■『ウルトラマンジード』感想まとめ4■


“ここからは NEXT STAGE
挑む覚悟 NO DAMAGE”


 ブログ「ものかきの繰り言」の方に連載していた『ウルトラマンジード』 感想の、まとめ4(16話〜20話)です。文体の統一や、誤字脱字の修正など、若干の改稿をしています。

戻る

〔まとめ1〕 ・ 〔まとめ2〕 ・ 〔まとめ3〕  ・ 〔まとめ5〕


◆第16話「世界の終わりがはじまる日」◆ (監督:坂本浩一 脚本:安達寛高)
 傲岸不遜な悪役が転落して、這い上がる時を待っている姿って最高ですね……!
 ……とまあ特殊な性癖はさておき、宇宙の彼方で嫌がらせの接着剤を引き剥がしたベリアルがとうとう復活した頃、 地球ではライハがリトルスターを再発症。そして脳裏に、
 「ベリアルが来る」
 という、聞き覚えが無いがどこか威厳を感じる声を聞くようになっていた。
 ライハはゼナとモアによって宇宙Gメンの施設に匿われ……そこではリトルスターを所持した3人の少年少女が保護されており、 やたらめったら攻撃的なリトルスターの効果を披露。
 少年少女達が発動時に取るポーズはそれぞれ、元のウルトラマンの必殺技ポーズでしょうか?
 施設の女性研究員はトリィ・ティプ、男性研究員はゴドー・ウィン、と横文字だとネタ元が露骨ですが(それぞれ、 ジェイムズ・ティプトリー・ジュニアとトム・ゴドウィンか)、モアの反応を見ると、女性の方は以前に出てきたピット星人?  わからなくても困らないのですが、出来ればちらっと回想カットの1枚ぐらい入れてほしかった所です。
 一方リクは、レイト/ゼロに、ベリアル襲来を告げる声について相談していた。
 「ベリアルは……強い、ですか?」
 「ああ、強い。悪夢を形にしたもの。それがベリアルだ」
 第1話アバンにおいて多少の力は見せているものの、基本的には、みんなベリアル知ってるよね? という前提で進んでいた今作なので、 ここで、具体的なベリアルの強さについて、多少なりとも言及してくれたのは非常に良かったです。とりあえず今作劇中において、 ゼロが「悪夢のように強い」と表現するだけの実力者、というのは明確になったので。
 一方で、
 「お互い苦労するよなぁ……変な親父を持つと」
 という軽口にリクが愛想笑いで頷くのですが、ゼロの父親の事を知っているの? 少なくとも、 私は(シリーズにおける現在の位置づけを)よく知らないぞ(笑) という事でここは出来ればリクからツッコんで、 よく知らない視聴者にさらっとでも説明を入れてほしかったところ。
 ……さらっとは無理、という事で諦めたのかもしれませんが。
 「ベリアルを前にした時、僕はどうすれば」
 「親父がどんな存在であろうと、おまえはおまえだ。自分の人生を生きろ。自分の道は自分で決めなきゃならない」
 「でも……」
 「道に迷ったら、仲間の事を思い出せ。過ごした時間を、夢を、自分が何故、ここに居るのかを」
 Zレイトは強く拳を打ち合わせてリクを励まし、リクはその感触に幼い頃、ドンシャインとかわしたグータッチを思い出す……。
 ゼロのヒーロー強度が高いのとベリアルとの因縁からどうしてもこうなってしまうのでしょうが、個人的には、 レイトからもリクに一言でも、子を持つ親として声をかけてほしかったです。ここ数話、レイトのキャラクター性があまり活かされてなくて、 少々不満。
 施設の方ではライハの体をチェックしつつ、「カレラン分子」とか「幼年期放射」とか、第11話のK先生の説明を復習。……まあ、 復習されても、もう1つよくわかりませんが(^^;
 ところが突如、ゴドー・ウィンがトリィ・ティプを撃って人質に取り、偽の連絡で本部に呼び出されていたゼナ先輩にも、 裏切り者の銃口が迫る。正体を見せたゴドラ星人はリトルスター保持者を連れ去ろうとするが、ライハが大変久しぶりに、 怪獣を斬ろうとする女の面目を躍如して宇宙人を叩きのめし、本部でも先輩が宇宙人を制圧。
 「我々はリトルスターを手にして、種族の繁栄を掴むのだ。負けるものかー」
 追い詰められたゴドラ星人は巨大化し、これを見たリクはジードへと変身するが、しばらく戦っているとにわかに空が暗雲に覆われ、 ベリアル、物凄くさらっと降臨。
 散々その存在感を引っ張っていただけに、これといったハッタリがなく少々物足りない降臨でしたが、 ベリアルは準備運動代わりにゴドラ星人を瞬殺し、ゴドラ星人はこの為の登場だったのか……(^^;
 「息子よ、迎えに来た。父ベリアルの元に来い」
 そして今回も、CMで次回の新装備を見せてきてしまうのであった。
 ベリアル降臨を目にしたレイトはゼロに変身し、先制の跳び蹴り。
 「久しぶりだな、ウルトラマンゼロ」
 「やっぱり生きてたのか。殴らせろベリアル!」
 おまわりさーーーん。
 「感動の親子の対面だ。邪魔するな!」
 ゼロはベリアル波を回し蹴りで吹っ飛ばすと、ビヨンドに変身。
 「ひよっこどもの力を集めた所で、俺様には勝てん」
 「ためしてみるか? ブラックホールが吹き荒れるぞ!」
 テンション高いゼロビヨンドは、ウルトラ舎弟ラッシュからのウルトラ舎弟スラッガーでベリアルに確実にダメージを与えていくが、 そこにジードが乱入した事で、二人まとめて大技で吹き飛ばされてしまう。
 「息子よ……たくましくなったな」
 「ジードだ、僕はウルトラマンジード。その口で、僕のことを息子って呼ぶな!」
 「その反抗心。さすが俺の子だ。父が可愛がってやる!」
 降りしきる雨の中、泥水の中で両者はもつれ合い、ベリアルと戦うほどに、ジードの姿が黒に染まっていく姿は、 フォルムがシンプルなウルトラマンだけに、大胆かつ印象的。第1話のジード初戦闘も踏まえているであろう事が、 ベリアルという闇の存在感を強めます。
 ベリアルは、ファイブキングとゾグ第2形態の怪獣カプセルを用いて、自らキメラベロスに融合合体。
 レイブラッド星人というこれまた元ネタの直球な名称が出てくるのですが、劇中設定の補完なのか、 他シリーズと関係しているのかは不明。K先生以外の宇宙人も利用している事を示している、という解釈でいいのか (ベリアルが現在の姿になった事と関係の深い宇宙人との事)。
 「さあ息子よ、戻ってこい。俺の所へ!」
 ベリアル顔のブラックドラゴン、とでもいった姿のキメラベロスはジードを呑み込み、 ライハに止められたゼロが攻撃を躊躇している隙に飛び去ってしまう。……この人、 止められなかったら思い切りウルトラ舎弟ファンネルぶち込むつもりでしたよ!
 「その姿を見た人々は、世界が終わる事を悟った。雄々しく広げられた翼、それは地面を離れ、人々の頭上を横切り、 空へと高くのぼってゆく。その日、人々の中から希望は消えた」
 毎度お馴染みリクのモノローグを用いて大きく煽るのですが、特に破壊活動をしたわけではないので、 やや強引な煽りになってしまいました(^^; 人々の中に「ベリアルの記憶」が存在していてその影響、 というニュアンスがあるのでしょうが、地球人類の「ベリアルの記憶」というのをずっと曖昧に扱ってきたので、しっくりと収まらず。
 特に通常、強敵が出現すると派手な破壊を巻き起こす作品なので、飛び立つ前の置き土産に、 都市部の大破壊ぐらいは見せてくれないと説得力が足りず。
 ベリアルドラゴンは、ジードを完全に融合する為に、月面でその身を休める。絶望が世界を覆っていく中、ライハは、 自分の中に響く声に耳を傾けていた。
 「……まだ、終わりじゃない」
 次回――なんかまた、凄いの出てきた。

