■『ウルトラマンガイア』感想まとめ9■


“ウルトラマンがほしい! ウルトラマンガイア!”


 ブログ「ものかきの繰り言」の方に連載していた『ウルトラマンガイア』 感想の、まとめ9(48話〜最終話)です。文体の統一や、誤字脱字の修正など、若干の改稿をしています。

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◆第48話「死神の逆襲」◆ (監督:北浦嗣巳 脚本:川上英幸 特技監督:北浦嗣巳)
 コマンダー、さくっと助かる(笑)
 前回ラストの如何にも殉職な絵作りから、爆死寸前にガイアに助けられていました、はズルい引きでしたが、 キャラクターの喪失を描いて面白いタイプの作品とも言いがたいので(人的被害そのものはかなり出ている物語ではありますが)、 総合的な判断としては良かったと思います。
 「僕のせいで……エリアルベースが」
 「我夢! ……うぬぼれるな。おまえ一人が戦ってきたわけじゃない。そして、おまえ一人が戦えば済む事でもない。 ……我夢、全てを背負おうとするな。おまえは…………一人の人間なんだ」
 と、背中で語るコマンダー、のシーンは引きのズルさを帳消しにしてもいいぐらいには格好良かったですし。
 ガイアと繋がった者として、主人公として、色々と思い悩んできた我夢ですが、物語が最終章に入ったところで、それは本来、 皆で考えていかない事である、とミクロからマクロに連結をし、虚構から現実へのフィードバックが示唆されるタイミングとしても良いですし、 それを一人でやろうとすると、初期藤宮になりかねない危険性が人間には常に付きまとっている、という点を押さえてくれたのも秀逸。
 そして今回のエピソードを通しては、我夢がXIGに加入し、クルーと共に戦う事で道を踏み誤らなかったように、今の藤宮には、 傍らで共に悩み考え歩んでくれる玲子の存在がある――というのも美しくまとまり、前回−今回と、 藤宮博也という男の意味付けが劇中で再確認され、その着地点が見出されているのは、丁寧にやってくれて大変嬉しい部分 (まあ藤宮もまだ、油断できない立ち位置ではありますが!)。
 藤宮に関しては前半のやらかし具合がやらかし具合だったので、どこまで許せるのかというわだかまりは多少あったのですが、 前回−今回で、だいぶスッキリとしました。
 また結果的にではありますが、我夢サイドのヒロイン的存在の弱さが、藤宮サイドとの明確なコントラストを成す事により、 我夢とXIG(チーム)の繋がりをより強調する事に。
 エリアルベースを失ったXIGはジオベースに拠点を移して再始動するが、改めて突きつけられた破滅招来体の脅威を前に、 これまで対破滅戦線を支えてきた超国家的な結束に亀裂が生じつつある事を、参謀は憂慮。
 「ほとんどの国が、己の国の保全のみを、優先しようとし始めている」
 「……各国が、そんな失望感に包まれていく。そして失望の先に待ち受けているものは……」
 「絶望」
 川上脚本は今作の中ではアベレージ低めでやや心配だったのですが、今回は組み立ても台詞の置き方も面白い。
 上層部が地球防衛の今後を懸念している頃、全ての六角ファイターを失い、翼をもがれて飛べない豚と化したパイロット達はくだを巻いていた(笑)
 そこに、重病で余命数ヶ月といわれ休養していた筈のチーフエンジニア乱橋が顔を覗かせ、 テストパイロットであったクロウ02・樹莉の経歴を拾いつつ、生命の翳りを感じさせない乱橋の軽妙さが、 状況に対するカウンターとして重苦しさに凝り固まらない視点を提供する良いアクセント。
 一方、街では第1話の大水害以来レベルの無差別破壊が発生し、実に贅沢な爆破の中心に姿を見せる死神。
 「ウルトラマンを差し出せ。人類が助かる道は……ウルトラマンを生け贄に差し出す」
 前回の藤宮相手に続いて、いやらしい搦め手からの攻撃がこれまでにない存在として特徴的となり、居ても立ってもいられず、 ジオベースを飛び出そうとする我夢。
 「待て我夢!」
 「行かせて下さい! 奴の狙いは僕なんです」
 「策はあるのか?」
 勢いで実質的にカミングアウトしていますが、司令室にはなんとなく、やっぱりそうなの、 という空気が流れているように見えるのは気のせいでしょうか(笑)
 我夢がコマンダーに制されていた頃、閉鎖空間を離脱した藤宮と玲子は死神と対峙しており、 戦いを決意した藤宮が玲子を振り返り、無言で頷き微笑む玲子と、微笑みを返す藤宮、 そして勇壮な音楽でのアグル変身は、鳥肌の立つ格好良さ。
 「青いウルトラマン!」
 「……藤宮」
 我夢、我夢、精神的に追い詰められて、色々ダダ漏れ過ぎだぞ我夢……。
 アグルの攻撃を受けた死神は巨大な破滅魔人の姿へと変貌し、先制攻撃から蹴り技ラッシュを浴びせるアグルだが、 調子に乗って突っ込んだところにカウンターでぐっさり刺されて悶絶するのが、大変、アグルです。
 「藤宮!」
 我夢の絶叫にクルーが一斉に振り返り、これも瀬沼さん辺りのルートから偉い人達は勘づいていても良さそうなのですが、 なんだか色々なところで(というかコマンダーが)情報が止められている感。
 「……コマンダー、僕は行きます」
 「我夢」
 「策はありません。でも、あいつを僕は許せない。一緒に戦ってきた友人が苦しんでる。……僕は行きます!」
 コマンダーに一礼した我夢は今度こそジオベースを飛び出していき、 状況を確認するべく司令室を訪れていた梶尾・米田・稲城の3人を含め、ガイアの正体を確信する面々。
 「……コマンダー、まさか、我夢は?!」
 「……ウルトラマンガイア」
 「そうなんですね!」

