■『ウルトラマンガイア』感想まとめ8■


“力まかせの 邪悪な願い
大切なものを 守るため
ここから一歩も 通さない”


 ブログ「ものかきの繰り言」の方に連載していた『ウルトラマンガイア』 感想の、まとめ8(43話〜47話)です。文体の統一や、誤字脱字の修正など、若干の改稿をしています。

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〔まとめ5〕 ・  〔まとめ6〕 ・ 〔まとめ7〕 ・ 〔まとめ9〕


◆第43話「銀色の眼のイザク」◆ (監督:根本実樹 脚本:太田愛 特技監督:佐川和夫)
 「イザクってあの……」
 「そうだ。誇り高いアルテスタイガーの、最後の一頭だった、銀色の眼のイザクだよ」
 絶滅動物のクローン再生プロジェクトを行っていた、岩倉財団・自然科学研究所が落雷によって木っ葉微塵に吹き飛ぶが、 それは破滅招来体の恐るべき策謀であった。研究所で再生中だったアルテスタイガーの肉体を入手した破滅招来体は、 それを巨大な怪獣に改造して、地球へと送り込む!
 どんよりと暗雲立ちこめる空を背景に、風にたなびくたてがみの表現が格好いいイザク怪獣が巨大コンビナートに出現し、 その細胞組織から地球の生物である事を解析する我夢。怪獣は火炎放射でコンビナートを火の海に変え、 やむなく攻撃を仕掛けるチーム・ライトニングだが、そこに現れたアグルが怪獣をかばうと、怪獣の猛攻を敢えてその身で受け止める。
 大胸筋シールド!で火炎放射すら防いでみせる……と思ったら直後にそのまま後方にひっくり返るのが、凄くアグルです。
 (藤宮、なぜ……)
 ライトニング各機の攻撃を受けて怪獣は逃走し、変身の解けた藤宮は気絶。怪獣の正体がアルテスタイガーであるとXIG内部で共有され、 神山と梶尾という、割と珍しい絡み。
 「イザク達にとっては私たち人間が、破滅招来体のような存在だったのかもしれませんね」
 ファルコンの米田リーダーは階級も高そうなのに目下の相手にも丁寧な喋り方なのですが、神山さんも大変丁寧なので、 梶尾さんだけガラが悪いんですか!!
 一方、藤宮は今回も病院のベッドに横たわっており、もともと役者さんの線が細いので、 筋トレよりもこちらの方が似合うといえば似合うのですが(笑) 我夢はそんな藤宮を見舞い、 瀬沼さん辺りが手を回したガード関係の施設かと思われますが、たぶん我夢が、身許保証して入院費用を肩代わりしている。
 「俺は……思い上がっていたんだ」
 知人がプロジェクトに参加していた事から、イザクの存在を知っていた藤宮は、 イザクの怒りを和らげようとその攻撃を甘んじて受けていたが、倒れる前、同じ地球に生まれた存在として、イザクの声が聞こえたと、 我夢に語る。
 「俺は、イザクが俺達人間を憎んでいると思っていた。……でもな我夢、自分が最後の一頭だと、どうしてイザクにわかる?」
 かつて、地上でハンター達に追い詰められていったアルテスタイガーは、その一頭一頭が、生きるために戦い続けた。
 「イザクは自分が地上で最後のアルテスタイガーだと知る事もなく、大勢のハンター達を相手に、その一生を戦いぬいた。……我夢、 イザクはその時と変わっていないんだ」
 「それじゃイザクは……」
 「ああ。イザクには、憎しみよりも激しい意志がある。イザクは生きようとしている。この星で。自分の生まれたこの地球で、 アルテの虎として、生きようとしているんだ。そのイザクの意志が……」
 「今度は多くの人間の命を、奪う事になる」
 人と獣の断絶が語られ、獣の心を人の主観で推し量った事を驕りであったと感じる藤宮の姿は、 「人間」ゆえの過ちであると同時に「人間」でこその視点であり、かつて“地球の代弁者”たらんとした藤宮博也という男の変化が、 端的に示されていて巧い話運び。
 その頃、かつてのアルテスタイガーの生態から、虎怪獣が重油に引きつけられるのではないかと推測したコマンダーは、 首都圏近傍のコンビナート地帯に重点的な警戒態勢を敷くよう指示。
 「どんなに姿は変えられても、あれはやはり、アルテの虎、銀色の眼のイザクだ」
 という、どこか叙情的な台詞の置き方が、なんとはなしに太田脚本ぽさ。
 コマンダーの読み通りに虎怪獣は川崎のコンビナート地帯に近付き、連絡を受けた我夢は、ウルトラマンの力を持つ者としての決断を迫られる。
 「我夢。……躊躇えば、おまえがやられる」
 一足先に怪獣と接触したチーム・ライトニングでは、軍人としての職務を貫こうとする梶尾もまた、神山の言葉に一瞬の迷いを生じさせていた。
 目の前の獣は、破滅を招く「怪獣」なのか? それとも人類による「被害者」なのか?
 「……あれは怪獣だ、怪獣なんだ」
 自らに言い聞かせるように呟きながら攻撃を断行する梶尾さんの心境変化が盛り込まれているのは面白く、これが律子さん (怪獣被害者の遺族)との関係に絡んで一つのテーゼとして練り込まれてくれると面白そうですが、拾ってくれる時間があるかどうか。
 川崎へ急ぐ我夢のEX機@独自改造には、コマンダーからの通信が届く。
 「コマンダー、僕は……」
 「我夢、破滅招来体がなぜ、怪獣となったあいつの細胞に、地球動物の痕跡を残したか、わかるか? ……俺達にわからせる為だ。 あれは俺達人間が、絶滅させた動物だと。しかしもし、俺達がイザクを倒す事を躊躇すれば、破滅招来体はまた、絶滅した動物を、 イザクのように利用する。そんな事を許すわけにはいかん」
 人類が生き残る為に、人類の罪を背負え、とコマンダーは告げ、ライトニングの砲火に包まれる虎怪獣を目にした我夢の胸には、 藤宮の言葉が去来する。
 ――イザクは生きようとしている。この星で。自分の生まれたこの地球で。
 「ガイアーーーーー!!」
 ただそこで、生きようとするものを、人類のエゴで殺す事は許されるのか? コンビナート爆発の被害を防ぐ為に、 人類の犯した「罪の亡霊」に立ち向かうガイアはアグトルニックするも苦戦するが、 ラリアットから空中パンチを浴びせて弱った怪獣に必殺光線を放とうとしたその時、地球パワーを介してその声を聞いてしまう。
 (俺は生きる。ガイア。俺は生きる)
 生きる為の戦い……その意志に気圧されたガイアは再び怪獣ともつれ合い(互いの種族の生存闘争として、 五分にぶつかり合う事を選んだ、という解釈も出来るかなと思う場面)、やや切ないトーンの音楽をバックに激しい投げを打ち合った末、 最後はガイア渾身のハイパーエージェントキックが直撃し、イザクは粉々の光る粒子となって消え去るのであった……。
 「……許してくれ」
 変身の解けた我夢は精根尽き果ててガックリと膝を付き、そこに現れる藤宮。
 「……僕にも、イザクの声が聞こえた。イザクは、この地球で生まれ……この星で生きたいと、そう望んだだけなんだ。それを僕は……!」
 「戦うのが辛ければ、その光を捨てればいい!」
 そんな我夢に、藤宮は敢えて強い言葉を投げつける。
 「……イザクを葬ったのはお前じゃない。彼らアルテスタイガーを絶滅させてしまった、俺達人間なんだ。 我夢、いつかおまえは言ったよな。人間は変われると。俺は、それを信じたいと思った」
 続く藤宮の言葉に我夢は顔を上げ、夜空を見上げる藤宮もいい表情。アグル復活編を踏まえ、 「今の藤宮」が何の為に戦うかを更に補強し、「人間」として「我夢の友」として、再び歩き出した藤宮博也が、 ヒーローとして完全に新生。
 ここに玲子さんが絡まないのが今作全体の舵取りとして良し悪しの悩ましい所ではあるのですが、個人的には今回のエピソードによって、 新生藤宮とは何か、がスッキリと収まりました。
 ちなみに新生藤宮は今回、黒の繋ぎのライダースーツ姿(でバイクにもまたがる)なのですが、 後に参加する『仮面ライダー龍騎』を知っていると趣深いと共に、新生藤宮的な“ヒーローぽい”服装として、それで通すつもりなのか、 気になります(笑)
 いっそ、白いギターを背負うとより没入感が深くなって良いと思うぞ藤宮!!
