■『ウルトラマンオーブ』感想まとめ3■


“取り戻せ光 共に立ち上がれ
今誰も知らない 無限の力呼び覚ませ
まだ見ぬ明日を 追いかけて”


 ブログ「ものかきの繰り言」の方に連載していた『ウルトラマンオーブ』 感想の、まとめ3(14話〜19話)です。文体の統一や、誤字脱字の修正など、若干の改稿をしています。

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〔まとめ1〕 ・ 〔まとめ2〕 ・ 〔まとめ4〕  ・ 〔総括&構成分析〕


◆第14話「暴走する正義」◆ (監督:アベユーイチ 脚本:林壮太郎)
 OP、歌詞が2番に。合わせて、一部映像がマイナーチェンジで4フォームが勢揃い。
 そして風来坊は、焼きそばに大興奮していた。
 先日はひたすらタコ焼きをたいらげていましたが、まあ、屋台と親和性が高そうですよねガイさん(笑) 後半戦も、積極的に、 残念だ!
 ビートル隊にジェットビートル用のバネを納品しているコフネ製作所で作業を手伝っていたシンに呼ばれ、 納品完了の打ち上げに参加していたSSPの面々だが、そこに突如、空から巨大な竜を思わせるロボットが落ちてくる。 眠ったように動かないロボットだったが、不思議な音を出したりキャップをスキャンしたりという反応を見せ、 シンと製作所の面々はギャラクトロンと名付けたロボットの調査を始める事に。
 ビートル隊とコネクションがあるのに連絡しないの? ……と思ったら後から渋川が一般隊員(緑の作業服)を引き連れて現れ、 本編でほぼ初めて、明確に「ビートル隊の隊員」の姿が描かれましたが、後半戦は少しずつ、 ビートル隊が世界に介入してくる事になるのか。
 「別次元の文明が造った物かもな」
 全身が未知の材質で、地球上では開発不能なバネを内蔵しているなど、 地球産とは思えないギャラクトロンはソナーを放射して地球環境を調査している様子を見せ、投光器の光を投げかけたギャラクトロンを、 憧れの瞳で見上げるシン。
 「いつかきっと、人の役に立つ究極のロボットを造るんだ」……小学生時代からシンを知る小舟社長がその過去を語り、 馬場先輩回のジェッタと対応する形で、シンを掘り下げ。SSPのメンバーは3人ともに、 子供時代に受けた影響や持った夢を実現に近付ける為にSSPとして活動している、という位置づけに。
 スキャンされた際にキャップが感じたというギャラクトロンの平和への意志を信じるシンは未知の巨大ロボットを好意的に見るが、 翌朝、ビートル隊が設置したアンカーロープを引きちぎって立ち上がったギャラクトロンは、 そのキャップを車ごとコア部分に取り込んでしまう!
 耳にケーブル突っ込まれて残念ヒロインの道を邁進し続けるキャップ、「居るべきじゃない所で居合わせる。 不注意の固まりみたいな女」の本領発揮(笑)
 ちなみにビートル隊は、ローブかけるだけかけたら渋川残して全員撤収してしまったらしく全く見当たらないのですが、 忙しくて別の仕事が山積みなのか、渋川の権限が非常に強いのか、ビートル隊では民間企業との癒着による汚職が横行しているのか、 どれなのか悩ましいところです。
 査問、査問ですよ渋川さーん。
 「この世界の解析は完了した。各地で起きている紛争、差別、残虐さを理解した。この世界の為に、 争い全てを停止させる。別の世界でもそうしてきたように、全ての争いを止める。すなわち、この世界をリセットする。それが我が使命、 我が正義」
 話を聞かずに極論に走る「俺が正義だ!!」精神の持ち主だったギャラクトロンは、 キャップの声帯を通して一方的な正義執行を宣言するとジャスティスビームで周辺を薙ぎ払い、半壊するコフネ製作所。
 汚職は絶対に許さない!
 ギャラクトロン・フォー・ジャスティス!
 「別次元の連中、こいつに手を焼いて、こっちの世界に捨てたって事だぜ」
 「次元を越えた不法投棄って事?」
 むしろなんだか、滅ぼしてから移動してきた感じがありますが。
 ギャラクトロンは市街地へと向かい、恐るべき脅威とも思わず一斉にスマホを向ける市民の図……が入るのですが、この世界、 先日マガオロチが大暴れして市街地に大被害をもたらしたばかりの筈なので、 巨大ロボにリアリティを感じられない市民達の姿を皮肉に描くリアリティの筈が、 むしろ『オーブ』世界としてのリアリティをチープな形で損ねてしまった気がします。
 ……それとも実は、あれから1年ぐらい経っているのでしょうか?(^^;
 前回、物凄く不自然な時期に大掃除始めたのが気になってはいたのですが、もしかして、 第12話(晩夏)→第13話(年末)→第14話(翌年初秋)ぐらいの時間が経過している?!
 「おまえは答を急ぎすぎなんだよ!」
 変身したオーブはなんとかギャラクトロンを市街地からは引き離すものの、スペリウム光線は無効化され、 すっかりただのバールのようなものと化したオーブスラッガーランスは弾き返され、先輩達の退社時間も迫り、大ピンチ。
 「僕たちは、何か間違えたのでしょうか」
 本日の教訓:空から降ってきたスーパーロボットに勝手な夢を抱いてはいけない。
 「立つんだ。俺達は、渋川さんに頼み込んで、解析をさせてもらった責任がある。何が出来るかわからねぇが、 度が過ぎた正義を放っておけねぇだろ!」
 失意のシンを立ち上がらせる社長だったが、哀れオーブはジャスティスブレードにぐっさり貫かれ、ネガポジ反転した所で、 つづく(3話ぶり2回目の完敗)。
 次回再び、レッドファイトの予感。
 今回、戦闘任務を持つビートル隊との提携について小舟社長が、
 「俺は、命を救う為に、技術を提供したんだ。戦う為だけの用途だったら、ここが闇に染まっちまうってもんだろ?」
 と語るのですが、果たしてガイは、光と闇の融合した、紅い紅い力を使いこなす事が出来るのか?!
 「ネバー・セイ・ネバー、出来ないなんて言わないで」
 今、キャップのヒロイン力が全次元に問われる!

