■『ウルトラマン80』感想まとめ4■


“この星は 美しい星
誰もが愛する 青い星”


 ブログ「ものかきの繰り言」の方に連載していた『ウルトラマン80』 感想の、まとめ4(25話〜32話)です。文体の統一や、誤字脱字の修正など、若干の改稿をしています。

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◆第25話「美しきチャレンジャー」◆ (監督:湯浅憲明 脚本:阿井文瓶)
 ナレーション「彼女たちは皆、明日の城野エミを目指して懸命なのだ」
 UGM入りを目指して日々汗を流す地球防衛軍女性隊員たちがフォーカスされ、 訓練を見学しに来た城野が憧れの先輩として描かれるのはわかるとして、矢的は何をしに一緒に来ましたか。
 シナリオ的にも困ったのか、特にこの後の伏線でもなんでもないUGM制服の説明を滔々と始めるのですが、 前回に続いて城野と連れだって歩いているところに通りがかったユリ子にからかわれると、 「ユリちゃん僕のことそんなに気になるとかまいっちゃうな〜」といった調子でデレデレやに下がって城野に冷たい視線を向けられ、 相変わらず、女性関係で好感度を下げていく事に余念がありません。
 何かと城野に敵愾心を燃やす訓練生の一人・ジュン(演じているのは恐らく、『超人バロム・1』でミス港南小の須崎くんを演じていた、 斉藤浩子さん)は、怪獣に殺された兄の仇討ちの為にUGM入りを目指していたが、親と約束した期限まであと20日……その時、 2機のUFOが突然UGM基地を強襲し、ジュンはこのチャンスに一発逆転の手柄を挙げようと、周囲を顧みず身勝手な行動を取ってしまう……。
 女性隊員へのクローズアップ、操縦技術やレーダーの分析などでただのコネ入社ではない力量を見せる城野、 城野先輩とゲストヒロイン後輩の関係性というこれまでにない切り口、とアプローチは面白かったのですが、 いくら手柄が欲しいあまり視野狭窄になっているとはいえ、「見つけた敵性宇宙人をそのまま通報」すれば十分な手柄になるのに、 「見つけた敵性宇宙人を籠絡して情報を入手しようとする」のはあまりにも発想が飛躍しすぎて、台無しになってしまいました。
 追い詰められてそこまで愚かな行動を取ってしまう動機付けである「兄の仇を取りたい」「親との約束」 が背景説明以上に掘り下げられないので、物語の中でキャラクターの情念が繋がらず、 選抜メンバーに入っている事自体の説得力から揺らいでしまったのが、痛恨。
 ……どうやらチーフの過去の武勇伝に影響を受けてのようなので、悪いのはチーフか。
 そんなわけで相変わらず物語が今ひとつ噛み合わない一方で、 城野とジュンの訓練からUFOとの空中戦に続く戦闘機を中心とした特撮は見応え抜群。後半ではUGM基地の地上砲台が激しく火を噴き、 それに対してUFOと怪獣が共闘を仕掛けるのを俯瞰で見せるのは面白い映像。
 ところで、以前もどこかの回で思ったのですが、UGM隊員の光線銃、 怪獣に着弾した際の爆発規模が物凄くてシリーズ歴代最強クラスの破壊力なのでは(笑)
 功に焦った挙げ句、基地内部での怪獣出現を許してしまったジュンは矢的や城野に詫びながら特攻を仕掛けるが、敢えなく撃墜。 屋上からダイビング変身を決めた矢的がそれを拾ってさくっとUFOを撃墜すると、 怪獣には高高度からのウルトラジャンピングニードロップ! そこからモンゴリアンチョップ、低い位置の回し蹴り、 そしてジャイアントスイングに光線技で怪獣を粉砕し、UGM基地を直接狙った宇宙人の作戦は、失敗に終わるのであった。
 「一日も早くUGM隊員になりたくて、一人で怪獣をやっつけようとして大失敗」
 「まったく、城野にはヒヤヒヤさせられたもんだ」
 隊を辞めようとするジュンに対し、過去の失敗談を語った城野は「ここで引き下がっては駄目だ」と激励し、