 或いは、タンクトップを身に纏い、「俺達!」「チーム!「ハーキュリーズ!」「「&」」「筋トレ!」「ブラザーズ!」 に加わって戦隊になるか。
 閑話休題。大変真面目な話に戻ります。
 「だがな我夢、人間は、人間が過去に犯した過ちを、自分たちの痛みとして背負っていかない限り、本当に変わったりはできないんじゃないか?」
 「……藤宮」
 「俺達は、イザクの事を忘れない」
 「ああ」
 立ち上がった二人は、“肩を並べ”、夜空を走った一筋の流れ星を見つめるのであった……で、つづく。
 コマンダーの言葉を藤宮がわかりやすく翻訳した上で積み重ねてきた要素と絡めながら未来への希望と繋げ、良いバランスの着地でした。
 今回巧かったのは、簡単に答を出しにくいテーマを扱うにあたって、ガイアに今そこに生まれる罪を犯すかどうかの選択を強いるのではなく、 既に行われてしまった絶滅という罪、その「罪の亡霊」とどう向き合うのか? という構成にした事。
 これにより、過去の罪から目を逸らすのでも、今そこにある罪だけを回避してちょっといい話として有耶無耶にしてしまうのでもなく、 過去の過ちは厳としてそこに存在し、それについて受け止め考えていく必要(義務)があるという課題を提起した上で、 そこから未来に向けて変わっていける、いきたい、いこう、というテーマを鮮やかに描き出す事が出来ました。
 またそれを、かつて我夢から投げられたボールを藤宮が返す形にした事で、両者を補い合う関係に並び立たせた、というのがお見事。
 年間の構成としての必要な要素を取り込みつつ、1エピソードとしても大変バランスが良く、今作における太田脚本のアベレージの高さがまたも光った一本。
 次回――攻撃は最大の防御なのか、はたまた、血を吐きながら続けるマラソンなのか!

◆第44話「宇宙怪獣大進撃」◆ (監督:根本実樹 脚本:武上純希 特技監督:佐川和夫)
 「人類の希望を打ち砕く勇気があるか? ウルトラマン」
 は今回お気に入りの台詞。
 「遂に根源的破滅招来体に、一矢報いる事が出来るんですね」
 アルケミースターズによる解析から、根源的破滅招来体の根城が恒星系M91であると割り出され、 ワームジャンプミサイルによる攻撃プロジェクトが着々と進む中、それに反対する我夢。
 「我夢……時には力も必要なのよ」
 「頭ではわかってます。でも……胸のこの辺りで、違う、違うって囁く、もう一人の自分が居るんです」
 「やっぱり貴方は軍人にはなれないのね。狼の群れに迷い混んできた羊」
 珍しく我夢とクロウ01・稲城が絡み、この後の展開に重要な転機となる疑問へと繋がっていくのですが、 稲城リーダーだからこそ、その疑問に辿り着き、我夢に問う事ができたという積み重ねや、 このエピソードでの掘り下げは特に無いのが、惜しまれるところ。
 キャラクター数が多い中で、XIG隊員それぞれの存在を拾って役割を与えてくれる事自体は嬉しいのですが、 そこから特にパーソナルな部分を浮き上がらせるわけではないので、どのキャラでも代替え可能になってしまっているのは、 詰めが物足りません。
 例えば稲城リーダーなら、実質日陰者扱いを受けながらも軍人にこだわっていた部分――今回の台詞に絡めるなら、 羊扱いを受けながらも狼であろうとしていた姿――を我夢との関係性を通じて浮き彫りにするなど出来ればより面白かったと思うのですが、 そこまでは手が回りきらず。
 ……まあ、実際に個々の隊員に関してそこまでやると情報量過多になった可能性は高いですし、取捨選択の結果、 という面もあるのでしょうが(と考えると原田監督の遊び心もありましょうが、チーム・ハーキュリーズはやはり別格の贔屓されぶり)。
 「宇宙怪獣は、なぜ暴れるの?」
 「え?」
 過去の自分もといガイアの戦闘データを見つめていた我夢は、先程の発言の謝罪と共に稲城から受けたシンプルな問いかけに答えられなかった事から、 なんと第8話以来となる浅野古代生物研究所で、アルケミースターズの一員であり、 人間以外の生物に強いシンパシーを持ち得る浅野未来に、その問いを投げかける。
 「その答は簡単よ。怪獣だって、生物だから」
 未来は、宇宙怪獣は自分のテリトリーから無理矢理別のテリトリーに運ばれた事により、 そこを自分のテリトリーにして生き延びる為に暴れているのだ、と我夢に告げる。
 「……そうか。怪獣そのものは根源的破滅招来体じゃないんだ」
 「そう。彼らは。利用されているだけ」
 エリアルベースに戻った我夢は、改めて攻撃プロジェクトへの反対意見を具申し、恒星系M91は、怪獣の住処ではあるが、 破滅招来体の母星ではない可能性を述べる。
 「我々は、コッヴやパズズを根源的破滅招来体と便宜上呼んでいる内に、とんでもない間違いを犯していたんです。怪獣そのものは、 破滅招来体じゃない。ただの生物なんです」
 ここで、未来の解答はあくまで「宇宙怪獣を純粋に生物と見立てた時」の見識であり、それ以上の根拠を持たないにもかかわらず、 そこに「我夢の知識や経験」が加わって一つの推論を導き出すのではなく、我夢が未来の受け売りそのままを自分の解答にしてしまうのは、 かなり残念だった部分。
 そこに主人公としての我夢の積み重ねが明確かつ劇的に加えられてほしかったところで、今回、 話のテーゼは非常に面白かったのですが、そこに至るプロセスの精緻さがやや不足。
 「怪獣そのものに悪意は無い。環境の変化に、適応しようとしているだけだ。そう言いたいのか」
 「はい」
 「だとしても、我々にとって脅威である事に、代わりは無い」
 そんな参謀に対して、仮に地球人がM91を壊滅させた場合、破滅招来体はまた別の星と地球を結ぶに違いない、と我夢は重ねる。
 「どういう事だ?」
 「地球を完全に平和にする為には、全宇宙の大型生物を抹殺するしかなくなるんです。かつて人類が、自分たちの安全の為と称し、 野生生物を絶滅に追い込んだように」
