■『ウルトラマンオーブ』感想まとめ2■


“世界中が君を待っている
闇夜を照らせ 光の戦士よ”


 ブログ「ものかきの繰り言」の方に連載していた『ウルトラマンオーブ』 感想の、まとめ2(8話〜13話)です。文体の統一や、誤字脱字の修正など、若干の改稿をしています。

戻る

〔まとめ1〕 ・ 〔まとめ3〕 ・ 〔まとめ4〕  ・ 〔総括&構成分析〕


◆第8話「都会の半魚人」◆ (監督:市野龍一 脚本:小林弘利)
 立て続く怪獣の出現は地球環境のバランスが崩れている影響ではないか――と、アンバランスゾーン、 というどこかで聞いたような名称を思いついて盛り上がるSSP。
 一方ガイは、本来なら怪獣も、歩いているだけで攻撃を受けるような場所に出てきたくは無い筈だと呟き、野生の怪獣と人類、 という割と地雷なテーマに踏み込んできましたが、個人的にはかなり不満のあるエピソード。
 餌である魚を求めて陸地まで上がってきた怪獣グビラを、最終的にはオーブが球体に閉じ込めて海へと帰すのですが、 なにぶん相手は近海の魚群を丸ごと平らげてしまうような大食らいなので、これ、問題を一時凌ぎで先送りにしているだけで、 なんの解決にもなっていないと思うのですが(^^;
 勿論、オーブが何もかも一朝一夕に解決できるわけではない(してもいけない)のですが、早晩同じ問題が繰り返されるのは明白であり、 ではその問題に対して人間がどう向き合っていくのか? という所まで踏み込まなくては――少なくとも劇中で問いを提示しなければ―― このテーマを持ち込んだ意味が薄いように思えます。
 並行して描いていたラゴン親子と魚屋の交流と合わせて、野生の怪獣は人間とは違う種なだけであって“悪”ではない、 と一見綺麗にまとめるのですが、だからこそ生じる対立があるのであって、自然と人間(文明)の衝突、 という古今繰り返されてきたテーマを持ち込みながら、それを“見なかった事”にしてしまっているのが、 非常に引っかかった所。 何らかの事情と経緯があって魚屋に匿われていた筈のラゴン親子も、それが一切語られずに川に放流してめでたしめでたし、 というのは舌足らずに過ぎますし。
 まあグビラは、オーブが誰も見ていない海上で粉々に粉砕している可能性もありますが!
 あと映像的に、ラゴン親子の区別がつきにくいのが凄く困った所でした。どちらでも話が成立してしまう為、 倉庫に玩具を取りに戻ったのがどちらなのかとか、困惑しましたし。明らかに大きさを変えるか、体色を変えるとか出来なかったのか。