◆第15話「ネバー・セイ・ネバー」◆ (監督:アベユーイチ 脚本:小林弘利)
 「2種類の人間が居るんだよ、シンくん。他の連中が疑っているものを信じる奴と、他の連中が信じてるものを疑う奴。 発明家はその両方でなくちゃいけねぇ。だから、無理にでも顔を上げて、前を見るんだよシンくん!」
 車で移動しながら小舟社長がシンを励まし、それに応えて顔を上げると丁度トンネルを抜けるところ、というのは良い演出。
 だが――トンネルを抜けた一行が目にしたのは、ジャスティスブレードにぐさっと刺された上に先輩達もタイムカード押して退社し、 ぽいっと投げ捨てられるオーブの姿であった。
 オーブを、わざわざトドメを刺すまでもない雑魚、この星の生き物でない奴はすみっこで体育座りしていろ扱いしたギャラクトロンは、 地球上の食物連鎖という生態系システム自体が宇宙レベルにおいては異常であり、 故に人類文明のみならず星のエネルギーを蝕む地球の全生命の完全抹殺を宣言。
 「何勝手な事言ってんだよ?! おまえだって、キャップのこと利用してるじゃんか! 平和が望みなら、 他の星の女の子を拉致ったりするなよぉ!」
 ジェッタの正論に、ギャラクトロン、まさかの長考(笑)
 正直な所、前編の時点ではギャラクトロンにあまりロボっぽさ……というか、今作における怪獣との差異を感じられなかったので、 ここはロボットらしい反応で良かったです。
 破滅への指し手が長考に入っている間に、昨夜集めたデータを元に打てる対策を必死に考えるシンと社長。一方、 ガイはベリアルさんカードを手に取り苦悩していた。
 「確かに俺には……あんたは制御できない。くっ……」
 そうこうしている間に無情にも長考は終了し、キャップをそのコアに取り込んだまま、 ギャラクトロンは地形が変わる威力のジャスティスダイナミックバスターにより、見える限りの地平を吹き飛ばす!
 「やるしかねぇ!!」
 無惨な破壊の光景を目にしたガイは、覚悟を決めてベリアルカードに手を伸ばす。
 「ベリアルさん! ゾフィーさん!」
 ……基本的にその、見てない所では「あんた」呼ばわりなのに、力を借りる時だけ「さん付け」という態度が良くないと思うんですよ。
 少年マンガ的時空に置き換えると、超強い不良の先輩に「いつかあんたを越えてやる!」とか突っかかっているけど、 先輩が卑怯な罠にはまって一見ピンチになると、思わず「○○さん!」って応援してしまう鼻っ柱の強い一年坊主、 みたいな位置づけと言えるかもしれませんが!(例えが長い)
 「闇と光の力、お借りします」
 掛け声も入り、今回は理性を保ったまま発動したかに見えたサンダーブレスターだったが……なんと、 ギャラクトロンに向けて攻撃を仕掛けていたジェットビートルを、レッドファイトの邪魔だとばかりにはたき落として、 撃墜。
 そして目に入る物全てに牙を剥く圧倒的暴力は、レッドパンチの一撃でジャスティスバリアーを粉砕し、 ギャラクトロンを地へと叩きつける!
 地球全土を壊滅させかねない史上最大の敵を相手に最強の力で立ち向かうヒーロー、という構図なのですが、 BGM無しで勇壮さも爽快感も強調されず、オーブ雷の悪役レスラーのような笑い声だけが響き渡る、 というヒーローの大逆転劇とは真逆の雰囲気で展開。
 『オーブ』世界におけるビートル隊の存在感が薄いので、ジェットビートル撃墜の衝撃というのは個人的にはあまり無いのですが、 サンダーブレスターをヒーローとして描かない、という演出はその意味が表せていて良かったです。
 オーブ雷はギャラクトロンの後頭部から尻尾を引き抜き、その拍子に耳からケーブルが抜けて正気を取り戻すキャップ。 だがオーブ雷は内部のキャップの事などまるで気にせずに暴力の化身として思うままに荒れ狂い、 哀しいほど低いキャップのヒロイン力が全次元に曝されてしまう(涙)
 ……というかこれ、ガイさんの「この女面倒くさい」という闇の本音が増幅されているのでは。
 マガオロチ戦では、敵が生物だったので頭部(脳)への執拗な打撃でしたが、今回は獲物がメカとみるや、 部位破壊からコアへの集中攻撃に徹するサンダーブレスターは、まさにレッドファイトの申し子。
 前回あれだけ無敵を誇ったギャラクトロンは、手も足も出ないまま流血を思わせるオイルまみれの無惨な姿になっていき、 内部で悲鳴をあげ続けるキャップ、無力に打ちひしがれる地球人達……。
 「ジェッタくん……オーブはもうすぐ消えてくれます」
 通常ならピンチの象徴であるカラータイマーの赤い点滅が、キャップを巻き込んだ残虐ファイトの終焉になる、と逆転し、 ここでもヒーローがヒーローではなくなった姿の表現が、印象的(カラータイマーは今作としてしっかり意味づけしてきていますし)。
 ギャラクトロンに馬乗りになったオーブ雷は、とうとう敵の左腕を引きちぎると、 そのままジャスティスブレード部分をコアに突き刺そうと振り上げ……
 「キャップが本当に死んじゃう……やめろぉぉぉぉ!!」
 ジェッタの叫びに動きを止める。
 え。
 囚われのキャップを助け出す事は出来るのか、と散々煽っていたのに、何故か、ジェッタのヒロイン力が、急・上・昇。
 攻撃の手が止まった所にジャスティスビームで反撃を受けたオーブ雷は、怒りのレッドビームでギャラクトロンを完全破壊。 その衝撃波はギャラクトロンを木っ端微塵にするだけでは飽き足らず周囲に破壊の暴風を撒き散らし、 コアから放り出されるもキャップは意識不明の重体で病院へ。
 変身の解けたガイは再び自らの手で作り出してしまった無惨な焼け野原の光景に愕然と佇み、元カノの幻影に苛まれる……。
 「科学で平和は作れない……作れるのは暴走する怪物だけなんです。だから、リセットするしかないのかもしれません。 命を奪い合う生態系は、確かに間違いなのかも」
 自家製ブラックホールにどんどん沈み込んでいくシンに、食物連鎖の生態系は、争い合っているのではなく、 支え合っているのだと語り、心の大切さを諭す小舟社長。
 「決して争ってるんじゃねぇよ。この星は……バラバラに生きる道じゃなく、協力し合って、一つのでっかい命として生きる道を選んだんだ」
