■『ウルトラマンジード』感想まとめ3■


“支え合う 仲間の笑顔が力
GEED... 僕は強くなる”


 ブログ「ものかきの繰り言」の方に連載していた『ウルトラマンジード』 感想の、まとめ3(11話〜15話)です。文体の統一や、誤字脱字の修正など、若干の改稿をしています。

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〔まとめ1〕 ・ 〔まとめ2〕 ・ 〔まとめ4〕  ・ 〔まとめ5〕


◆第11話「ジードアイデンティティー」◆ (監督:田口清隆 脚本:安達寛高)
 今回の三大危機。
 「新作の執筆は中止です。今まで、ありがとうございました」
 『コズモクロニクル』、未完の危機!!
 「今日の会議はマジで出なきゃまずいんです」
 伊賀栗レイト、社会的死亡の危機!!
 「返品してらっしゃい」
 朝倉リク、首ちょんぱの危機!!
 身辺に宇宙Gメンの捜査の手が伸びている事を知ったK先生は排除を強行し、隠密捜査に失敗した鉄仮面先輩は、Zレイトへと接触。 結局、雑に拉致って直接交渉にあたった上にゼロとGメン先輩はほとんど知り合いのような会話で、 どうして前回まで意味ありげにピーピングしていたのか……。
 ゼロも平然と会話しているので、宇宙Gメンは光の国も存在を認めている組織という事でよいようですが、ゼロ、 その辺りの対応が若干以上に雑っぽいイメージなので多少の不安も残ります(笑)
 一方、印税生活にさよならを告げたK先生は、リクの前に姿を現す。
 「19歳か……早いなぁ。君を天文台に置いたのが、昨日の事のようだ」
 「どういう事だ?!」
 「殺す前に話しておきたかった。19年前、赤ん坊の君を天文台に置いたのは、私だ」
 起動状態のウルトラカプセルを回収する為、ベリアルの遺伝子を元にK先生が造り出したコピー―― リトルスターを反応させる触媒としての人造ウルトラマンこそが、朝倉リクの正体であった!
 ……つまり、リクのお父さんはK先生。
 「君は、ウルトラマンジードとして、正義の味方にでもなったつもりだったのだろうが、戦ってあげていたのだよ、私は」
 全てはウルトラカプセル回収の為、朝倉リクをウルトラマンジードに仕立てあげる計画だったのだ、と説明するK先生のいやらしさは、 個人的に海外ドラマ『FLASH』のハリソン・ウェルズ博士の気持ち悪さを思い出したのですが、たぶんK先生、 地下基地に仕掛けた監視カメラを執筆の間にチェックするのが日課。
 「リークーー、君は最近、どん○衛ばかりだな……そうか、あの小姑が、 近所のスーパーで75円セールだったので大量に買ってきちゃったたのかぁ。よーしお父さん、今度匿名で、 段ボール箱一杯のペヤ○グを送っちゃおうかな……!」
 とか妄想すると筆が進むのです。
 「私は今日、君が持ってるウルトラカプセルを受け取りに来た。君の仲間が余計な事をしてくれたせいで、早急に必要になったんだ。 お体の完全なる復活とまでは行かなくとも、ベリアル様が新たな拠点へと移動されるには、十分な数が揃っている。さあ、渡しなさい」
 これまで闇の電波としてしか登場しなかったベリアルはどうやら肉体を失っており、 その復活にウルトラカプセル(のエネルギー?)が必要な模様。
 残念だったのは、K先生の急な路線変更の要因である宇宙Gメンの捜査のきっかけが、かなり適当だった事。 状況の重要性と発端の描写のバランスが悪く、これならGメン登場初回の時点でK先生をマークしている描写を入れるか、 せめて講演エピソードでGメン組を登場させておいて欲しかった所です。
 PS4の恨みを込めてペガが繰り出したサイクロンクリーナーアタック(活躍してとても良かった) でライハがスナイパーの人質状態を脱し、カプセルを渡す事を拒否するリク。
 「残念だ。君がウルトラカプセルを渡していれば、この静かな街が瓦礫と化す事も無かったのにな」
 K先生はリクを裏拳一発で吹き飛ばすと黒ライザーを取り出し、怪獣カプセルの読み込み音に耳を近付けて心地よさそうに聞く、 というのは非常に良かったです。
 どうやら黒ライザーと怪獣カプセルは、光の国から盗んだ本物とウルトラカプセルを参考に造り出したようで……優れた頭脳!  鍛えた体! 甘いマスク! 欠かさぬファンサービス! これぞまさしく、ぼくのかんがえたさいきょうのSFさっか。
 「この街が僕が守る……これは、僕の意志だ!」
 リクはジードに変身し、K先生が変身したペダニウムゼットンと激突。
 一方、スナイパーには人質に取られ、念願の宇宙人との直接バトルでは若干押され気味で、どことなく残念感の漂うライハですが、 結局のところライハに直接宇宙人をずんばらりんさせたくないのか、バドスナイパーは戦いの余波で生まれた瓦礫の下敷きになって死亡。
 「ウルトラマンジード、ベリアル様に似たその姿を私に殴らせるとは不愉快だったぞ! おまえは作られた模造品だ!!」
 K先生、ベリアル様に似た姿に殴られたいとか、忠誠を誓っているベリアル様に似た姿を殴る背徳感が最高に気持ちいい、 とかだったらどうしようかと思いましたが、性癖は案外ノーマルでした。
 「ベリアル様の恩寵を受けるのはおまえではない。私だ! 私の方が優れている!!」
 今回、冒頭から敢えて不安定に揺れるカメラワークで入り、大胆に余白を取ったカットを組み合わせながら、 Zレイト登場シーンではスピード感を見せるなど凝った演出が冴えるのですが、 戦闘シーンでも広い画角とアップを巧みに織り交ぜてテンポ良く飽きさせず、 怪獣バトルエンタメの撮り手としては当代随一なのかと思われる田口監督の手腕が光ります。
 K先生がベリアル団のユニフォームを来ているのに対して、リクが相変わらずGジャン姿なのが、対決の構図が高まれば高まるほど、 どうしても間抜けですが(^^;
 スポ根バーニングとキングゼットンが全力のビームを撃ち合った結果、言い訳きかないレベルで大爆発が巻き起こり、 瓦礫の中に倒れ伏すリクから、ウルトラカプセルを奪い取るK先生。
 「これで、エンドマークだ……!」
 更にリクにトドメを刺そうとするが、駆けつけたライハに阻まれ、消耗していたK先生は撤退。
 本格的に残念な存在になりかけていたライハが、リクの命を救い、カプセルが一つ残される、というのは良かったです。
 「僕の……せいなの……?」
 朦朧とした意識の中で呻くリクが涙をこぼしていた頃、ゼロはGメンから伝えられた、 K先生が電波を送受信していたとおぼしき異次元空間の入り口に到達していた。
 (ルミナさんに連絡したいんです……無断外泊すると叱られるので……ここ、圏外ですよねぇっ?!)
