■『ウルトラマンオーブ』感想まとめ1■


“耳を澄ましてみろ! 心で感じてみろ!”


 ブログ「ものかきの繰り言」の方に連載していた『ウルトラマンオーブ』 感想の、まとめ1(1話〜7話)です。文体の統一や、誤字脱字の修正など、若干の改稿をしています。

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〔まとめ2〕 ・ 〔まとめ3〕 ・ 〔まとめ4〕  ・ 〔総括&構成分析〕


◆第1話「夕陽の風来坊」◆ (監督:田口清隆 脚本:中野貴雄)
 前情報全く無しで見たのですが、けっこう面白かったです。
 まずはウルトラマンの関係組織を民間の怪しげな団体とし、 防衛隊問題(劇中の防衛隊が無能だったり思想的に疑問があったりで作品に集中できなくなる問題)を回避しつつ、 コミカルパートを無理なく確保。『X』は劇中の理屈の押しつけ方が引っかかってリタイアしてしまったので、 その辺りがスッキリしていたのは個人的に有り難かったです。おじさんがビートル隊とやらに所属?していて、 最後にちょっとハイテクな飛行機が飛んでいたので何らかの組織は存在しているようですが。
 その上で本編、怪獣もの+ディザスタームービーの融合を正攻法で行い、TVシリーズでここまで作ったのはお見事。 ……第1話でこれだけやってしまって、2話以降もつのかはちょっと心配ですが(^^;
 竜巻の中で車窓を怪獣の頭部がぐあっと横切る、とか、ああいうのをストレートにやってくれたのは良かったですし、 シルエット→部分→全体、と話の流れに合わせて怪獣の姿がハッキリしていく、という見せ方は秀逸。
 もしかしたら「鳥を見た」がやりたかっただけかもしれませんが、 “空の向こうから何か怖いものがやってくる”というアプローチは個人的に好みだったので、引き続きそういう方向性があるといいなぁ。
 総じて、既存の概念にただ乗っかてしまうのではなく、今作における「怪獣(魔王獣)とは何か」を土台からきちっと見せていこう、 という意識が感じられたのは好印象。
 夕陽の風来坊に関してはまだ何とも言いがたい感じですが、先輩?を「さん付け」する姿に、ウルトラマンの社会も、 70年代仮面ライダーばりに体育会系の上下関係なんだぁとしみじみしました。
 証明写真機の中で「ウルトラマンさん」と言い出した時は、思わず巻き戻して、台詞を確認してしまいましたよ(笑)
 さん付けしないと、へそ曲げて力を貸してくれないのですきっと!!
 風来坊は変身前から人間離れした能力を見せたり、変身システム自体もまだ謎ですが、戦闘シーンで八つ裂き光輪を投げ直したのと、 2分経ったら「もう帰りたい……」と先輩達のエクトプラズムがだだ漏れになったのは面白かったです。
 それにしても私の把握している限りでも『烈車戦隊トッキュウジャー』→『手裏剣戦隊ニンニンジャー』→『ウルトラマンオーブ』 と3年連続“渡り鳥”ネタが繰り出されているのですが、これはバンダイの上の方の陰謀なのでしょーか。小林旭だと、 親世代向けのネタですらなさそうなわけですが。
 ちなみに物凄くどうでもいいですが一番驚いた事は、初見の印象が、え? 30がらみ?だったヒロインが、 立ち上がったら脚剥き出しの短パンだったので、幾つなの?! と思わず女優さんの実年齢を調べたら21歳だった事です!
 とりあえず、髪を後ろにまとめていると凄く老けて見えるので、普段の髪型を考えた方がいいような……。
 そんなこんなで、第1話は、割と好印象。
 出来ればこの調子で、頭でっかちにならずに進んでくれるといいなぁ。人物設定や、 「ウルトラマンvs怪獣」というエンタメを従来とは違う形で物語に取り込もうとしている気配などあるので、 気持ち良い怪獣活劇を期待したいです。
 なお今回まとめていて初めて、サブタイトルに「“風”来坊」なので、第1話の敵が風属性の魔王獣であったことに気がつきました。