 最終盤に入り、「根源的破滅招来体とは何か?」という点と物語のゴールがスタッフ間で共有されてもいるのでしょうが、 前回のエピソードとも接続しつつ、一歩間違えると、地球人が他の星にとっての「破滅招来体」になってしまう という状況の逆転が発生するのは、非常に面白かったです。これを、 地球単位→宇宙単位とする事でミクロからマクロへスムーズに視点を移して理解しやすくしたシリーズの構成もお見事。
 個人的に「根源的破滅招来体」を、漠然とした「宇宙の摂理」的なものなのかと受け止めていた事もあり、 途中から劇中人物達が想定する「強烈な悪意に基づく奸智を持った存在」という人格性がピンと来ていなかったのですが、 今回のエピソードによりようやく、“地球を個別で狙っているのではなく、全宇宙的な破滅を目論んでいる(かもしれない)存在”として、 人格性を受け止められるようにもなりました。
 言ってみれば、(最終的な着地点はまだわかりませんが)“全面核戦争の引き金を引かせようとしている者”というメタファーは、 この当時にはまだ相応のリアリティも残っていたのかな、と。
 そしてその破滅の連鎖には、地球人自身も加われる、というのは痛烈なテーゼであり、そこにシリーズ初期作品への視線を感じるのは、 確かシリーズファンでもあった筈の武上さんのテイストの強く出た所でしょうか。
 「…………だがもはやこの作戦は、我々の権限で阻止できる段階じゃないんだ」
 コマンダーはプロジェクトの全権を持つ谷本参謀の説得を促し、我夢はジオベースへと急行。
 「谷本参謀! すぐにこの計画を中止してください!」
 思い切り重要関係者のダニエルくんに根回しを図るでもなく、正面から乗り込んでいくのが若さですが、 我夢らしい若さと迂闊さではあります。
 「この計画を実行してしまったら、人間は引き返す事のできない泥沼に脚を踏み入れる事になるんです」
 「私はそうは思わない。この計画は、破滅招来体に対する唯一の有効な攻撃手段だ。人類に残された、たった一つの希望なんだよ」
 「人類が宇宙の破壊者になってもいいんですか?!」
 「では君に、他に有効な手段でもあるというのかね?」
 「……今はありません。でも、きっと何か……」
 参謀やコマンダーが割と話を聞いてくれるタイプなのですっかり忘れていたけれど、 そもそも《交渉》スキルとかポイント振っていなかった我夢はものの見事に玉砕し、 話にならないとポイ捨てされたところに姿を見せる藤宮。
 「我々人類は、破滅招来体のシナリオ通りに走り出してしまったのかもしれない」
 そして遂に、人工的なワームホールの作成が始まり、ミサイル発射への秒読みが始まる……。
 「宇宙に夢の道を作る筈が、抹殺兵器を送り込む為に使われるとはな」
 「人類は今、テリトリーの壁を壊そうとしている。踏み込んではいけない世界に攻撃を加えようとしているんだ」
 我夢と藤宮はその光景を沈痛な面持ちで見つめ、エリアルベースで作戦空域の監視を指示するコマンダーが、 侵入者が居た場合「例えそれが、何者であっても」排除せよ、と命令を出すのが前振りとして緊張感を高めて巧い。
 「ただの警戒出動じゃ、なさそうですね」
 「ああ。石室コマンダーは具体的な敵を想定されているのかもしれん。……それが誰かはわからんがな」
 エリアルベースからはピースキャリーとチーム・クロウが出撃し、虚空に開くワームホールを見た我夢は声を振り絞ってガイアに変身。 人類の希望の敵としてワームホール発生装置へ迫るガイアを一度は阻止するチーム・クロウだが、二回目の攻撃は出来ずに命令を拒否し、 苦悩の表情を見せる稲城リーダーの個人的な掘り下げがあったわけではないので、アグトルニック回の二番煎じにしかなっていないのが、 やはり惜しいところです。
 ワームホール発生を阻止しようとするガイアだったが、それよりも早く、地球産ワームホールを利用して、 破滅招来体が二体の怪獣を地球へと送り込み、その攻撃によりワームホール発生装置は破壊されてしまう。 大迫力のスーパー尻尾薙ぎ払いを見せた二大怪獣はワームジャンプミサイルへと迫り、仮にそれが地表で爆発するような事があれば、 地球は消滅の危機を迎えてしまう!
 「人類は……自ら作り上げた最強の兵器で、自滅してしまうのか?」
 ガイアは怪獣を食い止めようと捨て身の体当たりを仕掛け、後方から支援するチーム・クロウだが、放電攻撃を受けて戦線離脱。
 「奴ら自身には、地球破壊の目的意識が無いとしても、生物の本能で暴れているだけだとしても、だからこそ厄介なんじゃないか、我夢」
 藤宮はアグルへと変身して遂に赤と青――二人の巨人が肩を並べてタッグで怪獣へと挑み、一度は必殺光線をためらうガイアだったが、 最後は豪快なダブルジャイアントスイングから同時必殺光線で二大怪獣を木っ葉微塵に粉砕し、ここに筋トレ殺法コンビは、 タッグマッチ初勝利を挙げるのであった。
 ところで、怪獣の遠距離攻撃をガードする際、光のシールドを出すガイアに対してアグルは両手を広げて胸板で放電を受け止めており、 やはり、鍛え上げた大胸筋こそが栄光のイージス。
 ガイアとアグルは勝利の友情タッチを決め、ここに子供達の希望が実現したわけですが、 久々に青い巨人が出てきたと思ったら赤い巨人とやたら長く手を打ち合わせ、この世界の大人達は、その光景に大変困惑しそうです(笑)
 「人類は……たとえ希望を失っても、夜明けと共に、また新しい希望を見つけてくんじゃないでしょうか」
 「……そうだな。……そうだといいな」
 我夢とコマンダーはエリアルベースから夕焼けに赤く染まる空を見つめ、つづく。
 次回――芸風の違いすぎる謎の怪人! 柊withバズーカ! 姉妹会談?! と予告時点で情報量が多すぎて丼からこぼれそうですが、 今回は綺麗にまとまるのか?!

