■『フォーゼ&オーズ MOVIE大戦 MEGA MAX』感想■


“さあ、おまえの罪を数えろ!”
“タ・ト・バ・タトバ・タトバ!!”
“宇宙キターーーッ!!”


 ブログ「ものかきの繰り言」に書いた、 『『仮面ライダー×仮面ライダー フォーゼ&オーズ MOVIE大戦 MEGA MAX』』感想の加筆修正HTML版。 《MOVIE大戦》の性質上、『仮面ライダーW』&『仮面ライダーオーズ』最終話まで及び、 『仮面ライダーフォーゼ』第1クールの内容を踏まえていますので、ご了承下さい。 本文中で「本編」と書いてある場合、基本的に各ライダーの「TVシリーズ本編」を指します。 各部サブタイトルは趣味で勝手に付けました。

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『W』:〔まとめ1〕〔まとめ2〕〔まとめ3〕〔まとめ4〕〔まとめ5〕〔まとめ6〕〔まとめ7〕〔まとめ8〕
『オーズ』:〔まとめ1〕〔まとめ2〕〔まとめ3〕〔まとめ4〕〔まとめ5〕〔まとめ6〕〔まとめ7〕〔まとめ8〕
『フォーゼ』: 〔まとめ1〕 ・ 〔まとめ2〕 ・  〔まとめ3〕 ・ 〔まとめ4〕


