■『ウルトラマンジード』感想まとめ5■


“宿命を塗り替える事が使命
GEED... 絆を繋げて”


 ブログ「ものかきの繰り言」の方に連載していた『ウルトラマンジード』 感想の、まとめ5(21話〜25話)です。文体の統一や、誤字脱字の修正など、若干の改稿をしています。

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〔まとめ1〕 ・ 〔まとめ2〕 ・ 〔まとめ3〕  ・ 〔まとめ4〕


◆第21話「ペガ、家出する」◆ (監督:冨田卓 脚本:森江美咲)
 リクがいそいそと『ドンシャイン』コレクションの虫干しと鑑賞をしていたところ、地震で驚いたペガが超レアグッズを破壊してしまい、 「臆病者!」「おこちゃま!」「意地悪?!」と、器の小さい男同士のなじり合いが白熱、
 「貴方は、自分探しを終えました。でも、成長していません。とても、残念です」
 結果、売り言葉に買い言葉の末にペガが家出を敢行してしまう。
 ペガの家出劇とそれに対して強がるリク、というのを軸にして、ぎっくり腰を発症したレイトさん、海で起こる謎のしびれ現象、 巨大怪獣の出現、などの事象を合間合間に挟み込み、クライマックスでそれが一つに集約される、という今作では珍しい構成。 ずっと一緒だったリクとペガの日常性を強調しながら、ラストで怪獣バトルに持ち込むアプローチとしては、面白かったと思います。
 なお冒頭の騒ぎの最中に、レムから星雲荘はもともと宇宙船である、と言及され、 先日のマイベッド事件で浮上した疑念が裏付けられました。
 街に飛び出したペガはダークゾーンから弁当の購入には成功するも(代金を支払っていて安心しました)、 リサイクルショップで姿を見とがめられて慌てて逃げ出し、いつの間にか、6年前、13歳のリクと出会った場所に辿り着く。
 宇宙人をまるで恐れず親身に食事をわけてくれたリクに、親から「宇宙で旅して、大人の男になれ」 と送り出されるもカプセルが壊れて地球を彷徨っていたという事情を説明するペガ。 「自分の居場所」を見つけられずに居たリクはその素性に共感し、家の場所がわからない同士として、ドンシャインを布教。
 「じゃあ、コンビ組もう!」
 「コンビ?」
 「一緒に、世界の平和を守るんだ」
 かくしてペガは、リクの影の中を仮の住まいとする……
 (ペガにとって、この時のリクはドンシャインだった。ひとりぼっちの僕を、助けてくれたヒーロー)
 かつてドンシャインに笑顔を貰ったひとりぼっちのリクは、ひとりぼっちのペガに手を差し伸べる事で、 知らず誰かのヒーローになっていたのだった。
 決してウルトラマンにならなくとも、その気持ちが誰かのヒーローになれる、というテーマを、ドンシャインの延長線上として、 リクとペガの出会いに絡めてもう一度描いてきたのは、正攻法で良かったです。
 「リクに、会いたいなぁ……」
 一方、ライハから冷たい視線を浴びながらも強がるリクは、バイトに行く途中でバッタリ出会ったモアに、浮かない様子を心配される。 ペガが家出した、という事情をライハに聞かされたモアは、ペガこそリクが打ち解け、感情をぶつけられる存在であり、 離れた寂しさが顔に出るその姿に、納得と共に一安心。かつてのリクが他人行儀でありながらどこか寂しげだったのを、 「世界」に向き合わせてくれたのは影の中のペガだったのではないか、と語る。
 「それがね、いつからか、普通に会話するようになって。今思えば、ペガが、いつもリクくんの側に居てくれたからかもね」
 浮かない様子を一瞬で察知して心を配った上で、決して自分の存在をアピールする事なく過去から現在への理解を示し、 さりげなくボディータッチまでつけるモアが、ぐいぐいと攻めてきます!
 ライハもライハで、大人げない男達をやれやれと見守りつつ間を取り持とうとするのですが、今もって、 ライハのリクに対する保護者目線がどこから来ているのか、という説得力が薄いのがライハの、そして今作の本当に勿体ないところ。 思春期のトラウマから復讐に凝り固まり、どちらかというと周囲に気を配る余裕が無さそうな育ちなのに、 話の都合でやたらと気を遣うキャラ(本質的に、そういう性格、と言い抜けは可能ではありますが)にしてしまったのが、 ズルズルとダメージとして残る事に。ベタもベタですが、いっそライハは、両親と一緒に弟も死亡していた、 とでもしてしまえばもう少し納得度が上がったのですけど。
 「大切な人を、簡単になくしていいの?」
 「ジーッとしてても、ドーにもならないでしょ?」
 走り出したリクを見送ってモアとライハは身長差タッチを交わし、この2人の友好度も上昇しているのですが、だいぶ強引(^^;  ライハがもう少しきちっと掘り下げで出来ていれば、この2人の距離感が縮む過程もきっちり描けたと思うのですが、 他の歯車が噛み合っているだけに、つくづく勿体ない。
 その頃、星雲荘に帰ってリクに謝る事を決意するペガだったが、地震と共に地面を割って巨大な四つ足の深海怪獣が姿を現す。
 (ペガ、僕は、僕たちは……)
 ペガを探して出会いの場所に辿り着いたリクは、怪獣がばらまく金色の粒子を浴びて麻痺してしまい、 踏まれそうになっていたペガを横っ飛びで救出。影のヒロインの危機にEXヒーローアクションが発動しましたが、 モアでも発動するのかちょっぴり心配になります!
 「どうしてここがわかったの?!」
 「わかるよ。だって僕たち……昔からずっと一緒の、コンビだろ?」
 だいぶ探したけどな!
 「わかるよ」の所でリクがちらっと目線を下に逸らすのは、多少気まずかったのでしょうか(笑)
 ペガとリクは怪獣のおかしな様子に気付き、マヒ粒子は怪獣に発現したリトルスターの作用である、とレムが解説。
 「本来は、深海に棲む怪獣の筈です」
 「海に居る怪獣が、どうしてここに?」
 「助けてほしくて、陸に上がってきたのかも」
 以前のおもむろなもう帰りたい光線のように、今作の世界観では、“野生の怪獣”は人類を脅かす災害というよりも、 この地球に住まう生命の一種として尊重すべき、という扱いのようですが(とはいえ怪獣不在だったこの世界の人類に区別をつける方法は無い筈なので、 その辺りは悪い意味でシリーズの蓄積を前提にしてしまっているのですが)、その中でも前作に続いてグビラ登場、 というチョイスを上手く活かした台詞。
 話の扱いとしては主題に関わらない存在なので、かつて誰かに助けを求めたペガと、リクと陸をかけたこの台詞が先にありきで、 水棲怪獣の中から着ぐるみを用意しやすいものを選んだのかもですが。
 「これ以上リトルスターを渡すわけにはいかない!」
 そこへ突然、地下から現れるKゼッットーーーン。怪獣もろともリトルスターを葬り去ろうとKゼットンはグビラを踏みつけ、 それを止める為にジードは変身。激しいビーム攻撃を受けてモミアゲマスターになるジードだが、 前回収集したデータを活用したKゼットンに次々と必殺攻撃をかわされ、カラータイマーが鳴る初の大ピンチ。
 「はっはっははは、子供の遊びもこれまでだぁ! ぬぁぁぁぁーー!!」
 ゼロ(レイト)もぎっくり腰(違う)で参戦不能、絶体絶命の窮地に追い詰められたその時、散々踏まれたお返しとばかり、 背後からグビラがマヒ粒子を浴びせかけ、動けなくなったKゼットンを、満を持して使用したエース先輩の必殺居合い斬りで一刀両断。
 K先生、ど派手なエンドマーク(通算3回目)
 モミアゲマスターはグビラからリトルスターを回収し、一般市民から光の戦士の融合した器、宇宙人から巨大融合怪獣まで、 問答無用で行動不能に陥らせるこのえげつない能力は誰?! と思ったら、ゾフィー先輩でした!
 光の国は、宇宙の平和を守る為なら、敵性宇宙人に対して、科学兵器の使用も断行する。
 グビラは海へと帰っていき、互いに謝るリクとペガ。
 「リクの影……まだ、空いてる?」
 「……別に……他に、誰も、いれるつもり……ないし」
 実質プロポーズ(正直若干、やりすぎだとは思ってみたり)で2人は和解し……

 あれ、モア、大失策?!