◆第2話「土塊の魔王」◆ (監督:田口清隆 脚本:小林雄次)
 「一つだけ教えてやる。俺の名はガイ――クレナイ・ガイ」
 「一つだけ」にしては、凄く価値のない情報来た!!
 意外と策士、クレナイ・ガイ。
 やはり前回張り切りすぎたのか、怪獣特撮としては抑えめの印象。暗闘するガイとジャグラーを中心に据え、 ほぼ設定説明回というエピソードで、物語としての面白みにも欠ける出来。
 とりあえず、〔ジャグラーが怪獣カードで魔王獣を復活させる→オーブがそれを倒す→ガイは封印していた先輩カードを入手→ ジャグラーは魔王獣カードを入手〕というプロセスが明確に。
 「俺からも礼を言わなきゃな。ウルトラマンオーブ」
 という事で、ジャグラーとしては、魔王獣が倒されても、カードが入手できれば問題ない様子。単純に考えると、 魔王獣カードを集めて超魔王獣を復活させる、とか……? 或いは、ラストの締めが「ビルがすぐ建つぜ……」 という復旧工事の光景だったので、土建屋の手先なのか。
 少々気になるのは、第1話アバンで、ウルトラマンの戦いによる周辺被害で人死にが出る事もある、というのを明示した上で、 戦後の復旧工事を描いたり、3ボケトリオが戦闘終了後に街の被害を見て我に返ったり、街の被害描写が物語として強調されている事。
 途中で、避難を促したら別のビルが沈んだ、というのもありましたが、そこまでの描写と物語における意味を考えると、 たまたまビルは無人でした、という世界観にどうも思えず、前回今回と、相当の被害が出ているような気がします。 その上で今回だけ見ても、オーブが回避したビームが背後のビルを貫通している、という描写があり、狙ってやっているとすると、 なかなかシビア。
 言うまでもなく正面から向き合うと物凄く地雷の要素であり、途中からすっ飛ばす可能性もありますが、 ここまでの描写を見る限りは意図的に積み重ねているように見えるので、この先どう扱っていくのかは興味の湧くところ。
 気になるといえば、大穴の空いた立入禁止区画に平然と仁王立ちした上で警備員にも無視されていたガイは、 “特定の人にしか見えない”とかだったりするのか。だとすれば、それはどんな意味があるのか。風呂屋の少年も、 ガイが一方的に話しかけているだけで反応しないし、ちょっとホラー。
 そして引き続き、見た目に若さと可愛さを感じないヒロイン……(別に、大人の美女でもない)。お陰で、 ジャグラーの趣味にもう一つ納得できない、というのがちょっと困った所です(おぃ)

◆第3話「怪獣水域」◆ (監督:田口清隆 脚本:林壮太郎)
 首都圏で次々と、水道水から凄まじい悪臭が漂うという事件が発生。馴染みの銭湯が臨時休業となってしまい、 一番風呂に入れない怒りに燃えたガイは、水源の湖に座り込む水の魔王獣を発見し、戦いを挑む……!
 ジャグラーさんには、ガイのほっぺにもすりすりして欲しかったなぁ……!
 男女を問わず、背後に立ってほっぺをすりすりするのが趣味とか、変態度が増して凄く良かったと思うんですが(おぃ)
 そういう点で最後に、水の魔王獣カードの匂いを嗅いで、ん〜マンダム、というのはとても良かったです。
 今回、どうやらガイが、自分一人での変身能力を失っており、 先輩の力を借りる事でウルトラマンとして戦えるようになっている事が判明。銭湯での台詞などからも、 地球人に擬態した光の国の関係者という事の模様。
 とするとガイが、もうひとつ風来坊に“なりきれていない”のは、役者さんの演技力の問題ではなく、 地球の映画か他社の特撮番組に影響を受けた姿であり、オーブの本質とは違うというニュアンスが入っているのか。
 ……いやまあこれ、私が強烈な風来坊キャラを過去に見ている為に、フィルターかかっているのかもしれませんが(^^;  早川とか早川とか城茂とか。
 新フォームは、ストレートな演出もあり、素直に格好良かったです。パンチやスライディング時の部分加熱から、 必殺ウルトラダイナマイトに繋げる、という展開も良かった。周囲の延焼をやたら明確に描くのでどうするのかと思ったら、 飛び立つ際のソニックブームで消火、というのは今作らしい見せ方。
 今作らしい、といえば、ビートルおじさんのハヤタパロディも今作らしいというか何というか。
 で今回、SSPの一人が、俺にも熱い志はあるんだよ! と心情を叫ぶのですが、そこは少々早まった気がしました。
 現状、SSP自体が、変に生活感を出した結果かえってリアリティを失っている状態 ――何をどう足掻いても経営が成立しそうに見えない(実際していないけど将来的にも)――で、 しかもビートル隊所属のおじさんというコネクション以外に、SSPという集団にリアクションをしているのが “ネットの声”でしかない為に劇中の存在感がまだ確立しておらず、世界に対する集団としての位置づけが弱いのに、 個人の意志を語らせてしまったのは、上滑りした感。
 まあこの辺り、ネットの反応、というのがどこまで劇中世界の存在感に寄与するのか、 というのは世代によって感覚の違う所かもしれませんが。
 今作の全体的な緩い感じは嫌いではなく、SSPの市井の変人集団という立場も悪くはないと思うのですが、いっそ、 半端なリアリティを廃して、完全に趣味(小銭が稼げればなお嬉しい)でやっている大学の変人サークル、 みたいな扱いの方が良かったような。
 まがりなりにも会社という形で見せたいのなら、報酬に目がくらんだSSPが妙な事件に巻き込まれて…… 的なエピソードを早めに入れるなり何なりしておいた方が良かったのではと思います。 ビートル隊に協力した時に謝礼を貰って何とかやっている(けどいつか広告収入だけで独立採算したい) みたいに組むのが一番納得しやすかったと思うのですが、今後の展開としてあったりするのかなぁ……。
 まあ今作のノリだと、あの叫び自体が「本当は実況を批判された事に怒っているだけなのに……」というギャグだった可能性もありますが。
 次回――火の魔王獣出現で、ジャグラーの真の目的は判明するのか?!