 伊賀栗レイト、家庭も崩壊の危機(3回目)
 にしてもこれ、タイミング考えるとゼロを地球から追い払う為の罠にしか思えないんですが、Gメン先輩を信用して本当にいいのか(笑)
 その一方……
 「おまえには失望している」
 必要な数のカプセル回収に失敗したK先生はベリアルから叱責を受け、 罪をあがなう機会として6つのウルトラカプセルを自らに打ち込んで邪悪なエネルギーに転換するよう命じられると、それを決行。 誕生した超強化ペダニウムゼットンが、街で暴れ出す!
 (僕は造られた模造品。カプセルが2個無ければ、ウルトラマンになれない。だから、なすすべも無く、その様を見ていた――)
 というモノローグから成る程、ここでリクが自らの中からウルトラマンの力を生み出すのか…………と思ったら、次回、 え、ヒゲ?!
 とりあえず、なんだかんだ今一番面白いキャラとして、ベリアルに切り捨てられかけているK先生の作家人生の行く末が気になります。 ……K先生が前半でリタイアし、後半戦、本性を現したGメン先輩が宿敵ポジションに来たら、それはそれで面白い気はしますが!(笑)

◆第12話「僕の名前」◆ (監督:田口清隆 脚本:安達寛高)
 「キングジョーとゼットンが融合したものと思われます。名称は、ペダニウムゼットン」
 割と地球が大ピンチの時に、かなりどうでもいい情報を提供するレム(笑)
 まあいついかなる時でも、呼び名は大事です。
 破壊の限りを尽くすキングゼットンは、体内に取り込んだウルトラカプセルのエネルギーを制御しきれずに自ら放ったビームの反動でダメージを受け、 自己修復で一休み。リクはその間に、天文台に届いた手紙の差出人の元へと向かい、そこでやたらと気さくな老人――朝倉錘と出会う。
 (「錘」ってどこから出てきた名前なのかと思ったのですが、「朝倉リク」の元ネタがSF作家「アーサー・C・クラーク」らしいので、 アーサー・C・クラークの「C」という事でしょうか)
 その老人こそ19年前に天文台で拾われたリクの名付け親であり、3ヶ月前に宿したリトルスターにより、 銀河の果てまでも見たいものを見る力を得た人物であった。
 「勿論、君たちが暮らしている地下の施設も、隅々まで、見える」
 ライハーーー! ライハさーーーーーん!! 斬ってーーーーー!! 今すぐこの老人を斬ってーーーーーーー!!
 リクは勧められるがままに『鉄拳』で対戦をしながら、老人の話を聞く事に。
 曰く、リクがウルトラマンであり青春のトンネルを彷徨中なのを知っている事、 19年前に町長であった錘がリクを養子として引き取ろうと考えていた事、しかし直後に妻が事故死した為に引き取るのを諦めた事、 遠くが見えるようになって真っ先にリクの事が見えた事、あと、ベッドの下の秘密のコレクションの事。
 ……本当に、お父さんが全て見ていた。
 この事実に生みの親としてのプライドを刺激されたのか、目を覚ましたキングゼットンは、錘の中のリトルスターを求めて行動を再開。 ここで錘に「これまでバリアで誤魔化していた」みたいな台詞があるのは、ちょっと謎。 リトルスター覚醒後も狙われていなかった理由付けなのでしょうが、錘のリトルスターのもう一つの能力と解釈しておけばいいのか。
 リクとペガは病身の錘をリヤカーに乗せて逃走し、影の中から手と顔を出したペガがリヤカーを後ろから押しているのがいい味。 最初そこだけ映されたので、凄いぞペガエンジン! と誤解しましたが、リクは前でちゃんと引っ張っていました。忘れがちだけど、 そういえば超人的な身体能力を持っています。
 だが所詮はスケールが違いすぎ、辛くもゼットン光線の直撃は避けるも、リヤカーを壊されたリク達は瓦礫の中に投げ出されてしまう。
 「リク……私と、家内とで、考えた名前なんだ。男の子が生まれたら、付けようってね。この大地に、しっかりと、足を付けて、立つ。 そして、どんな困難な状態にあっても、絶対に再び、また、立ち上がる。そういう想いを込めて」
 自分を置いて逃げるように促す錘と、それを拒否するリクは押し問答。
 「諦めたら終わりでしょ?! ウルトラマンになんかなれなくても、こんな所で錘さんを死なせたりしない!!」
 「リク……頼む、生きてくれぇ!」
 その時、錘の中のリトルスターが、リクへの祈りに反応する。
 おお成る程、ここでリトルスターが、ある種曖昧なシンボルとしてのウルトラマン(遺伝子情報により模倣された存在)ではなく、 朝倉リクという個人をウルトラマンとして認識する、というのは美しい展開。
 なればこそ、ウルトラカプセルを起動する為だけに生み出されたウルトラマンの模造品としてではなく、真実、 朝倉リクは朝倉リクとして、ウルトラマンになる事が出来る。
 「絶対に、守ってみせる!」
 錘の宿していたリトルスターからウルトラの父カプセルを入手したリクは、敢然とキングゼットンに立ち向かい、 ゼロカプセルと父カプセルにより、変身。テーマ的には納得の人選なのですが、ライザー音声の「ウルトラの(一拍)父!」 でどうしても笑ってしまいます。
 ジードの得た新たな姿――その名を、ウルトラマンジード:マグニフィセント。
 何者でもない思春期の葛藤から大人の階段をすっ飛ばしすぎて一気に立派なヒゲをたくわえたジードは、 ゼットン光線を受け止めるファザーシールドを発動。父の力たるマグニフィセントが一番最初に見せるのが、守るための力を発揮する、 というのは位置づけとして良かったです。
 「造られた道具がぁ、創造主に刃向かうというのかぁ!」
 背後の錘を守り抜いたヒゲジードは、K先生半裸のイメージ映像で錯乱状態のKゼットンと激突。
 「貴様の価値は、ベリアル様の遺伝子を持っている事! それ以上のなにものでもない模造品だぁ!」
 「模造品なんかじゃない!! 僕はリク! 朝倉リク!! それが僕の、名前だぁ!!!」
 出自を疎むゆえに、「ウルトラマンジード」という名前に大衆に認められる公のヒーローの意味を与える事で力の意味を見出そうとしていたリクが、 それ自体がK先生の思惑通りであった事に絶望するも、「朝倉リク」という自分の名前に意味を得る事で自ら立つというのは鮮やかな飛翔。
 これまで話の焦点が当たりきらない事も含めて薄ぼんやりとした泥濘でもがいていたリクが、一気に空へと羽ばたきました。正直言うと、 ゼロ抜きで話作ってここまでを8話ぐらいまでに収めてくれれば『ウルトラマンジード』としてはもっと好みでしたが、そこはまあ、 致し方ない所でしょうか(ゼロ/レイト自体は好きですし)。
 「貴様の人生に価値など無い! おまえという肉片に生命を与えたのはこの私だぞ! 産声をあげる瞬間に磨り潰す事も出来たのだぁ!」
 今回、名付け親・生みの親・遺伝子上の親、という朝倉リク/ジードの3人の父親が登場しているのですが、 ここでK先生もまたリクの父親である事を強調。
 「貴方にはわからないんだ! 人の幸せがぁ!! 僕には! 仲間が居る! 帰る場所も!!」
 それに対して、ある意味ではこれまで不特定多数の誰かに振り回されていたリクは、 自分という個人に向けられた想いと向き合う事で朝倉リクとして得てきたものを受け入れる――
 「僕は、僕の人生を生きてる! 誰にも価値が無いなんて言わせない!!」
 その積み重ねこそが朝倉リクの中身であり、だからリクは、空っぽの模造品である事を、押しつけられる価値観を否定する。
 「貴様が価値あると信じている全てのものはクズだ! 薄っぺらい貴様のような存在にはお似合いだがなぁ!」
 「――可哀想な人だ」
 「なんだと?!」
 「貴方には何もない。空っぽだ」
 既にK先生の思惑を遙かに超え、自らの中身を見つめて立ち上がったジードは、Kゼットンを突き放すと、必殺ヒゲ光線を照射。 直撃を受けたKゼットンは派手に吹っ飛び、伏井出ケイ、絶筆?!