◆第17話「キングの奇跡!変えるぜ!運命!!」◆ (監督:坂本浩一 脚本:安達寛高)
 「ごめんなさい! 今日も……ちょっと、帰れないかも」
 ベリアルに取り込まれたジード――朝倉リクの存在の消失が危ぶまれる中、 ゼロに憑依された地球人――伊賀栗レイトの家庭の消失もまた、危ぶまれていた。
 まあ娘のマユはリトルスターを通して思いっきり関わっていますし、 出来た妻である所のルミナさんが色々と心得ていて最終的に丸く収まるのが予想されてそれはそれで一つのお約束で良いのですが…… 妻子ある一般人男性にもっと配慮を!
 ベリアル出現という緊迫した状況下でネギの入った袋を押しつけられて娘と一緒に取り残されたルミナさんの、私の怒りが今爆発!  という展開もそれはそれで見たいですけど。
 Gメン先輩は取り押さえたゴドラ星人をぼっしゅーとし、星雲荘に戻ってきたライハは、脳裏に響く謎の声についてゼロに相談。
 「その声は恐らく……ウルトラマンキングだ」
 崩壊しかけた宇宙を繋ぎ止め、癒やす奇跡の存在……リクを救う一縷の望みを賭けてキングと交信を試みようとするライハは、 ゼロに教えられたこの宇宙で最もキングの存在が色濃く残る場所――クライシスインパクトの爆心地へと自転車を走らせる。
 一方、ベリアルの胎内イメージシーンでは、ベリアルがリクを抱きしめ、己の内側に引きずり込もうとしていた。
 「孤独だっただろう……戻ってこい。父のところに。俺はおまえを一人にしない」
 「僕を、受け入れてくれるの?」
 「もちろんだ。俺たちは家族じゃないか」
 初めは抵抗しながらも、父を名乗るベリアルの甘い囁きに、リクは少しずつ、自分の居場所を見失っていく。
 ベリアルさんは、力を振るえればそれでいい! みたいなイメージだったのですが、名前に悪魔を冠しているのは伊達ではなく、 割と囁き戦術。
 「心の奥底では求めていた筈だ。本当の家族を。さあ、身を委ね、楽になれ」
 星雲荘ではジードが徐々に融合していく経過がモニターされており、
 「リクが、減っていくよー!」
 が凄い台詞(笑)
 20時間が経過し、嫌がらせの為に月へと飛んだゼロだが、ジードとの融合が進み力を増したベリアルの前に苦戦。 赤黒い空に包まれたイメージ空間では、真紅の瞳のイビルジードから、「ちょっと声が宮野真守だからってスカして調子に乗ってんじゃねーよ!」 と日頃の鬱憤をぶつけられる。
 その頃、爆心地である病院に辿り着いたライハは、宇宙に遍在状態にあるキングの意志との接触に成功していた。 実はその病院はライハが生まれた場所であり、かつて難産だったライハが母親の胎内で死の危機に瀕していた際、 両親の祈りを受け取ったキングはライハの誕生を助けていた。その時からライハはキングと交感する素養を宿していたのである。
 つまり鳥羽ライハとは、高次存在にアクセスする為のパスを持った、いわば“キングの巫女”であった事が明かされるのですが、 正直唐突。
 ライハが、初のリトルスター発症者であるとか、ウルトラカプセル開発の経緯やK先生の暗躍など、 諸々の流れを文字情報で読むと何となく納得できる設定なのでしょうが、連続TVシリーズとしてすんなり腑に落ちるには、 もっと明確な布石が必要であったように思います。
 その上で最も拍子抜けだったのは、肝心のキングとの交信が、病院に入った途端に成立してしまう事。
 クライマックスに合わせた方が格好いいという判断だったのでしょうが、ライハの剣舞は、リトルスター譲渡よりも、 キングとの交信に用いた方が効果的だったのでは、と思います。
 そうする事で、ライハにとってキングとの接触が<試練>になりえますし、 ライハの武術家としての鍛錬――それによって育まれた集中力――が、巫女としての役割を果たす時に意味を持つ、 という形で説得力の補強もできたので。
 その<試練>の要素が抜けている(弱い)為に、お気に入りの女の子に頼まれたのでキングがサービスした ように見てしまい、この後の展開の劇的さを弱めてしまいました。
 勿論、キングは元よりアンチベリアルな存在でしょうから、リク側に手を貸す理由はあるのでしょうが、それならばこそ、 これまで手を貸せない状況にあったキングが手を貸すに至るくだりは、 劇的な<試練>としての意味づけが必要であったように思えます。
 ここが今回の扇の要で、それゆえに残念だった部分。
 キングに助けを求めたライハは、キングの力によってジードの精神世界へと飛び込み、その名を呼ぶ。
 「リク駄目! ベリアルに惑わされないで! あなたはリク、朝倉リク。思い出して!」
 ライハを消し去ろうと放たれたベリアルの攻撃を防ぐ、キングの光。
 「忘れないで! 仲間の事を! 地球の事を! あなたの夢を! あなたは……みんなのヒーローなんだから!」
 そして朝倉リクは思い出す……幼い日のリクが握手会の片隅で泣いていた時、ドンシャインが声をかけてくれた事を。
 「君の笑顔を取り戻す。Here we go」
 自分の中のヒーローの原点を掴み直したリクは、自分が、何になりたかったのかを取り戻す。
 ――「具体的にはわかんないけど、誰かを元気にさせたり、楽しい気分にさせたり、そういう人になれたらいいのかな」
 「リク……行きなさい! 運命をひっくり返すの!」
 「ジーッとしてても、ドーにもならねぇ!」
 幼年期の孤独から、ヒーローという夢へ――かつての自分と同じ誰かを、元気づけ、笑顔にする為に、 自ら動き出す事を決めた自分はもう道具ではないから、今、ウルトラマンジードは父の呪縛を打ち破る!
 「遅いぞ……ウルトラマンジード」
 「主役は遅れてくる。前にそう言ってましたよね?」
 ヒーローとして一つ階段を上ったリクが、ヒーロー強度の高いゼロにやり返すというのは鮮やかに決まり、 ベリアルドラゴンと取っ組み合ったジードは。必殺光線の反動で、ベリアルごと地球へ(笑)
 ここから、怒濤のフォームチェンジ攻勢に今作では初となるボーカル曲を重ねた戦闘シーンとなり、 逃げ惑っていた人々がいつしかジードの勇姿に足を止め、やがて声援が起こる、というのは坂本演出と安達脚本がようやく噛み合った感じで、 素直に格好良かったです。
 「リク……みんなの声が聞こえる?」
 人々の祈りを受け、これまでで最高にキレのある戦いを見せるジードは、ベリアル光線をものともせず、ヒゲスラッガーへとチェンジ。
 「ウルトラの父か。ケンには恨みがある。容赦せん」
 本名ネタが挟まれ、向かってきたベリアルドラゴンに対していきなりヤクザキックを入れる辺り、 父さんの方でも何やら思うところがある模様。そしてライハの剣舞に合わせて、キングの力がジードへと託され、 ベリアル×キングというトンデモな組み合わせで、フュージョンライズ。
 「変えるぜ運命!」
 その名を――ロイヤルメガマスター。
 ジードは、マントをたなびかせて杖を掲げ、凄いモミアゲの新フォームとなり、 ギャラリーからの「かっこいー」発言に言わされている感が漂いますが、これもキングの奇跡か。
 「その姿は……馬鹿な。貴様、認められたというのか、キングに!」
 モミアゲマスターは杖をひっくり返して剣として振るい、前作主人公が意図的っぽいものも含めて剣に振り回されている感じだったのに対して、 鮮やかにキングの剣を使用。
 ベリアルの強力な攻撃に対して、ウルトラ6兄弟カプセルを装填して6人まとめて召喚し、何に使うのかと思ったら……

