ブログ「ものかきの繰り言」の方に連載していた『ウルトラマンオーブ』 感想の、まとめ4(20話〜25話)です。文体の統一や、誤字脱字の修正など、若干の改稿をしています。
- ◆第20話「復讐の引き金」◆ (監督:冨田卓 脚本:内田裕基)
- 見所は、終始やたらと理性的なメトロン星人。
「君には関係のない事だ。気にするな。そんな暇があるなら、この星の雲行きについて考えたらどうだ」
崩壊した惑星侵略連合の復讐の為に舞い戻ってきたメトロン星人が、ジャグラーにトドメを刺そうとしている所に行き合うガイ、 それを止めようとして正論を返される(笑)
「それに、ジャグラーを野放しにして、手を焼くのは君自身だぞ」
「…………生憎、手ならとっくに焼いてるよ」
苦笑して変な間で返すガイですが、ジャグラーが追い込んで追い込んで追い込んだ末に、 地獄の淵から立ち上がったガイに叩きのめされて惨めに這いつくばるのが最高に快感なのに対して、 ガイはガイでそんなジャグラーに粘着されながら、ジャグラーの仕掛けてくる数々の嫌がらせと陰湿な企みを乗り越えて夕陽に向けてハーモニカを吹く俺が好きなのか。
逃走したジャグラーが偶然ナオミに助けられて介抱を受けている頃、 街ではジャグラーの行方を追う為にメトロンが放った円盤が次々と目撃されていた。 ガイは円盤とキャップを探すSSP&一徹とバッタリ出会い、一徹に向けては「お疲れ様です」と相変わらず笑顔で敬意を払います。
「私の目的はジャグラーを倒す事。他人の星に興味は無い。だが、邪魔をするなら、君とて容赦はしない」
「理由はどうあれ、この星の平和を脅かそうというなら、俺は戦う。どんな相手だろうとな」
3人が円盤を追って去った後にメトロンが姿を見せ、ここで改めて、過去のトラウマを乗り越えた後、 ウルトラマンオーブとしてのガイの地球に対するスタンスを確認。
「素晴らしい心構えだ。まさか……君は本当に気付いていないのか? 黄昏美しいこの星を覆わんとする、暗雲に」
メトロンは不穏な言葉を残して姿を消し、その頃ジャグラーに引き留められたキャップは、ガイとの関係を問い質していた。
「ガイより俺の方が勝っていた」
「え?」
「……かつて俺とガイは、同じ勢力に身を置きながら、腕を競い合ってお互いを高め合っていた。……実力なら俺の方が上だった。 だが――光はあいつを選んだ」
あくまでジャグラー(信用できない語り手)の自己申告ですが、ガイとジャグラーはかつて、 強敵と書いて「とも」と呼ぶ仲であったと明かされ、ドラフト指名漏れで就職に失敗していたのは、ジャグラーだった!
「光から見放された俺は、銀河を彷徨い、そして気がついた。闇こそが光に勝る力だという事を。俺に光など必要なかった」
ウルトラ甲子園に捧げた青春はなんだったのか……夢も希望も失い、裏社会に落ち着いたジャグラーはガイへのストーキングを開始。 やさぐれている男を見るとタコ焼きを恵まずにはいられないナオミは、どんな人間も闇を抱えているというのなら、 闇を求めるジャグラーの中にも光があるのではないかと《説得》コマンドを使用するが、そこに現れるメトロン星人。
「そこをどけ。地球人を巻き込むつもりはない」
あくまで復讐の対象外には理性を持って接するメトロン星人だが、キャップはジャグラーをかばって手を広げる。
「怪我している人を見捨てるなんてできない」
「なぜかばう? そいつは正真正銘の極悪人なんだぞ」
「極悪人なんかじゃない。だって……」
ナオミに向けられるラウンドファイヤーの銃口だが、間一髪、ガイが駆けつけ、もはやキャップ、 ガイが宇宙人と組み合っていても平然と受け止めていますが、わかっていても口に出さないのが女の度量です!
「離せ! 私の忠告を忘れたのか!」
「たった一人でも、誰かの平和が脅かされるなら、俺は戦うっ」
ここで言う「たった一人」とはナオミの事なのでしょうが、話の流れからはジャグラーの事にも聞こえるし、 恐らくその要素がガイの心情として0%ではないのが困った所。
もともと惑星侵略連合に所属して地球を狙っていたわけですし、悪い宇宙人なのは間違いないのでしょうが、 メトロン星人があくまで宇宙人同士の諍いとしてフェアに決着を付けようとしているのに対し、 地球(人)の平和を明確に脅かした前歴を持つジャグラーをガイが一方的にかばう形になっているのは、 筋が通らずどうも納得が行きません(^^;
悪の宇宙人による私刑は見過ごせないし、悪人に人権と理屈と弁解の余地は無いというなら、 いみじくもメトロン星人が指摘するようにジャグラーも条件は同じですし、 ジャグラーが怪獣を放っている事までは知らないキャップはまだともかく、ガイの行動にはかなり問題を感じ、せめてもう少し、 やむにやまれぬ成り行きに見えるように演出した方が良かったのでは。
……もっとも、ガイは基本的に私情で戦っているので、ジャグラーに対する複雑な感情は選択の揺らぎにはなりうるのですが、 これまではともかく、今後劇中でジャグラーが(間接的に)被害を出した場合、ガイは私情で筋を通さなかった事に責任を取れるのか。
せめてここまでの物語の中で、ガイがジャグラーに落とし前をつけさせようとする描写があったならまだ良いのですが、 基本的に劇中でそういう描写がされていない(SSPに不在の時にジャグラーを捜し回っている可能性はありますが)上で、ガイは基本、 突っかかってこない限りはジャグラーを放置しているように見える為、どうにも引っかかってしまいました。
「こんな形になって残念だよ! ウルトラマンオーブ!」
メトロン星人は巨大化し、ガイはオーブ嵐に変身。竹槍を振り回してまさかの大活躍を見せるオーブ嵐だったが、 背後から宇宙船の攻撃を受けてしまい、大爆発。
あ、死亡フラグだったのか……と思ったら、ダメージを受けながらオリジンを発動したオーブは、挟撃を跳ね返して、 宇宙船にウル仮面ソードを振り下ろすが、両断……できない(笑)
オーブオリジンの戦い方、どう見てもカリバーに振り回されている(使いこなす力量が足りていない)感じなのですが、 これは意図的な描写なのでしょうか(^^;
気を取り直して放った俺の必殺技・ウィンドによって巻き起こした竜巻によりメトロンと宇宙船が衝突し、 宇宙船の爆発に巻き込まれるも執念で炎の中から躍りかかってきたメトロン星人に、 俺の必殺技・振りかぶってストレートのカウンターが炸裂。
「……なんと美しい……この夕陽も、闇に呑まれてしまうのか……っ!」
愛する黄昏の中、夕陽をバックに末期の台詞を残して、メトロン星人は大爆死するのであった。
以前に出た時はもっと小物めいた印象があったメトロン星人ですが、夕陽も含めて原典オマージュという事か、 オーブと地球人に対して理知的な対応を取り続けた末、執念を見せるも無念の爆死を遂げる姿はなかなか印象的になりました。
「ありがとう、オーブ」
「……俺からも礼を言うぜ、オーブ」
の直後にジャグラーが勢いよく右手を突き上げるので、また、ガイとジャグラーの間だけで通じる、 二人の絆のポーズかと思ってドキドキしたのですが、その手の中に戻ってくる日本刀。
キャップに日本刀を突きつけたジャグラーは、ひきつるような笑みを浮かべながら、 キャップを利用してオーブにメトロン星人を倒させた、と説明する。
「私を騙して、ガイさんやオーブを利用したってこと」
……これを聞いて愕然とするキャップは、さすがに頭悪すぎませんか(^^;
「弱った男の身の上話を聞かされれば、おまえみたいな女はイチコロさ。……おぉぉーおぉ俺を必死でかばった場面は――傑作だったぜ」
ジャグラーさん、演技に気合い入りすぎて、発声が表記不能に(笑)
「最っ低」
……ええとキャップ、面と向かって何度かジャグラーに殺されそうになっている筈なのですが、そういう人だとわかっていて、 敢えて助けたのではなかったのか。
キャップの“愚かだけど尊い善意”の話なのかと思っていたら、“愚かなだけの頭脳”の話になってしまって、愕然。
「お陰でこの剣を取り返す事ができた。サイコウの気分だ。じゃあね。うひゃ、うひゃははははは」
ジャグラーの役者さんに罪は無いのですが、キャップの頭悪い加減とガイの責任問題に関して物語が破綻気味になったので、 ジャグラーの気持ち悪い演技で誤魔化して一点突破を計ろうとしているのが、どうも露骨に過ぎていただけません。
「この星の奥底に……まだ闇の力が眠っていたとはな。ふは、ふふははははは、はっははははははははは!!」
愛刀を取り戻したジャグラーは、夜に沈んだ街を見下ろしながら、何かを感じ取って喜悦の表情を浮かべる……で、つづく。
エピソードテーマの掘り下げ不足はしばしば感じるものの、話の構成という点に関しては大きな崩壊はあまり無い今作なのですが、 今回は過去の因縁と最終盤への伏線を盛り込むのが大事で、他はだいぶ雑になったという印象。特にナオミの扱いは酷くて、 前回今回でナオミの株がストップ安に転じて上場廃止になりそうな勢いなのですが、残り話数でミラクルは起きるのか。
次回――怪奇大作戦?