 「星がまるごと、一つの命……」
 「だからよシンくん……頭じゃなくハートで物事を見ろ。あのロボットには見えなかった世界を、見据え続けるんだ。な?」
 最前、オーブ雷にジェッタの声が届いたのはジェッタがハートで訴えたから……という事のようですが、ではシンが、 よくあるコンピューターの様な感情の薄い天才系キャラかといえば、 前回だけ見ても未知のスーパーロボットにキラキラした視線を送るなど決してそういうわけでもないので、 どうも描きたいテーマの為に割を食った感じに見えてしまいます(^^;
 天才系キャラのフィーチャー回を「こんな事もあろうかと」という活躍ではなく、精神的どん底から再起へ、 と使ってきたのは面白い構成ではありますが、ギャラクトロンの活動はシンの肩入れのあるなしが特に関係あったわけでもない為に、 話の流れが綺麗に連結していないのは、物足りない部分。
 まあ、サンダーブレスター発動に繋げる関係でギャラクトロンによる被害規模が甚大になる為、 シンに責任が生じる形で描けなかったのでしょうが。今回を受けて今後のシンを描き分けできるのか、というのはちょっと期待したい点。
 キャップが意識を取り戻す事を皆が祈る中、高速移動で病室へ駆けつけるガイ。
 「俺は…………オーブを許せない」
 ヒーロー自らによる、不甲斐ない己自身の否定は、なかなか強烈な台詞。奇跡的にキャップは無事でした、に済ませない展開で、 かなりきつめのボールを投げ込んできました。
 「自分の闇ってのはな、力尽くで消そうとしちゃいけねぇんだ。逆に抱きしめて、電球みたいに自分自身が光る。そうすりゃあ、 ぐるっと360度……どこから見ても、闇は生まれねぇ」
 オーブも科学も、強い力には暴走の危険が表裏一体である事について小舟社長が語り…… 今回だけで都合3回目の小舟社長の金言の時間で、さすがにこれはやり過ぎ。
 前編におけるビートル隊にバネを提供した理由の話と合わせると、前後編で社長の教えタイムが4回、 シンの過去についてのシーンを加えると、語りタイムが合計5回。 いくら“若者に道を示す良き大人”ポジションとして配置したゲストにしても、これはあまりに偏り過ぎ、便利に使い過ぎで、 いっそメタ的な存在に近づいてしまってキャラクターとしての厚みまで減じてしまう事に。
 露骨すぎるここからは社長のターンなど、作劇も楽な方向に走ってしまって、全体の展開は面白かっただけに、 道を示す言葉の入れ方に、もう一工夫が欲しかった部分です。
 ガイに手を握られていたナオミが意識を取り戻し、ここで特に、光の戦士の奇跡の力で解決、としなかったのは良かった部分。
 「俺は消える。……また逃げたんだと、思ってくれてもいい。今の俺は……あんたの側にはいられない」
 第5話でキャップから、「風来坊とか逃げるの得意で責任取らない人なんでしょ?」という扱いを受けた件、 やっぱり気にしていたのか。
 (闇を抱きしめる……そんな強さを、俺は見つけられるのか)
 病院を去ったガイは焼け野原と化した森でベリアルカードを拾い、再びホルダーに収めると、いずこかへ姿を消す……で、つづく。
 正義と正義が衝突する話かと思いきや、正義を純粋な暴力が完全破壊し、 ギャラクトロンを踏み台にして迷える戦士ガイの彷徨に繋げるという、ひねりを加えた展開。基本的にガイさん、 思想的背景(究極的にはオーブとしての人格)が見えない人なので、理屈を振りかざしてくる敵とは相性が悪いのですが、 まず黙らせて、それから悩むという事になりました。
 オーブ雷に撃墜されたビートルの乗員は生存が報告され、世界を滅ぼす科学もあれば、人の命を救う科学もある、 というテーマも合わせて描かれるのですが、これまでずっと物語のフレームの外にあったビートル隊をフレームの中に入れてまで描く要素だったのかというと、 現時点ではやや首をひねります。
 例えば今回、ジェットビートルは物語の中に明確に入ってきたものの、そのパイロットは“顔がない”ままであり、 主観映像によるサンダーブレスター襲撃!のインパクトを優先したのかもしれませんが、舞台への上げ方を中途半端に感じてしまいました。
 前回感じたように、後半戦少しずつ、SSP(オーブ)とビートル隊が同じ視点で物語の舞台に立つようになっていく、 という構成なのかもしれませんが、今回打たれた諸々の布石と共に綺麗に収束してくれるのを期待したいです。
 ……なんとなく今作、そういう造りでは無さそうな雰囲気はあるのですが、個人的な好みの願望として。
 破壊に破壊を重ね、勝利は収めるもガイに試練を与える、という展開そのものは面白かったのですが、今作の短所である、 物語全体を貫く芯の弱さ、というのが前後編で色濃く出てしまった印象。 複数の脚本家を入れた上でシリーズ構成の二人が全体を整える事で、 バラエティ性と連続ストーリーのバランスを取ろうとしているようには見えるのですが、マガオロチ前後編のキャップ母のように、 「そのエピソードのテーマ」に引きずられすぎて「物語との連動性」がしばしば損なわれているように感じます。
 それは《ウルトラマン》シリーズらしさ、なのかもしれませんが、今作、『ウルトラマンオーブ』としてこれを描く!  というのがどうも「ガイとジャグラーの関係」頼りになってしまって、 例えば今回のギャラクトロンが示した問題に対しても『オーブ』としての解答というよりも、 物語としての積み重ねを持たない小舟社長の持論しか出てこない、というのは気になってしまう部分。
 勿論、その答は視聴者個々に委ねる、というのは一つの手法ですが、 今作における主観的存在といえるSSPがSSPなりにその問題に向き合う姿、というのがもう少し必要なように思え、 その部分を物語として有耶無耶にしてしまう為に、全体を貫く作品の芯、というのがぼやけているように感じます。
 個人的な好みとしては、その芯がもう少し強く、見えてきてほしいな、と。
 次回、傷心のガイの心の隙間に忍び込もうと迫るジャグラス・ジャグラー! 対する元カノ!  虎視眈々とヒロイン力を上昇させていくジェッタ! この果てしないレッドファイトの勝者は誰だ?!

