■『ウルトラマンジード』感想まとめ2■


“GET OVER NOW!! GET OVER PAIN!!
GET OVER MIND!! JUMP UP! GEED!
覚悟決めるぜ! HERE WE GO!”


 ブログ「ものかきの繰り言」の方に連載していた『ウルトラマンジード』 感想の、まとめ2(6話〜10話)です。文体の統一や、誤字脱字の修正など、若干の改稿をしています。

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〔まとめ1〕 ・ 〔まとめ3〕 ・ 〔まとめ4〕  ・ 〔まとめ5〕


◆第6話「僕が僕であること」◆ (監督:市野龍一 脚本:三浦有為子)
 女性人気が上がって調子に乗るジードと、嫉妬に燃えるサンダーキラーが衝突し、 頭から放ったマサカリが跳ね返されたのを腕のハードポイントで受け止める、 というのはスポ根バーニングのメカっぽさも活かされて格好良かったです。
 レイトはこの戦いを居間のTVを通して目にしており……東京都内で怪獣とウルトラマンが激突している真っ最中に、 1ミリも気にせず幼稚園に向かう母娘はさすがにどうか(^^;
 その辺りは深く考えないでほしい、という事なのでしょうし、怪獣が出ていても人々の日常は続く、 という世界観と方向性なのでしょうが、「TVで生中継されても完全無視」となると、 “脅威としての怪獣”の意味性が著しく損なわれてしまうわけで、ヒーローと怪獣が戦う物語としては、 バランス感覚を欠いた描写であったように思います。
 伊賀栗家、東京から遠く離れた住まいなのかもしれませんが、リクとレイトが直接会っている事を考えると、そうは捉えにくいですし。
 どこまで意図的(物語としての伏線)なのかは判然としませんが、どうにも今作、 “初見の視聴者を意識して衝撃や驚異を描く”という感覚がすぽっと抜け落ちている気がしてなりません。
 ロケットパンチ光線も跳ね返され、苦戦するジードを見かねたゼロは、レイトの体を借りたままサングラスで初変身。 リビングで変身するとマイホームが粉々になるのでは……と心配になったのですが、いきなり戦場に出現したので、 何やら大丈夫だった模様。
 「俺はゼロ……ウルトラマンゼロだ!」
 しかしサンダージェラシーはその姿を見ると、陽炎のように消失。レイト/ゼロはリクに肩を貸して秘密基地へと運び込むが、 当のリクはゼロの登場でジードの人気が急落した事に拗ねていた。
 「まあウルトラマンやってりゃ、いろんな事があるさ」
 「……ゼロはずるい」
 「あ?」
 「だって、最後の方に来て、シュッと立っただけ」
 あのままでも勝てた、と意地になるリクだがライハにも一刀の元に虫けらのような敗残者と切り捨てられ、 更にレイトが「僕がウルトラマンやります」と爆弾発言を口走って売り言葉と買い言葉がタイムセールに突入。
 「はぁ〜?! サラリーマンに、ウルトラマンの何がわかるわけ?!」
 「君にサラリーマンの何がわかるの?」
 巨大化変身の余韻に興奮状態のレイトはリクと同レベルで口を尖らせ、思えばゼロの一言から、 何やら職業のような扱いを受ける「ウルトラマン」(笑) 個人的に「ウルトラマン」は、 「バットマン」とか「仮面ライダー」というより「スーパーマン」に近いイメージで捉えていたので、なんだか新鮮でした。
 《リクとレイトは、何を揉めているのですか?》
 「隣の芝生は青いってやつだね。人間にはよく起こる感情さ」
 「「そんなんじゃない!」」
 しばらく出番の少なかったペガのツッコミも効いて、この辺りのやり取りは面白かったです。
 レムの作った装置により二人は一日入れ替わり生活を体験する事になり、レイトは基地でライハのスパルタトレーニングを受けるのですが、 リクのトレーニング姿が描かれた事が一度もないので、 相手の気が弱いのにつけ込んでライハがストレス解消しているだけなのでは。
 「ハイ次は床掃除! 顔が映るぐらいピカピカに磨き上げるのよこの鈍間なメガネ!」
 みたいな調子でこの機に色々な雑用をいいように押しつけられているた気がしてなりません。
 「勘違いしてました……。ゼロさんに変身した時、凄い高揚感だった。まるで、スターになったみたいな。でも……それは、 ゼロさんの力だったんだ。僕はただ、ゼロさんの力を借りていただけ。あれは僕じゃない」
 かくして小姑の執拗な責め苦に耐えかね、レイトはウルトラマンの道を断念。
 伊賀栗さん(と中のゼロ)が、女の子の尻の下に(物理的に)敷かれながら罵声を浴びる事を喜ぶという性癖に目覚めず、 愛する妻と娘を選んでくれてほんとーーーーーーーーーに良かった(涙)
 一方のリクも、会社でレイトの代わりが務まるわけがなくサラリーマンの大変さを思い知り、 平凡なサラリーマンの「日常」を抜け出したいというふとした願望と、青年の万能感とその挫折を同時に描きつつ、 相互に補い合う事でお互いを否定せず、その上でスーパーヒーローにはなれないけれど「日常」を守り続けるお父さんの充実感というのを、 肯定的に表現してくれたのは良かったです。
 「どうして、そんなに頑張れるんですか?」
 「それは……守りたい大切なものがあるからだね」
 妻と娘を優しい眼差しで見つめるレイト。
 「…………僕には、それも無い」
 「僕だって無かったよ。でもね、一つ大切なものが見つかると、他にも大切なものがどんどん増えていくんだ。 ルミナさんと出会ったから、マユが産まれた。マユが産まれてから、この街や地球を前より愛おしく思うようになったんだ。 僕が居なくなった後も、マユが生きていく世界だからね。……ま、僕ができるのはせいぜいこれくらいだけど」
 レイトは落ちていた空き缶を拾い、ミクロからマクロへと視点を広げ、またそのマクロに繋がるミクロな行為の実践、 と鮮やかにくるり。……正直今作で初めて、エピソードでやりたい事と言っている事が綺麗に繋がったような。
 「……君は普通の人と逆なのかもしれない。僕たちは身近な人を大切に思うから、世界を守りたいと思う。君は……世界を守る中で、 自分の大切なものを探していく。そういう運命を担っているのかも」
