのままな絵。 怒りのレッドルが個人技トルネードスパークでブタを撃破し、男2人、何の役にも立たず(笑)
 あ、どうでもいい話ですが、最近、ハンガーを手にすると思わずスティンガープラズマーな気分になって困ります。幾つだ。
 そして――
 「この配線さえ終われば、修理は完了だからね」
 「いよいよ飛べるのね!」
 舞踏会は終わり、12時の鐘が鳴る。
 かおるの声は元に戻り、執着をぐっと飲み込んだ守は、笑顔で喜びを告げる。
 「良かったね。本当にさ。帰らなきゃね。みんな、心配してるもんね。みんな……待ってるもんね」
 「ありがとう」
 ごくあっさりと、山の中を走り去るアイドル(笑) 途中で果物とか集めていたし、アイドルには、サバイバル能力も必要なのです。
 夕焼けの中、涙をこらえて偶像を見送った男は、取り残された戦闘機の中で修理を完了させると戦闘機を再起動し、 アイドルに貰った花をコックピットに残して、寂しい夢と共に戦闘機を自爆させる。
 「終わった……」
 それから数日後――平凡な日常に戻った守の元をかおるが訪れ、流れ出す謎のアイドルソング。
 「空、飛んでみたかったよね。あんなに2人で頑張って、修理したんだもん。ね?」
 アイドルソングをBGMに、冒頭で守が子供から預かって修理していたラジコン飛行機を飛ばし、 2人が何となくいい雰囲気になって大団円…………果たしてラスト2分は、脚本時点では存在していたのか(笑)
 物語の構造としては、現状の改善よりも逃避を選ぶ性向にある守の脱皮を描くという筋立てだと思うのですが (アイドルを笑顔で見送った所でそれを果たしたと見ても良いかもしれませんが)、それが結局、幸運の女神様によってもたらされる、 というのは若干の違和感を覚える所。そもそも、守のアイドル好き自体が、 “TVの向こうの偶像への逃避”として描かれていたわけであり、 山中逃避行でも別にかおるの偶像ではない部分を目にしたわけでもありません。そういう意味で、 恋に恋する状態からあまり変質が見られない気がするのですが、「これから始まる」と麗が言っていたように、 これをきっかけに変わっていく希望――飛翔――の可能性を見せたオチ、という事でいいのか。
 大切な人との出会いをきっかけに変わっていく、という展開そのものはあってよいと思うのですが、 「出会いによる変化」という所には劇中の焦点がなく、てっきり「別れによる変化」の物語構造に見えたので、若干、 納得しがたい所が(^^; まあ、あのままだとあまりにアイドル酷すぎますし、 マイルド風味のハッピーエンドは今作らしくはありますが。
 ……あるのですが、ビーファイター3人が二人を見守るラストカットで、大作が、 凄く面白くなさそうな顔をしているのは何故だ(笑)
 ところで、『翔んだカップル』のパロディぽいのに、(歩道橋から)翔びそうになったアイドル、 アイドルの想いを乗せて翔べなかった戦闘機と翔んだラジコン、事件の発端はトン(豚)だアイドル、 と多重に意味のかかっているサブタイトルが小憎らしい(笑)
 次回――かみなり様?(ドリフ)

