■『ウルトラマンG』感想まとめ1■


“地球の輝き守るため
光の子供の 君が来た”


 ブログ「ものかきの繰り言」の方に連載していた『ウルトラマンG』 感想の、まとめ1(1話〜6話)です。文体の統一や、誤字脱字の修正など、若干の改稿をしています。

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◆第1話「銀色の巨人(signs of life)」◆
 人類の火星調査隊によって火星の荒野で目撃される超巨大生物――その名を、ゴーデス。
 剥き出しの脳めいた頭部に芋虫のような胴体というグロテスクなデザインは知っていましたが、 改めて今見るとクトゥルフ神話感もあるというか(脚本陣に小中千昭さんが入っているバイアスがあるかもですが)、 火星で古代の遺物らしき彫像を拾う → 謎の超存在を目撃(?) → 宇宙船が壊れて帰還不能に → 夢うつつの中で火星の荒野を彷徨う → 先史文明?の遺跡に迷い込む……とかだと、まんまラヴクラフトめきますが、古典タコ型火星人のアレンジとしても面白いデザイン。
 ゴーデス、そしてゴーデスと戦う人型の銀色の巨人の映像を収めて地球へ帰還しようとする調査隊だが、銀色の巨人は触手にはたき倒され、 ゴーデスの攻撃により宇宙船は木っ葉微塵。
 立ち直った巨人が攻撃を再開してゴーデスを撃破し、自らは後に残って同僚を脱出させるつもりが、 逆に火星の荒野で一人生き残ってしまった調査隊メンバー――ジャック・シンドーはこの未知なる存在と見つめ合い……一方、 地球を怪しげな緑の光が覆い、それこそがゴーデス来襲の前触れだったのである!
 今作は、日本・オーストラリアの共同制作で、今回の公式配信は字幕版なのですが、ナレーションさんが、 がつがつと固有名詞を説明してくれてわかりやすい(笑)
 ナレーション「これから始まる事を知る者が地球上に1人だけいた」
 「また会えるな、ゴーデス」
 ゴーデスが火星で爆発したのに次いで、地球に降り注いだ緑の光の正体は、寄生した有機体を操る宇宙細菌。 その影響により地球では様々な異変が起こり始め、遂には二つ頭の巨大怪獣が出現。
 防衛隊ポジションらしきユーマの戦闘機が出撃し、しじゅう軽口を叩いていないと気が済まないのが、海外ドラマ的であります(笑)
 怪獣の攻撃により不時着したヒロイン・ジーンを助けたのは、火星に取り残された筈のジャック。怪獣の生態を説明して夜を待つように助言するジャックだが、 市民を守ろうとするジーンはそれに頷かず、ジーンが気を失った後に、ジャックは銀色の巨人へと姿を変える!(映像表現的に、 ジャックそのものが巨大化しているのか、宇宙空間から銀色の巨人が憑依しているのか微妙)
 「何者です」
 「……“ウルトラマン”と呼んでた」
 基地から指示を出すユーマ指揮官(たたき上げの軍人感溢れる風貌)が、現場の隊員とは別口の情報を持っているらしく、 怪獣や巨人について一定の認識をしつつ攻撃を指示するのですが、字幕の情報量の問題なのか、今後の布石なのか、 情報の錯綜が若干わかりにくい事に。
 「ウルトラマン」の名称は火星からジャックがもたらした情報らしいのですが、火星調査隊のデータがどうやって伝わったのか、 ハッキリしないですし(宇宙船の破壊前に一部のデータがリアルタイムで地球に送信され、上層部が隠蔽した、という事なのかもですが)。
 あまり字幕の作品を見慣れていないので、私の脳が情報の処理を巧く出来ていない部分もあるとは思いますが、 とはいえ最近見た古い字幕の映画は特に混乱せずに見られたので、字幕と映像がちょっと独特の間合いになっているような印象あり。
 ジャックの変身した銀色の巨人――ウルトラマンは、火星に続けて怪獣の触手にぺちぺちはたかれ、 ガス攻撃に苦しみながらも両の拳を突き出して放つ必殺光線で逆転勝利し、怪獣は消滅。
 火星のゴーデス戦に続き、必殺光線を連続で二回叩き込むのが独特ですが、これはつまり「銃爪は必ず、二度引け」 「脳幹に二発」的な、光の国のウルトラ射殺マニュアルに基づく、 標的を確実に仕留めるスタイルでありましょうか。
 ナレーション「ジャック・シンドーは火星から帰ってきた。だが、その生還は謎に包まれている。彼は誰にも告げられない。 自分こそがゴーデスと戦うウルトラマングレートなのだと」
 アニメ『デビルマン』みたいな事を言い出し、バイクで走るジャックの姿で、つづく。
 字幕版の間合いが掴み辛かったのも含めて、大興奮で引き込まれるといったほどの第1話ではなかったですが、 脚本担当の會川さんが「代表作の一つ」と述べているなど前々から興味のあった作品なので、 誰も知らない知られちゃいけないジャック・シンドーの戦いを見ていきたいと思います。

