ブログ「ものかきの繰り言」の方に連載していた『電光超人グリッドマン』 感想の、まとめ3(21話〜30話)です。文体の統一や、誤字脱字の修正など、若干の改稿をしています。
- ◆第21話「処刑!!夢のヒーロー」◆ (監督:村石宏實 脚本:川崎ヒロユキ)
- 十字架に磔にされ、腕組みした巨大グリッドマンに見下ろされる悪夢で目を覚ます武史。
「グリッドマンめ……夢の中まで僕を苦しめやがって!」
いい感じの逆恨みからヒステリーを起こした武史が本棚をかき回すと、本がぶつかった表紙に妙にセクシーな枕のCMがモニターに映り、 翔家のお茶の間では男衆が口を半開きにして同じCMに釘付けになっていた。
巷で大ブームのこの枕を一家揃って導入する事になる翔家だが、台形の箱から伸びた電極を頭に繋いで「ぐっすり眠っていた」って、 この枕自体に危ない匂いがするんですが!
武史は、黒いボディの上に白い骨のような装甲を被り、両腕が鞭状、 昆虫+甲殻類のミックスといった具合のデザインがなかなか格好いい幻覚怪獣を街中の枕のシステムに送り込み、 終わりなき悪夢の世界に引きずり込まれた翔一家は、妙にリアルな夢の中で馬場家・井上家と遭遇。
総勢11人のパジャマ姿という、なかなか見ない変な絵面で物語は展開。
こんなに同じ夢を見るなんておかしい、とカーンデジファーの関与を感じる3人だが、 夢の世界ではジャンクに行ってアクセス・フラッシュするというわけにはいかず、 現実世界では必死に直人に呼びかけるグリッドマンからのGコールが鳴り響く、という二つの世界の錯綜は面白くなりました。
夢の世界では怪しいピエロ軍団が「グリッドマン公開処刑」のチラシを配って回り、大変、小林義明です(笑)
更にマスカレード武史とカーンデジファー様まで登場し、磔にされて鞭打たれるグリッドマンの姿に、声をあげる直人。
「やめろーー!! それ以上グリッドマンを傷つけたら、この俺が許さない!」
ゆかと一平からは、これは夢だと諭されるが、それでも直人は真剣な怒りを見せる。
「俺は我慢できない。たとえ夢の中だって、グリッドマンが苦しんでいるのを黙って見てられるか!」
「直人……」
「グリッドマンは俺たちの仲間なんだぞ!」
4人のチーム意識を強調しつつ、通常、戦闘が始まるとグリッドマンに一体化してしまう直人の主人公度を、 変則展開の中で補強してくれたのは良かったです。
「3人で力を合わせて、グリッドマンを助けるんだ!」
3人はピエロ軍団に立ち向かうも包囲網を突破する事が出来ないが、その時、 グリッドマンの用いたグリッドキネシスによりグリッドマンの精神エネルギーがブレスを通して精神世界に送り込まれ、 普段の戦闘とは逆の形でアシストを受けた3人は、グリッドパワーで夢の世界を脱出。
目を覚ましてジャンクに駆け込むと枕のCワールドに突入するが、グリッドキネシスを使ってしまったグリッドマンは、 いきなりエネルギータイマーが点滅する大ピンチ。今度はドラゴンフォートレスが送り込まれてダブルビームを怪獣の口に叩き込み、 幻覚攻撃を使用不能にしたところで主題歌スタート。
頭部への連続キックから鞭を掴んで逆に振り回し、攻勢に回ったグリッドマンは高度のあるブレーンバスターからのグリッドビームで怪獣を撃破。 これによりシステムの修復された夢の世界では、磔から解放されたグリッドマンが、かなり長めの尺でピエロ軍団を鮮やかに叩きのめし、 人々は悪夢から解き放たれて快眠を取り戻すのであった。
翌朝、大地は鮮明にヒーローが活躍した昨夜の夢に大興奮。直人父もグリッドマンを格好いいヒーローとし讃え、 普段Cワールドで人目に触れずに戦っているグリッドマンが、この件によって皆の無意識の中に“夢のヒーロー”として刻み込まれる、 というのが終盤に効いたりしたら個人的に好きな展開ですが、さてさて。
一通りのドラゴンウェポンが出そろう・Bパートの戦闘中に分割展開しない、という事でスッキリした構造にまとまり、 直人のヒーロー度を上げつつグリッドマンとの絆も描き、戦闘もしっかり盛り上げる、となかなか面白かったです。
次回――殺人ショベルカー!