◆第16話「炎の超次元少女」◆ (監督:三ツ村鐵治 脚本:鷺山京子)
 大作は幻覚を操る傭兵・イルバ(武器である剣の柄がぐにぐに動くのが面白い)に襲われるが、 花を治す不思議な能力を持った少女・ミナの力で窮地を救われる。実はミナはかつてジャマールに滅ぼされたボタニア次元の生き残りであり、 記憶を封印され、母親に偽装した護衛ロボに守られて暮らしていたが、ボタニアを襲撃したイルバに対抗する力を持っていたのである。
 街を直接攻撃するイルバに立ち向かうビーファイターだが幻覚により同士討ちとなり、大ピンチ。 イルバが活動する影響で記憶を取り戻したミナは、ボタニア次元を再生する使命よりも、知り合いである大作の危機を救う事を優先し、 護衛ロボを振り切って戦場へ向かうと、幻覚を妨害してボタニア人の正体を現す。
 ミナ正体の見た目は、ボタニア次元人が植物から進化したという事で恐らく森の妖精的なイメージだったのでしょうが、 緑アフロのかみなり様(ドリフ)に見えます……。
 エネルギーを消耗して病院に運ばれたミナは自分に託された次元再生の使命――ボタニア次元人は、 DNAを記録した種子を蒔く事で再生できるのだ!――をビーファイターに語るが、そこに飛び込んできた護衛ロボが、 現次元を脱出する為に、ミナの身柄をさらっていく。
 今回この、とにかくミナの命を守る事を最優先する、というもう一つの使命感が、融通の利かないロボットの形で混ざっているのが、 物語の良いアクセントになっています。
 ジャマールに存在を知られてしまったミナを守る為に隠しておいた次元移動カプセルに急ぐ護衛ロボだが、 ビーファイター打倒の前に天敵の始末をもくろむイルバの攻撃を受けてしまい、そこに駆けつけて二人を守るビーファイターの姿が、 実にいいヒーロー。
 青と赤がイルバに立ち向かっている間に、二人を連れてカプセルへと向かう大作だが、ミナの心には一つの決意が芽生えていた。
 「私、元気になったら、お兄ちゃんと一緒に戦います」
 「ミナちゃん、もう十分だよ。君はジャマールに正体を知られてしまうと知りながら、俺達の為に、 エネルギーの全てを使ってくれたじゃないか」
 「赤い光が見えて、イルバの呪文が聞こえた時、私、お兄ちゃんが心配で、黙って見ている事が出来なかったの」
 「ありがとう! でも、君には大切な使命があるんだ」
 「……」
 「そして俺にも使命があるんだ。――地球を守る事。平和を、愛を守る事。俺達にはインセクトアーマーがある。 地球の全ての命が俺達の味方だ。ジャマールなんかには絶対に負けない。だから君は、君の使命を果たすんだ。故郷、ボタニアの為に」
 ここまでの積み重ねでいえば、もしかしたら大作は、拓也や麗ほど「使命」に重きを置いていないかもしれないけれど(先日、 “やる気”を注入された件はありますが……)、ここで、“子供を戦わせない”為に、「使命」を持ち出す。
 自分は大切な「使命」として戦う――だから、君も大切な「使命」の為に戦いを避けて旅立て、 という姿はまさに“大人のヒーロー”であり、 基本的に無条件に子供の為のヒーローであるビーファイターの示すヒーロー像、というのがだいぶハッキリしてきた感じがあります。
 もう十分だ→ありがとう→俺にも使命がある、という流れも綺麗。
 「お兄ちゃん、いつかまた、アイスクリーム食べようね」
 「うん、約束だ」
 ミナは大作の説得を受け入れるが、青と赤が川落ちしてしまい、カプセルを目前にした一行に迫るイルバ。
 「イルバ! 人の美しい心こそ、何物よりも強いんだ。邪悪な力に決して負けはしない! 行くぞ! ――重甲!!」
 緑とイルバが一騎打ちをスタートし、大作を心配するミナをロボットが強引に引きずっていく、と今回終始、 少女の感情とロボットの忠誠心が噛み合わないまま、というのが面白いのですが、ここもまた、是非を別に、 子供と大人の対比が描かれているといえます。
 ジースタッグの奮闘の甲斐もあってカプセルは無事に出発。青と赤が復帰するも再び幻術に囚われたビーファイターは、 自前魔空空間な展開で幻覚の中で一般市民に襲われる。
 (負けられねぇ……ミナちゃんと約束したんだ……そうだ、あの時、ミナちゃん)
 イルバの幻術が発動する前に赤い光が見えたという言葉を思い出したジースタッグは、 ビートスキャンによってイルバの剣の柄にある目が幻術を発動させる事に気付き、それを破壊。
 「な、何故だぁ?!」
 「教えてやるぜ。正義は必ず勝つんだ!」
「奇械人ハゲタカン、トドロキ博士を狙ったわけはなんだ」
「知りたいかライダーストロンガー。死ね!」

(『仮面ライダーストロンガー』第10話より)