 盾だ。

 視聴者がウルトラ縦社会の殺伐とした現実に戦慄している間に、戦闘は空中へ。
 「俺をどれほど否定しようと、おまえはベリアルの息子。生きているかぎり、俺の名前からは逃れられん」
 「逃げるつもりはない! この体が、あなたから作られたものでも、この魂は、僕のものだ!」
 リクは凄く盛り上がっているのですが、こう持ってくるなら劇中でもっと、“魔王ベリアルの恐怖”を煽っておいた方が良かったような。 今作序盤における、地球人類のベリアルと怪獣に関する曖昧な記憶、というのが、今作の謎の中心が、 「世界」にあるのか「リク」にあるのかを不透明にしてフックのかけ違いを生んでいたのですが、 ベリアルはもっとオープンに恐れられている存在、としておいた方が効果的な流れだった気がします。
 この辺り第1話アバンの不出来などを考えると、当初やりたかった仕掛けがパイロット段階で不評で、急遽修正を迫られた、 などあったのかもしれませんが。「リク」絡みの要素が中盤以降に巧く噛み合ってきたのに対して、 「ベリアルと世界」という要素は今もってちぐはぐなまま前半に中途半端に謎解きしてそれで片付いた、 みたいな事になっているので、どうも邪推してしまいます(^^;
 まあ更にここから、片付いたと見せかけてもう一ひねり入れてくる予定なのかもしれませんが、とすると、 あまりに作品の面白さと連動していない要素を延々と引っ張っている、という誉められない事になってしまいますし。
 諸々、最初から明確にベリアルの恐怖とジードを結びつける演出をしていた方がスッキリしたかな、 と(ベリアルに関する前提知識の有無で印象変わる所ではありましょうが、ほぼゼロの人間から見た感想です)。
 「変えられるものか。運命を!」
 「変えてみせる! 僕の運命は、僕が決める!」
 激闘の末、モミアゲマスターの必殺光線ロイヤルエンドによりベリアルドラゴンは大爆発し、金色の粒子になって消滅。 また3人の子供達のリトルスター(ジャック・エース・タロウ)が回収され、AIBは、 ウルトラマンへの祈りがリトルスター譲渡の条件である事を把握する。
 モミアゲマスターが圧倒的奇跡の暴力でベリアルを完封し、構造的には<試練>を乗り越えて賢者から<呪具の贈与>を受けて勝利を得る、 という形なのですが、その<試練>の焦点がリクに合っていなかった為に、
 「認められたというのか、キングに!」
 というベリアルの言葉(これはつまり、「認められるだけの事をした」という事である)がしっくり来ず、このクライマックスバトルに、 個人的にはあまりノれませんでした。
 ライハに改めて重要な役割を与えるとともに、リクを支える仲間の力があってこそ<試練>を乗り越える事が出来たと強調したい意図だったのでしょうが、 それならばリクの代わりに<試練>を請け負わせるべきライハが、なんの障害もなくキングと接触してしまう為、 <呪具の贈与>をされる劇的な説得力が弱まってしまいました。構造的には、 ライハになんらかの「選択」をさせるという<試練>を与えなくてはならなかったのですが、 K先生絡みで複雑骨折した鳥羽ライハというキャラクターの背骨の脆さが出てしまった感。
 この辺り、ライハへの好感度でも印象の変わる所でしょうが、 恐らくモアのキャラクター強度なら<呪具の贈与>に説得力を持ち得る<試練>を与えてもそれを突破できただろうと思われ、 今回も、これまで話の都合に振り回されがちだったライハに、更に都合のよい設定が付加された、という形になってしまったのは残念。
 ライハというキャラクターを雑に扱おうとしているわけではないだけに、かえって歪つになってしまっているのが、とても苦しい。
 なので正直、リクに正気を取り戻させるライハの言葉も、ライハならではの言葉になっておらず、悪い意味でのベタになってしまっています。
 序盤からあちこちに埋めていた地雷が、終盤戦へ向けてのスプリングボードとなるエピソードで立て続けに爆発した感ですが、 最終章手前とか、最終話そのもので爆発するよりはマシか(^^;
 あと私が期待しすぎていた所もあるのでしょうが、満を持してのベリアル登場だっただけに、前回の登場といい今回の退場といい、 もう一つハッタリが弱くて呆気なく感じてしまい、
 ベリアルを倒す為にキングの力を得る
 というよりも
 キングの力を得る為にベリアルを出す
 という前後編に見えてしまったのは物足りなかった部分。
 リクの追い詰め方にしろ、敵の脅威と迫力にしろ、11−12話がよく出来すぎていた感はありますし、 K先生という引き要素があるので一時退場だろうとはいえ、前作でいうならサンダーブレスター並のインパクトはベリアルに欲しかった所です。
 何はともあれこのベリアルへの勝利により世論は大きくジード歓迎に偏り、星雲荘へと帰還したリクを囲んで催されるささやかな祝勝パーティ。 その途中、ジードの名前の由来に食らいついてきたモアに対し、「ジーッとしててもドーにもならない」ではない、と慌てて否定するリク。
 「違う違う。遺伝子のジーンと、運命のディスティニーの、組み合わせだから」
 「綴りが一致しません」
 レムの冷静な突っ込みに対し、リクは「GEED」+「DESTINY」のDEをEDにひっくり返したと主張。
 「運命をひっくり返す、て事だよ。な、ライハ?」
 「好きにすれば」
 二人の間に甘酸っぱい気配が漂い出し、ジェラシーを燃やしたモアが割って入るのですが、まあむしろ、 面と向かうと照れて誤魔化すというのはモアの得点です。
 ……というかこれ、由来をねじ曲げてでも本気でライハをナンパしていたとしたらリクが凄く最低なわけですが、 『ジード』のダブル(+アルファ)ヒロイン構造は、視聴者のお楽しみ要素として劇中では曖昧にしたまま終わっても特に構わないと思う一方、 スポット回での押しが個別ルートばりに強いので、これ以上やると、 ただ単にリク最っ低になりそうなのは、少々不安です(^^;
 妻子持ち会社員男性からの心証が、ちょっと悪化した!
 さて今回、古典的な英雄物語の構造においては、
 〔胎内回帰 → 父との対決 → 死と復活 → 父(王)殺し→ 変貌した世界への帰還〕
 までを詰め込んでおり、虐げられた幼年時代を過ごしてきた人間英雄が、暴君と化した半人半獣のかつての英雄を打ち破る事で、 物語世界においては、リクの求めていた“公のヒーロー”としてのウルトラマンジードが成立しています。
 途中のバトル演出も含め、神話の最終章とでもいうべき展開なのですが(ベリアルを倒した事で世界を再生産するエネルギーが解放され、 宇宙が癒えてキングが復活していたら完全に最終回)、これをこのタイミングに持ってくる事で、この後どう調理してくるのか、 というのは楽しみ。
 ジードが“公のヒーロー”として認められたのは、持ち上げて落とす前振りにしか見えませんし!(笑)
 モミアゲマスター発現のくだりに不満はあるものの、ヒーロー作品として好みの展開を坂本監督らしく正面から見せてくれたのは良かったですし、 残り8話あまり、ある意味でやる事をやった『ジード』の、“この先”に改めて期待です。
 そして、その重要な鍵を握るであろうK先生は今週もゴミ捨て場でひくひくしていたが、その背に宿る怪しげな光の正体は?! で、 つづく。
 次回――記憶を失ったK先生に近づく女の影って、何そのどう転んでも私が得しそうな展開?!