 一歩引いた所から、いつでもあなたの本当の心を知った上で決して出しゃばらないいい女ポジションを獲得したつもりが、 最短距離から常に見つめている泥棒猫に物凄い勢いで全て持って行かれましたが、 家出中にリサイクル屋で見つけたレアグッズを買い直すのではなく、ペガに修理してもらって仲直り、というのは良かったです。
 ……それはそれとして、貴重なドンシャインのレアグッズは持つべき人間の所にあるのが正しい姿なので、 リクが後でこっそり買いに行き、ペガからは「友情の感動を返せ!」と詰め寄られ、ライハには「無駄遣いをするな!」 と刃を突きつけられる所までがきっとセット。
 「貴方は、自分探しを終えました。でも、成長していません。とても、残念です」
 そしてもう1人、自分探しを終えて悪夢の継承を目指す男は、雨に打たれ膝を付きながら、怪獣カプセルをかき集めてよろめいていた。
 「これでは駄目だ……。ダークルギエルと、エンペラー星人のカプセル……手に入れてやる。必ず……!」
 前々回−前回と余裕たっぷりだった割に、容赦ない落ちぶれ描写の突き刺さる最強のSF作家が、 宇宙Gメンに回収されてしまったレアグッズを求めて牙を剥く……で、つづく。
 ここまで触れられていなかったリクとペガの出会いが語られ、特別面白いというほどではありませんでしたが、 今作のテーマとキーワードを縦横に散りばめ、まとまりのいい一本でした。両者の出会いという一つのスタート(にして転機) を描いたという点も含めて、ここまでの『ジード』の復習、という内容でもあり、 最終章を前に良いストレッチ的なエピソードでもあったと思います。
 次回――生アクション祭でエンドマークだ?!