「ガイアーーーーー!!」

 変身した我夢はアグルの危機を助けて死神魔人と激突し、司令室ではXIGのクルー達がその勇姿に歯がみする。
 「我夢が……ウルトラマンガイア」
 「隊員として、そしてウルトラマンとして」
 「彼はずっと、俺達と戦ってきた」
 「くっそぉ……今の俺達は我夢と共に戦う事すら出来ないのか!」
 だがその時、乱橋が3機の新型ファイターの完成を一同に告げ、ここで隊長トリオが急造チームで出撃、というのは文句なく熱い展開。
 「我夢、おまえはずっとみんなに黙って……待ってろよ、我夢」
 まあ、「部屋が狭くなるからお前達は来るな」と待機命令を出された部下ーズがちょっと可哀想ですが……と思ったら稲城リーダーと樹莉の会話が挟まり、 部下2人と言葉を交わしていた米田リーダーの元には慧が駆け寄り……か、梶尾さん?  我夢に花束をプレゼントされたシーンとか回想している場合ではないのでは梶尾さーん?!
 まあ、パイロット組から我夢への感情も集約はしたいところで、それはそれで無いと困る要素ではあるのですが、 米田×慧のシーンに凄く尺が割かれる事もあり、北田と大河原は、色々なものの犠牲になりました。
 「…………必ず、帰って……」
 消え入るように呟く慧に、米田はスーツから引きはがした隊章を預け、 これをちょっと離れた所から空気を読んで見守っている部下2人といい、ファルコンはひたすら大人のチーム。
 「……チームファルコンの、誇りを預ける」
 死神魔人と死闘を繰り広げるガイアは、遂に必殺のドスを叩き折る事に成功するが、目つぶしから反撃を受け、 エネルギー放射であぶられる窮地に――
 「全機攻撃態勢。ウルトラマンガイアを、いや、高山我夢を援護しろ」
 「「「了解」」」
 「待たせたな、我夢」
 「我夢、今行くぞ」
 「あんた一人を苦しませたりはしない」
 チーム・リーダーズが駆けつけると魔人に猛攻を浴びせ、立ち直ったガイアがファイターと一斉攻撃を仕掛けるのが、 これまで要所要所で丁寧に積み重ねてきたウルトラマンと防衛隊の共闘の、一つの集大成という趣き。
 「おまえ一人が戦ってきたわけじゃない。そして、おまえ一人が戦えば済む事でもない」
 という冒頭の言葉が、実を持って響きます。
 だが一斉攻撃は魔人が全身に張り巡らせたバリアによって防がれてしまい、肉弾攻撃も無効。苦境に陥るXIGだが、 我夢のお株を奪うアナライズ(我夢の存在が歴戦のファイターにも影響を与えていたという補完関係として美しい) で魔人の弱点を探った米田が、魔人の目だけはバリアに覆われていない事を発見。
 「俺達は、勝つ!」
 ガイアを助け、猛然と急降下攻撃を仕掛けた米田機は見事に魔人の目にレーザーを直撃させ、片目を失いもがく魔人を、 ガイアは地球の隙間ビームで爆殺。だが魔人に接近しすぎた米田機は墜落してしまい、 ガイアもまた気を失うように我夢の姿へ戻っていくのであった……。
 地上で回収された我夢は梶尾に揺り起こされ、玲子さんの看病を受けている藤宮の無事を確認。……もう僕のマネージャーは、 梶尾さんで構いません!
 梶尾「断る」
 チーム・シーガルと共に米田機の墜落現場に駆けつけた慧は、無惨に四散した機体、焼け焦げたヘルメット、 そして血まみれの米田を発見するが、米田は慧が伸ばした手を握り返し、なんとか、生還を果たすのであった……!
 米田生存の報告に喜ぶ一同の姿をEDパートで描いて幕を閉じ、冒頭でコマンダーがさくっと生き延びただけに、 死亡フラグのキラーパスを受けた米田さんが流れ弾で殉職しなかったのは、大変良かったです。
 米田リーダー、腕さえ良ければ人格に多少難があってもOK、なんて事は無く、ひたすら人格者なのが、結構好きなキャラ。 ……まあ、背景が判明するまでは、ちょっと突飛な所はありましたが(笑) そして、 この最終局面で驚くほど米田×慧に尺が割かれたのは、いったい誰の陰謀なのかと思ったら、 米田×慧の絡みがあった第32話の監督が北浦監督だったので、主に北浦監督の陰謀でしょうか。過去作出演キャスト、 というのもありそうですが、最後の最後で、原田監督より自制しなかった感(笑)
 それにしても、殉職するならこの人候補の1位(コマンダー)と2位(米田)が、三途の川を渡りかけたところから奇跡の生還、 が2話続いたので、次回あたり、三度目の正直で梶尾さんが危ないのではないかと大変不安です。
 我夢=ガイアを皆が知るシーンはそれほど劇的には描かれませんでしたが、どちらかというと、 薄々勘づいていないと頭悪く見えてしまうレベルになっていたので、案配としては、わざとらしくなりすぎず、良かったと思います。
 そこからファイターチームとの共闘に繋ぐ展開は非常に格好良かったですし、並行して、 前回またややこしい思索に飲み込まれそうになるも玲子さんに引っ張り上げられた藤宮が、 満を持して“ヒーローとしての飛翔”を決める姿が描かれたのが素晴らしく、我夢サイドの一つの到達点と、 藤宮サイドの一つの到達点を、別々の筋でまとめて見せるという離れ業を鮮やかに成功させた良エピソードでした。
 主筋は我夢×ファイター(XIG)回なのですが、個人的にはそれ以上に、アグル回として高く評価。
 ……ところで、結果的には死神の罠が何もなかったような気がするのですが、アグルが先に戦ってくれたお陰で、 死神のカウンタードスアタックをガイアが見切れた、という事でいいのか。
 次回――格好いいサブタイトルから「燃えろ田端!」でちょっと困惑しますが、田端さんも拾ってくれるようなのは、嬉しい。