◆第18話「夢を継ぐ者」◆ (監督:伊藤良一 脚本:柳井示羊緒)
 OPとEDの歌詞が2番に変わり、ここからがNEXT STAGE。映像ではモミアゲマスターがやたらと尺を採り、 考えてみればOPの一番最初に堂々と出てくるので、これはもはや実質的なキングによるOP乗っ取りなのでは。
 久々登場の銀河駄菓子屋はベリアル撃破記念セールで盛り上がっており、今日も黙々とライハが手伝う一方、リクはいい加減、 就職を考えていた。
 「警察官、消防士、学校の先生、お医者さんに会社員、人の役に立つ仕事が多すぎる。僕は将来いったい何になったらいんだ!」
 幼稚園〜小学生レベルで夢一杯ですが(主な想定視聴者層ではあり)、みんなに元気と笑顔を与えられるヒーローを目指すリクの口から、 現実の仕事もどれだってヒーローに繋がっている、と示してくれたのは好み。
 そんな折、K先生がとうとう、編集者の殺害容疑で全国指名手配されるというニュースが流れ(思えばこの編集者、 AIBに協力を要請されたのだろうに守ってもらえなかった物凄い被害者)、 エンペラ星人の怪獣カプセルを回収したと報告を受けたモアと先輩は、街をふらつく薄汚れた姿のK先生を発見。 そこにレイトも居合わせてZレイトとなり、逃げるK先生を追い詰めている所にリクまで通りすがるが、更にそれを見つめる縞々の宇宙人。
 「追われる獲物とは、伏井出ケイ、堕ちたものだ。しかし、その獲物は私のものだ」
 縞々の宇宙人はシマウマロボを召喚すると、第2話でリトルスターを奪おうとして粉微塵にされた同胞の復讐の為に、K先生を攻撃。 周辺被害を抑える為に、変身したゼロが横から蹴りを入れるも、それをものともせずに前進する。
 「どこのどいつだか知らんが、こざかしい。邪魔をするな!」
 「俺はゼロ! ウルトラマンゼロだ!」
 殴り飛ばされ、知名度の不足にいたくプライドを傷つけられたゼロは、勢いで舎弟達と融合合体。
 だが、宇宙人がベリアル軍から奪ってカスタマイズしたというレギオノイドは、ゼロビヨンドにも匹敵するパワーを見せる。
 見た目割と格好いいシマウマロボですが、額に「ダダ」という文字の意匠が入っているノリに、 最近見た事もあってノリシロンファイナル(『激走戦隊カーレンジャー』)を思い出してしまいました(笑)
 宇宙人の名前の由来から、ちょっとシュルレアリスム的なものを意識したのかもしれませんが。
 一方、リクとモアから逃げていたK先生は、オープンカフェでノートパソコンに向かっていた女に匿われる。
 「貴方……作家の伏井出ケイ先生でしょ?」
 「作家……? ケイ……?」
 「もしかして……自分の事がわからないの?」
 今回ここまで、明らかに様子のおかしいK先生の逃亡劇が続いているのですが、 予告で「記憶喪失」と明言してしまったのは勿体なかった感。
 シマウマロボとゼロビヨンドは空中戦に移行し、K先生は山中にあるという女の仕事場に連れて行かれる……放棄された植物園の一室、 のようなその家の壁には所狭しとK先生の編集者殺人容疑にまつわる記事が貼り付けられており、 壁一面に並ぶK先生の決め顔って、ひぃぃぃぃぃっ!
 「それは貴方の写真。貴方は伏井出ケイ。突然彗星のごとく現れた経歴不明のSF作家。地位と名誉を手に入れ、 人気の絶頂にありながら、ある日、殺人事件の容疑者として指名手配される」
 鏡に映る自分の相貌に手をやりながら戸惑うK先生に、ぐいぐいと顔を寄せる女。
 「編集者の死をきっかけに貴方は転落した。知的で優雅で上品だった先生が、今はもう見る影も無い。どうして殺したの?」
 「わからない……君は、誰?」
 「私は石刈アリエ。ノンフィクションライターよ」
 熱狂的なフクイデストがK先生を監禁!というS・キングな展開になるのかと思ってドキドキしましたが、 アリエ、と名乗った女は、編集者不審死事件を本にしたいと、K先生に取材を申し込む。
 「本を出すまで、ううん、本を出した後も、貴方のこと守るから」
 現状認識を失い、靄のかかったK先生の世界、という事でか今回全体的に青黒いフィルターを画面にかけているのですが、 穏やかながらも瞳の奥を輝かせ、少々サディスティックにK先生に迫るアリエのミステリアスな雰囲気が強調され、 このやり取りのシーンでは効果的になりました。
 困惑して黙り込むK先生の足下に転がるのは、袖口からこぼれ落ちたチェスの駒……ベリアル(キング)とK先生(ポーン)の象徴という事か。
 星雲荘ではモアからリク達に、ベリアルの撃破後に幾つかの怪獣カプセルが飛び散り、 その内エンペラ星人とダークルギエルのカプセルを宇宙Gメンが回収した、と後追いで説明。
 「それを狙って、色々な宇宙人が本部にアタックを繰り返してるの」
 「え、なんで?」
 「怪獣カプセルを理由して、宇宙を支配する為」
 これまで、ベリアル復活の可能性を窺い息を潜めて様子見していた宇宙人達が、その死により銀河の覇権を求めて一斉に動き出す…… というのは、前回のベリアル撃破をロイヤルフォームの踏み台に留めるのではなく、 魔王の死が新たな混沌の引き金になるという次の展開に繋げてくれて良かったです。
 どちらにせよやはり、ベリアルの存在感と力はもっと強大に描いて欲しかった所ではありますが(^^;
 「それじゃ、さっき襲ってきたヤツも?」
 「伏井出ケイを倒し、ベリアルの座を奪うつもりだと考えられる」
 モアは宇宙Gメンの一員として改めてリクに今後の協力を頼み、黙っていてもジードは人々を守る為に戦ってくれるとわかってはいるけど、 ベリアルを撃破して運命を書き替えたリクを別の戦いに巻き込む事に対して筋目を通す所に、モアの大人のしてのスタンスが見えます。
 ところでゼロは……まだ宇宙で戦っていた。
 「大丈夫かな」
 レイトさん、休憩時間中に会社に戻れるかな!
 宇宙空間での激しい攻防では、レイトの口からゼロがまだ完調ではない?事に言及されるも、一時退却の提案を拒否したゼロは、 自爆覚悟の必殺地球落としを敢行――頭上遙か高くでそんな死闘が繰り広げられているとは知るよしもなく、 K先生はアリエのカウンセリングを受けていた。
 「空っぽだった……それを誰かが満たしてくれた。なのに……その人を思い出せない」
 怯えるその姿に、アリエはK先生が、辛い経験から心を守る為に自ら記憶を封印したのではないか、と推測。
 「無理しなくていい。思い出したくなるまで、私待つから」
 「……すまない」
 「謝らないで。貴方には感謝してるの。貴方の事を書くって決めて、ずっと調べて、まさかこうして会えるなんて。 やっと運が向いてきたみたい」
 「君は……親切だ」
 「……本を出して有名になりたいだけ。お代わりどう?」
 K先生のあまりに素直な言葉に一瞬口ごもるアリエは、指名手配犯を匿っている時点で勿論ぶっ飛んではいるのですが、 倫理観と名声の希求と人間的感情が適度にせめぎ合っているというキャラクター造形は、今後の転がし方が楽しみです。
 その時、宇宙から迷惑な二つの巨影が落下してきて、ものの見事に自爆したゼロは変身が解け、K先生に迫るシマウマロボの銃口。
 「伏井出ケイ、ストルム星人ごときに、宇宙の派遣は握らせん。ベリアルの後は、我らが貰い受ける」
 「ストルム星人?! なんの事?!」
