■『ウルトラマンガイア』感想まとめ2■


“自分のパワーを 信じて飛び込めば
きっとつかめるさ 勇気の光”


 ブログ「ものかきの繰り言」の方に連載していた『ウルトラマンガイア』 感想の、まとめ2(7話〜12話)です。文体の統一や、誤字脱字の修正など、若干の改稿をしています。

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◆第7話「地球の洗濯」◆ (監督:児玉高志 脚本:吉田伸 特技監督:佐川和夫)
 「我夢、目の前の敵を倒すだけじゃ駄目なんだよ。もっと自分の力を有効に使うべきだよ。……早く眼を醒ましてくれよ我夢」
 筋トレは……いいぞ!
 冒頭、クラシックをBGMに部屋で茶会を開きながら、地球に迫る破滅について設定を確認しあう監督とコマンダー、 という少々困惑するシーンでスタート(笑) 後半の展開を見るとどうもコマンダーの部屋のようですが、 壁にかかった「無」の色紙といい、思わせぶりな無言の間で無駄に隊員と視聴者を惑わせるコマンダー、 段々と変な方向でお茶目な人になっていくような。
 我夢の乱雑極まりない部屋に、混ざった洗濯物を敦子が回収に来て一騒動、とコミカルな日常描写が挟まれ、 我夢は横浜に落下した隕石と思われる物体の調査の為、地上へ。現地でジオベースの樋口と知り合った我夢は、 これまで何度も台詞では登場していたジオベースへと招かれる。
 エリアルベースが空に浮かぶ攻防の前線ならば、地球防衛における頭脳の中枢が、ジオベース。天空に浮かぶ空中要塞と対になるのは、 東京湾の地下に潜む秘密基地、という格好いい設定。
 隕石と思われる謎の物体は大気圏に突入してきた痕跡がなく、弾道計算した我夢が導き出したその発射元は、 太平洋上に発生している巨大台風――その状況を確認した我夢はエリアルベースに戻って違和感を報告し、周辺大気の分析から、 その台風が地上の大気を浄化している何らかの人工物である事が判明する。
 巨大台風の正体が見え始めたところでBGMで盛り上げてくるのが怪獣映画的でまた格好良く、 台風の底に潜む何かの正体を見極めるべく、ファイターチームとブリーフィング。 我夢の計算と梶尾リーダーの技術と経験が突入作戦を導き出す、というのも前回を受けての格好いい流れで、 男の子心をくすぐる展開が釣瓶打ち。
 「差し詰めあの台風は巨大な洗濯機てとこか」
 変形シーンも劇的に六角ファイターが出撃し、台風内部へと突入する梶尾機。黒雲の映像が迫力たっぷりに展開し、 中央部に潜む何かにミサイルを撃ち込んだ梶尾機は無事に離脱。作戦成功……かと思われたが、黒雲が晴れると姿を現したのはプレシャス、 もとい、土器のようなものを思わせる、円筒形の巨大なメカ(発見のきっかけとなった物体は、吹き飛んだその欠片)。
 「何か書かれています……」
 「てん・かい……」
 コマンダー、謎の象形文字を読む。
 「天上の世界、天界」
 「……コマンダー読めるんですか?!」
 「……いや……篆書体の文字に、似ている気がしただけだ」
 何やら考え込む様子だったコマンダー、趣味の茶道や部屋の色紙が伏線だった事にされて誤魔化すのですが、どうにも怪しい(笑)
 ファイター部隊は地上に落下した洗濯メカに攻撃を仕掛けるが、再浮上した洗濯メカは小刻みなジャンプを繰り返しながら地均しを始め、 更には再び突風を放出。
 人型を離れた巨大メカが結構好きなので、街を蹂躙していく巨大円筒というのは、なかなか燃える展開。 特撮も大変派手に家屋や畑を吹っ飛ばしていき、ディザスタームービーさながらの映像が脅威としての説得力を十二分に持たせて迫力満点。
 「洗濯の後は掃除かよ……!」
 「このままだと、15分後に首都圏突入します!」
 こっそりとファイターに取り付けた(整備の時に見つかってまた始末書案件になりそうな……)遠隔操縦装置を起動した我夢は、 コックピットを離れてガイアに変身し、『ティガ』『ダイナ』がどう処理していたかはわかりませんが、 毎回のようにビートルを墜落させるのはどうか……とさすがに気になる初期シリーズの問題点を、天才的頭脳で解決。
 なんだか本日、いつもよりちょっと太ましい気がするガイア(気のせい?)は、意外とすばしっこい円筒の動きに翻弄され、 危うくルンバの餌食にされそうに。パワー勝負でそれはこらえるも、激しい嵐に飲み込まれて消し飛んだかと思われたガイアだったが、 地中潜行からのシュワルツ超函数スピンで、真下から巨大ルンバを貫通。抜き取った心臓部を投げつけて、 巨大ルンバを木っ葉微塵に粉砕するのであった。
 「しかし……あれはいったい、なんだったのかね」