◆第16話「忘れられない場所」◆ (監督:市野龍一 脚本:三浦有為子)
 キャップの見舞いに訪れたシンとジェッタは、もしかしたら過去にもウルトラマンと怪獣の戦いがあったのかもしれない……と、 1908年に発生し、人類史上の大きなミステリーとして今も原因不明の大爆発、ルサールカ大爆発について言及。
 以前に、かつてのオーブとゼットンの戦いが、この世界におけるツングースカ大爆発の原因なのでは? と推測しましたが、 名前は違うものの明らかになぞらえた出来事が登場。そして、ルサールカの地はナオミのひいひいお祖母ちゃんの故郷であり、 曾々祖母は生まれ育った地から日本に渡ってきたのだった……と血の因縁が語られ、これまで匂わされてきた幾つかの要素が形に。
 一方、世間ではウルトラマンオーブに対する批難が巻き起こり、事件の被害者であるナオミは知らぬ間に、渦中の人となっていた。
 vsギャラクトロンでの大暴れを踏まえて、オーブを巡る社会情勢の変化が盛り込まれるのですが、ここまで15話、 “オーブに対する社会の反応”というのは基本オミットされていた要素なので、急に持ち出した感は否めません。
 またそれを持ち出すと、マガオロチやギャラクトロンはもっと洒落にならない被害を引き起こしているわけで、 怪獣の破壊活動による社会への影響は描かれないけれど、ウルトラマンがビートルを撃墜した社会への影響は描かれる、 というのはやや全体としてバランスを欠いているように思えます。お約束として怪獣被害の影響が出ていない(事になっている) のではなく、出ているけど描かれていないだけ、と捉えた上でなお。
 これをやるならせめて、今作におけるウルトラマンの立ち位置の定義付けを明確にしておかなくてはいけなかったと思うのですが、 実は今作、SSP主観を重視するあまり、世間のウルトラマンへの反応、がほとんど描かれていません。 予知夢回でゲストが「救世主」扱いしていたのは劇中の積み重ねがなくて唐突でしたし(そしてその後も特に補強されない)、 馬場先輩回で子供達が応援していたのは演出上、今作としての定義付けになりえませんし。
 そして前回の小舟社長も、あれだけ語っているのにウルトラマンについてはほぼ言及していないわけで、 言ってみれば物語の中でずっと蜃気楼のような存在だったウルトラマンオーブが急に「世間の悪役」になる事に、違和感。
 この先、物語として集約されるのなら良いのですが、 従来シリーズの多くにおいては防衛隊ポジションが担保してくれていたこの“ウルトラマンの立ち位置の保証”を、 曖昧なまま進めてきた今作にとって、相性の悪い要素を持ち込んでしまったように思えます。
 それこそ逆に、SSP主観というのが今作の特性にして独自の強みなわけで、もっと別のアプローチがあったのではないかなと。 最終的に上手くまとまって、おお成る程、と思うかもしれませんが、現時点ではこの要素の持ち込みは少々不満。
 「ビートル隊内でも、彼への批判は高まってる。次に、ウルトラマンオーブが、我々の前に姿を現した時、ビートル隊は、 彼を攻撃する事になるかもしれない」
 だがナオミは、ギャラクトロンのコアに囚われていた自分同様、 オーブも何か抗しがたい力に振り回されていたのではないか……とオーブへの恨みや憎しみを否定。ナオミも隊員も無事だったのだし、 これまでオーブに助けられてきた事を忘れてはいけない、とナオミ母もそれを支持する。
 「あのウルトラマン、日頃の行いがいいんじゃなーい?」
 ……いや、良くはないような。
 「でもね、ガイくんの事は、すっぱり忘れなさい」
 「え?」
 「こーんな大事な時に頼りにならない男なんて絶対駄目!」
 それは是非、本人の目の前で言ってあげて下さい、お母様。
 「若い娘はねー、みんなガイくんみたいな、つかみ所のない男に惚れるもの。だけど、退屈でも、 地に足ついた男と一緒になった方が幸せなの」
 キャップの周り、地に足の付いた男いませんね……。
 騒がしい面々を追い出した病室で、ナオミは曾々祖母の幸運のお守りだったというマトリョーシカを見つめながら、 かつてのガイとのやり取りを思い出す。
 「ガイさん……あなたは、だぁれ? ……どこに居るの?」
 その頃、焼きそば好きの風来坊は日本から遠く離れたルサールカの地に居た。
 「ルサールカ……あれから100年か」
 ガイは、森に倒れていた自分を、ナターシャが拾ってくれた日からの出来事を思い出す……。




