■『重甲ビーファイター』感想まとめ1■


“目には目を 歯には歯を
ルール無視の奴等に 愛の掟で戦う戦士”


 ブログ「ものかきの繰り言」の方に連載していた『重甲ビーファイター』 感想の、まとめ1(1話〜6話)です。文体の統一や、誤字脱字の修正など、若干の改稿をしています。

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◆第1話「昆虫戦士だ!!」◆ (監督:澤井信一郎 脚本:宮下隼一)
 動物学者・トレーナー 羽山麗
 樹木医 片霧大作
 昆虫学者 甲斐拓也
 と、メインキャラクターの基本情報についてはどんどんテロップで説明。
 世界各地で昆虫の異常行動が観測され、亜熱帯のジャングルに調査団の一員として派遣された甲斐拓也(ちなみに演じる土屋大輔は、 『五星戦隊ダイレンジャー』でキリンレンジャーを演じた土屋圭輔の、双子の兄)は、洞窟の中で巨大なカブトムシと出会う。
 「侵略者が来る……異次元から、侵略者が……」
 「カブトムシが喋った!」
 「地球を征服し、支配する為に」
 「そうか。それで昆虫たちは逃げ出そうとして、異常な集団行動を」
 適応はやっっっっっ!
 「違う。戦う為だ。たとえ地球上の昆虫が絶滅する事になろうと、最後の一匹まで戦い続ける」
 そして昆虫たちは、超前のめりであった。
 拓也は巨大カブトムシに、人間も一緒に戦える筈だ、と告げ、 日本では向井博士を中心として異次元からの侵略者に対抗する研究チームが活動を開始するが、政府や国連はその報告を当然相手にしない。
 「世界的な昆虫の異常行動は異次元からの侵略者と戦う為! 動物や植物も同じ反応をしており、 人間もこれに協力して戦うべきだ!」という主張を聞き入れられずに憤る博士ですが、 その場で病院に連れていかれなかっただけマシだと思うのですが。
 どう考えてもジャングルの奥地で危ないキノコに手を出してしまったと思われている研究チームは、こうなったらもう政府には頼らない、 と独自に強化アーマーの開発を進めるが、時既に遅く、異次元から地球に巨大な手が迫り来る――その名を、侵略者ジャマール。
 巨大な右手の形をしたジャマール要塞から、侵略の先駆けとしてとりあえず戦闘機部隊が侵攻してくるというのは、 凄く戦隊シリーズですが、これに昆虫達が立ち向かう、という絵で独自性を出しました。
 ジャマールは、首領ガオームの元に、傭兵軍団・戦闘メカ軍団・合成獣軍団それぞれの団長が居るという組織構造で、 その前線基地として新宿都庁を早々に占拠(OPで、各幹部のスーツアクターが明記されているのはかなり珍しいか)。
 「狩れ! 狩り立てよ。モルモット用の人間を捕獲するのだ」
 近年になるほど基本的に戦闘員に人格を付与しない傾向になりますが、ジャマール戦闘員は初回からかなり喋るのが特徴的。 しかも仲間の仇だとカブトムシを踏みつぶそうとするなど、けっこう人間的。
 そのカブトムシを守る為、麗と大作はどさくさで戦闘員と戦う事になるが、捕まってしまう。一方その頃、 向井博士率いるアースアカデミアでは科学の粋を集めて開発したアーマーの起動実験に失敗していたが、 決して諦めない拓也の心に応えるかのように姿を見せた巨大カブトムシが、アーマーに昆虫の生命エネルギーを注ぎ込む。
 「何億匹もの昆虫が、自ら捧げた生命を圧縮した、昆虫の能力の結晶だ」
 怖い、なんか怖いよ昆虫界……!