- ◆第21話「青いリボンの少女」◆ (監督:冨田卓 脚本:柳井示羊緒)
- 見所は、本日もかすりもしないオーブカリバー。
ガイさんはまず、剣術道場に通う所から始めるべきでは。
……この辺りがまあ、ジャグラー言うところの「俺の方が実力が上」という部分なのかもしれませんが。
街の上空に出没を繰り返すハイパーゼットンデスサイズ。そしてその姿がある所には、必ず青いリボンの少女が目撃されていた。 怪獣の声に呼応するかのように光を放つ腕輪を掲げ、怪獣と共に姿を消す少女の正体は何者なのか? SSPは、少女の目撃情報を元に、 親しく話していると噂される老夫婦の元へ向かうが、そこでバッタリとガイと出会う。
正面から茶飲み友達になるガイさんに対して、住宅地でハンディカムカメラ振り回して、 挨拶もそこそこに「この女の子を知りませんかー?!」と突撃するSSPの面々が凄く嫌な感じなのですが、物語も終盤になって、 SSPの嫌な面を殊更描く必要はあったのか非常に疑問。
色々あったけどSSPはSSP、という描写をしたかったのかもしれませんが、それがプラスの印象ならともかく、 残り数話にもなってマイナスの印象の部分を変わらないまま出すぐらいだったら、ばっさり切り捨ててしまった方が良かったのでは。
特に今回は、導入以降は全く話の核に関わらず、クライマックスでは3人並んで棒立ち。 ゲストの説得を後押しするとか渋川を制止するとかの役回りさえ与えられず実に酷い扱いとなっており、 キャリアのあるゲストに丸投げしてレギュラーメンバーが放置されるという、ギャラクトロン後編と同じ失敗をしています。
青いリボンの少女・マーヤの正体は、かつてガイに倒されたゼットン星人のコピー素体。年下の女の子に弱いガイ対策として、 少女の姿をしたマーヤだったが、回路の不調から記憶を失い街に佇んでいた所を老夫婦に声をかけられ、その交流によって得た記憶により、 一種の人格分裂のような状況に陥っていたのだった。
ゼットン星人がどんどん謎の設定持ちになっていますが、どうせ女の子の姿になるなら、いきなり格闘戦しないで、 もっと搦め手から攻めるべきだったのでは……とりあえず、餌付け辺りから。
ガイ抹殺の為にハイパーゼットンデスサイズを操ろうとするゼットン人格と激しく争ったマーヤ人格は、老夫婦を守る為、 自らの思い出を失う事を覚悟でブレスレットを破壊。オーブは制御を失って弱体化したハイパーゼットンデスサイズの撃破に成功するのだった。
主人格となるも全ての記憶を失ってしまったたマーヤは、広い世界を知りたいというかつての願い通り、 老夫婦の贈り物を手に旅に送り出されるのですが……えー…… 一切の記憶を失っている見た目10代の少女を旅に送り出してどうするの……?(^^;
マーヤが自発的に旅に出たいという意思を示し、寂しさを押し隠した老夫婦がそれを止めずにむしろ快く送り出す、 なら話はわかるのですが、老夫婦とマーヤが一緒に暮らせない理由が特に存在しないのに積極的に旅へ向かわせるのは、非常に不可解。 善と悪の交流と切ない別れ、という定型ありきで話の筋をはめこんでしまった感がある着地なのですが…… 家を出てしばらく離れた所で渋川が待機させていたビートル隊に拘束される、という理解で良いのでしょうか。
究極的には、
「おい、風来坊。好きな所へ行けばいい。ただ……帰る場所があると、もっといいかもな」
とガイに言わせたかっただけのオチに見えるのですが、ガイさんはホント、 こんな俺って凄く格好いいと思う理想の設定を、助言めかして他人に語るのがつくづくタチが悪いというか、ますます残念というか。
今あなた、キャップへ向けて、俺がこんな格好いい俺である為に、君は喜んで利用されてくれるだろう? と宣言しているのと同じですからね?!