(しばらく、いちゃいちゃ回想をお楽しみ下さい)




 だがゼットンの登場によって安らぎの日々は終わりを告げ、ガイはオーブに変身。オーブは辛くもゼットンを倒すが、 戦いに巻き込んだナターシャを喪ってしまう(これはつまり、「居るべきじゃない所で居合わせる。不注意の固まりみたいな女」 の血統なのか)。そしてその死闘の中で放出されたエネルギーこそが、ルサールカ大爆発の原因であった……と、第1話冒頭と接続。
 ……これ見るとガイさん、ベリアル先輩と関係なく、昔から力のコントールが下手な人だったのでは。
 ナターシャに預けていたハーモニカだけを、草木の根こそぎ吹き飛んだ荒野で見つけ見つけたガイは失意の内に100年あまりを過ごし――現在。
 「やはりここに居たか。ここに来ても失ったものは戻らない。おまえは昔の自分には決して戻れないぞ」
 炎上したのでTw○tter辞めます宣言してアカウント削除した筈のジャグラス・ジャグラー、別アカで復活し、さっそく煽りまくり。
 「ベリアルが新しいお前を引き出してくれたじゃないか。あれがお前の本当の姿だ」
 「違う……」
 「恥じる事はない。力を持った者は、己の力を試す為に、他のものを破壊し、支配したくなるのさ。ただし、 おまえの場合大事なものほど壊したくなるようだな。――昔も、今も」
 おまえもうブロック! ほんとブロック! とガイはジャグラーに殴りかかってしばらく光弾の撃ち合いとなるが、 ガイを叩き伏せたジャグラーが先のレッドファイトで切断されたマガオロチの尻尾を召喚すると、 それを触媒にゼットンとパンドンを組み合わせ、自らユナイト。
 「超合体――ゼッパンドン!」
 マガオロチの体型をベースに、『ウルトラマン』『ウルトラセブン』最終話の怪獣が合成されているという豪華な合体魔王獣ゼッパンドンは、 黒・赤・黄の配色に、歪に膨れあがった背部という異形のバイオモンスター感が非常に格好良く、ここまでの怪獣の中でもかなり好き。
 ガイは、オーブ光に変身して立ち向かい、八つ裂き光輪の用い方を色々と工夫している今作ですが、遂に、食べられる。
 「ひゃっ! 光線技はゼッパンドンには通用しない」
 ならば直接打撃だ、と最近すっかり役に立たない棒きれを振り回して至近距離で必殺技を叩き込むオーブ嵐だったが、 2mの棒はとうとう、ゼッパンドンの体内に吸収されてしまう。
 話数的に玩具販促が忙しい所はあるのでしょうが、集中活躍→ひのきの棒、と来て、オーブスラッガーランス、遂にお役御免?(^^;
 「闇の力を頼れ。このまま滅びるか、闇に堕ちるか、お前にはそれしかないんだ!」
 ジャグラーの連続粘着リプを受けるもベリアル先輩への土下座を躊躇ったガイは、オーブ炎へと変身。 最後の力でストリウムダイナマイトを放つが見るからに火炎耐性を持つゼッパンドンに通用するわけもなく、 北の地でまたも完封負け(2話ぶり3度目)。
 「どこだ、ガイ……どこだぁぁぁぁぁ?!」
 先輩達が退社し、ダイナマイトの爆炎に紛れて森を彷徨っていたガイはしばし気を失い、 まるで初めて会った時のように手を差し伸べてきたナターシャから、真っ白なカードを手渡される。
 「これは……」
 「あなた自身よ。ありのままのあなた」
 気がつけばそこに居たのは、ナターシャではなく、ナオミ。
 「戻ってきて、私の元へ。私は、ありのままのあなたを受け入れる」