 ブラックサタンの奇械人ばりに会話がキャッチボール出来ていないゾ。
 ここから主題歌スタートで反撃開始し、レイジングクワガタで撃破。スティンガーウェポンは、 段々バンク以外でも使ってくれるようになっているのは嬉しい。
 (さようならミナちゃん……いつかきっとまた、アイスクリーム食べような)
 そして大作は、地球を平和にする事を胸に誓い、ミナのカプセルは別の次元へと飛び去っていくのだった……。
 ミナがイルバに対抗できる理由が、ボタニア人は各自色々な能力を持っているからだったり、 ミナが大作を心配する背景となる交友がほぼ描かれていなかったり、と瑕疵はあるものの、 上述したように後者に関しては“ビーファイターはそういうヒーローである”という世界観で行くようなので、 その世界観に則った王道の展開として、鷺山さんの綺麗な文法が存分に力を発揮。
 子供の為に戦う大人のヒーローとして、格好いい大作でした(このポジションが拓也に回ってこないのは今作のちょっと変わった所)。
 次回――悪化し続ける会社の経営を救うべく、遂に3幹部が力を結集して合体怪人を送り出す!
 「傭兵の戦闘力・合成獣の攻撃力・戦闘メカの破壊力
 …………ん?

 筋肉の気配しかしないけど、大丈夫かジャマール?!

◆第17話「死闘!!合体怪人」◆ (監督:三ツ村鐵治 脚本:扇澤延男)
 予告からてっきり宮下さんかと思ったら、扇澤さん働いているなぁ。
 傭兵デスマルトとブルービートの戦いで始まり、ビートルブレイクにより勝利する青。
 「ジェラ! かつては無敵を誇ったおまえの傭兵軍団も、今や虫けら退治すら出来ぬのか!」
 侮蔑表現としての「虫けら」が、ビーファイターの特性とかかっているのは、地味に良い所。
 後年だと、『炎神戦隊ゴーオンジャー』(2008)で、元警官のキャラクターが自分を「野良犬」と卑下するのが印象的だったりしましたが、 こういった細かい重ねに気が利いていると、全体の面白さを底上げしてくれます。
 「この役立たずどもめ!」
 3幹部は連帯責任でまとめてお仕置きされ、おまえのせいで社長に怒られたじゃないかばーかばーか、と低レベルの内輪もめ。
 「仲違いなどしている場合か!」
 ここで険悪になって足の引っ張り合いと身内同士の追い落としに走るのでは無いのが、相変わらずの連帯感(笑)
 だが、このままでは平社員降格どころか、見せしめの為に処刑されてしまうかもしれない……
 「ええっ?! やだ〜、そんなの絶対やだ〜やだ〜!!」
 「俺も嫌だ!」
 おいギガロ(笑)
 扇澤さんが完全に、ギガロを面白枠にしようとしている……。
 とにかくこれ以上の失態は許されない、とジェラの発案により、3幹部はデスマルトを合同で改造する事に。
 その頃、拓也と大作は、たこ焼きをつつきながら小学生を相手に勝ち戦の自慢話をしていた(笑)
 「どうしてそんなにビーファイターは強いの?」
 「どうしてなんて、聞かれたって……」
 ところが休息も束の間、再生強化された合体怪人デスマルトが街を蹂躙。
 「帰って来たのよ地獄から! ――貴様等の首を取る為にな」
 変身する青と緑だったが、インプットマグナム無効・飛行能力・背中に2門のキャノン砲・腕から変なガス・強力な剣技・重力光線、 と武装と耐性山盛りの合体デスマルトに圧倒され、援護にやってきたテントウジェットまでもが撃墜されてしまう。合体デスマルトが、 ビートルブレイクさえ受け止めた所で、自慢しに現れる3幹部。
 「傭兵としての戦力は勿論」
 「合成獣の攻撃力を併せ持ち」
 「その上、戦闘メカも完備しているのだ。いひひひ」
 予告通りなのですが、知力は。
 「三つの能力を併せ持つ、最強の合体怪物……」
 「虫けらどもめ、地獄へ落ちろ」
 砲撃で吹き飛ばされたビーファイターはアーマーが限界になり、一時撤退。研究所で弱点を分析するが、 これまでのビーファイターの攻撃パターンを全てインプットされたデスマルトには、弱点を見つける事ができない。 意気消沈するビーファイターに対し、3幹部は撮り立てほやほやのビーファイター敗北映像を街の上空に投影する事で挑発すると、 更に人間狩りを始める。
 「人間どもよ聞け! これより貴様達を片っ端から磨り潰す」
 「体中の脂を搾り取り、戦闘メカの燃料にしてやる」
 「更にその絞りカスを、我が合成獣どもの餌にしてくれるわ」
 残虐非道かつ連携の取れた悪の幹部として実にいい嫌な台詞、だったのですが……
 「泣け! もっと泣き、わめけ! ただの脅しとも知らず愚かな奴等め」
 実行しないのか(笑)
 …………うん、追加の業務をやるには、社長の決裁下りてないから、仕方ないですね。地球侵略にも、 予算の限界という組織の都合があるのです。
 この光景に我慢できず、今回も大作は単独で突撃。これだけだとマッスル信仰の悪化になってしまうのですが、 インセクトアーマーの回復を待つべきと止める拓也と対比させる事で、確かにそれは正論だけど、 ヒーローには正論で足を止めてはいけない時がある、という形に収めました。同時に、 闇雲に突っ込んで事態が解決してしまうパワープレイ展開にしない為に、大作を止める拓也が機能しており、 2人の対比で巧く物語とヒーローのバランスを取っています。
 そして……
 インセクトアーマー使用不能・弱点の無い最強の敵、という絶体絶命の局面で人々を救う為に大作が選んだ手段とは、