あとガイさん恐らく、日本ではたまたまSSPだけど、孤児院とか、2人暮らしの老夫婦の家とか、 世界各地に俺の帰る場所を複数用意していると思う。
話の方は残念な出来でしたが、久々にサンダーブレスター登場で、 レッド掌底→レッドサイクロンパンチ→レッドビームのコンボを見せてくれたのは、嬉しかったです。
- ◆第22話「地図にないカフェ」◆ (監督:市野龍一 脚本:勝冶京子)
- 「まるでUFOが、次々と地球から飛び去ってるみたいだな」
スペースデブリが、UFOと思われる飛行物体と衝突して落下する事件が発生。現場では、 落下物の中に地球産ではないコーヒー豆が発見される。その頃SSPは、一度飲んだらやみつにきなるが、 もう一度行こうとしても二度と辿り着けないと噂される“地図にないカフェ”を探ろうとしていた。 ……その店の名は、カフェ★ブラックスター。
実はその店は様々な事情で地球に潜む宇宙人達が集う隠れ家的カフェであり、店長の正体は、地球侵略の夢を捨てたブラック指令。今、 宇宙人達は何らかの事情で次々と地球を離れており、ブラック指令も店を閉めて最後の船に乗り込もうとするのだが、 その内にくすぶっていた夢に相棒の行動で火が点いて、店の客でもあったオーブと激突する事に。
…………うーん……なんというか、私の抱く最近のウルトラシリーズへの苦手意識が濃縮されたようなエピソード(^^;
実際にはそんな事は無いのかもしれませんし、多分に誤解や偏見も含んでいるとは思うのですが、 この話を楽しむには近年のシリーズの流れを抑えた文脈理解を求められているのではないだろうか、というノイズがちらついてしまい、 一度ノイズがちらつくと更なるノイズを呼んで、物語に上手く入り込めませんでした。
戦隊シリーズで例えるなら、「隠居したアイアンクローが割烹食堂開いているような話」かと思うのですが、 ウルトラシリーズに関する知識量と文脈理解が絶対的に不足している為、店長が実はブラック指令でした (MAT壊滅させた事だけ知っている)、というのをどう受け止めていいのかわからず (例えば別作品で似たような前例があるのかもしれないとか、こういうネタをパラレル笑い話として受け止める土壌がシリーズにあるのかもしれないとか)、 非常に困惑。
背景の文脈が気になりだすと話に集中できない、というのは悪い癖だとは思っているのですが、今作がこれまであまり、 シリーズの文脈というのを意識させずに『オーブ』として単独で楽しめる話が多かっただけに(正直、 ゼットンゼットンまたゼットン辺りは気になりますが)、余計に引っかかってしまいました。
続々と地球を離れていくUFOで最終章への布石を置いた上で、そこから密かに地球に住まう宇宙人達の姿に繋げる、 という入りは面白かったですし、2クールの中にこういうエピソードが1話ぐらいあっても良いのだろうとは思うのですが、 個人的にはノれず。
怪獣との戦いでは久々にバーンマイトが登場…………して、見事な前座でした。
前回のサンダーブレスターは、むしろオリジンを前座にするという別格の扱いで嬉しかったのですが、バーンマイトはホント、 強敵に通用しないダイナマイトを放つ為のフォーム、みたいな印象で涙。一応、 ジャグラーとの絆ダイナマイトでブラックキングさん倒していますが。
ところで、『古城ロマンス紀行』を読みふけるガイさんは、新しいねぐらの可能性を探しているのか。
次回、そろそろ日本食に飽きてきたガイに迫る、闇の刃!!
- ◆第23話「闇の刃」◆ (監督:市野龍一 脚本:幸修司)
- ビルの屋上でひたすら、「間合いの外からの攻撃ならば拙者も可能!」と剣術スキルの熟練度上げに励むジャグラーの回想で、 ガイがオーブカリバーを手に入れた過去の出来事が描写。
「俺を選んだのか」
「何故だ、何故おまえなんだ」
ジャグラーは光の輪に弾かれ就職に失敗、ガイは光の輪に受け入れられてオーブの力を得、以後、 ガイに対する嫉妬と劣等感に苛まれたジャグラーは、堕落への道をひた走り、妄執の変態紳士へとクラスチェンジしてしまったのだった(推定)。
…………ガイさん、お友達の心のケアとか出来そうにないからな。
ジャグラーの行為を擁護する気も弁護する気も全くない(むしろ相応の落とし前をつけてほしい)のですが、 なにぶん本編において過去のガイとジャグラーの人間性について一切描かれていないので、こじれにこじれて事ここに至るまでに、 ガイさんはジャグラーの心の傷に、粗塩とか唐辛子とか練り辛子とか相当すり込んだのだろうなーと思えてしまうのが如何ともしがたい。
「俺の方が上の筈だ。……手に入れてみせる。おまえを切り裂く力を!」
一方、平和な公園の風景を見つめながらスペースハーモニカを吹き鳴らし、この平和を影で守って自分からは存在をアピールしない俺、 ヒーローとして格好いい……と浸っていたクレナイ・ガイは、予知夢少女ハルカと再会。ハルカの見た、 世界に迫る巨大な闇について相談を受ける。
「未来は真っ白なんだ。運命は変えられる」
度々、俺理想をとくとく語るガイさんですが、基本、風来坊キャラを作る事で自己防衛をしているメンタルの弱い自分好きなので、 これも自分に言い聞かせているのだなと思うと、色々と納得。
その頃、SSPには渋川が謎の連続ビル壁亀裂事件を持ち込み、ジャグラーのトレーニング痕が怪事件として調査対象に。
なんとか風土記のデータをあたるくだりで、原本は「この街の郷土資料課が保管しているらしいのですが」という発言が飛び出し、 シンは原本にあたった事がない、という衝撃の事実が発覚。色々謎だった怪獣風土記ですが、 解読している人が他に居て、ネット上のデータを閲覧しているだけだったのか! 個人のホームページなのか!!
何はともあれSSPは調査に出動するが、時同じくしてジャグラーが地面に突き立てた愛刀を通して、闇の力を入手。 巨大な深紅の光柱が地の底より噴き上がるのを目にしたガイがSSPと行き合った所に出現すると、 魔人モードに変身して次々とビルを切り裂いていく。
「俺に用があるんだろ。だったら人間を巻き込むな!」
「はっ! この星が無くなる前に証明してやろう。俺の方が優れている事を」
「……星が……無くなる?」
「今から死ぬお前には関係ない。闇の力……地中に眠る闇が、俺に力を与えてくれた。いやぁぁぁぁぁぁ!!」
咆哮と共にジャグラーは巨大化し、ガイは初手からサンダーブレスターへと変身。
「おまえへの憎しみから生まれた必殺剣、受けてみろ」
毎日ログインしてこつこつ貯めたボーナスで10連ガチャ回したのに全部外れだった横で、 始めたばかりの友人が初回ボーナスガチャでいきなりスーパーレア引き当てた的な憎悪を糧に、喰らえ、邪心剣!!
背後からジャグラーを銃撃する渋川と、それを止めようとするSSPがやいのやいのしている内に、 ギャグっぽい成り行きからシンが瓦礫の崩壊に巻き込まれて気絶してしまう中、ガイはオーブ:オリジンへと変身。
「銀河の光が我を呼ぶ!」
「そうこなくっちゃな。ふひゃはははははぁ!!」
両者の力は拮抗し、弾け飛んだお互いの剣が地面に突き刺さる。 いちはやく引き抜いたオーブは抜けなくて困っているジャグラーの背中から俺の必殺剣・フレイムを放つが、 ギリギリで抜いたジャグラーは炎を一刀両断。背後の足下でシンを助けようとキャップ達が留まっている事に気付いたオーブはその盾となり、 ジェラシー剣の連打を浴び、遂に倒れてしまう(7話ぶり4回目)。
オーブ:オリジンとしては初なのですが、第19話で嫉妬の鬼には実質的に敗北していましたし、 なにぶん約10話で4回目のダウンの為、インパクトはいまいち。
「くだらねぇ。人間なんて、かばうからだ。それがお前の――弱さだ」
ジャグラーは倒れたオーブを足蹴にすると、キャップ達を見下ろして勝利の哄笑を響かせる。
――だが、それを見上げるキャップ達の視線は、ジャグラーの更に背後に向けられる。怪訝に思ったジャグラーが振り返ると、 そこに居たのは、仁王立ちするウルトラマンオーブ!