◆第45話「命すむ星」◆ (監督:原田昌樹 脚本:古怒田健志 特技監督:満留浩昌)
 我夢は藤宮(常時ライダースーツの採用は見送られ、ジャケット姿に落ち着く)に、 稲森博士の地球環境改善プランとパーセルの最終バージョン設計図のデータを渡し――
 「高山くん、残念です。君の行為は、XIGに対する重大な背信にあたります」
 と「この者、機密漏洩の罪」により樋口さんのオーラパワーでお仕置きを受け……たりはしなかったものの、大丈夫なのか我夢。 それは藤宮に横流しをしていいデータなのか我夢。
 と瀬沼チェックが入っていそうな頃、ガード環太平洋部隊の柊が再登場し、破滅招来体に対抗する新たな装備を開発すべく、 参謀と折衝を重ねていた。
 「この星に住んでいるのは、人間だけではないんだからね」
 「地球は人類唯一の生存圏だ。それを脅かすものは、いかなる相手でも、排除すべきです」
 人類の為の武力行使、という信念を固く抱く柊は、地底貫通弾の事件を経ても参謀とは相容れない姿勢を見せるが、あるオフの日、 通りすがりの素人風水師と出会ってしまう。
 「怪獣の為に、自分の大切な人が傷ついたら、どうしますか?」
 「……怪獣を、憎むかもしれません。でも、憎しみは、新たな憎しみを生むだけです」
 「……憎悪は理性を失い、判断を狂わせる。私は、自分の復讐の為に戦ってるわけじゃない」
 「それじゃ、何の為に?」
 「守る為に。自分の大切なものを」
 〔風に飛ばされた帽子を拾う〕イベントをきっかけに一気に心の隙間をぐいぐいこじ開けられてしまう柊ですが、たぶん黒田さん、 劇中最強のミステリアス美女ポジションなので、男性キャラの精神防御が半減する仕様です (梶尾さんと接触させてはいけない)。
 「アッコ……空にはね、天使が居るんだって。それを見た人は、もう二度と地上には降りてこない。 それでもあの人達は……それが見たくて空を飛ぶ」
 同じ頃、これまたオフの敦子は姉と語らっており、そろそろ残り話数も押し詰まってきてゆっくり描ける余裕が無くなってきたのでしょうが、 姉妹の物語はだいぶ圧縮気味に投入。
 「戦いに魅入られた人は、本当に大切なものの事なんか忘れてしまう。……そういう人を好きになっちゃ駄目よ。アッコ。 辛いだけだわ。でもね、私は……もう一度だけ待ってみようと思うの」
 姉の言葉に敦子は笑顔を浮かべ、安定して扱いの微妙な敦子でありますが、病気がちだったという少女時代や、 その後の距離感の描写を見るにお姉ちゃん大好きっ子な雰囲気はあり、夫を失った姉が、 生きる事に対する前向きさを取り戻しつつある事を純粋に祝福してはいそう。 ……まあその辺りの柔らかい部分が背景に漂うだけで劇中で形にならないので、ヒロイン力が上がらないわけですが!
 飛行機乗りに対するお姉さんの言葉は、梶尾さんと敦子の距離感が縮まった(ように見えたが幻想だった)第19話ラストの、
 「俺は飛行機乗りだから、いつも早く飛ぶ事ばかりを考えてきたんだ。……でもな、早く飛んでばかりだと、 近くにある大切なものが見えない事もある」
 を踏まえているようでもありますが、さてもう一押し、有るのか無いのか! 梶尾さんは、今度こそ、 大切なものを視界に収める事が出来るのか!
 エリアルベースでは参謀とコマンダーが雲海に沈む夕陽を見つめながらコーヒーブレイク中。
 「柊が言っていたよ。天の高みに居る人間に、地上の人間の痛みはわからないとね」
 「……地上の生活を離れてみて、初めて気付いた事が、自分には沢山あります」
 「……いやぁ、美しい眺めだ。100年後、1000年後の子供達にも、見せてやりたいなぁ。この今と同じ、美しい空を」
 「はい」
 今作を貫く要素の一つである「天の視点」「地の視点」から、天に居る事で広がる視点・新たな気付きがある、 というポジティブな面が引き出され、成る程、今作における天(エリアルベース)の視点とはすなわち、 宇宙からの視点であったのだな、と納得。
 エリアルベースというのは擬似的な宇宙ステーションであり、人類がそこに足を踏み入れた時、 地球を新たな視点で見る事が出来る筈――我夢を中心としてその変化が少しずつ描かれているのがエリアルベース乗員である―― という観点が『ガイア』の物語の根底にあったのだな、と振り返って色々な事が腑に落ちました。
 だがその時、ワームホールから、巨大なカラス天狗が襲来!!
 予告の映像時点では黒マントの怪人に見えた為に、いきなり芸風変えてきたな破滅招来体?! と困惑していたのですが、 マントに見えたのは黒い翼で、人型ではあるが動物的なラインは外しておらず、戦闘で見せるメカ寄りな胸部開放ギミックも含めて、 これまでの破滅怪獣のハイブリッドの範疇に収まっていてホッとしました。左右の足の色が非対称の、白黒カラーリングが格好いい。
 迎撃に出たアグルの攻撃を高速飛行でかわしたカラス天狗は、ガード国際フォーラムを狙い地上へ。 アグルの放ったウルトラリーゼントバスターを胸部の装置で吸収すると、増幅反射。 直撃を受けてのけぞり倒れたアグルは一気にカラータイマーが赤く点滅し、悠然と迫るカラス天狗の攻撃により、 地球エネルギーを吸収されて変身解除の完敗を喫してしまう。
 国際フォーラムを木っ葉微塵に消し飛ばしてカラス天狗は飛び去り、またも圧倒的な破壊の災禍を目の当たりにした柊は、藤宮と接触。
 「おまえの力を、俺に貸せ」
 柊は消耗した藤宮に肩を貸して車に運び、ここにまさかの新コンビ結成?!
 一方、寺の境内で地底の龍の声を耳にした黒田(シルエットの龍が動く演出が格好いい)は取材中のKBCの前に姿を見せ、柊との出会いを語る。
 「あの人は、優しい人です。愛するものを守りたい。単純に、それだけの為に。でも、見ている世界が狭すぎる」
 「でも、人間が人間のこと考えるのは、当然のような気もするんだけど」
 「……私……青いウルトラマンと一緒に、空を飛んだ事があるんです」
 「視点」というテーゼを、ウルトラマンをキーに天と地でクロスさせ、元が本編屈指の好きなシーンというのもありますが、 あれはやはり、玲子さんにとっての一つのパラダイムシフトであったのだと、ここでこれを拾ってくれたのは、 凄く良かったです。
 黒田は人知れず、地底から木霊する怪獣の叫びを耳にし、不穏な音楽と共に変化する風水師の表情で雰囲気も巧く切り替え、今回、 複数のキャラと場所を行き来しながら語りの場面が多い一方、スピード感のある戦闘シーンともテンポを崩す事なく融合しており、 密度の濃い古怒田脚本を鮮やかに調理する、13−14話以来(壬龍−狼男回)となる原田監督と満留監督の二班体制の連携もお見事。
 再び襲来したカラス天狗は強力な破壊兵器を貯蔵するガードの施設に迫り、ライトニングと戦線を担う迎撃部隊として久方ぶりにおにぎりタンクが登場。 一方、柊は藤宮と共にカラス天狗に直接攻撃を仕掛けようとしていたが……
 「……残念だが、今朝の戦いで、力を使い果たしたようだ」
 使えねぇ……! と柊が怒りを噛みしめている内に、チームライトニングがまとめて撃破されてしまい、梶尾リーダー、 第45話にしてはじめての被撃墜。アグル撃破・目標破壊・梶尾撃墜、と白星を積み重ねるカラス天狗の脅威がいや増していくのですが、 梶尾さんの墜落シーンの合間に律子さんの姿を挟むの、色々怖いのでやめて下さい(笑)
 大河原と北田は不時着に成功するも、梶尾機は通信途絶。居ても立ってもいられずに我夢はブリッジを飛び出し、 地上ではスティンガーが決死の抗戦を続ける。
 「俺達だけでなんとか奴を食い止めるんだ!」
 だがスティンガーの火砲は空手チョップで弾き落とされ、破滅的災厄が間近に迫ったその時、土煙を噴き上げ、 地底から出現した虎怪獣がカラス天狗に挑みかかる!