 「ジュン、勢いがあまってやりすぎちゃうのは、若さの特権だぜ」
 と矢的もエールを贈るのですが、「若さの特権」で許すには余りにも被害規模が大きすぎで、この後、 キャップがスーパーダンディ交渉力で上層部を丸め込むのでしょうか。
 後、序盤のあれこれを考えると城野隊員が5年前からの生き残りだと考えるのはだいぶ苦しいと思われるのですが、5年の間、 怪獣が出ていない設定は、学園生活と共に亜空間に呑み込まれてしまったのか。
 話の切り口は悪くなかっただけに、ドラマ面での諸々の『80』クオリティが勿体ないエピソードでした。
 次回――鎧武者と異次元エイリアン! ……予告だけ聞くと、完全に東映特撮(笑)

◆第26話「タイムトンネルの影武者たち」◆ (監督:湯浅憲明 脚本:平野靖司)
 戦闘機でパトロール中、空中にぽっかり空いた異空間ゲートに呑み込まれて不時着した矢的が出会ったのは、真剣を構えた鎧武者?!  咄嗟に竹槍で戦った矢的は真剣白刃取りを披露し、パトロールに同行していた城野が「姫」と勘違いされた事で鎧武者は刀を収めるが、 そこに突然の宇宙人?の攻撃!
 お城は何やら変な一団に占拠されており……東映特撮では、これ(笑)
 鎧武者から事情を聞くと、矢的と城野が紛れ込んでしまったのは、「ヨミの国」。
 その地は今、異次元の侵略者アクゾーンによって征服されており、円盤はともかくとして、ホッケーみたいな装備の戦闘員とか、 トカゲのようなマスクを被った首領が高笑いしながら高い所に現れるとか……東映特撮では、これ(笑)
 矢的と城野は、もしかしたら既に死んでいるのかもしれないけど、とりあえずヨミの国を救おう、と決意を固め、 城野姫の元に結集した残党一行は倒した異次元人の装備を着込むと、隠し通路を使って城内へと潜入。
 牢屋に囚われていた本物姫は、祈りにより救世主を異世界召喚したのだと主張し、私たちが勇者のわけがない、と笑い飛ばす城野の横で、 (あ、これ、巻き込み案件かも……)という顔になるウルトラ族は面白かったです(笑)
 変則的な状況設定でレギュラーメンバーを矢的と城野に絞って軽妙な展開でキャラクターの魅力を引き出し、マドンナ先生の消滅後、 順調に勢力を拡大する城野隊員のヒロイン推し回としてはそれほど悪くなかったのですが……本物姫を連れて本丸に乗り込む段になって、 急激にテンポが悪化。
 セットの都合でカメラを置ける場所が限られていたのか、なまじ一人二役にしてしまった為にカット割りが限られてしまったのか、 トカゲ将軍と腹心の博士が、ゲートを開いて地球に怪獣を送り込んでやると恫喝してくると、 敵に思い切り背中を向けて窓の外を見ていたり、姫が装置に突撃を仕掛けるのを棒立ちで眺めたり、 そのショックで装置が故障して異次元人がてんやわんやしているのに完全に背を向けていたりと、 間抜けを通り越して酷すぎる絵と展開が連発。
 結局、怪獣はヨミの国に出現してしまい、何故か外へ飛び出していったトカゲ将軍を追った矢的は、前回に続いてダイビング変身。 城野は色々そっちのけで装置と取っ組み合っている博士に銃を突きつけてヨミの国の人々を解放させ、80は、 だいぶ大雑把な感じのトカゲ怪獣と戦闘開始。
 嵐のような連続蹴りを決めるも炎を放たれ……つまり、お城バックの怪獣バトルをやりたかったのでしょうか。
 毎度ながら派手な特撮で、調子に乗っていた80は炎に巻かれてカラータイマー点滅の大ピンチに陥るが、 本日も打点の高い飛び蹴りから猛然と反撃に入ると連続投げを決め、サークルビームで怪獣を撃破(爆発するわけでもなく、 ふっと消滅して、ちょっと謎の表現)。一目散に逃げ出そうとしていたトカゲ将軍の乗った円盤を撃墜すると、 城野を拾って時空ゲートをくぐりぬけて元の世界に戻り……墜落した戦闘機の傍らで倒れていた矢的と城野は、 UGMの同僚によって無事に発見される。
 果たして全ては、墜落のショックが見せた束の間の幻影だったのか……?