「な、なに?! 貴様は限界の筈だ!」
「誰かを守りたいと思う心は、俺に限界を超えた力を与えてくれる」
振り下ろされるジャグラーの一刀を素手で受け止めるオーブ。
「な、なんだこの力は?!」
「おまえが捨てた、力だーーーーーーーーーー!!」
ガイとジャグラーを分かつ決定的な要因が描かれ、4回目のダウンはむしろ前振り、 自力で立ち上がってからのストレートな逆転劇は素直に格好良かったのですが、ガイとジャグラーの対比となる要因、および、 仮初めにもジャグラーを真っ向勝負でオーブに勝たせない為のハンデとして用いられたSSPが、 この期に及んでお荷物になってオーブの足を引っ張る(渋川の足も引っ張っている)という役回りはいかがなものなのか。
SSPの面々が頭悪いのわかっている渋川さんが民間人の避難を最優先しなかったのは大きな失点なのですが、 SSPはSSPで渋川さんを低く見積もりすぎているので、銃撃中のビートル隊員の邪魔をするという浅はかっぷり。
トドメに20数話に渡りガイとの旅を続けてきたSSPの面々がオーブ視点において“無力な地球人”として一緒くたに扱われており、 これではSSPはまるっきりピエロです。
無論、そもそもウルトラマンというヒーローには、 防衛隊ポジションが手も足も出ない所に現れて颯爽と怪獣を退治するという身も蓋も無さがあるのですが、 その手も足も出ないプロセスにおいて“人間としての戦い”が描かれるという要素も同時に存在します (この辺りはシリーズとして変遷があるでしょうが、私の知識の範囲の話として)。
ところが今作はガイが割とざっくり変身してしまう事もあり、 経過として描かれる“人間として出来る事”の要素が非常に不足しています。
その不足はSSPを通して徐々に補われ、“人間として出来る事の意味”も少しずつ描いていってくれるのだろうと思っていたのですが、 第3話におけるジェッタの叫びや、第7話のハルカの未来を変えようとする意志、第8話でのラゴン親子の為の奮闘などあるものの、 それらはむしろ前半に集中しており、後半に行くにつれてSSPが蚊帳の外に。
SSP(特にキャップ)はガイの魂の傷を癒やす役割を果たしてはいるのですが、 ではSSPはガイとの出会いや数々の怪獣騒ぎの中で一体何を得ているのか?
第8話や第12話、第15話など、エピソード内で提示されたテーマに対してSSPがSSPとしての答を出すどころか、 ろくに向き合いもしないで来たツケが大きな落とし穴になり、今もってそれらの部分が全く描かれていないのが、非常に引っかかる所。
SSP個人個人に全く変化が無いとまでは言いませんが、積み重ねた旅路の経験は、 フィクションにおいては“物語への作用”を通して初めて意味を成すものであります。
あくまで主人公はウルトラマン(オーブ/クレナイ・ガイ)であり、SSPは良くて狂言回しに過ぎない、というなら、 それはそれで一つの物語の形ではありますが、SSPを通して“人間として出来る事の意味”が描かれてこそ、 それと向き合うガイ(オーブ)の“人間を守る意味”が浮かび上がると思うので、そこは是非とも描いてほしいし、 SSPには残り2話での逆転サヨナラホームランをかすかに期待したい。
オーブ渾身の俺の必殺剣・ど真ん中のストレートが直撃し、敢えなく弾け飛ぶ魔人ジャグラー。
「守りたいと思う心……」
ビルの屋上に大の字に転がり、無表情に呟くジャグラーへ向けられたのは――ビートル隊の誇る宇宙人ハンター、 殺しのライセンスを持つ男・渋川一徹の怜悧な銃口。
「終わりだね、宇宙人」
ジャグラーは半身を起こすと指で銃の形を真似るおどけた仕草で笑みを浮かべるが、 それに対して微笑みを返すおじさんは修羅場くぐりすぎです。
一徹と、増援のビートル隊に囲まれて降伏の意志を示すジャグラーだが、その口の端には歪んだ笑みが未だ浮かび続ける。 果たしてそれは虚勢なのか? 隠し持った切り札があるのか? そして地球の奥底に潜む闇の力の正体とは……?!
盛大に吹き飛んだジャグラーですが結局生きており、ジャグラーの生命力が予想以上だったというより、ガイが手心加えた感が濃厚。 結局ちゃんと落とし前つけられないガイですが、責任の取り方が間違っているタイプというか、 責任取れないタイプというか……この辺りは個人のガイ観にもよるでしょうが、私の中のガイさんは、 どこまでも理想を追いかけ続ける俺格好いいな! という人なので!
次回――迫真の予告で、物語はクライマックスへ!
- ◆第24話「逆襲の超大魔王獣」◆ (監督:田口清隆 脚本:小林雄次)
- 夕暮れの街に、突如出現する地底怪獣軍団。そこへ降臨したオーブ嵐はオーブスラッガーランスを構えるが、 怪獣達は何もしない内にバタバタと倒れてしまい……テレスドンの脈を取るオーブ。
怪獣って普通にそれで生死判定できるんだ?!
……まあレッドマン先輩の、頭部への蓄積ダメージで怪獣も殺せるとは、理屈が繋がっているような気がします。
そして、オーブスラッガーランスに見せ場なんてあるわけなかった。
次々と目撃されるUFO、日本近海を離れていく海の怪獣、 12月だというのに連日の真夏日……首都圏を中心に異常な出来事が次々と起こる中、 ナターシャとシンクロする光の巨人の夢を見たナオミは、夢の中で爆発に巻き込まれる寸前、何者かに助けられた所で、跳ね起きる。
「この世の終わりみたいなひっどい寝癖だなぁ」
机でうたた寝していたナオミを棒アイス食べながら傍観した上で、落ち武者みたいな姿で起き上がると、 デリカシーの1ミリも無い感想を述べるガイさん、最終回直前でも、ホント残念。
相次ぐ異常現象は終わりの始まりなのか、シンとジェッタは太平風土記の原本にあたろうとして、 郷土資料館(研究者である岸根教授宅?)に向かっていた。
「幾多の怪獣達について記された歴史書、太平風土記。 その失われた原本が……この街の郷土資料館によって保管されているという事がわかりました」
……前回、タイトル検索したら2秒で場所が見つかったみたいなノリでしたが、いつの間にか幻の本に。 SSPの取材ビデオなので多少話を盛っているのかもしれませんが、 怪獣が出てくる前にツッコミによるエネルギー消費でカラータイマーが点滅しそうな勢いです。
ところが、岸根教授は2ヶ月前に死去しており、二人を迎えてくれたのは和服の老女、岸根夫人。
「生前、主人が申しておりました。太平風土記は、禁断の書。いたずらに公開すれば、この世、恐怖と混乱に陥れる。 しかるべき時が訪れるまで、決して、公開してはならないと」
…………ええと、思いっきり解読データが流出していたのですが……考えられる結論はただ一つ、 ハッキング?!