 一方、宇宙の彼方で触手責めを受けていたゼロは、広大な異次元空間からなんとか脱出。 空間の出入り口が突入した地点しかない事を把握すると、ウルトラ接着光線で出入り口を封鎖。
 「嫌がらせ完了!!」
 と爽やかに言い捨てて、地球へと帰還する。
 その姿を、空間の向こう側から見つめる巨大な瞳――
 「ウルトラマンゼロ、待っていろ。間もなく俺は強大な力を手に入れる。その時おまえは、真の絶望を目の当たりにするだろう」
 地球では、Kゼットンの爆発により四散したカプセルを、なんとか皆で拾い集めて回収。……きっとヒカリ博士がこっそり、 一つ二つぐらい目立つ所に置き直してくれたに違いありません。
 星雲荘にはひとまず日常が戻り、洗濯そっちのけでゲーム雑誌を読みふけるリクに向け、ライハが刃物を一閃。
 「貴方は、自分探しを終えました。でも、成長していません。とても、残念です」
 だが切り裂かれた雑誌にも、向けられた刃にも、冷たい視線にも、悠然と構えて伸びをしてみせるリク。
 「……動じてない?!」
 「いつものやり取り。落ち着くなぁ」
 「うん! 実家のような安心感、だね」
 ヒロイン力は増したものの、代わりに何か大切なものを失ってしまったのではないかと、呆然と佇む鳥羽ライハであった。
 リクはしばしば錘の家にゲームをしにいく関係となるが、無惨に爆死したかと思われたK先生は、まだ生きていた……。
 「ベリアル様……ベリアル様……私の体に……何が起こっているのでしょうか?」
 「案ずるな、ストルム星人。俺はおまえの側に居る」
 リクが「僕の名前」を見つけたエピソードにおいて、ベリアルに忠誠を尽くすK先生が、“名無しのストルム星人”として扱われるのが、 実に痛烈な対比。
 「ベリアル様…………」
 「だから今は眠れ。体内に宿った悪夢を育てる為にな。ふ、ふふふふふふはははは」
 安らいだ表情でK先生は異次元空間に崩れ落ち、邪悪な哄笑をあげるベリアルの巨大な顔、で、つづく。
 前回−今回と、冴える田口監督の演出に立ち上がり不安定さの目立った安達脚本も噛み合い、 1クールの締めにふさわしい盛り上がりで面白かったです。特に今作の場合、登場人物が多い割にまとまりが悪く、 話の焦点が散漫になって肝心な部分が雑に片付けられてしまう、という状況が多発していたのですが、 リクとK先生を中心に置いて物語の焦点をしっかり絞り、「ウルトラマンジードとは何か」から「朝倉リクが朝倉リクとして立つ」 姿へ繋げる、というスッキリした作りが良かった所。
 特にK先生は、“生みの親”であるのが強調される事で、“遺伝子上の親”であるラスボス・ベリアルの前座としてふさわしい仇役となり、 見事に1クール目の幕を下ろしてくれました。
 そして今回を持ってして“既に乗り越えられた父”となったK先生は、同時に“ベリアルの駒”としてリクと対比されうる立ち位置となり、 こうなると最終的に、K先生がベリアルから自立する、という展開も面白そうです。最後まで忠誠を貫いて無惨に破滅してもいいし、 ベリアル的なものを否定するキーの一人になってもいいし、どちらに転んでもおいしい、という存在になったのは大きい。
 リクの飛躍もですが、悪役としてのK先生が跳ねてくれたのは、今後に向けて期待大。かなり好きなキャラになってきたので、 後半戦どんな存在感を見せてくれるか、楽しみです。
 全体の話は現段階でいうと、結局、序盤に世界観を謎めかして見せていたのは何だったのだろう……とかはあるのですが、 やはりヒーローと悪役がしっかりすると、作品の土台が強くなるな、と。
 不満点を一つあげると、今回、手紙の差出人の元へ向かうリクに対して
 「行ってらっしゃい」
 リクと錘の会話において
 「知りたい事ある? あの女の子の事かな?」
 「ライハの事は別に」
 「ライハなんて言っとらんよ」
 とからかわれ、ヒゲ発動時には、
 「リク……リクなの?」
 「うん、心配かけたね」
 「……お帰りなさい」
 「……ただいま」
 と、何者かの陰謀を感じるライハのヒロイン度爆上げキャンペーンだったのですが、そんなエピソードに、 モアが全く登場しない事。
 後半戦に色々考えているのかもしれませんが、モアが目立つ回はライハは出てきても空気同然だし、 ライハがプッシュされるとモアは出てこないし、というのは食いつぶし合う事も懸念しているのでしょうが、 何やら不公平さを感じてしまいます。お陰でライハのボーナスゾーンはなんだか、 不在の相手を一方的に殴り続けているみたいな印象に(^^;
 もっとお互い、フェアに殴り合ってヒロイン力を高め合ってほしいです!
 あと結局、Kゼットンが吹っ飛んだ事に関しては無反応だったのですが、ライハの復讐ネタはさすがにねじ込めなかったようで、 なんだかもう、このまま忘れてしまってもいいのでは感。後半戦で下手に火を付けようとすると、 特大の地雷になって色々と吹き飛びそうな気がしてなりません。
 マグニフィセントは、予告時点では、父?! と思ったのですが、動いているのを見たら、それほど違和感はありませんでした。 ありませんでしたがどうしても、若者の喧嘩に金と権力で割り込んでいる感じがしてなりません(おぃ)
 いいかねジードくん、社会に出たら、邪魔な相手は、札束で殴り飛ばせ!
 ……ラスボスは同期の元ライバル?なのでしょうが、むしろ更に増してしまう、光の国の派閥争いの代理戦争。株は力だ力は株だ!
 とりあえず後半戦の気になる要素としては、今のところ影も見せない「育ての親」でしょうか。今回、 父と子の物語が今後の布石も含めてかなり巧く連動したので、リクの第4の親がどういった形で物語に関わってくるのかは楽しみです。
 次回――たぶん総集編で、ライハさん、ポニーテール発動で引き続き確変を狙う。

◆第13話「レストア・メモリー」◆ (監督:池田遼 脚本:足木淳一郎)
 秘密基地でリクとペガが『ドンシャイン』の野球回ごっこをしていたところ、ボールが直撃したレムのデータが初期化されてしまい、 復旧の為にこれまでの経緯を話して聞かせる……という体裁の総集編。
 アバンタイトルで、メインキャラがそれぞれ「名前」を呼ばれたり口にしたりする、という構成がまず秀逸。
 一方、無断欠勤+無断外泊のコンボから地球へ帰還したと思ったら、 若い女の子と車で密会しているレイトさん社会的生命が限りなく崖っぷち。
 ゼロ! もう少し! レイトさんの人生に配慮してあげて!!