◆第49話「天使降臨」◆ (監督:村石宏實/八木毅 脚本:吉田伸 特技監督:村石宏實/八木毅)
 謎の飛行生物の群れが、世界各地に大量に発生。巨大な昆虫のようなその生物はこれまでに出現した破滅招来体の特徴を少しずつ併せ持っており、 応戦に出た各国ガードの戦闘部隊は、次々と壊滅していく。
 「今、我夢と藤宮に発生源を特定させている。それを待つんだ」
 さすらいのテロリストだった藤宮はさらっと協力者の扱いを受けており、発生源として特定されたワームホールを攻撃するべく、 梶尾と稲城が出撃するが、藤宮はその作戦に疑問を投げかける。
 「なぜ俺達を兵器として、戦力として扱わないんですか。俺と我夢の力を含め、作戦を立てるべきです」
 「それは出来ん」
 「俺達に頼れば、XIGの能力が疑われるからですか?」
 「やめろ藤宮」
 「君たちは兵器ではない。共に戦う仲間だ」
 コマンダー(XIG)が藤宮を、人として仲間として認める事の重要性はわかるのですが、 手持ち戦力の一つして「ウルトラマン」を計算に入れるという藤宮の提案自体は理に適っているので、 「兵器か人か」という極端な話に広げてしまったのは、藤宮が少しひねくれているというか、コマンダー(XIG)を意図的に試した、 と受け止めた方が良いのか。
 飛行生物を発生させる巨大なワームホールには新型ファイターのビームも通用せず、梶尾機が戦線離脱。 それを見た我夢はそっとオペレーションルームを離れ、廊下で合流すると、 爽やかな笑みを浮かべながらハンバーガーを投げる藤宮の誰コレ感が凄いのですが、これが、 人気女子アナといい感じになっている男の余裕だ!
 ……いやまあ、重い贖罪の念を抱える藤宮が、コマンダーの言葉に少し救われた、というニュアンスが入っているのかとは思われますが。
 「俺はアグルの力が戻ってから、ずっと考えてきた。なぜ俺達は二人なんだ? いや、幸い二人居るといったほうが適切だな。 ――どちらかが居なくなっても、もう一人居る」
 だがそれでも、ワームホールへの特攻を仄めかす藤宮だが、そこへ敦子が姿を見せ、気を遣ってなんとなく距離を取る藤宮、 さっきからなんか面白いぞ藤宮!!
 「……どうして、黙って行くのよ」
 「あ……うん」
 「どうしてみんなに黙って行くの?! どうして?」
 「……ごめん……そういうの、苦手で」
 「ちゃんと……行ってきますぐらい言ってくれなくちゃ。私には、頑張れって言うぐらいしか……何も出来ない」
 決戦に向かうヒーローを見送るヒロイン、という古来より伝わる渾身のヒロイン仕草を放り込んできた敦子ですが、 突然の泣きの芝居にドラマチックすぎるBGMが重なり……すみません、正直、笑いがこみ上げてきてしまい本当にすみません。
 どうにもこうにも積み重ねが足りないというのもあり、今作の短所の一つである、 ウェットな台詞は女性キャラに言わせておく的な話運びに見えてしまうというのもありましたが、 距離感としては“みんなの代表”というのは無理のない範囲に収まりましたし、色々と酷い扱いをしてきた敦子への、 多少なりとも救済になったのは良かったと思います(村石監督が少しは申し訳なく思っていたのか、 連名の八木監督が強硬に主張したのかはわかりませんが!)。
 前回のチーム・リーダーズ出撃に続き、“あの我夢”が、XIGに参加して戦い続けていく中で、 いつしか“みんな”に溶け込んでいた……というだけでも一つ感動的なシーンでもあるのですが、 敦子のヒロイン力の低さをBGMでブーストしようとしすぎているのも手伝って、どうしても笑いがこみ上げてきてしまって本当にすみません。
 「……敦子。……行ってくる」
 あ、でも、我夢がここで、「アッコ」ではなく「敦子」と呼ぶのは、男の子から男へ、という感じがあって、とても良かったです。
 「……うん」
 敦子に見送られながら我夢は藤宮と肩を並べて歩き出し、一方、増加を続ける昆虫生物の影響により通信が途絶し、 重く立ちこめる灰色の雲に覆われた無人の街を走る田端&倫文は、緑色の光に包まれた、亡霊のような怪物が街を練り歩くのを目撃。 ……この怪物は今回時点では謎のままなのですが、どこか半魚人めいて見えるのは、小中さんの宇宙的恐怖趣味が出たのかどうなのか。
 「みんなの絶望を煽るような中継に、いったいなんの意味があるんだよ!」
 全世界の通信システムがダウンする中で何故かTV局の周波数だけは生きており、外の状況をリポートしようとする田端は、 局の報道があまりにも暗く悲痛であるのを見てそれに輪を掛ける中継をする事を躊躇い、真実を伝えさえすればそれでいいのか、 と己の在り方にブレーキをかける。
 その時、響く子供の悲鳴に駆け出した田端は、野外に取り残されていた少年を救出。そんな2人と出会い、 「ウルトラマンは必ず来る」と少年を励ます一幕を挟み、我夢と藤宮は、いよいよ巨大ワームホールと対峙する。
 「……おまえがいなければ、俺はここに居ることはなかった」
 「え?」
 「悪い意味じゃない。俺は今、おまえとここに居る事を、誇りに思っている。……感謝している、我夢」
 「僕だってそうさ。――行こう!」
 地球そのものから立ちのぼる、陽炎のような淡い輝きに包まれながら、我夢と藤宮は、二つの光を掲げる――