◆第4話「真夏の空に火の用心」◆ (監督:アベユーイチ 脚本:三好昭央)
 最高気温40度の猛暑に見舞われる東京上空に、燃えさかる巨大な火球が出現。 アイスの恨みで立ち向かうオーブだが次々と必殺技を跳ね返され、何とか火球を大気圏外まで押し上げるも、力尽きて落下してしまう。 SSPは現場で拾ったガイをオフィスで休ませるが、ガイは目を覚まさない……酷暑の東京の運命は如何に?!
 前半、ギャグ風味も交えながらの熱暑描写から、後半、首都圏に降り注ぐ火球のスペクタクル、という展開は面白かったです。 ビル街の向こうに浮かぶ太陽と、迫り来る偽りの太陽、というカットも良かった。さあここから逆襲だ、 という所で主題歌が入るというストレートな演出も好み。
 戦闘シーンでは、フォームチェンジは瞬間で出来ると判明。また、基本キャッチーな技ではありますが、受け止めて軌道変更、 複数同時に続いて、巨大なスーパー八つ裂き光輪、というのも面白かったです。その後の分身光線とか、EX技を連発しすぎて、 スペシウムゼペリオンの今後がちょっと心配になりますが(笑)
 さて今回、ビートル隊の活躍シーンが明確に描かれ、少なくとも大気圏外まで飛んでいける戦闘機と、 多数の地対空ミサイルを所持している事が判明。
 相変わらず組織全体の概要が存在目的からしてさっぱり見えない為、おじさんが特別フランクなのかどうかわかりませんが、 民間の変人集団に頻繁に情報を求めた挙げ句に怪しい古文書を根拠に電話1本でミサイル打ち込む辺りの緩さと、 その所持戦力とのバランスが早くも若干噛み合っていない感じがあるので、巧くすり合わせて欲しい所です(^^;
 その辺り、作品全体の緩めの雰囲気を優先する為に、てっきりビートル隊は“コロンボのかみさん”路線にするのかなぁと思っていたのですが。
 で、ビートル隊が割と戦力を持っている事と、前回のジェッタの叫びを合わせて改めて気になるのが、今作における「怪獣」の扱い。
 第1話を見て、怪獣をシリーズ既存の概念に依るのではなく、 『ウルトラマンオーブ』における「怪獣」像を描こうとしている雰囲気を感じてそこは好みだったのですが、前回−今回とどうも、 <ウルトラマン>だから怪獣が居て当たり前、という世界観になってしまっている気がします。
 特別リアル怪獣シミュレーション路線は求めていないのですが、 せっかく民間のトンデモ追っかけ集団であるSSPという視点を置いているのだから、 足下からの「怪獣とは何か?」という要素をやって欲しかったかなぁと。
 アバンタイトルでも拾われた第3話の
 「スクープだけの問題じゃない! 俺達がこうやって追跡取材をして、リアルタイムで更新する事で、炎上しても拡散さえすれば、 怪獣から避難できる人がいるかもしれないだろ」
 という台詞に何となく覚えていた違和感の正体がハッキリしたのですが、この台詞はあまりにも怪獣の存在が前提にされすぎていて、 今回いみじくもジェッタ自身が口にした「突然現れた怪獣達」という要素が薄い。 ジェッタが内に秘めていた熱情と「怪獣」を繋げてしまうのが改めて早すぎた感がありますし、これをやるならやはり、 「怪獣の現れた世界における心境の変化」というのをしっかり描いて欲しかった所です。
 物語、というのはそこに生じるものだと思うわけで。
 まあこの辺り、あくまで私が勝手に期待していた要素でありますが。
 というわけで、怪獣スペクタクルとしては面白かったのですが、幾つか見えてきた地雷がちょっと気になる第4話でした。
 次回――宇宙人現る。勇躍、地雷原にダイビングする感もあるので、大爆発しないといいなぁ。

