■『ウルトラマン80』感想まとめ1■


“君は誰かを 愛しているか
それは生きてることなんだ”


 ブログ「ものかきの繰り言」の方に連載していた『ウルトラマン80』 感想の、まとめ1(1話〜8話)です。文体の統一や、誤字脱字の修正など、若干の改稿をしています。

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◆第1話「ウルトラマン先生」◆ (監督:湯浅憲明 脚本:阿井文瓶)
 ナレーション「爛漫の春でした。のんびりと平和な日本でした。けれども、この春の中に、充ち満ちている危険を、 人に先駆けて感じている一人の青年が居ました」
 物語は中学校の入学式からスタートし、鷹揚で少々コミカルな校長、ルールに厳しい生真面目な教頭、運動神経抜群のマドンナ先生、 そして入学式早々に遅刻する新任理科教師――矢的猛が次々と登場。
 今作の放映開始が1980年4月頭、『3年B組金八先生』の放映開始が1979年10月末なので、 企画段階でどのぐらいの影響を受けていたのかわかりませんが、中学の名前が桜ヶ丘中学(『金八』は桜中学)だったり、 矢的先生の服装がまるきっり金八先生だったりで、学園ドラマとしての意識はそこはかとなく窺えます。
 教師としての初日、自らのモットー「一所懸命」を生徒達に説明していた猛は、小さな地震に続き、朧気な怪獣の気配を感知。一方、 地球防衛軍の中でも怪奇現象を専門に扱うUGMもこの奇妙な地震をキャッチしていたのだが……
 「…………怪獣だ」
 「まさかぁ! だってキャップ、怪獣この5年間、一度も出現していないんですよ」
 「キャップだけですもんね。実際に怪獣と戦った事があるのは」
 古強者のオオヤマキャップの判断を若い隊員達は笑い飛ばして暇つぶしのゲームに興じ、 このやり取りが物凄く格好良くて、一気に物語に引き込まれました。
 本物の戦場を知るナイス三十路(?)だが若い部下からの信頼感は微妙なオオヤマキャップは、 平和に慣れ士気の緩みきったぼんくら共には任せておけない、と単身パトロールに出撃。
 一方、生徒達に怪獣の予兆をその目で確認してもらおうと校外学習を行うも、 まともに取り合ってもらえない矢的先生は自然のものとは思えない変色をした石を集めている内に、一人の男性にぶつかる。
 「……君もか」
 「……はい」
 石を手にした私服のキャップと石を抱えた矢的先生、同じ異常に気付いていた者同士の、運命の出会いであった。
 「僕は、醜い心や悪い心、汚れた気持ち、憎しみ、疑い、そういったものが寄り集まって、怪獣が生まれてくるんだと思います」
 猛はキャップに力説し、今作における怪獣の位置づけを、自然の生き物ではなく邪念の具現化のようなもの、 としてひとまず定義(※独自の研究です)。
 「僕は、怪獣の生まれてくる根本を叩き潰したいんです。僕は、怪獣と戦うのと同じような気持ちで、先生になったんです」
 怪獣にリアリティを感じられない生徒達自身が、いずれ怪獣を生み出す側に回るかもしれない…… それを変えていきたいという強い気持ちを猛は語り、猛=80と知った上で聞くと、 猛にとっては「教師として生徒達を導く事」=「怪獣とのもう一つの戦いである」事の意味が大変重く、非常に熱い宣言。
 寓意的表現としての「怪獣」を、どうすれば生まない世界を作れるのか? そんな悪意の存在から目を逸らし、 忘れようとしている世界を背景に、メタ的な要素を多分に含みつつ「教育」をそこに当てはめ、主人公はなぜ教師なのか、 という意味づけがしっかりと主人公の信念と繋がって鮮やか。
 極めて、真剣に、怪獣の再来を、子供達の未来を憂える矢的先生だが、社会人としては激しく空回り気味で教頭から注意を受け、 怪獣に興味を持ってくれたと誤解したマドンナ先生に早口で怪獣について語るも「ロマンチストなのね」発言に大ショック。
 猛との出会いに力を得たキャップは臨戦態勢を宣言して部下達の尻を叩くが、その矢先に二人の懸念は的中し、 怪獣クレッセントが遂に出現。
 その目から放たれる熱線により、実戦経験の少ない地球防衛軍の戦闘機も、UGMの特殊戦闘機も次々と撃ち落とされ、 転んだ子供を身を挺してかばった猛が、逃げ惑う群衆に何度か踏みつけにされるのが、なかなか痛烈な映像。
 人々の避難を確認した猛は、怪獣に立ち向かうと変身アイテムを掲げ――ウルトラマン80へと変身。
 ナレーション「猛は、M78星雲からやって来たウルトラマン80だった。しかし、ウルトラマンに変身するところを見られたら、 ローストチキンにされ 地球上には居られないのだった」
 秘密のヒーローの理由は、多分、光の国のルールである、とナレーションさんからさっくり説明され、 80が出現した途端に子供達が歓声を上げて応援する、という無条件さはこの時代らしい見せ方。
 子供達の声援を受けた80は青春キックからの青春チョップ、そして青春スパークでフィニッシュ。
 後日、校長室に呼び出された猛を待っていたのは校長……と、オオヤマキャップ。
 「校長先生に頼み込んでね、放課後と日曜日、君をUGMに借りる許可をやっともらったところだ」
 「は?」
 僕の余暇は?