 「アーマーに、命が宿った」
 モノトーンだった3つのアーマーが青・緑・赤の3色のアーマーへと姿を変えて起動すると、 更に手のひらサイズの変身アイテム・ビーコマンダーへと変形。
 人類の科学+神秘のパワー、とする事で、一方的なマジックアイテムの授与となる事を避けつつ、 「変身」のオーバーテクノロジーの理屈を付け、ある程度勝手に動く(だからいきなり決めポーズも取れる)、 自らふさわしい装着者を選択する自意識、を綺麗に収めた上でアーマーそのものを人と昆虫が手を取り合ったシンボルにするというのは上手い設定。
 拓也はその1人として選ばれ、「重甲!」の掛け声でブルービートに変身。
 <レスキューポリス>3部作も掛け声と変身バンクはあったのですが、車という巨大転送機に乗り込むのが必須だったのに対して、 掛け声&ポーズでその場で変身するというのは、実に『超人機メタルダー』(1987)以来。 <レスキューポリス>3部作が基本的に椅子の上であり、『ジライヤ』『ジバン』『ジャンパーソン』『ブルースワット』と全て、 いわゆる「変身ポーズ」が無かった、というのは中期《メタルヒーロー》の特徴的な要素。
 この辺り、シリーズ内での変遷や、例えばゴレンジャーは瞬間変身だったとか、系統立てて追っていくとまた面白そうではありますが、 横道に逸れすぎるのでとりあえず割愛。変身における、 手持ちアイテム型/掛け声型/手持ちアイテム+掛け声型/気がつけば一瞬型/その他、 などの分類は探すと先行研究がありそうな気もしますが、アイテム+掛け声型が主流を占めるようになるのは、 案外と90年代半ばになってからだったりするのでしょうか(作品数が減っている作用がありますが)。
 《平成ライダー》の途中から、ベルトが体内から生えるものではなく外装するものに変化したのは割とイメージに対して大きかったのではと思われるのですが、 『555』は外付けで『クウガ』は内蔵型として、『龍騎』と『アギト』はどうだったっけ……。
 話戻って、処刑されそうになっていた大作と麗も装着者に選ばれ、変身・爆発・脱出で、 ジースタッグとレッドルが誕生した所で主題歌イントロが流れ出し、 ブルービート登場に合わせて歌が入るド直球のヒーロー演出は素直に格好いい。
 「何者だ?!」
 「重甲・ビーファイター!」
 拓也以外の2人は、超巻き込まれて困惑中ですが、とりあえず力強く名乗る!(笑)
 スーツは適度に勝手に動くから問題無しだ!
 これを見た首領ガオームはガオームゾーンを発動し、巨大な手によって異空間に飲み込まれる3人の戦士。
 ナレーション「ガオームゾーンとは、首領ガオームだけが発生させることの出来る、超次元のバトルフィールドである。 ガオームゾーンの中では、ジャマール怪人たちのエネルギー変換率が高まり、異次元兵士としての最高のパワーが発揮できるのだ」
 しばらく魔空空間なバトルが続いてピンチに陥る3人だが、ブレード、クロー、プラズマーの各種スティンガーウェポンが発動し逆転。 カブトダイナミックにより傭兵サーベル怪人(なお声は鳥居誉也)を撃破する事でガオームゾーンを脱出し、 さらわれた人々を助け出す事を誓うのだった……!
 スティンガーウェポンはいずれも回転ギミックが付いているのが特徴で、ストレートに格好いい系。 レッドルのプラズマーが回転しながらビームを迸らせてなかなか凶悪。ブレードはなんだか、どこかで見た事ある気がします。
 ナレーション「地球に生きる、全ての生命を守る為、新戦士、重甲ビーファイターは誕生した。だが、ジャマールの侵略作戦は、 着々と進行している。戦え、重甲ビーファイター!」
 やたらに昆虫・植物・動物に親和性の高いメンバー構成で、あらゆる命を平等に扱う姿に説得力を持たせ、 テーマ性の押し出しもストレート。
 『宇宙刑事シャイダー』以来の特撮作品参加となる澤井監督をパイロット版に迎えて雰囲気の一新を狙った上で、
 鉄板の昆虫モチーフ・メタリックな3色ヒーロー・ヒロイックな「変身」の復活・わかりやすい異次元からの侵略者・原点回帰の魔空空間ギミック
 と、なりふり構っていられないという姿はいっそ潔く感じます。
 歴史の位置づけとしては、《メタルヒーロー》シリーズ“終わりの始まり”といえる今作、 以前の配信で見た時は時代を巻き戻しすぎではないかと思ったものですが、前作が前作だっただけにやむを得ない仕儀と納得してみると、 この思い切った原点回帰と王道路線で果たしてどこまでストレートを投げきれるのか(そしてどんな変化球を混ぜてくるのか)、 楽しみにしたいと思います。

◆第2話「踊る人間狩り!!」◆ (監督:澤井信一郎 脚本:宮下隼一)
 合成獣ヘビーズネークは、何と何を合成したのか問題。
 ジャマールは捕らえた人間達をジャマールメロディで洗脳すると凶暴化して市街地へと送り出し、 うねうね踊りながら街に繰り出す黒タイツ軍団。
 ……澤井監督は、あらゆる監督作品で変な踊りを入れているわけではないと思うのですが(もしかしたら入れているのかもしれませんが)、 上層部からの「不思議な感じでお願いします」というオーダーに応えた感が漂います。
 この黒タイツ軍団が何か悪さをするのかというと、街を練り歩いているだけなので、少々困るのですが(^^;
 黒タイツ軍団の正体がさらわれた人々だと知った拓也達だが、 ジャマールの前線基地周辺には強力なバリアが張り巡らされていて入り込む事が出来ない。考え込む拓也達は、昆虫の擬態にヒントを得て、 変装潜入作戦を思いつく。
 虫の生態に合わせたアイデアを、という事だったのでしょうが、カブトムシが透明になり、 遠いジャングルから老師グル(巨大カブトムシ)がアドバイスを送ってきたりと、かなり強引。そして何故、 麗が背広+帽子+口ひげの男装(なのに長髪まま)で、潜入役なのか!