 「梶尾さんが、奴の事を、巨大な洗濯機と、掃除機だって、言ってました」
 「洗濯と掃除、何のために……」
 「空気を綺麗にし、大地を一掃し、次にする事は――」
 「…………種を蒔く」
 「種……?」
 「はい、侵略者の食料。もしくは、新しい生命体の」
 「なんだって?! それは本当なのか?!」
 「いえ、僕の妄想です」
 果たしてそれは、外来種による侵略準備兵器だったのか、或いは、地球環境の浄化システムであったのか……謎は残されたまま、 エリアルベースの窓から見つめる夕陽の美しさに歓声をあげる我夢と、その横に並ぶコマンダー。
 「……俺は、天界が地球を浄化していると聞いた時、おまえが攻撃に反対すると思っていた」
 「え?」
 「おまえには、あの機械を作った奴の気持ちがわかるんじゃないかと。たとえ人類が犠牲になったとしても、 環境が戻った方が地球の為になるとな」
 「それは?!」
 「違うのか?」
 藤宮の言葉が胸に残っている故か、ぐっと顔を近付けてきたコマンダーに言い返せないまま我夢は黙り込み、 去って行くコマンダー……で、つづく。
 背景に横たわるSF的な大仕掛け、奇抜な巨大メカ、それをしっかり脅威として面白く見せる迫力の特撮、 と三拍子揃って非常に面白かったです。
 思想性の強い環境テロリスト・藤宮と関係しない所で、地球環境に対する人類の負の部分を突いてきたのも物語として視点を広げて良かったですし、 真相を明確にしなかったオチも好み。
 そして急激に怪しげになってきたコマンダーは果たして、超力文明人だったりするのか、それともただの思わせぶりな人なのか?!

◆第8話「46億年の亡霊」◆ (監督:児玉高志 脚本:武上純希 特技監督:佐川和夫)
 突如、ダム湖に出現する巨大なワーム。直後にXIGへと送られてきた「近づいてはいけない」 というメッセージを聞いた我夢はエリアルベースを飛び出すと地上の浅野古代生物研究所へ向かい、そこでメッセージの送り主、 アルケミースターズの一員で古代生物学の第一人者・浅野未来と再会する。
 第1話の我夢に続き、またも秘密回戦に割り込まれるエリアルベースですが、ダニエルくんはもう、 アルケミースターズ専用のバックドアが仕込んである事を、XIGに説明しておこうよ!(笑)
 未来は巨大ワームの正体は、カンブリア紀に生息し、既に絶滅した生物アネモスの幽霊だと主張し、 ダム湖に出現したのは過去の生物の残留思念であり、意識と物質が等しい極小の世界に存在するそれは、 観測者が増える事で実体化してしまう可能性がある、と我夢を通してエリアルベースに説明。
 二人の意見を尊重したコマンダーは、とりあえず、ダム湖周辺の警備を強化し、立入禁止区画を設定。
 「コマンダーは、理解なさったんですか? 二人の解説」
 いつもなるべく無言で、(俺は凄く色々考えているのだ)みたいな顔で突っ立っているけど、実際の所はどうなんですか?  と破滅を恐れぬツッコミを果敢に入れた敦子さん、次回、僻地任務に転属されていないか大変心配です。
 「……いや、俺が理解できるのは、奴があそこに居るという、事実だ」
 唯物論者の現実主義を主張し、格好つけた言い回しでかわすコマンダーだったが、 地上では水源地の取材にダム湖を訪れていたTVクルーがガードの交通規制をかわして取材を強行した結果、怪獣を発見。 これを生中継する事で、未来の危惧した事態が起こってしまう。
 ここでマスコミが「今回の仕掛け」のみとして登場するのではなく、第1話時点から(我夢・XIGに続く) “第3の視点”として扱われていた事により、ここまでの要素の一つがきっちり噛み合う、 という形で「『ガイア』らしさ」になったのは、良い展開。
 合わせてマスコミ、ひいては人間社会の風刺が盛り込まれるのですが、取材を仕切るディレクターがシャイダーでなかったのは、 スケジュールの問題だったのか、知らぬ事とはいえ強引な取材活動で事態を深刻にしてしまうという役回りだったので、 悪印象がつくのを避けたかったのか(カメラマンと女子アナの二人は、半ば強引に引きずられる描写になっている)。
 TVを通して多くの人々に観測される事により、残留思念から物質化したアネモスは紫色の体液を周辺に撒き散らし、 慌ててその確認に向かう我夢と未来。
 「あいつが出現した原因はコッヴさ。奴が、量子力学レベルの不可知領域で、眠っていたアネモスを呼んだんだ」
 「なんの目的で?」
 足を止めた未来に問われると、ウルトラマンの事もあってか、言葉に詰まる我夢。
 「……我夢はいつも、直感だけよね」
 「じゃあ、君は説明できるのか」