◆第1部「未来から来た欲望」◆ (監督:坂本浩一 脚本:小林靖子)
 ――ある日、地球に次々と落下する隕石。
 間近に隕石が落下してくる中、大宇宙明日のパンツ教の旗印である派手なトランクスを棒の先にぶら下げながら荒野を歩くフード姿の映司の、 地球最後の男感が物凄い(笑)
 一方、日本の太平洋沿岸に落下した隕石の影響で時空に謎の裂け目が発生していた……でタイトル。
 タイトルの後いきなり、ところ変わって世界各国で戦う栄光の7人ライダー達の図に、 これはなんの映画だったかと少々困惑したのですが、考えてみれば『フォーゼ』のTV本編が、 過去に様々な「仮面ライダー」が存在したかもしれない(都市伝説に語られている)世界なので、まあ納得。
 (この辺り、主義によって色々あるでしょうが、私個人としては《平成ライダー》個々の作品世界はあくまで独立していて、 劇場版その他のスペシャルな都合により、世界の境界線が歪んで部分的に重なり合う時がある、というようなイメージです。 『フォーゼ』世界の過去「仮面ライダー」も、あくまで『フォーゼ』世界の過去「仮面ライダー」、という解釈)
 ライダー達は落下した隕石に近づこうとするゾディアーツ忍者、クズヤミー、マスカレードドーパント達を阻止しようと戦い、 まずは7人ライダーの派手な戦闘から。しかし奮戦空しく、隕石に付着していた〔ソル〕と呼ばれるものが、財団Xの手に渡ってしまう。 そしてこのミッションを指揮する財団Xのカンナギは、更にアストロスイッチとコアメダルの力を手に入れようとしていた……。
 カンナギの上司の女性が見覚えあるなぁ……と思ったら、マジマザーでした。予想通りに足下をすくわれるだけの役で、 これといって見せ場は無いのですが(^^;
 その頃、太平洋沿岸に発生した時空の裂け目から、銛を構えた謎の存在が飛び出してくる。
 「どうやら……時間移動は成功したようだな」
 正直、この台詞を聞いた時に、それだと何でもありになりすぎて、えーーーーー?!と思いました(笑)
 「おまえ何者だ?! 止まらなければ撃つぞ!」
 「好きにしろ。ただし命乞いだけはするな? 時間の無駄だ」
 それをすぐに、決め台詞っぽいフレーズに繋げてきたのは巧い。
 銛の一撃で調査班は全滅し、水棲系オーズぽい何かは、青いジャンパーを着た青年の姿に。
 「ふん、こんな雑魚では楽しむ暇もないな」
 その足を止める、ディスプレイ越しの困ったおじさん。
 「Happy Birthday! Dare……なんと呼べばいいのかな?」
 「――仮面ライダー」
 劇中で固有ライダー名を名乗ってくれないので感想的に凄く困るのですが、この後、 ベルトにはまった3枚のコアメダルがサメ・クジラ・オオカミウオと判明するので、便宜上、 仮面ライダーサクオという事で。 ……どこかの誰かの親戚みたいになりましたが、あまり気にしない方向でお願いします。
 この事件を受け、鴻上会長に呼び出しを受けた後藤慎太郎(現在、刑事に復帰)は、 鴻上が新たなコアメダルを作り出そうとしていた事を知らされる。
 元々コアメダルは、800年前の錬金術師達が作ったという設定なので、 鴻上ファウンデーションが消えたメダルに代わり独自にコアメダルを作ろうとしている、というのは納得のいく設定。
 「純粋に欲望のパワーだけを利用するんだ。意志を持った怪物が生まれないように。……と思ったんだが……どうやら失敗した事が、 今朝判明した」
 会長ーーーーーーーー。
 「未来の、仮面ライダー?」
 仮面ライダーサクオ、それは、40年後の世界から、戦いを求めてやってきた仮面ライダー。
 現在、財団の研究協力員として世界中を旅しながら、アンク復活の道を探している映司を空港に迎えに行く比奈は、同道する里中から、 サクオが他の仮面ライダーを狙っている事を聞かされる。ところで私、本編で比奈と里中が会話していた記憶が無いのですが、 少なくともTV本編の合計時間よりも、沢山喋っている気がします。
 本編EDで旅の空だった映司は鴻上ファウンデーションに協力している事がわかり、コアメダルに関する情報が欲しい者同士、 主人公と困ったおじさんが持ちつ持たれつの関係を結んでいる、というのは『オーズ』らしい所。
 「ライダーが、ライダーを狙うなんて」
 空港へ急ぐ2人だが、その前にサクオが生み出したクズヤミー軍団が立ちはだかり、しばらく里中無双の時間。 TV本編より本気を出しております。だが衆寡敵せず、比奈にもクズヤミーの魔手が迫るその時、妙に目の据わった映司が現れる……て、 映司が、ヒーロー登場できるように!
 ところが映司はサクオの奇襲を受けて思いっきり吹き飛び、あっさり気絶。再び危機に陥る比奈と里中だが、 そこへ最初から最後まで脳汁出まくりでお馴染みの、あの男がやってくる。
 「戦うドクター伊達明。世界の果てより只今帰国」
 髭を剃ってスッキリした伊達さんはプロトバースに変身し、さっそく、ヒーローポジションを上書きされてしまう映司(笑)
 しかし、基本殴る蹴る組み付くしか出来ないシュート仕様のだバースはサクオに大苦戦。だがその時、 伊達明の後継者・後藤慎太郎がバイクで登場し、ごバースに変身する!
 と、目まぐるしくヒーローポジションとヒロインポジションが入れ替わって皆が譲らないのが、 凄く、『オーズ』です(笑)
 「おぅ後藤ちゃぁん! 久しぶりぃ!」
 「いつも物騒な場所でしか会いませんね!」
 復活の師弟コンビだがサクオは圧倒的な強さを見せ、だバース、ベルトを破壊されてざっくりリタイア。続けて、 ブレストキャノンを放つもかき消され、ごバース、リタイア。
 いよいよ全滅間近のその時、サクオを背後から貫く映司の手。
 「やっと隙を見せてくれたなぁ……」
 その右手は、なんとアンク。
 「あの時真木と一緒に消えたコアメダル。全部おまえの中にある。まさか時間を飛び越えてたとはなぁ」
 終末システムが崩壊した時にコアメダルを吸い込んだ次元の亀裂は40年後の世界と繋がり、 そこから放出されたコアメダルがサクオに取り込まれていた。アンク声の映司は数枚のコアメダルをサクオから抜き取ると、 人間離れした大ジャンプを見せて定位置へ。
 「悪いな。こいつが無いと始まらないんだよ。おい映司!」
 そしてタカ・トラ・バッタの3枚のメダルを投げた先に立つのは、明日のパンツを旗印にする男、火野映司!
 「作戦成功だなアンク!」