「ガイアぁぁぁぁぁ!!」
「アグルぅぅぅぅぅ!!」

 赤と青の巨人は天空に並び立ち、少年を家へと送り届けた田端らは、飛翔するその姿を目にする。
 「……家に帰ったら、TVをつけるんだ。そこにはきっとウルトラマンが映ってる筈だ」
 おお、これは格好いい。
 「……行くぞ倫文」
 「はい! ウルトラマン撮るんですね」
 「決まってるだろ! あいつらだけが絶望したみんなに希望を伝えられるんだ」
 TVを通して、というややメタ的な要素を取り込みつつ、しっかり物語とも接合し、 “ヒーローとは何か”をこういう形で描いてくるのは好みで、痺れる展開。
 今作が序盤から重視し続けてきた「視点」の一つであるKCBというピースも絶妙にはまりましたし、 基本的にひたすら情けない役割だった倫文の成長が描かれたのも良かったです。
 そしてワームホールへ突入しようとしていたアグルだが……虫にたかられ、墜落(笑)
 第41話「アグル復活」で、“盛り上げてからのガックリ体質を克服”したように見えたのは、幻だったのか。
 全身を虫に覆われたアグルは地面をのたうちまわって見せ場の筈がとんだ災難となり、同様のガイアも続けて墜落してくるが、 両者はなんとか、脈動する筋肉の力で張り付いた虫を引きはがす。
 ガイアとアグルの前には虫が合体した怪獣が立ちはだかり、 その戦いをカメラに納める田端&倫文からの中継映像が入ってきている事にKCB社内の玲子が気付いた所で流れ出す、OPイントロ。
 「田端さん! 田端さんだわ!」
 OPが流れ出して筋トレ殺法コンビは合体怪獣へと殴りかかり、
 ギリギリまで頑張って ギリギリまで踏ん張って
 という歌詞がシチュエーションに見事にはまり、見ろ、これが、知性と筋肉と神秘の融合、光量子格闘術の力だ!
 「たった今、緊急映像が入りました。地球を救う為に、ガイアとアグル、二人のウルトラマンが出現しました。 ウルトラマンが居る限り、地球はきっと大丈夫です。だから皆さんも、希望を捨てないで下さい」
 詰めの甘いアグルに代わり、うにょんバスターで怪獣を吹き飛ばすガイアであったが、 再び飛ぼうとした両者の前には合体昆虫怪獣が次々と出現。OPブーストも終了したガイアとアグルはじわじわと追い詰められていき、 ここでXIGの戦力が無いのが見ている側も歯がゆいその時――突如として天から降り注いだ光が怪獣の集団を呆気なく消滅させ、 ワームホールの向こうから荘厳な音楽と共に、光に包まれた白亜の巨大な立像、とでもいった存在が出現すると、 消耗したウルトラマンのエネルギーさえ回復させる……。
 「あれは……?」
 「天使……」
 という、予想外の展開で、つづく。
 サブタイトルの「天使」は、てっきり飛行生物をなぞらえた表現だとばかり思っていたので(途中で藤宮が「イナゴ」と呼んだり、 今回の状況そのものが『ヨハネの黙示録』第9章を意識していると思われるので)、本当に天使的な何かそのものが出現したのは、驚きました。
 …………はっ?! 昆虫軍団の人類総攻撃、そして、地球に降り立つ巨大な神秘的存在……こ、これはまさか、 セントパピリア?!
−−−
 「勘違いするな。セントパピリアは、破滅を食い止めに、現れるものではない。破滅したものを救いに、現れるのだ」
−−−

 以前から、今作と『重甲ビーファイター』の妙な親和性について触れていましたが、まさか、この最終盤に、 そんな大ネタを拾ってくるなんて!!(拾ってない)
 ……えー、恒例の与太はさておき、ED、これまでの我夢と藤宮のメモリアルを関係者多数出演のダイジェスト映像で、 というのは非常に良かったです。
 我夢が居て、藤宮が居て、両者の存在と関係は今作の太い軸になっているのですが、同時に、 周囲の人々との繋がりによる二人の“変化”というものを丁寧に描いてきた『ガイア』らしいED映像でした。
 次回――出来の悪かった炎山回以降、拾うタイミングの無かった我夢両親も登場するようで、どう走り抜けてくれるか、楽しみです。