 まあレイトさんは会社をクビになった暁には、ゼロの記憶をベースに『コズモクロニクル』の続編を書いて、 覆面作家としてデビューすればみんな幸せになれると思います。
 毎朝、いつも通りに出社しているフリをして、星雲荘で執筆します。
 そして、マユちゃん経由でルミナさんにバレて、ウルトラ史上最大の修羅場に到達するのです(おぃ)
 Zレイトから異次元空間についての報告を受けたモアは、ジードについて
 「信じてますよ! たとえ、誰がなんと言おうと……リクくんはリクくんですから」
 と改めて力強く宣言し、第11−12話で、リクのアイデンティティの喪失に苦悶する姿も、それを乗り越える姿も、 両方を見ていなくても“モアは圧倒的にリクを信じている”姿が示され、 もはや古女房の貫禄(笑)
 前回不在の穴を埋めるどころか積んでみせ、脚本或いは監督もしくは双方の愛を感じる逆襲劇。
 星雲荘ではレムが再び沈黙、反省したリクは膝から崩れ落ちるが、再起動したレムは初期化は真っ赤な嘘であり、 全ては小学生レベルのリク達を反省させる為の荒療治であった、と種明かし。
 「あなたは、朝倉リク……おっちょこちょいで子供っぽいところもありますが、自らの運命に立ち向かう、勇気を持った、 私のマスターです」
 これまでの無機質な喋り方に比べると声音にやや感情が感じられると同時に、 「運命に立ち向かう」「勇気を持った」「私のマスター」とリクのツボを的確に突くフレーズを並べているのが芸術点高い。
 一段落した所で、面倒な事情を与り知らないレイトがモアの本職をばらしてしまい、 ライハとペガに詰問されるリクを中心にドタバタ騒ぎが展開。
 (人間は、触れ合う事で絆を深めていく。私にも、体があれば……)
 第1話の頃から真ヒロインはレムだと主張していますが、1クール目の締めに、眠れる獅子がいよいよ動き出した……!
 騒ぎの最中、逃げるリクに向けてライハが投げつけたぬいぐるみがクリティカルヒットし、再びフリーズしてしまうレム?!  というオチで、つづく。
 まあどう考えても表に出ている電球部分が中枢機関とは思えないので、これはライハにバケツ持って反省させる為のレムの罠。
 ヒロインレースは常に、仁義なき人外魔境です。
 脚本は前作『オーブ』でも総集編を担当していた方ですが、 いまいち物語に取り込みきれていない『ドンシャイン』を取り上げるなど回想と回想の幕間で作品としてのポイントをしっかり抑えていて、 前作同様、まとまりのいい総集編でした。
 難を言えばライハそもそもAIBが何か知ってるの? というのは気になりましたが、 各フォームの特性など本編で抜け落ち気味の要素も上手くフォローできましたし、短い時間で各ヒロインがそれぞれポイントを稼いだのも秀逸。
 ライハのK先生へのこだわり方を見るに、吹っ飛ばしたKゼットンの中身についてリクが言っていないようなのが気になりますが、 ライハの復讐周りが大きな地雷になりそうなのは、引き続き後半戦への不安点(^^;
 次回――いよいよGメン先輩の素性が明かされる?!

◆第14話「シャドーの影」◆ (監督:市野龍一 脚本:根元歳三)
 見所は……見所は……
 格闘戦を始める前にネクタイをゆるめるGメン先輩ー! 素敵ーーー!!
 すみませんちょっと興奮しました。
 総集編ラスト、レイトのこぼした言葉をきっかけに、2クール目にしてようやく秘密基地に呼ばれたモアは、ライハ、 そしてペガと顔合わせ。リクとライハの甘い生活(妄想)よりも、ペガが中学の頃からリクと一緒に行動していた、 という衝撃の事実を知らされる。
 「うん、モアとも一緒に暮らしてた」
 「じゃあ、リクくんが、中学2年の冬休み、2人で、映画に行った時も?!」
 「僕も居たー! 映画館は、暗くていいよね」
 エトセトラエトセトラ……甘酸っぱい青春の思い出を無邪気に切り刻まれ、深刻なダメージを受けるモア(笑)  モアはそれなりに好感度を積み重ねてきているので、面倒くさい女にならずに、素直に可哀想で楽しめる(え)シーンになりました。
 横でうんうん頷いているので、リクも一応、記憶はしているみたいですよ!