 柊「あの怪獣が……なぜ今」
 藤宮「この星に住む生き物たちには、与えられた役割がある」
 ここからしばらく、新100万マッスルパワーズと、KCBサイドのリアクションを行き来するのですが、 視線と表情で地底怪獣絡みの雰囲気を盛り上げる黒田さんの使い方が秀逸で、ここに来て、存在感を発揮。
 田端「あの怪獣は……」
 黒田「大地に住むものです」
 柊「どうしておまえが、その怪獣と戦う」
 我夢「守りたいものがあるんだ、あいつにも」
 藤宮「我夢……」
 カラス天狗に噛みつくも角を折られてしまう地底怪獣だったが、 その行動に困惑しながらも確かな意志を感じ取った柊の放ったマッスルバズーカがカラス天狗にクリティカルヒットし、 結果として互いを助ける事になった人間と怪獣はひととき視線をかわして見つめ合い、そこへ飛んできた我夢がガイアへと変身。
 怪獣が人型フォルムの時は常より格闘戦に気合いが入るのが通例ですが、互いに回し蹴りとチョップを打ち合った後、 相手の蹴り足を取ってガイアが放つ巻き込み投げが滅茶苦茶格好いい。
 だが優勢も束の間、満を持して放った久方ぶりのうにょんバスターを、アグル同様に吸収反射されてしまうガイア。
 「我夢!(おまえ俺の戦い見てたのかよ?!)」
 カラス天狗は倒れたガイアに迫り、
 「奴はおまえのライフゲージを狙っているぞ!」
 そんな名前だったのか、カラータイマー部分。
 ガイア絶体絶命のその時、地底怪獣が背後からカラス天狗を攻撃して足を止めるも、反撃の一閃で今度こそ沈黙するが、 チーム・ハーキュリーズの面々はその姿に奮起する。
 「あいつ……」
 「お前の努力は無駄にはしない! 撃てー!!」
 「おう!」
 ハーキュリーズとスティンガーの真っ当な陸戦の見せ場が単純に嬉しかったのですが、良くも悪くも、 素直に怪獣に感情移入する姿に違和感がないハーキュリーズが、納得度の高い役回り。 カラス天狗の攻撃を受けて機関停止してしまうスティンガーだったが、そこにもう一つのおむすびタンクを駆って柊が参戦し、 火を噴く筋肉がカラス天狗の進行を阻む!
 「立て、戦え! 我夢」
 膝をつき荒い息を吐くガイアの姿に藤宮の声が重なり……
 「立ち上がれ――ガイア」
 柊の言葉に合わせて、タンクのキャノピーに反射の映り込んだガイアが顔を上げ(この演出が非常に秀逸)……
 徐々に体勢を立て直していくガイアの顔、バストアップ、握り拳、口元、と巨大な勇者のパーツをアップで切り取っていき、 それをリポートも忘れて固唾を呑んで見守るKBCトリオ。
 残された力を振り絞って遂に立ち上がるガイアの膝から土がこぼれ落ちる光景をこれもアップで切り抜き、 巨大感と不屈の意志を一つのフレームに収め、手を組んで祈る黒田、再びガイアのバストアップ、 天空から見守るエリアルベースブリッジの面々……そして、再び立ち上がり、破滅の使者に向けてファイティングポーズを取るガイア。
 この一連のシーンは、話の流れ、BGM、映像の見せ方の全てがはまって、大変素晴らしかったです。 
 ガイアの放ったスペシウム的な光線を吸収しようとするもオーバーヒートに陥ったカラス天狗に柊&ハーキュリーズが一斉攻撃を浴びせ、砕け散る胸のコア。
 「今だ!」
 「撃て! ガイア!」
 藤宮と柊の声に応えるようにアグトルニックしたガイアは、前略地球の隙間ビームにより遂に強敵カラス天狗を粉砕するが、その勝利を見届けるようにして、 満身創痍だった地底怪獣もまた、瞳の光を失うのであった……。
 「――勇敢なる戦友に、敬礼!」
 夕陽を背に眠りについた地底怪獣を見上げて、柊、我夢、ハーキュリーズが敬礼を送り(藤宮は横に並ぶが敬礼はしない)、 たっぷりと時間をかける原田監督のハーキュリーズ愛(笑)
 前回登場時、難しいテーマを持ち込みすぎて消化不良になっていた柊は、その純粋すぎる信念ゆえに、 怪獣の純粋な意志を感じ取ってその存在を認める事が出来た、という軟着陸になりましたが、つまり筋肉があれば、 パーセルに頼らずとも怪獣と意思疎通できるのです。
 筋肉は調和だ!
 また、
 「怪獣の為に、自分の大切な人が傷ついたら、どうしますか?」
 「……怪獣を、憎むかもしれません。でも、憎しみは、新たな憎しみを生むだけです」
 「……憎悪は理性を失い、判断を狂わせる。私は、自分の復讐の為に戦ってるわけじゃない」
 「それじゃ、何の為に?」
 「守る為に。自分の大切なものを」
 前半に置かれた黒田と柊のやり取りがそのまま、今回の怪獣の行動理念になっているといえ、 「大切なものを守る為」という曖昧な共感以上に、柊が復讐鬼でないというのならば、 自分自身の似姿として怪獣の行動を認めざるを得ない、という補助線が引かれているのは、お見事。
 柊登場回の第38話では詰め込みすぎた要素を捌ききれなかった原田×古怒田コンビですが、実質的なその後編といえる今回は、 見事にまとめてくれました。
 要素の連動性が強い『ガイア』の中でも、その演出ラインやキャラの使い方から特に連続性の強い原田監督回ですが、 恐らく今回と次回が『ガイア』ラスト演出になるのか、今作における集大成という感もあり、 濃厚な原田ワールドとでもいえるものが展開して大満足でした。
 「大地に住む者達よ……その時は、もうすぐ訪れます」
 そして壬龍のビジョンを目にする黒田さんはすっかり地底怪獣の巫女になっておりますが、アルケミースターズをはじめ、 超越存在との同調性を持った人間がそこかしこに存在する、というのは今作の基本的な世界観なので、あまり違和感は無し。
 ところでスキャンダルが取り沙汰された田端×黒田ですが、今回の直接対面で特に掘り下げがなく、 さすがにこれは拾われそうにないか……? 前回「あいつ」呼ばわりから、もしかして元夫婦? とか想像を逞しくしていたのですが、 面と向かっては「恵ちゃん」呼びで態度も大変柔らかくなり、黒田さんと対話すると男性キャラの精神防御が半減する仕様です (梶尾さんと接触させてはいけない)。
 なおその梶尾さんは、余りにもそれどころではない事態に我夢にさえ忘れられかけていたが、 煙を噴き上げる機体を背に傷だらけで脱出に成功する、という主人公ムーヴをキめていました(笑)
 「俺は……こんなところで……死ぬわけにいかないんだ」
 次回――ヒーローゲージを溜めに溜めた梶尾さんと律子さんにもう一押しあるようで、私、大歓喜。そしてまさかの、そこも拾うの?!  色々楽しみです。

◆第46話「襲撃の森」◆ (監督:原田昌樹 脚本:長谷川圭一 特技監督:満留浩昌)
 とあるオフの日、エリアルベースの廊下にて。背広姿でびしっと決めた梶尾の落ち着きの無い反応を見た我夢は、ある事に思い至る。
 「はっはーん…………はっはーん」
 「なんだよ?!」
 「……そういう事ですか」
 今回はある意味、冒頭のここだけで満足(笑)
 挙動不審になる梶尾さんとそれをからかう我夢の人間的成長と見ても素直に楽しいのですが、 得心顔で梶尾に背を向ける我夢の「そういう事ですか」の吐き捨て加減が、 80%の祝福と20%の嫉妬にも見えて笑えます。
 僕たちの梶尾さんの心を奪った女が居るなんて、許せない!!