 「……見つかるのかな」
 「そりゃあ見つかるよ」
 リクはレイトの「君が君でさえいれば」という言葉に励まされ、レムの装置でジードの姿を変えるという考えを捨てる。
 「僕は、僕でいようと思うから」
 ……という流れに5話分の蓄積があれば良かったのですが、それが極めて不足しているのが実に残念。
 ここでリクのアイデンティティの揺らぎに焦点を当てるなら、どうして3−5話、リクから焦点を外してしまったのか。 そもそも地球人がベリアルの記憶を曖昧に所持している、という設定とも噛み合わせが悪く、どうしても、 リクが自らの出自を思い悩んでいる、というのが伝わってきません。
 どうにも作り手の側が、“ベリアルの息子”という時点でリクが大ショックを受けて当然だし、視聴者にもそれが共有される筈、 という前提に寄りすぎている気がするのですが、《ウルトラ》シリーズはそういうもの、と割り切るしかないのか。
 本来はこう持ってくるのならば5話までにおいて繰り返しリクの惑いを積み重ねておくべきだったと思いますし、 3−5話においてそれが吹っ飛んでいたので、非常に唐突に接続された感が否めません。
 レイトからリクへの、人生の先輩から迷子の青年への助言が、“人生の先輩”と“ウルトラマンの先輩”がかかっているのと、 ぽっと出のゲストキャラの説教タイムではなくメインキャラの一角の掘り下げと同時というのも良かっただけに、 この構成の不備が非常に勿体ない。
 言うなれば、〔ホップ・ステップ・ジャンプ〕の筈が、〔ホッ・ンプ〕のようになってしまっており、率直に、 シリーズ構成の失策だと思います。
 その為、ここまで1エピソードとしては悪くはなかったのに、 ここから先のクライマックスに向けた飛距離が大きく不足。
 まずCM明け、怪獣の目的はジードかもしれず、今後こういう事が増えるから変身しないほうがいいかも、 とライハが言い出すのがどうにも唐突。そこへジェラシーキラーが再出現して「ジーッとしてても、ドーにもならねぇ」 とリクが出撃するのも、実質的に第2話の動機付けを繰り返すだけになってしまっています。
 「僕の名はジード。ウルトラマンジードだ!」
 なので、ここで自らのアイデンティティを宣言、というのも今ひとつ盛り上がらない負の連鎖。
 「必ず見つけてみせる……自分の大切なものを! それまでこの世界を、壊すわけにはいかないんだ! ジードクローーーー!」
 そしてその勢いのまま新兵器を繰り出そうとして、大転倒(^^;
 まあ基本的にフォーム変わるといきなり必殺技を使いこなす作品ですが、唐突に手を伸ばすとまるで当然のように武器が出てくる、 というのはあまりに異次元に過ぎました。
 本来なら、1−5話の積み重ねがあった上で、レイトとの交流で一皮剥けたリクがウルトラマンジードとして次の段階に進む象徴、 という事で強行突破する算段だったのでしょうが、繰り返し、何故か3−5話で物語の焦点がリクから外れていた為に、 クライマックスという山頂に至る急斜面を登り切れず、ズルズルと滑り落ちながら手だけ伸ばすみたいな事に。
 「新たな武器」
 「機は熟した。そういう事ですね」
 お陰で、基地からのフォローも凄く苦しい。
 「今の自分を飛び越える!」
 ジードはクローを振り回し……前作において中で黒タイツの人がカリバー振り回すのも気になってはいたのですが、 ジャケットにTシャツ姿のリクが内部で振り回す事でクローの玩具感が凄く上がってしまっており、 シンクロしている本体の持っているジードクローまで正直ちゃちに見えてしまい、もう少しどうにかならなかったのか。
 クローカッティングで反撃したジードはおもむろに青く変身し、ハイスピードで嫉妬キラーを切り刻むと、 最後は頭上から降り注ぐ光の雨によって粉砕し、ますます、前回のもう帰りたい光線が浮く事に。
 また、自前で光の剣を出せるフォームで近接武器を振り回す、というのがだいぶ意味分からない事になっており、 販促の都合で新フォームと新装備を一緒に詰め込んだら、色々と無理が出てしまった気がします。
 かくして、助走不足から作り手の思惑よりだいぶ手前に尻餅つきながら着地してしまった感のある戦闘が終了後、 ライハは自分の剣を貸してリクに竹の試し切りを促し、リクは見よう見まねで剣を振り回してみるも、 切り込みの1つさえ付ける事ができない。
 「武器を使うには、使う人間にそれ相応の器が要る。どんな名刀も、小さな器の人間が使ったら、棒以下よ」
 そ れ は、オーブスラッガーランスのことですか?!!!
 残念風来坊への流れ弾はさておき、これまた突然クローが出てきた事をリクの成長と絡めて理由付けしているのでしょうが、むしろ、
 おまえの器は小さい
 と断言されている感があり、良い方に解釈して喜んでいてはいけないのではないかリク。踏まれたい年頃なのかリク。 モアに頼んだらきっとヒールで踏んでくれるぞリク。
 第6話にしてようやくリクがライハから型を学んでいるようなシーンが入る一方、 嫉妬キラーを撃破された伏井出ケイ@女子中高生からのファンレター募集中は、宇宙と電波で交信していた。
 「全ては順調です。我が主、ベリアル様」
 次回――激突!?
 そんなわけで、エピソードとしてのメッセージはある程度しっかり描けたし、1−6話まででやりたかった事はわかるのですが、 あまりにも助走不足でジャンプ失敗。
 ライハとレイトは外せないとしても、宇宙Gメン組は何とか後回しにするような構成は組めなかったものか。 そこはどうしようも無かったとしても、リクの主観中心に描く事はもう少し出来たであろう筈で、 立ち上がりの躓きがそのままクライマックスの躓きになってしまう事になりました。このままズルズル、 転んだままでないと良いのですが……次回、FDK先生の電波に期待。

◆第7話「サクリファイス」◆ (監督:武居正能 脚本:柳井示羊緒)
 正直に告白します。
 第1話からずっと、伏井出先生は、ギャラクシーな自己啓発本を書いている人だと思っていました!