 「これからはね、UGMと学校、二ヶ所で一生懸命頼むよ」
 青のスーツでびしっと決め、ウインクを飛ばすキャップが壮絶なまでに格好いいのですが、 言っている内容は赤色の血が流れているのか疑わしいほどの外道。
 ナレーション「こうして、ウルトラマン80、矢的猛の 地獄の日々 物語が始まった」
 だから、僕の余暇は???
 教師と防衛隊員をどう兼任するのかと思ったら、たるみきったUGMに刺激を与える為に特命隊員としてスカウト、 というのは「5年間、怪獣が出ていない世界」とも上手く繋がり、納得。
 今後、教師とUGMのバランスが物語の中でどう取られていくのか、で話のタッチがかなり変わりそうですが、 主人公にとっての「教師である事の意味」を信念として明確にしてくれた事で、入りやすい第1話でした。そして、 オオヤマキャップがとにかく滅茶苦茶格好いい。
 基本あっさり風味の感想予定で、続けて見ていきたいと思います。

◆第2話「先生の秘密」◆ (監督:湯浅憲明 脚本:阿井文瓶)
 担任を受け持つクラスに登校拒否の生徒が居る事を知った矢的は、学校に連れてきてみせると生徒達に請け負うが、 今回も熱血指導が空回り気味……「ウルトラマン×教師×防衛隊員」という今作の大きな特徴を押し出すべく第1話以上に学園パートに尺が割かれ、 登校拒否児童と向き合おうとする矢的の姿が描かれるのですが、スパイスとしてはともかく、 主題としての青春学園要素には興味が無いので、教師パートをメインで描かれると正直退屈 (前回は教師パートと怪獣パートの接続の仕方が巧かったのですが、今回は両者が全く繋がっていないので)。
 また、やけに他人事な母親・強引な善意からいきなり説教モードに入る矢的先生・教師に辞職を要求する生徒達、 などの織り成す80年代学園ドラマ世界の受け止め方がわからず、真面目なのかギャグなのか戯画化しすぎているのか、 終始困惑が先に立ってしまう事に。
 生徒達に信頼されたいと思う邪念が強すぎるから逆に信頼されないのだ、と反省した矢的は、 翌日改めて登校拒否児の連れ出しにチャレンジするが、飛行怪獣ギコギラーが飛来。
 身を挺して生徒をかばうと、強風に吹き飛ばされたフリをして華麗な着地からの変身を決める矢的だが……なんかバレた……?!
 サブタイトルからして不安だったのですが……早くも第2話で、なんかバレました(っぽい演出でしたが、一応、 公式としてはバレていないとの事)。
 教師失格どころか強制送還の危機に陥るウルトラマン80だったが、光の国検察は、 変身の瞬間を直接目撃されたわけではない事から証拠不十分により不起訴処分とし、謎ビームでぽわぽわーんされずに済んだ80は、 怪獣と激突。
 生徒のエールを受けて青春パワーを高めた80先生は滞空時間の長い渾身の飛び蹴りで形勢逆転すると、 怪獣の弱点である背中に伸身捻りからのキックを浴びせ、勢いつきすぎ&打点高すぎ で空中で体勢を崩しており(下にマット引いてあると思いたいですが……)見ていて無駄にドキドキします。
 弱点への連続攻撃から青春ビームで怪獣にトドメを刺す80だが、このままでは学校に間に合わず辞表の提出を余儀なくされてしまう…… しかし学校では、80の活躍に勇気を得た少年がクラスメイト達が教室に入るのを留めており、 その説得により子供達に迎え入れられた矢的は、生徒達との約束を無事に果たすのであった!  ラストは、怪獣との戦いと学校での問題解決を繋げ、矢的先生の為に奮闘する登校拒否生徒の「変化」 を描く事で巧くまとまりましたが……光の国の司直から、再捜査の手が伸びる日は、近いかもしれない。

◆第3話「泣くな初恋怪獣」◆ (監督:深沢清澄 脚本:阿井文瓶)