 見失っていた命が心と体に収まってヒーローになった男が、今度こそ本物のヒーロー登場を見せるという、 本編の着地を踏まえた美しい流れで、映司はオーズ:タトバに変身。中身の詰まった、ある意味で真オーズはサクオと拮抗する力を見せ、 ここで見せるガタトランとガタゴーターは、長らくクワガタヘッドが無かった為に本編で使えなかったフォームでしょうか。
 再びタトバに戻ってメダル剣と銛を交えると、何故か、オーズの肩をさすさすしてくるサクオ。
 「邪魔をするなぁぁぁぁぁ!!」
 突然絶叫したサクオは、人間の姿に戻ると一時逃走。映司に化けていたアンクは見慣れた鳥頭の姿に戻り、 比奈ちゃんに飛びつかれて動揺。映司に再会した時より、アンクに再会した時の方が比奈ちゃんのリアクション大きいのが地味にポイント高いです (いやまあ、アンクと再会できる可能性の方が低いから、というのはさておき)。
 3人はひとまずクスクシエに腰を落ち着け、映司によると、空港に着いたらアンクがいきなり待ち受けていたとの事。 詳しい説明は一切しないアンクと、戦闘現場にパンツの旗を置き忘れてきたのに気付いた映司が、 アイスとパンツとどちらが大事かで掴み合い、というか、久々の再会を喜んでじゃれ合い、 仮にもレストランのカウンターで「パンツ」「パンツ」連呼する2人、比奈ちゃんに耳をちぎられそうになる。
 今作、基本的に物語の9割ぐらい殺し合いしている印象なのですが、 こういった緩急の“緩”のシーンがしっかり入っている上でテンポもいいので、見ていてダレないのが良い所。
 「彼、本当はあんな事したくないんじゃないかな……今はコアメダルを大量に抱えてるから、暴走してるだけで。あの時、 何か言いたそうな感じがしたんだ」
 サクオからのボディタッチに対話の余地を感じ取る映司だったが、クスクシエをクズヤミー軍団が襲撃。 店内での激しい生身バトルが展開し、もうこの内装もお役御免という事なのか、やりすぎなぐらい派手に破壊(笑)
 クズヤミー軍団を蹴散らし、外に飛び出した映司とアンクの前に再び姿を見せる青ジャンパー。
 「今度はライダー同士、楽しく戦いたいなぁ。変・身!」
 『サメ! クジラ! オオカミウオ!』
 一種だけメジャー感が薄い気がするのですが、ウツボとかでは駄目だったのでしょうか、会長(ウナギと被るから?)。
 「やっぱり彼は……」
 武器を構えるサクオに対し、生身で向かっていく映司。
 「君、メダルの暴走を止めたいんだろ」
 「あぁ?」
 「こんな戦い、本当はしたくない。そうでしょ?」
 「また馬鹿が!」
 「なにを言ってる」
 「君は暴走してるだけだ。メダルの力に飲み込まれるな。手を貸すから!」
 「つまらん。変身しろぉ!」
 伸ばした手は振り払われ、間一髪アンクが助けるも、もろともに吹き飛ばされる映司。
 「馬鹿が!! あいつは無理だ!」
 「出来る……! 前におまえや、比奈ちゃんが止めてくれたみたいに!」
 本編を上書きする勢いで、自分のヒロイン力を試そうとする映司。
 「俺達の時とは違う……あんなの名前も知らない奴だろ、ほっとけ!」
 「知ってるよ! ――仮面ライダーだろ! 折角ライダー同士なら、俺はその手を掴みたいっ」
 この辺り、かつてライダーバトルというムーブメントを生んでしまった事に対して小林靖子が思う所があるのかなぁ、 とは本編時点から微妙に感じる所(まあ小林靖子自身は、 既に大元の白倉プロデューサーと『電王』である程度の精算をしているとはいえますが)。
 同時に、『オーズ』自体は本編では「仮面ライダー」という言葉の意味付けは放り投げていた作品ですが、 『W』〜『オーズ』という流れが、広い枠組みでの「仮面ライダー」という言葉の再定義付けを意識していたのが窺えます。
 その為には、未来から来た何者かは、固有ライダー名ではなく、「仮面ライダー」でなくてはならなかったのでしょう (設定上は存在しているのでしょうが、劇中では名乗らない)。
 《平成ライダー》シリーズは、その抱える振り幅が長所である一方で、 恐らく「仮面ライダーとは何か?」というシンプルな問いへの回答を見失いつつあって(それが必要なのかどうかはまた別の話として)、 それを模索し、シリーズとしての振り幅を維持した上で、それらを統合可能な上位概念を言葉にしようとしていたのがこの時機だったのかなぁと。
 作品としては『ディケイド』という明確な区切りはありますが、いわゆる《平成ライダー》第2期(少なくとも立ち上がり初期) の精神的区分はその、“仮面ライダーというジャンルヒーローの再定義”にあるのだろうな、と思えます。
 そう考えると、『オーズ』本編の抱えていた《平成ライダー》初期作品(『クウガ』〜『剣』まで)のリビルド要素というのは、 初期《平成ライダー》を分解再構築する事で、そこから「仮面ライダー」を抽出しようとしていたのだと思われ、非常に納得。
 この映画全体としては、『W』『フォーゼ』に関わっている、塚田プロデューサーと坂本監督の意識が強い所なのかもですが。
 アンクを振り払って再び生身で突撃する映司は火薬ダッシュを見せるも敢えなく吹き飛ばされ……えー…… 思い切り頭から落下しているのですが、大丈夫か(^^;
 だがトドメを刺される寸前、サクオ本体の人格が暴走を制止し、変身を解除。
 映司達は青ジャン青年の事情を聞く事になり、本編終了後の劇場版でも、上半身裸で傷の手当てを受ける事になる映司。 これはもはや必然であり、限られた時間の中に、次々と『オーズ』のエッセンスが詰め込まれてきて素晴らしい(笑)
 未来から来た青ジャンパーの青年の名は、湊ミハル。40年後の世界で怪物と戦う、 水の力で変身するライダー…………になるはずだった男。
 「出来なかった…………。俺…………水、苦手で」
 高笑いするアンクに炸裂する映司と比奈のツッコミ(物理)。
 「そんな時に、助けてくれた人が居たんだ」
 「我が鴻上ファウンデーションの誇る、メダルシステムの、ライダーだ。これで君も、仮面ライダーとなる。Happy Birthday」
 かくしてメダルのライダーとなったミハルだが、怪物との戦いには苦戦が続く。そんな時、身につけたメダルシステムの影響なのか、 次元の亀裂から飛び出してきた大量のコアメダルを取り込んでしまったミハルは、 それによって意志を得た未来のコアメダルに体を乗っ取られ、戦いだけを求めるバトルジャンキー体質になってしまう。
 「鴻上さん……未来でまで」
 概ね鴻上会長が悪いという飛び道具ですが、あまりにブレない為、 映司達が怒るのを通り越して引いているのが凄い(笑)