◆第2話「凍てついた龍(the hibernator)」◆
 ナレーション「地球の危機だ。ゴーデスの細胞が大気圏上空に広がり――気象を変化させたのだ。ゆっくりと地球は温暖化する。 北極と南極の氷は溶け落ち、太古の秘密がベールを脱ぐ」
 現実の環境問題と絡めつつ、ゴーデス細胞の地球環境への影響と、それによる新たな怪獣出現の可能性を示し…… そもそもこの状況を招いたのは、ゴーデスの強大さゆえなのか、或いは、グレートさんの大やらかしなのか (なんか気持ち良く爆散させていたし……)。
 ジャックがユーマメンバーの前に姿を見せ、火星からどうやって地球に戻ったかは記憶に無いと主張。 ユーマメンバーがわかりやすいく定番的な造形と配置になっている&初登場が宇宙服姿だった為に、 第1話では一番キャラが薄くて物語を引っ張る力が弱い面があったのですが、ようやく主人公らしい感じでフォーカス。
 「奴らは人類を滅ぼす気です」
 ゴーデス細胞は生物の遺伝子どころか大気の分子にまで影響を与え、地球環境を都合のいいように変質させるつもりだとジャックは指摘し、 ゴーデス細胞についてや、火星での戦いの映像など、情報の共有ラインが確認されて、だいぶスッキリ。
 ジャック(ウルトラマン)、ユーマ、情報部……地球を襲う異変を巡り様々な思惑が交錯する中、 謎の男の暗躍により氷漬けで仮死状態だった古代の恐竜が目覚め、ゴーデス細胞の影響により、氷のブレスを吐き回って大暴れ。
 第1話でのジャックの指摘通り、夜になると怪獣は活動を停止し、火星で何があったかはよくわからないけど僕はゴーデス細胞に詳しいんだ、 と現場に出没しては好きな勝手なコメントを残して去って行く、現状120%胡散臭いジャックは、 バイクで走りながら、グレートさんと交信。
 「僕は弱虫扱いだぜ」
 「我々には使命がある」
 「それは君の使命だろ」
 「我が一族はゴーデスと戦うか宇宙を去るか、しかなかった」
 「戦う前に、人間でいたい」
 「いつもは人間だろ」
 「人間より、あの恐竜を身近に感じる時がある」
 「uh...」
 おい(笑)
 グレートさんへの不信感が急上昇する中、グレートの宿主としてのジャックが「ウルトラ細胞に寄生されているようなものかもしれない」 と取れるような発言をこぼすのは、面白いニュアンス。
 夜が明けて、ジャックはユーマ戦闘機をジャックすると怪獣を引きつけて飛び回るが、 炎上する化学工場を目にして同僚を失ったトラウマに襲われると操縦を誤り、グレートさんに変身。
 四つ足の首長怪獣との戦闘はなかなか面白く、頭突きを食らって思い切り吹き飛ぶグレートの図は迫力満点。
 有毒ガスタンクの破壊を阻止しようとするグレートは、冷凍ガスを吹き付けられるとそれを反射してギガサウルスを再び凍らせる事に成功し、 なんとなく、ゴーデス細胞に操られているだけの地球の生き物は殺さない路線で、つづく。
 ジャックへのフォーカス、各種情報の共有、怪獣の造形の面白さ、と第1話に比べると話に入りやすく、ぐっと面白かったです。
 一方で、字幕の文字数制限もあってか全体的に台詞が切り詰められており断片的な会話が多い為、 かなり話の行間を読まないといけないのですが、文化・文脈の違いで感情表現が把握しづらく、例えば、 「含みを持った言い回し」なのか「ストレートに厭味」なのか「ただの軽口」なのか、判断が付きにくいのが、なかなか厄介(その分、 ナレーションさんは立て板に水の勢いでガンガン説明してくるのですが)。