 その時私は、アガムから光の啓示を受けたのです。本来なら、アガムの言葉は私たち地球人には風の音や雨の音のようにしか聞こえず、 理解する事はできません。ところが不思議な事に、私の心の中に自然とアガムの言葉が響いてきたのです! それはまるで、 清らかな川のせせらぎのように私の魂に染みいり、私が抱えていた深い心の傷を癒やしてくれました。
 「傷ついた者よ、あなたには私の声が聞こえるのですね」
 「はい、聞こえます」

 的な。
 そんな伏井出(ふくいで)先生は、『コズモクロニクル1〜3』『星空のアンビエント』などの著書を持ち、 その世界観をフクイデワールドと謳われる、人気SF作家。
 その講演会の抽選会に外れて大ショックの駄菓子店長が嘆き節で仕事をさぼっている所を伊賀栗家一同が通りがかり、 レイトの妻のルミナもK先生の大ファンと判明。ルミナもやはり抽選に外れていたが、当のK先生がそこに現れ、 ある思惑を持って一同を講演会に招待する……。
 何故か生真面目に移動駄菓子屋を手伝って店長をどやしつけるライハは、なりがちな孤高のクール系にせず、 むしろ意外と順応性高いのは良い所。何かと喧嘩腰ですし、好んで他者と友好的に接しようとは思ってないみたいですが(笑)
 また、レイトではなくルミナをK先生の大ファンとする事で、テンプレートな日常要素でしかなかったレイト妻にワンポイント与えて、 一人のキャラクターとして成立させたのは秀逸。レイトの方はむしろSFわからないしK先生に興味ない、とする事で、 『コズモクロニクル』に興味を示すゼロとの押し引き一人芝居も入れられて、面白くなりました。
 講演会当日、印税生活に憧れるペガがK先生の人気にあやかろうと、こっそりおみ足タッチを試みるも、 K先生がその存在に気付き、ペガを見下ろす視線とニヤリと浮かべた笑みも印象的。
 今回こういった端々の描写が行き届いた上でしっかり物語と連動しており、正直、今作で始めて、演出と脚本の歯車が噛み合った感。
 ……まあ、ペガが憧れの有名人にダークゾーンからこっそりタッチするという変質的行為を繰り返している疑惑が浮上しましたが!
 怯えて逃げ帰ったペガの反応から、K先生への疑念を深めるゼロ。なぜならば……
 「この本に書かれているのは、俺の戦いだ」
 厄介さんだーーーーーーー!!(おぃ)
 ゼロの主張によればK先生のデビュー作である『コズモクロニクル』の内容は、 かつてのゼロとベリアルとの戦いをまるで見ていたかのように元にしているのであった。
 「ゼロのファンなんじゃない? いい宇宙人でさ」
 「この本の中で、俺は悪役だ」
 凄く、根に持ちそう。
 警戒感を強めるゼロだったが、リクはK先生を安易に悪い宇宙人と決めつけたくはないと態度を保留し、 不穏な空気を孕みながら始まる講演会……ところで、段平片手のライハさんは、どうやって入り口をくぐり抜けたのか。
 まあこの世界、銃刀法があるのかどうかわかりませんし、帯刀許可証とか持っているのやもしれませんが。
 講演でK先生は『コズモクロニクル』について語り、
 (ゾーラ……俺の事か)
 「え?」
 人気キャラのモデルは自分だと主張しだす、本格的に厄介なゼロ。
 K先生はそんなゼロ/レイトをわざとらしく壇上に呼ぶと、暗に会場の人間を人質に取っている事をほのめかし、 ゼロの動きを封じた上でギャラクトロンを外に召喚。
 前作の人気怪獣をさっそく再登場させる、というのは引っかかる所はあるのですが、これはもう、 そういう形で発展しているシリーズだと思って受け止めるしかないのでしょう。
 動けないゼロに代わって外へ飛び出したリクは、ジードに変身するもジャスティス怪獣に大苦戦し、 あっという間にただの棒きれと化すジードクロー(^^; それでいいのかジードクロー。器が小さいからなのかジードクロー。後、 今回はジード中心でないので尺の都合もあったのでしょうが、敵がメカ型ならばスポ根バーニングを発動するぐらいの学習効果は見せてほしかった所です。 それをせずに安易に新装備に頼るから敗北した……と捉える事もできますが、やはり足りないのは器か。
 レイトという容れ物ごとゼロ抹殺を図るK先生は、家族やジードを助けたければ、ギャラクトロンの熱線を浴びろと指示。 苦渋の決断を下したゼロは、K先生の策に乗るままに、レイトの姿のままギャラクトロンの前に仁王立ちする。
 「安心しろ。お前達は死なせない。ルミナも、マユも、リクもみんな!」
 ここで、ウルトラマンゼロだから、という劇の外の蓄積に寄っかかるだけではなく、今作劇中において、 ゼロのヒーロー性を描いてくれたのはとても良かったです。特に、レイトが最も守りたい、妻と娘の名前をしっかりと口にする姿で、 ゼロが好きになれました。
 Zレイトは、迸る熱線をグラサンガードすると、最終的にゼロがレイトから分離。
 (レイト……よく、耐えてくれたな)
 レイトの肉体は守るもグラサンは弾け飛び、石化してしまう。
 「さようなら……ウルトラマンゼロはーはははぁーはーはぁ」
 露骨に柳の下のどじょうにすぎるポジションのK先生を、前作のジャグラーとどう差別化していくかはスタッフも悩みどころかと思われますが、 「ゼロ」からブレスなしで笑い声に繋げるという、フクイデスマイルを披露。前作における、 困った時のジャグラーさん怪演頼みで強行突破、はあまりよろしくなかったので今作では避けてほしいですが、まずは一つ、 変態紳士としての仕草を印象づけてきました。
 ゼログラサンが吹き飛んだのを目にして怒りに燃えるリクは、いつの間にか拾い直していたクローで反撃するとサイコクラッシャーアタックを放つが、 ギャラクトロンの左腕を砕くも弾き飛ばされ、更にカラータイマーが点滅してしまう。
 (ヒーローの条件ってなんだろう? 僕にはまだ、わからない。……ただ、幾つか言える事はある。華麗に戦い、格好良く勝つ事。 大切な人を守る為、命を懸けられる事。――この時の僕には、まだどちらも出来ていなかった)