 その夜、アンクからメダルを奪おうとするサクオ人格だが、それは性格の悪いアンクの罠だった。 逆にコアメダルを何枚か抜き取るアンクだったが、それが却って良くなかったのか、ミハルの体を捨て、 独立した存在へと成長してしまうサクオ。サクオは衝撃波を放って姿を消し、 別の時代へ移動する為に再び次元の亀裂へ向かっていると鴻上会長から連絡が入る。
 「恐ろしいまでの、戦いへの欲望だよ!」
 さすがの映司も、いい加減、こいつ殴ってもいいかな、みたいな顔になっている気がします(笑)
 子飼いのバース組が戦闘不能で弱気を見せる鴻上会長だったが、映司はサクオを止めると宣言。
 「大丈夫。不安な事は一つだけ。……明日のパンツがな〜い」
 そんな映司に、さすがに少々恥ずかしそうに、買ってきた大量のパンツを渡す比奈(笑) 比奈ちゃん、 成人男性の半裸とか一切気にしないので若干心配していたのですが、そこは恥じらいセンサーが発動するのか。なお余りは全部、 お兄ちゃん(出番無し)に回されます!
 「ありがとう比奈ちゃん! 絶対勝てるって気がしてきたよ。行こうアンク!」
 パンツは信仰、パンツは力。
 「どうして?! なんでそんなに強くいられるの? 俺にはとても……」
 パンツ片手に無謀な戦いへ挑む映司のあまりのキチガイぶりにおののくミハルに、映司はそのパンツを渡す。
 「俺のお爺ちゃんの遺言で、男はいつ死ぬかわからないから、パンツはいつも一張羅はいとけって」
 「俺にそんな覚悟があれば……」
 「そうじゃなくて。肝心なのは、明日の、ってとこ。これは今日ちゃんと生きて、明日へ行く為の覚悟なんだ。 ミハルくんは、その明日を守ってくれる仮面ライダーだろ。大丈夫。君がくじけた今日は、俺達が守るから」
 仮面ライダー――それは、みんなの今日を、その繋がっていく明日を守るもの。
 大事なのはちゃんと生きる事、という本編の大きなテーマを踏まえつつ、本編ではあれだけややこしかった映司が、 きちっとヒーローをしているという、『仮面ライダーオーズ』の完成形として、実にお見事。ここは凄く好きなシーンと台詞。
 「さっそくお出迎えか……映司、気ぃ抜くなよ」
 「ああ。この感じ、なんか久しぶりかもな!」
 明日のパンツをミハルに渡した映司とアンクはサクオの元へと向かい、立ちはだかるクズヤミー軍団と生身バトル。
 「ところでさ、おまえがどうやって戻ってきたか、まだ聞けてないんだけど」
 「気にするなと言った筈だ」
 「じゃあこれだけ。一緒に戦うのって、もしかしてこれが最後?」
 「そうしたくなかったら、きっちり生き残れ!」
 「わかった。おまえもな!」
 「……ハッ」
 映司はオーズに変身するもシャウタ・タコ足連打を弾かれて苦戦するが、そこへ全治3週間の筈の伊達と後藤が水上バイクで参戦し、 里中も援護に登場。プロトバースは完全破壊も通常バースは修理すれば直るという事で、禁断の里中バースの布石かと思ったのですが、 さすがに自制心が働いた模様です。
 ……いやむしろ、里中くんにバース着せても何も面白くないよ! という坂本監督の煩悩が良い方向へ働いたと考えるべきか。
 それはそれとして水上バイクを乗り回す事に何の意味があるのかと思ったら、これは前振り。
 後藤と伊達が次々とリタイアしたその時、もう一台の水上バイクが戦場に駆けつける。それを操るのは、一度は絶望に飲み込まれた筈の、 湊ミハル!
 「オーズ! 俺が守る今日が、みんなの明日になるってわかった! 怖いなんて言ってられない……仮面ライダーを動かす力、 俺に足りなかったのは、勇気だ! 変――身!」
 そう、パンツは、時空をも越える、勇気へのパスポート。
 本編最初の感想で「……感想でこんなにパンツと沢山書いたのは初めてで、パンツがゲシュタルト崩壊しそうです。」と書いたので、 今回ちょっとわざとやっています。すみません。
 ミハルは水のライダーベルトにより、なんかつるっとした仮面ライダーに変身し、水上バイクアクションはくるくる回ってかなり凄い (これ優先のデザインか)。今作の構造的にミハルライダーも固有名詞を名乗ってくれなくて困るのですが、とりあえず、 仮面ライダーM(水)で。
 Mは水上バイクでサクオを轢く事でヒーローとしての通過儀礼を乗り越え、覚醒。オーズは待ってましたのタジャドルを発動し、 水と火、二つの力の連続攻撃でサクオを葬り去る。
 「オーズ、ありがとう! みんなの明日、絶対守る!」
 水上バイクによる大ジャンプでミハルは未来へと帰っていき、鴻上組は一足先に帰還し、そして――満足げな表情で姿を消すアンク。
 「映司くん、アンクが居ない。アンク?! アンク?」
 アンクを探す比奈に向けて映司が取り出したのは、ポケットの中でずっと割れたままだったアンクのメダル。
 「きっと……アンクも未来から来たんだ」
 消えていく次元の裂け目に吸い込まれていく、紅い輝き。
 「つまりさ……俺達が頑張れば未来、いつかの明日にこのメダルが元に戻って、アンクにまた会えるって事」
 「いつかの、明日…………。そっか……そうだね」
 アンクを見送るように空を見上げる映司と比奈。このままスタッフロールが流れそうな勢いだったがしかし、突然、 背後からの不意打ちを受け、財団Xのカンナギにサクオメダルを奪われてしまう。
 「未来のコアメダル……これが欲しかったんだ」
 果たしてカンナギは、未来のコアメダルを何に使おうというのか?! 映司の戦いは、第3部に続く!
 最初に時間移動発言が出た時はぎょっとしたのですが、鴻上会長、アンク、ミハル、とパズルのピースが綺麗に収まっていき、 最終的に今(現実)は簡単に変わらないけれど、一歩ずつしっかり生きていけば、 それがいつかの未来(希望)に繋がっていくという着地は、物凄く小林靖子節。
 本編最終盤で拾いきれなかった「明日のパンツ」のテーマも完全に繋げてきて、大満足の『仮面ライダーオーズ』後日談となりました。 バースコンビは若干の踏み台感がありましたが、比奈ちゃんの出番多めだったのも良かったです。
 あと個人的には、『仮面ライダー電王』と『烈車戦隊トッキュウジャー』の間にこの劇場版がぴたっと収まって、凄い納得感。
 今日の先に明日があるから、昨日の自分に胸を張れるように今日を生きよう――そうやって生きていけるのが、どこにでも居る、 誰にだってなれる、ヒーローなんだ、というテーマで繋げていける作品群だと思うのですが(無論、 『未来戦隊タイムレンジャー』含む)そういう観点で見た時、TV本編の火野映司には昨日の自分に胸を張れない部分があって、 それが1年間の戦いを通して、いつかの明日に向けて歩いていけるようになる物語なのだな、と改めて。
 えー……早く『ゴーバス』後半も見よう、私(反省)。