◆第3話「魅入られた少年(the cild's dream)」◆
 ペットのトカゲを建設現場で失ってしまった少年が拾った、怪しげな緑の結晶体。キムは知己である少年を気遣い、 ゴーデスの気配を感じたジャックも少年を励ますが、結晶体を通してゴーデスに操られた少年により、 トカゲムササビ怪獣が出現して街を焼き払う……!
 ナレーションが大変ざくざくと状況を説明していく一方、詰め込んだ諸々の要素が軒並み飛び飛びに展開して 30分ぐらいカットされていないかという勢いで目まぐるしく話が進み、 一人だけ超訳知りのジャックに皆が振り回されている感が加速して視聴者を困惑させるが、 ユーマメンバーは個々人でなんとなく納得して整理をつけてしまう、(まだ3話ですが) ここまでの『グレート』の悪いところを煮出したようなエピソード。
 グレートが怪獣の光線攻撃を、素手でがしがし弾く映像は格好良かったですが。
 ゴーデス細胞に取り込まれた少年は、キムの説得とジャックの説得のどちらが心に響いたのか、 そもそも両者の説得の発揮する効果にこれといって裏付けのないままゴーデスの邪念に打ち克ち、 グレートは怪獣の火炎を吸い込んで逆に投げつける事で怪獣をゴーデスの支配から解放し、空を自由に飛び回るトカゲムササビの背には、 少年の姿が……。
 少年を友人として救おうとしていた筈のキムが「不思議な子だったわ」と過去形で語り、 怪獣と少年が空の彼方に消え去るのをなんか感動的に見送って終わったのですが、えええ……。