 ナレーション「我々が住んでいるこの宇宙は三次元と呼ばれる。しかし、次元を越えれば、我々の考えた事もない世界が、 存在するに違いないのだ」
 ナレーションさんがSFっぽくまとめて、つづく。
 変化球で軽い一服としては前半は悪くなかったのですが、後半、出来の悪い喜劇のようになってしまったのが、残念な回でした。
 何故かEDのクレジットが下から上に流れる形になったので突然の最終回、さらばウルトラマン80かと思ってドキドキしましたが、 次回、まだまだ戦いは続く!

◆第27話「白い悪魔の恐怖」◆ (監督:外山徹 脚本:南川竜)
 見所は、またも敵性宇宙人にさらっと正体のバレるウルトラマン80。
 ……地球に来る前、中古ショップで買った型落ち品のスペース変装セットを使っていて、「いやー、 今時あれで騙されるの地球人ぐらいでしょ? というか、多分あのヤバいスキル持ちの隊長に、バレてんじゃないかな……」 みたいに噂になっているのではないか80。
 頑張れ80!
 白い泡状のものが、触れた人々を服だけ残して溶かしてしまう猟奇色強めの事件が続発。宇宙生物学者の青山博士は、 現場に残された成分はアルゴ星人のものであると分析するが、平和的なアルゴ星人が地球人を襲うわけはなく、 事件は他の宇宙人の仕業に違いない、と強弁。
 アルゴ星人って他の生物の知性を吸収して進化を目論む悪性宇宙人だったような……と不審を抱いた矢的は青山博士の研究所に乗り込むが、 青山博士に憑依していたアルゴ星人によって、まんまと囚われの身になってしまう!
 様々な生物の知性を吸収し、半ば肉体を失った悪の宇宙人が、泡状の宇宙服に身を潜めながら夜な夜な地球人を襲っている…… という状況設定は悪くなかったと思うのですが、二人一組のパトロール中に無駄な単独行動を取って自らのピンチを演出する城野隊員・ 写真のフラッシュを浴びたぐらいで正体の露見するアルゴ青山・わざわざ「アルゴ星人は悪い宇宙人じゃないんだよ!」 と強調するアルゴ青山・一目会ったその瞬間に正体がバレるので一切の駆け引きが成立しない80・ そんな80とお話中に何故か青山博士の憑依を解くアルゴ星人・ 宇宙の知識を求めてアルゴ星人を自ら憑依させたようなニュアンスが仄めかされるも特にそこから掘り下げのない青山博士・ 突然の新入隊員と一言も触れられずに消息を絶つハラダ&タジマなどなど、 間断なく破れ目が配置されて一本のエピソードとして緊張感を保ちきれない、毎度ながらの『80』クオリティ。
 矢的を捕らえたアルゴ星人は地球征服の為にその正体を現し、白い泡が高層ビルを丸ごと覆い尽くし、 それを吹き飛ばして巨大アルゴ星人が姿を見せるのは、迫力の映像。
 ……出てきた正体は、ダイエットに成功したピグモンみたいでしたが。
 矢的は、一か八かのウルトラ気力でアルゴ星人の作り出したバリアを打ち破ると80に変身し、イトウが特攻で殉職寸前、 勢いを付けたウルトラドロップキック! 背中バルカンや溶解液など、アルゴ星人の多彩な攻撃に苦しめられるが、 写真のフラッシュに狼狽えていた事を思い出すとウルトラ太陽拳を放ち、珍しく、 敵の弱点を的確に突くと必殺光線で逆転勝利を収めるのであった。