◆第50話「地球の叫び」◆ (監督:村石宏實 脚本:小中千昭/長谷川圭一 特技監督:佐川和夫)
 「神々しい姿だ……」
 「我々の味方なんでしょうか?」
 地球に降臨したセントパピリア、じゃなかった、蝶天使が手をかざすとディープワンズの亡霊は消滅していき、 今回も謎のままなのですが、やはり小中さんのクトゥルーネタなのですか。
 優にウルトラマンの4倍はあろうかという破滅天使の姿は大迫力で、その手招きになんかふらふら近づいてしまうアグル、 アグルーーーーー。
 案の定、アグルはソニック天使ブームの直撃を受ける会心の藤宮ムーヴを発動し、周囲の建物などを破壊しながら、 綺麗なくの字になってビル街を滑っていくど派手な破壊シーンが、色々あんまりなアグルと、それはそれとして力の入った特撮が融合して、 何度見ても絶妙に笑えるシーンに(え)
 破滅天使の追撃を受けたアグルは地面に派手に叩きつけられ、微笑を浮かべる天使に飛びかかったガイアもあっさり同様の目に。
 街並みのミニチュアが衝撃の余波で次々と吹き飛んでいく映像が実に凝っていて、 完膚なきまでに叩きのめされるウルトラマンという展開のインパクトを引き上げ、今回ここまで、10回ぐらい繰り返し見てしまいました(笑)
 鈴を転がすように笑う天使の放ったビームにより、絶体絶命の危機に陥ったガイアをかばうアグルは、 ビームをその身で受け止めながらの突撃も敢行するも一歩及ばず、全てのエネルギーを失ってしまう。 ガイアとアグルは天使ブラスターでまとめて吹き飛ばされ、ビルを5つほど貫通すると地面に倒れ、カラータイマーの光が消滅。
 天使はガイアとアグルの体から立ち上った赤と青の光を吸収し、二大ウルトラマン、ここに完敗!
 と冒頭からトップギアでアクセル全開。
 「二人のウルトラマンが負けた……?」
 「立て……立ち上がれ我夢!」
 コマンダー達の声も届かず、瞳からも光の失われたウルトラマンはその姿を保てなくなり……回り続ける倫文のカメラは、 全世界にウルトラマンの正体――我夢と藤宮――を中継してしまう。
 「ウルトラマンが、人間……?」
 「どういう事なんだ?」
 TVの電波だけが生きている、という状況から、予想できた絶望の念押しではありますが、 前回ウルトラマンを希望の象徴として人々に伝えたカメラがそのまま、打ち砕かれる希望を広めてしまうという容赦の無さが深く突き刺さります。
 「馬鹿な……そんな馬鹿な」
 「見て! ちゃんと見て! ……あれは我夢よ。これまでずっと私たちにも黙って……あの子……!」
 高山家では我夢両親がこの映像を目にし、画面から顔を逸らそうとする父を母が止め、 そこはかとない距離が匂わされていた我夢の両親が、異端の子である我夢と“向き合おうとする”要素を拾ってくれたのは、 嬉しかったです(終盤やや強引になったダーク我夢回は、ドイツ飛ぶより、 家族や友人ズと絡めてくれれば良かったのかな……と思ってもみたり)。
 「我夢ぅ! 逃げてぇ!!」
 「藤宮くーん!!」
 生身の我夢と藤宮目がけ、天使バニッシュが迫るその時、飛来する一つの機影……
 「ファイターEXだ! パイロットは?!」
 「居る筈がない!」
 「パルだよ!」
 「我夢の作った人工知能が……」
 巨大な天使にたった一機で挑んでいくEX機の勇姿、コントロールルームのやり取りを挟んで、 無人のコックピットの中がアップになると、CGの表情も凜々しいパルと操縦桿が映し出され、勇壮なBGMが流れ出す、 というのが物凄く格好いいシーン。
 EX機の射撃は破滅天使を怯ませ、更に……
 「今だぁ! スティンガーぜんしーーーん!!」
 「「了解!!」」
 地上からはスティンガーが攻撃を仕掛け、前回のXIG分の不足を一気に補う熱い展開。『ガイア』が大事に描いてきたものが集約され、 共に闘う仲間があってこそ、というのが盛り上がります。
 「チューインガム助けるぞ!」
 「「おう!!」」
 対ウルトラマンに特化した事で実体弾に弱かったのか、スティンガーの攻撃に怯む破滅天使だが、 宙返りを見せて攻撃を仕掛けたEX機はソニック天使ビームの直撃を受けて爆散してしまい……まさか、 殉職キラーパスがこんな形でゴールするとは。
 作風的にはあまり登場人物の退場で盛り上げる展開は好ましくない……と書いておいてなんですが、ここまで何度か登場し、 我夢が話しかけたりはしていたものの、「キャラクター」として成立していたとは言いがたいパルが、 最後の最後で“戦う仲間”の一員として「キャラクター」になったのは、お見事でした (ただリタイアさせればいいというわけでも勿論なく、パルへの親しみを感じさせるジョジーのリアクションが非常に秀逸)。
 それはそれとして堤チーフは内心、(え……パル……ってなに? 一応俺のEX機、いつの間に、 自動で突撃する仕様になってるの……?)と冷や汗を垂らしているに違いありません。
 我夢と藤宮はEX機爆発の衝撃に巻き込まれ、それを見た天使は去って行き、後にはただ、絶望した人々だけが残される――。
 「……ウルトラマンは、ただの人間だった」
 「神様じゃなかった……」
 「ただの人間に、地球が救える筈ないよ!」