 果たして、人々の、ジードの、そしてゼロの運命や如何に?! 世界はこのまま、フクイデワールドに染まってしまうのか?! で、つづく。
 K先生とゼロの対決を中心にしつつ、メイン周辺のキャラを満遍なく掘り下げる良い仕事の中、 講演の録画用カメラの前でK先生ぶった切ると逮捕だ逮捕、と言われて「絶望がお前のゴールだ!!」 と振り切れないライハが安定して役に立たなくなりつつありますが、刃物大好きな狂犬と見せて、 割と常識に縛られているタイプなのかもしれません。
 今後、中盤から後半にかけて、その辺りが葛藤として描かれてくれると面白そうかも。
 一方、今回も出番無しの宇宙Gメンは、どうやらK先生vsゼロのくだりで出番が無いので先に4−5話にねじ込んできたようですが、 その結果として立ち上がりにリクの内面を掘り下げられなかったのは大きなマイナス。 それを考えるとそこまでしてGメンは出さなくてはならなかったのか、という根本的な問題に発展しつつありますが、果たして今後、 どこまで納得いく存在感を出せるのか(外部とのパイプがあるので、情報源や導入要因としては凄く便利だろうとは思いますが)。
 今回、個人的にはここまでで一番素直に楽しめたエピソードで、次回はレイトがヒーローになる姿を描いてくれそうなのも、 素直に楽しみ。出来ればレイト/ゼロだけではなく、そこにリク/ジードを上手く繋げてくれる事を、期待したいです。
 ところで第5話では「ゼロ兄さん」と呼びかけていたリク、すっかり「ゼロ」呼ばわりなのですが、 縦社会のウルトラ戦士業界に叛逆する、この辺りがベリアルの遺伝子なのか。
 後、『オーブ』の頃から本編とは別にちょっと気になっているのですが、近年の戦隊では基本的に避けるようになった玩具CMバレを思いっきりするのは、 バンダイとの関係性の差なのでしょうか……?(^^;
 いやまあ、予告でばっちり新フォーム出ているとはいえ、クローは登場2週ぐらい前から宣伝していましたし……。

◆第8話「運命を超えて行け」◆ (監督:武居正能 脚本:柳井示羊緒)
 「若い……若いですよウルトラマンジード。さて……」
 カラータイマーを点滅させながらギャラクトロンに立ち向かうも歯が立たず、 至近距離からジャスティス熱線を浴びせられそうになるジードだったが、K先生は何故かギャラクトロンの電源をオフに。 九死に一生を得たジードは活動時間限界に達して 木っ葉微塵に吹っ飛び リクの姿に縮小され、 制限時間が来ると割と穏当に変身解除される事が判明。また、変身解除から次の変身までには二十時間程度のインターバルが必要な事が明確に。
 「言ったでしょ? ヒーローには強い悪役が必要なんです」
 レイトとライハに皮肉げな言葉をかけたK先生は、夕方のニュースでは「ウルトラマン最高です!」とこれみよがしな感謝の言葉を贈り、 リクの怒りに火を点ける。
 「あいつ、ぶっ飛ばしてくる!」
 「待ちなさい!」
 「離せ、離せよぉ!!」
 乱暴に叫ぶリクはこの辺り、ベリアルの遺伝子を受け継ぐ者の一面、という意図もあるのでしょうか。
 「まんまと罠にはめられて! 出てきた怪獣には歯が立たない。今のあなたに、何ができるの?」
 基本的に実力不足な上に頭悪いよね? と正面から突きつけてくれたのは良かったです。
 「負けたままで悔しくないのかよ!?」
 「悔しいよ! 目の前で知ってる人が怪獣に襲われて、でも何も出来ない……悔しくないわけないでしょ!!」
 荒れるリクに引きずられる形でライハも強い感情を表に出し、ようやく両者の内面を掘り下げつつ、 2人とも強大な存在に雄々しく向き合う根っこには、少なからず公の義憤がある事が窺えます。
 「だったら今すぐあいつを――」
 「ごめん。……僕のせいだ。僕のせいで、ゼロさんは死んだ」
 一方レイトは、怪獣に立ち向かうという恐怖を改めて実感していた。
 「やっぱり僕には……戦うなんて、無理だ」
 石化したゼロサングラスを秘密基地の机に置いたレイトは、家族とともに逃げると発言。
 「僕には家族が居るんだ……君たちみたいに無責任に命を懸ける事はできない! 無駄死になんてしたくないんだ!!」
 そんなレイトに、思わず平手打ちをするライハ。
 「……無駄って……本気で言ってんの?」
 「家族が心配なんだ……ごめん」
 公の義憤よりも他に、優先して命を懸けるべきものを持つレイトは反論せずに基地を飛び出していき、寄って立つべき場所の違いから、 レイトと若者達が決裂。また現状今作における「ヒーロー」とは、“公の理想の体現者”という事が言えそうです。 だから守るべき家族を持つレイトには、私を省いたその正義が、一種の無責任に見えてしまう。
 逆にライハの背景には、公の正義に関係する何かが存在していそう。
 「レイトさんが死んじゃったら……マユちゃんのお父さんは居なくなっちゃう」
 ここでリクが、レイト本人ではなく、マユにとっての父親、という立場を重視して理解を示す、というのも良かったところ。 そこはかとなく「父親」「家族」というものに対するリクの想いも見えてきますが、ここに来るまでにもう少し、 リクの家族観を明確にしておいても良かったかなとは思う部分でもあります。
 ライハは何かを振り払うかのようにトレーニングに打ち込み、リクはペガ、レムと共に、戦いについて確認。
 「ゼロは戻ってくる……絶対。……それまでは僕が……1人で戦ってみせる」
 悲壮ともいえる決意を固るリクですが、そもそもジード、戦いにおいて誰かを頼る意識を見せた事がこれまでないので、 今回急にゼロへの強い信頼感を示すのは、かなり強引(^^; どうしても、 ここまでのリクの積み重ね不足が端々に顔を出すのが惜しい部分です。
 ギャラクトロン対策についてライハに問われ、
 「レムとシミュレーションした。戦い方は17通り」
 と、ただ我武者羅に突き進めばどうにかなると思っているわけではなく、一応頭使ってて良かった(笑)
 「その内、失敗する可能性が高いのは、17個」
 LV差は覆せませんでしたが!