◆第4話「デガンジャの風(the storm hunter)」◆
 荒野で銃を乱射する密猟者・謎の石積み・そして迫り来る竜巻に呑み込まれる車と、それを撮影したビデオテープ…… という実に如何にもな導入で、竜巻にひっくり返された車の上に、サブタイトルが出るのが格好いい。
 被害者の友人から問題のビデオテープを持ち込まれたユーマは調査に乗り出し、ジャックとロイドが現地へ向かう事に。
 「あいつはイカれてます。あの身なりで紳士きどりだ」
 ロイドのジャック評が、きつい(笑)
 現地で合流したロイドの友人は、竜巻の正体は、風の神の使い・デガンジャであると主張。
 「人を守る事を最優先に考えねば」
 「それほど単純じゃない。人間も大地の一部だ」
 人間文明と自然の衝突、この地球でどうやって生きていくのか、そこに地球外の悪意――ゴーデスの干渉を危惧するジャック。
 「ぼくらの敵は同じだと思う」
 は、ゴーデスという「敵」の位置づけを明確にして、良い台詞でした。
 「奴はモンスターだ」
 「自然界には、侵してはならない境界があるんだ」
 「何者か分かってるのか?!」
 「分かってないのは君のほうだ」
 ロイドと友人はデガンジャへの対処法で揉め、宇宙人やUFOの研究機関に所属している割には、 古代の壁画が飾られた遺跡まとめてぶっ壊してしまえと言い出すロイド、凄く、雑。
 この後、隙あらば撃ちたがるチャーリーが余計なトラブルを巻き起こすのですが、市街地上空でカジュアルに戦闘機乗り回せる権限と、 武装に対する自制心の欠如が不安なほどに噛み合っていなくて、ユーマの面々はどうしてそんなに、 前のめりの戦闘集団なのか(笑)
 (この辺り、ちょっと派手なオレンジ色の制服とか着ていた方が、とりあえず撃ってみる、 事に劇中での整合性が強くなるのはフィクションのマジックであり)
 部族の習わしに従ってロイド友人は病んだデガンジャを止めようとする儀式を始めるが、チャーリーの横槍によって失敗。 毛むくじゃらの巨大な怪物として姿を見せたデガンジャに、物陰でこっそり変身したグレートが立ち向かい、いつの間にか、 今のデガンジャは邪悪な魂の影響下にあるから物理で解決していいぞ、という事になっているのが凄く『G』ですが、 前回よりは飛ばされたページ数が少ないので、(エピソード全体の構造が明確な事もあって)まだついていけます。
 グレートはデガンジャと激しく指ビームを撃ち合った末、途中ちょっと酸欠っぽくなるが、腹式呼吸バースト一気の三連打で勝利。 これにより自然のバランスが戻って荒野に雨期が訪れ、ジャックたち3人はなんか意気投合して、めでたしめでたしで解決。
 「いつの間にかロイドの友人と合流する事になっている」「ロイドの友人はこの問題に詳しい」 「詳しいのはそういう部族の末裔だからです!」などなど、とにかく、〔状況Bをスムーズに見せる為の前振りや説明〕 が至るところで抜け落ち、〔BってことはAって事だったんですよ!〕が後から後から積み重なっていく『G(字幕版)』作劇ですが ……そういうものである事を前提にすると、テーマ性と対立要素がハッキリしていて、今回は割と面白かったです。
 まあ、テーマはテーマとして、最終的にウルトラマンと殴り合いに持ち込まなくてはいけない部分に関しては、 現地スタッフもちょっと戸惑ったのではこれ……? という感じが出ており、なし崩しで、ひゃっほーい、 みたいなオチにしてお茶を濁しましたが。