 超越者から地上に落とされるウルトラマンですが、果たして、真に地球を救うべきものは、誰なのか……?  という反問が刻み込まれていて、印象的な台詞。
 「あの天使みたいなやつは、俺達を倒す為だけに生まれた。最終兵器が天使とは、奴ら神を気取っているつもりらしいな。 しかし…………俺達は勝てなかった」
 「負けてない! 僕はまだ!」
 一面の砂の海に埋もれたアグルとガイア……かつて見た幻視から目を覚ました我夢は、 TV中継を見て現場に駆けつけた大学友人ズに拾われていた事を知る。砕け散り、光を失ったエスプレンダーを手にした我夢は、 ウルトラマンの正体を追うマスコミから友人ズと一緒に逃げ回っていた所を田端チームに拾われ、 マスコミを引きつける囮を買って出た友人ズと別離。
 「みんなは?!」
 「俺達は大丈夫だよ!」
 「なんてたって俺達!」
 「ウルトラマンの親友だぜ!」
 個人的な趣味嗜好ですが、主人公にとって物語の中で作られていく“新しい関係”が重視されるのは当然の事ですが、 それが重視されるあまりに、物語が始まる前から“既に持っていた関係”が実質無かった事になってしまうのがあまり好きではないので、 最終盤に来て忘れずに、我夢の大学友人ズを物語に絡めてくれたのは、非常に嬉しかったです。
 もちろんストーリーや設定にもよるので作品それぞれではありますが、なんというか、主人公が主人公になる前、 “世界にとってのその他大勢”の頃からの友人が、決して物語の主軸には関わらずとも、友人であり続ける、みたいなのが結構好きなのです。
 KCB車に乗り込んだ我夢が友人ズに頷き返し、前を向くと物凄く真剣な表情を見せる、 というのも劇的な切り替わりとして大変格好良く、今回のかなり好きなシーン。
 ウルトラマンの正体生中継という衝撃から、家族と友人に物語を繋げる、というのも上手く転がりました。
 一方ガード首脳部は、全面的な武装解除をする事により恭順の意を示し、 知的生命体と推測される破滅招来体に対して交渉による全面降伏の余地を探る最終プログラムに運命を託そうとするが、 コマンダーはXIGの武装解除を敢然と拒否。
 「破滅招来体が閉ざしたのは、太陽の光だけではありません」
 「人の、心です」
 「我々にはまだ戦う力が残っています。いや……戦う意志を、戦う誇りを持っています」
 地球の人々を守る為、XIGは最後の最後まで戦い続ける事を宣言。
 KCB車では、倫文と田端が我夢に謝ろうとするのが手抜かりのないところで、しかし我夢は、田端の謝罪を制止する。
 「いえ、みんな、自分のすべき当たり前の事をした。そうでしょう?」
 基本的に穏和でどこかぼんやり、という見せ方だった我夢ですが、ここに来て、物凄く格好良い表情を連発。
 「僕たちは……破滅する為に生まれたんじゃない。絶望するために生まれたんじゃない! 僕を連れてって下さい、藤宮のところへ。 心当たりがあるんです」
 藤宮も行方不明と聞いた我夢は、KCBの車をある場所へと向かって走らせる……。
 XIGでは乱橋チーフを中心に急ピッチでファイターの整備が進められ、反攻作戦の準備中。
 「我夢……みんな頑張ってるよ」
 前回今回と、急激にヒロイン力を増大させていく敦子さんが、次回、崩壊したジオベースの下敷きにならないか少々心配になってきました。
 だがその頃、我夢とKCB一行の前には、激しい地響きと共に地球怪獣が姿を現していた。
 「もうこんな時に地球から怪獣なんか出なくてもいいじゃんよ〜!」
 「これが破滅なのか?」
 「違う!」
 世界各地に次々と出現した地球怪獣は、空を覆って太陽光を閉ざすイナゴに向けて攻撃を仕掛けていく!
 「奴らは立ち上がった……自分の生まれた、星を守る為に」
 「地球の……地球の叫びだ!」
 道中、少々ややこしい扱いになっていた地球怪獣は、「同じ地球の命」として、怪獣なりに破滅に立ち向かう存在となり、 この「地球怪獣の扱い」というのは今作メインストリームに関わる中で最も蛇行した要素だと思いますが、整理するには情報量が多いので、 完結後に余裕とやる気があれば、別項で取り扱えればな、と思います。
 空を覆うイナゴの群れは合体すると地球怪獣に襲いかかり、ウルトラマン不在の巨大戦成分をカバー。その光景を見つめる柊は、 ガード地上部隊の出動を指示する。
 「なんの為の出動だ?」
 「地球で、共に生きるものの為に」
 ガードの砲撃が地球怪獣を支援してイナゴ怪獣に突き刺さり――そしてKCBが向かうのは、アグルの聖地(多分)!
 ラストで我夢が劇的に名前を叫ぶのですが、なにぶん長くてややこしい名称で、初登場時も何を言っているか明確に聞き取れませんでしたし、 もう少し、わかりやすい名前が良かったよな……と改めて(笑)
 ED映像はここまで今作を彩ってきた、個性的な怪獣達とのバトルダイジェストが流れ、そういえば、 地球怪獣の中にしれっとガンQが混ざっていたら面白かったのに(おぃ)
 開幕のウルトラマンvs破滅天使が力の入った特撮で大迫力でしたが、完敗の後、 それぞれの場所で戦う者達を描いて反撃の気運を盛り上げていく物語の流れも手抜かり無く、その中で織り込まれた様々な視点が、 実に『ガイア』集大成。
 次回――ミッションネームは、「ガイア」!