 マドンナ先生と一緒に帰れるなんてドキドキしちゃう、と一人盛り上がり、ちょっと本を貸して貰ったぐらいで(あれ、もしかして、 俺に好意が……?)と舞い上がる矢的猛が、なんというか……こう……表現する言葉の選択に悩むのですが、 キャラ配置の時点で織り込み済みの学園物としての要素がストレートに盛り込まれた結果、ウルトラ戦士としてそれはいいのか(笑)
 そこは抜きにしても前回、不登校児に対して「ガールフレンドに最高じゃないか?」と、 登校の目的の為に彼女作りを進める姿にちょっと疑問を感じてはいたのですが……この人、純情とか純朴というより、 恋愛にドリームを抱きすぎなのでは。
 そう考えると、同じく前回の不登校児に向けた、
 「好きになればいつかは向こうだって好いてくれるさ」
 「でも、今に好きになるさ。こっちが好きだって言ってるんだもの、そっちだって好きにならないわけないさ。明日から毎朝迎えに行くぞ」
 の、意味が変わって聞こえます(笑)
 そんな矢的先生は、クラスの生徒が三角関係のもつれから引き起こした喧嘩騒ぎを仲裁するが、 彼女に乗り換えられた少年の嫉妬と憎悪がマイナスエネルギーの塊を発生させ、 割と世間に怪奇現象のクレーム電話先として認知されているUGMと、その電話を途中で叩っ切る隊員某。
 初日は不気味な霧と声だけで終わった怪奇現象だが、少年の募る憎しみを受けて、遂に怪獣化。 霧の出現地点から少年に当たりをつけていた矢的は、怪獣が現れる根幹の原因を取り除こうと少年の説得を試み、自らの失恋経験を語る。
 「故郷に居た頃、本当に好きな女の子が居てな……」
 二ヶ月必死にバイトでお金を貯めて彼女が欲しがっていた楽器を買ったとの事ですが、光の国のバイトというのはやはり、 悪の宇宙人どもを消毒だぁぁぁぁぁ!! みたいな内容なのでしょうか。

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 しかし、楽器を手に入れた時には既に遅く「その子には、新しい恋人が出来てたんだ」と少年に聞かせて共感を得ようとする矢的、 まるで「前の恋人」が自分のような口ぶりですが、ここまでの描写を見ると多分、都合のいい妄想。
 たとえ他に恋人が出来ても楽器はそのまま彼女に渡し、愛とは見返りを求めるものではないんだ、という矢的の説得は空振りに終わり、 少年の憤りに反応して暴れ出す怪獣ホー。夜戦で見せるのを意識してか体表に散りばめられた反射板のようなものがアクセントとして面白いホーは、 酸性の唾液(この後のナレーションによると、どうやら涙のようなのですが、映像的には唾を吐いているようにしか見えない) を撒き散らしながら少年の元彼女の家の方へと進んでいき、それを止めようと矢的は重ねて少年の心に訴えかける。
 前回に比べると、生徒の問題が『80』怪獣の基本設定と繋がり、その憎悪を正そうとする教師としての矢的の奮闘が、 怪獣退治と関連づけられたのは、良かった部分。
 「おまえなんか消えろ! おまえなんか俺の心じゃない! 消えろーー!!」
 身を挺した矢的の行動に人を憎む事の愚かしさを知った少年は怪獣を否定するが、既に怪獣は少年の心の制御を離れており、 その危機に矢的は80に変身。強酸の唾液を浴びせられて危機に陥るが、バックルビームで怪獣を撃破すると飛び去っていき、 翌朝早くから、マドンナ先生の待ち伏せに励むのだった。
 もはや完全にストーカーと化した矢的先生は、今回もマドンナに袖にされたのを失恋少年に目撃され、 元カノカップルと和解した少年と励まし合う。
 「だけどな、男は失恋して失恋して、いい顔になっていくんだ」
 ……矢的先生は、勝手に好かれているつもりになって、勝手に恋人気分になって、勝手に玉砕している疑惑がありますが!