 腹マイトで自爆

 というのが物凄く『ビーファイター』(笑)
 昆虫魂が、脳細胞に、回ってきただろう!
 侵略者を討つ為なら特攻は当然の手段、選ばれたヒーローがもし倒れてもビーコマンダーが次の適格者を選べばいい…… 故に自爆に活路あり、と凄い所に一貫性が出て参りました。
 デスマルトに組み付くも爆弾のスイッチをはじき飛ばされてしまう大作だが、大作を止めようと追いかけてきた拓也がそれを拾う。
 「今だ拓也! そのスイッチで!」
 「大作! 馬鹿な事を考えるな!」
 おい拓也、今、明確に間があったぞ(笑)
 「渡せ! 奴の懐に飛び込んで吹っ飛ばす以外ないんだ!」
 「渡さん! 希望を捨てるな、大作!」
 「希望? 希望なんてどこにある?! コンピューターは弾き出したんだ、まともな手じゃ俺達に絶対勝ち目はないって!」
 「おまえはどうか知らない! でも俺は、勝てる自信があって戦った事なんか、一度だってない……」
 知恵と勇気とインセクトアーマーがあればどんな敵も恐れはしない、みたいなノリかと思われたビーファイターですが、 ここで拓也が内心の恐怖をさらっと明かすというのは、なかなか熱い展開。
 「聞こえる筈だ、みんなのあの声が」
 ジャマールに囚われながらも、声援を送ってくる人々の声が、2人に届く。
 「俺達がボロボロにやられる映像を見せられながら、それでもまだ、希望を託してくれてるんだ」
 「拓也……」
 「コンピューターにも弾き出せない弱点が、必ずある筈だ。こんな絶望的な方法じゃなく、しがみつくんだ、希望に!」
 一応まとめて吹き飛ばされた後とはいえ、2人の会話が長い割に怪人がちっとも襲ってこないのが惜しかったですが、改めて、 リーダーとしてビーファイターを引っ張る拓也が描かれたのは良かった所。加えて、何かというと玉砕を推奨してくる昆虫魂の特攻主義に、 さすがに若干の否定と修正が入りました。
 「希望の光……」
 そして、昆虫魂と科学のの結晶であるインセクトアーマーを、前向きにヒーローの“象徴”として修正再定義。
 「よーし、希望の光にしがみついてやろうじゃないか!」
 2人は変身し、レッドルも合流するが、やはりデスマルトを相手に手も足も出ない。 ところがいよいよトドメが迫ったその時……どの武器でビーファイターを倒すかで揉め始める3幹部。
 えええ?!(^^;
 ヒーローの志の激突とか、それを支える人々とか、希望の象徴インセクトアーマーとか、中盤の山みたいな展開で来ていたので、 ここでいきなりギャグになったのは驚きました。しかも3幹部が、切羽詰まって仕方なく結託したとはいえ基本仲良し路線だったので、 この局面で揉める、というのはやや強引になった印象(そしてこの3幹部の場合、揉めてもギャグになってしまう)。
 希望を持って最後まで戦い続けるビーファイターと、土壇場で利得に走ってバラバラになる3幹部、 という善と悪の対比構造はわかるのですが、ジャマール側の蓄積を生かし切れなかったのは、残念。
 「弱点があった!」
 剣で切れ、尻尾で刺せ、ガトリングで粉砕しろ、という外野からのめいめい好き勝手な指示に行動不能に陥るデスマルトの姿に勝機を見るビーファイター。
 「所詮は3軍団の力の寄せ集めの合体怪物。継ぎ接ぎだらけなんだ、こいつの意志は」
 「頭の中が、混乱している今なら」
 「倒せる!!」