 ……はさておき、大学の友人ズから相談を受けた我夢は、友人ズの一人・サトウ(女好きキャラ?)が、 根源破滅教団に入れ込んでしまった事を知らされ、まさか友人ズがこんな形で活用されるとは思わず、お見事。
 根源的破滅招来体の脅威にさらされる世界における、パラダイムシフトの一つの象徴として良い味を出していた根源破滅教団が遂に大きくクローズアップされ、 その考えを許せない我夢はサトウを脱会させようと教団の集会に乗り込むが、友人ズともども教団の信者達にぐるりと取り囲まれてしまう事に。
 「彼は理解したんだよ。人間の傲慢さを」
 「地球は怒っています。今に必ず、その罰を与えます」
 ……あ、ここ、東映ヒーローがよく戦っている場所のような(笑)
 ぐいぐいと顔を近付けて迫る不気味なカルト集団に圧迫され、哀れな3人が水落ちを披露していた頃、はっはーんは、 暗い色調の服――半分喪服、のイメージか――を身に纏う律子さんと、ベイサイドを歩いていた。
 「梶尾さん……空ってそんなにいいですか?」
 「え?」
 「私には、待つ事しか出来なかった。きっと帰ってくる。いつもそう信じて待つ事しか。そしてある日、帰ってこなくって。 結局……最後は空に取られちゃったんです」
 律子は手にしていた花束を海へと投下し、服装といい言動といい、 前夫の命日なり何なりで律子にとっての区切りと踏ん切りをつける行為であったのかと思われるのですが、 梶尾さんと律子さんのドラマは、大幅に途中を省略しながら(ウェイトを割く所ではないわけですが) たいがい雰囲気だけで展開していて、放映当時いったいどれだけの人が、これを見ながらニヤニヤできたのかは少々気になります(笑)
 私としてはツボにドンピシャすぎて、手の平の上で踊りまくっているわけですが!
 「自分は……! …………」
 「…………梶尾さん。あなたは……必ず帰ってきてくれますか?」
 梶尾は律子の問いに言葉を返す事ができず……エリアルベースに戻った我夢は、藤宮の言葉を思い出していた。
 ――「我夢……俺はまだ時々疑う事がある。奴らを呼び寄せるのは、やはり人間なのかもしれないってな」
 「……そんな事」
 「なに独り言云ってんの」
 通りすがりの敦子さんは、この後待ち受ける修羅場を予期しているかのように、普段より3割増しぐらいできつかった。
 「破滅を受け入れ美しく滅びる事。それが人類に与えられた最良の選択なのです」
 「――そして、私たちは生まれ変わる」
 地上では教団の集会が続き、まるでその思念が呼び水になったかのように、地中から突如、高エネルギー体が地表へと出現する。
 「根源破滅よ、導きたまえーーー! 我らを救いたまえーーー!!」
 歓喜の声をあげつつも及び腰に逃げ出そうとした教祖を巻き込み地底から姿を現したのは、第三の地球クリーンマシーンを中心に、 異常に巨大化した多数の樹木。地面を、ビルを突き破り、巨大樹木群はあっという間に森林を形成していくと都市を飲み込んでいき、 爆発的に成長・繁茂する樹木が次々と地底から出現する特撮は、いつもとちょっと違う下方向からの破壊と範囲の大きさが迫力たっぷり。
 「あれも、自然コントロールマシーン……」
 今回もコマンダーがプレシャス表面の篆書体?を「深緑」と読み解き、上層部は人類文明そのものを脅かす勢いで拡大する森を食い止めるべく、 ファイヤーボムの投入を決意。だがその余りに早い森の侵攻にこのままでは大きな人的被害は免れない…… 我夢はアルケミースターズへと助力を求め、通信で登場したキャサリンの姿に、無表情でボールペンを取り出す敦子、 そんなところばかり拾われて、敦子……。
 市民の大混乱を描く玲子さんレポートをちらっと挟んだと思ったら、キャサリンがブリッジに立っているのはかなり無理矢理で、 どうも今回、梶尾×律子に決着をつけたい監督と、エント編の後始末をつけたい脚本の思惑が整理しきれていないというか、 そこに年間のオーダーであるプレシャスの真相を含めて無理を承知で全て強引に放り込んだら、やはり鍋が吹きこぼれたといった感。
 深緑の内部構造はエントに酷似しており、破壊工作のアドバイザーとしてキャサリンを同行させてスティンガーが出撃。 敦子はボールペンをへし折り、ハーキュリーズはデレデレし、まあキャサリン、かなり筋肉の使徒寄りですからね!
 「……脳天気すぎる」
 「……チューインガム、何か言ったか?」
 「い、いえ、いい天気だなって」
 スティンガー着地の震動で倒れる放置自転車に「スティンガー被害者の会」と書いた紙が張られているという小ネタを挟み、 前回に引き続いて大活躍のスティンガーは、深緑の外壁を破って内部へと突入。 ここでハーキュリーズの三人が防衛システムと戦っている間に我夢とキャサリンの二人だけを先行させ、 それどころか内部に二人を残したまま一時撤退をしてしまうのは、我夢×キャサリンと深緑と繋がる女の対話をさせる都合で、 かなり無理のある展開になってしまいました。
 どうしてもそうするなら、やむにやまれぬアクシデントで分断されるか、 キャサリンを連れて先行を主張する我夢の筋肉をハーキュリーズが信じる、 的な我夢×ハーキュリーズの友情の集大成になるような劇的な要素を入れてほしかった所です。
 深緑の中心部では、破滅教団に参加していた女が我夢とキャサリンを待ち受けており、 これまで出現した地球クリーンマシーンとはそもそも、地球環境の再生の為に自ら滅びを受け入れた人類が作り出したものであり、 破滅を望むその思念を通じ、破滅招来体に未来から導かれたのだと語る。
 「もっと早く人類に滅びてもらう為に」
 「嘘だ! そんな事ある筈が!」
 抵抗した我夢はツタに捕らえられてガイアの力も封じられ、女はキャサリンへと囁きかける。
 「人類は待つしかない。滅び去るその時を」
 「未来は、ただ待つだけのものじゃない! 今、今自分に負けなければ、きっと変えられる!」
 可能性未来のエントを操る、恐らくは可能性未来のキャサリンである女が、科学の行き着く先は「地球を滅ぼす」か「人類を滅ぼす」 かの二者択一でしかないとキャサリンの諦めを促すも、我夢のエールを受けたキャサリンがそれに抗う……という展開なのですが、 肝心要の、女の言葉を受けたキャサリンの「葛藤」が欠落している(映像的には、一切迷わず撃っている)為、 プレシャス人女が一方的に語っているだけになってしまい、プレシャスの種明かし含めて、どうにもピンと来ないシーンに。
 それこそエント回(第33話)では、キャサリンの心境の変化に我夢が積極的に関わらず、 キャサリンが一方的にエピソードの主題を繰り返すばかりになっていたのですが、 今回は我夢とプレシャス人が一方的に語るだけになってしまいました。
 それに対するキャサリンのリアクション、キャサリンが「科学」「未来」「自然と人間」について、 どんな信念を持って女の言葉を跳ね返すのか、が最も重要な部分だと思うのですが、これといった葛藤の描かれないまま 筋肉で拘束をぶち破るだけなので劇的さに欠け、エント回の後始末としてもテーゼが宙ぶらりんで締まらない出来に。
 「自分自身で未来を掴め!」
 という我夢の言葉は作品全体を貫く要素であり、そちらとの接続を重視したとは言えますが、
「どうすればいい……何が未来を変えるんだ?!」
「――意志です」
「意志?」
「ええ。死のうとするか、前向きに生きようとするか。どの未来を選ぶかは、人間自身の意志なんです」
(第32話「いつか見た未来」)
 エピソードの内容ともはまって大変綺麗に持ち込んだ第32話と比べてしまうとパッとせず、 「個人の問題」から「普遍的なテーゼ」へのスライドが上手く行きませんでした。
 キャサリンの一撃により深緑のシステムが停止し、我夢はガイアへと変身。対する深緑も変形し……って、 足が生えただけだ!
