■『電光超人グリッドマン』感想まとめ2■


“もしも心を擦りむいても 怯えないで もう君は独りじゃない”


 ブログ「ものかきの繰り言」の方に連載していた『電光超人グリッドマン』 感想の、まとめ2(11話〜20話)です。文体の統一や、誤字脱字の修正など、若干の改稿をしています。

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〔まとめ1〕 ・ 〔まとめ3〕 ・ 〔まとめ4〕


◆第11話「おこづかいは十万円?」◆ (監督:小中和哉 脚本:川崎ヒロユキ)
 「パパもママも、お金さえ渡しておけば、僕が幸せだと思ってるんだ!」
 独り言を呟きながらスーパーでサプリメントを購入していた武史、子供にぶつかられてその母親から白い目を向けられたストレス発散に、 自室で万札吹雪。
 「ほう、それが人間の欲望をかきたてる、金というものか」
 「金は人間の醜さをえぐり出す。人間は金の奴隷に過ぎないんだ!」
 床に散らばった1万円札をぐりぐりと踏みつけながらメタルボディの鋼鉄怪獣を作り出した武史は、 カーンデジファー様の音頭で商店街のレジ管理システムに潜入。商店街共通の専用キャッシュカード (例えばWA○Nカード的なニュアンスか)である桜カードの残金を全て10万円に書き換えるが、そこにはある恐るべき目的があった……
 「恐怖の買い物ゲームの始まりだ」
 母から買い物を頼まれ、カードの残額をお小遣いにしていい(母の目論見では200円ぐらい) と言われた大地はこの騒動に巻き込まれて10万円を手にする事になり、カナとその友人達に大盤振る舞い。
 「「「大地くん、あの洋服買ってー」」」
 手に入れた大金を後先考えずに使ってしまうのは子供の浅はかさと無邪気さではあるのですが、今作における「悪」が、 「日常の些細な出来事から爆発するねじれた憎悪」という現実にかなり近い場所を発源としている事と、 グリッドマンと怪獣の戦いがCワールドで行われる為に一般市民の世界の認識にパラダイムシフトが発生していない事が重なって、 今作は日常世界のリアリティラインが意外と高い為に、万単位の金を使い歩く小学生だけの集団を素通しする店の人とか、 桜カードはそもそも小さい子供に持ち歩かせていいのだろうか、などは少々気になってしまうところ。
 作品によっては全く気にならないタイプの表現なのですが、直人達の家族模様を丁寧に肉付けして描くという今作の特色の、 長短裏表といった感。
 さんざん遊蕩の限りを尽くした大地一行は、街角で直人たち3人組と遭遇。ジャンクを強化しようとそれぞれの小遣いを持ち寄るも、 諭吉さんのゆか、ゲーム代にと貯めておいた夏目さんの一平に対し、全財産350円しか出せなかった直人は、 羽振りの良い大地の姿を見てまなじりを吊り上げる……と思いきや、金を無心。
 「大地ぃぃ……少し俺に貸してくれよー」
 「えー!」
 「あー、ジャンクの……じゃなかった、とにかくお金が要るんだよ」
 本日も最低だな……。
 「やだよ、これは僕のだもん!」
 「そうだ! きっとそれは俺の分も、含まれてるんだよ」
 最低だ……。
 「聞いてないよ、そんな事!」
 「いいや、そうに違いない。少し寄越せよ」
 どうしようもなく最低だ……。
 前回のオプションメカの礼として、ゆかと一平に宅配ピザをおごるという気前の良さで稼いだ好感度を、 振り向きざまに地面に叩きつける勢いで最低だ……!
 迫り来る本当の敵という名の無計画な身内を水鉄砲で迎撃してその場を切り抜ける大地であったが、 その際の金に物を言わせる言動がきっかけで、カナに愛想を尽かされてしまう。
 「おごってもらってどうもありがとう。だからって私たち大地の家来になったわけじゃないもん。あんなこと言う大地なんてだいっきらい」
 カナ&友人ズは大地に買ってもらった商品をその場に置き捨てて去って行き、お金で人の心は買えないのであった!
 与り知らぬ事とはいえ、不正な形で得た金で買った物品をそのまま自分のものにしてしまわなかったのはホッとした所で (食事はしましたが……)、このショックにより金銭的熱狂の冷めた大地は、肝心のお使いの買い物をどこかへ忘れてしまった事に気付き、 慌ててスーパーへと戻る。
 一方、大地の豪遊について公衆電話から母に問い質す一平は……
 「あんた大地のお駄賃巻き上げるつもりなの?! いい加減になさい!」
 日頃の行いの悪さからぶちっと電話を切られ、ゆかと一平からも非難囂々(笑)
 ところが街では桜カードを巡る異常事態――恐怖の買い物ゲームが新たな局面を迎えており、カード内部の10万円を使い切った途端、 それを読み込んだレジが煙を噴き上げながらカウントダウンを開始。現場に居合わせたコメディリリーフ巡査が慌ててレジを抱えて外へ飛び出すと、 放り投げた空き地で、割と派手に爆発するレジ(笑)  今回のエピソードはこれが“スイッチ”となっていて、Cワールドにおける破壊活動の結果が現実世界に飛び出す事で、 フィクションとして飛躍するのですが(このスイッチの機能が不十分だったのが洗脳塾回)、 ここまで空回り気味のコメディリリーフでしかなかった巡査が、その正義感と職業意識を発揮して命がけで市民を守る姿を見せるシーンになったのも、良かったです。
 そして地面の陰から順々に顔を出し、
 巡査「レジが爆発するなんて……」
 直人「こんな事が出来るのは……」
 一平「きっとカーンデジ」
 ゆか(一平の口を塞ぐ)
 というのは非常に面白かったです。
 巡査の言葉から桜カードとレジ爆発の関連疑惑を知ったところでGコールが鳴り響き、主題歌をバックにジャンクの元へ、というのも綺麗な流れ。
 「出動だ、直人」
 「アクセーース・フラッシュ!」
 Cワールドへ入り込んだグリッドマンは鋼鉄怪獣とご対面し、一平が怪獣の分析をしている間に、大地の姿を探すゆか、 がごく当たり前のように商店街の防犯カメラをハッキングしているのですが……つまるところゆかは、 杉村升世界の科学者(大変ナチュラルにキ印)みたいなものだと思っておけばいいのか。
 善でも悪でもなく、『グリッドマン』世界では、プログラマー=マッドなのだ!
 グリッドマンが鋼鉄怪獣のビーム反射特性に苦戦し、大地がレジ大爆発に巻き込まれる寸前、 第3のオプションメカであるゴッドタンクが送り込まれると、実体弾により怪獣を蜂の巣に。 この攻撃で怪獣のビーム反射クリスタルが破壊された所にグリッドビームを叩き込むと怪獣は消滅、グリッドマンはCワールドを修復し、 レジ大爆発は辛くも回避されるのであった。
 最後は、不正カードによる支払いは不成立という事になったのか、大量の支払い請求が翔家を訪れる、でオチ。 これはこれで割と酷いのですが、レジが爆発した所でエピソードのリアリティラインが切り替わっている為に、 十万円狂騒曲の因果応報としてスッキリと見る事が出来ました。……今作最大の邪悪が、なんだか勝ち逃げしている感じなのは気に掛かりますが(笑)
 個人的に苦手な監督と脚本家で少し身構えていたのですが、今回はなかなか面白かったです。