◆第9話「ニセモノのブルース」◆ (監督:冨田卓 脚本:中野貴雄)
 前回の秘密基地は諦めたようで、宇宙に浮かんだUFO内部で会合を開く惑星侵略連合。
 「ウルトラマンオーブが強い理由は何か。それは、人間達との絆の強さなのだよ。人々の希望が奴へ力を与えている」
 え? いつ、そんな設定に(^^;
 第7話でも、予知夢少女が「オーブは救世主」みたいな発言をしていて違和感を覚えたのですが、 劇中でリアクションが描かれていない事が台詞だけで既成事実にされていて、ちょっと困った展開。 オーブが人々の応援で力を得ているシーンとか、これでまで一つも無かった気がするのですが(第7話は、怪獣が弱った形ですし)。
 そんなオーブと地球人の絆を壊す為、メフィラス星人ドン・ノストラは構成員のババルウ星人ババリューを呼び出すと、 その変身能力を用いた偽ウルトラマンオーブ作戦を指令する。
 SSP「ウルトラマンオーブ!」
 ガイ「……え?」
 は凄く良かったです(笑)
 ガイが食事中に出現した偽オーブはドンの命令で街を破壊しようとするが、絶妙な間の悪さでそこに地底怪獣が出現し、 成り行きで戦う羽目に。……導入はどうなる事かと思いましたが、この展開から一気に面白く。
 怪獣を撃退して本来の任務に戻ろうとした所で変身能力が時間切れとなり、とりあえず姿を隠したババルウ星人だが、 人間大になった所をジェッタに見つかり、オーブの正体と勘違いされてしまう。 慌てて地球人の姿に変身した見た目金髪ヤンキーのババルウは馬場竜次という仮名を名乗り、これは2人の秘密、 とその場を誤魔化すのだが、後日再会したジェッタに「ウルトラマンオーブの正体」として子供達に引き合わされた事から、 どんどん歯車が狂っていく事に……。
 「あの……さ、一つ、聞いてもいいかな?」
 「なんでしょう?」
 「ヒーローってさ……そんなにいいもんなのか?」
 「そりゃそうですよ! 僕なんて、子供の頃から、ずっと憧れてましたもん」
 幼い頃の、父の言葉を思い出すジェッタ。
 「なあジェッタ、ヒーローっていうのは、わざと危ない事をするもんじゃない。地味で目立たない事でも、 誰かのために一生懸命頑張るのが、ヒーローなんだぞ」
 「世の中には……弱い人や、困ってる人に? 手を、差し伸べてあげる存在が必要なんです。けど……僕には、 馬場先輩みたいな事はできない。そんな時……奇跡のヒーローが目の前に現れた」
 「そっか……」
 「先輩……僕はそれをみんなに伝える事で、誰かの役に立てたらいいなって、そう思うんです」
 自分なりにヒーローになれる方法を探している男、と微妙にジェッタが軌道修正されている気がしますが、良い話だからまあいいか(笑)
 オーブとして戦った際に助けた子供達からのプレゼントをついつい受け取ってしまった馬場先輩は、それを見ながら満更でもなく、 UFOに帰ると同僚のナックル星人に思わず人生相談。
 「なあおい、人に憎まれるより、喜ばれる方が何倍も気持ちがいいもんだよな。…………そう思った事は、ないか?」
 「何を言ってんのか、さっぱりわかんねぇな」
 同僚の理解は得られずも、ジェッタと子供達のペースに巻き込まれている内に、地球ですっかり子供達の良いお兄さんと化していく馬場先輩。
 (俺、このままウルトラマンオーブになるって人生もあるんじゃないのかな……)
 だがしかし、偽りの平穏は長くは続かず、しびれを切らしたドンが、UFOを地上へと接近させる。
 「もう待てんぞ。いつになったら破壊作戦が始まるのだ!」
 ドン、予想外に短気。
 前門のドン、後門の子供達の声援に切羽詰まった馬場先輩は、やむなく偽オーブに巨大化変身。
 「まず手始めに、その子供達から踏み潰せ!」
 「出来ません……」
 「なんだと……?」
 「そんな事出来ません。俺は今、ウルトラマンオーブなんです」
 「おまえは偽物だ! ババルウ星人だろ!」
 「確かに俺は、悪の星の元に生まれた暗黒星人だと思ってました。……だけど、こいつらが教えてくれたんです。 運命は変えられる。俺だって、ヒーローになれるって!」
 どう生きるかを決めるのは、自分自身だ!(byジャンパーソン)
 前回、野生の怪獣を人間の善悪で量ってはいけない、という話をしたと思ったら、その次で、 悪の星に生まれた宇宙人は生まれながらの悪である、みたいなテーゼが持ち出されてしまったのですが、 以前に「光の陣営」「光と闇のカード」という台詞があった事を考えると、 野生に善悪は無いけど生まれた星による善悪の割り振りはある世界なのか。
 最初に3D6振って下さいねー、えー、生まれ表の15は……はい、ナックル星なので、属性は〔闇〕です。 常に レッドマン 光の戦士に命を狙われる事になりますが、《格闘》《射撃》ロールにボーナスがつきます。
 みたいな残酷宇宙なのか。
 というかこれ、過去に身内から犯罪者を出す(ウルトラ警備隊の抹殺対象にされる)と、 星ごと(一族)まとめて〔闇の陣営〕認定されるのでは……。
 状態を中立に戻すには、莫大な賠償金の支払いを完済する必要があります!
 まあ最終的にはババルウ星人が新たな人生を始めるので、 スラムの最底辺に生まれた俺達は一生ここから這い上がれやしないのさ……的なニュアンスかもしれませんが。
 「ジャグラー、奴を処刑しろ」
 ドンの命令を受けたジャグラーが怪獣を召喚し、子供達を守る為に必死に立ち向かう偽オーブだが、怪獣の猛攻を受けて地面に倒れ、 正体を露わにしてしまう。