 それでもそこでライハと微笑み合う辺り、要するにこの2人は、似たもの同士なのか。
 地上では、ジード再変身のインターバル時間を知っているかのように、K先生がギャラクトロンを再起動。
 「行くんだね」
 「…………うん、僕はウルトラマンだから」
 17通りの戦い方はどれも通用しないかもしれない、それでも、リクは立ち上がる。
 何故なら、己の力が忌まわしい血筋に由来しているとしても、その力を正しく使う事で、力は意味を変える事が出来るから。
 リクがウルトラマンであろうとするのは恐らく、その名の下に公の理想を追い求める事で、 自分の力を正しく用いていると信じられるから。
 だからこそリクは世論調査の動向を細かく気にするし、自分が体現しようとする理想のヒーローを汚されたと感じた事で、 K先生に対して激怒した、と考えると、リクについてようやく腑に落ちてきました。
 今作の行き着くところは、「ウルトラマン」から脱皮して、「ジード」になる事なのかも。
 一方、避難の準備を進める伊賀栗家では、マユが無邪気にウルトラマンを信じていた。
 「大丈夫だよ。ウルトラマンが、来てくれるもん」
 「……マユ。……そうだね。いつだってウルトラマンは来てくれる。いつも必ず」
 この辺り、お母さんは娘に話を合わせているにしても、一般へのヒーローとしてのウルトラマンの浸透度合いがもう一つ曖昧なのですが、 仲居スマッシャーは女性に大人気だ!
 「――行かなきゃ」
 愛する妻子の言葉に、 嫉妬 恐怖に震える手を押さえ込み、決意を固めたレイトは、2人をぎゅっと抱きしめる。
 「こんな頼りない僕だけど……やっぱり、守りたいんだ。……君も、マユも、君の好きなこの街も全部」
 「レイトくん……?」
 「だから、祈ってて。ヒーローの復活を」
 伊賀栗レイトもまた、立ち上がる。
 力があるならば――それを、理想に近付ける為に。
 この両手で守れる世界を、もっともっと広げる為に。
 ジーッとしててもドーにもならねぇとギャラクトロンに立ち向かうリク、その戦いの場へひた走るレイト。
 ……今回、てらいなくベタをやってきた(中途半端に恥ずかしがるのが一番良くないので)点も含めてここまでは結構好きなんですが、 この後、大・失・速(^^;
 ジードの戦いが見える所まで駆けつけるも地面に転んだレイトの前に、ゼログラスを持って立つライハ。
 「普段はあんなに頼りない子が……ウルトラマンだなんてね。私には、リクのような強い力はない。私にその力があったらって、 思う事もある。だけど……ウルトラマンになった事は、運命なんだよ」
 ……前半にも幾つか引っかかる部分のあった積み重ね不足ですが、ライハ主観にしても、 リク=「頼りない子」というのはどうもすんなり頷きにくく、描写できていない設定をそのまま台詞にしてしまった感じに。 そこに頷けない内に、ライハがいきなり「運命」という単語を持ち出してしまい、 ライハの中では納得しているようだけど一人で思考が飛躍している印象が強くなってしまいます。
 そしてそのライハの思考の飛躍に至る背景が劇中にまだ登場していないので、ライハの物の見方に共感しにくいまま、 「運命」というボールをレイトにキラーパスしてしまうので、ライハが勝手に理想化した義務をレイトに押しつけたような形に。
 恐らく次のエピソードへの前振りとして必要だったのでしょうが、正直ここライハ抜きでもまるまる成立すると思いますし (グラサン渡すだけなら、レイトを純粋に信じていたペガが持ってきたとかで充分なわけで)、より劇的にする為には、 ライハ抜きの方が良かった気がしてなりません。
 「あなたは、ウルトラマンの力で、何がしたいの?」
 もう一つ言うと、ライハ自身が何やら重いものを背負っているのは透けて見えるにしても、 妻子持ちの30がらみの社会人に説教モードを発動するには、あまりにも小娘感があって説得力がありません。 もっと丁寧に雰囲気を仕込めば別ですが、どちらかというとキャラの日常感を重視している今作では、 浮き世離れした神秘性などは存在していないわけで。
 しかもつい先日、地味なサラリーマンにも社会でそれぞれの役割があってそれはとても大切な事だ、とやったばかりなのに、 運命によって力を手に入れたのだからそんな事では駄目だ、とライハがバッサリ袈裟懸けに切り捨ててしまう事に。
 既にこの前のシーンでレイト自身が、その役割の延長線上で自分が守れる世界を広げたいと決意をしているわけなので、 ライハの介入は不必要な雑音になってしまいました。
 これは恐らく、リクにしろレイトにしろ、今回のエピソードは現実と理想にまつわる“男の子の夢”をストレートに描いているので、 いざその核心に入った時に物語の中にライハの居場所が無くなってしまったという影響もあったかと思います。 この場面は次回を見ると遡って納得できるかもしれませんが、今回に限っていえばエピソードのテーマを損ねてしまっており、 ライハ自体は嫌いでないだけに、残念。
 「――守りたい。僕には……2万年早すぎますか? それでもやってみたいんです。みんなを守るって事を」
 サングラスに向け、ゾーラの決め台詞を借用してのここは良かったのですが…………
 (――俺の相棒だったらもう30分早く判断しろ)
 石化していたゼログラスに輝きが戻り、“ゼロがサングラスの側から復活してしまう”というのが、 今回最大のガッカリ。
 てっきり、ゼロはレイトの生命活動を維持する為のほんの僅かなエネルギーをレイトの中に残しており、 レイトの決意がそれにエネルギーを与える事で“レイトの内側からゼロは復活する”と思っていたのですが、 それが“サングラス(レイトの外側)から復活してしまう”と、結局、ゼロは超強いので余力を残した仮死状態だった、 という事に過ぎなくなってしまう。
 勿論それを最終的に目覚めさせたのはレイトの決意なのでしょうが、それをより劇的にする為にはレイトの内側から目覚めてほしかったですし、 運命とは別の手段でヒーローになれる可能性をそこに見たかったです。
 サブタイトルは「運命を超えて行け」なのですが、実際に見せているのは、内側から生み出した力で運命を乗り越えるのではなく、 外側から与えられた力を運命として受け入れる、という構造になってしまっているのは、非常に残念。