 途中、子供を含めた一家全員が被害に遭う凄惨な描写などもあったのですが、 アルゴ星人に襲われた人々は溶かされたのではなく知性エネルギーを奪われただけで、 命に別状はないがしかし意識はまだ取り戻さない事が語られる……なんだか首をひねる中途半端なオチで、つづく。
 新人隊員のフジモリとイケダは、テロップまで出たので今回限りのゲストでは無さそうですが、 誰も存在に触れないハラダとタジマは学園に続いて異次元ゲートの彼方に消され、 このまま何事も無かったかのように入れ替わりとなってしまうのか(まあこの時代なら、まま有り得ますが)……或いは、 矢的と城野が帰還したのは、ハラダとタジマが存在しない次元だったのか……次元を越えれば、我々の考えた事もない世界が、 存在するに違いないのだ。
 あ、EDクレジット表示は、元に戻りました。

◆第28話「渡り鳥怪獣の子守歌」◆ (監督:外山徹 脚本:阿井文瓶)
 夜の公園でカップルが仲睦まじげに流星群を見上げ、冒頭から、矢的先生のウルトラジェラシーファイヤーが火を噴きそ……て、 噴いたーーー?!
 流星と思われたものは地球に降り注ぐ巨大隕石だったが、UGMが詳しく調査すると、なんとそれは焼けただれた怪獣の肉片であった。 続けて怪獣の卵らしきものが発見され、確認に向かった矢的の目の前で怪獣バルが孵化すると、インプリンティングによって矢的を親だと思ってしまう。
 前回から急にUGM所属みたいな扱いになっている城野博士(今回からOPに役名が出るようになり、セミレギュラー化?)により、 バルは10年に一度、宇宙を渡る鳥のような習性を持った大人しい怪獣であると説明され、 前回も宇宙人知識が割と当たり前のように語られましたが、なんか、微妙にまた、世界観変わってませんか(笑)
 「ああ、ウルトラマン? 知ってる知ってる。古い友達に居たよ」ぐらい城野博士が言い出してもおかしくなさそうなハラダとタジマの存在が消えた世界で、 矢的を親と思い込んだ怪獣は保護されることになり、しばらくほのぼのタイム。
 ところが、その後も地球には渡り鳥怪獣の死骸が次々と落下してきて、 情報を隠蔽しているUGM本部前でデモ行進が起こりそうなぐらいの大被害。
 バルの天敵・ザキラが、渡りの群れを食い殺しているに違いない、と城野博士が今度も説明してくれて、なんか、 話の構造がもはや別の作品みたいになっているのですが……誰がハラダとタジマを犠牲にして宇宙を造り替えたんだ……。
 イトウ以下、スペースマミーで調査に向かったUGMは、バルの群れに襲いかかる怪獣ザキラを発見。 地球襲来の可能性に備えて訓練を開始し、先輩2人の消滅の結果、ダルマ落とし的に矢的がイトウのサブ的な地位になったのは、 作劇しやすいといえばしやすい面はあるのかも。
 きゅいきゅい泣きながら親の行動を真似するあざとい巨大怪獣に説教の虫が目覚めかける矢的だが、 遂にザキラが地球へ向けて行動開始。宇宙空間でこれを迎撃すべくスペースマミーが出動し、母艦初の本格宇宙戦闘を展開するが、 ザキラはその攻撃をもとのもせず、逆にマミーは沈黙。
 全員気絶の状況で意を決した矢的は80へと変身すると、地球へ降り立ち子バルを狙うザキラにウルトラ大気圏突入キックを叩き込み、 戦闘に。だがそのパワーは凄まじく、大地に倒れ伏す80。
 ナレーション「その時、バルは生物の本能として、ザキラを天敵と察知した」
 ……あ、あれ、種族を越えた親子の愛情とかはどこ?!