 「そうだ……俺はウルトラマンじゃねぇ。暗黒星人の、ババルウさ。お前達を騙していたんだ」
 「そんな……」
 「すまねぇ……しょせん俺は偽物だった」
 ――だが
 「がんばれ、馬場竜さん!」
 「頑張ってー!」
 「「「がんばれー!」」」
 子供達はそんなババルウを、例えオーブではなくても、“自分たちのヒーロー”と信じて声援を送る!
 ここで、「馬場竜次」(仮名)→「馬場竜さん」(愛称)が、「ババルウ」とより重なっている事により、 子供達と心から触れ合っていたからこそ、その声援がますます届くようになっている、というのは細かく秀逸(私の聞き取りの問題で、 普通に「ババルウさん」と言っている可能性もありますが)。
 「……そうだ、諦めるな馬場先輩! ……あなたが誰であろうと関係ない。子供達に言ってくれたじゃないですか! 夢を、 追いかければ、いつかはヒーローになれるって! あなたが……あなたが僕たちに夢を見せてくれたんじゃないですか!」
 「――そうだな。おまえの言う通りだ。こ・こ・で、諦めてたまるかぁーーーっ! よーし!! やってやるーーー!!」
 ファイト一発、立ち上がった馬場先輩は、力を振り絞って再び怪獣に立ち向かう!
 マフィアの下っ端構成員が人の優しさに触れて良心に目覚める、というスタンダードなアウトラインから、 クライマックスの展開そのものが冒頭で盛られた「ウルトラマンオーブが強い理由は何か。それは、人間達との絆の強さなのだよ。 人々の希望が奴へ力を与えている」という設定を補完する構造になっており、1エピソードの内容とメインストーリーの連結がお見事。
 …………というかあれ? 馬場先輩にエールを送るジェッタを、ガイが凄く難しい顔で見ているのですが、これもしかして、 そもそもガイ(オーブ)が今回のババルウ星人と似たような経緯を辿って光の陣営に鞍替えした可能性も、ある?
 第5話で、ゼットン星人が名を挙げる為にオーブを狙っていた事に若干の違和感があったのですが、 闇の陣営の裏切り者として賞金首のような扱いになっていると想像すると、納得いきますし。失ったという「本来の力と姿」が、 光のものとも限らないわけで(まあキャップの夢だと、「光の巨人」と言われていますが)。
 かつて光ーグに居たジャグラーが、あまりにも強いオーブの闇に惹かれて闇リーグに移籍するも、 当のオーブがFA宣言して光ーグに移ってしまい、その逆恨みで倒錯したストーキングを続けている、 というのも割と腑に落ちるのですが、さてさて。
 奮戦するも怪獣に敵わず、トドメの火球に焼き尽くされそうになる馬場先輩だが、そこでようやくガイがオーブ変身。
 真打ち登場から主題歌、というのは素直に盛り上がったのですが、かなりギリギリまで助けに入らなかったのは、 偽物に凄くイラッとしていたのか(笑) ガイさん(オーブ)明らかに、自分のイメージ意識してますからね!  ……まあ闇リーグに対する不信感、みたいなものがあるのかもですが。
 これが! 本物の! キレのいい俺だ! とオーブ嵐は竜巻で浮かせてからのエアリアルコンボで怪獣をざっくり滅殺。 ランス連撃は2回とも空中で使っているのに、バンクの映像が思い切り地面を踏みしめている格好なのは、ちょっと勿体ない所。
 「やっぱ……本物はすげぇや」
 オーブの勝利を見届けた馬場先輩は人間大に戻ると、子供達の感謝の声に応えながらも、何処へともなく姿を消す……。
 「馬場先輩!」
 「行かせてやれよ。ヒーローってのは、風のように去っていくんだろ?」
 これ以上、俺のイメージを、崩されると困るからな!
 「ドン・ノストラ、あなたのやり方は、人間の心の善悪を問う昔ながらのやり方です。時代はもっと進んでるんです」
 ジャグラーはドンに厭味を残してUFOを去り、後日――ジェッタと昼間から公園でフラフラしていた通報待ったなしの風来坊は、 公園の清掃員として人間社会に溶け込んでいた馬場の姿を見つけ、笑顔になる。
 「馬場先輩……どこ行っちゃったのかなぁ」
 「さぁな。ヒーローってのは案外、その辺に居るんじゃないか?」
 馬場先輩のその後を見せるか見せないかどちらが美しいのか、というのは好みの出る所かとは思いますが、今回に関しては、 誰だってヒーローになれるから、ヒーローはいつだって近くにいるかもしれない、 とエピソードのテーマと合わせた台詞でまとめたのがはまり、良い着地だったと思います。
 そしてガイさんは、正体を明かしはしないけどさりげなくアピールはしたいお年頃。
 好みのテーマだったのもありますが、流れも綺麗にまとまって、非常に面白かったです。ナオミとシンの出番を無理に作らず、 ジェッタのエピソードにした判断も良かった。
 ところで一つ気になった事として、ビートル隊は一般市民に対する職務質問どころか、 問答無用で拘束して身体検査する権限を持っているのか……。かなり強権的かつ高圧的に見えますが、 思えば割と気軽にミサイルぶっ放していましましたし、 『オーブ』世界は度重なる侵略被害によって軍関係が強い発言力を持って割と殺伐としているのでしょうか。
 当局に、誤認逮捕など存在しえない。何故なら、侵略宇宙人かもしれないと疑いを抱かせた時点で罪なのだ!  昔の偉い人は言いました。黒か白かは、撃ってみればわかる。 ※言ってません。
 実際問題としては、馬場先輩は当時悪い宇宙人だったので、おじさんは物凄く優秀な隊員ではないか疑惑がますます募りますが。
 次回――ジャグラー死す?!