◆第22話「奪還」◆ (監督:武居正能 脚本:三浦有為子)
 前作に比べると、アバンのあらすじダイジェストの編集が面白い今作ですが、時系列を入れ替えて、
 「やっと運が向いてきたみたい」「私と一緒に来て」「貴方のこと守るから」
 のアリエさん3連発で締めたのが、凄くどす黒くて良かったです。
 どうも結局、隠れ家提供の申し出は断られていたらしい石刈アリエが仕事場近くで何者かの気配に振り向くと、そこに居たのはK先生。 K先生はアリエの頬に手を伸ばし……この姿を、仕事場の中に置いたカメラからロングで映しているのが良い演出で、 やはりあの仕事場の壁はサイコサスペンス。
 K先生はアリエを人質とし、人命が大事ならばダークルギエル&エンペラ星人のカプセルと交換、その引き渡し役は朝倉リク、 というメッセージを宇宙Gメンに送信。
 「今朝、AIB本部に届いた映像だ」
 真っ赤な背景で不穏かつ極悪非道なメッセージからカット切り替わると、事態に対してすっげー無表情な先輩、というのが面白く、 あくまでも偽装した宇宙人の器、というシャドー星人ゼナの異質感は、本当に良いアイデアでした。
 そして、リクらにも宇宙Gメンにもまるで関係ないのに人質になっているアリエについては、 K先生の事件を追っていたノンフィクションライターが巻き込まれたらしい、という形で説得力が与えられ、上手く繋がりました。
 人命保護を優先する宇宙Gメン(ここで、ジードの力を都合良く利用したいのではなく、 本来は巻き込みたくないというスタンスを見せているのが秀逸)からの協力要請をリクは承諾し、それを心配そうに見つめるモアは、 星雲荘を出た所でその不安を口にする。
 「リクくんを……一人で伏井出ケイに近付けるなんて、危険すぎます。これは、罠なんじゃないでしょうか! 伏井出ケイの狙いは、 カプセルじゃなくて、リクくんを襲うことかも!」
 「彼を危険な目には遭わせない。私にも策がある」
 これを小揺るぎもしない同じ無表情のまま言うのが、先輩かっこいー。
 その頃……レイトさんは、大きな営業先のアポイントメントを取る事に成功し、会社訪問直前だった。
 (おお! はっは、おまえもたまにはやるじゃねぇか!)
 「ゼロさん、ぼくだって、やる時はやる男なんです!」
 内部の人も珍しくサラリーマンの戦いに称賛を送り、意気揚々と自動扉をくぐった途端、 内部で待ち構えていた不審な黒服の2人組にズルズルと拉致されてしまうレイト。
 「ニコニコ生命保険です」
 「え?」
 「緊急事態につき、ご協力をお願いします」
 「えぇぇ?! やっとアポ取れた営業先なのにー!」
 (あー……これだけはしょうがない)
 伊賀栗レイト、またも社会的死亡の危機!(何回目?)
 ……典型的なお約束ギャグではあるのですが、さすがに洒落にならないドタキャンが多すぎる気がして、 AIBの謎のコネクションでなにかフォローしてもらえるのでしょうか……レイトさんの社会的生命も保護してあげて下さい!!
 いよいよ約束の時間、指定された取引現場へ到着する、リク、ライハ、モア、ゼナ…………て、リクを指名した筈なのに、 物凄く戦力揃っているんですが。
 内心、(え、こいつら……私のメッセージ、本当に理解したの?)と思っていそうなK先生はしかし、 宇宙最強のSF作家としてそんな様子はおくびにも出さず、アタッシュケースに収められたカプセルを確認。 鉄塔から吊り下げた人質のアリエを見せつけると、鉄塔にストルム火球をぶつけて半壊させる。
 「さあ……カプセルを渡してもらおうか」
 「……行くよ」
 「気をつけて」
 モアは進み出たリクにアタッシュケースを渡しながら、その手をぎゅっと握りしめ、 ヒロインレースも最終コーナーを回った所で果敢に抜け出しをはかりますが、果たして先頭でゴールに飛び込む事は出来るのか?!
 「このカプセルをどうするつもりだ」
 「ふふふ、なぜ、おまえを指名したと思う? ……この物語に決着をつけるのは、この私か、ベリアル様の子であるおまえの、 どちらかだ。ベリアル様に選ばれし者が、この物語にエンドマークを打つ。ベリアル様の意志を継ぐ者、それはおまえじゃない。 私だ。この物語の決着の鍵は、私の手の中にある」
 「……僕が絶対におまえを止める」
 「はははは、ほざくがいい。さあ、カプセルを渡せ」
 リクがアタッシュケースを渡そうとした時、そこへ飛び込んでくるZレイト。
 「リク、ここは俺に任せろ」
 リクはアタッシュケースを抱えて退き、後方待機していたGメン先輩も参戦してのK先生との激しい格闘戦に。 派手な打撃のZレイトに対し、相手の腕を取って的確にダメージを与えていくテクニカルな先輩、という殺陣の違いがまた格好いい。
 先輩の援護を受けたZレイトはアリエの救出に向かい、K先生の追い火球で崩れ落ちる鉄塔から、 華麗なお姫様だっこでその身をキャッチ。アタッシュケース抱えてこれを見ているだけになったリクがちょっと間抜けになりましたが、 最近ゼロはこれといった見せ場がなく、ヒーローゲージが溜まりっぱなしで暴発寸前だったので、やむを得ない所でしょうか(笑)
 「間に合ったぜー」
 久々の見せ場で、テンションも変に高い。
 モアはアリエとアタッシュケースを車に乗せ、廃倉庫の中ではK先生と先輩が戦闘中。 先ほどの格闘戦から今度は遮蔽物を利用しながらの射撃戦、と味付けを変えてきたのが良い緩急で、椅子を囮に使い、 横っ飛びに銃撃を決める先輩もかっこいーーー!
 そこへ更にライハが剣を振り回して参戦し、オールスター肉弾戦で追い詰められていくK先生。
 「もうやめなさい」
 刀を突きつけるライハはどうやら、復讐の事は完全に乗り越えた扱いになったようですが……ライハ認識では、 「K先生はベリアルの復讐をしようとしている」→「復讐なんて虚しいもの」→「やめなさい」みたいな思考過程という事なのでしょうか。
 それはそれで、ライハ個人の復讐の域を超えた破壊活動を行っているK先生に対するある種の“赦し”の観念がどこから出てきたのかもう一つ見えないのですが (キングへのアクセスの影響という可能性はありますが)、とにかくライハは、ここに至っても、ライハの内面から出てくる感情や意志、 に納得できる力が薄いのが本当に残念。
 ライハは表面的な要素だけでも「なんだかんだ妙に周囲に気を配る少女」と「相手の気持ちには頓着せず自分の価値観を押しつける小娘」 が不自然に同居しているのですが、解消されないまま最終回を迎えそうです(^^; 何度も繰り返しになりますが、 第8−9話で爆発してしまったライハの動機と言行のちぐはぐさは本当に痛い失点でした。
 「うるさい虫けらめ」
 色々な意味で、結局は“振り切れない”ライハに奇襲攻撃で形勢逆転したK先生は殺意を向けるが、
 「伏せろ!」
 そこへ背後から飛び蹴りを直撃させる先輩超かっこいーーーーー!
 今回あまりにも先輩が各所で格好良すぎて、もうこの先見せ場が無いのでは、と心配になるレベル。
 「やはり簡単には終われないという事か」
 Gメン先輩がモアにこの場からの逃走を指示し、K先生はキングジョーとギャラクトロンの怪獣カプセルにより、 キングギャラクトロンを召喚融合。
 これまでの融合怪獣が、元の怪獣の要素を取り込みつつもオリジナル怪獣としてのフォルム的まとまりが強かったのと比べると、 ギャラクトロンの右腕にキングジョーが付属、みたいな勢いでフォルムのまとまりが悪いKギャラは、キメラ性がより強いと同時に、 雑なその場しのぎ感が、K先生の現状を示しているようにも見えるところ。
 「ジーッとしてても」
 「「ドーにもならねぇ!!」」
 再びシンクロ変身したジードとゼロは、連係攻撃を浴びせるもマッハギャラクトロンパンチで押し返され、 逃走するモアの車めがけて放たれようとするビームに気付き、体勢を崩しながらも駆けるジード。
 「モア!」
 リクが、モアの危機に、EXヒーローアクションを発動し、身を挺してビームを受け止めた!!(感涙)
 ……考えてみれば、第5話(あいかた回)も第10話(サンドドリアス回)も、 リクがモアを守る時はジードへの変身がセットになっており、リクにとってのジード(「公のヒーローとしての力」)が、 対モアに関しては、大切な人を守る為にちょっぴり背伸びした強さとして発揮される(意味を変える)のは、 狙っているのかどうなのか。
 前回、友達であるペガを生身で救っているのとは興味深い対比にも思えるのですが、(結果的なものも含めて)狙っていたらいいなぁ……。
 ジード決死の<かばう>アクションにより、好感度上昇のSEが鳴り止まないもよく考えたらモアからリクへの好感度は既にMAXだ!  というわけで直撃は免れるも爆発の衝撃に巻き込まれて車は停車。ビームの放出が止まった所に、 体勢を立て直したゼロが後ろから放った飛び蹴りが、凄く高い打点でいい所に入っており、どうっと倒れたKギャラが少々心配になる勢い(^^;
 「舐めた真似しやがって。本気出すぜ、ジード」
 とにかく久々の見せ場で終始テンション高いゼロですが、むしろ2人揃って、相手を舐めて本気出してなかったの?!  とちょっとどうかと思いました!
 ところが、本気出したモミアゲマスターとゼロビヨンドに対して、Kギャラがこの局面で思わぬ力を発揮。
 「そんなものか?! もっと、もっとだぁぁぁぁぁぁ!!」
 まとめて押し込まれた両ウルトラマンのカラータイマーが点滅を始め、余裕かましてエネルギーを浪費していたからでは?!
 (なんだ、この力は……?)
 (今までと、何かが違う!)
 前回ラストでも背中のストルム器官が光を放っていたK先生、ここでは目までが紅く光っており、 なにやらベリアル復活へ向けての伏線でしょうか。
 一方、先輩とライハは車に駆け寄るが、車内に居たのは気絶したモアだけで、アリエとカプセルは消えていた……。
 ここでライハがモアを凄く心配している様子なのは悪い事はないですが、基本的にろくに会話をしておらず、 この2人の交友をきちっと積み重ねるか、交友中心のエピソードが一本欲しかったところ。
 一度は押し込まれたモミアゲとビヨンドだが、それぞれ剣を手にして反撃し、ゾフィー先輩の87ビームがKギャラのバリアを打ち砕く。
 「俺の刃を刻み込め」
 溜まりに溜まりまくるヒーローゲージを持て余している間に新必殺技と決め台詞を考えていたらしいゼロは、 巨大スラッガーにウルトラ舎弟パワーを集中して最大出力で光の刃を纏わせ、KギャラをZの字にぶったぎるウルトラグラフィティブレイク (器物損壊罪にあたり刑法261条により3年以下の懲役または30万円以下の罰金もしくは科料)により、K先生、 ど派手なエンドマーク(通算4回目)。
 ビジュアル的には凄く格好良かったのですが、残り話数を考えると、 これ以上のドラマ要素はなく今作のゼロビヨンドの天井はここになりそうでしょうか。 伊賀栗家とゼロの関係でもう一跳ね見たいところはありますが、変にヒカリ宅急便再び、みたいな大惨事になっても困るので、 悩ましい(笑) 光の刃を放つ巨大な獲物、巻き起こる土煙、すれ違いざまの一閃でZを刻む、と映像は文句なしの格好良さでした。
 がっくりと膝を付くK先生をおいつめるリクとZレイトだが、そこに、アタッシュケースを手にしたアリエ、 そして息を切らせてモア達が駆けてくる。
 「リクくーん! 彼女を止めてー!」
 リクとレイトが状況を飲み込めない内に、K先生に近づいたアリエは、その中身を渡してしまう。
 「お望みのものよ」
 全ては、協力関係にあるK先生とアリエの狂言だったのだ……はストレートに、しかし途中で興ざめにならない形で、 きっちりやり切ってきました。
 「私、役に立つでしょ」
 「想定していたよりもずっとな」
 「そろそろ認めたらどう? これは貴方だけの物語じゃない。私たちの物語。私たち二人が、この手で、世界を終わらせる。 その瞬間を見るのが、待ちきれない」
 K先生の頬を両手で挟み込んで微笑みかけるアリエだが――その腹部を、K先生の手が無造作に貫く。
 「ご苦労様」
 二つの怪獣カプセルを手に、もはや物言わぬアリエに残酷な笑みを返すK先生。
 どう転がすのかと思われた両者の関係は、アリエが無惨に切り捨てられる、という結果になりましたが、これによってまさに、 K先生はベリアルの継承者であり、継承者であるが故に、ベリアルの駒である事から抜け出す事は無い、というのがほぼ確定。
 今作に散りばめられてきた点と線から、表現者の業みたいな裏テーマがあるかと思っていたので、世界の終わり>本の発表、 という変質により、アリエさんの作家としての狂気と執念が、K先生への崇敬にすり替わってしまったのはやや残念でしたが(K先生、 他の宇宙人からはだいたい嫌われているので、悪のカリスマ感は薄いですし)、中途半端に仏心を出すK先生は見たくありませんでしたし、 どうもK先生との決着は次回で付くようなので、潮時ではあったでしょうか。
 そういう点では、K先生は忠実なパートナーたらんとしたアリエを切り捨てる事によって、 自らベリアルの前座にしかなれない運命を選んだともいえますが、K先生の行為により、間接的にベリアルの邪悪が浮き彫りになる、 というのは納得のいく構成。
 キャスティング含めて好きなキャラクターだったので、もう少し、引っかき回す所は見たかったですが。
 「朝倉リク! もう一度言う。この物語にエンドマークを打つのは、私か――おまえだ」
 不敵に口角を吊り上げてK先生は姿を消し、倒れ伏したアリエに駆け寄るモアだが、その目が開く事はもう二度となく…… 明確に死に顔を描くと共に、遺体に取りすがって泣き叫ぶモアの姿を重ねる、というのは、かなり思い切ってきた印象。
 (結局、彼女を救う事はできなかった。――僕たちは、伏井出ケイの手の中で、踊らされていただけだった。ケイを匿い、 取材を続けていく内に、彼女は彼に心酔してしまったのだろう。だが、こんな結末を……彼女は予測していなかったに違いない)
 毎度恒例のリクのモノローグで綺麗にまとめてしまうのは、今回は不必要だった気もしたのですが、必ずしもリクが、 アリエの真意を掴んでいるわけではない、というのはちょっとしたポイントか。
 「私のせいだ。彼女を止めていれば…………命は、守れた」
 「なに言ってるの?! モアの方が殺されてたかもしれない!」
 「それでも! 彼女とカプセルを守るのが、私の使命だったのに」
 そしてアリエを救えなかった事を後悔して激しい自責の念を抱く、という形でこの最終盤にもう一段階、 モアの心情を掘り下げる方向へ進んできたのは、ちょっと驚き。今回かなりモアとリクの関係が上積みされているのですが、 アリエの死にまつわるモアの痛みと苦しみは、今回限りではなく最終章全体で意味を持った要素になってくれる事を期待したいです。 そうする事で、石刈アリエというキャラクターにも、もう一段階の意味が出てくれると、なお嬉しい。
 果たして、K先生は手に入れたカプセルを使わずどこへ消えたのか……
 「僕が……やらなきゃ」
 ひとり夜風に当たりながら、ジードライザーを握りしめるリクの脳裏に、K先生の囁きが響き渡る……で、つづく。
 相性の悪い三浦脚本という事で少し不安だったのですが、小休止2本を挟んだ後の最終章第1話、 しっかり盛り上げてきて面白かったです。
 まずはアリエさんがリタイアし、ベリアル/Kと、K/アリエの関係が相似を為して描かれましたが、とするともしかして、 かつてのK先生には、ベリアルの為に生きるという以外の、個人の執着があったのかもしれません。ここに来てK先生がが、 “物語を紡ぐ事”へのこだわりを強く見せていますが、いったい誰が、誰の物語にエンドマークを打つ事になるのか。
 次回――割と「闇」と「光」を明確な対立概念として置く今作(シリーズ)で、 敢えて「ストルムの光」というサブタイトルに、期待が高まります。