 なにぶん40年前の作品なので、矢的先生の言動には色々と目をつぶるべきなのでしょうが、一つ気付いたのは、「ヒーローと子供」 なら時代を超えて成立可能な(受け入れやすい)絵空事(ゆえ)の言葉が、 「教師と生徒」の構図においては寓話から現実に一歩近付いてしまう作用により、意味合いが少し変わってきてしまうという事。
 そこはわかっていて踏み込んだ部分ではあったのでしょうが、「ヒーローが理想を語る言葉」と「教師が生徒を導こうとする言葉」では、 同じ虚構においてもどうしても現実との距離感が変わってしまい、これは今作の構造上の大きな陥穽になったのかもしれません。

◆第4話「大空より 愛をこめて」◆ (監督:深沢清澄 脚本:阿井文瓶)
 地球に謎の物体が飛来した夜、矢的先生は生徒たちからの好感度を上げようと、自室でシャドー授業に励んでいた。
 昭和ウルトラ戦士の標準はわかりませんが、矢的先生はホント、欲望がダダ漏れ(笑)
 キャラの愛嬌+新任教師らしさ、ではありますが。
 「キャップ……子を愛する親や、弟を思う姉。あの灯りの一つ一つに、いろんな人間、いろんな愛や喜び、悲しみがあるんですね」
 「うん。あの灯りの下一つ一つの生活を守る。それが我々UGMの使命なんだよ」
 姉の結婚や父親に持ち上がる再婚話……家庭環境の変化に揺れる少年に矢的は想いを馳せ、問題行動=サボり(登校拒否)が、 早くも第2話と被ってしまっているのは、学園ドラマとして苦しいところ。また更に、怪獣の飛来による警報が出る中で、 少年を探しに街へ飛び出した矢的が飛行怪獣の風に煽られるのも完全に重なっており、色々どうしてそうなりましたか。
 その後、無事に少年を発見し、男親の面倒くささを間に立った矢的先生が翻訳して解決、というのは良かったですが。
 最初に飛来した怪獣と、それを追うようにアメリカに飛来して日本へと辿り着いた怪獣…… 二体の放っていた電波がUGMによって解読されてナレーションさんが説明し、 喧嘩して家出した子供怪獣を母怪獣が連れ戻しに来た事実が判明する第4話にして変化球。
 真相を知ったキャップは攻撃を中止し、地上でその事情を聞く矢的。
 「体は一人前だというのに、甘えてやがるのか」
 あ、凄く、矢的先生ぽい解釈(笑)
 二体の怪獣@人相は凶悪、に地球人類への害意が無いのはわかったが、 なにしろ図体が大きいのでこのままでは怪獣の駄々で人類文明が危ない……何やら思いついた矢的は80に変身、 そしていきなりの平手打ち。
 ナレーション「ウルトラマン80は、親怪獣だけを徹底的に攻撃した。親を痛め付ければ、子供が必ず助ける。本当は、 仲の良い親子なのだ」
 ……や、その前に、先制で顔面張り飛ばした上に真っ正面からヤクザキック叩き込んでいるのですが。
 この辺りから、ざっくりさが一周回って面白くなってきました(笑)
 80先生は、思惑通りに親怪獣を守ろうと体当たりしてきた子供怪獣にカウンターで右中段蹴りを浴びせ、 吹奏楽の愉快な調べにのせて母子怪獣が連携を取り始めると、最初に当たって後は流れでその攻撃を受け、 最後は母子協力攻撃にやられたフリをして地面に倒れ込み、この戦果に満足した母子怪獣は地球を離れて飛び去っていくのであった……。
 大岡裁きで和やかに一件落着の雰囲気を出しているのですが、怪獣に立ち向かった地球防衛軍北米支部の戦闘部隊が壊滅していたりするので、 どちらかというと、地球には二度と来たくなくなる程度に痛め付けた方が良かったのではないか。
 少年姉の結婚式シーンで大団円となり、結婚式を終えた新郎新婦が落書きされて空き缶を繋げた車に乗ってハネムーンに出発、 という映像を大変久々に見たのですが、今見ても謎の風習であり、新郎新婦はいつ着替えるのか、あの空き缶をどこで外すのか、 かねてからの疑問が思い出されて仕方ありません。
 最後に、嫁ぐ姉を安心させる為に少年がちょっとした嘘をつき、世をすねる子供から、 家族の幸せを笑顔で受け入れる大人へと成長が描かれるオチは、気持ち良かったです。既に矢的先生よりも、大人なのでは、ないか。
 次回――凄く《ウルトラ》シリーズ!という感じの予告内容ですが、今作において果たしてどんな味付けになりますか。

◆第5話「まぼろしの街」◆ (監督:湯浅憲明 脚本:山浦弘靖)
 遅くまで残業をしている内に終電に乗り遅れた矢的の前に停まる、一本の電車。
 「そうか、これが本当の最終電車なんだ」
 ダイヤが乱れていたと思い込む矢的だが、乗り込んだ電車が矢的の知らぬ間に線路ではない奇妙な空間を走り、 いずことも知れない駅に辿り着くのが、面白い映像。
 矢的が降り立った終電の街は奇妙でどこか不可思議な雰囲気を漂わせ、“終電の後に来る電車”という都市伝説めいた導入から “不思議な世界”に入り込む『ウルトラQ』的な展開なのですが、すっかり日本のサラリーマン生活に慣れてしまった矢的80の、 ウルトラ戦士とは思えないぼんやりした反応の数々が、そこはかとないおかしさ(笑)
 駅前で乗り込んだタクシーは再び駅へと戻ってしまい、ようやく強い不審を抱いた矢的は、2人組の警備員に警棒を向けられる。
 「矢的猛、いや、ウルトラマン80。おまえを逮捕する!」
 「なに?」
 「まんまと罠にかかったな」
 全ては、矢的猛を捕らえる為に用意された仕掛けであり、つまりベム星人は、矢的先生の残業癖を把握した上で、 終電を逃す日を今か今かと待ち続けていたのだ!