 隣でなんだかいたたまれない表情になっているライハとは、ペガも同居しているという事は同棲ではなくルームシェアリングであるという脳内説得と、 その後ドーナッツを中心にしたお喋りの中で、なんとなく友好度が上昇。 ライハは表向きのキャラ付けほど人付き合いが悪いわけでもないので適切な距離感に変化しつつある雰囲気ですが、 モアの心中に気付いているのか気付いていないのかは、どちらとも取れる描写。決まっていないというよりは、現時点ではまだ、 視聴者に対して濁している、といった感。
 「実は……ゼナ先輩の様子が、最近おかしいの」
 長らくペガの存在に気付いていなかった事から、身近な人でも見えていない事がある、とこぼしたモアに反応したのは、 昼日中から背広姿で公園に居たZレイト。
 ………………やっぱり解雇されたのでしょーか。
 伊賀栗家の現状が大変心配です。
 そもそもシャドー星人とは、好戦的な侵略者、冷酷で残忍な宇宙ゲリラであり、ベリアル軍との戦いにおいてシャドー星が壊滅した後、 生き残りが何を考えているのかはわからない、とゼナへの不審を語るZレイト。
 色々曖昧だったAIB、そこに所属しているから問答無用で正義の存在というわけではないのなら、 もっと早めに布石を置いておくべきだったとは思いますが、視聴者の疑念を劇中人物から口にさせて物語に組み込んでくる、 という見せ方自体は嫌いではありません。
 こっそり1人で動いているゼナを気にしつつも、Zレイトに対して先輩を擁護したモアがGメンアジトへ戻ると、 極秘任務で別の星へ向かったというゼナの代理として、別のシャドー星人が。
 「僕はクルト、シャドー星人のクルトです」
 ゼナと比べて爽やか系のクルトの地球文化ギャップネタや、共同任務がしばらく描かれ、促されるままGメン先輩への印象を語るモア。
 「ゼナ先輩は、口も動かないし、笑わないし、あんまり自分のこと話してくれないからよくわからなくて。でも、いい人だと思います」
 だが、爽やかな新任Gメンだった筈のクルトは実はゼナを監禁しており、機密データにアクセスすると、怪獣を召喚。
 「栄光への道は、再び開かれた。時空破壊神ゼガンよ」
 クルトがマジックアイテムを虚空に向けると、立ちこめる白い霧が街を覆っていき、 そこを水中のように泳ぐ魚類+甲殻類デザインの怪獣が現れる、というのは格好いい演出。リメイク怪獣なのかは知りませんが、 好みのデザインです。
 屋上で怪獣に向けて手を伸ばすクルトだが、その背後に、拘束を脱した鉄仮面先輩が登場。
 「ゼナ! どうして?!」
 「詰めが甘いな。最後まで油断するなと教えた筈だぞ」
 「……ゼナーーー!!」
 予告から鉄仮面先輩回を期待させておいて、今回ずっと捕まっているだけだったらどうしようかと思ったので、 見せ場のアクションシーンあって、本当に良かった(笑)
 「さすがです。それほどの力を持っていながら、なぜあなたは戦いを捨てたのですか?!」
 ゼナを糾弾したクルトは、2人の激突を目にして戸惑うモアへと笑顔を向ける。
 「騙されるな! そいつは表情を変えるための特別な訓練を受けている。敵地に潜入し侵略する為の、偽りの笑顔だ」
 「偽りの、笑顔……」
 かつてのゼナ最後の教え子であったシャドー星の戦士クルトは、シャドー星の栄光を取り戻す為にと称し、怪獣と融合。 暴れ回る怪獣を前にリクはジードへと変身するも苦戦し、モアは思わず先輩の前で「リクくん!」と叫んでチェックを受けてしまう。
 人々が逃げ惑う中、背広姿のZレイトがゼロへと変身し…………やっぱり解雇されたのでしょーか。
 今回、レイト(本人)が、一言も、喋らないので、非常に心配です!
 「おいおい、早くもグロッキーか?」
 「これから本気出すとこだよ!」