『太平風土記』に関しては、序盤の雰囲気出しの為の便利アイテムが実は重大なキーアイテムだったという仕掛けをやりたかったのか、 便利アイテムで終わらないように物語の中に収めようとして終盤に設定を追加したのかわかりませんが、 辻褄を合わせようとしたら却ってとっちらかった感。
天才発明家であるシンが古文書解読まで出来てしまうとあまりに便利キャラ過ぎる、 という事で調整を図ったのだとしたらその意識は良いと思うのですが、これなら、 興味本位でジェッタが買ってきた古本が次々と魔王獣と関連していてビックリ、とかでも良かったような。
その頃、ビートル隊日本支部では、菅沼長官が基地に拘束したジャグラーと面会していた。
「間もなく……最後の魔王獣が現れこの星は喰われる」
ジャグラーは2時間後に最後の魔王獣が甦ると情報を提供、 時同じくして東京タワー周辺で急激な地盤沈下と共に天に伸びる異常な紅い光が発生する。
…………地球の地下に潜む闇の力で、八つの地脈が交差する東京タワーの地下から浮上してくるって……ドルゲ?(おぃ)
これを受けて政府は、観測史上最大規模の怪獣災害の可能性があると非常事態宣言を発令。
「ウルトラマンオーブに倒されたマガオロチは幼体に過ぎない。あの時ヤツは地底にその命を託した。間もなく、 地球そのものをサナギとし完全体になる。その名は――」
「マガタノオロチ」
東京タワーの直下100メートルに1万度を越える熱源が確認され、パリ本部からの指令もあり、 ビートル隊は超兵器R1号による攻撃を決断。
ジャグラーの情報やR1号発射に関して対立する幕僚、繰り返し挿入される報道番組、避難する人々に大量のエキストラを動員、 冒頭から都市遠景のカットで入って雰囲気を変えた後、ビートル隊の硬質な緊迫感と、 シンとジェッタのどこか間合いのずれた岸根邸訪問による全体の緩急の付け方、など映画的な見せ方が続くのですが、 思えば田口監督は、第12話においてマガオロチを警戒するビートル隊をちらっと出した時に映画的なカットで見せており、 今作においてビートル隊が日常に対する非日常の存在といえるなら、ビートル隊が主観となった時に、映像がTVに対する劇場に寄る、 というのは必然であるのかもしれません。
刻一刻とR1号の発射が迫る中、シンとジェッタは岸根夫人より太平風土記を託される。
「しかるべき時が来たら、これを貴方たちに渡してほしい。それが、主人の願いでした」
首をひねる2人に対して、ノートパソコンを広げてSSPのサイトを見せる夫人。
「近頃は少しはマシなサイトになったようだね」
ここで、SSPのこれまでの積み重ねが活きるというのは良かったのですが、物語をそう運ぶ意識があったならば、 道中でもっとSSPの活躍や活動(意識)の変化を積み上げていってほしかった所。前回の感想で書いたように、 物語の焦点がSSPから外れ気味になっていたので、正直、「え? マシなサイトになったの?」というのが勿体ない。
構成的にいえば、ゼットン娘かカフェの回かで(内容では無く話数のタイミング)、 SSP3人に焦点を合わせてその変化を描ければ良かったと思うのですが、むしろそこでSSPが蚊帳の外になってしまっていた為、 マシなサイトになったという説得力がまるで生まれていません(^^;
そして夫人の言葉から考えると、岸根教授は「禁断の書」と言いつつも、故意に部分的な情報を露出させて、 自分の元へ辿り着く者を待っていた、少々困った人だったという解釈で良さそうです。
ガイとナオミはビートル隊の日本支部へ急ぎ、ガイはジャグラーと面会してその真意をただす。
「恐怖にかられた人間ほどおぞましいものはこの世に無い。一度は闇の力に囚われたお前ならわかるだろう? 人間どもの闇の力がマガタノオロチを生み出し、この星を地獄に突き落とすのさ」
ジャグラーの狙いは、恐慌状態に陥った人々の感情、 そしてそこから放たれた破壊の力をマガタノオロチ覚醒の引き金にするというものであった……今作ここまでの段取りからすると、 マガタノオロチは「愚かな地球人」の支払うべき代償、という事になるのかなと思っていたのですが、 最終回でもう少し踏み込んでくる可能性もあるので、とりあえず保留。ジャグラーの言葉自体は、 「世界中が君を信じてる」 に繋がってくるのかとは思われますが。
ジャグラーの言葉を聞いたガイがスライディングで外に飛び出してくる、というのはシャッターが開ききるのがもどかしい、 という焦りが出ていて良かったです。
にしても、ガイとジャグラーの面会をセッティングし、司令部に民間人を伴って入室を許可され、渋川さんは、 どれだけ上層部からの信認が篤いのか、さすが殺しのライセンスを持つ特A級ストライダー(渋川さんが、優秀、 もしく特権を付与された隊員であるという描写は一貫しているので、渋川さん周りの描写に関しては違和感がありません)。
ビートル隊日本支部を飛び出して東京タワーへと急ぐガイだが、一足遅く、R1号が熱源に命中。そしてジャグラーの目論見通り、 R1号のエネルギーを喰らい、マガタノオロチが地上へと出現する。
「星の全てを喰い尽くす超魔王獣、マガタノオロチだ。お前に倒せるかな」
周辺のビルを喰らいながら、魔王獣の力を振るうマガタノオロチに対し、ガイはオーブ雷へと変身して立ち向かう。
マガタノオロチのデザインは、球形の胴体から突き出した頭(と複数のサブ頭部)というフォルムが人の形を巧く隠しており、 メイン頭部の形状や、触手状の表皮など、私の偏愛するビオランテに似た方向性も感じて、結構好き。 欲を言えばもう一回りか二回り大きいと最高でしたが、さすがにTVでは無理か。物語の最後で、人型の格好良さよりも、 異形である事を選んでくれたのも好印象。
「ジェッタくん……マガタノオロチに接近できますか」
「は? シンさん何言ってんだよ」
「あいつの弱点を見つけるんです。今の僕らには……これがあります」
「そっか……俺たちには、まだ出来る事がある」
苦戦するオーブの姿に、太平風土記に望みをかけるシンとジェッタ。
ここで、“人間として出来る事”に触れられ、かなりストレートな台詞になっているのは作り手もその不足を感じていたのかなと思う所ですが、 この台詞が最大限に活きるのは映像的にオーブがもっと敗色濃厚になってからである、というのが惜しい。 大きな穴を二つ埋めに来てくれたのは良かったのですが、欠けたピースが綺麗にはまりきってくれませんでした。
オーブはオリジンとなるも、俺の必殺剣のエネルギーさえ飲み込まれた上に、大事なカリバーをかじられ、ぺっとされてしまう。 その足下へと向かうシンとジェッタは攻撃に巻き込まれで瓦礫に埋もれ、オーブはグランドマガタビームに胸を貫かれ、 光の粒子となって消滅……。
ビートル隊の基地を飛び出したナオミは瓦礫の中に倒れ伏すガイを発見して助け起こそうとするが、ビートル隊の警備を切り伏せ、 変態紳士の超能力によりスーツ姿に戻ったジャグラーがその背後に現れる。
「しっかりしろ、ガイ? 実に、実に勇気ある戦いだった。だが、まだ終わりじゃないぞ。いいや、終わらせない。本当の地獄は、 こんなもんじゃないぞ」
ジャグラーが遂にナオミの背中をずんばらりん! でつづく。
シンとジェッタのやり取りが早くなったのは、このシーンの印象を強める意図だったのかとは思うのですが、 オーブ敗北→基地を飛び出すナオミ→勇を鼓してオロチに近づくジェッタ達→破壊に巻き込まれて気絶→ナオミがガイの元に辿り着く、 の方が時系列としてもスッキリしたような。
なにぶんナオミ、ビートル隊の基地を飛び出した次のシーンで、 オーブを倒したマガタノオロチが反転していく直後にガイの元に辿り着いてしまうので、“居るべきじゃない所で居合わせる。 不注意の固まりみたいな女”としてのスキルが高すぎます(笑)
積み重ね不足などが響いて気になる点はあり、幾つか不満は書きましたが、ガラリと雰囲気を変えた前回の予告から盛り上げて、 映画的な絵作りや構成がはまって決着に期待の高まる良いラスト1話前でした。
次回――
「ガイさん、もしあたしが死んでも、貴男のせいだなんて思わないで。ちょっとの間だったけど、あたし、貴男と過ごせて幸せだった。 あたし……貴男の事を忘れない」
ナレーションが乙女な一方、映像からは、 ジャグラーに斬られたキャップが謎の妖術で巨大なマトリョーシカに変わってしまったように見えるのですが、 果たして真相や如何に?!