 カブトムシの命が危ないとジャマール戦闘員に躍りかかった時からおかしな雰囲気はあったのですが、 初回(変身前)から素で異常に強かったり、本当に動物学者/トレーナーなのか疑念が強まります。
 緑「そろそろゼロアワーだ」
 赤「ジャストメインイベント!」
 ……「イヤッハー、パーティの始まりだ!」みたいなノリで、この人、絶対カタギじゃない。あれか、動物学者/トレーナーって、 軍用犬の訓練とか軍用イルカの運用研究とかしている人なのか。
 ビーファイターはバリアの破壊に成功し、新宿都庁とその周辺の奪還に成功。時限爆弾でバリアを吹き飛ばしたら、 何故かマップの状態異常が回復、というのはさすがに大雑把(^^; せめて普通の時限爆弾ではなく、 数十万の昆虫の生命エネルギーを凝集した昆虫爆弾とかに出来なかったのか。
 ガオームゾーンも今のところ、好き勝手に攻撃される→突然スティンガーウェポンを取り出して反撃、だけなので、 もう一つ盛り上がりません。大幅な先祖返りという事もあって、パイロット版にしてもその辺りの手探り感が強いのですが、 物語と繋げた新しいギミックではなく、過去に人気のあったギミックを取り入れただけ、というのが露骨になってしまっており、 早めにもう少し、今作ならではの意味づけをしてほしい部分です。
 今のところ取り立ててこれが面白い、というのは無いのですが、『ブルースワット』完走後に見ると、 “ホッとする”というのが正直な感想(^^; あまりにも守りに入りすぎている上でそれほど丁寧な造りでもない、 というのは気になりますが、とにかく『ブルースワット』が壊れすぎていたので、まずは「型」を取り戻して強調する、 という方向性自体は悪いようには思えず、そこから作品として跳ねてくれる事に期待。
 地味に怖いのは、
 “異次元からの侵略を感知して兵力を増やす為に意図的に異常繁殖”
 “侵略者の戦闘機に対して特攻戦術”
 “生命エネルギーを結晶化する為に次々と自決”
 という、繁殖・特攻・自決! を当然の戦略とする昆虫界と、それを自然に受け入れる甲斐拓也。 拓也、地が笑顔なので、バリアの話している時も爆弾の話している時も常に薄い笑顔なのも、若干の狂気を感じます。
 麗も危険な香りが漂っているし、向井博士も政府への報告が本気ならネジの不具合を感じますし、“ヒーローだから”以前の部分で、 メインキャラ達がちょっとずつ壊れている気がしてなりません。今のところ一番まともそうなのは大作ですが、 成り行きでビーファイターに飲み込まれつつあり、明日はどっちだ!?
 次回、昆虫メカ軍団出撃。

◆第3話「出た 昆虫メカ!!」◆ (監督:三ツ村鐵治 脚本:宮下隼一)
 あのひょろい奴(拓也)が一緒にトレーニングしないのはチームとしてどうかと思うぜ! と、 研究所のジムでマッスルをアピールする大作と麗。そういえばビーファイターは、 戦隊との差別化としてアーマーらしさを強調する為か割とムキムキ体型で、 そのため名乗りのポーズなどがボディビルを彷彿とさせる所があるのですが、やはり筋肉は、 種の壁を越えて意思疎通を成立させるのか。
 HAHAHAHAHA、大胸筋に、ストレッチパワーが溜まってきただろう!