◆第23話「ストルムの光」◆ (監督:武居正能 脚本:三浦有為子)
 んーんーんーんんー……ちょっと期待値上げすぎたかなぁ……。
 思わせぶりなサブタイトルはただ純粋にそのままだし、K先生は単純に物理で殴り勝とうとしているだけだし、 ベリアルの憑依と誘導が判明した事により、実際これまでアリエ人格はどの程度あったのかという事になり、 アクセントとしてアリエを面白く受け止めていた身としては、場合によってはアリエの人格はどこにも無かったとされてしまうと、 凄くガックリ。
 この手のキャラ台無しは、1話限りのゲストキャラならともかく、連続性のあるキャラクターでやるのはデメリットが多すぎたのでは。
 逆にもっと長い期間の中で違和感を少しずつ布石として積み重ねた上でなら面白くなる場合もありますが、 特に匂わせる伏線があるわけでもなく、登場期間的には、最悪の分量だったように思えます(^^;
 最後に倒れたアリエの様子を先輩が確認していたので、生きているのなら次回以降に拾われる事を期待したいですが…… というかこれで完全退場だと、むしろ前回で退場していた方がよほどマシだった感。
 “書き記す”という要素が、ラスト2話?でもう一度掘り下げられる事に、一縷の望みを賭けたい。
 置き手紙を残してリクが姿を消し、アリエの残した資料からK先生が沖縄に居る可能性が高いと判断したゼナ先輩は、 リクもそこに居るのでは、と沖縄に飛ぶ事に。リクの置き手紙を見つけて以来、目が据わっているライハはそれに同行を申し出る。
 「……危険だ。私たちに任せて――」
 「これは私の戦いでもあるの。誰がなんと言おうとついていく」
 (じゃあ一人で勝手に行けよ……)
 と内心で思ったけど、ゼナ先輩は大人なので口には出さず、
 「……1時間後に出発だ。準備しろ」
 と同行を許可。
 据わった目で机を叩くライハは迫力はあるのですが、「誰がなんと言おうとついていく」という台詞の絶妙な格好悪さもあいまって、 どうにも漂う何言ってるのこの娘感。
 今回最後まで見ると、「リクだけの戦いではない」という事を言いたかったらしく、それなら前段で「これは私たちの戦い」 とでも言っておけばAIBに対するニュアンスも違ったのですが、別にモアに声をかけるわけでもないので、 リクに向けて「あなたは一人じゃない」と言っている当のライハが、一人でいい格好しようとしているという、 頭を抱える分裂具合。
 で、ライハが“色々あって徐々に周囲に馴染みつつある孤高の復讐者”というキャラクターならば、 仲間への頼り方を知らないという理解でこの言行のちぐはぐさもまだ消化可能なのですが、しつこい繰り返しになってしまいますけれども、 ライハは全くそういうキャラクターとして描かれてきていないので、スタッフの構想上のライハと、 劇中の実際のライハの間に横たわる大きな溝が、結局最終盤、見事な地雷として爆裂。
 ……それともライハの中では未だ、これはリクと私とその他大勢 の戦いみたいな認識なのでしょうか。
 リクくんと泥棒猫2号の沖縄アバンチュールなんて絶対許さない、と当然一緒に行こうとするモアだが、ゼナ先輩は居残りを指令。
 「やっぱり……私では役に立ちませんか」
 「おまえは、ここに残って指揮を執れ」
 「……え?」
 「私もジードも居ないこの街に、もし伏井出ケイが現れたら、ゼロと力を合わせて戦えるのは、おまえしかいない。やれるな」
 いつもの無表情ながら感情のこもった言葉と共にじっとモアを見据え、ここぞの切り札として肩を叩いて励ます先輩かっこいーーー。
 さすが元テロリスト養成キャンプの教官、どこかの不滅の牙と違って、部下の人心掌握術もばっちりです。また、 さりげなくゼロの行動に抑制を掛けているのが、熟練の戦士の目配り。
 一方、沖縄のリクは、脳に直接囁いてくるようなK先生の声を聞き、その姿を目にしていた。
 「おまえは、自分の生まれた星が、目の前で燃えるのを見た事があるか?」
 以前レム回に登場した小説の内容――「ずっと昔、ぼくには静かな世界があった。でも、ある日、街が炎に包まれた。 すべてを失ったぼくは、暗闇の中で気がついた。自分の力で運命が変えられない事を。そして、闇の支配者に全てを委ねた。」 ――は、リクの事を示唆すると同時に、どうやらK先生自身の過去を暗示していたようで、両者の相似と対比をより打ち出す形に。
 ここで緑色の光の粒子をまといながら、夏の沖縄に漆黒のロングコートで出没するK先生の姿は、幻想的で良い雰囲気でした。
 「それは、想像を絶する恐怖と……絶望だ」
 居残り組はアリエの手記から、K先生が敢えてジードやゼロの攻撃を受ける事で、ウルトラマンの攻撃エネルギーを反転して蓄積、 自らを強化していたのでは、と推論。そしてそのストルム器官を最も強化する方法……それこそが、 かつて侵略により灼き尽くされたストルム星が今も発し続ける炎、ストルムの光を浴びる事。それは地球では30年に一度、数分間だけ、 沖縄のある場所で観測できる……
 「ストルム……我が故郷」
 K先生はその身に降り注ぐ碧の光を浴びながら、リクに囁きかけ続ける。
 「私は失望した……弱いストルム星人である自分に。力が欲しい……もっと強い力が! その時出会ったのだ……ベリアル様に。 あの御方の圧倒的な強さに」
 「なにが強さだ。あいつはおまえの事を利用しただけだ!」
 率直に、未だにヒーロー側が悪役を殴る理屈が「おまえは利用されただけだ」なのは苦しいというか、 リクの言葉がK先生に届かない断絶を描くならば、もう少し届きそうな言葉をリクに考えてほしかった所です。
 「あの御方が利用したのではない。私が、全てを捧げたのだ」
 案の定、K先生にはバッサリと切り捨てられ、遂に城跡で直接対峙する2人。
 「おまえなど必要なかったのだ。たとえウルトラマンの遺伝子はなくとも、あの御方の理想も夢も、この私が」
 「それを止める為に僕がここに居る。それが、ウルトラマンとして生まれた僕の使命だ!」
 今回、やたらめったらリクが「使命」だの「宿命」だの強調するのですが、第12話において「朝倉リク」としてウルトラマンになり、 第17話にして「変えてみせる! 僕の運命は、僕が決める!」と父の呪縛を断ち切ったリクが、「具体的にはわかんないけど、 誰かを元気にさせたり、楽しい気分にさせたり、そういう人」として戦うのではなく、 公器としてのウルトラマンにこだわり続けているのは、テーマ的に半歩後退した感じで、 どうもしっくりとノれず。
 まあリクにとってK先生との決着は“過去の清算”であり、それを済ませた時に“自分の未来”へ一歩踏み出せる、 という意図なのかもですが、結末へ向けて若干の不安要素。
 「……少し話しすぎたようだ。今日この場所でおまえとの決着を付ける。さあ……ここでエンドマークだ」
 「僕がおまえを止めてみせる!」
 両者は共にフュージョンライズし、駆けつけたライハとゼナの前で、激突するジードとKゼットン。 久々登場のヒゲスラッガー+クローも、ストルム力前回のKゼットンに弾き飛ばされ、ジードはモミアゲマスターを発動。
 「これで、本当に、エンドマークだ」
 対するK先生は遂に最強の怪獣カプセル二つを自らの体内に打ち込み、掟破りのスーパーウルトラジャイアントKゼットンへと変貌。 その巨体はゾフィー先輩の87光線でも打ち破れないが、スーパーウルトラジャイアントゼットンパンチを回避したモミアゲの、 宇宙最強ロイヤルエンドの全力放射により、K先生、史上最大のエンドマーク(通算5回目)
 「なぜ……なぜ勝てない……!」
 地面に這いつくばって呻く先生を見つめるリクの元に、駆けつけるライハと先輩。
 「もうよせ。おまえの負けだ」
 「朝倉リクぅぅ!!」
 ところがその時、もう一人の人物が軽やかに現れ、怪獣カプセルを拾い上げる……それはなんと、死んだ筈の石刈アリエ。
 「私の息子に勝てるとでも思ったのか」
 K先生を冷然と見下ろしたアリエは、突如振り下ろした手でK先生の体を貫いてストルム器官を抜き取り、それをごくりと飲み干すと、 その体にベリアルの影が重なる……!
 「私は常に、おまえと共に居たのだよ」
 「ベリアル様……」
 ダダロボの砲撃を受けた際、K先生が記憶と力を取り戻したのは、ただのショック療法ではなく、 既にアリエに憑依していたベリアルの力によるものだった。
 「私がおまえに力を与えていたのだ、ずっと。だが、ここまでだ。ストルム器官を失ったおまえは、数日で息絶える。 おまえの使命は終わった。ふふふふふふふははははははは」
 アリエの体から抜け出し、陽炎のように浮かび上がったベリアルは哄笑を続けながら宇宙へとその姿を消す。
 「あなたは、遂に私を選んで下さったのですね。……はは、あはは、あはははははははははははは」
 力を奪われ取り残されながらも、その姿を見上げ、喜びに打ち震えるK先生。
 「見たか! ベリアル様は復活した!! おまえたちはおしまいだ。これからベリアル様はこの宇宙を征服する。 新しいベリアル様の世界が、始まるのだぁ!!」
 「これがあなたが望んでいたこと? 利用されてただけじゃない!!」
 「おまえ達に何がわかる。あの御方と一つになれた。これ以上の、喜びがあるか……?」
 K先生は崇拝するベリアルに使い尽くされた事を喜び、互いの価値観が噛み合わないままなのは別に構わないのですが、 ライハまでがリクと全く同じボールを投げつけ、物語の重要なポイントを強調したというよりも、 ライハのキャラクター性の弱さが浮き彫りになります。
 そもそも上述したようにこの批判はクライマックス寸前としては悪役を殴るのにあまりに軽い鈍器なのですが、 10歩譲ってリクは“誰かに利用される存在から自分の運命を切り拓く”というテーマ性を持っているのでまあ良いとしても、 ならばライハが抱えているテーマとは何か? という話になるわけですが、なんでしたっけ……?
 もう一つ、リクの持っているテーマはテーマとして、それはK先生との対比要素、つまりは衝突する争点にしかならないので、 リクがK先生を「倒す」のではなく「止める」としているのを“キャラクターの変化”として描きたいのならば、 リクはK先生に対して別の論点を持ち出さなくてはならないのですが、それが出来ていない為に、 1クール前と同じ事を繰り返しているだけになってしまっています。
 K先生の身柄を拘束しようとするGメンだが、K先生は海に転落して失踪。
 「可哀想な人。……リク、もう、一人で行くなんて言わないで」
 「ライハ……」
 「あなたは彼とは違う。あなたは……一人じゃない」
 K先生とリクの違いを、支配者への無限の忠誠に救いを求めたのではなく、共に歩いていける仲間の存在を得た事とするのですが…… 率直にこの言葉、モアとかペガの方が効果的になったと思います。
 作り手からすると、正ヒロインポジションであり最もキャッチーなキャラクター(だった筈)のライハが、 代表してこれを言うのが当然の集約だったのでしょうが、私の中では、ライハ、モア、ペガ、レム、 レイトと並べた際に一番キャラクターの芯が弱いのがライハなので、ライハが決めの台詞を割り当てられる度に、 何を言っているんだこの娘は感が増していきます。
 ライハへの思い入れで印象が変わってくるところでしょうが、個人的にはライハ、8−9話の複雑骨折後、 ろくにリカバーされないままここまで来てしまったと思っているので、結局あの大惨事が長い尾を引いたのが残念。もういっそ、 なんだかんだライハはリクに明確な好意を持っているというエピソードでも挟まれていれば、じゃあまあ仕方がないですね、 と納得感が上がったぐらい(^^;
 (僕は本当に、彼を止めたかったんだ。世界の為にも、そして彼自身の為に。でも……まさかあいつが、ベリアルが戻ってくるなんて。 これから起こる事、それは、想像を絶する恐怖と、絶望の物語が、始まろうとしていた)
 宇宙では、二つの怪獣カプセルを取り込み、デモニックフュージョンしたベリアルが新たな姿に、でつづく。
 あちこち不満点のあるエピソードでしたが、次回予告に、伊賀栗家の前に姿を見せるK先生、K先生と切り結ぶライハ、 という映像があり、大きな穴と、触れて欲しい要素の二つが上手く繋がってくれれば、ライハ奇跡の大ジャンプの可能性もあり、 望みを託したいところです。一方で今回、モアが職場で認められるルートに突入してしまい、ヒロインレースの行く末は波乱含みですが、 ゴール後の感想が「……うんそれで、何を言っているんだこの娘は」にならないといいなぁ…………。キングの宇宙の崩壊、 というのは今作ならではの仕掛けなので、最終章、面白く着地して欲しいです。