◆第10話「ジャグラー死す!」◆ (監督:冨田卓 脚本:小林雄次)
 SSPに、タイムカードなんてものが存在していた事が発覚。
 ……しかしこの会社の収益モデルを考えると、キャップがバイトで稼いだお金で男二人(+風来坊) を養っているようにしか見えないのですが、色々、大丈夫か。
 ドンからブラックキングさんのカードを渡されたジャグラーはガイに宣戦布告し、互いの因縁に決着をつけるべく、それに応じるガイ。
 「いいねぇその顔。あの日を思い出す」
 「俺はとうの昔に忘れちまったな」
 「つれないな」
 「おまえとの腐れ縁も今日までだ。さあ、けりを付けようぜ」
 しばらく高速移動を織り交ぜた肉弾戦となり、それに宇宙から説明を補足するドン。
 「ジャグラー、君たちの因縁は耳にしている。遙か昔君たち二人は、銀河の果てで雌雄を決したそうだな。 クレナイ・ガイは光に選ばれた。君は闇に魅入られた。今こそ教えてやりたまえ。君の選んだ闇の力の方が、 光より遙かに偉大である事を!」
 ……大宇宙ドラフト会議?
 「おまえ恐れてるんだろ。人間を傷つける事を」


(しばらく、いちゃいちゃ回想をお楽しみ下さい)