 一方その頃、
 「答えよ! ジャマールとは」
 「光を闇に変え」
 「善を悪に変え」
 「全宇宙、全次元を憎しみと争いに黒く染め上げ、我らが植民地として支配下に置く。アハハハ、それこそが」
 「「「「それこそが、ジャマール、ジャマール、ジャマール!!」」」
 「ジャマールの大いなる前進を邪魔するビーファイターを、抹殺せよ!」
 ガオーム様は、そこはかとなく小粋な駄洒落を交えながら、前線基地を奪い返された腹いせに標的をビーファイターへと定めていた。
 団長シュバルツと共に戦闘メカ軍団からハンマコングが出撃してビーファイターにデスマッチを挑み、それをモニターしながら、 シュバルツは意志を持ち自ら肉体を作り出したコンピューターウィルスであり執拗な性格、と呑気に設定を解説する残りの幹部2人。 この設定が今回のエピソードで活用されるのかと思ったら全くそんな事は無く、 強引かつ面白み皆無でここにねじ込んだ理由はさっぱり不明(^^; もしかして、3話ぐらい後で早速リタイアするのかシュバルツ。
 人質を救出するもビーファイター3人がビルの崩落に飲み込まれた所でAパートが終了したと思ったら、 Bパート明けた途端に何の溜めもなく無事に登場し、いきなりのガオームゾーン発動で、物語の緩急ゼロ。
 作風がガラリと変わると演出陣の思い切りが良くなって息を吹き返す事はままあるのですが、 三ツ村監督が前作の低調ままでさっぱり冴えません(^^;
 今回に関してはまだ、脚本も演出もガオームゾーンをどこで入れればいいか、というのを悩んでいる感じが強いですが。
 ガオームゾーンで追い詰められた3人は、「敵に学び反撃せよ」という老師の遠隔アドバイスを聞くと、敵をスキャンして弱点を発見。 …………ん? 「敵に学べ」というのはてっきり、敵の戦術を逆に利用しろ、とかそういう事かと思ったのですが、 スキャン機能の使用と弱点攻撃などという、そこまで初歩的な話なのか。
 そもそも戦闘に赴く前に、老師に「ゆけ、戦士達よ。学べ、そして戦え」という台詞があり、 今回冒頭でやたらめったらに「ニューフェイス」(1995年には特に違和感の無い言葉だったのでしょーか)を繰り返していたので、 拓也達は戦闘経験の無いずぶの素人であるから基本から積み重ねなくてはならない、という事だったのかもしれませんが、 第1−2話で、素手格闘とか潜入作戦とか時限爆弾の操作とかしていたので、説得力皆無(^^;
 説明書は事前によく読みましょうレベルの展開になってしまいました。
 金槌怪人の弱点を把握した3人は、更に老師の言葉に従って「昆虫の特性に学び」、腕をバタバタすると謎の高周波が発生。 群れの特性を活かすというチームワークに目覚めるのであった、
 冒頭の「筋肉をつけようとしない奴は仲間とはいえねーぜ」から、「いや、筋肉が無くても僕たちはわかりあえる筈だ!」 と繋げてビーファイターがチームとしてまとまるという意図だったのでしょうが、唐突な虫アーマーの新機能はまだともかく、
 昆虫の特性→昆虫がブンブン飛ぶと謎の高周波が出る→群れの特性→3人でブンブンやれば凄い高周波が出る
 という→部分の連想(3人の発想と心情)がさっぱり伝わってこない為、凄く置き去りにされました(^^;
 これだったら、「拓也、おまえも結構筋肉ついてるじゃねーか!(さむずあっぷ)」「ふっ、 実はプロティンマニアなのさ!(さむずあっぷ)」「グッド! 私も毎朝飲んでるわ!(さむずあっぷ)」 で意気投合してくれた方が納得度が高かった気がします(待て)
 後はお馴染みのスティンガーウェポン連打ですが、「ビートルブレイク!」の気合いが少し増したような(笑)
 「よくも〜」「シュバルツ!」「大丈夫か」
 金槌が吹っ飛んで要塞に逃げ帰ってきたシュバルツに幹部青と赤が駆け寄り、意外と仲良しな3人。