 妻子持ちサラリーマンの社会生活には割と無頓着なウルトラヤンキーがウルトラフリーターと軽口を叩いていたら、 本気出したゼガンが時空歪曲光線を発射。危うく異次元空間に飲み込まれそうになったジードは本気出してヒゲスラッガーを発動するが、 ヒゲ光線とゼガン光線がぶつかりあった結果、周囲の者を無作為に飲み込んでいく巨大な時空の裂け目が出現してしまう。
 第12話で無双したヒゲスラッガーですが、弱体化とまではいわない範囲に収めつつ、 リク自身の未熟さから突発的な緊急事態に力を完全に制御しきれない、というような扱いにしたのは悪くない用い方。 中で必殺光線の形に手を構えたまま叫ぶリクがどうしても間抜けですが! ……この絵面には慣れる気がしないのですが、 最終回までこのままの可能性が高そうだなぁ……。
 「レイト、ちょっと荒っぽい真似させてもらうぜ」
 危機的状況を食い止める為ぶつかり合う光線の間に割って入ったゼロビヨンドは、 二つの光線を弾き飛ばして裂け目の拡大を阻止するという凄まじい力を見せるが、その余波で、モアが異次元空間へと飲み込まれてしまう!  でつづく。
 ただでさえ度重なる怪獣の出現で経済状況が悪化していそうなこの世界、 これからマユの学費もどんどん増していくというのに伊賀栗家の家計の行く末はとても心配ですが、 オーバースペック気味なゼロビヨンドの力の振るい方としては、納得できて格好良かったです。
 次回、シャドー星人クルトは何を望むのか、そして、“大切な人”の喪失に、リクは男を見せられるのか?! 今、 愛崎モアの真のヒロイン力が、色々と試される!!

◆第15話「戦いの子」◆ (監督:市野龍一 脚本:根元歳三)
 良かったぁぁぁぁぁ! 今週もずっと宮野真守声で喋っていたレイトさん、 魂の片隅で虚脱状態になって死んだ魚のような目で膝を抱えながら赤とんぼを口ずさんでいる事が懸念されましたが、喋った!  ……まあ、鞄抱えて向かっている先は、職場ではなく職安という可能性もありますが。
 前回ラスト、次元の裂け目に飲み込まれたモアが辿り着いたのは何処とも知れぬ異次元空間……ではなく、 クルトが身を隠す山の中であり、モアはそこで負傷したクルトと接触。
 「やはりお前がジードか」
 一方リクは、ゼナからモアの消息に関する情報を知らされ、リク&ライハはモアを探して山へ、ゼナと、 ゼナを監視するZレイトはゼナが監禁されていた地下道の奥に進んでクルトの行方を追う。
 「ガブラ・カーノ……戦いの子。我々は、彼ら戦士達をそう呼んだ」
 「そいつらを使って、他の星を侵略していたわけか」
 「……我が種族は、他から奪うか、自ら滅びるかしかなかったのだ。そして、幾多の戦いの子を育てた。クルト達は、私の教え子だ」
 ここからしばらく、クルトがモアに、ゼナがゼロに、それぞれの素性と目的を語る、という形で交互に展開。
 いってみれば少年兵育成キャンプの教官であったゼナは、ベリアル戦争によるシャドー星の壊滅後、AIBに就職。 シャドー星人の最終兵器であるゼガンを異次元空間に封印し、いずれ破棄する予定であったが、ベリアル復活の可能性がある情勢を鑑み、 召喚装置だけは手元に置いていたのだった。ところが、かつての教え子達がゼガンを用いた地球侵略を求め、 それを拒絶したゼナは監禁されてしまう。
 「子供の頃からゼナに戦う事を教わってきた。なのに……シャドー星人の誇りも捨て、俺たちの事も忘れて」
 「ゼナ先輩は、クルトさん達の事をずっと思ってきた筈です」
 「何故わかる……ゼナの事など何も知らないくせに!」
 「だって、ガブラ・カーノって、クルトさん達の事なんでしょ? それを、パスコードにしてたって事は……」
 モアはクルトにゼナの秘めた気持ちを説き、ゼロはゼロでテロリストとはいえ師弟の絆に熱いシンパシーを感じたのか、 Gメン先輩への好感度メーターがぎゅいーーーーーんと急上昇していた。
 「師匠に教え子か……きっと好きだったんだろうなぁ。あんたの事を」
 ストレートな言葉にちょっと動揺を見せる先輩の姿に、鼻をこすって笑みを浮かべ、ちょろいよゼロ?!