◆第5話「悪夢からの使い(blast from the past)」◆
 前回は搦め手だったので、今回は最初から怪獣バトルだ、と市街地に赤いガスを撒き散らす四つ足の怪獣が出現し、ユーマは急行。 退却を進言しながらこっそり変身しようとしたジャックは、ユーマとは別に怪獣に攻撃を浴びせる男の姿を目撃する……その男は、 火星で散った筈のスタンレー!
 ここでサブタイトルが入るのが、今回も格好いい。
 地球に散らばったゴーデス細胞を集めていると推測される赤い怪獣は、スタンレーからの射撃により姿を消し、 ひとまずユーマに連れて行かれるスタンレー。
 隊長は節操なくスタンレーをスカウトしようとし、ジャックはジーンに色目を使うスタンレーに不審を抱くが、 胡散臭さに関しては五十歩百歩。
 「奴に与えられた人生か」
 「我々は、やがて永遠なる者の一部となる」
 握手をかわした2人は脳内で交信し、スタンレーの中にゴーデスの気配を感じるジャックだが、 貴重な話し相手であるジーンにさえ「皆おまえみたいに根性太くないから人が変わったようになるのは当たり前」扱いを受け、 “大人の組織”に「妙に訳知り」だが「隠し事が多い」奴が一人居たらそれは信用されないよね…… という点を大前提として描いてくるのは今作の特徴といえますが、新たな《ウルトラ》をやるにあたって意識した点でもありそうでしょうか。
 赤い霧の怪獣がユーマ基地の至近に再出現し、陸戦でそれに立ち向かおうとするユーマ。
 「隊長、危ない!」
 「動くな。私の出番が来たようだ」
 勢いだけは格好いい隊長は拳銃一丁で怪獣の前へと進み出る。
 「基地が欲しいならまず私を倒せ」
 ……まあ、隊長は元より軍属の雰囲気はありますが、どうしてそんなに前のめり。
 ロイドとチャーリーもそれに続いて拳銃を構えるが、怪獣は幻のように姿を消してしまい……その間に本性を現したスタンレーは、 基地の技師を射殺するとゴーデス探知機のデータを破壊。それを止めようとするジャックが銃をスタンレーに向けたところでメンバーが基地に帰還し、 ハッキリ言って、どちらも怪しいので両方とも監禁だ!!
 ところがスタンレーは、赤い霧となってあっさりと独房を脱出。
 「ぼくも君も同じホモサピエンスだ。思い出せ」
 「いや、進化するのに忙しすぎる」
 ゴーデスの使者を名乗り、ゴーデスとの一体化による進化をうそぶくスタンレーの物言いは格好良く、 牢屋越しの二人の対話はGとゴーデスの代理闘争としてなかなか面白いのですが……どうも今作、字幕の出し方が、下手。 当初は、私があまり字幕作品に慣れていない為かと思ったのですが、第5話までを見た結論としては、技術的に少々問題がある気がします。
 例えばこのシーンでは、「ぼくも君も同じホモサピエンスだ」(格子越しのジャック正面)→「思い出せ」(独房内部から、 ジャック後頭部と格子越しのスタンレー)とカットの切り替えに合わせて字幕が分けられているのですが、 「思い出せ」の部分では、画面上で誰の口元も動いていない(格子でスタンレーの口元が見えない)為、 誰の台詞だかさっぱりわからない事に。
 ここはわかりにくさが非常に明確なシーンですが、そんな調子で1話25分程度の中で各話数回は「誰の台詞だかわからない (わかりにくい)字幕」がある為に話の掴みづらい状況がしばしばあり、日本語版は吹き替え前提だったのかもしれませんが、正直、 字幕のクオリティは低いと思わざるを得ません(ただ、30年前の作品なので、 当時の一般的な洋画の字幕もこんなものだった可能性はゼロではないですが)。
 加えてこのシーンの場合は、どういうわけか独房の格子がジャックとスタンリーの鼻から下を丁度隠す画面構成になっており、 字幕の問題を抜きにしても、舌戦としての絵が微妙に間抜けになって、演出も良くない。
 「君が進んでる道は我々を死に導く」
 「争うな。勝つのは彼だ」
 一方、スタンレーが怪獣を撃退した兵器がただのハリボテだった事をジーンが暴き、ジャックが正しかった事が明らかになるが、 スタンレーはチャーリーが解析中だったGペンダントを奪うと更にジーンをさらい、ジープで基地を脱出。
 「ゴーデス様と永遠に生きる」
 人間を捨てたスタンレーは赤い怪獣と化し、ジャックはゴーデス溜まりの穴に落ちかける(落ちた?) ジーンそっちのけでグレートに変身。ユーマによる支援攻撃が描かれ、なんとか怪獣を撃破するグレートだが、 ジーンはゴーデス細胞に感染してしまい、地中ではゴーデス細胞が集結していく急展開でつづく。