 そんな仲良しトリオはさておき、面倒くさくなったガオーム様は、ビーファイターごと地上を燃やしてしまえとジャマール要塞から空戦部隊を投入し、 阿鼻叫喚の大破壊の中で瓦礫に沈むビーファイター……と思ったら、またも自力で脱出(笑) そこに昆虫メカ完成の報が入り、 一回基地に帰るのが凄く間抜け(^^; 地上に顔を出した重甲基地から3機のビートマシンが出撃した所でナレーションが入り、 まさかのつづく。
 ビートマシンは予告やサブタイトルで煽っておきながら出撃シーンだけで終わってしまい、物凄い肩すかしというかなり冴えない第3話。 Bパート間もなくガオームゾーンが発動する構成からいっても、これ本当はビートマシンの活躍で締める筈だったのが、 諸般の都合で水増しして強引に第4話につづく事にしたのではないかという疑念が募ります(^^;
 次回――今度こそ昆虫メカ活躍……したらいいなできたらいいなあんなゆめこんなゆめいっぱいあるけど。

◆第4話「超マシン大暴れ」◆ (監督:三ツ村鐵治 脚本:宮下隼一)
 気を取り直して、明るいというか爽やかな音楽でジャマール戦闘機に立ち向かうビートマシン。 かなり力の入ったミニチュアワークが続き、やはり予算の問題で2話に分割されたのでは疑惑。
 テントウムシジェットを操るレッドルは、敵戦闘機に背後を取られた状態から急制動で後方に回って撃墜とか、 サキ・ヴァシュタールばりの空戦テクニックを披露し、やはりこの人、カタギじゃないと思います。
 テントウマシンは更にビル火災を消火して街の人から歓声を送られ、TV報道の言及もあるなど、 ビーファイターは対ジャマール組織として一般に認識されているという描写。
 これを見たガオーム様は、もともとビーファイターとか新戦力とか知らないもん! とあっさり前言撤回すると、 ジャマールウェーブにより、地球中の機械という機械を暴走させるダブルプロジェクトを発動し、メカ軍団・デスランチャーが出撃。
 前回ビーファイターに激しくこだわっていたのに、1週経ったらどうでも良くなってしまうガオーム様は、 凄く感情的かつ場当たり的で、早くも駄目上司の予感。
 駄目上司の朝令暮改はともかく、ジャマールウェーブが放射された事で、実弾を撃つラジコン、ガスを噴く冷蔵庫、暴走する自動車、 などなど社会は大混乱。3人組の少年達を追うラジコン軍団はなかなかの迫力で、必至に逃げ惑う少年達は、偶然、 シュバルツがジャマールウェーブ発生装置を設置した倉庫に入り込んでしまう。小学生3人に向け、怪人がいきなりミサイルぶちこむ、 という映像は意外と新鮮かもしれません(笑)
 その頃、調査の為にビーファイターが街に繰り出し、それをシュバルツに連絡する留守番組。今回も仲良し。
 拓也達のバイクやアースアカデミアのコンピュータもウェーブの影響で暴走し、 車やクレーン車に襲われるという生アクションをしばらく見せ、追い詰められた3人の前にランチャー怪人が出現。変身しようとするも、 虫アーマーが暴走する可能性を危惧する拓也達だが、そこに老師からの電波が届き、昆虫魂が入っているから大丈夫と請け負うというのは、 定番の機械暴走作戦と今作の特性(科学+昆虫魂)を巧くミックス。
 サスペンスルフルなBGMで、決意の表情でぐっと拳を握りしめてからの「「「重甲!」」」も良かったです。
 「ブルービート!」
 「ジースタッグ!」
 「レッドル!」
 「「「重甲・ビーファイター!!!」」」
 ラジコンに追われていた子供達が戦場に紛れ込んで装置の場所が判明し、 倉庫へ向かったブルービートは捕らわれていた子供を救出すると装置を破壊。格好いいアクションと共に、 子供のヒーローである事を強調し、4話目にしてようやく、『ビーファイター』流が形になってきた気がします。
 ジャマールの反省点は、大事な装置は厳重に守ろう!