 「何をそんなに恐れている。小娘一人守れなかっただけだろう。どうしてそこまで人間に執着するかね?  たかが人間ごときに惑わされるから、本当の力も失っちまったんだ。え? ありがたいウルトラマンさんの力を借りなきゃ、 戦う事もできない。所詮その程度のおまえが、闇の力に刃向かおうなんざ愚かしいんだ!」
 前回の感想で二人の関係について幾つか妄想しましたが、今のところまだ、何とも取れる言い回し。
 「言いたい事はそれだけかっ。おまえが何をたくらもうと、俺は人間を守り抜く!」
 ガイはジャグラーの目的が、6体の魔王獣を用いた大魔王獣マガオロチの復活だろうと言及し、幾つか布石を置いた所で、 ジャグラーがブラックキングさんを召還。変身するオーブだが、強敵ブラックキングにあらゆる攻撃を弾かれて大苦戦。
 「この程度なのか……おまえにはホントがっかりだよ。トドメを刺せ、ブラックキ」
 だがその時、一発の銃声が響き渡り、背後からナックル星人に撃たれたジャグラーが大爆死。
 「ジャグラー!」
 これを見て、えらくテンションの上がったオーブはブラックキングをダイナマイト。 ……ここまであまりにもブラックキングさんを強く描きすぎていた為、この逆転劇は非常に強引な事に(^^;
 前回からの話の流れを考えるとオーブに力を与えた「倒れるジャグラーの変なポーズ」 =「大量の人間からの声援」と同レベルのステータスUP効果という事になるのですが、 二人の絆はどれだけ濃厚でまったりと芳醇なのか。
 こうしてウルトラマンカード6枚の入手には失敗するも、ジャグラーの所持していたカードを手に入れる惑星侵略連合だったが、 UFOに戻って首尾を報告するナックル星人の胸を背後から貫く刃! 生きていたジャグラーは真の姿を現すとドンもさっくりと斬り殺し、 ドンの切り札を逆に強奪する。
 「遂に我が手に来たか。最後のカード。ふふふふふ……はーっはっははは、はーっははははははは!」
 ドン・ノストラが意外とざっくりリタイアし、7枚のレアカードを揃えるジャグラー。果たしてオーブとの戦いは、 如何なる展開を迎えるのか!
 ところで、その方がわかりやすいという判断だったのでしょうが、宇宙人にはそれぞれ○○星人○○という個体名が設定されており、 実際にドンは「ドン・ノストラ」と呼ばれているのに、ドンから配下に対しては「ババルウ星人」「ナックル星人」と呼びかけるのは、 どうにも変(^^;
 そして、物語上の扱いは良いのに、ヒロインはホント華が無いなぁ……(直球)