- ◆第22話「復活!恐竜帝王」◆ (監督:村石宏實 脚本:平野美枝)
- 桜が丘丘陵で新種の恐竜と思われるニホンティラノサウルス(仮称)の完全な化石が発見され、恐竜大好き少年だった直人は大興奮。
「帝王だと? この儂以外に帝王はいらん!」
「ふん、なにが最強の恐竜だ。僕の怪獣の方がずっと強いのも知らないで」
「その通りだ。それを証明してやるのだ、武史」
そして、発掘を進める吉原博士の「恐竜の帝王。最強の恐竜です」発言を耳にしたカーンデジファー様&武史も斜め上に大興奮。
太古の恐竜への悪質クレーマーとして一致団結した2人は、大学のコンピューターをハッキングすると恐竜の公開データを滅茶苦茶に改竄。 ドラゴンフォートレスの変形システムの参考にするべく、同じデータを閲覧していた直人と一平がこれに気付き、 怒りを燃やしてハッカーに対抗しようとするが、ゆかにきつくたしなめられる。
「なに言ってんのよ、2人とも! データを守る為だからって、大学のコンピューターに入り込んだりしたら、 このハッカーと同じじゃない! 犯罪だわ!」
……え、貴女、つい最近レベルでも、スニーカーのPCを逆ハックして、リアル住所抜き取ってませんでしたか。
−−−
「探していたんです。実は我々も」−−−
「取り上げてくれるマスコミを」
(『ブルースワット』)
ばりの設定改変で、どこまで真面目に受け取って良いのか大変困惑します(笑)
直人とゆかは発掘現場へと自転車を走らせて吉原博士にデータの改竄を伝えるが、 武史は続けてネオメタラスをショベルカーの制御システムに送り込み、暴走するショベルカー。Gコールの呼び出しを受ける直人だが、 化石を守る為にはジャンクへ戻っている時間はなく、決死の覚悟で発掘現場のコンピューターからアクセスフラッシュを試みる。
「大丈夫? もしアクセスに失敗したら、コンピューターワールドを永遠に彷徨う事になるのかもしれないのよ」
「心配するな」
「だって……」
直人とゆかがテントの中で見つめ合い、決戦に趣くヒーローとそれを見送るヒロインみたいな雰囲気が醸し出されるのですが、 急に放り込まれた設定を既知の事実のように語られるので、これまた大変困惑。
前回の内容も合わせて考えると、戦闘中に存在が消滅してしまう直人のヒーロー度を上げよう、 という狙いがあったのかとは思うのですが、直人、幾らなんでも合体にリスクありすぎでは。
そして今回、
直人に手を引かれてショベルカーから逃げる・グリッドマンの勝利を祈る・ウインクを飛ばす
と、テント以外でもゆかが正統派ヒロインムーヴを立て続けに繰り出し、 これも恐らく直人のヒーロー度強化キャンペーンの一環なのでしょうが、ゆかの立ち位置はそこでは無い気が。 ヒロイン性はヒロイン性であって良いのですが、ゆかのキャラクター的面白さは、通り一遍のヒロイン造形に縛られない、 ナチュラルハイスペックな自主独立性にあると思うので、そこが削られてしまわないかは心配。
また合わせて、一平のプログラミング能力がここ数話の間に急向上しているなど、幾つかの描写に補正の動きが見られるのですが、 定着するのかどうなのか。
決死の遠隔アクセス・フラッシュに成功する直人だが、そのフォローの為にグリッドマンは多量のエネルギーを消耗しており、 今回ものっけから大ピンチ。ゆかから送られてきた標本データを参考に、 一平がドラゴンフォートレスの変形システムを完成させて送り込み、遂にお披露目される恐竜ロボ・ダイナドラゴン!
グリッドマンは恐竜ロボと怪獣を挟み撃ちにし、渾身のスローイングからグリッドビームでフィニッシュ。暴走ショベルカーは停止し、 間一髪で貴重な化石は守られるのであった。
変化球を一つ置いて、またもドラゴンメカの強化ギミック回でしたが、 エピソードと繋げながら丁寧に1段階ずつ見せていく作劇とは裏腹に、何度やっても強化展開とエピソード内容が巧く繋がらず、 今回もちぐはぐ。〔スペシャルドッグ→バリアシールド〕は飛躍しすぎたという意識があったのか、 リアル恐竜の骨格を参考にするという段取りを踏むのですが、それ自体が今ひとつ、物語として面白くなってくれませんでした。 初期は手探り感のあった再生・改造怪獣がいい感じのリデザインになっているだけに、惜しい。
次回――漕ぎ続けろ一平!
- ◆第23話「暗殺!地獄の雷鳴」◆ (監督:石井てるよし 脚本:神戸一彦)
- 見所は、二足歩行タイプにも関わらず、背中に乗れるメカジェネレドン。
サンダーグリッドマンのデビュー戦の相手となった初代も見栄えのするデザインでしたが、背中に広がる巨大なヒレ状の突起といい、 体各部のジェネレーターといい、グリッドマンを大きく上回る体躯が、強力怪獣として説得力のある出来映え。
……エピソードの方は、後半に行くにつれ、雑になってしまいましたが。
桜が丘で停電が発生し、もしグリッドマンの戦闘中にジャンクがシャットダウンしていたら……と真剣な表情で憂える一平に対して、 弟がゲームをクリアできなくてざまぁみろ、とニヤニヤ嬉しそうな直人は、今日もさいてーポイントを稼いだ!