◆第24話「キボウノカケラ」◆ (監督:坂本浩一 脚本:安達寛高)
 二つの怪獣カプセルの力とストルム器官、その内部で闇へと反転された光の戦士のエネルギーを吸収して復活したウルトラマンベリアルは、 ウルトラマンベリアル・アトロシアスとなり、光の国への見せしめとして地球を吹き飛ばすと宣告。
 その力は宇宙を繋ぎ止めるキング粒子をストルム器官を通して自身に取り込む事によって刻々と増大していき、 またキング粒子の消滅により宇宙は再びクライシスインパクトを迎えつつあった。
 どうすればベリアルを、宇宙の崩壊を食い止める事が出来るのか……以前ピット星人が研究していた、 カレラン分子分解酵素の存在をライハが思い出した事により、分解酵素をカラータイマーに打ち込む事で、 キング粒子の吸収変換を無効化する、という作戦が立てられる。更にゼナ先輩がゼガンとウルトラマンの光線をぶつける事で再び時空の裂け目を作り出し、 ベリアルを永久追放空間に放り込む事を思いつく。
 と、これまでの劇中に散りばめた要素を拾い集めるのですが、肝心の真ベリアルは宇宙空間で浮かんでいるだけだし、 地球各地の異変などはニュースを通じて間接的に危機感を煽っているだけなので(しかもこのニュースが、 劇中でたびたび持ち込んでいる為にかえって緊迫感が出ない)、映像的なスペクタクルが弱く、 絶望的な状況から皆の知恵を集めて逆転の一策、という盛り上がりはいまいち。
 また、カレラン分子云々に関しては、あんな固有名詞だらけで視聴者に覚えさせる気もなさそうな長台詞を、伏線でした、 という事で扱うの? というのが正直。
 分解酵素ガスの製造には10時間――最終決戦へ生まれた猶予に、伊賀栗家は高級レストランでマユの誕生日を祝い、 レイトはルミナにもプレゼントを贈る。そしてガスが完成し、娘の誕生日の途中で、別れを告げる事を余儀なくされるレイト。
 「パパはお仕事があるから、ここでお別れしよっか」
 「あ……ルミナさん、僕」
 「でも……会議じゃないよね?」
 「え……」