 本編で見えていない設定をベースにした台詞なのが惜しいですが、なんだかいい感じに自分の修行時代を思い返している風のゼロは、 面白かったです。
 「どうして……地球人のおまえが、AIBに居る?」
 山の方ではクルトに問われるままモアがAIB入社の経緯を語り、回想シーンの女子大生風ルックが可愛めで、ライハ、ペガ、 レムには真似できない、大人の女のバリエーションでぐいぐいと攻めてきます。
 「リクくんは何かなりたい職業とかってあるの?」
 就職活動の頃という事なのか、幼稚園の就職案内?を広げながら、横に座るリクに問いかけるモア。
 「うーん……僕は……ヒーローかな!」
 学ラン姿で爽やかに言い切った!
 その歳でその明言は、凄く駄目人間だぞ!(笑)
 「ドン・シャイン! みたいな?」
 「具体的にはわかんないけど、誰かを元気にさせたり、楽しい気分にさせたり、そういう人になれたらいいのかな」
 これまでもう一つ形の見えてこなかったリクのヒーローへの憧憬と願望ですが……要するにこれは、 春野はるか(『GO!プリンセスプリキュア』)におけるプリンセス概念なのか。
 すなわちそれは、「用意された器の名」ではなく、「目指し続ける理想の名」であり、 今作が“模造品のウルトラマン”が“本物のヒーロー”になる物語であると見ると、色々な歯車が噛み合ってきた感があります。
 第11−12話は「朝倉リクという名前」の話でしたが、「ジードという名前」はリク自らが付けたというのはこの先で大きな意味を持ってきそうであり、 またそういった要素が綺麗にまとまってくれるのを期待したい。
 その後モアは、苦痛に呻いている宇宙人を介抱した事でゼナと出会い、AIBについて説明を受ける。
 ようやく明かされたAIBとは、「クライシスインパクトの後、宇宙の秩序を取り戻す為、宇宙人同士が結成した組織」との事。
 受け手の興味を引くミステリーとしては機能していなかったので、もっと早い内に明かしておいた方が良かった気はしますが、 その発祥にクライシスインパクトが関わっているという事もあり、これで遅ればせながら宇宙Gメンが、都合の良い謎の組織から、 物語の中に降りてきてくれました。
 「入れて下さい! 私を、AIBで働かせて下さい。地球人も、宇宙人も、みんなを元気にしたいです!」
 そして、これまでリクのモットーである「ジーッとしてても、ドーにもならねぇ」はモアが教えてくれた事だと示されていましたが、 モアがAIBに就職した背景にリクの言葉の影響があったというのは、一方的に与え/与えられるのではなく、 返ってくるものがある関係性というのが好きなので、二人の相互補完が成立して、好み。
 Gメン先輩のしごきとテロリスト教官のしごきを語っている内に、いつしか声を合わせ、笑い声をあげるモアとクルト。
 守る者と奪う者、全く役割を逆にしながらも、その教えは常に部下を案じてこそという、 立場を超えたゼナ個人の想いが二人の教え子を通して示され、Gメン先輩、気がつくと物凄い愛されキャラ。
 「……今のは……本物の笑顔ですよね?」
 「……」
 「もう、終わりにしませんか」
 逡巡を見せるクルトだったが、一度踏み込んだ修羅の道へ引き戻すかのように、ゼガンのエネルギーが完全回復。 クルトはゼガンを召喚しようと開けた場所へ向かうが、そこでゼナと対峙する。
 「殺すなら私一人にしろ。それで終わりにするんだ。……私もおまえと同じだった。いつか再び、シャドー星の為に。そう思っていた。 だが……」
 「……みんな……みんな死んだ」
 戦士としての生き方しか知らず、失われていった同胞達の名前を挙げるクルト、そしてゼナ。
 「だから生きる。だから生きなければならないんだ。かつて望んだ道ではない。正しいのかどうかもわからない。だが、 試してみたいのだ。戦うのではなく、共に生きる。お前も生きるんだ、クルト!」
 「もう遅いそんな生き方! 俺には!」
 ゼナとモアの説得を振り切り、クルトはゼガンを召喚すると融合。ゼナはゼロとジードに、ゼガンを止めてくれるように頭を下げる。
 「ジーッとしてても」
 「「ドーにもならねぇ!!」」
 ここでリクとZレイトが並んでの同時変身は、非常に格好良く決まりました。次回の展開を考えると、ここで、 ジード・ゼロ・AIB(一部)の共闘関係が成立する、という一つの節目を意識したようですが、 祈りを背に並び立つ二人のウルトラマンが、そのシンボルとして機能。
 「カム・タタール・シャドー!」
 ゼガンはジードとゼロの攻撃を受けながらもその歩みを止めず、クルトを救いたい気持ちがあるので、二人ともいきなり本気出さない、 というのも納得いく流れ(マグニフィセント変身前に仲居スマッシャーを挟めればより良かったですが)。
 「こんな事したって、なんにもならないよ!」
 「ベリアルは必ず復活する。俺たちが戦ってる場合じゃねぇ!」