 ……クレナイ・ガイ、とうとう、ろくでなしの駄目男が女の子に言われたい台詞ベスト1を妄想に言わせてしまう。

 ……凄い、凄いよクレナイ・ガイ、後半戦に入っても全く衰えを見せない残念ぶりで、物凄い逸材ですよ!!
 回想シーンのナターシャとの出会いでは、傷つき疲れ果てた姿で座り込んでいたガイですが、もしかして、 光の国で就職に失敗した上にそれが原因で彼女を別の男に取られ、失恋した心の隙間につけ込まれてデート商法に引っかかって大量のリトグラフを購入してしまい、 カードの負債で自己破産の末に組織に負われて着の身着のまま宇宙を放浪した末に地球に辿り着いたとかなのか。
 朦朧とする意識の中、遠ざかり消えていくナターシャ/ナオミの姿はやはり幻影であり、しかし目を覚ましたガイの手の中には、 何も描かれていない真っ白なカードが握られているのであった……。
 「俺には何も見えない。……己の心も、守るべき未来も……」
 一方、ガイを見失ったジャグラーは白衣コスプレに身を包み、ナオミの病室へと迫っていた。 真っ暗な病院の廊下を火花を上げて引きずられる日本刀、というホラーな描写で、つづく。
 ……これはあれか、次回、マトリョーシカが、「普段手は隠しているだけだ!」とナオミを守るのか(おぃ)  忘れられない場所で傷つき倒れ瞳を伏せるガイは、果たして白紙の未来の中に如何なる自分の姿を見るのか。 次回――自分で「数奇な運命」とか言う辺りが残念だとそろそろ気付いてクレナイ・ガイ!!

◆第17話「復活の聖剣」◆ (監督:市野龍一 脚本:小林雄次)
 ナオミの病室に入り込む、Dr.ジャグラー。
 「夢野さーん。診察ですよ。血圧測りますね」
 凄く、変態です。
 「あなたがそう言えば人類は一斉にオーブを敵視する。ヤツは一巻の終わりだ」
 ジャグラーはナオミを精神的に揺さぶり、この機会にオーブを社会的に抹殺しようという、なんだか上原大先生的な路線に(笑)
 それでもオーブを信じるナオミに迫るジャグラーの刃はマトリョーシカを一刀両断するが、間一髪、ナオミを助けるガイ。
 「これ以上大切なものを傷つけたくないのに……俺と居るとみんな不幸になる……」
 格好良く助けに来たと思ったら、一つだけ残ったマトリョーシカを手にいきなり浸る風来坊だが、ガイを信じると告げるナオミは、 その一つをガイへと託す。
 「どうせ中身は空っぽなんだろ」
 そうさ俺は中身がない上に器の小さいこのちっぽけなマトリョーシカがお似合いの男さ!  と実に面倒くさい方向にやさぐれるガイ。そんな事だから、光の国の就職試験に落ちるんですよ!!(風評被害)
 「違うよ」
 「え?」
 「最後の一つには、希望が残されてるの」
 その頃、ビートル隊はオーブを敵性宇宙人として、攻撃対象に認定していた。
 「いいか、何かを守るって事は、何かを傷つける覚悟を持つって事なんだよ」
 一徹の言葉を聞いたジェッタは、これまでのオーブの戦いも、何かを守る為に別の何かを傷つけていたという事に気付き、 今作なりに正義の暴力に理由付け。
 「正義にだって、光と闇の面がある」
 そしてサンダーブレスターとは、その危ういバランスの上に成り立つ、正義の抱える負の面が出てしまった姿である、 と普遍的なテーマを巧く繋げてきました。
 一方ガイは、「握った手の中、愛が生まれる」という言葉、ルサールカ出身、ナオミの歌、懐かしいスープ、 光の巨人の夢……などの点と点の繋がりに気付き、最後に残ったマトリョーシカの中に隠されていた、 ガイとナターシャが一緒に写った写真を目にして涙を流す。
 (君はあの爆発に巻き込まれ、死んだんじゃ…………ナオミは、ナターシャの子孫……)
 前半からわかりやすかった伏線が収まる所に収まり、明かされた血統の因縁を知ったガイは過去の呪縛から放たれて立ち上がる。 しかしガイさんやはりというか、メンタルの弱さを隠す為にキャラ作りするタイプだったか……。
 「ありがとう……。ナオミ……頼みがある」
 「なぁに?」
 「今のメロディ、今度オーブが現れたら、歌ってやってくれないか。オーブを救ってやってほしい」
 まるでそれを待っていたかのようにゼッパンドンが出現し、ナオミに宇宙ハーモニカを託すと、戦いへと走るガイ。
 「全力で来いよ。俺に太刀打ちできるのは闇のカード、だけだ」
 「俺はもう闇を恐れない。ナオミのくれた勇気で、闇を抱きしめてみせる!」
 自分の中の破壊衝動から目を逸らさず、それを受け入れながら前へ進む事を覚悟したガイは、 遂に理性を保ったままサンダーブレスターを発動。
 「闇をいだいて、光となる!!」
 オーブ雷は開幕のダッシュチョップから、本日も執拗な頭部への打撃、打撃、打撃!  だがゼッパンドンはこの暴虐の化身と互角の戦いを見せ、レッドファイト流口掴みからレッドフォールへのコンボを阻まれたオーブは、 送電線引き抜き。
 「いいねぇー! その暴れっぷり。惚れ惚れする!」
 なんか段々、ジャグラーはレッドマン先輩のファンに見えてきました(笑)
 オーブ雷は装備した送電線でゼッパンドンの頭を殴りつけると、ひん曲がった送電線の一部を取り払い、 取り回しがいいように手頃な鈍器の形にした上で頭蓋に連続で叩きつけるのが素敵すぎます。
 「ぬるい! おまえの闇は、そんなもんかぁ」
 両者の戦いが熾烈を極める中、オーブへ向けて出撃してしまうジェットビートル。身内への恨みはあるでしょうし、 一応「まずはウルトラマンオーブに攻撃を集中せよ」という台詞はあるのですが、 この局面でゼッパンドン無視のビートル隊はどうなのだろう……。
 オーブ雷の背中にビートル隊の攻撃が突き刺さり、生じた隙に炸裂するゼッパンドンファイヤー。 戦いを見守っていたSSPの面々が足下で巻き込まれ、「全機、退避せよ! 退避だぁ!!」 と何の役にも立たないままビートル隊はそそくさと退却(おぃ)
 だが、激しい爆炎の中で消し飛んだかと思われたオーブはナオミ達をかばいながら健在で、 オーブに守られたナオミ達が見上げるというカットで、サンダーブレスターがヒーローの顔になるのが印象的。 ガイとの約束通りにナオミはあの歌を唄い、苦しむジャグラー、そして、宇宙ハーモニカのメロディを重ね、 かつての自分に決着をつけるガイ。
 「己を信じる勇気。それが力になる。これが本当の俺だ!」
 「覚醒せよ、オーブオリジン」
 ブランクカードに光の力が宿ると、オーブリングが突然具体的に喋りだし、 ゼッパンドンの素体であるマガオロチの尻尾部分から飛び出す聖剣。辻褄はなんともですが、 魔王獣がらみの伝奇要素を拾う形で草薙剣の神話になぞらえられた、光の剣――オーブカリバー――を手にしたオーブは、 遂にかつての力を取り戻す!
 「俺の名はオーブ、ウルトラマンオーブ!」
 いちゃいちゃタイムとトラウマと彷徨と居候とレッドファイトとどん底を乗り越えて、 満を持して復活したオーブ:オリジンですが……うーん…………とりあえず、中で黒タイツのガイさんが剣を振り回している、 という絵がえらく間抜け(^^;
 この辺り、戦隊やライダーに比べて、“ウルトラマンが玩具のギミックを押し出す映像”に私が慣れていない、 というのが影響している部分があるかとは思いますが。
 それからいきなり命令形で喋りだしたリングが凄い違和感なのですが、ずっと無機物だと思っていたけど、 もしかしてリング先輩だったの?!
 肝心のオーブカリバーは、水土風火の文字をベースにした四大属性の紋章デザインと、 風来坊のテーマをアレンジした効果音は格好いいのですが、鍔元と刀身のバランスが悪くて、全体の見た目は微妙。 子供向け玩具デザインとして、あまり刃部分を長くできない都合があるのかなとも思う所ですが……それにしてもどうももったりしたイメージがちらつくな、 と思ったら、えーとアレか……電仮面ソード(『仮面ライダー電王』) を思い出すからか!
 回すし!
 映像的な不満点はともかく、過去を乗り越えたオーブ大逆転のクライマックスは盛り上がったのですが、欲を言えば、 このバトルは主題歌でやって欲しかった所。風来坊のテーマ:バトルアレンジも話の流れには沿っていますし格好いいのですが、
 何度倒れても 立ち上がればいいのさ
 変わらぬ強い意志が 明日への絆になる
 を期待して、やや前のめり気味に待機してしまったもので(^^;
 復活した光の巨人・オーブ:オリジンは、ウル仮面ソードを振るって繰り出す、 俺の必殺技・グランドで無敵のゼッパンドンシールドを砕くと、俺の必殺技パート3と見せかけてストレートど真ん中でフィニッシュ。
 俺死んでほしいって……顔してるよなぁ。
 ゼッパンドンを消し飛ばされ、融合を強制解除されて倒れたジャグラーの目の前では、 地面を転がったジャグラーリングが消滅してしまい、ジャグラーは悲痛な絶叫をあげる……。
 しかしジャグラーは、変身できないガイを刺し殺すわけでもなければ、奪ったカードストックは素直に返すし、 ナオミと逃げている所を念入りに潰しにもいかず、詰めが甘いというよりは、故意に最後の一手を詰めていないのですが、 追い込んで追い込んで追い込んだ末に、地獄の淵から立ち上がったガイに叩きのめされて惨めに這いつくばるのが最高に快感という、 素晴らしい変態に成長したなぁ……。
 サディストと見せかけて真性のマゾヒスト、という業の深い性癖に全宇宙が泣いた。
 (君の繋いだ命は、100年後の未来も生きている。ナターシャ……安心してくれ。これから先の未来も、俺はずっと守り続ける。 ――この星に、命が続く限り)
 未だ出自のよくわからないガイさんですが、とりあえず現在のところ、職業:地球の守護者(自己申告)、という事でいいのか。 私の中ではすっかり、光の国で就職に失敗した人という扱いなのですが、人生の可能性は一つじゃない。
 それにしても、怪獣を無視してオーブに攻撃→役立たずのまま撤退→ジェッタが撮った映像を根拠にオーブへの攻撃命令を解除、 ってビートル隊は組織として大丈夫か。
 そもそもはウルトラマンがビートルを撃墜する、というネタをやりたかったのでしょうが、 ガイの心理的焦点が「ナオミを傷つけた事と重なる過去のトラウマ」の方に向いてしまった上に (撃墜を気にしていないわけではないでしょうが物語として)、ビートル隊から攻撃を受けても特に反応が描かれない、 とにかくオーブの視線がビートル隊に全く向かない為、ビートル隊を出すメリットとデメリットを考えた時に、 今回の使い方なら出さない方が良かったのでは、と思うところ。
 繰り返し書いていますが、今作前半において、“SSPとオーブの物語”の中ではビートル隊は“見えない”存在であったわけで、 それが“見える”ようになった事が、終盤に物語として噛み合えば良いのですが。