◆第12話「怪盗マティに御用心!」◆ (監督:小中和哉 脚本:右田昌万)
 「何者だ?! ふん!」
 見所は、藤堂家に入った空き巣を気合い一発、モニターの中から放った電光で撃退するカーンデジファー様。
 「馬鹿者め!」
 高らかに勝ちどきをあげ、カーンデジファー様、かっこいーーー!
 「カーンデジファー様、今の男は……?」
 「馬鹿者! 見知らぬ男を入れるとは、何事だ!」
 若い女の子がそんな事ではいけません! とか続きそうな勢いですが、これは一歩間違えると、 電○文庫あたりから出ちゃうぞ、『我が家の魔王さま!』(著・藤堂武史)。
 自室に仕掛けた防犯カメラの映像を解析した武史は犯人の顔を割り出し、 これで人格が真っ当なら物凄く有能な人物である事を久々に思い出させてくれましたが、 『グリッドマン』世界ではコンピュータースキルの向上と人間としてのクズ度が比例するのが真理なので仕方ありません。
 カーンデジファー様に追い払われた空き巣の正体は、忍び込んだ家の金庫に、 何も獲らずにクマのぬいぐるみだけを置いていく事で巷を騒がしている怪盗マティ。そしてその真の姿と目的は、 ハッキング技術を活かして元々の防犯装置を無効化し、住人の危機感を煽ったところで自社のセキュリティシステムを売り込もうという、 警備保障会社の営業マンであった!
 『グリッドマン』世界ではコンピュータースキルの向上と人間としてのクズ度が比例するのが真理です。
 馬場家もこの被害に遭い、ショックでソファに転がっている父の姿を見るや、
 「父ちゃんになんかあったんだ……父ちゃん!」
 と血相を変えて家に駆け込む一平、いい奴。
 今作ではそれぞれの家族がそれぞれの正義の背景に直結しているので、こういったシーンを挿入してくれるのは、良いところです。
 一方、坊主憎けりゃ袈裟まで憎いマッチ一本テロの元、を行動原則とする武史&カーンデジファー様は、 キャッツアイ警備保障のCワールドに磁力怪獣を送り込み、セキュリティシステムを書き換え。それにより、 椅子からひっくりかえて頭を打ったゆか兄が、暴走した防犯システムがドアや窓に流す電流により、外に出られなくなってしまう。
 ……まあ、これが《レスキューポリス》シリーズだったら家が自爆するので、今回ばかりは、 良心的だな武史&魔王(笑)
 怪盗に大事なサインボールを盗まれたと勘違いした一平は復讐に燃え、翔家に仕掛けた罠がどんぴしゃり。 捕らえた営業マンの見苦しい言い訳を聞き流して警察へ引きずっていく途中でこの騒動に行き会い、自宅のセキュリティを開けさせようと、 怪盗の胸ぐら掴んでひきずっていくゆか、『グリッドマン』世界ではコンピュータースキルの向上と(以下略)
 セキュリティの異常にカーンデジファーの影を感じたところでGコールが鳴り響き、アクセスフラッシュ。 全身にカメラのストロボのようなものをつけた磁力怪獣の破壊光線を浴びたグリッドマンは、 かつて耳にした事のないような悲鳴をあげて悶絶。
 井上家の玄関先では、営業マンが必死にセキュリティを解除しようとするも感電を繰り返し、 室内では白目を剥いたゆか兄がぴくぴく……というのは映像が完全にギャグに振って描かれる為、 どこまでタイムリミットサスペンスとして盛り上げようとしていたのかは、謎。過剰に描かないと間が持たなかったのかもしれませんが、 個人的には冗長かつちぐはぐに感じてしまいました。
 グリッドマンの危機に、一平は営業マンに貰ったロボットの玩具から3つのオプションメカの合体を思いついて急遽ゆかがプログラムを組み上げ…… ゆかが即興でプログラムを完成させるのは毎度の事として、なにもその場で思いついたのではなく、 わざわざ3つもメカを作ったのは最初から合体ロボにするつもりだった、でも良かったような。
 最終的にマイルドに着地させる為に営業マンにポイントを稼がせる意図があったのかもですが、営業マンが変形ロボットで小学生女児 (カナ)の気を引こうとするくだりはあまりに強引でしたし。
 なにはともあれ、ジェット・ドリラー・タンク、3つのオプションメカが変形合体し、 ビックリするほどサイ○トロン総司令顔のサポートロボ、ゴッドゼノンが誕生。
 ジョイスティックで操縦されるゴッドゼノンは怪獣に真っ正面から立ち向かうと、ゴッドパンチ(いわゆるロケットパンチ) で磁力バリアーと角を破壊。奮闘の果てにエネルギー切れを起こすも、その間に力を溜めたグリッドマンのグリッドビームにより怪獣は撃破されるのであった。
 Cワールドの正常化により井上家の玄関扉は開いてゆか兄は医者である父に救出され、 自身こそ怪盗であると口を滑らせた営業マンも己の罪を認めて逮捕される事に。
 「ゆかの兄貴、異常なかったんだ?」
 「ま、普段からおかしいけどね」
 と、辛辣な一言に、一平のサインボールを無断で拝借したのは、露骨に誤魔化す素振りを見せていた腐れ外道妹だった、でオチ。
 ゴッドゼノン誕生のくだりをスッキリさせればもっと面白かったと思うのですが、余分な段取りを足してしまった印象。 ゲストの好感度が高ければともかく、率直にかなりの下衆野郎なので、ゲストのお陰で……というのが劇的な面白さ(見ていての嬉しさ) に繋がらず、仕掛けが空振りになってしまいました。
 ミリタリー系の専門雑誌を参考にオプションメカを描いてしまう一平が、子供のおもちゃから合体ロボを閃く、 というのも今ひとつスッキリ繋がりませんでしたが、考えてみるとバリアシールドはスペシャルドッグからの連想でしたし、 日常からのインスピレーションや視聴者目線とのシンクロという観点でいうと、むしろ間に挟まったオプションメカ3つの方が、 連続性を崩してしまった、と見た方がいいのか。
 次回――更なる力を纏う時!