◆第6話「悪夢との決着(the showdown)」◆
 ユーマ隊長、衝撃の一言。
 「好戦的な軍人どもには任せられん」
 え……ど、どういう自己認識なのですか隊長……それとも、オーストラリアではユーマ程度は、弱腰の平和主義とみなされるのか。
 隊員は学者・研究者・技術者寄りの雰囲気なのに、戦闘機を乗り回して怪獣退治の最前線でミサイル撃ちまくってきたユーマの性質を明確にしようという意識だったのか、 攻撃よりも「分析」を重視しようとするユーマに対して、本部に乗り込んできて「撃て、撃て、どんどん撃て!」 と大騒ぎする将軍が出てきて対比されるのですが、ユーマが基本前のめりなのと、将軍の描写があまりにも雑なので、 あまり面白く機能せず。
 当時のオーストラリア人スタッフからすると、このぐらいが記号的表現の範疇だったのかもですが。 目を剥いてがなり立てて「攻撃だ!」「銃殺だ!」と大騒ぎする無能な軍人、の挿入はあまりに強引すぎました。
 ゴーデス細胞に感染したジーンは生死の境を彷徨い、ジャックにアドバイスを求められたグレートさんが、 「精神力でなんとかなるかもしれないし、ならないかもしれない」となんか適当なコメントをつける一方、 他者の恐怖を活力源とするゴーデスは地中で成長を続け、その影響によって生み出される巨大火山。
 ゴーデスへの対応が生ぬるい、とユーマの姿勢を批判する将軍がどこからともかくしゃしゃり出てきて指揮権を奪うが、 隊長はユーマ憲章に基づいて基地機能を停止してこれに対抗し、組織の政治的側面が描かれるのですが、 そもそもユーマの立ち位置が割とフリーダムなので、あまりリアリティを引き上げたり世界観を広げる事の面白さには繋がらずじまい。
 いっけん将軍の言う事を聞いて「俺はミサイルが撃ちたいです」と出撃していったチャーリーが実は時間稼ぎ、 というのも最初から茶番めいてしまったというか、どうして指揮権奪ったところの要員をそのまま出撃させるの将軍…… みたいな事になってしまいましたし。
 ジャックは、将軍の指示で生命時装置を外されそうになったジーンを救出して基地を逃亡し、 ようやく投入された空軍がゴーデス山を爆撃するが、それはゴーデスの孵化を早めるばかりで、遂に出現するマグマゴーデスの、 サブタイトル通りの悪夢的風貌は迫力満点。
 それを見たジャックはグレートへと変身し、横からのカットで、ゴーデスの芋虫のような長い下半身が見せつけられるのはインパクトがあり、 ゴーデスのデザインは実に秀逸です。
 光線技を打ち合うもゴーデスの体内に吸い込まれたグレートは、これまで戦ってきた怪獣の幻影に苦しめられるが、 その間にジャックがゴーデスの精神と接触。
 「おまえは、どんな星へ行っても――食い尽くす事しか知らない」
 地球人の得意とする《挑発》スキルがクリティカルヒットし、怒りに我を忘れたゴーデスの隙を突いて勝機を見出した (幻覚攻撃が止まった?)グレートが、ゴーデスを内部から突き破って大爆破。
 この辺り『80』ばりにナレーションで全て片付けていくのですが、 ゴーデス体内で巨大化したグレートが何事も無かったかのように垂直に飛び上がっていく姿は、変な面白さが生まれました。
 そしてジーンもなんか助かり、なんか勝ったよ!
 ……横暴な権力(軍部)に知略とチームワークでユーマが一杯食わせる成り行きを日豪どちらで入れたがったのかはわかりませんが、 ユーマと軍のいざこざよりも、ジーンとゴーデスの精神世界での攻防や、知略とチームワークでゴーデスに立ち向かうユーマ、 の方に尺を採って欲しかったというのが正直な内容。
 基本、ジャックに主導権を握らせると「撃ってはいけない」「退却しよう」ばかりになるので、 話を転がすために物分かりの悪い乱暴な横槍が必要になってしまうのは、今作ここまでの難しいところだなと。

→〔その2へ続く〕

(2020年12月24日)

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