◆最終話「地球はウルトラマンの星」◆ (監督:村石宏實 脚本:小中千昭 特技監督:佐川和夫)
 見所は、最終作戦の担当オペレーターが女子だと知り、(うわ、面倒くせぇ……)という顔になる梶尾さん。
 やはりこういう人は、年上のキレイ系に手綱を握られるのがお似合いだな、と改めて思う最終回。
 律子さんと黒田さんが出せればほぼパーフェクトでしたが、そこまでは出来なかったものの (出せても1カットぐらいだとオファー出すのも現実的になかなか難しいでしょうし……)大半の要素を拾いきって、 見事な大団円となりました。
 「どんなに空がイナゴに覆われようと、宇宙からニュートリノが、降り注いでいるわ。地球はひとりぼっちじゃない。 広大な宇宙と地球は、繋がっているの」
 破滅招来体によって人生を歪められた被害者、ともいえる稲森博士が、最後にメザードの擬態ではない精神体 (ないし藤宮の垣間見た幻視)として出てきたのも良かったです。
 「俺達にはまだやるべき事があったぜ、我夢!」
 アグルの聖地でプールを見つめていた藤宮は、稲森ソウルの示唆により、 地中を貫くニュートリノを媒介にした通信システムを即興で構築し(たまに忘れそうになるけど、天才です!)、 封印されていたクリシスへとログイン。イナゴによる電波障害の影響を受けない、光量子ネットワークを生き返らせる事に成功する。
 なお、玲子さんらが入ってきたタイミングで「稲森博士が教えてくれた」と口にしていた為、ちょっぴり、気まずい!
 ……まあもはや、くどくど会話を交わさなくても通じ合える関係、という事ではあるのでしょうが、この後、 藤宮と玲子さんに一切会話が無いので、ちょっとドキドキします(笑) 一方で、 懸命に声を張り上げて何かを必死にアピールする敦子とは対照的な扱いなのですが、結局、村石監督の中では〔敦子 < キャス〕という、 若干の私情が滲み出た感。
 「力を貸して下さい。ファイターで戦ってきた、XIGの技術と経験が必要なんです」
 通信の復旧と共にガード:アメリカのダニエルからXIGに協力要請が届き、キャスは我夢と藤宮に「あなた達に、 地球の光を戻してあげる」と宣言。
 「私たち、アルケミースターズが、なぜこの地球に生まれたと思う?」
 「僕たちの出来ること、僕たちの力を信じるんだ」
 キャスの発案により、世界中に散らばるアルケミースターズとの共闘態勢が確立、そしてXIGファイターに緊急改造が施され、 チーム・ライトニング/ファルコン/クロウの9人にシーガルの神山を加えた10名のパイロットが中核を成す、 XIG最終作戦が発動する。
 「ミッションネームは――ガイア」
 「ファルコンはアジアを担当する。林、塚守……よく俺についてきてくれた。感謝している」
 「自分たちは……米田リーダーだから」
 「ファルコン最後のミッション、絶対に成功させます」
 出撃前、及び作戦中に各人に台詞が配分されているのが嬉しいのですが、チーム・ファルコンは「いつか見た未来」で描かれた、 「その気になれば退役は可能だがエリアルベースの為に敢えて残り続けていた」という繋がりが背景にあるので、やり取りが重く響きます。 それを意志によってくぐり抜けた先で迎える、未来を掴む為の最後のミッション、というのも実に格好いい。
 XIGファイターはジオベースから次々と飛び立っていき、東京に戻り、“初めてガイアに変身した場所”で光を待つ我夢と藤宮の元を訪れるコマンダー。
 「必ず、生きて帰ってこい」
 「……あの! ……どうして、どうして僕がウルトラマンだって……どうして、僕の事を信頼してくれたんですか」
 「理由などいるか?」
 コマンダーは我夢に笑顔を向けて去って行き、てっきり高山両親を連れてでもきたのかと思ったら、 現場を抜け出して格好いい事を言いたかっただけでした!
 最後の最後でちょっと株が下がったのですが、一度死の淵を覗いている身なので、仕方ないのか!
 一方、世界各地に散ったXIGファイターは、破滅イナゴと戦い続ける地球怪獣の頭上に位置する……キャスの考案した、 我夢と藤宮に地球の光を届ける作戦、それは、アルケミースターズの演算能力によるマニュアル誘導により、 ファイター下部に取り付けたリパルサーフィールドの反射角度を調整し、地球怪獣が体内に秘めた核融合エネルギーを一点に集中させる、 というものだった!
 「リパルサーフィールド、照射」
 神山の台詞に合わせてOPが流れ出し、人事を尽くした先にウルトラマンが現れる、という今作を貫くテーゼが凝縮された、 最高のタイミング。
 クリシス、アルケミースターズ、地球怪獣、などなど、今作ここまでに散りばめた要素を拾い集めながら到達する最終作戦ですが、 怒濤の勢いでキーワードが寄り合わされていく展開が気持ちいいと共に、 “見るからに無茶苦茶な作戦”である事が「大逆転の一手」としての説得力を生じさせ、 更にそれを成功させるにはアルケミースターズの能力のみならず、それを実行に移せるXIGファイターズの“経験”が必要である事により、 ここまで積み重ねられてきた数々の死闘そのものが最終作戦の説得力になるというのが、実にお見事。
 人と超越の力が共に戦い続けてきた、『ウルトラマンガイア』1年のまさに結実となりました。
 「地球の怪獣達の光が、今ここに集まってきます。ガイアとアグル、二人のウルトラマンは……私たちの心の光です」
 そしてそこに、地球の命の一員として、地球怪獣の放射する光線が加わり、 リパルサーフィールドによって反射・調整された光が地球を駆け巡る――
 「我夢ー! もうじき来るよーーー!」
 「……ったく、緊張感のない声だな」
 色恋に発展する雰囲気は特にありませんが、我夢とジョジーというのは友人としては凄くいい距離感だな、と改めて。 返す返すもカナダ回でジョジーにスポットが当たらなかったのが惜しまれますが、結果としては最終回まで出張るキャス登場回であるので、 敦子もジョジーも、助っ人メジャーリーガーの前に敗れ去ったのだ。
 光の到達直前、現場近くに我夢両親がやってきて、近づいて言葉のやり取りこそ無いものの、 無言の激励を贈られてサムズアップをかわす、というのは互いが向き合う瞬間として大変良かったです。
 それは多分、地球と繋がり、今までとは違う環境に飛び込み、数多くの戦いを経験してきたからこその、 我夢にとっての大事な気付きだったと思うので。
 TV中継に向けて世界中の人々が祈りを向け、そして遂に、光は始まりの地へと凝集する。