 「あの女の所よね」

 「なんか……戦う感じの、やつだよね?」
 ルミナはレイトの背広の内ポケットからゼログラスを取り出し、最終回直前にしてウルトラ史上最大の修羅場に突入せずホッとしました。
 「色、似てる、ウルトラマンに」
 「なんで……」
 「知ってたよ。レイトくん、嘘つくの、下手だから」
 聡い妻は事情を理解した上で見守っていた、というのは定番ですが、まあそう捉えないとレイトさん、 妻子持ちとして酷すぎますからね!
 「さあマユ、行ってらっしゃいして。パパはね、これから大事なお仕事があって、たくさんの人がパパの事待ってるの」
 「パパ、お仕事、頑張ってね」
 「……マユ、明日も明後日も、マユがいっっっぱい笑って暮らせるように、パパ、仕事頑張るから」
 「一つ大切なものが見つかると、他にも大切なものがどんどん増えていくんだ。ルミナさんと出会ったから、マユが産まれた。 マユが産まれてから、この街や地球を前より愛おしく思うようになったんだ。 僕が居なくなった後も、マユが生きていく世界だからね」
 「晩ご飯、作って待ってるから」
 「楽しみにしてる。一緒に食べよう。必ず」
 マユの誕生日をからめて、伊賀栗家の家族の絆に尺を採ってくれたのは良かったです。が……
 「レイトさん、娘さんとの大切な時間を……すいません」
 と思っているなら、普段からもう少し妻子持ちのサラリーマンに気を遣ってあげて下さい!!
 「あいつをやっつけないと、明日がありませんからね」
 (レイト……)
 「みなさん……グッドラック!」
 「始めようぜ!」
 レイトはゼロへと変身し、それを見て地球へ殴りに降りてくるベリアル。ゼロがベリアルの性格をよく把握していたとはいえますが、 ベリアル様がここでわざわざ地球に降りてこなければ、この先の作戦は全て破綻したと思うと、 ゼロから挑発する1シーンぐらい入れた方が良かったような。
 「最後に貴様の泣き叫ぶ声を聞いてやる」
 「光の国も、この星も、てめぇには指一本触れさせねぇ! 俺とジードがな」
 「ジード……息子の力を吸収できていれば、より完璧だったが……ふっ、どうやら反抗期のようだ」
 「ちっ、貴様が父親ぶるのは――2万年早いぜ!」
 ビヨンドからいきなりの超必殺、という負けパターンで戦いに入るゼロだが、 ウルトラ舎弟ブレイクを受け止めてみせる事で超魔王ベリアルの強さを見せる形に。ところが両者の激しい戦いの中、 伊賀栗家に不法侵入していたK先生により、ルミナとマユが人質にされてしまう。
 「ストルム星人か。まだ忠誠を誓うとは愚かなやつだ」
 ま、それはそれとして……
 「ウルトラマンゼロ! この星に来て、弱点を作ったようだな」
 棍棒でゼロを殴りに行くベリアル様、マジ魔王。
 ルミナとマユを守るため武器を捨てるゼロだったが、ライハがマンションに駆け込んできて、K先生は逃亡。
 まあライハの使い方としては一番妥当なのですが、かつて目の前で“家族を失った”ライハが、 レイトの“家族を守る”という事に特に意味や感情が乗るわけではなく、ライハはこのシーンにおいても“K先生しか見ていない” にも関わらず、そのくせ既に復讐からは解放されてしまっているらしく、結局最初から最後まで鳥羽ライハは、 一人で納得して一人で執着から解放されて一人で悟ったような事を言っているという、 見ていて何も伝わってこない残念なキャラクターに。
 基本的に、“過去にトラウマを抱えながらも強さを持った女性キャラクターを描く”という志向性があったのでしょうが、 “心理描写に脈絡のない自己解決を繰り返す”というのは、“強さ”の表現法として間違っていたのではないかと思うところ。
 悪意的に突き詰めていくとライハって、周囲の男達(リク→レイト→K先生)を見下す(憐れむ) 事で自尊心を満たしているのを自立と勘違いしている女、に見えてくるわけですが、結局最後まで、 ライハのキャッチーな要素(怪獣を斬る復讐者)とキャラの土台(目の前で怪獣によって両親を失った少女) の間にある空白が埋まって見えませんでした。
 そこが空白だからこそ、ライハというキャラクターは、言行全てに人格としての芯が感じられず、 その場その場の話の都合でバージョンチェンジしていくような扱いになってしまったのかなと。トラウマゆに人格形成に空白期間がある、 というのが意図的な狙いだったのかもしれませんが、それならそれで、劇中でその空白が指摘されるべきであったと思いますし。
 「はははははは、見よ! ベリアル様の神々しい姿を! 私のストルム器官が、ウルトラマンキングの力を変換したのだ!」
 もはや誰とも噛み合わないK先生の盲信ですが、ライハとの対比でその空虚さがより引き立つのかというと、 ライハもどうしてここに居るのかよくわからないので、K先生と激しく戦っても、監督の趣味しか感じられずに残念ながら冷めてしまいます。 それこそ、レイトの家族を守ろうとして偶然K先生と遭遇した、 という順序ならライハの行動原理と優先順位にキャラクターとしての変化を感じられるのですが、 それが逆なのに一人で物わかりのいい発言をするのが凄く困る所で。
 「家族を弱点と言ったな……それは違う! 守るべきものがあるから、俺たちは戦えるんだ!!」
 リクもレイトも大切なものを守る為に戦おうとしているのに、ライハだけ全然違うストーリーラインを突っ走っているという。 いや、ライハもライハなりに何かあるのでしょうが、物語としてはそれがクライマックスで集約されなければ面白くならないのに、 ライハはそれが何もない(何もない、という事すら描かれない)為、非常に浮いてしまっています。
 立ち直ったゼロがベリアルを押さえつけている所に宇宙船モードの星雲荘が突撃するが、 ベリアルはゼロを払いのけてぐさっと刺すと宇宙船も撃墜。追い詰められたゼロの苦境に、リクはジードへと変身する。
 「おまえ! なんで来た! 作戦と違うだろ!」
 「ジーッとしてても、ドーにもならないからです!」
 父と子の、爪と爪がぶつかり合い……つづく!
 伊賀栗家の家族の話が拾われたのは良かったのですが、それ以外は、そこまで盛り上がらないラスト前…… シリーズお約束ネタの説明不足を嫌がる一方でこういう事を書くのもなんですが、 私にとってベリアル絡みの初見のインパクトとして余りに強烈だったサンダーブレスターが最後まで変に高いハードルになってしまった感。