 「わ……わからない!」
 シマウマロボのサイコガンが火を噴き、アリエとK先生は巨大な爆発に飲み込まれ……その炎の中で、 ベリアルの大爆死を――自らの記憶を取り戻すK先生。
 「……そうだ……私は失ったのだ。ベリアル様を! 空っぽの器、虚ろな私を満たす方を! あの方はもう居ない。……居ないぃ!!」
 ここまで、傲岸な男が落ちぶれて弱り切った姿が素敵だったK先生ですが、割とさっくり復活。個人的にはもう少し引っ張って、 アリエさんとの奇妙な同居生活がしばらく描かれても楽しめたのですが、残り話数を考えるとそんな事をしている場合ではないか(^^;
 少し気になるポイントとしては、台詞をそのまま受け取ると、K先生はベリアルを失って空っぽになったのではなく、 もともと空っぽだったのがベリアルによって満たされていた、という発言。ストルム星人の特質なのか、 K先生個人の生き様なのかはわかりません、リクにとってのドンシャインが、K先生にとってのベリアルだったという可能性も浮上してきて、 どう転がるのか注目。
 「どうしたの?」
 「私は…………私がその後を継いでみせる」
 完全にフクイデワールドを取り戻したK先生は、大事に携帯していたライザーとカプセルによって棍棒怪獣を召喚。
 「怪獣を呼び出した?!」
 「そうはさせるか!」
 妙にヒーローっぽい構えでダッシュから棍棒怪獣に殴りかかるシマウマロボだったが、パンチの連打を軽々と防がれ、あえなく轟沈。
 「まさか! この、この私が、やられるとはぁぁぁぁぁぁ!」
 武人ポジションだったのか、縞々宇宙人は、やたら格好いい台詞回しのまま、大爆死を遂げる。
 「伏井出ケイ! ベリアルはもう死んだ。戦うのはよせ!」
 「朝倉リク。ベリアル様の紡ぐ悪夢は私が継承した。誰一人安心して眠らせるものかぁぁ!!
 ゼロの落下地点に駆けつけたリクは完全復活したK先生と再会し、 第16話でゼロがベリアルについて形容した「悪夢」を拾った台詞が格好いいのですが、返す返すも、 今作中におけるベリアルのインパクト不足が惜しい。
 「次は貴様だぁ!」
 テンション高く手を振り上げたK先生は、木陰からアリエが全てを見つめる中、サンダーキラーにフュージョンライズ。リクもまた、 アリエの視線に気付かないままジードへと変身し、2体の怪獣に立ち向かう。 Zレイトもグラサン取り出して再変身しようとするがライハに止められ、アリエはその光景もバッチリ目撃。
 3人の見る前で棍棒怪獣に苦戦するジードは、モミアゲマスターにフォームチェンジ。 登場時のオルガン風ジングルが格好いいモミアゲマスターは華麗な立ち回りでマントと剣を振り回すと、ジャックカプセルを装填し、 雷属性の必殺剣で棍棒怪獣を粉砕する。
 「キングの力は貴様が継いだかぁ!」
 「継いだのは力じゃない、夢だ!」
 リクとK先生が光と闇の後継者として対比になり、リクの台詞そのものは格好いいのですが、 前回がそういう話ではなかった気がするので、エピソードのキーワードとやや強引に繋げてしまった感じになってしまったのは惜しい(^^;
 サンダーキラーはまさにベリアルを思わせる巨大な爪でジードを挑発、対してモミアゲマスターは柔よく剛を制す剣技で怪獣をいなし、 前回のベリアル戦はとにかく力押しだったのですが、今回はモミアゲマスターとしての立ち回りが強調された戦い方が面白かったです。
 最後はタロウカプセルを用いての炎属性必殺剣でエンドマークし、前回ラストでついでのように入手したカプセルは、 キングソードの属性攻撃用と判明。最強モミアゲマスターの奇跡の無敵ぶりを存分に描きつつ、しっかりと玩具も売り込んでみせました(笑)
 それにしても『宇宙戦隊キュウレンジャー』のシシレッドオリオンといい、今作のロイヤルメガマスターといい、 今年のバンダイは“マントの最強キャラ”推しなのでしょうか…………は?! これは、来年の春映画でビッグワン復活?!
 他会社作品の与太はさておき、モミアゲの力に破れ、無惨に吹き飛ばされたK先生は顔に謎の傷を浮かび上がらせながら藻掻き苦しんでいたが…… そこに姿を見せたのは、石刈アリエ。
 「貴方の話、もっと聞かせて……こんなの最高すぎる!」
 「震えているぞ」
 「武者震いよ。だって、いい本が書けるんだもの」
 ここでアリエを、完全に壊れているのではなく、自分の本の為に恐怖心を乗り越えようとしている人間、と設定したのは今回の白眉。
 自分しか書けないものがある、書きたい、書かずにはいられない、 という“書く人間”の根源的欲求と思い込みが善悪も種族の境界も飛び越えて手を伸ばすというのは、 前半のK先生が作家を隠れ蓑にしていた、という要素と上手く繋がり、物語として非常に面白い含みになってきました。この要素が、 終盤に広がってくれるといいなぁ。
 「そんな日は来ない。……おまえはここで死ぬぅ!」
 「隠れ家の提供、情報の収集、私、役に立つと思うけど……」
 抑えきれない恐怖に細かく震えながらもアリエが差し伸べた手を打ち払うK先生だったが、辛うじて杖を振りかぶるも力なく倒れ込み、 アリエに抱き留められる。
 「私と一緒に来て」
 ……ところで、ジャケットモードになった途端、いつの間にか杖を握りしめていたのですが、杖は記憶とセットなのか(笑)
 (――夢は、誰かに伝えないと消えてしまう。いい夢も、悪い夢もみんな。その日、世界は再び変わり始めた。 それぞれの受け継いだ夢が、動き始める)
 そこからリクの毎度のモノローグで続くのですが、妙にスタイリッシュに高原を歩み去るリク・レイト・ライハの姿に、凄く違和感(笑)  そしてライハは、何故そんなに、何かをやり遂げた顔なのか(笑)
 K先生を中心にメインキャラを満遍なく掘り下げて良い仕事だったのに、 ゼロ復活→ヒカリ宅配便の大惨事コンボで台無しになってしまった第7−8話以来の柳井脚本でしたが、役者さんの好演もあり、 落ちぶれて弱り切ったK先生を軸にした展開が面白かったです。
 予告からてっきり、人間の女性に化けたダダがなんらかの情報を求めてK先生に近づくのかと思ったら違ったアリエさんですが、 サスペンスフルな演出もはまって雰囲気の出た好キャスティングで、かなり良い感じ。これまでと全く違う立ち位置の女性キャラが、 K先生の側に登場するという新展開は非常に面白く、どう物語をかき混ぜてくれるのか、ここからの終盤戦が非常に楽しみです。
 ところで第8話の感想を読み返していたら、
 とりあえず、残念カプセルを使った後遺症が出ない事を祈ります。
 「ルミナさん……僕最近、数奇な運命に導かれて旅に出たい気持ちなんですよ」
 と書いていた事に気付いたのですが、最近レイトさんが無職に引き寄せられ気味なのは、後遺症か!!
 そして今回、〔ゼロビヨンド < シマウマロボ <<< 棍棒怪獣 <<<(中略)<<< モミアゲ〕 という後半戦の絶望的なヒエラルキーが提示されたのも、後遺症か!! ……まあどうやら、 ゼロ(ビヨンド)はここまでかなり無理をしていたらしい、というエクスキューズはつきましたが。
 次回――ポッと出の女に真ヒロインの座は渡さない! 遂に、眠れる獅子(レム)、立つ!!  これまで今作で薄かった「母」のピースが入ってきそうな上に、メカゴモラが格好良くて、次回も期待。