◆第18話「ハードボイルド・リバー」◆ (監督:武居正能 脚本:瀬戸大希)
 いつもはこれといって面白くない「前回までの『オーブ』」が渋川一徹名場面集という小技から、「渋川一徹の朝は早い。 俺の長い一日は、一杯のコーヒーから始まるのだ」という一徹のモノローグでスタート。
 しれっと街中で宇宙人追いかけたり、SSPの“見えない”所で日夜ビートル隊が活動しているという描写が入るのですが、 これをやるならやはり、変にオーブの物語の中にビートル隊を持ち込まないで、この渋川回でだけ、 ビートル隊の存在が“見える”という方が全体の構成として面白かったような。
 ……まあ、渋川回が最初から確定していたわけでもないでしょうから、難しい所ではありますが。
 「俺は科学特捜チーム、ビートル隊隊員として、日夜、宇宙人や怪獣の魔の手から、人々の平和を守っている。 ……そんな俺の唯一の弱点――それは、一人娘のテツコだ」
 つい先日ナオミママから、地に足ついていない風来坊への罵詈雑言にかこつけて、 結婚できない男代表みたいなボールを投げつけられていた気がしましたが、一徹に中学生の娘が居る事が発覚。 今回出番が多い事もあり結婚指輪をはめている事に気付いたので録画残してあったエピソードを確認してみたら、 少なくとも馬場先輩回では結婚指輪をはめており、一徹が結婚しているという設定はきちっとあったようで、 先日の病室のシーンは単なる私の読み間違いか(^^;
 年頃の娘との距離感に悩む一徹はSSPに相談を持ちかけ、まあ、中学生女子としては名前が一徹の「徹」から「テツコ」の時点で、 こじれるな、と(笑)
 世話になっている一徹の為、キャサリンを自称するテツコに一徹の立派な姿を見て貰おうと、SSPは一日尾行を提案。
 そこに帰宅したガイ(見た目はハイスペック)に即座に好意を示すキャサリンの姿で、あ、この娘、 駄目な男に引っかかるタイプだとこれ以上ない説得力を一瞬で持たせるというのが、素晴らしい演出(笑)
 しかしガイさん、客も家主も無視して、袋一杯に買ってきた鯛焼きを黙々と食べ始めているのですが、 それは残念とか風来坊とか通り越して、ただの本当に駄目な人だよガイさん! ナオミママに機関銃掃射されても文句は言えないよガイさん!
 キャサリンは、ガイが同行するならOKと尾行に前向きになり、オーブ=渋川説を唱えるジェッタは、その正体を掴むチャンスと大張り切り。
 「キャップー、ガイさんも行くってー!」
 「じゃあ決まりね。サムシング・サーチ・ピープル、しゅつどぉー!」
 (なんかもう、俺正体ばらしちゃおうかな……)みたいな顔になる居候みたいなヤツ。
 かくして翌日、渋川を尾行する5人だが、渋川は街で次々と女性に声をかけたり密着したりを繰り返し、 零下140度へと下がっていく尾行班の視線。キャサリンはとうとう尾行を中断して走り去ってしまうが、そんな少女を気遣うガイ。 ……この後の展開を考えると、キャサリンに気を遣ったのではなく一徹に気を遣ったと思われ、ガイさんは妙に、一徹の事がお気に入り。
 「……子供の頃、あの人は、平和の為に頑張ってる、格好いい人だと思ってた。……ヒーローだって、信じてた。……馬鹿みたい。 なに言ってんだろ、あたし」
 「……太陽は沈んだら見えなくなる。でもね、見えないだけで、地平線の向こうではずっと輝いているんだよ」
 「なに、それ」
 「見えない所で輝いてる光もある。ヒーローなんてのはそんなもんなんだよ」
 「わかんない。言ってる事わかんないよ」
 「いつかわかるさ、キャサリン」
 ……単に、俺的ヒーローの美学を語りたかっただけなのかもしれない。
 ところでこの会話シーン、妙に2人の声が浮いて聞こえるのですが、普段同時録音なのにここだけアフレコだったりしたのか?(普段、 同時録音なのかどうかも知りませんが)
 一徹が廃工場へ向かったという連絡を受けて再びナオミ達と合流するキャサリンだが、そこで一徹が問い詰めていたのは、 キャサリンが夢中の路上アクセサリー販売の青年、タカヒロ。父が自分の件で青年を脅しているのだと思い割って入ったキャサリンだが、 なんとタカヒロの正体は悪の宇宙人・シャプレー星人だった。身につけるだけで痩せると販売していたアクセサリーは人間の生体エネルギーを奪う効果を持ち、 タカヒロを探る一徹が女性達に接触していたのは、そのアクセサリーを回収する為だったのである。
 「この星は、まさに俺の人間牧場さ!」
 シャプレー星人は集めたエネルギーを使って、強化ベムラーを召喚。
 「俺の……俺のたった一人の娘を! 絶対に許さねぇ!」
 「渋川のおっさん! 後は頼んだぜ!」
 陰謀の可能性に気付いていたガイは、シャプレー星人を一徹に任せると、ベムラーと戦う為にオーブに変身。 ガイは割と一徹を信頼している様子なのですが、これまでの長い人生経験から、地球を守る優秀な人材だと認識しているのか。
 実際、SSPからはコメディリリーフ扱いのおじさんは劇中の実績を見るとかなり有能な隊員だと思え、 本来バディで行動するべきところを単独調査していたのは迂闊なものの、ここまでの描写からすると恐らく単独行動権限を持っていると考えられる事からも、 物凄い実績持ちの宇宙人ハンターなのでは。
 「俺の名はオーブ! 闇を照らして、悪を討つ!」
 「オーブ、そっちは頼むぞ」
 戦隊シリーズでたまにロボと人間大の同時戦闘をやると、意図したほど絵的に盛り上がらないパターンが多いですが、 渋川vsシャプレー星人・オーブvsベムラー、の映像を同一フレームに収めるのは最初だけにしたのと、 トラウマを乗り越えて絶好調のオーブvs懐かし怪獣・光線銃しか持っていない人間vsマジックアイテム装備の宇宙人、 という相互の非対称性が、面白い状況設定に。
 そして絶好調オーブが調子に乗っていたら光線を跳ね返されて吹っ飛ばされるカットから、渋川が吹っ飛ばされるカットに繋ぎ、 非対称で始まった戦闘が徐々にシンクロしていくという流れも秀逸。
 オーブには先輩達の退社時間が迫り、渋川もシャプレー星人に追い詰められていくが、その時、 父の勇姿にガイの言葉を思い出したテツコの声援が響き渡る。
 「おとうさーん! がんばれー!!」
 娘の激励に奮起する渋川、そして、同じく立ち上がったオーブもオリジンを覚醒してオーブカリバーを装備。
 渋川とオーブの戦いをシンクロさせる事で、以前にドン・ノストラが口にしたまま未だ大して補完されていない 「オーブは人間との絆で力を得ているんだよ!」という設定を間接的に拾ってきたのは非常に良かったです。 ……この設定というか言及はもう少し補完しておかないと、後で特大の地雷になりそうで凄く不安ですが(^^;
 「銀河の光が我を呼ぶ!」
 「うあぁぁぁぁぁぁ!!」
 オーブはウル仮面ソードで反撃開始、渋川は雄叫びと共に突撃すると目つぶしを浴びせて組み付きに成功。 オーブは強化ベムラーの力の源である角を破壊すると俺の必殺技・フレイムでフィニッシュし、 渋川は危険物の入ったドラム缶を射撃により爆破して、シャプレー星人を大爆殺。
 「あばよ」
 今回なにがハードボイルドだったって、ドラム缶を銃撃する際の笑顔と、大爆発に背中を向けての「あばよ」から漂う、 あーこのおじさんは、これまでも数多の侵略宇宙人をこうやって葬り去ってきたので、 今更これぐらいの事では感情の針がピクリとも動かないのだぁ……というのが、凄くハードボイルドでした。
 地球は狙われている。
 オーブ&渋川のシンクロを丁寧に描いてかなり長い尺の戦闘でしたが、渋川パートをギャグ一切抜きにしたのは良かったです。 最後の「あばよ」は役者の持ちネタですが、ハードボイルドの中にギリギリ収めて踏み外しませんでしたし。
 にしても渋川、シャプレー星人に組み付きながらオーブの動きを気にしていて、「今だ!」と必殺技に合わせて爆殺しているのですが、 オーブの必殺技の余波でも利用するかと思ったら全くそんな事はなく、このぐらいの修羅場は日常茶飯事なので、 割と余裕あったのでは疑惑(笑)
 地球は狙われている。
 一徹からのサムズアップを受け、オーブは帰還。ジェッタの、オーブ=一徹説は脆くも崩れ去ると共に、 渋川の仕事さぼって遊んでいた疑惑も解消されるのであった。
 「オーブって……いったい誰なんだろうなぁ」
 「は? さ、さあな」
 と誤魔化すガイに視線を向けたキャップが苦笑しているようにも見えるのですが、やはりさすがに正体わかっているのかいないのか。
 「信じ合える人が居るって、いいもんだな……」
 父娘の仲も縮まって大団円……から、その夜。辛うじて生きていたシャプレー星人を、 ラフな服装になって妙な耳飾りをつけたジャグラーが斬殺する、という不穏な引きで、つづく。
 SSPに聞こえていないガイの呟きの後に出てきたのがジャグラー、というのはなかなか意味深な感じ。以前に、 ジャグラーの変なポーズでオーブのテンションMAX事件がありましたが、やはりかつては絆パワーを充填しあう仲だったのか?!
 大きな山を越えた後の閑話休題エピソードでしたが、ギャグやパロディ寄りになるかと思ったらしっかりした作りで、 こういう緩めの回に当たりがあるのは、今作の良い所。ガイの語るヒーロー美学が、馬場先輩回を踏まえる内容だったのも良く、 面白かったです。
 次回――なんて無理のある女子高生姿!(失礼)  ところでOPがマイナーチェンジされ、カリバーやオリジンの映像が入るようになったのですが、 最後のフォームとキャスト揃い踏みシーンのオリジンのポーズが謎。……ろくろ回してる?