◆第5話「逃げない心」◆ (監督:アベユーイチ 脚本:小林弘利)
 クレナイ・ガイ、餌付けされる。
 4体の魔王獣カードを集めたジャグラーが一休みし、ガイ本人を狙うゼットン星人が登場。 宇宙人と怪獣を見つけたという情報提供にホイホイ引っかかったヒロイン・ナオミが人質にされ、 拾った人形を直す裁縫道具を借りようとSSPを訪れたガイは、その救出に向かう――。
 ジェッタが眠っている間に届いていた着信を再生すると、情報提供者と調査に行くよひゃっはー、の次に、助け(ぶつっ)、 というのを部屋全体を収める引いたカメラ固定で見せた演出は面白かったです。
 「ひねくれ者でね――来るなと言われたら逆らいたくなる」
 格好良く登場したガイを襲う、ゼットン星人の飛び道具。女子高生に変装してナオミをさらうのに始まり、 ガイ観察日記をつけていたなど、ゼットン星人がかなり嫌らしくて良い感じなのですが、折角ジャグラーがお休みで一息つけると思ったら、 クレナイ・ガイは、変態に好かれる体質なのか。
 そして、救出した上に落としたスマホまで拾ってあげたのに、そのスマホでする事が怪獣の撮影というその女は、 見捨てていっても宇宙最高裁判所の判決は無罪だと思います!
 カマキリゼットンに八つ裂き光輪を弾かれたオーブは、ジャック先輩とゼロ先輩のカードを取り出し、 ゼットン星人のストーキング日誌に未記載の新たなフォーム・ハリケーンスラッシュを発動。
 「キレのいいやつ、頼みます!」
 ハリケーンスラッシュはカマキリゼットンと短距離転移で激しく戦うと、最後はレッドアロー……じゃなかった、 オーブスラッガーランスを繰り出し、必殺攻撃で撃破。敵に突き刺した後に至近距離でがちゃこーんしないと技が発動しない仕様なのが、 ちょっと大変そうです(^^;
 カマキリゼットンを倒したガイは逃げるゼットン星人を追い詰めると、しばしの生身バトルの後、 銃撃をウルトラカードバリアで反射して勝利。光の力、時間外労働です。
 「おまえはどうやら、あの女の事を放っておけないらしい。ずっと、観察していた。あの女、いったい何が特別なんだ?」
 「居るべきじゃない所で居合わせる。不注意の固まりみたいな女ってだけだ」
 そんな事言うから、その場に来てしまうSSPの面々(笑)
 ここで、あくまでガイを倒して名を挙げる事だけが目的だったというゼットン星人の、
 「お前達はまだ、この腐りかけた星に侵略する価値があると思ってるのか?」
 というのは、悪の宇宙人=侵略者、というフォーマットを崩してきた上で、視聴者にその意味を問いかけてきて面白かったです。 面白かっただけに、反論するキャップの青年の主張フェイズは余計だったような(しかも相手は既に泡)。
 先輩達の残業拒否無しで怪獣を倒し、生身バトルを挟んで長めのエピローグ、というやや変則構成で、 ナオミとジェッタが女子力をアピール。ガイが拾ってきた人形もSSPのフォローで無事に持ち主に届き、 SSP全体の好感度を上げてきたのは良かったと思います。
 ナオミが作ったスープの味に懐かしさを覚えたガイは、おもむろにマトリョーシカを開けはじめ、
 「それは、あなたと同じね。幾つもの別のあなたが、あなたの中に隠れてる感じ」
 「最後の一つを開けてみれば……結局、空っぽだってわかる」
 「最後の一つは、開けちゃ駄目なんだって。パンドラの箱みたいでしょ」
 と思わせぶりなやり取り。そこはかとなくロシア風味が強調されるのですが…………あれ、もしかしてこの世界、 ツングースカ大爆発の真相はオーブとゼットンの戦いの痕跡だった! みたいな感じ?? という事は、 オーブが失った力が別の世界で××××になったの?!
 与太はさておき、前回気にした今作世界における「宇宙人」の扱いですが、 SSPの面々は平然と受け入れ、「悪い宇宙人」=「侵略者」とすぐ結びつけていたので、宇宙人も怪獣も、 既存の《ウルトラ》シリーズの延長線上の認識、という事で良い模様(過去シリーズも、作品によって差異はあるでしょうが)。 とすると、第1話において今作オリジナルの形で「魔王獣」を見せようとしていた演出が少々浮くのですが、あれは、 新作としての演出、として納得しておくべきなのか。
 まあそもそも、主人公が先輩ウルトラマン達の力を借りて戦っているわけではあるのですが、それはそれとして、 怪獣とか宇宙人とかを今作なりに定義しながら物語を転がしてくれるような事にちょっぴり期待していたので、そこは残念。 ただエピソードとしては、今作の緩い雰囲気が良い方向に転がって、面白かったです。
 細かく面白かった小ネタとしては他に、
 ・事務所に貼られた「サラ金は犯罪です」の注意書き
 ・ジェッタ作「20年後の自分へのビデオレター」Vol.4