まあ直人の場合、これで品行方正で弟にも優しい立派な兄貴、とかだと逆に出来が良すぎて嫌な奴になりかねないので、 随所でさいてーポイントを稼ぐ事で隙を作るのは、造形として必然めいた所はあるのですが。
Cワールド破壊によるインフラ崩壊の危機を何度も救ってきたグリッドマン自身にとっても、 電力というインフラの崩壊が致命的な結果を招くのではないか……3人は思わぬ現実の脅威と向き合う事になるが、 ゆかが自家発電装置の制作を思いつき、一平が自転車による人力発電装置を開発。見事に発電に成功するが、 その際のトラブルで直人が左腕を負傷してしまう。
一方、グリッドマン暗殺計画を練り上げた逆恨み同盟は暗殺電気怪獣を変電所に送り込み、街を襲う停電。 直人の負傷に責任を感じる一平は代理で合体できないかと問うが、
「それは無理だ。私と直人は、一心同体だ」
と都合良くは行かず、ここしばらくの流れを汲んで、負傷を堪えて変身する姿により直人のヒーロー性を補強する展開。また、 負傷した直人をフォローしようとする一平と、そんな一平に気を遣わせまいとする直人、という二人の友情をアピールするのですが、 ジャンク/グリッドマンを脅かす停電の恐怖・負傷によるピンチと親友同士の友情・グリッドマン暗殺計画による強力怪獣、 と要素を盛りすぎて、この辺りから段々と散漫な展開に。
この内、どれか2つの要素の組み合わせで良かったのではと思うのですが、 折角グリッドマン暗殺という目的の為に見栄えのする強力な怪獣を送り込んだのに、 逆恨み同盟の与り知らない所で負傷したグリッドマンが最初から不利な状態、というのは暗殺計画の劇的さを大きく減じてしまいました。
変電所の避雷システムを改竄した逆恨み同盟は、変電所に雷を落とす事で内部のCワールドを崩壊させてグリッドマンを葬り去ろうとするが、 一平の自家発電により強化したセキュリティ突破プログラムにより武史の妨害バリアを破壊したゆかがドラゴンフォートレスを送り込み、 ダイナドラゴンへ変形。
そのまま一気に逆転勝利……ではなく、自家発電自転車のペダルが外れて電力が供給できなくなり必死に修理、 というのは無駄なスペクタクルになった感。
そして結局、変電所に落雷してしまうも間一髪、グリッドマンがシステムを一部復旧して助かりました、というのも、 逆転劇にここまでの流れとの繋がりが弱く、特に一平の自転車修理という前段で用意したスペクタクルとほぼ関連しない為に物凄く台無しで、 どうしてそうなった。
一応、ダイナドラゴンを送り込んだ事でグリッドマンがシステムを一部復帰する余裕が出来た、という理屈だとは思うのですが、 そこの部分(ドラゴンが怪獣を引きつけるなど)が映像から全く伝わってこず、また、落雷の瞬間の歓喜と、 それを回避された事のショックなど、逆恨み同盟側のリアクションが一切描かれないので面白みに欠け、単純に、 つまらない演出となってしまいました。
落雷消滅の危機を逃れたグリッドマンは、残りのパワーを振り絞って猛然と攻撃を仕掛けると、グリッドビームでフィニッシュ。 直人達は、電気の大切さを噛みしめるとともに、魔王カーンデジファーへの憤りを新たにするのだった、でつづく。
- ◆第24話「恋!バイオフラワー」◆ (監督:石井てるよし 脚本:静谷伊佐夫)
- 「はじめから無理だったのよ。ああいうのを高嶺の花っていうのよ」
鬼だ。
風邪を引いていた直人が久々にジャンク部屋を訪れると、部屋中が鉢植えの花だらけ……それは、 花屋の店主・ユリに入れ込んで手伝いを始めた一平が、バイト代がわりに貰ってきたものであった。
盗撮回(同じ脚本家)を踏まえて一平に惚れっぽい属性が固定化されるのですが、本当に気のある相手(ゆか)が親友(直人) を好きなのを知っているので道化た恋を繰り返している男、だとまで考えると中学生ながら切ない。
一方、恋する気持ちを伝えきれない藤堂武史は、花束を手にゆかへの告白をシミュレーションしていたが毎度のごとく失敗。 会心のゴミ箱ダイブを発動し、その憤りを人が愛する花全体へと向ける。
「ならば、人々が愛さなくすればいいのだ」
「そうか……花を憎むように」
カーンデジファー様のアドバイスを受けた(正しくは「そそのかされた」なのですが、 この方がそれらしくなるのが今作の面白い所であり)武史は、植物怪獣プランドンを作り出すとバイオ園芸センターのシステムに入り込み、 出荷間近の新種の花リフランに邪悪な遺伝子改造を施してしまう。
そのリフランの開発者はユリの婚約者であり、会心の失恋をした一平はゆかに励まされると、早速「ゆか、君の胸で泣かせてくれ!」 とハグに持ち込もうとして、「甘えるんじゃない」と押し返され、なんだか無性に切なくてその内、あてもなく旅に出そうです。
「元気が出たところで、宿題しちゃいましょ」
ゆかの音頭で勉強を始める3人だが、目がちかちかし、くしゃみを連発した事から室内にリフランが撒き散らす膨大な量の花粉に気付く…… それこそが逆恨み同盟が仕掛けた、恐怖の毒花粉であった!
花を憎むようになる催眠光線とかでなくて良かった(というか、てっきりそうだと思っていた)。
遺伝子操作による大規模バイオテロというBC兵器を繰り出してきた逆恨み同盟の攻撃により、 花粉の充満したジャンク部屋へ入れなくなってしまう3人組。一平が妙案を閃き、ガスマスクと防護服で完全防御すると、 温度変化に弱いリフランにコールドスプレーを吹きかける事で枯死させ、直人はアクセス・フラッシュ。
一平がユリの花屋へ向かっている間にグリッドマンは戦闘開始し、全身に葉脈状の模様が走り、 開いた花弁のシルエットを葉っぱモチーフの体で表現しているという植物怪獣プランドンは、 照明効果も加えた赤黒いカラーリングと凶暴さ溢れる顔も良い、傑作デザイン。
本日も立ち合いは強く当たって流れで苦戦に追い込まれるグリッドマンだが、ダイナドラゴンの援軍を受けると息を吹き返し、 ガントレットに溜めたエネルギーを、一度体を右に向けた状態から両手の間に引き延ばして放つ新技・グリッドライトセーバーでフィニッシュ。
既に遺伝子改造して出荷済みの花が、怪獣倒したら元に戻ったのはCワールドの神秘としても、 婚約者はこの事件により研究者としての将来を閉ざされた気がしてならず、婚約者に待ち受ける、 解雇→訴訟→社会的地獄のコンボを、二人の愛は乗り越える事ができるのか?!
と、気絶したユリが譫言で婚約者の名を呼ぶのを聞いて、そっとその場を離れて失恋を噛みしめる一平の心情もスパイスに、 苦くて重い恋の行く末なのでありました。
遺伝子工学の危険性と可能性という、正負の両面に軽く触れて自然と人間の関係を問いかけたりしつつ、次回――大映からの刺客!