◆第11話「大変!ママが来た!」◆ (監督:田口清隆 脚本:黒沢久子)
 ナオミを実家へ連れ戻そうとする母親が上京し、東京に残る強い理由が必要なナオミはガイを恋人に仕立て上げるが、 社会不適格者の風来坊は、「弁護士」と「司法試験」という日本語を知らなかった……!
 生きていたジャグラーが恋のから騒ぎに闖入し、ガイとシリアスな空気になる度に、 ハイテンションかつマイペースなナオミママに混ぜっ返されるという、割と大胆にコメディに寄せた演出で前半は進行。
 度々横槍を入れられながらも、集めた魔王獣カードと、新たに入手したベリアルさんカードをガイに自慢するジャグラーだが、 そこに巨大玉響比売まで登場。大いなる災いの目覚めを警告して姿を消す巨大玉響比売だが、その言葉通り、 ジャグラーは魔王獣カードを用いて大魔王獣マガオロチを出現させると、ベリアルカードによって、ゾフィーの封印を破壊。今ここに、 星をも喰らい尽くすと言われる、伝説の魔獣が甦る……!
 定番ネタのドタバタコメディから最強の大魔王獣復活へと繋げ、まさかのママが来たどころかマガオロチが出た!  という構成なのですが、マガオロチ復活が予告からわかりきっていた為、構成の妙としては機能せず。これ本当は、 予告次点では箸休めのコメディ回だと思わせたかったのではないかなぁ……予告で隠し通せていたら、また違った面白さが出たような。
 マガオロチは正統派のゴジラ型怪獣で見るからには強そうではあるのですが、物凄い怪獣が出た! オーブの攻撃が全く通用しない!  という展開にも関わらず、何故かモブ群衆の反応が一切描かれない為、今ひとつ迫力と緊迫感不足。 一応SSPのリアクションは入るのですがそれだけでは足りませんし、前半に巨大玉響比売に対する群衆の反応は描かれていただけに、 なんだかアンバランス。
 ……マガオロチがかなり派手に市街地を蹂躙するので、周辺の群衆を描く事に何らかの躊躇と配慮が働いたのかもしれませんが、 今作ここまでの被害描写を見る限り、もしそうだったとしたら、それは少々欺瞞だと思う所。
 オーブ光の光線技をものともせず、オーブ嵐のランスも華麗なスウェーバックで回避からはたき落とし、 ランス乱舞も片手で受け止めるという凄まじい強さを見せつけるマガオロチ。先輩達がタイムカードに手を伸ばし、 終業間際に炎となったオーブは決死のストリウムダイナマイトを直撃させるが、それすらも表皮を軽く焦がしただけに終わり、 遂に力尽きてしまう。瓦礫の中に倒れ込んだガイに近寄ったジャグラーは、ウルトラマンさんカードストックを震える手で奪い取り、 その哄笑が崩壊する街に響き渡る……でつづく。