◆第2部「宇宙から来た彼女」◆ (監督:坂本浩一 脚本:中島かずき)
 火野映司が、未来から来たアンク、仮面ライダーMと共に仮面ライダーサクオを倒すも、 サクオメダルを財団Xに奪われてしまっていた頃、風都ではハーフボイルド探偵・左翔太郎が、財団Xの車両を追いかけていた。
 車を追い詰めるも相棒にせんべい汁を優先されたハーフボイルドは、仕方ないので単独で仮面ライダージョーカーに変身。
 「この街を泣かせる奴は、許せねぇ!」
 ライダーパンチとライダーキックで怪人をブレイクし格好良くキめる翔太郎だったが、 足止めをした際の衝撃で財団が輸送中だったカプセルの中身がこぼれ、収められていた銀色の流動体は、下水溝の中へ……。
 「たーく何を運ぼうとしてたんだ〜?」

 カプセルの中を確認する翔太郎だが…………空 だ。

 「これは……」

 (……あれ? もしかして俺、やっちまった?)

 一方その頃、日本某所・空港X――カンナギの野望を止めようと財団Xのシャトルに乗り込んだ7人ライダーは、 カンナギの用意していた罠にかかってしまう。時空を越えたコアメダルの力を手に入れたカンナギが次に欲するのは、 宇宙の力〔ソル〕!
 ・
 ・
 ・
 ところかわって天ノ川学園高校は、天高祭の真っ最中。
 仮面ライダー部は、7人ライダーの扮装で「仮面ライダー」にまつわる都市伝説の研究発表をしていた。 ここで7人がそれぞれ名前の元ネタに身を包み(段ボール)、最新作と過去ライダーを鮮やかに接続。 本名不詳のジェイク(X担当)が嫌がってサボる、というのも細かく巧い。
 「なーんでこんなのが、仮面ライダー部の、活動なんですかー?!」
 「平和を守る仮面ライダーという存在が生徒達に浸透すれば、ゾディアーツスイッチ拡散への抑止力になるでしょ」
 クイーン、思ったより考えていた。
 そして、この映画のテーマの一つが「2010年代における「仮面ライダーとは何か?」の再定義付け」だとすると、 昨日と今日を繋いで基礎を押さえるという、いっけん馬鹿なギャグのようでいながら、かなり計算されたシーン。
 「だったら堂々と、仮面ライダー部って名乗りゃいいのに」
 「まあ……あまり目立って、ラビットハッチとフォーゼの存在が、俺達と結びつけられるのは困るからな」
 ……約一名、毎度力強く名乗りながら変身していたと思うのですが、気のせいでしょうか。
 「じゃあやめましょうよ。学祭なんだから、可愛い子いっぱい居るんだから、彼女作って楽しく遊ぶ。それが青春っす!」
 「彼女ね……」
 ステージに戻ろうとする弦太朗達が群衆の騒ぎを聞きつけ、空を見上げると、親方! 空から女の子が!
 「彼女、キターーーーーっ!!」
 弦太朗、その台詞は、割と最低だと思う(笑)
 それはそれとして、落ちてきた少女を見事に受け止めた弦太朗は、ライダーリーゼントハートに何かを感じてしまう。
 「可愛い……」
 落下によるショックなのか、無言で問いかけに対して要領を得ない少女は、生徒手帳によると美咲撫子、高校2年生。 詳しい質問の前に忍者軍団が保健室を強襲し、駆け出す撫子、追う弦太朗。
 「狙いは、この子か!」
 弦太朗、撫子を守ってお姫様だっこ……と思ったら投げた! 振り回した!
 彼女は新しいモジュールじゃない!
 弦太朗の彼女観はともかく、しばらく『フォーゼ』編掴みのバトルが続き、学校も派手に壊しております。
 ところがその戦闘中、フォーゼの戦いを見ながらフォーゼドライバーそっくりのベルトを取り出した撫子は、仮面ライダー?に変身。 ポップな音楽をバックに無邪気な動きでライダー48の殺人技の一つキャメルクラッチを繰り出すなどして、 忍者ゾディアーツ軍団を愉快に虐殺していく。なでしことフォーゼが忍者を追って外に飛び出すと、 バルゴゾディアーツが先行登場するが、Wライダーロケットパンチで撃退。
 ひとまず敵の気配が消え、ハイテンションで撫子と友情タッチをするユウキと、何故かそれを断る弦太朗。
 「桃色の、波動が見える……」
 「あれは……恋ね」
 「ヤンキー、恋をする」は青春の定番とはいえるものの、実際に「恋する弦太朗」を普通に描かれてもあまり面白くなかった気がするのですが、 今作の場合既に、
 「あ、全部、翔太郎のせいだ……」
 が提示されている為、別の意味でのニヤニヤが止まりません(笑)
 ポケットに片手突っ込みながら「お嬢ちゃん、誰に断ってそのベルト付けてんのや」と迫り来る歌星さんがかんに障ったのか、 撫子は弦太朗を引っ張って走り去り、しばらくほのぼのデートタイム。この間もずっと脳内では、「全部、 翔太郎のせいだ」が木霊しております。
 観覧車で高い所を気に入った撫子を、こっそり月面へ連れて行く弦太朗。 雰囲気に飲まれて宇宙服のヘルメットとヘルメットがごっつんこしてしまうが、なんと撫子は宇宙区間で平然とヘルメットを外し、 そこでとうとう、撫子が人間ではない事に気付く弦太朗(合掌)。

 全部、翔太郎のせいだ。