◆第19話「奪われた星雲荘」◆ (監督:伊藤良一 脚本:勝冶京子)
 ずっと昔、ぼくには静かな世界があった。
 でも、ある日、街が炎に包まれた。
 すべてを失ったぼくは、暗闇の中で気がついた。
 レムが作ったという小説の朗読を聞きながら、印税生活に夢を膨らませるリクとペガだが、そこへ突然乗り込んでくる伏井出ケイ!
 平穏な日常に衝撃の闖入者という開幕だったのですが、赤い警告灯と鳴り響くサイレン、 エレベーターが開くといきなり姿を見せるK先生、という図が微妙にコントっぽくなってしまい、緩急がうまく切り替わらず。
 よろめきながらも向かってくるK先生にライハが切りかかり、ここしばらく割と戦闘の見せ場があるライハですが、 むしろ初期にもっとアクション面で目立たせておいた方が良かったような。リクとのバランスの問題もあったのでしょうが、前半、 怪獣が出てくると働きようがないのでオペレーター(別に分析が得意なわけではない)、という位置づけにしてしまったのは、 キャラクターの変遷を描くにあたって上手くなかったような気がします。
 怪獣を斬って斬って斬りまくりたい! → K先生との対決を経て復讐から解き放たれる → 積極的にリクのサポートもするように
 と見せた方が、ライハの成長曲線としてもわかりやすかったかな、と。
 そういう意味では、ライハはリクと違って、最初から自分をわかりすぎているキャラクターなのでしょうが、今回の反応を見ても、 第9話でキング粒子に諭された時点でK先生への復讐については整理がついてしまったようですが……うーん……まあもう、 下手な地雷は踏まない方マシか(^^;
 どうにもライハ、太極刀を振り回し怪獣を斬ろうとする少女、というコンセプトと、アクションで魅せられる女優さん、 という組み合わせのキャッチーさに胡座を欠いてしまった感があり、キャラクターとしての造形の雑さ(都合の良さ)が残念。 今回のエピソードを見ても「呪縛」から解き放たれる、というのが今作の主要なテーマの一つだけに、 ライハのそれが丁寧さを欠く形で処理されてしまったのは可哀想なところです(この先で再浮上する可能性はありますが)。
 ユートムを操るK先生のビーム攻撃を刀で弾くライハだが、レムは3人を基地から緊急避難させ、どこかの山の上へと放り出す。
 「余計な事をしてくれたな……」
 レムを睨み付けるも、苦しみ藻掻くK先生。
 「……あいつはいつも私が大事にしているものを滅茶苦茶にする。私が全てを与えてやったというのに!!」
 室内に散乱するドンシャイングッズがお気に召さないK先生……取りようによっては、 お父さんからの誕生日プレゼントとして匿名で送った『ドンシャイン』のDVDがきちんと整理整頓されていない事に怒っているようにも聞こえますが、 本当は新刊を出す度にサイン本をこっそり本棚に転送していたのに気付いてもらえなかった事に怒っています!
 怒れる実験室の父はレムのプロテクトを強制解除するとそのデータを消去し、マイベッドを呼び出してその体を横たえる。
 「これでようやく、体を癒やせる……」
 前回の頬の傷は皮膚が剥落しているような描写であり、抜き打ち家庭訪問にアリエさんとはどうなったのだろうと思ったら、 どうやらマイベッド&マイ枕でないと快眠できないタチだった模様。
 その頃、山中に放り出されたリク達3人は、草原に倒れていた女性を発見。……ベッドに横たわるK先生からシーン切り替わったら、 画面手前に倒れている女性、奥から走ってくる3人、というカットで、
 こんな所にどうして女の人が?!
 という驚きが全くなく、今回どうもここまで、カットの繋ぎがやたら雑(^^;
 リクよりもむしろイケメン仕草に慣れたライハが女性を抱き起こすと、その女性は驚くべき事を口にする。
 「レムです。伏井出ケイに消去されそうになり、緊急避難しました」
 「え?! でも、その体……」
 「この姿は、私の音声を元に、地球人的肉体を形成し、プログラムを移植したものです」
 えええ?!
 一応、総集編回ラストの呟きが伏線なのでしょうが、伏線があれば良いというものではないというか、そんなに簡単に作れていいのか、 地球人的肉体(なお演じているのは、レムの声優を務める三森すずこ本人)。
 まあそこは宇宙的科学で何とかなるという事でもいいのですが、最大の問題は、 高度な人工頭脳的存在が人間の姿になるというシチュエーションは、 偶発的に(望まず)手に入れてしまった肉体に戸惑うというのがポイントなのであって、 実はこっそりボディ作っていましたというこのガッカリ感!
 とまあ、伝わりにくい私の性癖はさておき、第1話以来の住所不定になってしまったリク達は、 レムから管理権限を奪い取ったK先生の操るユートムから身を隠し、星雲荘を取り戻す事を固く誓うのだった――!
 一方その頃、石狩アリエは商品の取材と称して、伊賀栗レイトの職場を訪れていた。
 壁に貼られたポスターや、そういえば以前にスペインとビジネスメールのやり取りをしていた事を考え合わせると、 どうやらレイトさんの会社は、海外の化粧品や洗剤などを輸入販売している模様。……まあ、あの頃と同じ会社に居るのか、 解雇されて再就職したのかはわかりませんが(笑) 取材を受けるのでおめかししたのかもしれませんが、 背広の色がいつもと違うのが気になります。
 アリエがレイトをおだてて取り入っている頃、市街地を目指すリク一行では、レムが方向感覚の欠如や肉体の制御に難渋していた。
 「今の私では、皆さんの役に立てませんね……」
 「いいんだよ」
 「え?」
 「だって、レムは僕たちの仲間でしょ」
 仲間として役に立てない事を気に病んでいるレムに、仲間なら役立たずでも構わないと励ますリクは何か間違っている気がするのですが、 この辺りにリクの男としての限界を見る気がします(笑)
 リクはもっと、名付けの父と交流の時間を増やして、レベルを上げよう、それも早急に。
 なんとか4人は銀河マーケットに辿り着き、リクと連絡が付かずに店長に相談していたモア、 またもリクの身近に増殖した妙齢の女性の姿に殺意の波動を昂ぶらせる。そして店長は、レムにアピールを開始。
 「ずっと、ここに居ればいいのに! ね?」
 「……この男は、なぜ私の事を監視しているのでしょうか」
 苦笑するだけで一切フォローを入れないリクとライハ、割と酷い(笑)
 その頃、K先生はマイベッドとマイ枕で完全回復して立ち上がり、その背に輝く妖しい光。
 「力が…………あ・ふ・れ・るぅぅ! あっはっはっはーはっは!!」
 高笑いするK先生はユートムを操り、銀河マーケットでカップラーメンをすすっているレムを発見。
 「うまく逃げたものだな。……だが所詮、私の駒に、すぎない。あっはっはっは」
 K先生の操作でユートムが何かの信号を打ち込むと、苦しんだレムは立ち上がり、追ってきたリクに対して態度を豹変させる。
 「ウルトラマンジード、おまえを消去する」
 「ゲームはこれからだ」
 更にK先生は、メカゴモラを召喚。
 「エンドマークを打ってこい!!」