 弱点:やっぱり知力

 ビーファイターは背を向けた怪人に背後から容赦なくスティンガーコンボを浴びせ、トドメはビートルブレイク・クロス。人々と、 少年達の歓声に応えるのであった。
 「僕たちがどうして強いのか、まだその質問に答えてなかったね。それは、最後まで希望を捨てないからさ」
 そう、幾つ死体を積み重ねても、執念が継承され続ける限り、我々は負けた事にならない!(あれ?)
 一方、逃げ帰った3幹部はガオーム様にまとめてお仕置きされて平謝り、でオチ。
 ラストカットは本編と全く関係なく、えらく高い山の上に立つ3人の空撮なのですが、何か別の日に撮ったカットかしら。
 逆転の要因はやや拍子抜けでしたが、拓也と大作が真っ正面からぶつかり合うという展開は面白かったです。今回、 弱点分析を麗が行ったり2回の戦いにいずれもレッドルが遅れてきたりと若干不自然な展開があるのですが、 負傷の影響で麗の登場をアースアカデミア内だけに限定する為の都合と思われます。拓也と大作の話になったのも、 その事情からの逆算でしょうか。
 次回――首領怒りのガオームツモ。そしてまさかの急展開?!

◆第18話「大首領死す!!」◆ (監督:金田治 脚本:浅香晶)
 前回の敗北を受け、割と深刻に落ち込んでいる3幹部(笑)
 悪の幹部が揃って、暗い部屋で俯いて座り込んでいる、という絵はなかなか見ない気がします!
 「奴等が虫けらなら、おまえ達はゴミだ!」
 そこに現れる、お怒りの社長。
 「しかしだ……我が要塞に、ゴミの捨て場は無い」
 3幹部はビーファイターとの直接対決を命じられて出撃し、先陣を切って戦闘機部隊が街を破壊するが、ビートマシンがそれを迎撃。 対峙したビーファイターと3幹部はガオームツモにより、ブルービートvsジェラ、ジースタッグvsギガロ、 レッドルvsシュバルツでそれぞれ1対1のマッチアップ。
 「ビーファイター、お前達の力、とくと見せて貰おう」
 ガオームが見つめる中、始まる戦いで、これまでの敗北を回想する3幹部。 それぞれ部下が倒されたシーンを回想する事でマッチアップの因縁を強化しているのですが、いきなり回想から入ってしまうのと、 戦闘シーンではBGM無しで回想シーンに入るとBGMが流れるという音楽の使い方が微妙で、ややテンポ悪し。 ビーファイター側も回想を返し、お互い回想の出入りに変なフラッシュ演出があるのが凄く謎。
 「何故だ……何故ビーファイターは、戦えば戦うほど、強くなれるのだ。奴等の力の秘密とは、いったい何だ。 是非とも我が手に入れなければ……ぬぅぅ」
 ガオームに何やら思惑がある一方、邪悪の気配を感じて、アカデミアを訪れるカブトムシ長老。 ビーファイター優位に進む戦いは3対3に合流し、いよいよ3幹部に最後が迫ったその時、突如、戦場にガオームが降臨する!
 「我が名はガオーム。あらゆる次元に君臨する、ジャマール王国を治めし者。我が名はガオーム」
 ふわふわ浮かぶガオーム様は念力ビームでビーファイターを圧倒し、今回も追い詰められる3人。だがそこに現れたグルが、 老師バリアーで3人を救う。
 「何者だ?!」
 「儂は昆虫界の老師、グル」
 「なんだと……?」
 ガオーム様は多分、「昆虫界」ってな・に? と思っています。
 「ビーファイターは我々の希望の戦士。やらせはしない」