◆第13話「スポーツなんか大嫌い」◆ (監督:北村義樹 脚本:平野美枝)
 路上に屈み込んでスポーツクラブのプールを覗きながらやに下がる直人と一平……あと2歩ぐらい後退すると、 主に『仮面ライダー5○5』組の男達が集う、一度落ちたら二度と這い上がれないさいてー墓場にまっしぐらな立場な事は、 よくよく自覚してほしい。
 お主も悪よのう、と薄汚れた男の友情を確かめ合う直人と一平だが、筋肉質な水泳コーチがゆかにベタベタと馴れ馴れしくしているのを目撃すると嫉妬の炎を燃やし、 クラブを出る2人を尾行。いっけん爽やかなスポーツマン風のコーチはコーチ(若く見ても大学生)で、 「巡り会う運命だったんだ」とゆか(中学生)をナンパし、どっちもこっちも犯罪者予備軍ばかりだ!
 真性の変質者なのか、ゆかが病院の娘と知って近づいているのか(恐らく後者)、どちらにしても大変クズいコーチですが、 変な色のジャンパー・わざとらしい金色のネックレス・酔っ払った詩人のような喋りと視線、とビジュアルといい台詞回しといい、 これでもかと好感度を下げに行くキャラ造形から迸る、こういう男に引っかかってはいけません、というメッセージが番組史上最高に強い(笑)
 ゆかとコーチのやり取りが気になって仕方ない尾行班だが、反対側から武史がやってきて足を止めるという、 恋の逆恨みがシンクロして白が黒にひっくり返りそうな悪魔のサンドイッチ。
 「ゆかちゃんの友達?」
 「学校は、同じだけど」
 当然の反応ではあるのですが、武史ーーー(涙)
 「同じ学校かぁ。君、貧弱な体してるなぁ。スポーツで鍛えた方がいいぞ」
 マッスル価値観で武史を露骨に見下すコーチはスポーツクラブの無料招待券を武史のポケットにねじこみ、うんこいつは、 ちょっと酷い目に遭ってもいいんじゃないかな(笑)
 「鍛えれば、僕のようになるのも夢じゃないんだぞ。ひ弱な男は、女の子に嫌われちゃうぞ」
−−−−−
 匿名「地球をまも……えー……大学で量子力学の研究をしている20歳です。どんなに一生懸命仕事をしても、 職場の同僚女性から「子供」「子供」とからかわれます。どうすれば、彼女の見る目を変える事ができるでしょうか?  真剣に悩んでいます」
 ○宮「筋トレですね。筋肉は全てを解決します」
−−−−−
 「ほっといてくれ!」
 武史はその場を走り去りながら無料招待券を地面にぶちまけ、物陰から出てきてそれを拾った直人は、 さいてー墓場の崖っぷちから雄々しく立ち上がり、男として生まれ変わる事を決意。
 「決めた。俺はやるぞ!」
 筋肉への嫉妬を原動力に直人&一平はスポーツクラブで筋トレを始め……先程、5年後の時空のお便りコーナーと混信がありましたが、 今回、配信視聴が重なっていた『ウルトラマンガイア』において私脳内でだけ展開している我夢vs藤宮の筋肉を巡るバトルとあちこち絶妙に重なってしまい、 単品で見ているのより2割増しぐらいで面白くなってしまいました(笑)
 直人&一平が「ヘイッ! フゥ! マッスルボーイ! マッスルボーイ!」に励んでいる頃、武史は自宅で、 無関係なボディビルダーの写真にダーツを投げつけ穴だらけにしていた(酷い)
 「どうした? 機嫌が悪いようだな、武史」
 基本的に実利のある悪魔の懐柔策ではあるのですが、先日の空き巣撃退の一件以来、 カーンデジファー様が武史の保護者めいて見えて仕方ありません(笑) このままだと、何とかして授業参観に来そう。
 「あの筋肉男……僕を貧弱な体だって嗤った。井上ゆかの前で、僕を馬鹿にしたんだ」
 「ふふふふふふふ……何をやる気だ? 感じるぞ、おまえの怒りを」
 「鍛えた体がなんだってんだ。スポーツが得意だからって……威張る奴なんか許せない」
 おまえの「ふぉ?!」を作業用BGV仕様にしてYoutubeにUPしまくってやるぜ藤宮ーーー、じゃなかった、 逆恨みの炎から危うくシンクロ寸前だった武史と直人ですが、ここで直人が自ら体を鍛えようとするのに対し、 武史はあくまで周囲を巻き込む嫌がらせで溜飲を下げようとする、というのが鮮やかな対比。
 雑な部分はありつつも、今作、こういった構造の見せ方は実に巧く、直人も主人公らしいところを見せてくれました。
 日頃の運動不足の解消の為、偶然にも3家の父親達が揃っていたスポーツクラブに武史は電気怪獣(凝った造形で格好いい)を送り込み、 健康管理プログラムを改竄。暴走し、必要以上の負荷がかかるようになったマシンから離れる事もできず、 父トリオは強制的に限度を超えた運動を課される事に。
 システムを止めるように促されたコーチは、今作名物になりつつある謎感電に阻まれると我が身可愛さに逃げ出すという醜態をさらし、 やり口はともかく今回に関しては武史の悪意が下衆男に相応の制裁を加えているのですが、 今作はあまりそこにカタルシスを与えてはいけない構造ではあり(父トリオが死にそうですし)、 その一方であまりに感じ悪いコーチの造形を考えると、物語のアクセントとして敢えて一度、タブー寄りの作劇を試したのかな、 とも想像されます。
 そしてくしくも、謎感電にめげずに人命の為にセキュリティ解除に挑戦し続けた怪盗マティは、 同じクズでもまだ誠意と根性があったのだな、と回またぎでちょっとしたフォロー(?)。
 「ふふふはははははは……」
 マントを脱ぐと実は貧弱なのか、スポーツクラブの混乱を喜び番組史上最長の高笑いを響かせるカーンデジファー様。
 「体なんか鍛えなくても、僕には頭があるんだ」
 藤堂武史=平行世界の高山我夢の一人であり、カーンデジファー様もまたウルトラマンのネガ存在なのではないか、 という疑惑が私の中で急浮上しています(笑)
 スポーツクラブではGコールが鳴り響き、直人はジャンクからアクセス・フラッシュ。 先制の飛び蹴りを決めるグリッドマンだがエネルギー吸収攻撃を受けてピンチに陥り、 ゆかは一平が冒頭からデザインしていた新ギミックを突貫プログラム。父トリオとグリッドマン、双方の死がリアルに迫る中 (そういえば、Cワールドでグリッドマンが消滅した場合、合体している直人がどうなるのか説明も確認もされていないような……)、 ギリギリでプログラムが完成し、ゴッドゼノンを構成する三つのオプションメカが、主題歌をバックにグリッドマンと超人合体!
 グリッドマンが宙返りからゴッドタンクの上にびしっと着地、という変な格好良さを持ったアクションを皮切りに、 〔タンクが脚部に合体(ドリルが怪獣を攻撃して妨害) → ドリルが両腕に合体(ジェットが怪獣を攻撃して妨害) → ジェットが顔面から胴体に合体〕と、3つのメカが援護攻撃と合体を順々に行っていくというこだわりの合体シークエンスで、
 「名付けてサンダーグリッドマン!」
 が誕生する。
 全身をオプションメカの装甲で覆ったサンダーグリッドマン、ウルトラマンから戦隊ロボにというか、 グリッドマン本体がほぼ隠れてどこにも面影が無い、という大胆なデザインなのですが、パワードスーツ的なものだと思えば、 今作らしい方向性といえるでしょうか。1クール目の締めにして、明確に《ウルトラ》シリーズとの差別化が打ち出された強化展開、 という面では好印象。
 打撃戦は迫力があり、敵怪獣も格好良かっただけに、トドメのショルダードリルアタックが映像的に凄くざっくりだったのは残念でしたが(^^;
 グリッドマンが怪獣を撃破してスポーツクラブのシステムは修復され、父トリオも九死に一生を得るが、 原因不明とはいえ多額の賠償問題に発展しそう(たぶん街の名士でもある井上父は徹底的にやりそうだし、 直人父は人は好さそうだけどれっきとしたマスコミ関係者だったり……)で、どう足掻いてもクラブの評判は落ちそうであり、 今回に関しては武史&魔王様の「スポーツの楽しみを苦しみに変えてマッチョ撲滅計画」は部分的に成功を収めてしまった気がします。
 後日――
 「プール覗くのが趣味なんだって? 直人」
 「え?」
 「一平が白状したもんね。言っとくけど、私の憧れの君はね、見かけ倒しの筋肉モリモリ男なんかじゃないわよ!  あんな意気地無し、幻滅しちゃった!」
 その剣幕に顔を見合わせる直人と一平に、ニヤリと笑ってみせるゆか。
 「……ふふーん、私の憧れの君はね、グリッドマンに決まってるでしょ!」
 「なーんだよ〜…………待てよ。グリッドマンてことは……」
 やっぱり筋肉なのでは(笑)
 そして、ちょっと強引な俺様(声は二枚目)。
 …………は?! こうやって属性を並べてみると、ハイパーエージェントさんは、実は、ミステリアスな王子様ポジなのでは。
 「え? ええ?」
 「なーにドギマギしてんだ直人!」
 「してねぇよ〜」
 グリッドマン=俺?! とちょっとドキドキしてしまう直人を煽る一平は、ゆかにケーキを貰えれば嬉しいし、 ゆかが知らないイケメンとイチャイチャしていたらムッとするけど、それが明確な恋愛感情というわけでなくあくまで友情の延長線上なので、 3人で楽しいのが一番(だから直人とゆかがくっつく分には無問題)、というのは、 もしかしたらこのまま高校生ぐらいになると物凄く悩むのかもしれないけれど、今はまだそんな場所に立っている、 というのが切り抜かれていて、思春期の入り口、子供と大人の端境期の存在として、印象深いスタンス。
 父親に対する心配のストレートな表現などからも、3人組の中では一平が一番、「子供」寄りなのでしょうが、 そういった少年期の瑞々しさの描き方は、今作の長所の一つです。
 また、多分に実家の太さに支えられている面はありますが、全国トップクラスの秀才・天才的プログラマー・ケーキ作れる・ ピアノ弾ける・スポーツも出来る、とドンドン完璧超人に近づいていくゆかは、あまりのハイスペックぶりが、 一周回って面白くなってきました(笑)
 今作がある種の少年探偵団ものの構造を有していると考えると、直人・一平と対等に接するゆかのベースにあるのは、 小学生主人公グループにおける“お転婆”キャラなのでしょうが、それに年相応の知性やスキルを与えた上でヒロイン的役割も担わせたら “マドンナ”属性も加わった究極生命体に近づいてしまい、これで“委員長”属性持ちだったらまさに完全存在だったのですが、 あまりの眩しさに、接する武史が浄化されてしまうかもしれない……。
 「い、井上ゆか、な、何故、僕のクラスと出席番号を把握した上にハンカチを貸したりしてくれる……?! や、やめろ、 僕をそんな目で見るな、ぐ、ぐぁぁぁぁぁぁぁ……! ………………ヤア、僕ノ名前ハ、藤堂武史。 コンナ僕ニ優シクシテクレテアリガトウ(焦点を失ったつぶらな瞳)」
 その二人と比べると、直人は戦闘中に人格が消滅してしまう点がやはりネックなのですが、 完成された正統派主人公にしすぎない為に与えた年相応の未熟な部分が、今のところ概ね最っ低ポイントに変換されてしまっている為、 今後の更なる肉付けと株価上昇を期待したいです。
 ナレーション「スポーツ。それは肉体を鍛えるものだ。しかしそこには、健全な精神も必要なのだ。頑張れ、直人、ゆか、一平!  グリッドマンの活躍は、君たちにかかっているのだから」
 最後はナレーションさんが綺麗にまとめ、「健全な精神」というのは今作の「正義」を支える大きな柱なのですが、 ゆかを巡る嫉妬に関する直人&一平と武史の行動の違いがそれを象徴し、しかし体を鍛えてさえいれば健全な精神が自然に伴うわけではない、 と一方的な価値観を押しつけないのが本編内容とナレーションの言い回しで示されているのが絶妙で、 『グリッドマン』らしさが巧くまとまったエピソードでした。
 次回――武史、今度は目覚まし時計をグリグリと踏みつける。