 その間にキャサリンはスティンガーへと戻るのですが、一人で戻って「みんな我夢に助けられたわ」では、さすがのハーキュリーズも、 我夢=ガイア、と気付くのでは(笑) ……まあもう、XIGメンバーは皆なんとなく気付いていてもおかしくないですし、 キャサリンがみんな知っていると勘違いしている可能性もありますが。
 歩く釣り鐘状態でガイアの飛び蹴りを受けた深緑ロボは、 森のエネルギーを吸収するとフェイスオープンして腕が飛び出す第三形態へと変形し、ガイアと激しく激突。
 技モーション中にツタで拘束され電撃を浴びるガイアだが、 ライトニングとスティンガーが怪ロボットに攻撃を浴びせた隙に全身全霊で筋肉をフル稼働すると体制を立て直し (そのガイアを応援する仲間達の顔が次々と映されるのが盛り上がります)、 拘束を引きちぎる動作とエネルギー集中モーションを重ねて放つ、滅茶苦茶格好いい真・うにょんバスターにより、深緑ロボを撃破。
 この最終盤に来て、今作らしく筋肉を強調しながらこれまでに無い見せ方で必殺技が放たれ、うにょんバスター好きとしては、 大満足の一撃でした。
 そして――EDパートに入り、今日も死線をくぐり抜けて帰還した梶尾は、ベイサイドに佇む律子に一輪の花を贈る。
 「自分は……帰ってきます。この戦いが終わったら、必ず」
 そんな二人を、高山我夢が見ていた。
 木陰に隠れて二人の姿をじっと見守るピーピング高山は、抱きしめ合い頬を寄せる二人の姿にのけぞってあわあわとひっくり返り…… 梶尾さんが男を見せた告白シーンよりも、それを覗き見しながら激しく動転する我夢、の方が面白くなっているのは良いのか悪いのか。
 「お姉ちゃん、頑張って」
 色々な色々な色々なものから脱落した敦子は、それを更に遠くから見つめながら愛する姉にエールを贈り、 見えない見えないあそこで覗き見している我夢の横に誰か居るとか全っ然見えない。
 公園に座り込んでいた藤宮は、少女(例のビル崩落から助けた少女か)から花を貰って頬にキスを受け、 我夢は我夢で一緒についてきていたキャサリンから頬にキスを受け(しかしまあ、相手はカナダ人ではある)、 その背後で抱きしめ合う梶尾と律子……から、水面がキラキラしている同じような背景で何故か見つめ合う我夢と藤宮、 という超ドッキリシーン(笑)
 危うくとんでもない事になりそうな流れでしたが、真剣な表情の二人から並び立つガイアとアグルの姿に繋げ、 迫り来る死闘の予感を見せて、つづく。
 残り話数も差し迫り、劇中の色々な要素に決着をつけようという姿勢そのものは好きなのですが、 梶尾×律子派からするとキャサリンがノイズであり、キャサリン派からすると梶尾×律子がノイズであり、 地球クリーンマシンをエントと絡めて処理しようとするも中途半端、と三方一両損みたいな印象のエピソード。
 特に、吉田伸→川上英幸→長谷川圭一、と登場回の担当が別々となった地球クリーンマシンの扱いに苦慮した節が窺えますが、 最初の吉田回の「人類の理解の範疇を超えた得体の知れないマシン」という扱いが巨視的なスケール感もあって好きだったので、 これに関しては無理に理屈をつけなくても良かったのではないかな……と。
 まあ、そこになるべく理屈をつけていきたがるのが『ガイア』らしさとはいえますが、 プレシャス初登場の第7話はかなり好きだっただけに、その後なんとなく持て余される扱いになってしまったのは、残念でした。
 不満はありつつ、梶尾×律子派としては途中で放り投げられずにここまで到達した事に感涙ものの満足感がありますが、ホント、 いったい何がどうして、この二人はこんな事になったのでしょうか(笑)
 次回――予言の刻、来る。

◆第47話「XIG壊滅!?」◆ (監督:北浦嗣巳 脚本:右田昌万 特技監督:北浦嗣巳)
 注目は、いつの間にか「玲子」呼びな上に、家の場所まで知っている藤宮。
 藤宮ぁ?!
 ……まあそもそも、今まで藤宮が玲子さんをどう呼んでいたか記憶にないのですが、面と向かって名前を呼べないシャイボーイなので 「あんた」とかだったような気がしないでもない藤宮は、玲子を人質にTLTに勧誘される(同じ役者さんだそうで)、ではなかった、 「主の使い」を名乗る不気味な魔人により、奇妙な空間の中へと引きずり込まれる。
 いよいよ物語も終局へ、という事でか、紫の衣を身に纏い全身がブヨブヨの肉襦袢に覆われた仏像ないし怪僧、 とでもいったデザインの魔人は、役者さんの目を出しているなどカラス天狗以上にこれまでとは一線を画す芸風。
 そんな魔人が「宇宙の真実の一部」「根源的破滅招来体の動機」を長々と語り、デザインともども今作これまでとはアプローチがあまりに違いすぎる為、 “種明かし”なのか“攪乱”なのかという戸惑いが先行してしまい(個人の気分的には、種明かし2:攪乱8ぐらい)、 そこは後編を待たないとどうにもスッキリしない内容になってしまいました。
 「何故だ?! 何故こんなものを使う必要があるんだ!」
 「人類を滅亡させ、誕生したての希望の星に戻す為、浄化する」
 「浄化?」
 一方、エリアルベース上空には超巨大怪獣が出現し、その正体は、磁石の一つの極しか持たない理論上の物質――モノポール。 それがもし地球に落下すれば、マントルへの影響による地殻変動により、世界は滅亡待ったなし!
 地球への降下を始めたモノポール怪獣の影響が発生するまで、タイムリミットは僅か30分。
 「地球防衛指令デフコン1・発令!」
 コマンダーの号令一下、緊急事態に慌ただしく動き回る乗員の姿が挟み込まれるのが雰囲気を盛り上げ、全9機のファイター、 そしてエリアルベース自らが、モノポール迎撃の為に出撃し、前回のアレがでっかいフラグだった事になった梶尾さんの天使のマグマが火を噴きそうです!