- ◆第25話「決戦!ヒーローの危機(前編)」◆ (監督:北村義樹 脚本:平野靖士)
- PCパーツショップ、閉店!
「最近、コンピューターの異常で、よく事件が起きてるだろ? そのお陰でコンピューター売れないし、返品が多くて、商売にならないんだよ」
直人たち行きつけのPC店が店じまいに追い込まれたり、怪事件の頻発する桜が丘から引っ越していく家庭が出たりと、 2クール目の最後にして、劇中の異常事に対する大衆のリアクションが描かれ、 逆恨み同盟の暗躍による世界のパラダイムシフトが明確に発生(これまでは、怪獣被害による大衆の認識変化が示されていない世界観であった)、 物語世界が大きな転換点を迎える事に。
「俺たち……カーンデジファーに勝った事に、ならないんじゃないか?」
世間で起きている事件の影響を目の当たりにし、これまでの勝利は所詮局地的なものに過ぎなかったのではと疑問を呈する直人だが、 部分的にそれを認めつつも、直人を励ますゆか。
「そうよね。世界中でいろんな混乱が起きているのは、確かだもの。でも直人、だからこそ私たちは戦い続けるんじゃない? カーンデジファーの魔の手から、世界を救う為に。私たちがやってきた事が、無駄って事はないわ」
これまでの騒動を回想し、カーンデジファー野郎、絶対に許さねぇ! と決意を新たに3人が拳を重ね合わせる一方、武史は、 トラックに轢かれて異世界転生しかけていた。
次回――『異世界天才プログラマーは魔王軍の凄腕主夫』
じゃなかった、空気を汚す工場やトラックを睨みつけた武史は、ガスマスク姿で自室に空気清浄機を据え付け、この世界では、 割と何処でも売っているのかガスマスク。
「人は公害の危険を叫びながら、空気を汚す事をやめようとはしない。だったら、もっと汚してやろうと思うんです」
転生はしなかったが社会派路線に転向した武史は、環境テロリストとして筋トレに励む代わりに新たな怪獣を作り出し、 なんだかガ○ラ顔の毒煙怪獣が排煙処理施設へと送り込まれると、システムを改竄する事で街中に有毒ガスをばらまき始め、 前回に続いて大規模テロ事件が発生。
そんな恐怖が身近に迫っているとは露知らず、掃除を手伝ってお小遣いを貰った大地は、 カナとソフトクリームを食べながら街を歩いてデート気分。
「今度またおごってあげるよ」
「いっとくけどソフトクリームをだしにつかえば、私がいつでも付き合うだろうなんて思わないでね。 今日はたまたま気が向いただけなんだから」
平野脚本で久々に浮き上がるカナの外道ぶりもさる事ながら、 人の歓心が金で買える事を覚えてしまった大地の将来が心配です。
「ふふふふふふ……もっと暴れろベノラ。おまえの毒ガスが、世界を恐怖の闇に陥れるんだ」
「さあ、早く来いグリッドマン。待っているぞ。今度こそ貴様の息の根を、止めてやるぞ!」
街の上空には目に見えるほど濃度の高い有毒ガスが広がり、気合い十分の魔王様、悪のガッツポーズ。 地下室で勉強中だった直人たちもこの暗雲に気付くと、Gコールに応えてアクセスフラッシュ。
本日も立ち合いは強く当たるグリッドマン、ジャンプしてそのまま怪獣の背中に乗り、体重をかけた膝を浴びせる、 という先制のアクションが格好いい。
「その調子よ!」
「一気に叩きのめせ! グリッドマン!」
調子よく連続キックの猛攻で畳みかけるグリッドマン、だが……素のグリッドマンの優位がそんなに長く続くわけがなかった!
「とうとう現れたなグリッドマン。貴様の運命もこれで最後だ。さあ、ベノラよ! 奴をたっぷりいたぶってやるがいい。ふふはははは」
「ふふふふ、この毒ガスの仕掛けを、グリッドマンに見抜けるかな」
ベノラの毒ガスを浴びたグリッドマンは、その作用によりこれまで戦った怪獣の幻覚に脅かされ、 逆恨み同盟の起こした怪事件を振り返る前半の回想、アクセス・フラッシュを始め細かく入るナレーションの解説、 など今回は2クール目締めの一山としての前後編展開に加えて、これまでの今作をまとめるという趣向なのですが、 主人公ヒーローの回想パートが、素材に事欠かない苦戦のメモリーってどうしてそうなったのですか(笑)
あんな怪獣に殴られました、こんな怪獣にも殴られました……過ぎ去った今となっては、全てが良い思い出、のわけないよ! と精神ダメージを受けて苦しむグリッドマンに次々と火球を吐き出す怪獣が、ますますガ○ラ。
「ふふはははははは、どうだグリッドマン! 毒ガスの威力を思い知ったか。今こそ、貴様の息の根を止めてくれるわ!」
「おまえの無様な姿を、東京中のさらし者にしてやる」
武史はCワールドでの戦いをHワールドの雲をスクリーン代わりに映し出し、衆目の目に触れるグリッドマンvs怪獣!