◆第6話「入らずの森」◆ (監督:アベユーイチ 脚本:中野貴雄)
 餌付けされた風来坊は、半裸で超くつろいでいた。
 すっかり駄目な無職だ!
 もともと自称・風来坊の割には特定地域に出現が偏りすぎていたわけですが、それとも土曜日以外は、日本海見つめたり、 富士の裾野でミカン食べていたりしたの?! 全国銭湯巡りしているのガイさん?!
 ビートルおじさんがUFOの写った写真をSSPに持ち込み、SSP+1は、 地元の住民から「入らずの森」と呼ばれている小さな森の調査に向かう事に……実はその地下には、 惑星侵略連合の秘密基地があったのだった!
 現段階の描写では、メフィラス星人をドンに、メトロン星人とナックル星人が所属している惑星侵略連合は、 前回ゼットン星人が「この星に侵略する価値などない」と言い残した事もあり、古いシノギにこだわるマフィア組織、といった雰囲気。
 そんな連合にジャグラーが接触し、OPで手にしていた日本刀捌きを披露。一緒にカードゲームに興じていた所にSSP+1の侵入が検知され、 幻覚によって森に閉じ込められたSSP+1に迫るナックル星人……と、一度入ったら戻ってこられない森の理由付け。だが4人は、 白い服の女性に導かれるようにして森の脱出に成功し、響き渡るハーモニカの音色が侵略宇宙人の脳髄をかき乱す!
 「おまえは誰だ?!」
 「クレナイ・ガイ! キャッチボール友達を殺した奴を捜しまわっている男さ」
 ……じゃなくて、
 「おまえみたいな下衆野郎に、名乗る名前は持っちゃいねぇ!」
 3方向ズームインで登場した風来坊は素手でナックル星人の銃撃を弾き落とすと、しばらく生身バトル。
 今作、割と人間状態でのバトルを入れてくるのですが(長らくきちっとシリーズ作品を見ていないので、 他のシリーズ作品と比較して多いのかどうかは不明)、出来の方は今のところ微妙。銃撃を素手ではたくなど、 ガイの超人的身体能力をさらっと盛り込むのは格好良いのですが、打撃戦になると、ガイの攻撃が当たってないのが割と露骨だったり、 全体的にちょっともっさりしてしまうので、今後の改善を期待したい部分です。
 ジャグラーが召喚した超獣アリブンタさんは、オーブ嵐がキャンペーン中のランスで撃破(バーンマイト割と好きなんですが、 消火要員で終了)。
 「本来の力を失ったオーブは、ウルトラマンの能力を宿したカードを2枚使って変身しています。奴より強力な手札を持てば良いのです。 ……では皆様、今宵はこれにて」
 「最後に笑うのは……切り札を、持つ者だ。この宇宙には、光と闇のカードが巡っている。 ジャグラーは強力な魔王獣カードを6枚持っている。奴からそれを頂戴するのだ」
 「……さぁて、最後に笑うのは誰かな」
 互いの腹を探り合う、ジャグラーと惑星侵略連合。地球の、そしてオーブの運命や如何に?!  森に祀られていた玉響比売命の思念とガイが視線をかわすなど1−4話にあった伝奇要素も拾い、 19世紀の写真にガイと瓜二つの男が見つかるなど、色々と今後への布石回。
 惑星侵略連合は、アナクロな侵略行為にこだわる時代遅れの組織(宇宙人)を戯画的に描いている様にも見えるのですが、 昨今のシリーズ作品に触れていないので、どこまで皮肉として捉えていいのか掴みきれない所あり。その辺りの感覚的ギャップを含めて、 メトロン星人が「喫煙者が減っていて幻覚タバコ作戦が進行しない」と報告するメタネタや、 侵略者である宇宙人が再開発の波にさらされてアジトの存続危機に陥っている、というギャグなどがあまり面白いと感じられず、 ノリきれないエピソードでした。