 今回、渡り鳥をモチーフにしたバルに関連して「渡り」「インプリンティング」「天敵」といった用語を用いて、 あくまで怪獣ではなく「宇宙生物」の本能的行動に基づいている、といった描き方なのでそこを統一したのでしょうし、 人間と動物の関係性としては一種のリアリズムに徹しているのですが、そこで本能を越えないと劇的にならないと思うので、 何故そのナレーションを入れてしまったのか。
 子バルはザキラに立ち向かうも、ぼてくり回された末に首筋に噛みつかれて大ピンチ。気絶していた80はその悲鳴に顔を起こし、 最後の力を振り絞って立ち上がると、打点の高い飛び蹴りを連発し、ダブル光線でフィニッシュ。
 だが、80を守った子バルは力尽きてしまい、そんな予感はありましたが次回予告見せすぎ案件で、 80はせめてその魂が渡りの群れと共に飛び立ったと信じるのであった……。
 で、締めのナレーションが子バルについて「猛を母と思い、母親の危機に、自分の危険を顧みずに飛び込んで」いった事にするので、 地の文が矛盾を引き起こして大変困惑。
 第4話(怪獣親子喧嘩回)&第15話(怪獣子守歌回)の合わせ技といった感じに(共に阿井脚本)、 動物交流もののスタンダードな文法を用い、各種説明を博士はなんでも知っているで解決する事で、『80』 にしてはスッキリした構成で悪くは無かったのですが、なんとなく締まりきらないのが『80』(笑)
 実にヒールらしい体型の凶悪怪獣を相手に、雄壮なBGMをたっぷりと使っての戦闘シーンは見応えがあり、そこは良かったです。

◆第29話「怪獣帝王の怒り」◆ (監督:湯浅憲明 脚本:若槻文三)
 「矢的」
 「はい?」
 「勤務中にユリちゃんはよせ」
 とうとう、怒られた。
 「全くその通りだわ。ちょっと親しすぎるのよ」
 城野隊員からは肘鉄が入り、矢的先生が調子に乗るからやめて下さい!
 山中の寂れた小村・鬼矢谷村で、300年に一度甦るという怪獣伝説を利用して村おこしを行おうとする村長たちの思惑がコミカルに描かれ、 中盤の怪獣捕獲騒ぎなどから恐らく、映画『キングコング』(1976年にリメイク版が日本公開)を下敷きにしているのかと思われます。
 鬼矢谷で頻発する小さな地震についてUGMが念の為に警戒する中、村を怪獣ツアーの参加者が訪れ、 ツアーで一儲けを企む旅行会社の社員・怪獣伝説を熱狂的に信じるオカルトかぶれの女子大講師・小説家を目指す青年とその弟、 からなる一行のピントのズレたやり取りもコメディとして統一性があり、ここまでの作風からの突き抜け具合がちょっと面白い事に。
 偽の怪獣の鳴き声によるペテンにツアー客が大騒ぎし、しめしめとほくそ笑む村長だが、 地震で崩れた崖の中から伝説通りに怪獣が甦ってしまい、ナレーションさんによると、「太陽の光を浴びて長い眠りから目を覚ました」 そうなので、本当に、純粋に、寝ていたのか。
 そして、怪獣キャッシーとテロップ出たけど、それ(観光用に村長が命名)が正式名称でいいのですか(笑)
 ……いやまあ、どこからともなく湧いて出てくる名前よりも、むしろ合理的な名付けではありますが。
 極度に商業化された名称とは裏腹に、怪獣はレッドキングの胴体とギガスの顔を合わせたような凶悪な見た目で…… そもそもレッドキングが、キングコングをモチーフにしているんでしたっけ……?