 「そういう事だったのか。逮捕できるならしてみろ!」
 ウルトラ魂に火の点いた矢的は思わぬきびきびした動きでベム星人を殴り飛ばすと、カバンを地面に叩きつけ……それ、 生徒達の答案用紙が入っているのでは……変身しようとするが、変身不能。
 「四次元空間では貴様は変身できん!」
 「死ね。ウルトラマン80!」
 銃を向けられた矢的は、足下のカバンを蹴り飛ばして(テスト……)不意を突くと反撃に転じ、予想外の機敏さで体当たりから上段蹴り、 そして回し蹴りを炸裂させ、ちゃんとカバンを拾って逃げてホッとしました(笑)
 個人情報流出による懲戒免職処分の危機は免れたものの、 複数の銃弾を受けた矢的は四次元の街で起動するメカゴジラめいたロボット怪獣を目撃しながら気絶し、 翌日の学校では「蒸発」の噂が囁かれてしまう事に。
 矢的蒸発?! への反応で、多少強引ながら学園のキャラクター達を掘り下げていくのですが、 最近はあまり使わない表現になった気がする「蒸発」が一般的な用語として用いられている事に時代を感じます。
 UGMは、三次元世界に出現したロボット怪獣の対処に追われ、 四次元の街の夜景では足下から照らす証明の効果もあって格好良く見えたロボット怪獣は、青空の下だとそうでもありませんでした(笑)
 次元移動能力を駆使して出没するも、UGM戦闘機の攻撃を受けて損傷したロボ怪獣は一時撤収。 その足音に目を覚ました矢的はベム星人のメカ工場を発見するが、正面から突入をはかるほど、理性を失ってはいなかった。
 (畜生、このままじゃ歯が立たないぞ。どうしたらいいんだ……)
 弱気になる矢的だが、カバンの中の採点用紙に目を止めるとくじけるわけにはいかないと奮起をし、冒頭から強調していた採点用紙が、 生徒/学校/守りたい日常、と矢的を繋ぐ象徴として機能。そんな矢的の耳に、学校で声を揃えて矢的を呼ぶ子供達の声が響き…… 声の出所を探った矢的は四次元空間発生装置を発見すると、これを破壊。
 満を持して80に変身すると、ロボット怪獣の四次元バリアに苦戦するもこれを撃破し、労働力として囚われていた人々ともども、 現実空間への帰還に成功するのであった……。
 ナレーション「猛は言いたかった。自分が、ウルトラマン80に変身して怪獣を倒したと。しかし、もしそれを言ってしまえば、 地球を去らねばならないのだ。あの生徒達とも、別れなければならないのだ。そんな事は絶対に出来なかった」
 キャップからの連絡に、突如、功名心と葛藤する矢的先生ですが……もしかしてこの光の国ルール、諸先輩の活躍により伝説化した 「地球に行って怪獣を倒してきたい」ウルトラ人が続出した為に制定されたのでは(笑)
 秘密の戦いに耐えられる心の持ち主だけが、地球に行く事が出来るのだ!
 第2−4話で物語の軸となった「新任教師・矢的猛が、生徒達の問題に体当たりでぶつかっていく」要素を離れ、 『ウルトラQ』+『ウルトラセブン』といった感のある“不思議な味わい”の導入は演出も含めて面白かったです。 そういったシリーズらしさと同時に、トラブルの発端・逆転の契機、を学園要素と繋げて車の両輪にしようとはしているのですが、 矢的先生の信頼感ゲージが急にクライマックスだったり、矢的と生徒達の関係性が話の都合によりけりになるのは、残念なところ。
 UGMメンバーの掘り下げや印象的な怪獣も良く、割合面白かったのですが、 今作コンセプトの難しさをますます感じさせるエピソードとなりました。

◆第6話「星から来た少年」◆ (監督:湯浅憲明 脚本:広瀬襄)
 「先生、僕は、僕はどこの星から来たの?」
 エリート一家の落ちこぼれ少年は、いつしか、自分は地球以外の星で生まれたと考えるように。
 「僕、ゆうべ、UFOを見たんだ! あれは僕の星から、僕を迎えに来たに違いないんだ!」
 “ここではないどこかへ”という普遍的なテーマを、身内に強い劣等感を抱き家庭を居場所だと思えない少年の鬱屈と接続して学園要素とし、 《ウルトラ》シリーズなら実際にそういう事もあるかもしれない、というサスペンスをスパイスにまぶしたのは、興味を引く導入。
 折しも地球にUFOが飛来して各地に被害を発生させ、警戒態勢を強めるUGM。 なにぶん5年間冷や飯ぐらいの部署だったので明らかに人手不足が窺えるのですが (矢的を隊員としてねじこめたのもその為でしょうし)、通路や部屋の背後を走る一般隊員の姿が適宜織り込まれるのは、組織感が出て好きな演出。
 神出鬼没のUFOはUGMのレーダー網をすり抜けて姿を消し、昼間の顔に戻った矢的は、「口笛を吹くと、周囲に風が起こる能力」 を宇宙人である証明と考える少年に対し、「口笛を吹くと風が起こる」のではなく「風が起きそうなのを感じて口笛を吹いている」 のであり、その感覚にたまたま優れていた事から因果関係を誤解してしまったのだ、と説明。
 「アキオ、これが先生の答だ。わかってくれたな?」
 思春期の思い込みにより強化された現実逃避を正そうとする姿勢は間違っていないと思うのですが、 それをわざわざクラスメイト全員の前で行う矢的先生の無神経さが地獄。
 ナレーション(僕の事をなにもわかってはいない。僕の事を本当にわかってくれる友達は、あの星空の彼方にしかいないんだ、と、 アキオは思った)
 当然、少年は内心でますますこじれ、第2話の感想でも触れましたが、40年前の学園ドラマには、 根本的に感覚の掴みにくい部分が出てしまうのが今見ると難しいところ。
 宇宙への望郷の念を強める少年はUFOを目撃して追いかけ、本日も電話対応に追われるUGM。 着陸した円盤へ攻撃を仕掛けようとするUGMだが少年の接近に気付き、それを止めに向かった矢的の前で、 少年の必死の呼びかけに応える筈のない円盤から宇宙怪獣が出現する!