冒頭に続いて更なるパラダイムシフトを打ち込んできましたが、これは後半に向けての継続的な要素になるのか、 有毒ガスが生んだ集団幻覚で片付けられるのか。前者の場合、「夢のヒーロー」回の要素が最終盤で活きる可能性が失われてしまうと個人的には残念ですが、 物語世界が3クール目から大きな変化をする、というのはそれはそれで見てみたい。
増援に送り込まれたドラゴンフォートレスも火球の足止めを受け、ある時は手裏剣を投げつけられ、ある時は火炎放射であぶられ…… 遠距離攻撃に痛めつけられた思い出に苦悶するグリッドマンは、錯乱状態で虚空にパンチを放ちながら、遂にダウン。
「やった! ついに僕の怪獣が勝ったぞ!」
「これで邪魔者は消えた。ベノラよ、思い切り暴れるがいい……人間共を恐怖のどん底へ陥れるのだ! ふははははは、ふはははははは!!」
逆恨み同盟は歓喜の声をあげ、東京中を覆っていく毒ガス……果たして、グリッドマンはもう一度立ち上がる事が出来るのか?! 輝かしい勝利のメモリーは回想されるのか?!
次回――デカいは強いを見せてやる!!
- ◆第26話「決戦!ヒーローの最期(後編)」◆ (監督:北村義樹 脚本:平野靖士)
- グリッドマン・完敗。
辛くもヒューマンワールドに帰還した直人だが毒ガスの影響による敗北のメモリーに苛まれ、 それを看病するゆかが一気のキスシーンでヒロイン度を押し上げる思い切った展開で、武史ぃぃぃぃぃ(涙)
(なお一平は、自宅に戻って回復用のスープを調理していて、一平ぃぃぃぃぃ(涙))
真・逆恨み同盟結成の種が着々と蒔かれる中、目を覚ます直人だが「もう勝てないかもしれない」と弱気をもらし、ゆかに励まされる。
「思い出してみて! 今までの事を! 今まで私たちがやってきた事を!」
からようやく勝利のメモリーが振り返られ、これは綺麗な流れ。……まあなんか、グリッドマンの活躍というより、 オプションメカの歴史になっているけど!
そういえばEDではずっと出張っているゴッドゼノンは、本当にもう用済みなのでしょうか…… いずれ復活するのだろうと思っていたらそういう空気ではなくなってきて、あまりにも短い活躍だったような。
「わかったよ……俺やるよもう一度!」
再起する直人だが、広がり続ける有毒ガスにより首都圏には非常事態宣言が出され、前回の中継映像をきっかけに、 コンピューターワールドと怪獣、それと戦うグリッドマンが一般市民に認識される事に。
大規模化学兵器テロに合わせる形で、集団幻覚で誤魔化す事なく劇中世界のパラダイムシフトに持ち込み、 2クール目の締めをかなり思い切ったターニングポイントにしてきましたが、時間の認識異常・甦るミイラ人間・毒花粉テロ、 などそれなりに世間の人々が異常事態を目撃(体験)してきたので、違和感は無い流れ。
「コンピューターワールド」という固有名詞が既に共通認識になっているのが唐突といえば唐突ですが、 提唱されるシーンが挟まっても煩雑ではあったか。
「ふはははははは! 愚かな人間どもよ、よーく聞け。我が名は、カーンデジファー! 貴様等の運命は、 このカーンデジファー様にかかっているのだ」
仇敵を仕留めたと舞い上がるカーンデジファー様は、暗雲に映像を浮かべて全人類に自己紹介するという念願の大魔王仕草を行い、 ここで、第3話で物議を醸した、だいぶ頭の悪そうな署名入り犯行声明(FAX)を振り返ってみましょう。
−−−……改めて、破壊力高い。
オロカナ ニンゲン ドモヨ
オレサマガ ニンゲン セカイヲ
セイフクスル ヒマデ
コンランニ クルシムガヨイ
マオウ カーンデジファー
−−−
「もはやグリッドマンは存在しない。貴様達の味方をしてくれるヒーローなど、どこにもいない。さあ! 人類は今から、 このカーンデジファー様の下僕となり、いかなる時も、俺様の命令通りに行動するのだ。ふはははははは!」
興奮のあまり一人称を帳尻合わせするカーンデジファー様だが、ヒーローは既に、再起を志して立ち上がっていた。 一平が毒ガス対策の追加装甲を閃くが、これ以上怪獣を野放しにして被害を広げるわけにはいかないと、眼差しも強く決意を固めた直人は、 割といつの間にか持ち直していたグリッドマン(多分ジャンクの中から全て見ていたが大人なので何も言わない) と合体して再びCワールドへ。
怪獣に毒ガスを放つ隙を与えまいと怒濤のラッシュ攻撃を仕掛けるグリッドマンだが、 火球からのコンボで今回も敗北のメモリーに飲み込まれてしまう。
「フ……無様な奴め。意味の無い悪あがきをするからこんな目に遭うんだ」
その姿はまたも実況配信されるが、大地らはグリッドマンに声援を送り……悪夢の枕回が良いジャンプ台となって、 グリッドマンに声援を送る人々(代表して翔家の茶の間)の姿が、受け入れやすい形になったのは流れが上手くはまりました。
そして一平が防毒アーマーのアイデアを完成させ、送り込まれたダイナドラゴンから分離したキングジェットが、 強化アーマーとしてグリッドマンの全身に接続される。
「合体竜帝・キンググリッドマン!」
ここでフルバージョンの前奏からの主題歌、という文句なく燃える展開(フルバージョンなのが、特別感が増してポイント高い)。
グリッドマン BABY DON DON BABY DON DON 夢見て怪獣より一回り以上大きいキンググリッドマンは、毒ガスをものともせずに前進すると、デカいは強い戦隊ロボメソッドを発揮し、 重量感のあるパンチから膝蹴りを叩き込む。たまらず怪獣の放った火球も蹴散らし、キンググリッドランチャーで弱らせた所に、 右腕から放つキンググリッドビームで粉砕。
グリッドマン BABY DAN DAN BABY DAN DAN 輝け
ここ数話の追加ギミックを踏まえた上で、前後編で最大の苦戦から繰り出される強化形態、という事で非常に見応えのあるデビュー戦となりました。 デザイン的にも、ストレートに格好いい系だったサンダーグリッドマンを継承しており、良い感じ。そう、ゴッドゼノンは、 偉大なる肥やしとなったのだ……。
かくして有毒ガスは浄化されて首都圏壊滅の危機は去り、グリッドマンは青空と共に人々のヒーローとなるが、 逆恨み同盟は復讐の牙を研いでいる! 頑張れ負けるなグリッドマン! で、つづく。
Cワールドと怪獣、グリッドマンとカーンデジファーの存在が世間に認識される、という大きな転機となった前後編。これにより、 遡って幾つかの怪事件はカーンデジファー様の仕業、という事になりそうですが、今後この世界では、 なんらかのシステム異常などが発生する度に「これはCワールドで怪獣が暴れている為です」「我々のシステムに不備はない」 「〆切りは三日後だった筈」「グリッドマンどうした、しっかり戦え!」「すべてカーンデジファー様のせいだ」 という汚い弁明が横行するのではないか(笑)
そして、もし『グリッドマン』世界のインターネット社会が我々の現在のように発展していたら、 カーンデジファー様はSNSで恰好の玩具にされていそう。
「武史よ、一つ聞くのだがこの、「#カーンデジファー姫」というハッシュタグはなんだ?」
「カ、カーンデジファー様?! い、いけません! それをクリックしては駄目であぁぁぁぁぁ!!」
頑張れ! 僕らの! 逆恨み同盟!!