 劇中では「ゴーストロン」に似ていると言及されるのですが、こちらは『帰ってきたウルトラマン』に登場する怪獣名の模様 (同じ「ゴーストロン」を差しているのかは不明)。
 人間たちの見苦しい欲望が交錯する中、UGMが到着して攻撃を開始するが、強力怪獣は全く怯まない。 本部の分析でも弱点が見つからず、旺盛な食欲を誇り燃費の悪い肉食怪獣のエネルギー切れを狙う事に。
 「間違っても人間の味を覚えさせるな!」
 ここから急激にシリアスなトーンになるのですが、怪獣に追われる村長&観光会社社員の描写は引き続きドタバタ要素が続き、 狙った面白さの性質はわかるものの、少々くどくてちょっと胸焼け。
 二人を救おうとして墜落した矢的は爆炎の中で80に変身し、空腹でエネルギーの切れてきた怪獣に颯爽と飛び蹴りを決めるも噛みつきを受け、 盛り上げるナレーションさん。なんとか距離を取った80は、尻尾を掴んで振り回すと、 疲れ果てた怪獣をなだめて誰も知らない場所で眠りにつかせ、人間の身勝手さもあって目覚めてしまった怪獣の扱いは、 円満解決(まあ、問題を先送りした感は凄いですが……)。
 村長たちを探す一同に矢的は合流し……
 チーフ「矢的、どこ行ってたんだ?」
 「え? ええ……」
 いや、思い切り、撃墜されてたじゃないですか。
 矢的のみならず視聴者も困惑させながら、つづく。

◆第30話「砂漠に消えた友人」◆ (監督:湯浅憲明 脚本:若槻文三)
 地球に謎の物体が飛来し、矢的たちが戦闘機で現地に向かうと、いきなり廃墟の街並みが広がっているのが、 掴みとして物凄い格好良さ。
 街を破壊した存在の姿は既に見当たらず、似たような事態が度重なる事から、 キャップとチーフは防衛隊の内部にスパイが入り込んでいる事を危惧……その正体は、基地に出入りする新聞記者であり、 広報のセラにとっては中学の先輩にあたる人物と同僚のカメラマンの2人組なのであった!
 冒頭の特撮映像は強烈でしたが、正直セラがあまり好きなキャラではない上に、いつの間にやらセミレギュラー扱いはまだともかく、 ハラダとタジマが消えたこの次元でセラにメイン回、というのが素直に楽しみにくかったエピソード。
 謎の装置を仕掛けられた事でシルバーガルが暴走し、九死に一生を得た矢的が、 機内に残されていたハンカチから問題の記者を疑ってマンションに忍び込むサスペンスが盛り込まれるのですが、 「猛は、ウルトラアイで透視した」がこれといって何も見つからず、 そうこうしている内に全く矢的と関係ないところで宇宙人である証拠があがるという、 要素の分裂具合が凄く『80』で、毎度毎度、どうしてそうなってしまうのか……。
 80変身カプセルをサイレンサーの様に光線銃に取り付けると威力が上がる新ギミックが二回ほど活躍し、 追い詰められた侵略宇宙人は、全身銀色の怪獣ザタンシルバーを召喚。
 表面にザタンコーティングを施された怪獣はレーザー攻撃を無効化し、新兵器のGZ爆弾が投入されるも、これも無効。 至近距離から爆弾を落として撃墜されると矢的は80に変身し、怪獣の溶解液に苦しめられるも、キック、キック、怒濤のキック!