 その頃、我望理事長はカンナギに大量のゾディアーツスイッチを渡していた。劇場版で本編のボス級キャラを出すと、 本筋に絡められない関係で無駄に格が落ちる事が多いのですが、ここでレオゾディアーツも先行登場させる事で理事長の余裕を見せ、 格を下げずに巧く処理。本編OPに4体のゾディアーツが姿を見せているという作りが、劇場版で丁度良く機能しました。
 撫子の正体は、コズミックエネルギーをその細胞核に蓄えた宇宙生命体〔ソル〕。知性はなく、 見た物を反射的にコピーする性質を持った、巨大な水銀状の存在であり、今の姿も、 どこかで本物の美咲撫子をコピーしたものにすぎなかった。
 「違う! 彼女は言葉だって喋ったし、一緒に笑った!」
 「おまえの真似をしただけだ。ただの反射行動だ」
 「反射行動だ反射行動だ」
 失恋ダッシュした弦太朗は地上で河川敷に座り込み、そんな弦太朗をなぐさめにやってくるユウキと友子。
 「男には、思いっきり泣いていい時がある! 財布を落とした時と、フられた時だ。でもよ……相手があんなスライムだった時は、 どうすりゃいいんだよ?!」
 「思いっきり泣けばいいよ。宇宙も人類も越えた、とんでもない失恋だもん。スライムだろうが人間だろうが、変わらないよ」
 「ユウキ……」
 「さすが弦ちゃん、失恋するんでも桁が違うね」
 今回ヒロイン力持ちが多いので、弦太朗の肩に頭をこてんとやって、幼なじみ属性を発揮してみるユウキ。
 「スライムだろうが変わらない……」
 「うん」
 撫子/ソルが大学の研究所に回収されると聞いた弦太朗は、自分の気持ちを正面から見つめ、再起動。
 「冗談じゃねぇ! スライムだろうが人間だろうが関係ねぇ! 好きなものは好きなんだ! それに、俺はまだ、 ちゃんと失恋もしてねぇ」
 本編ではどうも、弦太朗のノリが肯定されすぎる事に引っかかりが生じがちな『フォーゼ』ですが、この劇場版では、 不定形の宇宙生命体に告白する、という弦太朗でしか飛び込めない無茶が設定される事で、 非常に構造がスッキリ。素直に、弦太朗を好意的に見る事が出来ました。
 学園へ駆け戻った弦太朗は、財団Xの手に渡る寸前だったカプセルを横からかっさらう事に成功。
 「俺はまだ、こいつに好きだって言ってねぇ!」
 非常に格好いいシーンなのですが、不定形のドロドロが詰まっているカプセルを抱きしめて叫ぶ弦太朗、ちょっと危ない(笑)
 「俺のこの気持ちは誤魔化せねぇ! 好きなもんは好きだ! 聞いてるか撫子。おまえの事が、好きだ!!」
 まるでその叫びに応えるかのように〔ソル〕は自らカプセルを抜け出すと、撫子の姿となり、感謝の言葉と共に抱擁する2人。
 「この世に奇跡なんかない。〔ソル〕の進化が早いんだ。ただ、その進化を促したのは……あいつかもしれないな」
 馬鹿のぶっ飛び加減に白旗を揚げる賢吾だが、そろそろ飽きてきた財団Xが撫子を強制回収し、食らいついた弦太朗も車から振り落とされてしまう。 車両が無情に遠ざかっていく中、後を追いかけてきた賢吾はフォーゼバイクを弦太朗へと託す。
 「……すまなかった。……取り戻せよ! 君の彼女」
 理屈を言う立場として憎まれ役になっていた賢吾も、ここでしっかりフォロー。 バイクで追いすがるフォーゼの前にはカンナギの作り出した超生命体ドラゴンミュータミットが立ちふさがるが、 その間に車の走行を止めて、台座ロボもしっかり活躍。
 「おまえのBabyを奪わせやしないさっ」(きらーん)
 横転した車から逃げ出すもマスカレードに囲まれた撫子だが、ライダー変身。 フォーゼとなでしこはミサイルとロケットキックのコンボでドラゴンを倒し、なでしこは自らフォーゼに友情タッチを求める。
 「そうか。そうだな……最初は友達からだ」
 だがその途中、背後から腹式呼吸で吸い込まれた撫子は、 物凄い肺活量を誇るカンナギの手で無惨にもアストロスイッチの中にエネルギーとして吸収され、消滅してしまう!
 「〔ソル〕は、エネルギー粒子に変換された!」
 「まさか……その中に撫子を!」
 「この中にあるのは、純粋なエネルギーのみだ。わかりやすくいえば、君が求めている彼女は、死んだという事だ」
 弦太朗は激情に任せて生身で特攻するも叩きのめされ、カンナギは弦太朗達の抹殺を命令。 絶望に膝をついた弦太朗は迫り来るドラゴンに対して立ち上がる事が出来ないが、その時、割って入った台座ロボがドラゴンを食い止める。
 「弦太朗には手を出させない!」
 台座ロボは軽くひねられてキングも投げ出されるが、続いてバイクで突っ込んでいく賢吾。
 「如月! 今は思う存分泣け! 君が泣く時間ぐらい、俺達が作る!」
 賢吾の使命に協力したい、という弦太朗の想いが生んだ仮面ライダー部が、一方通行の関係ではなく互いを支え合う仲間へと成長し、 本編で繰り返されてきた「ダチ」ってなんだ? というのが集約されると共に、 仮面ライダー部と弦太朗(仮面ライダー)の関係に一本の芯が通って、今作屈指の名台詞にして名シーン。
 同時に、第1部における「ミハルくんは、その明日を守ってくれる仮面ライダーだろ。大丈夫。君がくじけた今日は、 俺達が守るから」という台詞と重なっているのが、極めて秀逸。
 「ライダーは助け合いでしょ」のライダーは“シンボル”であって、今日の先のいつかの明日へ向けて、 無限を越えて手と手を繋ぐのは――人と人。