- ◆第27話「驚天!オモチャの反乱」◆ (監督:村石宏實 脚本:大川俊道)
- 「はははははははは! 玩具よ、混乱を起こせ! 生意気なガキどもに、恐怖を与えてやれ!」
電波怪獣ボランガの破壊活動により、コンピューター制御のラジコンが突如として子供達に襲いかかる。 大地の友人・太郎がラジコン戦車の砲撃を受けて怪我をするが、見舞いに行った大地は、 ラジコン戦車で遊びたいあまりにそれを持ち出して外へ出たところを、金持ちのお坊ちゃまである太郎本人と誤解されて、 間抜けなカップルに誘拐されてしまう事に……。
逆恨み同盟によるラジコンパニックと、全く無関係の誘拐騒動、 二つのプロットを組み合わせるという今作ここまで無かったアイデアは面白かったのですが、最終的に、グリッドマンvs怪獣と、 ラジコン軍団に追い詰められるサスペンス、という並行展開がまたもあまり面白くならず。
無言で迫り来るラジコン玩具に追い込まれる大地&誘拐犯女、のシーンは古典的な演出ながら面白みはありましたし、 グリッドマンの殺陣も悪くないのですが、同時進行が相乗効果を生まずに、互いの魅力をぶつ切りにしてしまっているように思えます。
これは一つに、グリッドマン側にサスペンス要素が不足している、というのがあるのかなと。
「人々の目に見えないCワールドでの戦いが人々の危機を救う」というのは今作のコンセプトであるのですが、 グリッドマンは事件の大枠を把握していても、個別の危機的状況をダイレクトに認識していない場合が多く、 今回でいうならば「ラジコン暴走事件は把握している」が「大地に迫る危機は認識していない」ので、後者を強調した同時進行において、 バトルとサスペンスがマッチングしていない為に物語の盛り上がりが連動してこないように感じます。
ずさんな誘拐犯とずさんな翔一家の誘拐を巡るやり取りも、スラップスティックコメディとまでは突き抜けきれずに中途半端なギャグ展開になってしまい、 根はそう悪くもない犯人が、やむなく誘拐を行うきっかけになった「落とした500万円」は親切な人が拾ってくれたが、 誘拐は誘拐なのでパトカーに乗せられて去って行く……というオチに至っては、ただ劇中の因果を並べただけで、 おかしくはない代わりになんの面白さもなく、素人の作文のような結末。
プロットの面白さが練り上げられないまま放流されてしまった残念エピソードでしたが、もう一つ残念だったのは、
「自分は小金村巡査の代わりにこの地に配属されました、尼崎です」
初登場の関西弁の巡査の台詞より、異動になってしまう小金村巡査。このタイミングでの日常セミレギュラー交代は、 役者さんに何らかの事情が発生したという可能性が高そうですが、基本コメディリリーフ要員ながら、 強い正義感を持った日常のヒーローの側面が段々といい味を出していただけに、降板(?)は残念。
- ◆第28話「神かくし!ゆかが消えた!!」◆ (監督:村石宏實 脚本:平野美枝)
- 「井上ゆか、顔を上げろ。こっちを向いて僕に笑いかけろ。そうだ、僕だけに微笑むんだ」
冒頭から、遂にゆかをビデオカメラで盗撮する武史の姿がねっとりじっくりと描かれ、 一線を踏み越えた最っ低具合が、もはや笑いに変換できないレベルなのですが、 どこぞの馬場一平くんも半ばストーカー化して盗撮行為を繰り返していたという過去が作品全体に重くのしかかります。
「どうして僕の愛に気付かないんだ。こんなに激しく、こんなに強い僕の愛に。なんて鈍感な女なんだ。……ゆかぁぁぁ」
最近プッシュの激しい直人に向けられたゆかの笑顔に頭を掻きむしる武史は、家に戻ると「神隠しの実験」と称して、新たな怪獣を作成。
「ふふふふふふふ、欲しい物は手に入れてやる」
開いた自室のロッカーには『井上ゆか 僕と彼女の愛のメモリー』とラベルの貼られたビデオテープがずらりと並んでおり、 「遂に盗撮に手を染めた」どころか、「根の深い常習犯」でした!