 「なぜ人間を嫌う?! 人間がおまえ達にいったい何をした!」
 「……我々も……滅ぼされたくない」
 魔人はこのままでは宇宙そのものが滅亡すると藤宮に告げ、“動かしにくい戦力”である藤宮を玲子さんともども別の空間(魔人は、 モノポール内部と説明)に隔離し、我夢サイド(緊迫の活劇)と藤宮サイド(テーマ要素の語り)を交互に展開する事で、 長い会話シーンを飽きさせずに展開したのは上手い工夫でした。
 「主はいつもあなた方を見ています。そして常に、憂いています。お見せしましょう……宇宙の真実の、ほんの一部を!」
 魔人は、苦しむ少女になぞらえた宇宙の姿を藤宮へと見せつけ、人類こそがその苦しみの原因たる病原菌であると語る。
 「人間が、人間が宇宙を蝕んでいる、ウィルスだというのか?!」
 かつて、人類を「(地球の)ガン細胞」に例えた藤宮に、この言葉が跳ね返って突き刺さってくる、というのも面白い拾い方。
 「主は、あなたを必要としています」
 「破滅招来体が、俺を?」
 新世界のアダムとイブまっしぐらの展開に炎の黙示録が待てこれは大門の罠だ深呼吸して円周率を数えながら腕立て伏せするんだ藤宮博也している頃、 一斉砲撃も甲斐なく怪獣の反撃を受けたエリアルベースはほとんどの砲門を破壊され内部にも大きな損害を被り、 本当に万が一の時の為の武装だったのでしょうが、機動性もなければ防御システムも脆弱すぎて、 根本的に正面から撃ち合うのに向いていない感。
 打撃戦力を大幅に失ったXIGに残された最後の手段は―― 今こそエリアルベースとジオベースが一つになる天地合体XIGバリオン降臨の時! じゃなかった、 エリアルベースのリパルサーリフトを単極子Sに限りなく近付ける事で怪獣を安全圏まで誘導した上で、 エリアルベースを自爆させる事のみ。火を噴くブリッジの中で我夢は苦渋の計算を口にし、コマンダーは全乗組員を退艦させ、 エリアルベースの放棄を決断する!
 「……こんな戦い、いつまで続くんだろう」
 「宇宙に命が芽生えたその時から、強い者が弱い者を飲み込み、エネルギーとする。その戦いのシステムが、 彼女の痛みを生み出したんだ!」
 「人類は進化しすぎた。それ自体が、宇宙を破滅に導くのだ!」
 「勝手すぎるよ」
 思想的活動家の病歴がある為か、ついつい魔人と同じフィールドで論戦に入ってしまう藤宮だが、その時、玲子さんが口を出した!
 「あの人達は、私たちを取り除く事しか、考えてない。私たちが、同じ宇宙で生まれた、大切な命なんだってこれっぽっちも考えてない。 私は……あなたが好き」
 振り向きざま突然の告白に、藤宮ドッキリ。
 まあ玲子さんの藤宮への感情は中盤から明確になっていたので、違和感はないですが。あと、 藤宮からは色々な意味で告白しそうにないですし(笑)
 「人類を憎しみながらも、少女も、私も、沢山の命を救ってくれた。私は、あなたの中にある、その優しさが好き。 その優しさは…………みんなが持っているもの。人間に、その心がある限り、地球も、宇宙も、救えるような気がする」
 毎度ながら玲子さんの語りは背景の積み重ね不足で説得力の弱さはあるのですが、一度は人類を滅ぼそうとした藤宮だからこそ、 “人の抱える矛盾”の象徴としてこれ以上なく成立し、それは、 過ちを犯す者の中にも常に存在する希望の光である、というのがありきたりの言葉を超えた説得力を持つ事に成功。
 今作における、藤宮博也という存在の意味も劇的に着地し、ここはとても良かったです。
 エピソードとしては、ここに到達するまでに、虚実定かならぬ魔人の語りが少し長くなりすぎはしましたが。
 「人間に、ウィルスごときに何ができる。ふふ、ふふふふ、ふっふはははははははは!」
 大事な話の最中に目の前で告白イベントを見せつけられた魔人は嗤いながら姿を消し、溶け去るように消えていく幻影空間の中で、 玲子を抱きしめながら藤宮はアグルに変身。
 一方、エリアルベースに一人残ったコマンダーは、モノポール怪獣を安全高度まで引き上げる事に成功。だが、 先程の戦闘による損傷からリパルサーリフトに異常が発生して磁極が元に戻ってしまい、再び地球へ降下していく怪獣を食い止めるべく、 エリアルベースによる特攻を決意。コマンダーの退艦をアシストするべくEX機に残って待機していた我夢はコマンダーを救おうとガイアに変身するが、 覚醒した怪獣の攻撃により逆に囚われの身になってしまい、でっかい死亡フラグを立てていたのは僕もでした梶尾さん!
 「我夢……逃げるんだ我夢」
 コマンダーはガイアを救うべく限界寸前のエリアルベースで突撃を仕掛け、 ウルトラマンを完封する巨大怪獣に人類が立ち向かうという逆転の構図の中に、若い部下を救おうとする上官の想いが込められる事で、 人間関係を濃縮。前半、何かと思わせぶりだったコマンダーは、若者を見守り導いていく大人の戦士、として宇宙に散る事に。
 「このまま突っ込め!」
 崩壊寸前のエリアルベースは超巨大モノポール怪獣に真っ正面から激突し、大変気合いの入った爆破特撮で、粉微塵に吹き飛んでいく、 怪獣、そしてエリアルベース。その炎の中にコマンダーは消えて……というところでそのままEDへと突入し、つづく。
 直前にアグルが変身していたので、最終回にひょいっと登場する可能性も有り得ますが、コマンダー、殉職(仮)。
 そして、過去2度の墜落の危機を乗り切ったエリアルベースも、最終回付近名物・基地崩壊の圧力には抗いきれず、ここに轟沈。 空中要塞、というアイデアがまず格好良いですし、それをしっかり映像に乗せ、物語の中における意味も与え、 作品を特徴づける良い空中母艦でありました。
 コマンダー退場は、途中リタイアするキャラが居るなら本命だった上に、予告で殺しにかかり、 総員退艦時に最後まで残るという最大の死亡フラグを立てたので衝撃度は薄めでしたが、最後の行動が、地球を守る、と同時に、 我夢を守る、だったのはふさわしい散り様でありました。
 キャラクターとしては、思わせぶりな口ぶりと思わせぶりな目線で思わせぶりに立っているけど特に裏も秘密も無かった、 という扱いであり、これなら個人的な好みとしては、もう少し早めに特に裏も無いという部分を固めて、 実直な軍人像を打ち出してスッキリ見られるようにして欲しかった部分はあり。
 ……いやまあまだ、残り数話の中で実は生きていたコマンダーが「俺はかつて破滅招来体によって滅ぼされた星の唯一の生き残り、 ヴァンダム星人のクロードだったのだ」とか、裏も秘密もある可能性はありますが!
 そういえば今作に、地球人類より優れた科学力を持つ異星人が明確に登場しないのは、「人類は進化しすぎた。それ自体が、 宇宙を破滅に導くのだ!」同様、一定レベルに達した文明を破滅に追い込む浄化システムこそが宇宙の摂理、だとすれば筋は通りますが、 さて。その辺り含めてどう転がっていくのか、次回、嫉妬に燃える魔人の怒りを見よ!

→〔まとめ9へ続く〕

(2022年5月29日)

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