 おどろおどろしい怪獣はなかなか面白いデザインなのですが、神出鬼没が売りだったUFOがいきなり公園に着陸してしまうのは、 あまりにも雑。怪獣の放つ熱線で負傷した少年を安全なところまで運んだ矢的は80に変身し……あれ、80の顔、 ちょっとシャープになった……?(夜戦で少し締まって見えているだけで、全くの勘違いかもですが)
 怪獣にげしげし踏まれる80だったが、子供達の声援を受けて最後の力を振り絞るとバックルビームで大逆転勝利を収め、 UFOも焼却。緊急手術を受ける事になったアキオ少年は、心配して探し回っていた同級生達の輸血を受ける事になり、 ウルトラ人として輸血の出来ない事に歯噛みした矢的は、こっそり80に変身すると謎の光線を放って少年を回復させ………… “ヒーローが特定個人に肩入れして病気や怪我の治療に便宜を図る”のは、救う者と救わない者の恣意的な分別があまりに明瞭になってしまうので、 慎重に行われるべき、という個人的な判断基準からすると、完全にアウト。
 教師と生徒という個人的関係は存在しますし、一応、UFOに近付く事を止められなかった為に……と責任を感じた解釈も可能ではありますが、 そこに焦点を合わせず教頭先生に不条理になじられてから変身する流れは教頭も矢的も得をせず、そもそも、 アキオ少年の“居場所”という意図を当然含んだ、「級友たちの輸血」で助かって問題なかったように思えるので、 だいぶ余計な奇跡を付け加えてしまった印象。
 そして少年の退院の日、おまえの宇宙人願望は卑怯な甘えなんだ! と母親や友人達の前でズバズバ切りつける 矢的先生の無神経さが再び地獄。
 今みんなで退院を祝福して、女子から花束とか渡しているところなんで、 先生は待合室の隅っこで京子先生の盗撮写真とか見ながらニヤニヤしていて下さい!
 根本的にウルトラ人なので少しズレている、というニュアンスもあったのかもですが、 自分が思ったよりも周囲から心配されている事を思い知らされた少年が、逃避願望を捨てた事を「僕は間違いなく人間だ。 だってこいつらの血を輸血してもらって助かったんだもん」と笑ってみせる方がよほどウィットに富んで爽快でもあり、 矢的先生は待合室の隅っこで石でも並べていて下さい!
 普遍的なテーマを今作らしく味付けしようとしてみせた導入は悪くなかったのですが、結局、怪獣バトル要素(UFOの追跡) は雑に着陸、学園ドラマ要素は矢的の関与がさしたるキーにならないまま周囲の優しさで解決してしまい、 作品コンセプトの難しさに直撃。主に矢的先生が見せる、当時的な要素が今見ると軒並み悪い方向に転がっているのも、辛いところ。
 ……変な話これが東映特撮だと、「洗脳してもらえば、勉強好きの子になるわ」とか明らかに頭のおかしい方向に行く ので対応もしやすいのですが、そういう点では『80』は真面目すぎるな、と(笑) まあ、 主人公が教師なので真面目でないと困るわけではあるのですが!