 まあこの点は物語として、運命に選ばれて外から力を与えられた者(レイト)と、運命に選ばれず力を与えられていない者(ライハ)、 を厳然と区別したい理由があるのかもですが。
 あと、ゼロが死んだけれどレイトは生きている、という事自体はゼロが生きている物語的根拠だったとは思うので、 それがレイトの内側からの復活という形で活用されなかったのもガッカリ。既にレイトの肉体は完全回復しているという事なのかもですが、 そうすると今度はゼロがレイトと同居する建前が無くなってしまうわけで、その補強の為にも繋げてほしかった所です。
 (行くぞ、レイト)
 「……ハイ!」
 レイトは自らの意志で変身し、復活したゼロはジードとのコンビネーション攻撃をギャラクトロンに浴びせるが、
 「いいですねぇ、こんなに楽しめるゲーム未だかつて無かったぁ! では……こちらも」
 熱射病になりそうな格好で戦いを見つめるK先生は、2台目のギャラクトロンを召喚する大盤振る舞い。
 奥行きを使って2ラインでの同時バトルはあまり面白くならず、ギャラクトロンの攻撃を受けて吹き飛ぶゼロだが、 その時、不思議な事が起こった(棒読み)
 突如、空から落ちてきた金色の光が、ゼロに接触――その光の正体は、 ゴールドプ 新たな力を届けにきたウルトラマンヒカリ。
 「ニュージェネレーションカプセル。ゼロ専用のパワーアップアイテムだ」
 ええええええええええええええええええええええ。
 そもそもリトルスター回収と新フォーム発動からして物語との連動性が希薄な傾向でしたが、ジードクローの出現といい今回といい、 スタッフは誰もパワーアップギミックと物語を繋げる事に興味が無いのでしょうか(^^;
 やる気の無さ度合いで言うと、よくわからない内に地球が新たな天装術カードを配信してくれて駝鳥を召喚したレベル。
 そしてまたここでも、力が内側から生じるのではなく、外から与えられるものとなっているのも、残念な所。 エピソードの流れとしてはゼロ復活から一気に強化に繋げてしまうのが一番説得力が生じたと思うのですが、 玩具の都合でどうしても出来なかったにしても、物凄い放り投げ方。
 そこから、ギンガとオーブのウルトラ成分を混ぜ混ぜしてニュージェネレーションカプセルアルファ、 ビクトリーとエックスのウルトラ成分を混ぜ混ぜして同じくベータを作り、新たに生み出した二つのカプセルを改めてライザーで読み込んでネオフュージョンライズ、 「俺に限界はねぇ!」と新たな姿にフォームチェンジするまで、約1分30秒。
 さすがに長い。
 そして「ニュージェネレーション」とは一体……と思ったのですが、つまり、ゼロの新しい舎弟達か。
 「俺はゼロ……ウルトラマンゼロビヨンドだ」
 出っ張りが増え、すかした喋り方になったゼロビヨンドは4つの舎弟スラッガーで遠距離攻撃を放ち、 その生じた隙にジードは仲居スマッシャーを発動すると、連続攻撃からクロースプラッシュでギャラクトロンを撃破。 ゼロビヨンドも8つのウルトラ舎弟ファンネルによる一斉射撃で撃破し、難敵・ギャラクトロンを共に打ち破るのであった
 「はっ……面白い」
 K先生は思わせぶりな事を言って退場し、前回−今回で悪役としての存在感は出ましたが、 何が起きても計画に支障の無いポーズを取り続ける人にもなってしまい、あまり都合良く引っ張りすぎないでほしい所です。
 感激の涙を流すレイトはリクとがっちり握手を交わし、妻と娘から見ると、 避難そっちのけでどこかへ飛び出していったレイトが川岸で最近知り合ったばかりの青年と手を握って見つめあっている場面に遭遇したわけですが、 どう言い訳するのかレイト! この危機を乗り越える事は出来るのかレイト?!
 とりあえず、残念カプセルを使った後遺症が出ない事を祈ります。
 「ルミナさん……僕最近、数奇な運命に導かれて旅に出たい気持ちなんですよ」
 次回――ライハvsK先生!

◆第9話「誓いの剣」◆ (監督:冨田卓 脚本:三浦有為子)
 OPに、舎弟達を従えたゼロビヨンド追加。
 リクとライハはレイトから、マユがリトルスターを発症したらしいと相談を受け、 段々と謎の呪いみたいな扱いになっていくリトルスター。相談の結果、一時的にマユを秘密基地に匿い、 リトルスターを狙う怪獣が現れたらジードが対処、その間に恐らく近くに居るであろうK先生をZレイトとライハで捕まえる、 という作戦が立てられる。
 見た目から属性をわかりやすく、という事なのでしょうが、レイトさんはどうして、休日に娘と公園で遊ぶに際して、 背広+ネクタイ+鞄、の完全装備なのか。
 そして娘さんはお母さんに今日の出来事を聞かれて、
 「パパとお姉ちゃんとお兄ちゃんと着ぐるみと遊んでたのー」
 「……お姉ちゃん?」
 二週続けて、レイトさんの家庭が家庭が大ピンチ。
 一方、宇宙GメンはK先生の経歴を洗っており、如何にも今まで水面下で注目していたみたいな雰囲気で登場するのですが、 これなら前回前々回にちらっとでも出番をねじこめなかったものか(^^; そして過去の事件を調べ直していたモアは、6年前、 今でいう怪獣と思われる巨大生物災害の生き残りとして、鳥羽ライハの名前を発見する……。
 リク達の目論見通りに天文台の近くに怪獣が現れてジードが出撃するが、別の場所にスカルゴモラが出現。やむなくゼロも変身して、 ジードが苦戦していた天文台サイドの怪獣を担当し、ゼロビヨンドへとチェンジ。 舎弟ズスラッガーを2本ずつ束ねて巨大な光のマサカリ二刀流として振るうのは格好良く、前回よりはだいぶ格好いい立ち回りでした。
 「俺の娘に手を出そうなんて、2万年早い」
 (あのー……マユは僕の娘です)
 「似たようなものだ」
 というゼロの返答にレイトは満更でもない微笑を浮かべ、ゼロの中の父性の芽生え、 というのは中盤〜後半にかけて上手く繋げられると面白そうな要素。
 スカルゴモラが出現した山――6年前の怪獣災害の現場――へ到達したジードが、 着地の勢いで高空から躍りかかるジャンピングニーを決める、というのも格好良かったです。
 ところがその山に、K先生を狙うライハ、そしてライハを追ったマユがやってきてしまう。ライハはマユを振り切ってK先生を探し、 ジードはバーニングクローでゴモラを撃破。
 「お願いジード、お姉ちゃんを止めて、お姉ちゃんを助けて」