◆第14話「あやつられた時間」◆ (監督:北村義樹 脚本:静谷伊佐夫)
 一平、朝から盗撮行為。

 もう駄目だ、君は、さいてー墓場行きだ。

 名前も知らない他校の少女に懸想し、毎朝の通学時間をチェックして隠し撮りを続けていた一平は、 ジャンクでツーショット写真を捏造するというさいてー墓場に顎の先までどっぷり使っていたが、ゆか情報により、少女の名前と、 一週間後に引っ越してしまう事が判明。情熱の炎を燃やして立ち上がるとストーカーを卒業し、 7日でプロポーズまでこぎ着ける妄想計画を設定する。
 一方、目覚まし時計の故障で遅刻した武史はその憤りを全世界にぶつけようと本日も逆恨みを拡大し、 グリニッジ標準時センターに送り込まれるメカ結晶怪獣(第1話の再生強化怪獣)。
 初めは世界中の時計が10分ズレただけの被害だったが、怪獣の破壊活動が続くと時計から催眠光線が放射され、それを浴びた人々は、 狂った時間に疑問を持たずにそれに合わせて行動するようになってしまう。
 朝のニュースは途中から昼のニュースに切り替わり、シドニーマラソンは24時間終わらず、 シュールな空間に飲み込まれていく世界はもはや、時計が狂っているのではなく“時計に支配された人々が狂っている” と主旨が変わってきており、恐るべきはCワールドの影響による催眠効果なのですが、認識した時間通りに行動する事に縛られ、 開店と閉店を繰り返す一平父、ひたすら朝昼晩ご飯を作り続ける一平母など、ここまでやってくれるとぶっ飛んでいて面白い。
 「いいぞメカギラルス、その調子で人間社会を混乱させ、地獄に陥れるのだ!」
 ビルの谷間にシルエットまで浮かび上がらせ、かつてなく魔王っぽいカーンデジファー様だが、 催眠を逃れていた直人とゆかがGコールを受け、アクセス・フラッシュ。人工衛星を経由し、 国境を越えてグリニッジのCワールドに突入したグリッドマン、今日もピンチでジェット出動。
 ……仕方ない面はありますが、最近、素のグリッドマンがとっても役立たず。
 また、催眠の影響を受けた一平が機能停止中の為、戦闘の合間に挿入されるジャンク側のシーンが、 工夫の無いゆかのアップの繰り返しになってしまったのは残念。最初は心ここにあらずの一平とボケツッコミもあったのですが、 テンポが悪いという判断だったのか、はたまたネタが続かなかったのか、途中で一平の存在が完全に蚊帳の外に置かれてしまうのは、 状況設定が活かされず面白くありませんでした。
 超人合体したグリッドマンは、拳にエネルギーを溜めて繰り出すサンダーグリッドビームで怪獣を撃破し、 本命の必殺技があったのはホッとしました(笑)
 Cワールドの修復により人々の時間の認識は元に戻り、改めて憧れの君にアタックしようとする一平だったが、 少女には既にボーイフレンドがおり、花束抱えて呆然と見送るのであった……でオチ。
 次回――「ゆか、目を覚ませ! 一平を撃っちゃいけない」
 なんだか、やたらと《レスキューポリス》シリーズっぽい予告(笑)