 侵略ロボット兵器だと判明した怪獣の内部機構を凍結させ、ウルトラ念動波でこれを撃破するのであった。
 敬愛する先輩が宇宙人に殺害されて成り代わられていた真実にセラは号泣し……セラの少年期の思い出とか描かれてもな…… しかも、長い……(更に回想映像にセラの回顧と矛盾が生じており、時空のねじれが大変深刻)。
 その後ナレーションで、「ザタン星人は地球を諦めていないから、君の近くでも被害者が出てるかも……」 みたいなシリーズ古典めいたオチになるのですが、直前にセンチメンタルを煽ったのと全く噛み合わず、非常に蛇足めいてしまいました。
 次回――予告時点で、特撮が凄い!

◆第31話「怪獣の種飛んだ」◆ (監督:外山徹 脚本:阿井文瓶)
 病気の母親の為に、病室をいっぱいの花で飾ろうとする少女マリコ。花壇に飛んできた見たこともない種を植えて育てると、 それは見る見るうちに巨大な芽へと成長するが、巨大な花が咲くかもしれないと期待するマリコの気持ちを慮るあまり、 矢的はその明らかにヤバい感じの植物を処分する事が出来ず……。
 教訓:人情に負けて、安易に外来種を育てるの、良くない。
 不気味に蠢く宇宙植物の見せ方に加え、巨大な植物怪獣の造形が大変格好良く、特に怪獣は、見た目も蔦を振り回す迫力も、 ここまで屈指の出来の傑作怪獣。
 80との戦いも、まさかの飛び蹴り合戦が展開し、花粉攻撃から蔦による拘束を受けた80はウルトラ電流でこれに反撃。 滅茶苦茶打点の高いウルトラニードロップを浴びせると、最後は触手を切り飛ばしてから必殺光線でフィニッシュ。
 枯れた花壇の花は80が生き返らせる奇跡をサービスし、少女周りはハッピーエンドで終わるのですが、 80年の作品なので流すべきだろうとは思いつつも、主人公に「もしヤバい事になったら僕が責任取ります」と言わせた後で、 防衛隊の戦闘機が立て続けに無惨に撃墜されたりするのは、どうしても引っかかってしまうのでありました(今作に限った話ではなく、 昔からこういう話運びが苦手)。
 次回も、なんだか特撮が凄い。

◆第32話「暗黒の海のモンスターシップ」◆ (監督:外山徹 脚本:平野靖司)
 前回に続いてアバンタイトルが使われ、海中から巨大な廃船の集合体――バラックシップ(そのままの名前)―― が出現したところでサブタイトルが入るのは、大変格好良く決まりました。
 アメリカ西海岸で、謎の船舶消失事件が続発し、それは太平洋を横断して日本近海にまで近付いてくる……警戒飛行を続けるUGMだが、 突如、矢的機が制御不能になり、海面に墜落。直後、海域に近付いた船が海上に出現したバラックシップに引き寄せられて轟沈し、 事件を引き起こしているのは、巨大な磁石の塊?