◆第19話「私の中の鬼」◆ (監督:武居正能 脚本:三浦有為子)
 親友の結婚式の前夜祭に出席するナオミだが、ホテルで働く事に夢を持っていた筈の親友が、結婚を機に仕事を辞めると知り、 思わず突っかかってしまう。級友達の口さがない態度にもその場に居づらくなったナオミは、帰路の成り行きで、 願いを叶えてくれるといわれる想い石に、噂通りに靴を供えてしまう……。
 いくら仕事が好きでも、結婚相手が勤め先の大手会社の社長令息となったら、それは仕事を辞めさせられるというか、 社長の後継者夫人と一緒に働かされる同僚の心境が厳しすぎると思われるのですが、 親友にもそういう葛藤と選択があったであろう事を全く考慮しないキャップが、最初から凄く嫌な感じに(^^;
 その上で、それらの経緯に関して一切相談された形跡のないキャップは本当に「親友」なのだろうか、という疑念が募り、 キャップへの好感度ゲージが高めでないと、色々と厳しいエピソード。
 なお私のキャップへの好感度ゲージは、+でも−でもなくゼロです。
 久々に古文書が登場して、シンの追跡調査により想い石は古代の怨霊を封じた石ではないかとわかり、 夜の街を歩く赤い甲冑に身を包んだ巨大な鬼の姿を見たキャップは、慌てて想い石の元へと向かうが、 そこでは石とキャップの靴が消えていた……。
 「眠っていた怨霊を目覚めさせるとはな」
 標的を変えたのか、通りすがりの嫌がらせか、ナオミの心の闇を煽るジャグラーだが、そこにガイが登場。
 「誰の心にも闇はある。闇があるからこそ、光もある。闇を抱えていない人間に、世界を照らす事はできない」
 トラウマを乗り越えたガイは、自己肯定力を身につけていた!
 「まあいいや。……お前もいずれ、現実に打ちのめされる事になる。地獄からの誘いに身を委ねろ」
 「ガイさん、あたし……」
 「あいつ、珍しくいい事言ってたな。人生には思いも寄らない事が起こる。ナオミが本当に望めば、未来を変えられる。 そういう事じゃないのか?」
 ここで、中途半端な内容のイメージだった第7話「「霧の中の明日」を拾って、 最終盤に向けてこれまでの物語を連結していっているのは良かったです。
 翌日、結婚式場に避難を呼びかけるナオミだが、それを受け入れられる前にホテルへと迫り来る鬼。 ガイはオーブ嵐へと変身してランスも復活するが、所詮ランスなのであっさり回避されてしまい、カリバー発動。
 一方、その戦いを見つめながら、迫り来る鬼の原因は自分だと告白するキャップ。
 「私の心の奥深くにある、小さな嫉みが、あの怨霊を甦らせてしまったの」
 ……この女、罪を告白すると同時に、自己弁護を始めたのですが。
 カリバーを振り回すオーブは鬼の剣技に苦戦し、宇宙的に、
 嫉妬の力 > 光の力
 であると証明されてしまう。
 今回一番どうかと思ったのはここで、登場3話目にしてオーブオリジン実質敗北はどうなのか。 SSPの機転自体は悪くないのですが、オリジンがオリジンだけに、もう少し配慮と工夫が欲しかったです。
 オーブを切り払った鬼はホテルを一刀両断しようと近づくが、それを止めようと屋上に立つキャップ。
 「私なんかのちっぽけな想いに惑わされないで! お願い!」
 この期に及んでさりげなく自己弁護を交えつつ、SSPは、想い石の力で幸せになったカップルの映像と音声を鬼へと伝える事で鬼の持つ和魂の面に呼びかけ、 荒魂を鎮める事に成功。自ら刀を下ろした鬼は、立ち上がったオーブの俺の必殺技・ウォーターにより消滅するのであった。
 親友はナオミに、自分との結婚を反対された御曹司がホテルの経営から外されてしまった事、その為に、 自分も東都ホテルで仕事を続けられなくなった、という真相を語る。
 「でも私たちにはこのホテルがあるもの。全財産を投資した。ゼロからのスタートよ」
 え。
 ここで、結婚式の会場であったホテルは、御曹司の会社のホテルではなく、二人のホテルであった事が判明し、 周囲に何もないロケーションはともかく、見るからにいわゆるグランドホテルなのですが、 御曹司は実家への復讐が望みなのか。
 以前のノウハウとコネクションを活かせる仕事という事だったのかもしれませんが、 実質的に勘当されたとおぼしい実家と同じ業界に全財産を賭けて殴り込むって、戦争の匂いしかしないんですが。
 つい先ほど、荒魂を鎮めたばかりのに、どうしてそんな事に。
 ホテル戦争待った無しの現状への不安、誰かを羨ましいと感じる気持ちを親友も語り、改めて互いを理解しあったナオミは、 友人への祝福を口にする――。
 どんな人間も他者への羨望に囚われる闇を抱えており、そこでただ不幸を嘆くのか、自ら未来を変えていくのか、 今居る環境をどう捉えていくのか、「自分の幸せを決めるのは自分」であるというテーマを、 二面性を持った鬼の存在と繋げたの仕掛けは悪くなかったです。
 ただ、肝心のキャップ個人の「幸せ」観が物語の中から見えて来ない為に、キャップの語りは全体的に宙ぶらりん。 スタッフがどう思っているかは知りませんが、キャップそれほど、“仕事に生きる女”として描写が蓄積されているとは思えませんし、 今回の限りでは“親の反対を押し切って仕事を選んだ友人”に自己投影をしていただけに見え、 SSP側の芯の弱さが物語に厚みを与えきれないのが『オーブ』の惜しい所というか、 広げたい枝葉に対して根の長さと幹の太さが足りていないと感じる部分。
 そして親友の爆弾発言で色々と吹き飛びました。
 次回――帰ってきた惑星侵略連合!
 ラウンドランチャーが火をふくぞ(という予告のあおりが一番面白かった)

→〔その4へ続く〕

(2017年5月31日)

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