そして、さすらいの太陽は再び昇る事ができるのか!
オーブカリバーの、正しい使い方はこうだ!!(鈍器)
- ◆最終話「さすらいの太陽」◆ (監督:田口清彦 脚本:中野貴雄)
- うーーーーーーーーーーーーーん、いや、なんかこう、自分の見たかったものとここまで着地点がズレるとは思いもよらず。
可能性の一つとしてはあったのですが、ここまでの物語の積み重ねや、前回の仕込みから、このポイントは外れないだろう、 と思っていたポイントに全くボールが来なくて、呆然としたまま見送り三振の気分。
結局のところ、『ウルトラマンオーブ』とは「ガイとジャグラーの物語」なのである、と言われてしまえばそれまでなのですが、 その他の要素がここまで放り投げられるとは、正直、想定外でした。
以下、話を追いかけながら。
ジャグラーとナオミが姿を消し、絶叫するガイ。今回もおっとり刀で飛んでくるゼットビートルは次々とマガタノオロチに撃墜されていき、 その猛威の下で、マトリョーシカに仕込まれたジャグラーからのメッセージを見つけたガイは、ナオミを助けに走る。
一方、ジェッタとシンは車ごと瓦礫の下に閉じ込められており、サブタイトルお遊び、 最後に「開けてくれぇーーーーー!」を持ってきたのは、面白かったです。車中のシンは、 ジェッタの言葉をヒントに『太平風土記』が予言書である事に気付き、その一節からマガタノオロチの弱点を見つけだす。
「すぐにサイトを更新して下さい!」
その頃、マガタノオロチvsビートル隊を背景に、ナオミに刃を突きつけたジャグラーの元へと辿り着くガイ。
「おまえにマガタノオロチは倒せない。そしてこの女も救えない。おまえの愛したこの地球は、消えてなくなるんだ」
「ジャグラー!」
「おまえと俺は色々なものを見てきたな。ダイヤモンド新星の爆発も、黄金の銀河に浮かぶオーロラも。 ……だがそんな思い出はいずれ消える。まるで星屑のように。何もかも消える」
滔々と語りながら、涙をこぼすジャグラー。
前回の映画的なカットやエキストラ大量動員の盛り上げ方から大怪獣スペクタクルを期待して最終回を見始めたら、ここまでずっと、 ジャグラー・オンステージ。
ジャグラーと改めて決着つけないといけないのは確かですし、延々とバトルばかりやっていられないというのもわからないでもないのですが、 それにしても幾ら何でも、ジャグラーにおんぶにだっこしすぎなのでは。
「……唯一永遠なものが何かわかるかぁ? なあ、ガイ…………それは何もない暗黒だよ? おまえの中にも、俺の中にも、 誰の中にもある闇だ。埋まらない心の、穴なんだよ」
長い就職活動の中で得てしまった虚無を語るジャグラーが、同じスケールを生きている者として、 心底からその哀しみに同意を求める姿は好演・怪演なのですが、あまりにも物語がジャグラーに引きずられてしまった気がしてなりません。
だが……
「闇は永遠じゃない。唯一永遠なもの、それは――愛だ」
「はぁ?」
はぁ?
「この宇宙を回すもの、それは愛なんだ。暗闇の中でまたたいている、希望の光だ」
なんというかこう、ガイさんは凄く言いそうなんだけど、物語としては何の積み重ねもなくて、 最終回で主人公から宿敵にずばっと言い返す言葉なら、もう少し前振りをお願いしたくて困ります。
徹頭徹尾、クレナイ・ガイはキャラ造りの彼方にいて、そのガイらしい言葉ならばすなわち『ウルトラマンオーブ』らしいとも思えますが……
「……おい? おい、おい! おいおいおい!」
ジャグラーでなくても、怒る(笑)
「いまさら愛だ希望だっていう台詞でこの状況がどうこうなると思ってんのか? はぁ? はははは。……俺が何もかもぶった切ってやるよ」
「好きなだけ刀を振り回してればいいわ!」
「なんだって?」
「ガイさん、聞いて。もしあたしが死んでも、貴男のせいだなんて思わないで。ちょっとの間だったけど、あたし、 貴男と過ごせて幸せだった。あたし、あたし……貴男の事忘れない!」
気丈にジャグラーに抵抗するナオミだが、その時、撃墜されたビートルの一機が3人の方向へと墜落し―― 爆発の中で咄嗟にナオミを救ったのは、ジャグラーだった。
「おまえの心には……まだ光が残っている」
そして1908年――ルサールカの地でナターシャを救ったのもまた、ジャグラーであった。
「おまえなんだろ。ナターシャを助けてくれたのは」
「あの時……気付いたらあの女を必死に助けていた。あの女は俺に微笑んだよ。 ……わけがわからなくなって……俺は尻尾を巻いて逃げちまった。弱い者を放っておけないのはガイの弱点だ。なぜ……? 俺も同じ事を……」
回想シーンでは、ジャグラーがナターシャに生命エネルギーのようなものを付与しており、 ナオミ母がガイのハーモニカに嫌悪感を見せていたのは、この影響という事でしょうか。アレは男として駄目、というのは、 それと関係ない女の経験値(なお正解)だと思われますが!
……そういえばガイさん、傷心旅行からの帰還後に一度もナオミ母と会っていないので、心証真っ黒のままですね!