◆第12話「黒き王の祝福」◆ (監督:田口清隆 脚本:黒沢久子)
 「ねぇ……ナターシャって、誰?」
 SSPに拾われていたガイの譫言で、モトカノの名前が判明。
 「どうしてその名前を……?!」
 「無意識の中で呼ぶんだなんて、大事な人なんだね」
 「……大事な人だった……。…………助けられなかった。俺を助けてくれたのに……俺は」
 気になる男の過去をつついてみたら、思ったより重いボールがストレートに投げ返されてくるという酷い展開に、 初めてちょっとだけ、キャップの事を可哀想だと思いました(おぃ)
 クレナイ・ガイ、舎弟には格好つけても、年下の女子に格好つけられない男。
 一方、オーブを倒し、大規模に街を破壊したマガオロチは一眠り中。
 ここで、遠景でマガオロチを見せ、空を飛ぶビートルの姿と、周辺で区域封鎖する警察と緑の制服の集団(ビートル隊?) が描かれるのですが、後半に繋がるのかと思ったら全くそんな事がなかったのは、少々引っかかった所。
 今後じわじわビートル隊が存在感を増していくのかもしれませんが、 今作これまで基本的に“存在はしている”けれど“オーブとSSPの物語の中では渋川さん以外は見えない” 扱いだったビートル隊がこれだけ堂々と怪獣に対応している姿が描かれたにも関わらず、 今回後半に入るとやはり“見えない”存在にされてしまうので、ここだけ中途半端に怪獣映画のようなカットを作ってしまった感じ。
 ナオミママも加えたSSPは玉響比売を探して入らずの森へ向かい、「大人しく寝ててよ。 絶対だからね!」と言われた直後に跳ね起きたガイは、カードストックを失った事に気付く。
 「捜し物は――これですか?」
 「……返せ」
 ふらつくガイを払いのけ、その姿を嘲笑うジャグラー。
 「なんかお前格好悪いよ。……おまえホント格好悪いからさ、せめて自分の負けを認めて俺の勝ちをたたえろよ」
 「……ふざけんな」
 ジャグラーはやはり、ジャグラーが“格好いいと思うガイ”に対して愛憎を抱いているのだろうか、など、 ここ数話で直接の会話が増え、ガイに対するジャグラーの屈折が色々と見えてきたのは良い感じ。
 SSPは入らずの森で砕け散った玉響比売の石碑を発見し、それを元に戻そうと試みるが、 娘達の活動そっちのけでおもむろに地面に種を蒔き始めるナオミママ。
 「大地は、命を待ってるのよ」
 前回今回とナオミママは、人の話を聞かずマイペースかつ溢れるバイタリティで周囲を振り回すが、 娘の事は本気で心配しているし芯の強さと独特の優しさを持っている、というような気持ちなのでしょうが、 森の真ん中に適当に穴掘って適当に種蒔いて適当に水をやる姿から感じ取れるのは、「たとえ明日世界が滅ぶとしても、 今日私はリンゴの木を植える」ではなく、「私が蒔いた場所に咲かない花など用は無い」という大地に対するスパルタです。
 「どんなに破壊されても、大地は諦めないの。いつだって、新しい命を育てようって、待ち構えてるのよ」
 そして前後編にも関わらず、この台詞へ向けた仕込みも流れも一切ないので、物凄く強引かつ唐突なのですが、 蒔いた種が急成長して芽を出したかと思うと玉響比売が復活してしまうので、正直ぽかーん(^^;
 玉響比売はガイの元へと飛ぶと、拾い集めて元に戻しておいたらしいゾフィー先輩のカードと、 遺失物横領していたベリアル先輩のカードをガイへと託すが、その背後に、再起動したマガオロチが迫り来る。
 ふらつきながらも2枚のカードを受け取ったガイはオーブリングをかざし、 カードを見た時は「ベリアル」と呼び捨てだったのに、リングに通す時は「さん」付けな事に、 光の国もまた厳しい体育会系縦社会であるというヒーロー界の世知辛い現実を改めて心に焼き付けられます。
 しかし、陰で呼び捨てにしていたのがバレたのか、ベリアルさんカードがリングに反発し、弾き飛ばされるガイ。
 「ベリアルさん! お願いします……!!」
 再度試みるがベリアル先輩は労働を拒否。
 土下座が、足りないのではないか。
 「ガイ! 早くカードを! その力を使いこなしなさい!」
 バリアーでマガオロチを食い止めていた玉響比売だが、遂に力尽き、マガオロチの炎に飲み込まれて消滅してしまう。
 その光景に、恐らく過去のトラウマを思い起こしたガイの絶望と憤怒の表情を、 低い位置に置いたカメラからあおり気味に撮ったカットは印象的で良かったです。
 激情にかられるままにベリアル先輩に心の中で光速の土下座を繰り返したガイは、遂にカードをリングに通す事に成功。
 「どぁぁぁぁぁぅぅぁぁぁっだぁぁぁぁぁぁ!!」
 今ここに、光と闇の力を重ね合わせた、オーブ:サンダーブレスターが降臨する!
 従来のフォームよりもややマッシブ体型で、目つきが完全に邪悪なオーブ雷は、 登場するだけでビルを1つ吹き飛ばすとマガオロチに掴みかかり、躊躇なくビルを砕きながら地面にその頭を叩きつけると、 マウントを取って頭部に執拗な打撃を浴びせる凄惨な