◆第7話「東京サイレント作戦」◆ (監督:深沢清澄 脚本:田口成光)
 「墜落……?」
 「国際世論を無視した報いだ」
 騒音問題への風刺ネタはわかりますが、どう考えても人が死んでいるわけで、 UGMのぽっちゃりが激しく人間性を下落させる一方、矢的は矢的で生徒とバンドを組んで近所に騒音を撒き散らし、 警察沙汰一歩手前になっていた。
 何事にも集中力のない生徒達に、夢中になって続けるものを見つけてほしかった……と動機は教育者として真っ当で、 その為に近所を一軒一軒回って許可も取ったと説明するのですが、明らかに途中から度を超えているのに自分も演奏に夢中になって気付いていないので、 第1話が最高値だった矢的先生への好感度がなかなか上がってくれません。
 そんな折、新型旅客機を墜落させた怪獣ノイズラーが、今度は新幹線を襲撃。UGM戦闘機が出撃するが攻撃を次々とかわされ、 巨大な耳が細かく動く事で、音に対する敏感な反応を表現したのは、好演出。
 これに気付いた矢的の提言を受け、ナイス三十路キャップが各方面の説得に奔走した結果、 東京及びその近郊の音を消す東京エリアサイレント作戦が実行に移され、活動を停止するノイズラー。 だが怪獣への対抗策を発見する前にサイレント作戦の継続が難しくなり、やむなくキャップは、 気球で近付いて至近距離から怪獣の急所を攻撃するプランBを指示……って、気球に積んだ爆弾をぶつける、とかではなく、 乗り込んだ隊員が背後から撃つのがやたらめったら命がけ。
 ところが、作戦の決行寸前に突然目を覚ました怪獣が動き出し、その向かった先は、矢的が放置していた生徒達のバンド活動。
 「よーし今の内だ!」
 UGMぽっちゃりは、生徒達が足下に居るのを確認しているにも拘わらず、エレキサウンドにノって踊る怪獣に景気良く銃撃を浴びせて、 危うく中学生4人を爆殺しかける不祥事を引き起こし、冒頭の発言も合わせて、命の扱いがあまりにも雑。
 生徒達の命を守ろうと突撃した矢的機だがまさかの光線技で撃墜されると80に変身。 妙に人間らしい仕草を見せるノイズラーとがっぷり組み合う格闘戦の末、迫るエネルギーの限界。
 ナレーション「ところがどうだろう。怪獣ノイズラーは、急に大人しくなってしまった。なんと、カラータイマーの音が、 最も嫌いな音だったのだ」
 とナレーションさんが語る中、大人しくなった怪獣に連続チョップから顔面へのハイキックを浴びせる80先生(笑)
 それで気が済んだのか、80は沈静化した怪獣を宇宙へ連れ帰り……ウルトラ人の倫理観といえばそれまでですが、 80的に〔騒音に引きつけられてやってきた宇宙怪獣(野生動物)の命 > 騒音を起こす地球人の命〕なのは、 スッキリとは受け入れにくいにくいところ(途中から妙に愛嬌のある描写をされていたので嫌な予感はしていましたが)。
 なにぶんこの人、地球では教師を装っているだけに、生徒は守るけど生徒以外の地球人の命には割と冷淡な印象も強まってしまい、 全宇宙的視点はともかく地球在住のヒーローとしては微妙に素直に応援しづらく、冒頭のUGM隊員の発言と合わせて、 風刺意識が先行しすぎた印象です。
 怪獣に追いかけられたショックも手伝ってかバンド少年たちは勉学に目覚め、 当初の目論みどおりではあったがどこか釈然としない矢的先生であった、でオチ。
 怪獣相手の大がかりな作戦行動などは特撮の見応えも含めて面白かったのですが…… バンド活動の場所探し中にUGMから呼び出しを受けた矢的が「みんな勘弁してくれ」 と連絡もせずに生徒を放置した事が後半のトラブルの原因となっており、これをやってしまうと、一声かけすらしない矢的は元より、 「秘密の二重生活」を矢的に強いているキャップと校長の人間性まで問題が生じてしまうので (前回は80変身の為だったのでセーフだった)、UGM参加を秘密にしてしまった事が負のドミノ倒しを引き起こし、 どうにも重くのしかかります。

◆第8話「よみがえった伝説」◆ (監督:深沢清澄 脚本:平野靖司)
 「そういえばノンちゃんが作ってくれたケーキは美味かったよなぁ」
 当時は気にするほどの部分でも無かったのかもですが、レギュラー陣の好感度付けが順調に進まない今作の中で、第1話から一貫して、 生徒に親身で誰にでも柔らかい対応で好感度を稼ぎ続ける、謎の存在ノンちゃん。
 その好感度を、矢的先生と京子先生とUGM隊員に分けてあげてほしい。
 校外学習として石倉山の鍾乳洞見学に向かう生徒達&引率の矢的と京子先生の一行だが、落語(お調子者ポジション)がファッション (アイドル?ポジション)の作ってきたクッキーの失敗を執拗にあげつらった事からトラブルに発展。突き飛ばされた落語が流血沙汰?!  のアクシデントかと思いきや、ケチャップを使った悪戯だったものの矢的先生は激怒。
 「いいかみんな、たとえ冗談にしろ、人の気持ちを弄ぶやつは先生大っ嫌いだ!」
 今、あなたの真後ろに、弄ぶ常習犯っぽい人が立ってますね……。
 これまでもう一つ上手くいっていなかった“クラスの雰囲気と生徒達の個性”をバス移動中のやり取りで出せた事そのものは良かったのですが、落語の
 「まともに女らしいこと出来ないくせに、大きな口たたくな!」
 があまりにも酷すぎて、布石を兼ねた愉快な一幕になってくれないのが『80』仕様。
 40年前といえば40年前でありますが、それほど量は見ていないとはいえ、70年代特撮の諸作でそこまで気になった事が無い部分が、 『80』では配置がやけに引っかかります。
 中学生らしい浅はかさというのもあるかもしれませんが、言い回しからすると、落語の父親が家で言っているのだろうな…… と想像できてしまうのも辛いところ。
 落語を叱り飛ばした後、矢的がファッションをたしなめる「おまえ女の子なんだからもっとおしとやかになれよ」は、 あわや大事故であった事を考えると許容範囲ではありますが、続けて周囲の男子が「なれますかね〜」「もう無理でしょうね〜」 と混ぜっ返すのも余計だったと思いますし、我ながら少し引っかかりすぎな自覚はあるのですが、『80』は妙に、 時代の倫理観の嫌な部分の見え方が気になってしまう作品です。
 ……シリーズの持つ風刺性の部分を、無意識に前提に置いている、というのがあるかもしれませんが。
 そんなトラブルがありつつ石倉山に辿り着く一向だが、鍾乳洞の前では中年の男とUGMが揉めていた。
 「儂は一月も前から君たちに連絡しておったのに……今まで君たちはいったい何をしとったんだ!」
 クレーム電話の対応です!