――俺が欲しかった力……どこまでも届く俺の腕。それって……こうすれば、手に入ったんだ

 完結作品の後日談という難しいセット素材に対して敬意を持って扱い、今作全体に『オーズ』の物語がしっかりと繋がっているのは、 凄く好印象。
 「そうね、弦ちゃんにはいっつも助けられたもんね!」
 「仮面ライダー部はあなた1人じゃない!」
 「やる時は、やる!」
 女性陣はフードメカを投げつけるも吹き飛ばされ、爆風に巻き込まれて転がりながらもジェイクは弦太朗にハンカチを差し出す。
 「俺は、戦う事は、出来ないけど、ハンカチぐらいなら……」
 ジェイク、ジェイクおまえは本当にそれでいいのかジェイク。
 「おまえら……」
 皆に支えられ、立ち上がる弦太朗。傷だらけになりながらも、心を一つに集う仮面ライダー部。
 「よーし泣いた! 思いっきり泣いた!! 怒りは収まらねぇが、涙は出し切った! ……みんな、ありがとよ」
 弦太朗はフォーゼドライバを構え、声を合わせて始まるカウントダウン。

「「「「「「3!」」」」」」
「「「「「「2!」」」」」」
「「「「「「1!」」」」」」
「変身!!」
「「「「「「「宇宙キターーーッ!!」」」」」」」

 「これ以上、俺のダチは誰1人傷つけさせねぇ! 仮面ライダーフォーゼ、タイマン張らしてもらうぜ!」
 今作の特性を生かし切った非常に完成度の高い変身シーンで、完成度高すぎて、 これを見ているか見ていないかで本編の印象が変わってしまうレベル(笑)  弦太朗とライダー部の一体感が余すところなく表現されていて、正直これ、本編に欲しかったです。
 フォーゼは撫子が最後の力で残したスーパーロケットスイッチに気付くと、オレンジ色のダブルロケットステイツに姿を変え、 自力で大気圏突破からライダーきりもみクラッシャーで今度こそ完全にドラゴンを撃破。
 「賢吾、奴等の正体を探ってくれ。撫子の力を悪用する奴は、絶対に止めねぇと」
 そこへやってくる自販機バイク。
 「久しぶり、弦太朗くん。友達増えた?」
 危ない危ない、パンツの旗を掲げていたら女子高生に通報される所でしたよ映司! はさておき、 どうやらまた以前の劇場版で知り合いになっていたらしい映司に協力を頼まれた弦太朗は、ある人物の元へと向かう……ところで、 いよいよ物語はクライマックスへ!

◆第3部「Dな二人と銀・河・決・戦といつかの明日」◆ (監督:坂本浩一 脚本:中島かずき)
 ここで第3部『MOVIE大戦 MEGA MAX』のタイトルが入り、映司と弦太朗は、風都のハーフボイルド探偵と接触。 インターミッションだとフィリップが星の図書館のワンカットしか出てこなかったので、 この時期既に役者さんが売れっ子になっていてワンカット出演が限界だったのかと思ってドキドキしていたのですが、 フィリップここに出てきてホッとしました。
 「あんた達が仮面ライダーWですか! 俺、全てのライダーと友達になる男、如月弦太朗です! よろしく!」
 本編では基本、年長者に対しても常体でしか話さない弦太朗が翔太郎には丁寧語で接しており、 やはりライダーの世界の上下関係は厳しい体育会系なのだと、 改めて戦慄。
 この掟を守らない後輩は、砂漠に埋められて電流を流されるとか、次々と巨大な岩石を投げつけられるとか、 ロープで縛られて滝に吊されるとか、無意味な特訓を三日三晩飲まず食わずで課せられる事になるのです。
 お互い形から入るタイプなのか、魂レベルで波長のあった翔太郎と弦太朗はすぐさま意気投合し、 全ての元凶カンナギについての情報が翔太郎からもたらされる。財団Xをバックに、サクオメダル、アストロスイッチ、 そして〔ソル〕のエネルギーを入手したカンナギは、その力を用いて世界中のエネルギーを支配する無敵の帝王になろうとしていた。
 「カンナギは、財団Xにも叛旗を翻し、自分1人が世界の支配者になろうとしている」
 「そんなの許せねぇ!」
 「止められるのは、俺達仮面ライダーだけってわけですね」
 だがそこへカンナギの配下4人が姿を見せ、ゾディアーツに変貌。
 「どうやらレム・カンナギは、僕らを排除する気だね」
 迫り来る障害を前に、後輩達そっちのけで流れ出すハードボイルドなテーマ。
 「時間がねぇ。お前達は先に行け」
 「え?」
 「2人ともカンナギとのケリは自分で付けたいって顔してるぜ」
 「それはそうかもしれませんけど……」
 「映司、最初に会った時、おまえが言った言葉覚えてるか? ――「ライダーは助け合いでしょ」だろ?  借りは返しとくぜ」
 気取った仕草も含めて、翔太郎格好いいーーーーーーーーー。
 今作、1・2・3部それぞれ、戦闘シーン以外に、主役クラスの格好いいシーンがもれなくあるのも、良い所。
 「…………わかりました。行こう、弦太朗くん」
 「頼んだぜ先輩!」
 「……僕らが先輩か……」
 「ま、それも悪くないんじゃねぇか」
 昨日から今日、今日から明日。
 かつて互いに罪を抱えながら、一人の男の背中を追いかけ続けてきた二人で一人の探偵で仮面ライダーも、始まりの夜を越え、 昨日の自分に胸を張れる一人前の男になっていく。