 地球で作家生活をすること○○年、長年悩まされてきた腰痛と肩こりと偏頭痛が一遍に快復したK先生は、テンション高く、 決め台詞もアレンジ。召喚されたメカゴモラは、黒のカラーリングと、獰猛な目つきが格好いい。
 「リク……助けて……」
 「レム!」
 K先生のプログラムに抵抗するレムだったが、抗しきれずにリクの手を振り払い、その視線が冷たい機械の殺意を宿す。
 「ジーッしててもドーにもならない……でしょ?」
 ここの言い方と表情は、凄く良かったです。
 「最強の器に最高の頭脳! これが史上最強のメカゴモラだぁ!!」
 レムはメカゴモラに吸収されてそのパイロットとなり、ついでに鼻炎と巻き爪も治ったのか、 いつになくテンション高いK先生。
 「レム! やめろ!」
 「ひゃはははは! 自分の世界が壊れていくのはどんな気分だ?」
 意趣返しで盛り上がるK先生は哄笑し、迫り来るメカゴモラを前にリクはやむをえずジードへ変身する。
 「それでいいんだ。おまえも、おまえの大事なものも――全て消してやる。それがおまえの運命だ! アハハハハハハハ……」
 ここでK先生が、リクに新たな運命を突きつける、あくまでリクを運命で縛ろうとする、 というのは報復攻撃に物語のテーマと繋げた意味を乗せて、秀逸。
 なお作戦としてはついでに、そこに転がっているドンシャインの円盤を全部割っておき、グッズには事細かに落書きしておくと、 致命的な精神ダメージを与えられると思います!
 ……まあ逆に、新たなフォームに目覚める危険性もありますが。
 メカゴモラとジードが激突し、意味はよくわからないけどぶつかり合う度に手前で爆発が起きるのが盛り上がっている頃、 美人ジャーナリスト×商品の取材、に舞い上がっていたレイトはゼロに呼びかけられる。
 (おい。おいレイト! 行くぞ)
 「今大事なところなんです!」
 (怪獣が出たんだよ。そっちの方が大事だろ!)
 「生活がかかってるんです! 僕には妻も子供もいるん――」
 (このやろ!)
 抵抗空しく強引に眼鏡を外されてしまうレイトだが……
 「悪いが行かせてもらうぜ」
 「素敵な眼鏡ですね」
 「あん?」
 キーアイテムの存在を知るアリエによって、ゼロ、強制再封印(笑)
 「取材、まだ終わってませんよ?」
 「……あ、……は、はぁ」
 (はぁじゃないだろ! レイトぉ!!)
 怪獣災害より仕事を優先し、美人ジャーナリストに若干鼻の下が伸び気味(劇中世界におけるアリエの一般的立ち位置として、 このレイトさんのリアクションは重要)……というのは今作におけるヒーロー像としては問題ありですが、 最近みんなレイトさんの家庭&社会生活に対してあまりに扱いが軽かったので、 半クール分の反抗としてこれぐらいは許されると思います!
 「おまえの戦いを全て見てきた頭脳が相手だ!!」
 孤立無援(というかゼロが飛んできて話を聞かずに舎弟スペシャルでメカゴを完全破壊されてもそれはそれで大変困る) ジードは仲居スマッシャーとなり、仲居神拳を駆使してメカゴの動きを止めようとするも苦戦。
 「そうだそうだそうだこの圧倒的な力こそ、私の希望……」
 先生、それ、フラグ……。
 「レム、一緒に星雲荘に帰ろう!」
 リクの呼びかけにより再び懸命にKのプログラムに反抗するレムは、レムの中のレムと向かい合う……。
 「あなたは……」
 「私はレム」
 「違う。私がレムよ」
 「ふ、うふふふ」
 「何がおかしいの」
 「あなたもリクもただのコピー。代わりなんて幾らでも居るのに」
 「リクは私のマスター」
 「マスターはケイよ。……あなたの小説の続き、聞かせてあげましょうか」
 「もうやめて」
 「ぼくは、暗闇の中で気がついた。自分の力で運命が変えられない事を。そして、闇の支配者に全てを委ねた。
 「それは……私の」
 「あなたが書いた小説だと思った? 全てはマスターから与えられたものよ、レム」
 「名前で呼ばないで。それはリクがくれたもの」
 「レム。ストルム語で呪縛。それがあなたよ」
 レムはレムから絶望を突きつけられ、名前・与えられたもの・運命というリクが背負う重要なテーゼを、 レムの物語に上手く変換して集約。またここで、レムの自立した個性の表現が、小説、という形を取っているのも今作らしいところです。
 「何をしている? 命令どおり早くジードを消去しろ!」
 「レム!」
 外部ではカラータイマーを点滅させがらもジードが必死に食い下がり、レムもまた、自分の中で戦い続ける――。
 「そろそろエンドマークにしない?」
 「あの小説の続きは違う……ぼくは、暗闇の中で気がついた。独りじゃない事に。ぼくには仲間がいたから。そしてわかった。 運命は変えられる――自分の力で。
 リクの成長を、その仲間達の姿を見守り続けてきたレムが辿り着いた答、それは、人間の意志は、与えられた運命を、作られた宿命を、 乗り越え塗り替えられるという事。自由なる意志さえあれば、誰もが、虚ろな人形である事から飛び立てる。
 「ここは私たちの家。あなたのいるべき場所ではない」
 自らの存在を自らに宿った意志で勝ち取り、星雲荘のコントールを取り戻したレムは、K先生に退去通告。 ユートムの攻撃をスタイリッシュバリアで防ぐK先生の強制排出に成功する。
 「リク、星雲荘を取り戻しました」
 レムの無事を知り、メカゴの弱点を教えられたリクは、ロイヤルメガマスターにフュージョンライズ。 カラータイマーが点滅している事を全く気にしない流派爺王不敗の圧倒的な力でメカゴを完封し、 トドメはマン先輩の必殺剣で成敗…………エースは……?
 今回も出たら完封のモミアゲマスターでしたが、「倒す」のではなく「抑える」為に、 まずは“柔”のフォームである仲居スマッシャーを用いるというのは説得力がありましたし、 ただの前座ではないという使い方は良かったです。他のフォームに比べると、 もう一つ見せ場の印象が薄かった仲居スマッシャーの良い救済にもなりました。
 星雲荘の占拠にもジードの抹殺にも失敗し、山の中に放り出されたK先生は、しかし何故か余裕の笑みを浮かべて立ち上がる。
 「本当の悪夢は……これからだ」
 そうとは知らず星雲荘に帰還したリク達は、まずは部屋の片付けを開始。リクに貰ったと思った名前も、実はケイによる刷り込み、 運命の呪縛に過ぎないのか? と名前の由来を気にするレムに問われたリクは、ペガが楽しそうに笑う中、 照れくさそうにお宝雑誌のページを広げてみせる。それは『ドンシャイン』のグラビア記事であり、特集されていたのは……
 「ヒロインのレム」
 予想の斜め上で酷かった!!!!
 「駄目かな?」
 駄目だよ!!!!!!!!
 「……ヒロイン。悪くないですね」
 予想外の好感触。
 …………えー、秘密基地のマザーコンピューターに自分のバイブル的作品に登場するヒロインの名前を付けるって、 前作の主人公並の重症だと思うのですが、第19話にして、リクが、遠い事象地平の彼方へ飛び立ってしまいました。
 レムはずっと、真ヒロインは真ヒロインでも、不在の母的ポジションだと思っていたのですが、まさかの、