 「父さんを殺した海なんて、大嫌いだよ!」
 犠牲となった船の船長は、矢的が知り合った少年・アキラ(演じるのは、後の超力戦隊隊長オーレッドこと宍戸勝)の父親であり、 アキラから行き場の無い怒りをぶつけられる矢的だが、バラックシップに取り込まれながらも船内で生存していた船長からの無線通信をUGMがキャッチ。
 その情報により、バラックシップの正体――中心に存在するものは、 15年前に沈没した完全コンピューター制御の無人貨物船・クイーンズ号であると判明する。
 矢的とゲスト子役の絡み → 子役の父親が事件に巻き込まれる → どっこい生きていた海の漢からの情報で怪物の正体が判明、 はスムーズな流れで、学園編消滅の反動があったのかもですが、2クール目初期から矢的と少年少女を絡めていくアプローチを取っていたら、 早めに矢的の好感度とヒーロー性を高められたのでは、とは思うところ。
 もっとも、学園編では少年少女と絡むも教師としての「説教」要素がキャラクターの好感度に繋がらなかった上、 その都合で生徒や生徒家族の「問題」の設定と解決を詰め込もうとした事でエピソードが明後日に行きがちになり、前回は前回で、 ゲスト少女周りの悲劇性を盛り立てようとするあまりにその他の要素が明後日に吹き飛んで大惨事を招いたので、 バランスの難しいところではありますが。
 矢的、フジモリ、そして忍び込んでいたアキラは船長救出の為にバラックシップへと乗り込んでいき、 斜めにかしいだ船上を移動する軽いアクションシーンでスリルをまぶしたのが良いアクセントとなり、 船内に入り込むや配管から伸びるケーブル攻撃! も安っぽく見えずに迫力があって良かったです。
 UGM本部では、バラックシップの移動経路が15年前のクイーンズ号の予定航路と全く同じ事が明らかになり……その最終目的地は、 東京港。バラックシップは、15年前の沈没の原因となった氷山衝突を克服しようという純粋な思考に基づいて、 行く先々で遭遇した船を取り込み自らを強化しながら、失われた航海を成し遂げようとしていたのだった!
 「どっちにしても、氷山にぶつかったショックで回路が狂って、おかしくなったに違いない」
 同胞を食らう怪物と化したバラックシップの目的は「プログラムされた航海の完遂」であり、 その中心は人間の制御を離れたコンピューター、と「幽霊船」テーマと「狂ったコンピューター」テーマを融合する事で、 近未来幽霊船譚を作り上げてみたのは、会心のアイデア。
 一方、アキラ少年の腰の入ったいい構えからの射撃により拘束を逃れた矢的たちは、船長を救出して脱出に成功。
 バラックシップの東京湾入港を阻止するべく水際で決着をつけようとするスペースマミーは、バラックシップからの砲撃に苦戦するが、 これ以上の重量を取り込むと浮上不可能である事を計算したバラックシップのコンピューターがマミーを撃墜しようとしている事に気付くと、 強引に吸着させて沈めてやる、と突貫。
 東京湾大炎上よりは、スペースマミーの一隻や二隻、という判断はUGMらしいとも見えますが、明らかに、 チーフの死にたがりスイッチがONになっており、隣の席の部下が気の毒。
 だがスペースマミーの玉砕戦法は失敗に終わり、それを見た矢的は80に変身。雄々しく飛び立つも一度は撃墜されるが、 海中に飛び込むと再び飛翔し、珍しい(初?)ボーカル入り主題歌を流してのバトルが、意外とマッチ。
 飛翔する80はバラックシップの砲撃をかいくぐって上空から攻撃を仕掛け、完全に戦闘機vs戦艦のモチーフで、 円谷のDNA的に特撮班の盛り上がりが窺えます(東映のDNAがチャンバラと任侠映画なら、円谷のDNAは飛行機にあるので)。
 80はシップの砲撃を回避しながら光線を撃ち込んで外装を剥いでいき、トドメの急降下爆撃ビームで、 バラックシップのコアを遂に破壊。ボーカルのahhhhhh!に合わせた大爆発も綺麗に決まり、ここまで屈指の名バトルでした。
 暗黒の海で怪物と化した船は帰港を果たせぬまま日本近海へと沈んでゆき……最後は、無事に救出された親子の絆、 大きくなったらUGMに入りたいと宣言する少年、いつの間にか脱出した事になってその場に居る矢的、と王道で気持ち良く締め、 個人的には今作ここまでベスト級の一本。
 平野回の特徴といえますが、まだ個人名を覚えるほどには至らなかったものの、新入り2人のキャラ付けをしよう (ちゃんと描き分けよう)、という意識も好感が持てます。
 次回――矢的先生は、美人ナースに鼻の舌を伸ばさずに少年との絆を貫き通せるのか?!(無理そう)

→〔その5へ続く〕

(2021年2月17日)

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