『サイクロン』『ジョーカー』
「「変身!!」」

 フィリップ誰が拾ってくれるのだろうと思ったら、後輩が拾ってくれました!
 映司と弦太朗も変身して、とりあえずちょっとバイクアクションの後、主題歌が流れ出して『W』のターン。 各フォームのマキシマムブレイクも一通り使い、坂本監督も思い入れがあるのか、『W』はサービス特盛りで大満足。
 アクションだけではなく物語面も押さえてくれて、「……僕らが先輩か……」「ま、それも悪くないんじゃねぇか」は、 『W』のエクストラストーリーとして見ても、とても良かったです。
 「「さあ、おまえの罪を、数えろ!」」
 Wに後ろを任せて先行したオーズとフォーゼは空港に辿り着き、今回この映画で一番ビックリした所ですが、 オーズ、思い切り白服を轢く。
 見た目人間でも一切躊躇しない姿に、真オーズの恐ろしさの神髄を感じました。
 シャトルへ乗り込むカンナギを止めようとする2人だが、大量の雑魚軍団が行く手を阻み、 まずは『オーズ』主題歌でコンボ祭のせいやーーー祭でライダー無双状態。
 続けて『フォーゼ』も主題歌をバックに、シールド、チェーンソー、ガトリング、ハサミ、チェーンナックル、ロケット、スパイク、 マジックハンド、ストンピング、ミサイル、ドリル、のモジュール連発で大暴れ。だがシャトルは飛び立ってしまい、 立ちはだかる幹部クラスダミー軍団。その時、 フォーゼがカンナギ部下の落としていったアタッシュケースの中に7人ライダーのスイッチとメダルを発見し、それぞれ使用してみると、 カンナギの罠によりマジックアイテム化していた7人ライダーが解放される。
 「おぉー! 伝説の7人ライダー! 本当に居たんだー! 7人ライダーキターーー!!」
 今作、シリーズ40周年記念企画としての縛りだったのかもしれませんが、7人ライダー抜きでもスッキリ作れただろうとは思うのですが (昭和ライダーは基本的に「彼らは今もまだ、どこかで戦い続けている」という世界観でありますし、 それを踏まえた冒頭の世界各地で戦うライダー達、というのは格好いいのですが)、 映画全体に「今日がいつかの明日へ繋がる」というテーマ性を持ち込む事によって、
 昨日を守っていたライダー:7人ライダー
 今日を守るライダー:フォーゼ、オーズ、W
 明日を守るライダー:M改めアクア
 という劇中における意味づけが成立。
 勿論、7人ライダー達は、今日「も」守っているライダーであり、これはあくまで弦太朗視点の構造ですが(同時に、 子供視聴者視点でもある)、このクライマックスで、今日を守っているライダーによって、昨日を守っていたライダー達が甦る事により、 昨日と今日が明確に繋がる。
 そしてそこに“未来から来た仮面ライダー”が加わって示されるのは、昨日が今日になり、今日が明日になり、 それを守るものが仮面ライダーであるというテーゼ。
 またこれ自体が、何故、「彼らは今もまだ、戦い続けている」のか、に対する回答にもなっている、というのが絶妙。
 元々『オーズ』が抱えていたテーマをしっかりと『フォーゼ』に接続した上で、過去−現在−未来の仮面ライダーを繋げる事で、 1本の映画としてのテーマを丁寧に組み上げ、全てのピースに意味を持たせたのは、合作映画として実にお見事。
 この「繋ぐ」というのもまた、『オーズ』のテーマでありますし。
 7人ライダーが幹部クラスダミー軍団を食い止めている間にシャトルへ急ぐオーズとフォーゼの前に、 次元の裂け目からアクアが現れてオーズに未来のタトバメダルを渡し、オーズとフォーゼはロケット噴射で飛び立ったシャトルへ突入。
 「真の王は、一人で世界を制圧する! 見たまえ! これが新しい地球の、いや、銀河をも掴む、王の姿だ」
 だが待ち受けていたカンナギは、メダル×スイッチ×〔ソル〕の力で怪人バケツマントに変貌し、2人のライダーを圧倒する。
 「わかっている事は一つある。君達は、絶対私には勝てない」
 「……わかっている事は、もう一つある。この世に、絶対はない!」
 時空を越えたメダルの力により、時間停止能力さえ持つバケツマントにシャトルから突き落とされたフォーゼは、 バイク打ち上げで追撃と本編の要素を使い切り、一方のオーズはアクアから受け取ったメダルにより、 時空を越えたスーパータトバに変身すると、完全に『ジョジョの奇妙な冒険』<第3部>のノリで、バケツマントと同じ、 時間を止めた世界へ突入。
 肝心のスーパータトバの見た目ですが…………格好良くは……無いような。フォーゼに合わせたのか、 てかった緑色のズボンが良くない気がします!
 仮面ライダーアクアは折角なのでダミーカザリを撃破して帰り、続けて栄光の7人ライダーによる必殺技7連発。 7人ライダーをただの刺身のツマに終わらせず、各自が必殺攻撃でボス級キャラを打ち砕くというしっかりした見せ場。まあ、 そのおりを受ける形で、フォーゼ&オーズvsラスボス戦の経緯は、かなり端折られている感じですが。とはいえ、 ここできっちり7人ライダーの見せ場を描いたのは、良い取捨選択だったと思います。
 特に、昔の映像を使ったり、わざと昔風の映像で撮るのではなく、 原典の技を今の技術を用いて出来る限り今でも見劣りしないように撮ったというのが素晴らしい所(特にXキックは格好良かった)。 7人ライダーは確かに昨日を守ってきたヒーローであるけれど、しかし、今もどこかで戦い続けているヒーローなのだ、 という強烈なメッセージであり、単なる懐古趣味として登場したのではない、今そこに居るヒーローとして7人ライダーを描き抜きました。
 この辺りは自らアクション監督も務めた坂本監督が、さすが。
 一方、シャトルのバトルはとうとう大気圏を突破してしまい、半壊していくシャトルの中でのスピード感ある戦闘という形で、 ライダーも含めてぬめっとしたCG映像が少し入るのですが、こちらがむしろ盛り上がりが減じてしまいました(^^; やはり、 ライダーを全部CGで描いてしまうとなぁ……とは思う所。
 バケツマントは〔ソル〕の力を使おうとするが、その中に残っていた撫子の意識が逆にフォーゼに力を与え、 コズミックエナジー全開のオレンジフォーゼとスーパータトバのライダーWロケットドリルキック宇宙でせいやーーーやー!で吹き飛んだバケツマントは、 野望を果たせず、シャトルと衝突して宇宙空間で粉々に消滅する……。
 ここからEDテーマがかかり、スタッフロールが流れながらのエピローグ。
 撫子ソルは、自分は意志をもったエナジーであり肉体の無い存在になったとフォーゼに告げると、束の間、撫子の姿を取る。
 「でもありがとう。私にも、記憶が出来た。友達の記憶が」
 「そうだな、おまえも俺のダチだ。大事な大事なダチだ」
 今度こそ弦太朗と撫子は友情タッチをかわし、そして――最後に弦太朗に近づいて踵をそっと持ち上げると、 エナジー体へと戻っていく撫子ソル。機体が限界に達してシャトルはバラバラに分解し、オーズとフォーゼは地球へ降下していきながら、 深宇宙へ向けて飛び去って行く青い輝きを見送る……。
 「青春って、切ないな……」
 よりによって、映司にしんみり言われると、弦太朗の受けるダメージが絶大です……!
 「エクソダスが爆発した」
 「……やったなぁ、後輩」
 ハーフボイルド探偵は一つの仕事を片付けて愛する街へ戻り、クスクシエでは、バースコンビが肉体労働中。
 「これじゃ当分営業できそうにないですね」
 「ううん、明日から通常営業するわよ。遺跡フェアとか」
 「さっすが知世子さん」
 (明日……いつかの、明日)
 たくましいその姿を目にした比奈は、明日を見つめて笑顔を浮かべる。
 「きっとまた会える!」
 そして――いつかの明日へ繋がる青い空の下、今日も国境を越える無限へのパスポートこと、明日のパンツの旗印を掲げる映司は、 割れたメダルを握りしめ、どこまでも続く広い空を見上げる。
 (待ってろよ、アンク。俺達は必ず、お前が居る、明日へ行く!)
 命の重さを取り戻した映司がそれからどこへ歩んでいくのか……『オーズ』は本編を補完するエクストラエンディングとしても、 ヒーロー映司の姿を描く後日談としても、物凄く綺麗に収まりました。
 日本――駅で偶然、本物の美咲撫子とすれ違った弦太朗だが、声をかけずに、仲間達と笑顔をかわす。失恋の痛みに、 涙を流す時はまたあるかもしれない。けれどそんな時、再び立ち上がるまで好きなだけ泣ける時間を守ってくれる、それが、ダチ。 最後にメテオ/流星が顔見せ登場して、『フォーゼ』本編へ続く形でエンド。
 坂本監督がアクション監督も兼任し、ほとんどのキャストが吹っ飛んだり転がったりするという、全編、 生身&スーツのアクションてんこ盛りの派手なアクション作品ながら、しっかり計算されたシナリオでストーリーもまとまっており、 良い映画でした。
 後先はなんともですが、過去・現在・未来の仮面ライダーが集い、 3世代の平成ライダーが登場するという構造を物語として成立させるに際して、『オーズ』から拡張したテーマを組み合わせ、 登場する全ての仮面ライダーに、“劇場版だから”ではなく、物語の中の意味を与えたのは、非常にお見事(特に、 Wの組み込み方は白眉)。
 勿論、7人ライダーや、W、オーズ、フォーゼ、それぞれへの思い入れによって感触が変わる作品だとは思いますが、 「仮面ライダー」をテーマとした映画として、素晴らしく良くまとまったと思います。
 坂本監督のワイヤー趣味は、TV本編の戦闘イメージと乖離してしまう事もあるのですが、 現行ヒーローの『フォーゼ』が作風と合わせてワイヤーを使った無重力アクションが多めの為、 それをベースと考える事で違和感が少なめだったのも良かった点。そしてそれが、7人ライダー必殺技7連発をスムーズに見せる事にも繋がり、 全体の歯車が非常に巧く噛み合いました。
 以前にいただいたマットさんのコメントで、「個人的にはW・オーズ・フォーゼは3部作っぽく感じています」と書かれていましたが、 この映画を見て成る程と思う事があって、映画のテーマと少々強引に繋げると、
 『W』は、“昨日”を乗り越えようとしている男達の物語で、
 『オーズ』は、“今日”だけを反射で生きている抜け殻の男の物語で、
 では『フォーゼ』は、というと、
 「宇宙……無限のコズミックエナジーを秘めた、神秘の世界。若者達は、アストロスイッチでその扉を開き、未来を作る。 スペース・オンユア・ハンド。その手で、宇宙を掴め!」
 という事なんだなーと。
 何となく綺麗に収まった気がする所で、『MOVIE大戦 MEGA MAX』感想の締めとさせていただきます。
 改めて、コメント欄でお薦め下さった皆様、ありがとうございました。

→〔『仮面ライダーフォーゼ』その2へ続く〕

(2017年9月5日)

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