もはやカーンデジファー様と関わる以前から犯罪者街道一直線であった事が判明した武史(ハッキングもしていたけど)は、 作り出した透視怪獣を愛用のハンディカメラに内蔵。そのカメラでゆかを盗撮する事で、 自室の空間ごとゆかをビデオテープの中に閉じ込めてしまう!
「これでいつでも一緒だ。誰にも僕らの邪魔はできない」
自宅に戻った武史はビデオカメラをモニターに繋ぐと、戸惑うゆかの姿を大画面で見つめながら妄想にふけり、 怪獣にCワールドを改造させる事で手持ちアイテムをオーバーテクノロジー化する というアイデアは第28話にして全く新しい切り口で面白かったのですが、青春の炎が燃え広がりすぎて、 とんだド変態エピソードに。
翌日、井上家には「私を探さないで」という明らかに編集されたゆかからのビデオメッセージが届き、 直人と一平も巻き込んだ失踪騒ぎに発展。心配する井上母の前で、「こりゃどう見ても駆け落ちだな」 と適当な事を言い出す直人父が桜が丘に蔓延するクズパンデミックに飲み込まれてしまったのはギャグとしても踏み外した感があり (このエピソード全体が踏み外し気味ですが……)、技術畑では無さそうなものの、 TVマンである直人父が映像の不審に気付くぐらいしても良かったような。
ビデオカメラを手に街へ繰り出した武史は、逆恨みの趣くままに人々をテープの中に閉じ込めていくが、 電機店でバッテリーを充電した事によりグリッドマンが感知し、Gコール。 ビデオメッセージが編集されたものである事を突き止めていた直人と一平は、「カーンデジファーの野郎、ゆかを誘拐しやがって!」 と怒りに燃えるとCワールドへと突入する。
四足歩行型で全身にストロボを付けた透視怪獣は、磁力怪獣(第12話)の改造と思われますが、 どうしてストロボなのかよくわからなかった磁力怪獣よりも、むしろしっくりと来るデザイン。
怪獣の懐に飛び込むも発熱攻撃に苦戦するグリッドマンだが、復活したゴッドゼノンが応援に投入され、 最後はグリッドライトセーバーでずんばらりん。
一応、エピソード内部での前振りはあり、あのままフェードアウトするよりは遙かにマシでしたが、ゴッドゼノンは一時退場も復活も、 割と雑な扱い。
キラキラミストでCワールドが修復された事により、神隠しにあっていた人々は元に戻り、ゆかも無事に帰宅。
「武史のねじれた心、歪んだ魂は、どうしたら、救えるのだろうか」
ナレーションさんにも心配されて、つづく。
- ◆第29話「愛犬爆弾計画」◆ (監督:石井てるよし 脚本:新藤義親)
- ニンジャ×カンフー=最強!
犬に吠えられ、そば屋の出前持ちと衝突した武史は巷で流行しているコンピューター制御の首輪にカンフーシノビラーを送り込み、 犬を次々と凶暴化。だがそれでは生ぬるい、とカーンデジファー様は首輪に爆破プログラムを送り込むように強制し、 都内各地で犬が爆発! という本格的に凶悪な爆破テロに発展。
直人達の同級生・美奈子の飼い犬も生ける爆弾と化してしまい、Cワールドでの戦いと爆弾犬探しを同時進行するという、 『グリッドマン』いつもの盛り上がらないパターン(^^;
とうとう、ペットアイテム社のホストコンピューターに平然とアクセスする一平が気になりますが、 スニーカーにハッキング技術の通信指導でも受けているのでしょうか。
「藤堂武史はもう使い物にならん……だが馬場一平、貴様の心の中には憎悪が怨念が醜い嫉妬がある!」
とか、カーンデジファー様に見込まれてラスボス化しないか大変心配です(そういえば絵も描ける)。
出てくる度に東映風味が強くなるシノビラーは、手裏剣の連打からヌンチャクの舞い、 更にそれを繋げた棍による攻撃でグリッドマンを苦しめるが、キンググリッドマンに敢えなく敗北。
危機一髪でゆか達は犬と一緒に爆死を免れるのであった。
次回――グリッドマン、またも精神攻撃に敗れる?!
- ◆第30話「世界滅亡の日」◆ (監督:石井てるよし 脚本:右田昌万)
- 注目は、
「トキメキ星雲……?」
という単語を口にするカーンデジファー様。
概ね人間世界の常識や流行に対してアンテナ感度低めのカーンデジファー様、普段は一体、何をしているのか。 勤勉な悪の組織なら征服対象の世界のリサーチに励みそうなものですが、武史が学校から憎悪と怨念を抱えて帰ってくるのを、 ワクワクしながらコタツに入って待っているのでしょーか。
巷で人気のコンピューター占い「トキメキ星雲」に従い、ゆか攻略の為に髪を金色に染め、 似合わないパンクファッションに身を包んだ武史。勿論うまく行くはずもなく、 男の痴漢に遭遇して顔中にキスマークを付けながら帰宅する、というのが結構酷いのですが、 第28話で盗撮・監禁という完全な犯罪者コンボを決めていたので、2話越しの因果応報といえば因果応報。
その顛末を聞いて思わず吹き出し、咳払いで誤魔化したカーンデジファー様の協力を得た武史は、 魔力超獣をコンピューター占いに送り込んで言いなり光線を放つように改造し、第30話にして明かされる衝撃!