ジャグラーを襟首掴んで立たせたガイは、初めて(これまでの打撃は全て戦闘の過程であったので)落とし前として一発殴った後、 渾身のハグ。
「……――ありがとう」
結局今作における“この半年あまりにジャグラーが(原因で)起こした被害もろもろ”のけじめは、パンチ一発という事に。
ガイさん言う所の「愛」の中身が何も塗り固められないまま、ジャグラーの心の中にも愛があったからいいんだよ! で強行突破されていくのですが、いったいぜんたい、あなた方は何百年青春しているのか。
ガイもジャグラーも本質的には“人間くさい神様”であって、自分たちの命と人間の命とでは、 悪い意味ではなく根本的にスケール感が違うのだろうな、とは思われますが。
そして基本的にガイが、どこの誰にも頼まれていない“私情のヒーロー”である以上、それを追求できる劇構造ではないのですが、 先日メトロン星人を抹殺していた態度とは大違いで、今作における愛とか光とかいうものが、ごくごく私的なものとして、 夕陽の沈む海に着水。
それはそれで一つのスタイルではありましょうし物語として否定もしませんが、一方でガイさん、 「光の力」とか「悪を討つ」とかやたらと口にしており、自分に言い聞かせているタイプ(例:「世のため、人のため、 メガノイドの野望を打ち砕く、ダイターン3!」「ジャンパーソン・フォー・ジャスティス!」)だとは思っていましたが、 この最終回、それらの言葉に対する責任を、作品としても一切合切放り投げてしまうのはさすがに不満点で、これに関してはまとめて後述。
「ナオミを頼む」
男の絆をフル充電したガイは、再び戦場へと疾駆する。
「ウルトラマンさん! ティガさん!」
走りながらオーブリングにカードを通すガイに、飛行フォームの先輩の霊体が並走する、という絵は文句なく格好良かったです。
「光の力、お借りしまーーーす!!」
高空望遠のカットから、マガタノオロチへ向けて飛び込んでいくスペシウムゼペリオン。
「俺の名はオーブ! 闇を照らして! 悪を討つ!!」
その頃、SSPのサイトが更新されている事に気付いた渋川(叔父馬鹿なので、通知が来る設定にしていた模様)により、 シンとジェッタが瓦礫の下から救出される。渋川に伝わるであろう一縷の望みを託したサイトの更新内容……それは、 マガオロチが倒れた時に足下に御神木があった事で、闇のエネルギーが地下に届かずに生じた、マガタノオロチの弱点であった。
「なんなんだよ……何がしてぇんだ俺?」
一方、思春期の高校生みたいな事を言い出すジャグラー。
以前にジャグラーの故意に見える詰めの甘さについて、「追い込んで追い込んで追い込んだ末に、 地獄の淵から立ち上がったガイに叩きのめされて惨めに這いつくばるのが最高に快感」と書きましたが、今回を見て、 ジャグラーが何より求めてやまないのは「ガイによる自分の否定」であったのかな、と納得。
ところがガイのけじめの付け方が何かにつけ生ぬるいので、より強烈な否定を求めて、病状がどんどん悪化。
こじらせにこじらせた末に辿り着いた究極の望みとはつまり、 最高に格好いいガイによるジャグラス・ジャグラーの全否定――すなわちガイの手で殺される事――になるわけですが、 同時にそれは、クレナイ・ガイの心に闇を生み、ジャグラーが思い描く唯一永遠な二人の心の絆になる。
この、否定してほしいけど否定されたくない、ねじれにねじれた妄執の完成こそジャグラーのやりたい事だったと思うのですが、 長い彷徨の果てに、よりによってガイの目の前で、虚無の暗黒こそ永遠であるという自分を、自分自身で否定してしまい、 ジャグラーはそれを認めざるを得なくなる。
「あんたいい加減にしなさいよ!」
かくしてアイデンティティ崩壊の危機に直面して座り込んでいたジャグラーの尻を叩く、ナオミの怒声。
「あたしと夜明けのコーヒー飲むとか言ってたよね? でも今戦わないとさ、二度と夜明けなんか来ないんだよ!」
…………男をどやしつけて動かすタイプにはとても思えなかったのですが、 最終回にして話の都合でヒロイン(一応)の性格が変わっている気がするのですが。
「あなたが居なかったら、あたしは生きてなかった。……さあ、立って」
オーブはオリジンを起動し、敵の頭を押さえつけ、剣の根元で叩く!!(鈍器)
だが奮戦むなしく終業時間が迫り、膝を付くオーブの眼前に迫るオロチの顎。しかしその時、背後から刃が一閃してオロチを切りつけ、 その窮地を救う魔人ジャグラー! ジャグラーはオーブへ手を伸ばし、今ここに、 絆と光に結ばれた二人の巨人が超大魔王獣へと立ち向かう!!
音楽の入れ方も格好良く決まり、展開としては盛り上がるラスト共闘なのですが、凄まじいマッチポンプ。
オブジャグは息の合った連携で攻防を入れ替えてオロチに対抗し、オーブはオロチの光線をカリバーでねるねるねるねすると、 頭部に叩きつけて反撃。それでも止まらないオロチの猛攻だが、その時、渋川がオロチの弱点と目される箇所へ一斉攻撃の許可を取り付ける。
「勝算はあるのか?」
「情報特務隊隊長、渋川一徹が、全責任を負います」
「よし、頼んだぞ」
「もしかして……渋川さんって、偉い人だったの?」
渋川の号令一下、闇のエネルギー不足で組成が完全ではない、オロチの弱点へと一斉攻撃を開始するビートル部隊。
「オーブ! マガタノオロチの弱点はあそこだぁ!」
「そこが不完全なんですー!」
で、ここが今回最大点の不満点なのですが、まず第1話から、ネットでアフィリエイトサイトを開いているSSP、 という基本設定が在り、叩きや炎上にも負けずにオカルト情報サイトとして更新を続けてきているという経過があり、 幾つかのエピソードではその取材というのが行動の動機となり、前回その活動が亡き岸根教授に認められて夫人から 『太平風土記』を託されるというビッグイベントがあり……そこまで持ってきて、どうして、どうして、 SSPのサイト更新が届くのが渋川だけなのか。
前回の夫人の「マシなサイトになってきた」発言の補強としても、ガイとの旅路によるSSPの成長を見せる形としても、 SSPのサイト更新が多くの人に届いて、そんな人達の勇気と善意あるちょっとした行動が大きな光となり、 マガタノオロチの弱点を生む……という形になるとばかり思っていたのですが、まるでかすりもしませんでした(^^;
すべからく私の勝手な期待であり妄想ではありますが、SSP及びそのサイトの物語における着地点が、 「風土記を貰う」「渋川に情報を伝える」の2点でしか無かったのは、非常にガックリ。
そして思い出されるのが、ドン・ノストラの、
「ウルトラマンオーブが強い理由は何か。それは、人間達との絆の強さなのだよ。人々の希望が奴へ力を与えている」という台詞で、これ自体非常に唐突でしたし、劇中でろくに補強もされていないので単なるドンの妄想だったのかもしれませんが、 とはいうもののこれを軸にしたエピソードを一つやってしまった以上は、物語として責任は取らなければならないと思うわけです。
だというのに最終回、人間達との絆はほぼ無関係!
SSNの拡散性は一切利用されず!
いかにもな主題歌との絡みは全くなし!
主題歌の歌詞は劇の外の事なので割り引くにしても、繋がりそうな要素がこれだけ揃っていて、どうして何一つ顧みられないのか。
もう一つ、今作で何度か繰り返される要素として、
「お前達はまだ、この腐りかけた星に侵略する価値があると思ってるのか?」というゼットン星人を起点にした、地球にはどんな価値があるのか? というテーゼがあり、ギャラクトロンのエピソードなどからも、 マガタノオロチを生んだ「闇の力」とは、地球人類の環境破壊や戦争の結果として地球内部に蓄積された人類の負の代償? という風に想像していたのですが、これといって接続は無し。
あくまでマガオロチの強化形態という事のようですが、地球環境の問題については幾度か触れていただけに、 そういった要素を拾っていかなくて、何の為の二十数話なのか。
ここまでの問いかけとラスボスすら切り離されてしまっていて、とにかく今作は、答を出そうとしません。
それらを有機的に結合させて、言われ放題守られるがままではない地球人類の姿を浮かび上がらせてこそ、 積み重ねてきた物語の意味が出ると思うわけなのですが、つまるところこの最終回、「人類の光」がろくすっぽ描かれないのです。
今作世界における「闇」とか「光」とかは極めて即物的なもの(生まれ表の結果)という疑念もありますが、「光の力」とは何か、 「闇を照らして悪を討つ」とは何か、それがガイの決め台詞(自己暗示)以上の意味を最後まで持たない。
故に結局ガイが言うところの、「唯一永遠なるもの、愛」「暗闇の中でまたたいている、希望の光」とは、
「俺はナターシャが好きだ。だから地球を守る」
から前にも後ろにも一歩も進まず、『ウルトラマンオーブ』という作品自体がそこで閉じてしまったように感じます。
オーブ(ガイ)の光を否定するわけではなく、しかしオーブの光が物語として外に広がらなければ、 それはオーブだけの光で終わってしまうのです。
前回、“人間として出来る事”という要素を取り込んでくれて、 今回の大逆転には風土記の解読とビートル隊の援護攻撃という要素が大きな役割を果たしているのですが、結局それも、 〔シン−ジェッタ−渋川(ビートル隊)〕という枠の中だけで完結してしまっていて、そのサークルが、物凄く狭い。
そこで、世界中が君を信じなくて、いったい、いつどこで信じるのか?!