◆第25話「GEEDの証」◆ (監督:坂本浩一 脚本:安達寛高)
 アリエさん出てこなかったーーーーーーーーー!!
 割とギリギリまで期待していたので超残念。
 「おまえが持つキングの力は、ちっぽけなカプセルのみ。一方、俺は全宇宙から凄まじい量のキングのエネルギーを集めている。 今なお増大し、その差は歴然だ」
 モミアゲマスターを一蹴して勝ち誇るベリアルが、その根拠にしているのが「キングの力」というのはどこか哀れさもありますが、 ベリアルさんの堂々とした態度を見ている限り、もはやキングの力=物理法則、みたいな扱いなのか。
 ジードへトドメを刺そうと迫るベリアルだがしかし、オジキの仇じゃーーーーー!!とばかり、 星雲宇宙船からカプセルを取り外したゼロがそれをベリアルのカラータイマーに手動で突き刺し、分解酵素を打ち込む事に成功。 ゼロ自身は反撃を受けて戦闘不能になるも、ベリアルの体内のカレラン分子を消滅させる事に成功させる。
 更に――
 「別宇宙から、何か来ます!」
 前回ベリアルの気配を感じてちらっと登場したウルトラの父(キングより声が太い)が突如降臨。
 「私がこの場を引き受ける! 一旦退いて、体勢を整えるんだ」
 マントを脱ぎ捨てベリアルに組み付いた父はフォースフィールドを発動して空間を分断し、 往年の名レスラーがかつてのライバルのファイトに興奮してリングに乱入してきた感じですが、 光の国って別の宇宙にあるの??と、最終回にしてきょとん。まあ光の国は光の国で、 戦後の経済復興とかキング不在による政治的混乱とか色々大変だったのでしょうが、これまで鉄砲玉一人送り込んで任せきりだったのに、 最後の最後で組長自ら出入りに参加するというのは、ひどく中途半端な事をした印象。
 このフィールドを見てK先生はライハの前から姿を消し、レイトは一命を取り留めるも意識不明。
 「ロイヤルメガマスターでも、歯が立たなかった……」
 「リク、元気を出して」
 「私たちは、ウルトラマンキングの力に触れた。だからきっと、奇跡は起こせる筈」
 ニュアンス的には、「キングに会えたほどの私たちだから奇跡も起こせる筈」といった感じだったのかもですが、 「キングの力があるから奇跡が起こせる」と聞こえて、どうして最終回にして、敵も味方も神様頼りなのか。
 ベリアルの方はまだ、神(キング)の力を地に引きずり下ろす、という事に意味が感じられるのですが、『ジード』単体でいえば、 そこに関する憎念をもっと掘り下げて欲しかった所です。どうせ石刈アリエが途中で消失してしまうキャラクターならば、 描いておくべきはアリエの情念ではなく、ベリアルの怨念であったような。
 キングの力への焦点もケンの降臨も、最終回にしてシリーズメタ要素が怒濤のごとく侵入してきた印象なのですが、 やたら尺を割かれるライハのアクションシーンも合わせて、 坂本監督のフェチズムがすべからく悪い方向に転がってしまった感。
 少なくとも私の期待していた『ジード』からはズレが明確になっていき、この後、どんどんズレていく事に……(^^;
 翌日、組長のスタミナ切れによりフォースフィールドが崩壊し、ベリアル再起動。
 「老いたな、ケン。おまえに俺は、止められない」
 これが、綺麗所の秘書に囲まれながらふんぞり返ってデスクワークしていたおまえと、 野郎ばっかの配下に囲まれながら毎日欠かさず筋トレを続けていた俺の差だ!  と落伍者のルサンチマンを叩きつけようとケンに迫るベリアル。
 「ジーッとしてても」
 「ドーにもならねぇ!」
 それを見ながらライハとリクが拳を打ち合わせ、作戦決行の為にそれぞれの戦いへと向かうのですが、 私の中でもはやライハが凄くどうでもいいので、ここで等価の戦友扱いされても、心の針がピクリとも振れません。
 このラスト2話、ライハへの思い入れ次第で大きく印象が変わる所はあるでしょうが(少なくとも監督の趣味嗜好は伝わってくる)、 結局、私にとっては第8−9話の大惨事が、最終話まで致命的に尾を引く事になってしまい、とても残念です。
 「行くぞ。最後の戦いだ。融合。I GO。HERE WE GO。決めるぜ、覚悟。ジード!」
 リクはベリアルに向けてゆっくりと歩みながら、ジードへと変身。
 「来たか、若きウルトラマン」
 「また邪魔をする気か、息子よ」
 「僕はジード。ウルトラマンジードだ!」
 一方、AIBではゼガンの準備が完了。
 「カム・タタール・シャドー。時空破壊神ゼガン!」
 手を振り上げ、修復したゼガンに乗り込む先輩、格好いいーーー。
 そして戦いの趨勢を見つめるK先生を発見するライハ。
 「律儀だな。昨日の続きを望むか」
 「光栄に思いなさい。私が看取ってあげる」
 女戦士のちょっと気取った格好いい台詞ぐらいのつもりだったのかもしれませんが、なんかライハ、 ふつーに他人の事をこういう目で見ていそうなのが。
 「……エンドマークを打つのはおまえではない。私だぁ!!」
 はいバトルバトル。
 市街地では作戦通り、ゼガンとジードの光線がぶつかる事で次元の亀裂と永久追放空間が発生するが、 ベリアルの攻撃でゼガンは瞬殺されてしまう。最終話にして命の危ぶまれたGメン先輩ですが、 爆発したゼガンから弾き飛ばされて地面を転がると、鮮やかな受け身で衝撃を殺して膝立ちの姿勢でパッと戦闘へ顔を向ける動きが、 格好いいーーーーー!!
 モアとセットですが前後編メイン回までやってしまいましたし、さすがに終盤空気になるかと思ったらむしろ最後まで見せ場たっぷりで、 先輩はホント良かったです。
 「後は僕がやる。この宇宙から、出ていけぇ!!」
 ジードは敢然とベリアルに立ち向かい、それに満身創痍のK先生と激しく打撃を応酬するライハの戦闘を重ねるという趣向なのですが…… この二つの戦いを重ねるという事は、ライハに、リクとK先生の双方と同レベルのキャラクター強度が必要になるという事です。 ところがそれが著しく不足している為に対応が成立しないどころか、最終話にしてライハに引きずられてマッチアップ相手とされてしまったK先生の株が下がるという大事故(^^;
 どうもライハ、かつて復讐に囚われていた者としてK先生の妄執を最後まで受け止める事で断ち切る、みたいな役割っぽいのですが、 そもそも「復讐者」としてしっかり描かれていなかったので「復讐を乗り越える姿」が劇的に成り立つわけがなく、 K先生の受け皿として何もかも機能していません。
 ベリアルにはもはや一顧だにされず、リクにはとっくのとうに踏み越えられているK先生にとって、相手してくれるのはライハぐらい、 というのがふさわしい位置づけ、という解釈も成り立つのですが、そんな寂寥感を出したいほど作り手がライハを軽視しているようには受け取れず、 画面の向こうとの温度差だけが募ります。
 「しょせんお前は実験体。父親の俺を越えられるわけがない。諦めろ」
 「諦めない! おまえとの決着は、僕がつける!」
 すると突然、ジードの中でウルトラカプセルが次々と光を放ち、
 (リク、おまえの声、聞こえたぜ)
 「力強く、崇高な意志だ」
 宇宙のあちこちでワンカットずつ姿を見せたウルトラ戦士達が次々リクに力を与え、 OPファーストカットを思わせるキングの姿が虚空に浮かぶと、流れ始める主題歌をバックにジード5つの姿が勢揃いする、 というのは格好いいのですが、まあ格好いいのですが、『ウルトラマンジード』の到達点はここでいいのか……?

 今日からおまえはウルトラ組の兄弟分じゃーーーーー!!