◆第7話「霧の中の明日」◆ (監督:市野龍一 脚本:小林雄次)
 袋とじの中身が気になるお年頃の風来坊、“ラムネのお兄さん”を自称。
 ……あれ? 今年(2016年)はどうも、東映特撮に残念成分が足りていないなぁと思っていたのですが……ここに集まっていたのか!!
 「明日は見えても、明日を変える事なんて出来ない」
 怪獣の予知夢を見る少女・ハルカに興味を持って接触するSSP。ハルカの予知夢によって正体を見破られてしまったガイは開き直って協力を求め、 どさくさ紛れに「俺はかつての戦いで大切な人を守り切れなかった際に本来の力と姿を失い、 現在は先輩の力を借りて戦っている」と自分の基本設定を説明。
 明日を知っても変える事の出来ないというハルカの諦念が、巨大なマイナスエネルギーとなって怪獣を生み出すに至るが、 「過去を変える事はできないが未来は変える事ができる」というガイの言葉に希望を得たハルカの想いが怪獣の力を弱め、 オーブは勝利するのであった……と、テーマ的には可も無く不可も無くという出来で、 最終的には「明日を捜せ」(『ウルトラセブン』)のオマージュ的な台詞で着地。 ……この手のオマージュネタは他にも色々と仕込まれていそうですが。
 エピソード単独でどうこうというより、前回今回と、3フォームとランスまで出して一段落した所で、 諸設定の掘り下げとキャラクターの好感度付け期間、といった印象。あやふやな情報提供を無視せずにしっかりと現地に待機し、 避難誘導をこなしていたビートルおじさん、割と有能(ただの閑職という可能性もありますが、 それにしては以前にミサイル撃たせてましたし……)。メガネの未来予測装置を一発ネタで捨てないで引っ張ってきたのは驚きましたが、 後々本筋に絡んでくるのか、これ……?(^^;
 もう少しエピソード自体の面白さが欲しかった所ではありますが、そんな今作で地味に良いなぁと思うのは、 SSPのメンバー(特に男衆)が、命を助けられた事もあるからだろうとはいえ、ガイの事を「ガイさん」「ガイさん」 と何となく兄貴分として慕っている事。これないとガイさん、ただのアレな人ですからね!
 第5話の台詞によると、キャップの中の「風来坊」のイメージ、「逃げるのが得意な人」=「責任を取らない人」みたいですし!
 この辺りはガイの過去絡みの伏線を兼ねているのでしょうが、多分、ぐっさぐっさ刺さってる。
 刺さっているのでついつい、正体を知った年下の女の子に愚痴り加減。
 世間の視線は風来坊に厳しいが、闘えウルトラマンオーブ!

→〔その2へ続く〕

(2017年2月16日)

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