◆第15話「歪んだターゲット」◆ (監督:村石宏實 脚本:平野靖士)
 完璧超人ゆかは、《射撃》スキルも一級品。
 巷で大人気のVRガンシューをプレイ中、いつまで経ってもゲームオーバーにならない為、 店員に強制終了させられてしまった武史は大激怒。今回も逆恨みの発端に一定の責任があるパターンですが、せめて、300円返せ。
 「成る程。そのゲームを襲って、混乱を生じさせるわけか!」
 何が成る程なんですかカーンデジファー様!
 利益共同体でありつつ、基本的にはカーンデジファー様が主で武史が従なのですが、時々、 武史がカーンデジファー様を巧くノせているような構図になるのも面白いところ(笑)
 ちょっと間の抜けた雰囲気がカーンデジファー様の愛嬌として絶妙に機能しているのですが、この人、こんな調子でなんか凡ミスして、 ハイパーエージェントに追われる身になったのだろうなぁというのが容易に想像できます。
 一方、週末に3人で遊びに行く話し合い中、あまりに上の空な直人(多分、ゆかの脚を見ていた)の態度にゆかが腹を立てて喧嘩になり、 調子よく間に入った一平と二人で遊びに行く事に。これは実質デートである、と気合いを入れておめかしした一平は直人の発言を適当に捏造して火に油を注ぎ、 通りすがった小金巡査にからかわれたゆかは、ますます立腹。
 「どうしたんだよ? なんか俺悪い事したっけ?」
 「直人よ! 2人だけで仲良くやれなんて。小さい頃から3人で遊んできたじゃない。ジャンクだって、3人居たから作れたのよ!  グリッドマンだって、直人だけじゃ困るんじゃくて?!」
 「そうだよな。ごめん。悪かった」
 3人の関係の大切さを自覚せずに適当な出任せを言った一平@さいてー、素直に謝る(笑)
 「なーんで一平が謝るのよ?」
 「いや、それは……とにかくさ、今日のところはぱーっとゲームやって楽しもうよ」
 そして、誤魔化す(笑)
 即物的な一平のさいてーぶりに対し、女心にはとんと疎いのに、言わずとも俺の気持ちは汲み取ってくれよ、 という素振りから濃厚な駄目男感の漂う直人は、自分抜きで一平とゆかが遊びに行った事に自宅で悶々としており、 その隙に日記のハッキングに再チャレンジしなくて本当に良かった。
 途中で電話をかけてきて俺も誘ってくれないかな……と虫の良い期待に落ち着かない直人の姿を幾度か挿入する事で、 直人からゆかへの友情以上恋愛未満の感情がハッキリと掘り下げられる一方で、 幼なじみの関係性が織り成すトライアングルのバランスも強調される、というのが思春期の端境期にある少年少女をメインに据えた上での、 今作の丁寧な部分。児童層向けのヒーロー作品に、もう少し上の年齢層を視野に入れたジュベナイル作品の構造を取り込んだ設計が、 巧く噛み合わされています。
 ところが、ゆかがガンシューをプレイ中に、今回も音声機能が搭載された再生忍者怪獣がゲームセンターに送り込まれ、 Cワールド破壊の影響により、ゲームの銃から本物の光線が!(笑)
 第2話において、密接に絡み合った世界であるCワールドの破壊がHワールドに影響を与える事は示唆されているので、 “そういう作用”が発生したという事なのでしょうが、インフラ破壊路線でない時は、このぐらいトンデモに振ってくれた方が、 個人的には好き(笑)
 一平から連絡を受けた直人が目にしたのは、VRヘルメットを被ったまま外へ飛び出し、街中をゲームのフィールドと認識したまま、 実際に破壊力を持った光線が出てしまう銃を振り回すゆかの姿。
 「一平、どうなってるんだ?!」
 「俺にもわかんねぇんだよ! でも俺のせいかもしんねぇ。俺がおまえとゆかに嘘ついたから!」
 デリカシーに欠けるところはあるお調子者だけど、嘘や誤魔化しをつき通せない根の善良さが端々で顔を出すのが、 一平は好感度が下がらずに良いところ。まあこの屈折の無さというのは直人よりも一平の子供っぽさの発露といえ、 もう少し思春期の屈折が入っている直人の方が、キャラの対比としては割を食っている要素はありますが。
 Gコールが鳴り響き、ジャンクの元へ向かおうとする直人だが、通りすがりの小金巡査をターゲットにしたゆかを気遣う一平は、 その場を動けない。
 「どうしたんだ一平! おまえが行かなきゃグリッドマンは出動できないんだぞ!」
 「でもゆかが……」
 「ゆかを助けたきゃ行くんだ!」
 この割り切りの早さにはやはり、某正義のエージェントと同様の症状を感じずにはいられないのですが、大丈夫か直人、 最終回で大変な事になってしまわないか直人。
 「ゆか! 必ず助けに来るからな!」
 むしろ今、風前の灯火なのは巡査の命。
 ジャンク部屋に駆け込んだ直人はアクセス・フラッシュし、一平のコールで出動したグリッドマンは、本日も背後から先制の飛び蹴り。
 「おのれー! 不意打ちとは卑怯な」
 言 わ れ た(笑)
 グリッドマンは忍者殺法に苦戦し、サポート要員の片方が行動不能、という前回と逆のシチュエーションで展開。そして、 一平は行動不能でも一切問題がなかったが、ゆかが不在だとオプションメカが送り込めない、という非情な格差。 3人組の役割分担がハッキリしているのは今作の長所ですが、特に戦闘中は、一平よりもゆかの存在の方が重要、 というのは今作の特徴的なスタンスではと思います。
 破れかぶれでキーボードを連打していた一平は、まぐれ当たりでオプションメカを送り込む事に成功し、グリッドマンは超人合体。 それを見届けた一平はゆかの元へ急ぐが……そこでは華麗なカバーアクションを決めるゆかが、小金巡査の呼んだ増援の警官隊と、 ビームピストルで銃撃戦に突入していた。
 MAY DAY! MAY DAY!
 レーザー銃を撃ち落とせ、という命令らしいのですが、警官隊が思いきり撃ち返していて、ヤバい。そしてその銃弾を、 軽快なジャンプでかわすゆか。
 現場に飛び込んだ一平は必死に呼びかけ、その叫びがVRシステムの呪縛を打ち破りかけるが…… 好感度が足らずに《説得》コマンドに失敗。
 やはり、日記盗み読み(未遂)の件が致命的な選択ミスだったと思います。
 近距離からの一撃で、危うくピンクの脳漿をぶちまけそうになった一平はパイプにつまずいて転んだお陰で九死に一生を得、 Cワールドではサンダーグリッドマンが忍者怪獣と激闘中。
 今作、今回のようにBパート早々にアクセス・フラッシュするようなエピソードで立ち上がりに主題歌を使うと、 どういうわけだかこれといったバトルBGMが他に無いらしく、無音の中で非常に平板な殴り合いになってしまい、 特段盛り上がりのないまま淡々とHPを削られた忍者怪獣は、「……悪こそ、最高の美学……!」 という脈絡の無いマイクパフォーマンスを遺して、サンダーグリッドビームの直撃で消滅。
 「ゆか、ゲームは、終わりだ」
 一平が「この者、さいてーの嘘つき」で銃殺刑寸前、VRヘルメットの中にグリッドマン王子の映像が浮かび上がるとゆかは正気に戻り、 辛くも事件は解決するのであった。
 暴走自動車回において、直人父をいち早く「暴走車を止めたヒーロー」として扱った小金巡査が、今回は率先してゆかを 「純然たる被害者」として扱う事により、メインキャラから逮捕者を出す事なく事件を表向きの大団円に繋げる、 という重要な役割を果たしているのですが、小金巡査は井上父から幾らもらっ(それ以上いけない)。
 「まったく、抜け駆けしやがって」
 後日、一平の謝罪に対してもらしたこの一言を聞きとがめられた直人は笑顔のゆかと腕を組んで二人でデートへ。 懲りない一平がしつこく二人を追いかけ、結局、真ん中に入ったゆかが両サイドの直人と一平と腕を組んで歩く事になり、 直人! ゆか! 一平! ナ・ユ・イ! ナユイ ナ・ユ・イ! じゃなかった、幼なじみの関係は、 今はまだこのままなのであった。
 しかし、明らかに一平との腕の組み方が浅いのが、残酷なリアルです(笑)
 まあそれによりゆかが、幼なじみの関係を大事にしたいという建前を盾にして、 男2人を弄んだり思わせぶりな言動でニンジンをぶら下げる悪女にならずに済んでおり、 キャラクターとしての可愛げに繋がっているのは良いところ。
 「どうなっとるんだ? あの関係……?」
 薄汚れちまった大人である小金巡査は3人の後ろ姿を見て首をひねり、ナレーションさんが 「軽い気持ちの嘘が人間関係をぶち壊す事もあるから気をつけようね!」と綺麗にまとめて、つづく。……まあ、 一平の嘘が3人の関係性を破壊しそうなほど悪質なものでもなかったので(明らかに3人の関係性の方が強い)、 そういうエピソードだったの……? というまとめになりましたが。
 にしても直人、なんというヒーロー感の薄い衣装(黄色いポロシャツ)。

◆第16話「一平、チビる!?」◆ (監督:村石宏實 脚本:神戸一彦)
 一平、2話連続で眉間に銃を突きつけられる。
 警察署の防犯システムに異常が発生し、銀行強盗一味の一人が警官の拳銃を奪って逃走する……という、思わぬシリアスなトーンでスタート。
 「ふふふふふふ……思い知ったか。僕を泥棒扱いした警察が悪いんだ」
 その影には、自転車の無灯火運転を咎められた上に盗難の容疑をかけられ、 警官にいびられて憎しみの炎を燃やす武史が送り込んだメカ弾力怪獣の姿があり、事件発生 → 発端を回想、という変則的な導入。
 市民は家に閉じこもり、異様な緊張に包まれた街を警戒するパトカーが走り回るが、怪獣は更に警察の情報システムを破壊し、 警官達は次々と舞い込む犯人目撃の誤報に振り回される羽目に。
 そんな混乱状況の中、ジャンク地下室に身を隠していた逃亡犯・鬼丸信三(演じるのは、 『仮面ライダーストロンガー』のゲスト出演時、改造後より改造前の方が怖かったり、今作と同年の『特捜ロボ ジャンパーソン』では、 伝説の精神注入棒エピソードの熱演が印象深い丹古母鬼馬二さん)に、一平が人質として監禁されてしまう。
 消えた一平を探す内、警察の混乱の背後にカーンデジファーの影を感じる直人とゆかだが、 肝心のジャンク部屋に凶悪犯が立てこもっている状況をどう切り抜けるのかと思ったら、部屋で犯人と鉢合わせした直人が取っ組み合いになり、 完璧超人が後頭部に金属バットを振り下ろすと拳銃持った凶悪犯がすたこら逃走して大変がっくり。
 こういう時こそコンピュータースキルを活かした機転を描いてほしかったのですが、凶器を持った犯罪者に、 偶発的とはいえ中学生パーティが正面から何の工夫もなく勝利してしまう、という一番残念な展開になってしまい、 折角の状況設定を全く活かせませんでした。
 Cワールドに乗り込むグリッドマンだが、左手に鋼鉄パンチを取り付けたメカ弾力に苦戦し、 そんなグリッドマンの苦戦をたっぷり眺めてから支援メカを送り込むセコンドの二人は、何か直人に含む所があるのか心配になります。
 そして地下室から逃走直後は完全に無視していたのに、タンクを送り込んでから急に警察に電話をかけ、 繋がらないとなると犯人が口にしていた現金の隠し場所へ向かう一平、というのはさすがに不自然。
 前回−今回と、〔Bパート早々にアクセス・フラッシュ → 怪獣と戦闘開始後にサポートキャラが外へ → CワールドとHワールドで物語が交互に進行する〕同じ構造になっており、 戦闘中の一平とゆかをワンパターンにしない・尺の長い戦闘シーンを単調にしない為に別のサスペンスと組み合わせるという工夫は見えるのですが、 結果的には話の流れに無理が出た上に、 ひたすらグリッドマンが苦戦を続ける戦闘が細切れに挟み込まれてダラダラと間延びしてしまう全くの逆効果。
 設定としてはジャンクのパワーとの関係もあるのでしょうが、超人合体もサスペンスと連動できずにやたらな出し惜しみになってしまい (同じ、大技を最初に出さないお約束でも、そこに戦いの流れが有るか無いかで印象が大きく違ってくるのですが、 分割展開が流れをズタズタに引き裂いてしまっている)、なんの盛り上がりも無いままカウンターのアッパーからドリル、 更にサンダービームで怪獣を撃破。
 一平と小金巡査の活躍、そしてグリッドマンによる修復後にゆかが警察に連絡した事で凶悪犯は御用になって街は平和を取り戻し、 ちょっとしたヒーローになった巡査は子供達にサインを書くのであった、でオチ。
 戦闘シーンの尺の長さに関してはオーダーがあって、それをどうにか物語に組み込めないかと考えた末の構成だったのかもですが、 つけた変化がむしろ面白さを削ぐ事になってしまい、残念回でした。