 と組員一同でベリアルを囲み、最後は一斉必殺技を放つとベリアルの体から強化エネルギーが完全に消え去り、 ジードは元の姿に戻ったベリアルを抱えて、時空の亀裂へと飛び込んでいく……!
 一方、K先生はライハ渾身の一撃を受けて杖を取り落とし、 次元の彼方へ消えてしまったベリアルの行方を探して視線を虚空に彷徨わせる。
 「ベリアル様……私は……あなたのお役に立てたでしょうか……」
 自信に満ち溢れて慇懃無礼な悪の紳士の正体は、全てを失って暗闇の中で支配者に全てを委ねたひとりぼっちの子供であった、 というK先生の本質を、迷子のような表情で見せたのはお見事。
 「……ベリアル様……」
 自分で運命を選ぶ事をやめ、ベリアルに尽くす、ただそれだけの価値観に全てを捧げてきた星の迷い子は、 ベリアルに向けて手を伸ばしながら膝を付く。
 「……ええ。あなたはベリアルの役に立った」
 果たしてライハはその姿に、かつて家族を失った自分が辿ったかもしれない道を見たのか見ないのか……そっとその手を握りしめる。
 「だから……安心して消えなさい」
 「ベリアル様……私は、あなたのおそばに……」
 緑色の光の粒子となり、溶けるように消えるK先生は、最後まで好演でした。
 最終的にライハが“名無しのストルム星人”の「存在を認める」事で、自ら「赦し」に辿り着くというのは美しかったのですが、 ライハ自身の積み重ねの薄さから、途中の計算式をすっ飛ばした感は否めません。
 個人的には最後の最後、K先生にライハのトドメが迫った所でアリエが飛び込んできて、アリエがK先生の存在を理解して成仏させたら、 納得度も高いし石刈アリエという人格も存在していた事になってサヨナラホームランだったのですが、そんな事はなし。 “名前の無い者に名前を与える役割”も“打ち捨てられた者を理解しようと手を伸ばす役割”も、 ノンフィクションライターという位置づけからふさわしい気がしますし、アリエというキャラクターの意味も出つつ今作の端々に存在していた “書く”という要素の昇華にも繋がったと思うので残念。
 2クールもので大きなシナリオ変更があったとは思えませんし、私は私でアリエを気に入りすぎている自覚はありますが、 物語の流れからするとなんだか、ライハがアリエの役割を強引に奪ったような印象。
 追放空間ではジードとベリアルがぶつかり合い、ベリアルの精神世界に触れたリクは嵐のような激情の奔流に揉まれながら、 その過去の一端を垣間見る。
 「力だ、力が欲しい……越えてやる、俺を見下したあいつらを!」
 (伝わってくる……怒りが、悲しみが)
 何度敗れても更なる力を求め続ける不屈のベリアルガッツが描かれ、 極悪非道の破壊者というだけではないベリアルの背負っていた鬱屈と悲しみも見せるのは、 既存ファンへのサービスという要素もあったのでしょうが、最終回にしてまたしても本編の外側から情報が放り込まれてしまい、 坂本監督の“劇場版的演出”が、個人的にはかなり悪い方向に転がってしまいました。
 「何度も何度もあなたは生き返り、深い恨みを抱いて……」
 ベリアルの打撃を受け止めたリクがその体を抱きしめると、ベリアルの背中から赤いもやもやが抜け出し (以前にコメント欄でさやまきさんからベリアルの経歴を教えてもらっていなかったら、ぽかんとした可能性大(^^;)、 白くなるベリアル。
 「疲れたよね。もう……終わりにしよう」
 精神世界のリクは真のベリアルに触れ、現実世界では両者の最後の必殺技が放たれる。
 「わかったような事を言うな!」
 「レッキングバーストーーー!!」
 「ジーードーーーーーーーーーぉ!!」
 皮肉にも、ベリアルを受け入れたジードの力は、ジードを取り込もうと画策してきたベリアルの力を上回り、 永久追放空間でベリアルは爆散。
 「さよなら、父さん……」
 父と決着をつけたジードは通常空間へと復帰し、宇宙は救われるのであった……。
 ジードvsベリアル、ライハvsK先生、という戦闘の対応にもう一つ加えて、ベリアルとK先生が共に、 “理解される”事で乗り越えられるのを重ねる、というのは面白かったのですが、ではどうして、 リクとライハが二人を“理解できた”のか? という点が凄く弱いのが残念。
 物語として重要なのはその点なわけですが、これまでのリク/ジードの積み重ねと、ベリアルに対する理解が、 美しい結実として見る事が出来ませんでした。
 これまで物語で描かれてきたリクの目指すヒーロー像は、
 「君の笑顔を取り戻す。Here we go」
 に始まり、
 「警察官、消防士、学校の先生、お医者さんに会社員、人の役に立つ仕事が多すぎる。僕は将来いったい何になったらいんだ!」
 「具体的にはわかんないけど、誰かを元気にさせたり、楽しい気分にさせたり、そういう人になれたらいいのかな」
 なわけですが、前回今回とこれらの要素がまるで登場してきません。
 そして、ここまでリク/ジードがウルトラマンとして立派に戦ってきたのを踏まえた上とはいえ、「諦めない! おまえとの決着は、 僕がつける!」という特にリクの目指すヒーロー像を象徴するわけでない叫びを、「力強く、崇高な意志だ」と評し、 会長・組長・若頭以下がジードを認める<試練の達成>にしてしまった事で、これまでじっくり建造してきたビルとは、 違うビルの屋上に着陸。
 第12話において朝倉リクとしてウルトラマンになり、第17話では大衆に認められる事で公のヒーローとなったジードが、 最終話で「公式から認められて公認ウルトラマンになりました」という着地点は物語の流れとしてはおかしくないのですが、 しかし、朝倉リク個人というヒーローはどこへ行ってしまったのか?
 『ジード』の到達点は、本物とか偽物とか公認とか非公認とか関係なく、僕が僕らしいヒーローになる事、だと期待していたので、 そのだいぶ手前の着地にスッキリせず。第17話において「リク……みんなの声が聞こえる?」をやってきたからこそ、 その先の飛翔を期待していたら、次のステップにしてゴールは「光の国に認められる」だったのは、 あまりにも物足りない飛距離でした。
 そしてそこから、ラストのリクとベリアルのやり取りに線を伸ばすと見えてくるのは、今作の最終的な構造が、 「ベリアルが間接的に光の戦士に帰る物語」である事。
 つまり今作は最終回にして、「リクが道を見つける物語」から 「ベリアルがリクを通して転生する物語」にすり替わっていて、ベリアルに思い入れのない (過去の経緯を知らない)私にはそれは、もう一つスッキリしないわけだな、と。
 そこで“すり替えられた”と感じてしまうのが、私と『ウルトラマンジード』という作品の間に生じてしまったズレであり、 これは長年シリーズを追いかけていて、ベリアルの物語に思い入れがあるとまた印象の変わる部分なのかもとは思いますが、 私個人としては『オーブ』に続いてまたしても、 自分の見たかったものと大きく着地点がズレた最終回となってしまったのでありました。
 「ベリアルに似ていると恐れられていたジードが、人類を救ってくれました!」
 人々は歓声をあげ、この世界の地球人も、要素まるごと放棄されてしまい、最後までなんだかな感。
 「終わったよ、ライハ」
 「こっちも……終わった」
 と言いながらK先生の杖をリクに向けて突き出すライハさんの、最後まで凄いなんだかな感。……えーとそれは、 討ち取ったりーーー!的なアレなの? 戦利品として古物商に売り飛ばすの?? それとも、 東○名物勝手にお墓にするの???
 キングカプセルを起動すると、キングの肉体は戻り宇宙の傷も完治したからもう大丈夫、と適当言い出し、 組長と二人でジードの持つ無限の可能性を誉めて揃って帰宅。
 ――しばらく後、銀河マーケットを手伝うリクは、子供達がドンシャインよりも、 ジードをヒーローとしてジードごっこをする姿を目にする。
 「見て、リク。君は、みんなのヒーローになったんだ」
 劇中劇ヒーローが存在している時点でメタ要素が持ち込まれてはいるのですが、朝倉リクであるジードがみんなのヒーローになった、 ならまだ良かったのですけど、公認ウルトラマンになりました=みんなのヒーローになりました、というのは、 凄く悪い意味でメタになったような……から、EDテーマが流れ出してエピローグへ。
 「平和も戻った事だし。ここ、出ていくんでしょ?」
 「はぁ……しばらく居るよ。星雲荘の修理、手伝いたいし」
 「ええーーー?! じゃ、私もここに住む!」
 最後の最後までふわふわしたライハの発言に興奮したモアが机を叩くと何かのスイッチが入り、鳴り響く警報と回転する警告灯。
 『自爆装置が作動しました』
 「「……はぁ?!」」
 『3分以内に退避して下さい』
 訳:真ヒロインは私なのでおまえら二人とも出て行け。
 どこかの山の中では、伊賀栗家に別れを告げるゼロ。
 「レイト……俺がいなくなっても頑張れよ」
 「……自信ないです……」
 「大丈夫よ、レイトくんなら」
 ルミナさんと繋ぐ手がアップになり、思いの外毛深いレイトさん。
 「また、遊びにきてね」
 「おぉ! もちろんだ。あ、マユ、俺の子になってもいいんだぞ?」
 ゼロよ、それは解釈次第では、人妻へのナンパなので、もうちょっとよく考えてから発言して下さい。
 「ゼロさん! 2万年早い――」
 「……じゃあな」
 頼りない妻子持ちサラリーマンに宿るヤンキーヒーロー、というおいしい要素てんこ盛りのレイト/ゼロでしたが、 ゼロのヒーロー強度の高さとレイトさんが上手く噛み合い、ラスト前に家族の話も盛り込んでくれて、良かったです。
 (果てしない運命を越えて未来がある。辛いことがあっても、立ち上がり、抗う、そういう力が、僕たちにはあるんだ。合言葉は――)
 「ジーーーッとしてても!」
 「「「「「「ドーにもならねぇ!」」」」」」
 と最後は夕陽に向けてリク・ライハ・モア・ペガ・レイト・ゼナが一斉にジャンプし、ラストシーンまで無表情でジャンプする先輩素敵。 序盤はその適当加減が気になりましたが、偽装なので無表情で動けるスーツアクターさんに声優が声をあてるというキャラクターデザインの巧さが活き、 最終的には今作で一番好きなキャラになりました。
 で、一番最初に叫びましたが、終盤お気に入りのキャラクターであり、しかし思い切り放り捨てられてしまったアリエさんは、 つくづく残念。
 例えば登場時から露骨に怪しい(目が赤く光ったり)とかだったら、 自身の強化復活の為に女装もやってのけるベリアル様の面白ポイントになったのですが、 さしたる伏線が無かった為にキャラクターとしてのベリアル/アリエの境界線が大変曖昧な上に、アリエの意志はどこまであったのか、 ベリアルはなぜ憑依対象としてアリエを選んだのか、などが一切語られない為、 最終的に“石刈アリエというキャラクターがどこにも居なくなってしまった”というのが大変不満。
 作り手は最初からそのつもりで、“石刈アリエはベリアルの人形に過ぎなかった”からどうでも良かったのかもしれませんが、 伏線の提示がろくに無かったので「実はベリアルでしたー!」がこれといって面白く感じなかった事もあり、 作品に裏切られたような気分になってしまいました。
 仮に石刈ベリエルというキャラクターとして見た場合でも、第23話で用済みになったので生死不明で放置、 というのは面白くもなんともない着地ですし。
 もしかしたら劇場版で拾われる可能性が0%ではないかもしれませんが、TV本編の評価としては極めて残念で、個人的に大減点。
 その他、前回−今回の着地点に関する個人的期待とのズレに関しては上述してきましたが、 総合的には立ち上がりに気になっていた脚本と監督の噛み合っていない気配、劇中外のシリーズ前提要素というノイズが、 ラストで豪快に物語を侵食してしまい、結局はシリーズファン向けの作品に帰結してしまった、という印象。
 《ウルトラ》シリーズとしては、魔王の息子が光の戦士になる物語、に一定の意味があったのでしょうし、 元よりそういう企画ではあったのでしょうが、特に最終回は坂本監督のシリーズ全体への思い入れを強く感じる一方で、 それが安達脚本の色を極限まで薄めてしまったようにも見え、中盤に芽を出した『ジード』単体のテーマ性や面白さが、 花開く事なくシリーズ要素という大波に飲み込まれてしまったのは残念でした。
 最後にこの一言を持って、『ウルトラマンジード』感想、ひとまずの締めとしたいと思います。
 「ヒロインのレム」

(2018年9月9日)

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