 一瞬、某戦隊が脳裏をよぎりましたが、この世界にはゾンネット粒子は存在せず、モア粒子の感染を振り切ったクルトは、 自らの生き方を最後まで貫く事を選ぶ。
 暴れ続けるゼガンの次元湾曲光線に対抗する為、ジードはヒゲスラッガーを発動してヒゲバリアーを張るが、 反射した光線で周囲に被害が広がってしまう。それを見たゼロは打開策を閃くとビヨンドになってウルトラ舎弟バリアーを張り、 前後から二つのバリアーで歪曲光線ごとゼガンを挟み込んでいく……。
 「カム・タタールシャドー……カム・タタールシャドー……カム・タタールシャドー」
 「どういう意味?」
 「……シャドーに、永久の安らぎを」
 「やめて! クルトさん!!」
 二人のウルトラマンによって完全に鯛焼きプレス状態になりつつも、 祈りの言葉を繰り返しながら力を放出し続けたゼガン/クルトは遂に大爆発。そして、 自らの放った光線により歪曲した異次元空間に飲み込まれて完全に消滅……ただ唯一、召喚の腕輪だけが、 クルトが本当に居たかった場所を示すかのようにゼナの元へと吹き飛び、教え子の形見としてゼナはしっかりとそれを受け止めるのであった。
 「……クルト」
 ――後日、街ですれ違うレイトとゼナ。
 「モアは? …………あんたは? ……大丈夫なのか?」
 「彼女が来てからAIBは変わった。何故かはわからない。だが、我々には、愛崎モアが必要だ」
 「……ふっ。それを――」「――そのまま、本人に伝えてあげたらいいんじゃないですか?」
 レイトさん、意識があって本当に良かった(笑)
 一方リクは、足の負傷もあってまだ宇宙Gメンに復帰していないモアの元へ。
 「……届かなかった……私の声は……あの人に。…………でも……でもね。辞めたくない、諦めたくない」
 声を震わせながらも、涙をこらえたモアは空を――星を見つめる。
 「地球人も、宇宙人も、みんなが元気で、楽しくいられるように。どうしていいのか……何をしたらいいのか、私に、 何ができるのか。……全然……なんにもわからないけど。……でも……でも……ジーッとしてても、ドーにもならないから」
 心に傷を負いながらも歩み続ける事を決めたモアが、リクと微笑みを交わして、つづく。
 シャドー星人の背景をかなり重いメタファーとして設定した事もあり、苦みを漂わせた結末となりましたが、あっけらかんと落としたり、 リクのナレーションにより俯瞰で流してしまうのではなく、ゼナもモアも今回の件で傷を負い、それでも、 大人としてその傷を乗り越えていく……そういう哀しみを量産しない為に、世界を少しずつ良くしていきたいんだ、 という姿を示して終わる、というのはヒーロー性もともなって良かったです。
 途中でゼナが口にする「だから生きなければならないんだ。かつて望んだ道ではない。正しいのかどうかもわからない。だが、 試してみたいのだ」という言葉がリクの抱える煩悶にも繋がっており、ストーリー全体のテーマを汲んだ上で、 一つのエピソードとしての完成度も高く着地。「ジーッとしてても、ドーにもならない」への接続も鮮やかでした。
 また、これまでモアは空回り系のドジキャラという面が強かったのですが、 なんだかんだ“自分の事で手一杯”気味なリクとライハと比べると、実は“未来の為に出来る事を考えていた大人”であった事が明らかになる、 というのも劇中の位置づけとして良かったです。
 リクが顔を見た事のある宇宙人をぶち殺すのは、特例といえるK先生を除けば初だと記憶しているのですが、 モアを励まそうとしつつも自身も落ち込んでいるリクに対して、好きな男の前だからこそ、格好つけてみせるモア、 というのは“ちょっとドジな最初から好感度100のお姉さん”というだけでない奥行きが出て良いキャラになってきました。
 ……モアが丁寧に掘り下げられてきた分、パンチの利いたキャラでロケットスタートの筈だったライハが、 カーブを曲がれずに壁に突き刺さってコースアウトしたのが気になりますが、次回、ライハは再びエンジンに点火できるのか?!
 全体としては、序盤のもたつきやフックのかけ違い、時間のかかった準備運動からライハの複雑骨折などありましたが、 第11−12話を大きな転機にハンドリングが安定、ギアとエンジンも噛み合って真っ直ぐ加速できるようになってきたので、 是非ともこのまま、ゴールまで走り抜けてほしいです。
 次回――どうしてゴドラ星人?! じゃなくて、いよいよ、父帰る。意外と早かったですが、ベリアルさんに思い入れがない (設定をよく知らない)身としては、『ジード』として楽しめるかどうか、期待半分不安半分。ここ数話の流れからは、 良い方に期待したいですが。

→〔その4へ続く〕

(2017年12月6日)

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