 第2話でも前線基地をどさくさであっさり取り返されていましたが、防衛戦略の概念が薄いのかもしれない、ジャマール。
 作戦失敗にイラッと来たガオーム様は、再びジャマール要塞を突入させ、 吐き出される戦闘機軍団。今回も倉庫の下敷きになるブルービートだが、マッスルであっさり復帰……せず、ビートマシンを召喚。 ここからしばらく、主題歌を被せてのメカバトル。メタルヒーローシリーズとしては久々のミニチュアメカバトルという事でか、 かなり気合いが入っており、クワガタマシンで戦闘員を挟んで蹴散らしたり怪人のミサイルを打ち返したりなど、けっこう面白い映像。
 テントウジェットは、低空飛行で後方に砂塵を巻き上げる事で敵機の視界を塞ぐと、 急上昇して後続の敵戦闘機を次々と壁に激突させるという鮮やかな空戦テクニックを披露。絶対カタギじゃ無い。
 ビーファイターは空戦部隊を撃破し、本日はガオームゾーン無しで、スティンガーコンボでミサイル怪人を撃破。 少年達が粗雑に扱っていたラジコンを修理し、物を大事にする事を教えるのであった、でオチ。
 ビートマシンお披露目・機械暴走作戦・虫アーマー(ビーファイター)の特性、を巧く絡めてなかなか面白かったです。特に、 今作の面白みは虫アーマーの設定にあると思っていたので、そこを押し出してきてくれたのは良かった。
 メカ見せ回はしばしば、物語とメカが巧く繋がりませんが、虫アーマーを間に挟む事で、そこが巧く繋がってくれました。 ビートマシンのミニチュアワークも想像以上に良かったです。一番格好良かったのがテントウマシンで、 一番印象薄いのがカブトマシンでしたが(笑) ……この辺り、前作で女性戦士を雑に扱いすぎたので、 その反省がレッドルに活かされているのかも。
 しかし、冒頭3分ビートマシンが大活躍し、その後凄く普通に別個のエピソードが始まり、 やはり本来第3話のクライマックスだった部分が第4話にズレ込んだとしか思えませんが、何があったのでしょう(^^;
 次回――今回の次回で、虫アーマージャック?! という不安のよぎる予告ですが、今回けっこう面白く見られたので、 波に乗って欲しいなぁ。

◆第5話「重甲ジャック!!」◆ (監督:坂本太郎 脚本:宮下隼一)
 見所は、バイクでジャマール戦闘員をはねる拓也。
 今日も朝から、筋肉の育成に余念がない大作と麗。一方、拓也は向井博士らとビートマシンのを整備しながら、 麗と大作の経歴に言及。
 麗は家庭の都合で幼い頃から各国を転々とする海外暮らしをしており、「戦争などで、自然が破壊され、 多くの人々や動物が犠牲になるのを目の当たりにした」というイメージカットでキノコ雲が発生したり街が廃墟になったりやたら強烈なのですが、 本当に戦場帰りだったようです。
 大作は10代の頃から日本全国を放浪しており、「開発という名の不必要な工事、埋め立て、森林伐採、 人間の身勝手さを痛感」して マッスルを育てた 樹木医になったのだった。
 「2人とも、一度は人間に絶望した。だが、今、改めて、人間を信じようとしている。拓也、お前も含めて、いいチームだよ」
 誰もそこまで言っていないと思うのですが、物凄く大きな話にしてまとめる向井博士。
 ジャマールでは新たな侵略計画が立案され、超光子プラズマ破壊作戦を3人でプレゼンする幹部達、仲良し。
 「問題は、研究所を覆う防犯用の強力バリア。残念ながら、我らの手で、破る術はない」
 大丈夫かジャマール。
 既に人類の科学力に押され気味なのですが、今後の侵略活動に大きな不安が漂います。
 (かつて俺は、脆くて弱い異次元生物だった)
 作戦指揮を任された幹部緑・ギガロは、1人語りで自らの設定を解説。
 (だが今は、様々な生物から、優秀かつ凶暴な遺伝子や細胞を採取、合成した)
 ギガロは自らの体に薬品を打ち込むと、その細胞から合成獣を作成。虫歯菌のイラストのような合成獣は、 生物の体内に入り込む能力を用いてレッドルとジースタッグの制御を奪うと、虫アーマーの力で研究所のバリアを破壊する!