 ビーファイターを逃がそうとするグルだが、3人はそれを拒否して突撃。その姿に、グルは3人に昆虫エネルギーを追加注入し、 溢れる昆虫魂を纏った3人の特攻アタックが、ガオームを貫く!
 折角「希望の戦士」という所は前回を拾ったのに、安易な突撃・安直な奇跡、という凄く雑なパワープレイ展開に(^^; まあ、 今回に関しては脚本どうこうというより、構成上仕方なかった感じですが。
 「ガオーム! これが人間と昆虫の力の結晶、インセクトアーマーの力だ!」
 「人間と、昆虫の力……? そうか! それがお前達の……」
 スティンガーウェポンに貫かれながらも、ガオームは至近距離でインセクトアーマーに手を伸ばす事により、昆虫魂のデータを入手。
 「そうだったのか……ちっぽけな昆虫が、これほどの力を持っていたとはぁぁぁ! それで、倒したつもりかーーー! がおぅーーーむ!!」
 ガオーム様のデザインの都合か、4人で重なり合うように倒れ込んだ所で、大爆発。
 ……なんだろうこの、迸る玉砕感。
 爆発の中からヒーロー復帰を見せるビーファイターは残る3幹部を脅すが、その時、激しい地鳴りと炎、 まばゆい閃光と共に凶悪な顔をさらしたガオームが虚空に現れ、3幹部を回収。……それにしても3幹部、 インセクトアーマーボロボロで弱っているビーファイターを前にすっかり逃げ腰になってしまい、ここを生き残っても、 どうやって脅威としての存在感を維持できるのか(^^;
 「ビーファイターよ、お前達の力の秘密は、全て手に入れた。本当の戦いは、これからだ」
 異次元には巨大なガオームの姿が浮かび、ジャマール要塞と合流。もしかしたら要塞はガオーム本体の手なのか、 という大きさのバランスは、なかなかのインパクト。
 「今こそわかったぞ。虫には虫なのだ」
 そして、漆黒の影が姿を見せるのだった……。
 変身前の3人が一切出てこないという変則エピソードなのですが、ではアクションが超充実していたかというとそうでもなく (火薬は大量に使ったけど)、ビートマシン出撃や回想シーンなどで微妙に尺を稼いでいる辺り、 麗が出せないのでいっそ3人とも出てこないエピソードを作った、というような気配。
 ガオーム様自体は恐らく、次元侵略の為に数多くの戦いを繰り返す中で、 行った先の戦力を入手してより組織(自身)を強化しているタイプと思われ、 ガオームの真の姿?を見せつつ劣勢になった悪の組織がヒーローチームの力を分析して取り込もうとする展開自体は悪くないのですが、 vsガオームがあまりに唐突かつネタ割れしすぎて露骨に茶番になってしまい、盛り上がりに欠けてしまいました。
 エピソード単体でどうこうというより、諸事情合わさった結果、巧く歯車が噛み合わなかった感じ。 もう少しBFvs3幹部のバトルが面白ければ“そういう回”として楽しめたと思うのですが、今ひとつ工夫が無く、 総じて「3幹部リタイア?!」「ビーファイター今度こそ危ない?!」「ガオーム様死んだ?!」という、 緊迫感に欠けてしまったのが残念。
 次回――予告に登場した黒い戦士のデザインはえらく格好良いので、新展開に期待。

→〔その4へ続く〕

(2016年10月30日,2016年12月14日)
(2017年3月31日 改訂)
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