 ハイカー二人の行方不明を告げる男の剣幕に対応し、現場まで出動したにも拘わらず「しかしですね……」 と煮え切らない態度のUGMの隊員二人、完全に対応が厄介さんへのそれですが……毎日毎日、 「隣の家で不審な物音がする。宇宙人なのでは」「朝焼けの空を横切る虹色の発光体を見た。UFOだ!」 「怪獣は人類への救済なのです。穢れきった人類は滅びを素直に受け入れるべき」などなどの電波もとい電話を受け続けていたら、 それは奔放にギターをかき鳴らす中学生たちを勢い余って爆殺したくなっても仕方がありません(駄目絶対)。
 「この山の中に、怪獣タブラが居るんだ」
 生徒達の手前、UGMの関係者である事は伏せつつ矢的の素性が紹介されると、考古学者であった男は 「学校の先生ならイケる口でしょ」と、3000年前、光の巨人が怪獣タブラを倒して山に封じた伝説をにこやかに語り出す。
 ……私がUGMの隊員だったら、封印された山=石倉山、である論拠が伝説の刻まれた石と山の形が一緒だからの時点で帰りますが、 UGMコンビは重い腰を上げて鍾乳洞の調査に取りかかり、たぶん、画面に映っていないところで京子先生が 「一生懸命お仕事されるUGMの隊員って素敵ね」とか呟いた。
 鍾乳洞の内部に入り込んだUGM&考古学者は巨大生物の反応をキャッチするが、 覚醒した怪獣の引き起こした地割れに京子先生と落語が落下してしまう。 怪獣の舌に捕まった落語を助ける為に矢的とUGMは亀裂へと飛び込み、 冒頭から特徴的に描いてきた人間捕食用の舌を格闘戦の相手にしたのは上手いアイデア。
 怪獣の舌は逃れるも、洞穴に閉じ込められた落語たちを外部の生徒達が協力して助け出す一幕の後、 再びの落盤により独り洞穴に取り残された矢的は迫り来る怪獣から助けを求める生徒達の声に目を覚ますと80に変身し、 手を振り回すスペースがあって本当に良かった……。
 ……こいつなんか3000年前に見たような? と本気出したタブラの光線技で苦境に陥った80は、 起死回生のウルトラ背面蹴りにより逆襲に転じ、打点の高いキック二連発に続けて至近距離からの必殺光線でフィニッシュ。
 市井の怪しい独自研究家扱いしてごめんなさい、というキャップの謝罪を鷹揚に受け入れた考古学者は、ところで、 光の巨人は普段は現地人のフリをしているらしいだが……と矢的に視線を向けるが、 生徒たちが一様にそんなわけないよと笑い飛ばすお約束も決まり、矢的先生の「明日は臨時の、テストだ!」でオチ。
 ここまで、生徒たちの等身大の問題と個別に向き合っていく展開が怪獣物と噛み合わない上に早々にワンパターンに陥っていましたが、 こうなったらみんなまとめて巻き込んでしまえ、と学園パートと怪獣パートを現場でドッキング。 バスでの出来事が必要以上に感じ悪い上に、「狼少年は良くない」と怒られる落語がなんの伏線としても機能しないのは残念でしたが、 今作ここまででは一番面白かったです。
 脚本の名前に、おや……? と調べたら、円谷では後に『電光超人グリッドマン』でメインライターを務める平野靖士さんの別名義で、 もともと円谷プロダクションの文芸部出身との事ですが、この後の活躍に納得の一編。

→〔その2へ続く〕

(2021年1月17日)

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