 一種の洗脳展開なのですが、ジャマールの科学力では突破不可能な防犯バリアが、 レッドルとジースタッグが徒歩で突っ込んでいくと圧力に耐えかねて砕けてしまい、ジャマールの戦力にますます疑念が募ります。 人類科学とジャマール科学のジャンルの違いなのかもしれませんが、 ただでさえ虫アーマーだと突破可能という説得力がこれといって無いのに、徒歩で破壊してしまう為、映像的にも非常にガックリ。
 一方、レッドルとジースタッグの攻撃を受けて変身が強制解除された拓也は一度基地に戻っており、 自己修復機能があるなんて凄いね虫アーマー、と笑顔(地顔)で博士と盛り上がっていて、緊張感ゼロ(^^;  虫アーマーが復活する際も「メンテナンス完了」とどこかズレた発言で、戦力の3分の2が敵に操られているという危機感がさっぱりありません。
 ブルービートは冷凍弾でレッドルとスタッグを凍らせ、たまらず合成獣が飛び出した所で、火炎弾で2人を解凍。 合成獣のピンチにガオームはジャマール要塞を突入させるが、ビーファイターはビートマシンを召喚し、更に追加装備を投入。
 前回に引き続いての気合いの入った特撮で、昆虫メカが大活躍。追加装備であるクワガタのドリルがカブトの中、 カブトのマグネットがクワガタの中に、それぞれ収納されているという仕掛けは面白かったです。 ……テントウのクレーンは結局内蔵になってしまって、貫ききれませんでしたが(^^; また追加装備に関しては、 マニュアルがゴーグルに表示される、という形でリアリティを補強。
 掴んだ岩石で戦闘員を圧殺するのも、マニュアルに記載されていたのです。 決してレッドルのアイデアではありません。たぶん。きっと。まちょっと覚悟はしておけ。
 昆虫メカが戦闘機部隊を蹂躙している間に、ギガロは麗の友人の少女に合成獣を憑依させると、時限爆弾を研究所に仕掛けさせる。 阻止に向かったビーファイターは立ちはだかる合成獣をスティンガーウェポンで瞬殺し、起爆寸前の爆弾は、 向井博士が物理で解除するのであった。
 合成獣がピンチなのにガオームゾーン発動ではなく要塞を突入させるという、 “昆虫メカを活躍させる”という話の都合丸出しの展開に始まり、ビートマシン活躍・合成獣との戦闘・爆破解除、 の3要素が全く連動しておらず、特に爆破サスペンスは完全に余計な要素になりました(^^;
 「ビートマシンを呼べ!」と何故か現場まで言いに来たり、時限爆弾をコード引っこ抜いて止めたり、 と第4話まで出番の少なかった向井博士増量キャンペーンを兼ねていたのでしょうが、 博士も出番増やしただけで別に個性を描いたわけではないので、特に面白くなっておらず、虻蜂取らずの空中分解。
 第1話からの傾向である、話の流れと関係なく設定説明シーンをねじ込む手法でキャラクターの背景を次々と説明したのも、 まとめて台詞にしてしまうと却って流れてしまい、むしろわかりにくく(印象に残りにくく)なってしまっています。
 小西監督の引退にともなってか坂本監督がメタルヒーローに参戦しましたが、原点回帰と古典オマージュとヒーロー作品いいとこ取りが、 こんがらがって思いの外手探り感の強い今作の、悪い部分がまとめて出たようなエピソードでした。

◆第6話「森の叫びを聞け」◆ (監督:坂本太郎 脚本:扇澤延男)
 タカミネ山で発見された未知のエネルギー鉱石オメガストーンの鉱床がジャマールに襲撃される。資源開発局の井崎からの依頼で、 ジャマールを撃退に向かったビーファイターの前に立ちはだかる、傭兵戦士ザイキング。
 バイキングというかガイキングというかなデザインのザイキングですが…………て、あれ、ガイキングってバイキングだったのか?!
 (今頃気付く衝撃の真実)
 重甲した3人はひとまずジャマールを撃退するが、タカミネ山の地下に広がるオメガストーン鉱床の開発が、 樹齢1000年を越える木もある貴重な森林を破壊する可能性に思い至り、井崎に噛みつく大作。 人類のエネルギー問題を解決するかもしれないオメガストーンと比べれば、森一つなど比較する問題にならない、 と井崎はそれを冷たく撥ね付け、ここで前回触れられた大作の背景である、自然と文明(開発)の問題が浮上。
 「さっさとタカミネ山に戻りたまえ。ジャマールの脅威から人類の未来を守る。それだけが君達、ビーファイターの使命じゃないのか?」
 「…………進んでビーファイターなんかになったんじゃねぇよ俺は」
 自分が戦う事で、森が失われてしまう事を知った大作は、コマンダーを置き捨てるとビーファイター脱退。
 「一度は引き受けた仕事を、投げ出すのか」
 「俺が一生の仕事として選んだのは木を守る事なんだ。ジャマール退治なんかじゃありません」
 ここで第2話における大作の、知り合いの子供の為に戦うのであって、無条件に正義のヒーローをやるつもりはない、 という要素も拾われ、個の信念と世界の大義をぶつかり合わせつつ、キャラクターを肉付け。 やはり扇澤さんはこういった個性の膨らませ方が上手く、本当にどうして、前作の第7話はあんな事になってしまったのか、 不思議で仕方ありません(^^;