「ガイアーーーーーー!!」
「アグルーーーーーー!!」

 その光を受け取った藤宮と我夢は揃って変身し、天空を覆うイナゴの群れへと突撃。これまで以上の力を得た両ウルトラマンは、 瞬く間に世界中の空からイナゴを消し去っていくが、そこへ現れる蝶天使。だが、地球の命の繋がりをその身に宿したガイアとアグルは、 ソニック天使ウェーブを跳ね返すと、怒濤の連続光線技で、天使を迎撃。追い詰められた天使は、大迫力の超巨大怪獣へと変貌する……!
 蝶天使を更に上回る巨大さの破滅天使怪獣は、「大迫力」としか表現しようがない、大迫力。物語が地球と人類の破滅寸前という規模なので、 下手な造形では映像が位負けしてしまうところでしたが、最後の脅威の象徴として、納得のいく存在感と凶悪さ。
 大腿筋に溜めた地球のパワーキックで天使獣の角を破壊するも、あまりにも巨大な獣にぺちっとはたき落とされてしまう両ウルトラマンだが、 その窮地に割って入る壬龍。その間に体勢を立て直したガイアとアグルは、ツインカムマッスルスピンで獣の体を貫くと、 怒りの突撃をしてきた獣にカウンターで合体地球の隙間光線を浴びせてその巨体を木っ葉微塵に吹き飛ばし、 遂に破滅の使徒を打ち破るのであった!
 最後の最後で極めてインパクトのある、皮膜型の巨大な両翼が、凄まじい勢いで砕け散り千切れ飛んでいくのが実に贅沢かつ強烈で、 『ガイア』のラスボスにふさわしい怪獣と爆発でした。
 「これが地球の光です。この星には、ウルトラマンが居ます。こんなに素晴らしい星が、破滅なんか絶対にしません。私たちが、 させない努力を、していく限り」
 最終回の玲子さんは、マイクとカメラの力もあってか語り部モードに終始するのが、良くも悪くも玲子さんという感じですが (藤宮とのウェットな部分はあっても良さそうなところでしたが、尺の都合でカットでもされたのか)、 ウルトラマンが勝てば万事解決なのではなく、「私たちが、させない努力を、して」いかなければならない、 というメッセージが入ったのは良かったです。
 人々の声援を受けながらガイアとアグルは夕陽を背に友情タッチをかわし――かくしてひとまず、地球は破滅の運命を覆した。
 そして……
 海を見つめながら砂浜を歩く藤宮はどうやら旅の途中、といった感じで、性格的にも規模的にも前半のやらかしをスッキリ片付けられはしないでしょうから、 藤宮なりの償い方を探し続ける事になりそうですが、一方で自分に浸る傾向がだいぶあるので(フェニックス……!)、 何も言わずに玲子さんの家に「……ふふ、馬鹿言うなよ。俺は銀河の流れ星だぜ」と意味不明の供述を置き手紙として残し、 某風来坊後輩を思わせる、120%残念ムーヴを炸裂させたのではないか、と不安になります藤宮ぁ!!
 PALはプログラムなので無事に復活し、大学に戻った我夢は友人達と街を歩く中でふと、 都会の真ん中でたくましく育つ植物の芽吹きに気付く。そして、顔を上げた目に映るのは、おぼろな壬龍の姿。
 「そうなんだ……これが……これが地球なんだ。…………おーーーーい!!」
 様々な命が集まって成す地球の息吹をその身に感じた我夢が、宇宙に向けて声を張り上げてスタッフロールに入り、 メッセージが記されて、エンド。




地球には怪獣がいて、ウルトラマンがいる。
この美しい星を、私たちはもっと愛していきたい。




 スケールの大きすぎる根源的破滅招来体に関しては、“そのもの”を倒したわけではなく、しかしだからこそ、 地球を破滅させないように生きていく事が必要なんだ、というのは、フィクション(ウルトラマン)から現実(視聴者) へのフィードバックとしても、良いまとめ方だったと思います。
 年間通してアベレージの高い作品でしたが、最終章らしい惑星規模の大がかりなカタストロフを展開しつつ、 ここまでに散りばめてきた要素を結集した逆転劇に繋げ、実に綺麗に風呂敷を畳んだ逸品でした。
 特に、無茶苦茶な作戦を実行する説得力を物語の積み重ねによって得る事により逆転劇そのものの説得力に1年間の厚みを持たせる、 というミッションコード・ガイアの構成は、お見事の一言。
 キャラクターもほぼあますところなく使い切り(そういえば、さすがに瀬沼さんはねじこめなかった……)、その辺りの目配りも、 良い作品でした。
 公式配信としては、ラストに20年後の高山我夢が登場してメッセージを送る大サービスで終了。
 「物事の基本は、体力……!」
 以上、『ウルトラマンガイア』感想、お付き合いありがとうございました。

(2022年6月15日)

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