 ドリーム彼女。

 お父さん達は早急に3人で集まって緊急会議を開くべき。
 ライハとモアも今すぐルミナさんに今後の事を相談すべき。
 まずはゆっくり、転地療養から始めないと駄目なのではないか。
 今年も押し迫ってから某ランキングに衝撃の大変動が起きたのはさておき、データベースのプロテクトが解除された事で、 K先生が星雲荘でマイベッドとマイ枕を使ってストルム器官を修復していた事が判明。それはストルム星人が体内に持つ、 エネルギーの位相を反転する器官であり、背中の光の正体、敵の攻撃エネルギーを無効化するスタイリッシュバリアの秘密、 以前にベリアルが命じていたウルトラカプセルへの干渉の理屈、ともろもろの理由を説明。
 どうしてそんな大事なマイベッドとマイ枕が星雲荘にしか無いのかは、 簡単に製造できない×ここまでの事態に陥ると思っていなかった×星雲荘の基盤はストルム星人の円盤?の合わせ技といった辺りでしょうか。
 「ストルム器官……」
 そして絶好調になったK先生は、アリエと接触、密やかな微笑みを交わす。……遠雷の音が響く中、
 「この時、誰も知らない所で、本当の悪夢は、静かに始まっていたんだ」
 というリクのモノローグが今回は綺麗に決まって、つづく。
 前半は演出面での引っかかりと、レムが肉体を得る経緯に不満があったのですが、リクの背負うテーマをレムを通して描いた後半は良かったですし、 第1話の頃から言っていた、「真ヒロインは多分レム」が、確定したので満足です(笑)
 『ジード』は本当に、今作としてこのテーマを描きます、という芯が強く、それを明確に打ち出した第11−12話以降は、 安定して好み。
 まあその分、レムが肉体を求めた感情的部分の掘り下げは完全にオミットされており、 各話の監督・脚本としては自由度がやや低いのかもしれませんが、『ジード』としてのテーマを自分なりにどう描くか、 という点がハッキリしているという作りやすさはあるのかと思われ、後半入ってからのアベレージの高さに繋がっているのかなという気がします。
 前作『オーブ』が一話完結性が強く、各話によってそれぞれのテーマ性が出たバラエティ重視のエピソード群を、 “ガイとジャグラーの関係”という要素で統一感を持たせていたのとは、対照的な作り。
 『オーブ』は結局、『ウルトラマンオーブ』として何を描きたいのか、 という全体を貫くテーマ部分の弱さが短所のまま最終回を迎えてしまい(『オーブ』には『オーブ』の形式の長所もあるのですが、 例えるならば、ある状況に対するリアクションが作品として最後まで一定できなかったのが『オーブ』)、 そこが個人的には不満な着地へ繋がってしまったのですが、今作には是非このまま、できうればここから更に跳ねて、 決着を迎えてほしいです。
 ……という所で次回は、オマージュ色の強い単発エピソード?

◆第20話「午前10時の怪鳥」◆ (監督:冨田卓 脚本:三浦有為子)
 見所は、本編に全く関係ないルナミラクルゼロを物凄い早口で解説するウルトラカプセルナビ。
 (て、文字にして気付いたけど、「伊賀栗ルミナ」の元ネタなのか?!)
 毎日、午前10時になると街を襲撃する、目的不明の謎の巨大怪鳥、ギエロン星獣。 突如現れる巨大怪獣とそれを倒すジードがもはや街の風物詩になりつつあったが、リクは連日の出勤に疲労困憊で、 そんな事で就職できるのか?! という、ややコミカルタッチのインターミッション。
 シリーズ古典を意識したと思われる一話完結色の強いエピソードで、画面の枠にエフェクトを掛け、 繰り返される午前10時を幻想めかして描くなど、演出もやや特殊。5日目から始まって1日目に遡り、 ルミナさんと主婦友達の井戸端会議のやり取りから怪獣の騒ぎに繋げ、それが最後に解決策のヒントになる、 など構成に工夫を凝らして遊び心満載なのですが、分裂した細胞から再生を繰り返す怪獣を倒す手段は、冷凍する、 というオチは特に面白くなく。
 また、働くお父さんはヒーローで、社会は皆の明日と笑顔を守るヒーローで一杯だ、というテーゼを抱えた作品なので、 家庭を守る主婦もまたヒーローになれると描いても良かったと思うのですが、団地の主婦仲間とお喋りを続け、夫の愚痴に相槌を打ち、 ファミレスにちょっとお洒落して出かけるルミナさん(ら)の姿は、若干露悪的にも見え、作品としてバランスの悪い描写。
 モアやライハが居るので、ルミナさんはあくまで日常パートの存在であり、 主婦の中にもあるヒーローの姿という要素は意図的にオミットしたのかもしれませんが、それにしても、 夫が仕事中に井戸端会議にうつつを抜かす風な団地の奥様方像がやたら古めかしくて、正直、脚本か演出かの軽い悪意を感じるレベルです。
 それをうがち過ぎとしても、ここまでで最も出番の多くなったルミナさんを綺麗に(可愛く)撮ろうという意思がまるで感じられず、 4クールならともかく、2クール作品のキャラの見せ方としてはどうかなと首をひねるところ。
 やり取りの中の言葉遊び自体は悪くなかったのですが、見ていてあまり気持ちの良くない部分が目立ってしまいました。
 ラストの、市民に呼びかけて怪獣の破片を回収する、というくだりを見るに、公募エキストラ企画というのが前提だった様子もありますが、 それにしても、報道に市民への呼びかけを求める・冷蔵庫の無償交換を約束するというコネクションと資金源が謎だらけ。
 宇宙Gメンがニコニコ保険以外にもダミー企業を持っていて、そのルートを使ったという解釈は成り立つ範囲ですが、 AIBは地球人には秘密の組織だけど実は政府上層部とはパイプを持っているのだ、とかそういうあまり面白くない設定でもあるのか。
 あと、ギエロン星獣との戦いで、5日目:モミアゲ、遡って一日目:仲居、二日目:スポ根、と見せたので、 てっきり三日目はヒゲかと思ったらモミアゲで、4日目はゼロビヨンド、6日目はやっぱりモミアゲで結局ヒゲスラッガーの出番が無かったのはいったい何故。 繰り返し現れる怪獣との対戦で全フォームを見せる趣向なのかと思っていたので肩すかしだったのですが、出さなかった理由もよくわかりません(^^;
 1年物だとたまにはこういうのあるよね的なエピソードを、構成の工夫で面白く見せようとした方向性は嫌いではないのですが、 ところどころスッキリしない出来。
 脚本の三浦さんは、『オーブ』第19話・今作第5話・第9話、と個人的に惨事率が高いので見る前のハードル設定が低く、 下手に原典のテーマを正面から取り扱おうとして踏み抜いた地雷が母屋を吹き飛ばさなかっただけ良かった、とは正直思いましたが。
 (僕は多くの人に支えられ、助けられ、戦っているんだ。これから、もっと強い敵と戦わなければいけない事もあるだろう。でも、 みんなと一緒なら、きっと僕は戦える)
 回収に関わってくれた人々との間に絆を感じ、公のヒーローとして認められつつあるウルトラマンジード、 それを支えてくれる多くの光に喜ぶリク――…………の姿を、お父さんは見ていた。
 「おまえの力はこの程度か。そろそろ決着を付けよう……ウルトラマンジーーード」
 前回も前々回も派手にぶっ飛ばされた事は脳内でいいように変換され、 激しい自己肯定力を身につけつつあるK先生は、 どうやらギエロン星獣を用いてモミアゲマスターのデータを分析していたらしく、怪獣カプセルを指先で弄びほくそ笑むその姿で、つづく。
 後、K先生と情報屋宇宙人のやり取りを嬉々として見つめ、未知なる悪夢への好奇、 自分だけがそれを文字に出来るという衝動に突き動かされるアリエさんの理性の吹っ飛び加減は良い具合で、 この2人にどう始末をつけるのかは、引き続き楽しみです。
 ところで今回の、麗しく善意を拡大解釈気味のリクのモノローグが最終章への布石だとすると、 キングの宇宙で過ごす皆の心の中にはちょっとずつリトルスター因子の欠片が眠っている、 みたいな展開になるのかなぁ……綺麗にまとめてくれれば、そういうの好きですが。
 次回――最終章を前に、いよいよ遂にペガのターン。

→〔その5へ続く〕

(2018年4月16日)

戻る