◆第17話「孤独なハッカー」◆ (監督:石井てるよし 脚本:平野靖士)
 「すまない。夕べは直人達が外からアクセスしてきたのだとばかり思っていた。ハッカーの悪戯だと知っていれば……迂闊だった」
 ハイパーエージェント、不覚!
 「スニーカー」を名乗るハッカーによってジャンクがハッキングされ、サンダージェットのデータが盗み出されてしまう。 うちのシマに手ぇ出すとはどこの組の鉄砲玉じゃ、と怒りに震える直人達が、今度来たら蜂の巣にしてやるけんのうとジャンクのセキュリティを強化、 手ぐすねひいて待ち受けているとスニーカーからの再アクセスがあり、ひねくれた性格のハッカーが悪の道に入る前に救うのだ、 とエージェントとしての職業意識に燃えるグリッドマンの発案で、アクセス・フラッシュするとスニーカーのパソコンに直接乗り込む事に。
 「私の名はグリッドマン。コンピューターワールドに逃げ込んだ、魔王カーンデジファーを追ってやってきた、ハイパーエージェントだ」
 直人達と同世代の少年であったスニーカーのPCモニターに姿を現したグリッドマンは、正気を疑う自己紹介を爽やかガッツポーズで行い、 第1話を思い出す懐かしの強引さ(笑)
 「なんなんだこいつ……?」
 狼狽した少年は思わずモニターから距離を取り、そこで始めて、ハッカーの少年が車椅子生活である、と判明するのが上手い演出。
 結局、グリッドマンによる正攻法の《説得》は失敗するものの、戻ってきた直人はきっちりサンダージェットのデータを取り戻し、 ゆかはゆかで、グリッドマンがスニーカーを攪乱している内に、スニーカーのリアル住所を引っこ抜いているのがエグい(笑)
 ……グリッドマンが間に入らなかったら、本気になった完璧超人がスニーカー宅のセキュリティシステムその他に侵入して自宅が自爆したり、 何故かベッドの下から白い粉が出てきたり、銀行の預金残高が0になっていたかもしれないので、良かった、グリッドマンが居て、 本当に良かった……!
 まずは腐れハッカー野郎の顔を確認して家族構成を調べ、場合によって(以下略)してやるかとリアル住所に乗り込んだ3人組は、 スニーカー少年が姉に車椅子を押されるも外出を頑なに嫌がっているところに行き会い、交通事故で両足を怪我し、 肉体的には治っている筈なのに、歩こうとする事そのものを恐れて引きこもり状態という、スニーカーことシゲル少年の事情を知る。
 一方、スニーカーがグリッドマンについて書き込んでいる掲示板を目にした武史が、 これもIDからあっさりスニーカーのリアル住所を割り出すと偵察に訪れており、シゲルが3人と一緒に居る光景を目撃。
 (僕と同じ目をしている……同じだ……僕と同類だ……なのに)
 シゲルから世を拗ねるひがみ根性のオーラを感じ取る武史だったが、 そんな根暗野郎が井上ゆかと半径2m以内の同じ空気を吸っているとは許せない! と嫉妬の炎で怪獣を制作。
 超音波怪獣ニセアノシラスを作り出してパソコン通信ネットワークのサーバーへと送り込み、 パソコン通信を利用している人々を洗脳する事で悪のハッカー軍団を作り上げる!
 直接会って事情を知った直人は、スニーカーを細切れにして瀬戸内海の魚の餌にする考えを改め、 グリッドマンとしてもう一度会いに行こうとするが(ところで今日の直人は、お肌の調子が悪いようで気になる)、 Gコールを受けて緊急出動。
 Cワールドに乗り込むグリッドマンだが、超音波攻撃によって足の分子構造を変えられた事で足の先が石化してしまう大ピンチ。 洗脳されたスニーカーの妨害によりアシストウェポンを送る事が出来ない、というのは、話と繋がったスペクタクルにもなり、 代用品に送るバリアシールド久々登場、の上手い理由付けになりました。
 超音波光線を反射したグリッドマンが、続けて放った電光雷撃剣のダメージにより洗脳が解除され、 スニーカーはモニター越しにグリッドマンの戦いを目撃。ハイパーエージェントの存在が世迷い言で無かった事を知ると、 腰の辺りまで石化が進行し、もはや完全に身動きできないグリッドマンを助ける為の解凍プログラムを作成。
 一方、スニーカーによる妨害工作が止まった事で、ゆか達はプログラムが不完全ながらもアシストウェポンを送り込み、 これも久々にゴッドゼノンが登場するのに納得のいく理由付け。微妙な動き(笑)のゴッドゼノンが怪獣を食い止めている間に、 スニーカーから解凍プログラムが送られてくる、というネットワーク上の連携も面白く決まりました。
 プログラムが不完全な為に動きのぎこちないゴッドゼノン(名演)は怪獣の攻撃で消滅してしまうが、スニーカーが作成し、 ジャンクを経由して送り込まれた解凍プラグラムで石化を脱したグリッドマンは、怪獣のビームを前転ジャンプで回避すると、 その勢いのままグリッドマンキックを叩き込んで怪獣の角を爆砕する! というのは映像の迫力もあって、久々に盛り上がるアクション。
 グリッドマンは弱った怪獣をジャイアントスイングで投げ飛ばしてからグリッドビームで空中フィニッシュし、 ここにカーンデジファー様の魔王ハッカー軍団計画は水泡に帰すのであった。
 「シゲルくん、君の協力を感謝する!」
 「あ、ああ!」
 「私は、足が必ず動くようになると信じて戦っていた。君も足は治っている筈だ。どうして自分の足で歩こうとしない!」
 「違う! 俺の足は……」
 「立ってみるんだ。シゲルくん!」
 爽やかガッツポーズ連打×二枚目声のグリッドマンに促されるも、立てないシゲル。
 「勇気だ! 自分の殻に閉じこもらず、自信を持つのだ。君の心を奮い立たせるエネルギーを贈ろう!」
 グリッドマンはシゲルの部屋にキラキラミストを送りこみ、 あくまでこれはCワールドのシステムを直すだけのものでHワールドの人体に特別な効果は無い筈なので、 グリッドマン自身が奇跡を起こすのではなく、ヒーローはあくまで背中を押すだけであり、 ヒーローの戦いを目にしてそれを助ける為に力を貸した時、既にシゲルは自分の足で立ち上がる力を得ている というのはバランスの取れた構成。
 「さあ、立ってみるんだ、シゲルくん!」
 勇気を出したシゲルは立ち上がり、直人や一平と外で元気にサッカーで遊べるように。 ナレーションさんが綺麗に収めて終わりかと思いきや、カメラはその光景を目にして地団駄を踏む武史の姿をクローズアップ。
 ナレーション「だがたった一人、武史だけは……」
 「どうして僕だけが……どうして僕だけが…………どうしてなんだぁぁぁぁぁ!!」
 自室に戻った武史が絶叫して、つづく。
 ゲストのシゲルは、ハッキングスキルといいグリッドマンに心配されるひねくれた性格といい、 明らかに“藤堂武史であったかもしれない少年”として配置されており、カーンデジファー様と出会う後先、 グリッドマンが手を伸ばせたかどうかの後先、というちょっとした運命の悪戯が盛り込まれているのですが、そこから最後に、 グリッドマンが手を伸ばせずに、グリッドマンの危惧通りに魔王の下僕になってしまった、 “間に合わなかった少年”である武史に焦点を移してつづく、という手堅い作り。
 武史の場合、家庭環境や交友関係など、救済へ繋がる要素は序盤からハッキリしているのですが、類似のキャラを描く事で、 改めて一度それを明示しておく、というメインライターらしい中継地点の配置。
 また、次回のニューウェポンを前に、ここまでのオプションパーツをひとさらいしておく、という意図があったのかと思われますが、 ハッカーの妨害を受けている、という事で思い通りにサンダーグリッドマンになれない理由を作り、それを、 グリッドマンを勝利に導けるのか、ハッカー少年の心を救う事ができるのか、という二つのスペクタクルと重ね、 段階を経て勝利と救済に繋げる、というのがよくまとまったエピソードでした。