ここまで24話の積み重ねを繋げて、世界中(日本中)の希望を力とするウルトラマンオーブが見られるのかと思ったら(それこそ、 オーブが人類に敵視される、というエピソードもあったわけで)、そういった結合が全く無かったのが、とにかく非常に残念でした。
私が今作で見たかったのは、その、飛翔――世界のブレイクスルー――であり、 それを起こせる(夢想としてそれを描く事を許される)存在こそが、ヒーローであると思っているので。
意地の悪い見方をすれば、ガイはジャグラーをハグした時点で、人々の希望を集める依り代としての資格を失った為に、 そういう着地を描けなかった、ともいえますが。
で、劇中の役割として渋川をビートル隊と同一視すると、最終決戦は
〔シン−ジェッタ−渋川〕−(助力)→オーブ←(助力)−〔ジャグラー−ナオミ〕
という構造で、つまり、「人々の希望」の代わりに、「ジャグラー」が代入されており、25話かけてオーブ(ガイ)が手にしたのは、 ジャグラーの中の光であった、と。
そう考えると今作はあくまで「ガイとジャグラーの物語」であり、それ以外の要素は刺身のツマでしかないのだから、 統合されるべき重要性は薄く、このクライマックスこそふさわしいともいえ、残念ながら私が期待した物語とは違っていた、 という他ないのですが。
「俺と一緒に撃て! 撃てぇ! ウルトラマンオーブ!!」
ビートル隊の一斉攻撃で生じたオロチの隙を突き、畳みかけるオブジャグ。 オロチに噛みつかれたジャグラーは身を挺してその動きを止め、オーブへとトドメをうながす。
なんだかんだ、多分ここでジャグラーがガイを、「ウルトラマンオーブ」と認めたのだろうな、というのは格好良かったです。 だけに、『ウルトラマンオーブ』という物語に実った「ガイとジャグラー」以外の果実も収穫して欲しかった、 それを収穫できるポテンシャルはあったのでは、と思うわけなのです。
「――諸先輩がた、光の力、お借りします!」
オーブは8人の先輩の力を結集、最終回にして自身の光線技も放ち、ウルトラ上下関係スペシャルにより遂にマガタノオロチを撃破。 後には瓦礫の山と、大地に突き刺さった日本刀が残り、オーブは夕焼けの太陽へ向かって飛んでいくのであった――。
そして……『ウルトラセブン』なカットで向かい合うガイとナオミ。
「あたし……気がついてた。ガイさんが、星から来た人だって。でも……怖くって言い出せなかった。それを言ったら……ガイさんが、 居いなくなっちゃいそうで」
既にこの時点で、ガイの肩に荷物がかかっているのがポイントです!
「…………行ってしまうの?」
「ああ。海の向こうでも、大変な事が起きている」
やはり、寝泊まりできそうな古城をチェックしていたのか。
「俺の旅はまだ終わらない」
「……あたしも連れてって!」
「え? ……ふふ、馬鹿言うなよ。俺は銀河の流れ星だぜ」
思い切った言葉を口にしたナオミに対し、あくまでも、ポーズで対応するウルトラマン残念。
ガイさんはさー、これを優しさだと思っているのですけど、貴男、 それがジャグラーをあそこまで追い詰めた事を1ミリも反省していないな。
「ふふ、冗談に決まってるでしょ!」
「…………じゃ、達者でな」
強がるナオミに対し、最後まで、格好いい俺ムーヴを貫く残念風来坊は、その望みに答えていつのも曲を吹き鳴らしながら夕陽の彼方へと去って行く……。
勿論、ジャグラーはそれを見送って普通に生きていた。
というわけで見事にフられたキャップですが、お嬢さん渡り鳥には惚れるなよ、は約束事として、最終回、 アップのカットのほとんどが口半開きで、ただでさえ高い残念ヒロイン度がますます高まってしまい、一応ヒロイン枠なのだから、 せめてもう少し可愛く撮ってあげられなかったのか。そしてどうしてラスト2話、白ワンピースだったのか。 総じてファッションとキャラクター性の統一感が薄くはあったのですが、ゼットン娘がガイさんにウケが良かったので、 敵愾心を燃やしてさりげなくアピールしていたの?!
ガイが旅立った後に、一足違いでやってくる、ジェッタ、シン、渋川。
「キャップ! やったよ! SSPのサイトが、世界中で、2億、4千万アクセスだって!」
だからこう、その2億4千万の使い方が、激しく違うと思うのですが。
「ガイさんはどこです?」
「……もう……行っちゃった」
「そんな……酷いよ、さよならも言わずに」
「おーい! クレナイ・ガーイ! ……あばよ」
「でも……きっとまた会える。だって、地球は円いんだもの」
キャップは順調に、ダメンズを待つ女として、こじらせつつあった。
かくして翼を癒やした渡り鳥は、果てなき旅へと羽ばたいていく――。
今日は東か明日は西か、赤い夕陽を背に受けて、俺は銀河の流れ星
しょせんおいらは風来坊、悪い男にゃ惚れるなよ
闇を抱きしめ光を見つけ、それが愛さと呟いて
耳を澄ませば星の歌、心で感じる君の声
紅に燃える太陽は沈まない、世界中が君を待っている!
エンディングは、曲はOPなものの、映像はいつも通りの今回ダイジェスト。後日談的な新規映像を入れるよりも、 ガイさんが去って行くカットで本編を締める、という形が今作らしくて良かったと思います。
ところで、本編内容がOPに繋がらなかった事に不満を述べるのならば、 もう一つの可能性について検討しないのはフェアではないと思うので触れますが、
ぶつかりあいながら 築いてきた 絆を抱きしめて ……EDがガイとジャグラーの事を唄っていると考えると、ピッタリ収まりますね!!
取り戻せ光 共に立ち上がれ
・
回り道しながら 紡いできた 希望を握りしめ
取り戻せ光 共に立ち上がれ
今誰も知らない 無限の力呼び覚ませ
まだ見ぬ笑顔を 追いかけて
まあそれならそれで、最終回エンディングになぜEDテーマの方を流さなかったのか、という話になりますし、その上であくまでも、 私が見たかったのは
世界中が君を待っている 闇夜を照らせ光の戦士よ
だったわけなのですが。
まあ最後に、ガイの言葉で“海の向こう”が強調されたので、「世界中が君を信じてる」に達するのはまだこれから、 というニュアンスもあるのかもですが……。
TV放映途中から、過去編や劇場版の企画が並行していたようなので、 それらがTV版の着地に影響を与えた部分も少なからずあるのかと思いますが、一言にまとめると、 私は「人類の光」を見たかったのだけど、作品は「ジャグラーの光」を見せる事を選び、物語の集約点としては好みと違ってしまった、 そんな最終回でした。
本放送からはだいぶ遅れながらであるものの、それなりに楽しく見ていたのでその点は残念でしたが、 長らくご無沙汰していたウルトラシリーズを完走するだけの魅力は持った作品でしたし、 今後また新たなウルトラシリーズが放送される事があれば、見てみたいと思います。
好きなエピソードは、第9話「ニセモノのブルース」と、第18話「ハードボイルド・リバー」。
好きなオーブのフォームは、サンダーブレスター。
究極的には、この3点セットに触れられただけでも、見て良かった作品でした。
光と闇の力、お借りします!
(2017年6月4日)
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