 ここで面白いのは、仮にタカミネ山のオメガストーンによりエネルギー問題が解決するならば、 長期的にはそれは環境保全に繋がる可能性も高く、必ずしも井崎が一方的な悪の理屈を振りかざしているわけではない事。拓也さえ、 「残せるものなら、博士だって俺だって、この森を……」と、気持ちはわかると言いながら大作に全面的には賛同していません。
 勿論、現実は数字の塊ではないので、簡単に損得のトレードオフで割り切れる筈もなく、 森というものに交換できない価値を感じている大作が愚かだと描かれているわけでもないのですが、ここで扇澤ワールド的には、 ヒーローチームの一員である大作が、“社会から疎外されたアウトサイダー”という位置に置かれ、 同じヒーローである拓也と麗とも距離が生じている事で、単純に「ヒーローの正解」を描かない構造が巧みです。
 一方ジャマールでは、傭兵軍団長ジュラは、かつて腕自慢の戦士を片っ端から血祭りにあげるレッド・ファイターであり、 ザイキングはその首を狙った賞金稼ぎだったが、返り討ちにあって半殺しにされてから服従している、と今回もやや強引な背景語り。 ……これはやはり、前作のジスプが引っ張った挙げ句にぐだぐだになった反省からなのでしょうか(^^;
 山へ戻った拓也と麗は再びザイキングと戦闘になり、ガオームは要塞を突入させ、戦闘機部隊の爆撃で鉱床を掘り出そうとする、 と要塞突入の理由づけ。
 ビーファイターを退職して街路樹を治療していた大作は激しい胸騒ぎを感じるが、そこに向井博士がやってくる。
 「大作! ジャマールが、タカミネ山に爆撃を」
 「爆撃?! …………どうせ、あの森はもうお終いなんだ」
 「それでいいのか?! 本当にいいのか、大作! 大作!」
 「なろぉぉ!」
 何の研究をしているのかよくわからなかったり、周囲の狂気に押され気味でもう一つ影の薄い向井博士ですが、 ここで大作の背中を押し、年長者としての役割を一つ。
 (森は生きてるんだ! 生きてきたんだ何千年も。それを殺させやしねぇ!)
 大きな流れの中で無駄かもしれないけれど、それでも守る為に戦う――ヒーローらしいバイクの疾走シーンが入り、山へ駆けつける大作。
 「森が、森が泣いている……今、今助けてやるからな! 重甲!」
 3人揃ったビーファイターはビートマシンを召喚し、戦闘機部隊を撃破すると、山火事を消火。 青と緑のマシンがほぼ使い回しの映像なのに対し、赤マシンは今回も新アクション(風を起こして消火活動)を披露しており、 3機のマシンの中で一番活躍度が高い状況が続きます。どうにもカブトムシが一番印象薄いのですが、 青いカブトムシとか黙っていても売れる筈、みたいな扱いなのか(笑)
 エネルギー鉱石欲しさに大サービスのガオーム様はガオームゾーンを発動し、苦戦するビーファイターだったが、 森を守りたいという執念で立ち上がったジースタッグが、個人必殺技・レイジングスラッシュに覚醒し、ザイキングを撃破するのであった。
 問題のオメガストーンは、気になる数値を発見して博士が追加分析した所、 エネルギーが最大でも半月ほどしか保持されない上に排煙がオゾンホールに致命的なダメージを与えるなどの問題点が多数発見され、 使い物にならないので採掘は中止になりました、でオチ。
 ややパンチ不足ですが、これはまあ、穏当に済ませる形として仕方ない所か。……急に欠点盛りすぎで、 博士がデータねつ造していないか少し不安になりますけど(笑) 博士からすると、 「地球を守る為のビーファイターの戦力保持(大作の退職阻止)」に比べれば、「エネルギー問題」の方が大事の前の小事、 という物事の価値観の有為転変が盛り込まれているようないないよーな。
 ……このオチの結果、一番間抜けなのは、そんな地球産エネルギーでひゃっはーしようといていたジャマールですが。 本当に、大丈夫かジャマール。
 頭が悪くて戦力を活かせないのではなく、台所事情が苦しそうな悪の組織として、とても心配になってきました(笑)
 簡単な正解のない問題を軸に、大作の寄って立つ信念を描き、 成り行きヒーローだったビーファイターに「個」の要素が入ってくれたエピソード。出来れば、自然は自然だから大切、ではなく、 なぜ自然が大切なのか、という所まで踏み込んで欲しかった所ですが、ちょっと惜しい。ただ、前作での低調ぶりと、 王道一直線の今作に合うかの心配があった扇澤さんが、きっちりとキャラクターを広げる“らしい仕事”を見せてくれたのは嬉しく、 最低限、この水準がキープされれば、今後も楽しみ。
 次回――麗はやっぱり、肉弾戦担当なのか。

→〔その2へ続く〕

(2016年10月30日)
(2017年3月31日 改訂)
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