◆第18話「竜の伝説」◆ (監督:石井てるよし 脚本:神戸一彦)
 「武史よ、憎悪の恐ろしさを人類に知らしめ、パニックに陥れるのだ!」
 中国で発見された5000年前のミイラが日本の考古学研究所で調査される事になり、その姿に世界に対する怨念を感じ取った武史は、 強化怪獣メカバギラを研究所のシステムに送り込む事で、逆恨み同盟の一員としてミイラを復活させる!
 「うまく行ったぞメカバギラ。おまえが暴れれば、ミイラも暴れる。ふふふふふ」
 研究所にはたまたま、直人父のコネクションにより、ゆか・カナ・大地がケーブルテレビの社員(休日に、 上司の子供の面倒を見る羽目になるもの悲しさよ)と共にミイラの見学に訪れており(直人と一平は塾のサボりがバレて自宅軟禁中)、 次々とミイラに格闘戦を挑む、父部下と研究所の先生が凄い(笑)
 と思ったら、「カメラを回して!」と叫ぶ女子アナがもっと凄かった(笑)
 緊急生中継により甦ったミイラの姿がお茶の間に大写しとなる色々と箍の外れた展開から、 Gコールを受けた直人はジャンクに向かうとアクセス・フラッシュ。
 グリッドマンは、全身に強化が施され、右目が赤く輝く義眼になっているのが格好いいメカバギラに挑み、 ゆか達3人は迫り来るミイラから身を潜めて隠れるが……と今回も二つの局面を交互に展開。
 「ねえ、どうして私たちを追いかけてくるの? お姉ちゃんの事、お姫様だと思ってるんだよ」
 ミイラは、国を守る為に戦い姫と恋仲だったが謀臣に暗殺された英雄、という伝説(あくまでゆか調べであり、 真実性は明確にされない)で背景を彩られており、ゆかにその面影を見ているのではと思わせる話運びなのですが、カナが言うと、 おまえが生け贄になれと促しているようにしか聞こえません(笑)
 まあ、序盤やり過ぎたと思ったのか(或いは視聴者からの反応がフィードバックされたのか)、 ここの所のカナは随分と腐れ外道度が下がって控え目になってはいるのですが。
 一方で、目の前で子供が襲われているのに生中継を優先してそれをカメラに収め続けるカメラマンとリポーターのクズ度の高さが、 段々と『グリッドマン』の芸風になりつつあります(笑)
 あまりやりすぎると、風刺や戯画化を通り越して、“大人が信用できない世界”になってしまい、 それは今作全体として望む所ではないと思われるので、そろそろカウンターが欲しいかな、という気もしますが。
 前回の戦いで消滅したゴッドゼノンはまだ復旧しておらず、グリッドマンは尻尾ブーメランに苦戦中。 相変わらずBGM不足の戦闘にはバリアシールドが投入され、どうにかこの分割展開を盛り上げようという意識は見えるのですが、 どうにもこうにもテンポの悪さを克服できません。
 「あなたが探してるお姫様は、私じゃないわよ」
 ゆかの言葉に反応したミイラの動きが鈍ると、それに連動して怪獣の行動も鈍るが、武史の呼びかけに応えて再び活性化し、つまり、 武史のヒロイン力はゆかよりも高い、という論理的帰結。
 だがこの隙に一平が、ラフスケッチ段階だった新たなニューウェポンを完成させて送り込み、 グリッドマンはドラゴニックキャノンを実装。大砲構えるグリッドマンと棺の副葬品だった竜の飾りを手に姫の想いを語るゆかが重ねられ、 ドラゴンファイヤーであぶってからのグリッドビームで怪獣は消滅。キラキラミストにより研究所のシステムは回復し、 ミイラは再び永遠の眠りにつくのであった。
 果たしてミイラは竜を操る英雄であり、ゆかの言葉はミイラに届いたのか……という点についてのファンタジーは持ち込まれず、 事件はグリッドマンのキラキラミストにより(今作世界においては)物理的に解決し、“その瞬間”のミイラ側については描かない、 というのは良いバランスでした。
 後日、ミイラの写真を見つめながら物思いにふけるゆかに直人と一平は明るく声をかけ、 感傷的になっているゆかを励まそうとして明るく振る舞っているのか、単に乙女心を解さないだけなのか、 それとも水面下でミイラに嫉妬を燃やしているのか、どれも非常に微妙なのですが、 じゃれ合っている間にミイラの写真をばらまいてそのまま走り去る辺り、今日もさいてーポイントをゲットした!
 「直人と一平のどこに明るい未来があるの?!」
 が、塾をサボって軟禁中の実家を抜け出した後だけに、大変リアルです!
 ナレーション「静かに、永遠の夢を見ながら眠っていたミイラは、乾いた現代に、愛の強さを、伝えようとしていたのかもしれない。 ゆかは甦ったミイラに、遙かな時を超えた、ロマンを感じていた」
 ミイラの最期から主題歌アレンジBGMを続け、ナレーションさんが綺麗に落とそうとするのですが、 いったいぜんたい愛の強さはどこにあったのか、なんだかズレた感じで、つづく。
 大地凍死寸前、ドタバタ凶悪犯、と今のところ出来の悪いエピソードが続く神戸脚本回。 Bパートの分割展開縛りは今作全体の構造上問題と思われ、今回の脚本・演出に限った話ではないですが、 「一平のデザインをゆかがプログラム化して送り込む」という従来の段取りを無視して、一平が一人で新武装を送り込んでしまったのは、 致命的失敗。
 3人組の役割分担の面白さが失われてしまっていますし、今作ここまでの積み重ねに反する事で、 ニューウェポンの説得力そのものも著しく欠いてしまいました。新ギミック投入回の難しさというのはありますが、 ゆかの正統派ヒロイン押しエピソードと、一平の閃きの部分も巧く繋がらず、残念。
 次回――《不思議コメディ》からの刺客現る!