 6年前、かつてリトルスター保持者であったライハはスカルゴモラに襲われ、 両親はその目の前で怪獣の起こした土砂崩れに飲み込まれて死んでしまう。ライハに宿っていたリトルスターは空中で消滅してしまい、 ライハはその時に目撃した、怪獣から人間に戻った人物を、6年間探し続けていたのであった。
 ライハの過去を聞いたマユの祈りにより、リトルスターはウルトラカプセルへと変換され、ジードはゼロカプセルを入手。……え、 何故、そこに居る、ゼロ? いやまあ、カプセルはあくまでマジックアイテムなので本人と別に存在していて構わないのでしょうが、 メイン級の扱いだけに、どうしてわざわざ感は漂います(^^;
 「よくここに居るとわかりましたね」
 6年前、ライハのリトルスター回収失敗を教訓にやり方を変えたらしいK先生と、橋上で対峙したライハは両親の復讐の為に刃を抜き、 両者は激しく激突。
 「こういう展開、嫌いじゃない」
 変態紳士道その18により華麗にステッキを操るK先生はライハを追い詰めるが、 鞘袋を用いた奇襲でよろめいた所を至近距離から掌底を打ち込まれ、駆けつけてきたリク・レイト・マユの前で、 喉元に刃を突きつけられる。
 「何故だ……?」
 「覚悟が違うのよ」
 …………恐らく、リクの「覚悟決めるぜ」に対応する形でライハにも「覚悟」と言わせたのでしょうが、前々回、 カメラ回っている前でK先生をぶった切ると逮捕されるから、という理由で切りかかるのを止めたライハの、 「覚悟」とはいったい。
 復讐者を描くにあたって最も重要なのは、復讐にまつわる情念の多寡なのですが、 なにをもって「覚悟」を語るのかがさっぱり行方不明になってしまい、その一番肝心な部分がブレてしまっている、大惨事。
 「自分のせいで大切な人が奪われて、守れなくて、私がこの6年、どれだけ苦しかったか……悔しかったか……その気持ちがわかる?」
 「くだらない」
 「……でしょうね。でもそのくだらないものが! あんたと私の差よ!!」
 ……あー、ライハさん、他人が何を考えているか、割とどうでもいい人なんだなー。
 前回レイトへ言い放った言葉の数々と重ねて考えるとライハ、かなり一方的に自分の物の見方を他人へ押しつけてそんな自分の意志が一番大事、 という人にしか見えないのですが、それがリクへの対応とはまるで違っている、というのがまた惨事。
 序盤からそこはかとなく台詞で匂わされていたライハの背景は決め打ちでしょうから、本来なら、K先生とライハの因縁、 ライハの目的と復讐心が明かされた所で、それでライハはこういう性格だったのか…… と納得できる形で積み重ねてきた物語の焦点が合わなければいけないのですが、むしろ、え? それなのに今までのあれやこれは?  と物凄くちぐはぐになっています。
 今回のK先生や前回のレイトへの対応を考えると復讐一辺倒で周囲の事が見えておらず、 それは思春期を復讐の為に研ぎ澄ましてきた人物としては納得できる造形なのですが、 そのくせ意外とコミュニケーション能力があって他者を気遣う視野を持っているので、その他のパートと人格が変異してしまっている。
 そしてもし、復讐の標的を目の前にして我を失っている、というのなら、講演会の時点で我を失っていないといけなかったわけです。
 ここまでの物語を振り返って、ライハの言うところの「覚悟」と、それ故の在り方というのが、 トレーニング以外にまるで目立って見えてきません。そこを描くのが、情念を描く、という事であり、それが描けないのなら、 「復讐」などという動機は持ち込まない方がマシです。
 更に致命的なのは、純粋に個人の怨念で動く復讐者だったライハが、個人として何より家族を守ろうとしたレイトに対して、 「逃げるの?」呼ばわりした事。
 前回のその会話からライハの家族は公益に関わる人物で、その為に怪獣と関わって命を落としたのではないかと推測していたのですが (だから「無駄死に」がNGワードなのかと思ったのですが)そんな事はなく、「娘を守ろうとして死んだ両親の復讐」 という極めて私的な動機であるならば、むしろライハこそレイトに共感できたのではないか。
 そこでレイトに共感しないどころか、私は私のやりたいようにやるけど、 おまえは手に入れた「力」で公益に奉仕するという運命に従うべきと主張するライハさんは、 物凄く性格がねじ曲がっている事になるのですが。
 で、話が一周戻ってくるのですが、復讐しか見えていないから性格がねじ曲がっている、というのなら、それで構わないわけです。 ところがここまで8話を見ている限りではむしろライハは物語全体の中でも真っ当な人格として扱われており、 その場その場の話を進める都合でライハの核心を成す部分を切り刻んでしまった結果、 ライハというキャラクター自体が矛盾を起こしてしまっている始末。
 もう一つ言うと、ライハが今回言っている「覚悟」(復讐の為に手段を選ばないつもりらしい気持ち)と、 リクが口にする「覚悟」(どんな状況でも皆のヒーローであろうとする気持ち)は、言葉は同じでも中身は大きく隔たりがあるのですが、 ライハの復讐自体は、リトルスターの残滓?に止められたものの、誰もライハの言う「覚悟」を否定的に扱わないのは、今後の不安要素。 これ最後まで一緒に扱うと、かなりの確率で大事故……。
 そして最後に「やめて良かった」とフォローを入れるものの、 ライハの行為に対して1から10まで何も関与できない主人公の存在価値、とは。
 この辺りのもろもろ、後々の為の仕掛けだと思いたいのですが、前回と今回だけ取ってみても、レイトの変心(変身)が、 私的な復讐に凝り固まっていたライハの心境に変化を生じさせて……など繋げられそうなのにまるっきり断裂していたり、 脚本間でどのぐらい連携取れているのやら。
 立ち去るK先生はZレイトが追いかけるもバリアに阻まれ、
 「ストルム星人か!」
 というのがK先生の正体のようですが、過去作ネタ?
 そして一連の騒動をピーピングしていた宇宙Gメンだが、鉄仮面先輩はK先生だけではなくZレイトに興味を示すのであった。
 …………大丈夫かゼロ、ここに来るまでに、食い逃げとか、スピード違反とか軽犯罪を犯してないか?!
 幾つかの伏線が収束するライハ回という事で、K先生の掘り下げともども期待していたのですが、 前回後半以上の大失速から墜落してしまい、残念。
 次回――久々にモアが絡んで、閑話休題?