 レッドファイト。

 効果音も、めきぃっ、ぐちゃっ、て感じでなんかエグい。
 「あいつ……闇のカードを使いやがった」
 ジャグラーが陶然と見つめる中、オーブ雷は立ち上がったマガオロチの角を掴んでから、またも頭部への執拗な打撃。
 そう、レッドマン先輩が教えてくれた通り、どんな生き物でも脳にダメージを与え続ければいつか必ず死ぬのだ!
 膝、拳、肘、と次々と頭部に打ち込み、距離が離れたらすかさずヤクザキック、そして掟破りの鉄筋コンクリートだーーー!!
 高層ビルという名の凶器まで用いたオーブ雷は、尻尾を振り回してきたオロチに対し、それはむしろ力点だ、 と尻尾を掴んで投げ飛ばし、背後から零距離八つ裂き光輪で尻尾を切断。その尻尾をシールド代わりにしてオロチ光線を防ぐ、 というアクションも格好良かった。
 「なんでだよガイ?! なんなんだよ!! 一度ぐらい俺に勝たせろよこのやろぉぉぉっ!!」
 観客の絶叫が響く中、オーブ雷はオロチの懐に飛び込んで光線を封じると頭からビルに投げ落とし、トドメはレッドビームで、 マガオロチを完封虐殺。
 前回から今回途中までどうも話に入り込めなかったのですが、決め台詞を投げ捨てたガイの咆哮からこのファイトは素晴らしく面白かったです。 現時点での最強フォーム登場のインパクトも十分以上でしたし、そこにガイの背景もしっかり乗せてきて、非常に良かった。
 最強の敵マガオロチを驚異の力で撃破し、疲弊したガイは廃墟と化した街で瓦礫の上に座り込むジャグラーと遭遇。
 「俺を笑いにきたのか。…………格好良かったよ、おまえ。……全てを破壊し尽くすおまえの姿、惚れ惚れしたなぁ」
 ジャグラーの言葉にはどこか“あの頃の輝いていたおまえ”みたいなニュアンスも感じられ、 やはりガイは闇リーグの人だったりしたのかどうなのか。
 「俺は潔く負けを認める」
 先輩カードホルダーをガイに返し、ビルの狭間に姿を消していくジャグラー。
 「……楽しかっただろ? 強大な力を手に入れて全てを破壊するのは」
 「そんな事は!」
 「いい子ぶるな! 所詮おまえも俺と同類だ。……楽しめ。うふはっ、はははは、はーっははははははは! はははははははっ、 はははひゃははははは……!」
 強い力の裏表、というのは定番のテーゼではあるのですが、ジャグラーに反論しきれない所にガイの抱える過去の闇を感じさせ、 今作独特の味付けになっています。
 かくして辛くも勝利を収め、先輩達のカードも取り戻したガイはSSPに戻ってくるが、ラスト、ナオミの曾祖母の「握った手の中、 愛が生まれる」という遺言、ガイのハーモニカのメロディに「気持ちがざわざわする」と険しい表情になるナオミママ、と、 ガイが懐かしく感じるスープ、怪獣を落ち着かせる歌、など、ナオミ(夢野家)の血族にまつわる因縁の伏線を匂わせ、続く。

◆第13話「心の大掃除」◆ (監督:武居正能 脚本:足木淳一郎)
 SSPの事務所大掃除にかこつけた総集編。
 ここまでの話数が12話という事もあり、全フォーム&全エピソードを抑えた上で、 新規撮影部分もそれなりに含みつつテンポよく進んだ、まとまりのいい総集編でした。
 見所はいつの間にか、おじさんとやけに意気投合しているガイさん。
 ……やはりこう、古い世代の方が、魂の波長が合うのか。
 バケツと雑巾を渡されたり、洗車を仰せつかって渋い顔になりならも、ただ飯ぐらいの身なので仕方ない……と自分を納得させつつ、 ラスト、SSPとの触れ合いに人の繋がりと暖かみを感じて微笑むガイ、というのも良かった部分。
 あと改めてマトリョーシカの存在が強調されましたが、それ、最後を開けると、オーブのカードが入っていたりするのか。
 その他面白かった要素は、事が片付いた後に走ってくるおじさん、というシリーズパロディネタを、 「もしかしたらオーブの正体……?」と夢想し始めるジェッタ。
 そして、「予知夢を見る儚げな美少女……」と回想しながらも貰った手紙がぞんざいな扱いでどこからともなく発見されるという、 SSP男子連中の、何か根本的なダメさ加減。
 次回――フォー・ジャスティス!

→〔その3へ続く〕

(2017年2月16日)

戻る