◆第19話「セクシー婦警SOS!」◆ (監督:北村義樹 脚本:大川俊道)
 「セクシーアイドルだったんですか? 美咲巡査」
 直人達の住む街の交通課に新たに配属された、人目を惹く美人(というにはちょっと苦しいような……)婦警・美咲麗子。 ドジで運動神経も鈍くて自信を持てない自分を変えたい、と偽名に年齢詐称してグラビアコンテストに応募したところ、 本人もまさかのグランプリに選ばれて雑誌『PUNCH BOY』にピンナップが掲載されてしまい大困惑。 そんな彼女のお尻とミニスカに目がくらむ武史! 武史ーーー!!
 カーンデジファー様は、おまえをそんな子に育てた覚えはありません!
 女の色香に迷った所を、美咲とは対称的なベテラン婦警・藪下雅子(演:柴田理恵)にどやしつけられた武史は、 グラビア雑誌を落として逃走するが、その中には秘密のメモが挟まれていた!
 「なに、秘密のメモを?!」
 「は、はい……怪獣のデッサンや、カーンデジファー様の秘密をメモっといたのですが……」
 メモるな(笑)
 という色々ハチャメチャな回で、ゲスト女優(藤代美奈子)の名前で検索した限り、アイドル企画回……というわけでも無かったようなのが、 どう捉えていいか少々困惑します(ゲストキャラ中心の回なのは間違いないのですが)。
 美咲の予定をチェックした武史は、美容院ごとメモの存在を抹消してしまおうと復活火炎怪獣を送り込むが、 美咲の存在が気に入らない藪下がわけのわからない難癖をつけて代わりに美容院に行っていた為、失敗。ところが、 グラビアと同一人物だとバレるのを恐れる美咲にゆかが思い切って髪型を変える事を提案し、 そこを狙って再びメカ火炎怪獣が送り込まれる事に。
 いっそ証拠隠滅の為に辺り一帯焼き尽くしてしまえと命じるカーンデジファー様に、「そこまでやると死傷者が……」 とかなり今更な反論をする武史だが、洗脳ビームを撃たれてしまい、メカフレムラーが美容院のコンピューターシステムに侵入。 パーマの機械が暴走を始めて直人母が巻き込まれ、美咲も美容院の中に閉じ込められてしまう。
 美咲を気にして美容院を覗いたゆかがこれを目撃してジャンク部屋に戻るとGコールが鳴り響き、 直人達が事件に巻き込まれたり背後のカーンデジファー様に気付く形にしないと面白くないけれど、 そうするとGコールがいつも後出しになってしまう、というのは今作の基本的な難点。……まあハイパーエージェント、 ハッキングは素通しだし、モニターの中から凶悪犯に「馬鹿者め!」ビーム浴びせたりしないし、 セキュリティとしては基本役立たずなので仕方ありません。
 炎であぶられるグリッドマンにバリアシールドが転送されるが、初対戦時は炎を押し返すのが印象的だったのから一転、 盾ごと吹き飛ばされる、というのは強化怪獣として格好いい描写。
 「このままじゃグリッドマン、いや、直人が消滅しちまう!」
 そしてさらっと明かされる、ここまで明言されていなかった衝撃の事実。
 一方、美容院では直人母らが脳を茹でられて割と思い切り死にかけており、店内の美咲は右往左往。
 「君も警官なんだろ美咲くん! 頑張るんだ!」
 (意図的でしょうが)声が裏返るのが格好良くなりきらないものの、駆けつけた小金村はそんな美咲を叱咤し、 もともと正義感と行動力の人とは描写されているのですが、いつの間にやら小金村が、 家族以外のキャラでは“手本になる大人”のポジションになりつつあります。
 ゆか&一平は、ドラゴニックキャノンに変形機構などを加えたダイノファイターを転送し(今回はゆかがプログラムするので、 ますます前回が浮く事に)、支援攻撃で怪獣の喉を破壊。グリッドマンは火を吹けなくなった怪獣に怒濤の反撃を決めて勝利を収め、 美容院のシステム修復に成功する。
 これにより直人母らは九死に一生を得るが、苦しむ市民に離れた場所から声をかけるだけでさして役に立たなかった美咲(まあ、 炎上しつつある店内で勇気を持って市民を励ました、と取れない事はないですが……)が「あなたのお陰で助かったわ」 と感謝を受けて警官としての自信を得る、というのは、ギャグ調とはいえ感電を恐れずシステムに挑んだ例などが以前にあるだけに、 劇的さが不足。人が“変わる”瞬間を切り取るクライマックスとしてのジャンプには物足りず、あくまで個人の心の問題とはいえ、 ヒーローフィクションとしてはもう一押しが欲しかったところです。
 グラビア雑誌をちゃっかり拾っていた小金村は、アイドルと美咲の関係について問い質そうとするも、 積極的にモーションをかけてくる藪下に引きずられていくのであった、でオチ。
 事件の発端となった問題のメモは、美容院での大騒ぎの際に雑誌の間からゴミ箱に落ちて一件落着、とされるのですが、 武史視点だと全く落着していないし、そもそも悪の組織の秘密のメモが闇に葬られてしまったのなら世界にとっても落着していないしで、 2話続けて、ナレーションさんが綺麗にまとめた事にしているけど凄くズレているような! というエピソードでした(笑)

◆第20話「地球から色が消える?!」◆ (監督:北村義樹 脚本:新藤義親)
 本屋でマンガ雑誌を別のコーナーに持ち込んで立ち読みしながらバカ笑いする直人…… 君ももう、さいてー墓場行きだな!(私憤)
 主要男性陣がめでたく全員さいてー墓場送りとなる中、一足先にさいてー墓場に堕ちて手招きしていた一平は立ち読みしていた本からインスピレーションを得ると、 ダイナファイターを強化する新たなアシストウェポン、合体戦闘機ドラゴンフォートレスを作成。
 一方、CGコンテストに応募した武史は、その選評会の中継を、ワクワクしながら見つめていた。
 −「我が良き友等」−
 と武史らしからぬ前向きなタイトルで驚いたら、その内容は、画面の向こうにぐいと邪悪なスマイルを向ける武史の周囲を、 凶悪な面構えの奇っ怪な怪獣達が取り囲んだ上にサイケな色彩変化をするという、強烈な代物で、もうこのイラストだけで、 今回は満足しました(笑)
 そして地味に、武史にとって怪獣=イマジナリーフレンドである、という事実が重いのですが、そんな14歳の作品に対して 「性格暗いな、見ていて辛いぞ」(意訳)と評する審査員は、プロとして一貫したシビアな視線と捉えるか、 TVに出してはいけないデリカシーの欠如と見るか、悩ましいところ。
 優勝間違いなし、と自信満々だった武史は怒りの形相で歯を剥き出し、すかさず顔を出すカーンデジファー様。
 「そうだ。怒れ、もっと怒れ! おまえの怒りが、あの愚か者に罰を下す事になるのだ!」
 逆恨み同盟の処罰対象となった審査員の名は、世界的CGアーティスト、ジロウ・ダイ。その正体は直人の叔父・翔大次郎であり、 直人は一平を大次郎に紹介する事に。軽妙な調子の大次郎は親戚には気さくな一面を見せて一平達をオフィスに招き、 翌日3人組は女性スタッフだらけの大次郎のオフィスを訪れる。
 特段キャラクター性とも繋がらないですし、大次郎のスタッフが女性だらけという描写の意図がいまひとつ掴めないのですが、 何か当時、こういう感じの有名デザイナーとか居たのでしょうか……(笑)
 仕事が押して〆切りに追われる苛立ちを若い女性スタッフにぶつけて感情的に怒鳴りつける大次郎の姿を3人組が目にする、 というシーンに恐らく悪意は全くなくて、当時としてはごく普通に、おちゃらけた感じだけど仕事には真剣、 という大人のオン/オフの格好良さを表現する意図だったのかとは思うのですが(直人達が肯定的に感心しますし)、 今見ると率直に言ってどん引き。
 「せっかくこの世に生まれてきたんだもん。夢に向かって生きていかなきゃ。ね」
 そんな大次郎が一平に夢の大切さを語るシーンは、如何にも立派な訓辞を述べていますといった形でゆったりと間合いを取って演出されるのですが、 だったら藤堂武史くん14歳の抱える薄暗さを汲み取って気に懸けるコメントの一つも出来なかったのか、 と諸々の合わせ技で全く心に響いてくれず辛い。
 一平達に過去の作品を見せる大次郎だが、憎しみに燃える武史が大次郎オフィスにメカステルガンを送り込んでカラーパレットを破壊した事で、 全てのCGがモノクロになってしまう。メカメカしさが格好いいステルス怪獣の破壊活動により、 コンピューターから放たれた色覚破壊光線が世界に放たれ、映像がモノクロになってしまう、というのはなかなか面白い演出。 いっそこれをもっと大々的に扱って、白黒の世界で起こる大混乱、みたいなものを描いても面白かったかもですが、 さすがに本編の半分以上を白黒で展開するわけにはいかなかったか。
 白黒の世界で落ち込んだ大次郎を励ます一平と、Cワールドでの戦いを並行進行し、 ドラゴンフォートレスはCGデザインのみならず設計プログラムまで一平がした事になって、この辺りはどんどんぐちゃぐちゃに(^^;
 2クール目における話のバリエーションの拡大作業と、サンダーグリッドマンからあまり間を置かずに新装備導入、 のタイミングが被った事で色々と苦慮があったのでしょうが、ドラゴニックキャノンから一連の強化展開は、 どうにもまとまりの悪いエピソードが続きます。
 送り込まれたドラゴンフォートレスの連続ミサイル猛攻は大迫力で、
 「おーのれこざかしいカトンボめ!」
 と、勢い余って台詞がちょっと富野化するカーンデジファー様(笑)
 合体からの分離を見せたドラゴンメカがひたすらミサイルを撃ち込んでHPを削り、 弱った怪獣を連続で投げ飛ばしたグリッドマンがビームでフィニッシュ。世界には再び色彩が戻るのであった。
 次回――なんか、小林義明。

→〔まとめ3へ続く〕

(2019年7月20日)

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