カーンデジファー様が時々武史に使う洗脳光線の正式名称は、言いなり光線。
…………ネーミングセンスが、「説明は後だ」でお馴染みハイパーエージェントさんと全く一緒なのですが、えー……もしかして、 カーンデジファー様のフードを取ると、正体はグリッドマンだったらどうしよう。
全ては、ヒューマンワールドの少年少女達の心を弄ぶ、ハイパーエージェントの邪悪なマッチポンプだったのだ!(爽やかガッツポーズ)
辻褄の全く合わない与太はさておいて、逆恨み同盟の目論見は見事に当たり、「そんなに直人の事が好きだったら、 直人が好きな女を殺してしまえ。愛は奪い取るものなのだ」と洗脳されたカナは金属バットでゆかに襲いかかり、 「仕事なんか辞めてしまえ」と洗脳された直人父は大学時代に精神退行してビートルズ気取りでギターをかき鳴らし始め、 翔家に迫る家庭崩壊の危機。
「家のローンを支払い続ける為に、日曜も奴隷のようにこき使われるなんて、もうやめたんだ。トキメキ星雲よ、ありがとう!」
ラジコン回で、退職金を前借りして家を買ったと言及されているので、大変切実です。……まあその割には、 真っ赤な外車を乗り回していたりはするのですが。
「今日は世界滅亡の日だ」
盛り上がってきたカーンデジファー様はトキメキ言いなり光線を街中にばらまき、理性を失っていく人々。そして、 トキメキ星雲を調べていた直人は「貴様の命は、今日でおしまいだ」という占いにより、鳴り響くGコールを無視して、 体育座りながら「赤とんぼ」を口ずさんでいた(笑)
一平は直人を殴り飛ばすと強引にジャンクの前まで連れて行き、「緊急事態だし、仕方ないよね」と 目からビームで強制合体するハイパーエージェント(おぃ)
だがCワールドに突入したグリッドマンは直人とシンクロしておらず、怪獣から逃げ惑うばかりでホッとしましたが、 それはそれでとにかく現場に連れて行けば何とかなるのではと見切り発車したハイパーエージェントさんはやはり、 宇宙的正義のエージェントとどこかで繋がっているのではないか。
「グリッドマン……どうしたのでしょう?」
「うむ……いつもより全然弱い」
逆恨み同盟はモニターの前で首を捻り、割と世界もグリッドマンも大ピンチの局面で、妙にほのぼの(笑)
未だにお互い、〔グリッドマン/ジャンクトリオ〕vs〔カーンデジファー様−怪獣/武史〕 という二重構造のヒントすら掴んでいないのはちょっと面白いところですが、逆に、 一つ糸口を掴めばそこから怒濤の最終決戦に持ち込めそうな気配が、70〜80年代ぽい構成ともいえます (この後どう見せていくかはわかりませんが)。
「こんなグリッドマンを倒しても面白くない」
急にライバル精神を発揮したカーンデジファー様は、グリッドマンを単純に抹殺するのではなく、 言いなり光線を浴びせてCワールドを破壊させる意趣返しを行い、逃げ惑うグリッドマンから錯乱するグリッドマンへと、 変化球のアイデアを詰め込んでくる展開は見応えあり。
特に、Cワールドを破壊し怪獣とハイタッチをかわして高笑いするグリッドマン、は名シーンでした(笑)
サポート組はゴッドゼノン一式を送り込み、ジョイスティックを握った一平は、本人にしたのと同じ調子で、 思い切りグリッドマンを殴り飛ばす。
(最近ゆかと変な空気出しやがってこのヤロー!)
(にやけ面にニキビが目立つんだよこのヤロー!)
(上から目線で余裕かましながら鈍いフリするんじゃねえよこのヤロー!)
ノリノリでグリッドマンを殴りまくる一平に、背景で、え……ちょっと……みたいな表情になっているゆかが面白い(笑)
ゴッドゼノンを介した一平の執拗な精神注入ナックルに不穏な気配を感じたのか、横から割り込んだゆかはゴッドゼノンを強制回収。
「何すんだよ?!」
「直人が死んじゃう!」
「世界中の人間が死ぬかもしれないんだぞ?!
「直人ひとり救えないで、世界が救えるの?!」
サポート側でヒーローテーゼが投げ込まれる、というアプローチは面白かったのですが、一平も別に「仕方がないだろ」 レベルで覚悟が決まっているわけではない勢いとジェラシーの産物と思われるので、やや台詞を言わせたいが為の対立になってしまった感。 暴れ続けるグリッドマンに対し、ゆかが必死で作成したプログラムを送り込むとなんか治った、という見せ方も劇的にならず、 ここまで面白かっただけに最後のジャンプで大きく体勢が崩れたのが残念。
「正気に戻った!」
「バカな?!」
言いなり光線の呪縛を打ち破ったグリッドマン/直人は、超獣の角を破砕。ブレストバーベキューの熱線を大ジャンプでかわすと、 そのまま新必殺技の超エージェントキックで怪獣を撃破するのであった。
カナの襲撃により、ゆかが怪我した事で怒りの表情になった直人が一人でトキメキ星雲に向かうなど、 直人とゆかの関係性を劇中に散りばめてはいるのですが、ゆかが次に見た直人は体育座りしながら「赤とんぼ」だったりで、 「I LOVE ナオト」のメッセージが治療プラグラムの中身であった、というオチと綺麗に連動しきらず、そこに集約するのならば、 直人とゆかが喧嘩して……ぐらいにエピソードの焦点を2人に合わせても良かったような。
ナレーション「この世で一番強いのは、やはり、愛なのかもしれない。しかし、愛がねじれてしまうと……」
最近、いい話にまとめた所から振り向きざまに武史を殴りに行くのが癖になりつつあるナレーションさんに導かれるように、 おみくじで大凶を引いた武史は再び痴漢に出会ってしまいフェードアウト、でつづく。
次回――「街角でキララが拾ったのは、なんと、カーンデジファーの入ったフロッピーだった」
…………こ、これは……新手の家出?
(2019年7月28日)
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