◆第10話「ココロヨメマス」◆ (監督:冨田卓 脚本:森江美咲)
 素っ頓狂なゲスト宇宙人がやってきて人間関係を引っかき回して一騒動、という少し息抜きめいたエピソードでしたが、 どうしても今作に宇宙人が出てくる度に、宇宙人一般はクライシス・インパクトをどう認識しているのかが気になってしまい、 エピソードに集中できません(^^;
 つまり地球でいうクライシス・インパクト(銀河崩壊とキングによる救済処置)に関して、
 ・地球人は認識していないが、宇宙人一般は認識している
 ・地球人は認識していないし、宇宙人一般も認識していない
 ・宇宙人一般は認識していないが、実は地球人だけが微妙に記憶を持っている
 のか、という点がハッキリしない為、「クライシス・インパクトにより何が起きたのか」に関する“情報量の差異” というのが物語の面白さとして機能せず、「提示された大きな謎」に対して「新しい視点」を提供できる存在が登場したにも関わらず、 「肝心な所に都合良く誰も触れてくれない」ので、個々の事象に対して登場人物それぞれがどう認識しているのか、 が回を追うごとに曖昧になっていくのが、凄くストレス。
 それとも私が大きく勘違いしていて、「宇宙が一度崩壊しかけたけどキングのじーさんにより修復された」 というゼロの説明でこの問題は解決していて、地球人がベリアルについてよく理解していないのは文明レベルが低いから、 というだけの話なのでしょうか……と段々不安になってきました。
 しかしまあ「地球人がベリアルについてよく理解していないのは文明レベルが低いから」 だけの話だったら何も序盤の大仕掛けめいて描く必要は全く無かったわけで……どうしてもこの辺りの描写の曖昧さが引っかかってしまいます(^^;
 引っかかるというと、ゲストの読心宇宙人が車から足を見せた時点の、凄い美女がやってきたぞみたいなSEから、 顔を見せた所で、がっくりだ、みたいなSEを流しておきながら、いざ街でナンパを始めると道行く地球人男性が軒並み(可愛い……) と反応するというのは、いったい何をしたかったのか。
 実写とはいえ、劇中における美人度の扱いは演出で20%ぐらいは左右できるので、こういうどっちつかずの事をされると、 どう捉えていいのか困惑します。
 それから、読心宇宙人がマユに「王子様なんて居るわけない」と突きつけた後、誰もマユをフォローした描写が無いのに、 マユが当の宇宙人(自分に嫌な事を言った相手)と遊んでいる、というのも凄く困惑。
 誰かがフォローしたけど省略したと考えるには、そもそもあの場にフォローできる人材が居るのか、 フォローする端から否定されるのでは、という問題があり、もう少し丁寧にやってほしい所でした。 マユちゃんは心が凄く太いという事でいいのか。
 怪獣が活動を再開してモアと読心宇宙人はGメンの仕事に戻るが、そんな事は知らずに怪獣退治に向かったリクは、 モアの本職を知ってしまう。そして怪獣に吹き飛ばされたモア達を助けようとした事で、モアもまたリク=ジード、と知ってしまう。
 苦戦するジードをゼロが助けに来る中、読心宇宙人の能力により、怪獣が地球に来たのは失恋の為であったと判明。 リクとライハの運命の関係に嫉妬の炎を燃やす気力も失いつつあるモアだったが、ジーッとしててもヒロインにはなれない!  と怪獣を焚き付け、どうやら地球人の言語が理解できるらしい怪獣は気力を取り戻す。
 …………それにしても、ジードはいつまでカラータイマーが点滅しているのか。
 ゼロが助けに来る理由付けとして明確なピンチのサインが必要だと考えたのでしょうし、 あくまでシンボルなので厳密に捉えるものではありませんが、それにしても長すぎたと思います(^^; あまりに長すぎて、 ピンチのシンボルという意味がなくなりかねない危機で、今回端々がなにかと杜撰。
 最終的に、モアの檄にバンカラ魂を刺激されたゼロがウルトラ舎弟パワーで怪獣を宇宙へ送り返し、ゼロビヨンドPR期間にしても、 横に立って見ているだけのジードのぼんくら舎弟5号感が物凄いのですが、それでいいのかウルトラマン。そして、 PR期間終了後のゼロビヨンドの扱いが、今から心配になります(^^;
 「言わなきゃ、て思ってたんだけど……いざとなると、言い出せなくて」
 「……うん」
 怪獣が無事に地球を離れ、向かい合うリクとモア。
 「巻き込みたくなかったんだ……大切な人だから」
 「……うん」
 意外やモア、フルスロットルで自分に都合のいい解釈をして妄想モードに突入しなかったのですが、 恐らくこれまでの人生で何度も苦い経験をして学習したのだろうと思うと、涙が止まりません。
 「モアには、迷惑な話かもしれない。でも、それでも僕は……」
 ウルトラマンであり続ける為、背を向けて歩き出すリクに、声をかけるモア。
 「私! ジードなんて知らない。何も見てない。何も知らない。だって……リクくんはリクくんだもん!」
 無自覚ぽいですが、モアは一応、リクのウィークポイントは把握しているのか(笑)  家族感覚というのが不利な所ですが、リクはその辺りのツボをじわじわと押していけば、攻略可能だと思います! 後は、 お姉さんモードを離れて、いつもとちょっと違う一面を見せて不意打ちでドキリとさせるというのがきっと効果的ですよ!
 そんなモアの言葉に救われて、リクもまた、足を止める。
 「モア……。……ホント大変なんだね、ニコニコ保険の仕事。あんな怪獣も相手にしなきゃいけないんだもんな〜……ホント、 いつもお疲れ様」
 「リクくん……ありがとう」
 というわけで、前回ライハがトップロープからニードロップ自爆によるキャラ崩壊で大きく後退したヒロインレースに、 別のコースに飛び出して脱落しかけていたモアが復帰、猛追。レムとペガの先頭争いという状況は変わりませんが、 今後のレース展開に光明を見せました。
 まあリクは本当に「大切な人」だと思っているなら、自分どうこうではなく、どうしてそんな怪しい組織に就職したのか、 あの上司は大丈夫なのか、についてよく話を聞いた方がいいと思いますが!
 (ジードは正義のヒーローじゃない。そう思う人達はまだいっぱい居て……悔しい思いをしてきた。でも……大切な人が、 僕をわかってくれた。今は、それだけで十分だ)
 そして持ち場を放り出した鉄仮面先輩は、Zレイトをピーピングしていた。
 (伊賀栗レイト……やはりお前か)
 ……ゼロ、駐車違反の罰金支払いが貯まっているなら、早く謝って!!

→〔その3へ続く〕

(2017年11月25日)

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