 「知ってるでしょ。地球ではもう5回、二千六百万年ごとに、生物の大絶滅が起こっている」
 「ああ」
 「あいつは、地球に選ばれなかった生物。地球に愛されなかったものの哀しみを、聞いて欲くて来たのよ」
 アネモスの叫びをいちはやく耳にしてXIGに警告を送るなど、恐らく我夢と藤宮がウルトラマンと交感(或いは交神)したように、 未来もまた量子の世界でアネモスと部分的にアクセスしている(アルケミースターズの特性?)のかと思われるのですが、 ルックスに加えて「あいつを一番理解しているのは私よ!」と率先して駆け出す怪物への思い入れに漂う若干の狂気に、 どうにも三枝かおる(『特捜ロボ ジャンパーソン』)を思い出してなりません(笑)
 研究(=愛の)対象の為なら、割と他の事はどうなってもよささそうというか。
 一方、ダム湖を経由して川へと流れ出した紫色の液体は、人体にも環境にも悪影響は無く、 敢えていえば警報フェロモン――蟻や蜂が情報伝達の為に分泌する物質――に似た成分である事が、ジオベースの分析により判明する。
 「情報伝達? …………奴には仲間が居るのか」
 果たしてそれは何を意味するのか……コマンダーから質問された未来により、 アネモスには生存競争を勝ち抜く為の共生関係にあった別の種が存在する事が判明したところで、 紫色に染まった隅田川を遡上する謎の巨大生物がレーダーに確認される、という盛り上がる展開。
 「その二匹を、会わせちゃいけない!」
 急遽ファイターチームが出撃してアネモスを焼き払うべくナパーム攻撃を仕掛け、「彼らの哀しみを聞けるのは、私しかいない!」 と我夢の通信を妨害した未来は、その光景を悲痛な表情で見つめる。
 「わからないの我夢?! 地球に選ばれなかった者達の、哀しみが!」
 響き渡るアネモスのどこか哀しげな鳴き声に加え、ゲストキャラの訴えとBGMで怪獣側(未来側)へと感情移入をさせる作りの中、 炎の中で身をよじるアネモス。
 「人類に、彼らを消してしまう権利なんてない筈よ!」
 「だけど、破滅させられる理由もない!」
 藤宮の環境テロリスト宣言以来、藤宮が直接登場しないものの、地球における人類とは何か? というエピソードが続いているのですが、 仮に人類が地球のガン細胞だとしても、天界によって浄化されるような存在だったとしても、これが生存競争だというのならば、 人類にもまた闘争する権利があるという我夢の宣言が(そこまでの意識は無かったとしても)、ぴしっと決まりました。
 人類の生んだ科学の炎の中にアネモスが沈もうとしたその時、上陸を果たした巨大エビがそれを消火すると腹部に融合合体。 ファイターの攻撃を弾き返す完全体となり、撒き散らされる花粉が餌として人々を引き寄せる。
 「奴らは目覚めさせられたんだ、人間の天敵として」
 「そんな事ないわ!」
 巨獣に走り寄り、訴えかける未来もまた花粉を浴びせられ、陶然としたまま巨大な爪につまみ上げられていただきます寸前、 変身したガイアがフライング救出。
 ここから一気にバトルBGMになる劇的な切り替えが格好良く決まったのも束の間、 怪獣はまさかのX変形を見せて上下逆転でフォームチェンジ、というのは面白いアイデアでした。
 東京湾内には無数の巨大生物がその影を見せ、共生怪獣の背後に回り込んだガイアが放ったバックブリーカーにより、 怪獣が元のフォームに戻るという荒技は、スーツアクターさんとカット割による妙技がお見事。
 至近距離から花粉を浴びせられて苦しむガイアだったが、光線技で共生怪獣を強引に分離させると久々のうにょんバスターで消滅させ、 東京湾の巨大生物の群れも、意識と物質が等しい極小の世界へと消え去るのであった……。
 我夢は川辺に佇んでいた未来に話しかけ、未来の古代生物への思い入れには、地球に見捨てられた生き物と、 かつて親に見捨てられた(と思っている)自分、を重ね合わせていたという事情を補強。
 「私は、研究の為に見捨てられたのよ」
 「そんな事は無い」
 「……あの恐竜さえ、地球に見捨てられた。いつか、人類だって、幽霊になって地上を徘徊する時が来るのかも」
 未来の地球を彷徨う、かつての支配者種族達のゴースト、というのは面白いイメージを喚起する台詞で、 個人的には特にレイ・ブラッドベリ(アメリカのSF・幻想作家)作品に通じるような空気を感じたのですが、 繰り返し強調されたアネモスの鳴き声、それに呼ばれるように海からやってくる巨大生物…… というのはもしかすると今回のエピソードがそもそもブラッドベリの「霧笛」或いは、 そこから伸びた『原子怪獣現わる』→『ゴジラ』→《ウルトラ》シリーズ(特にジラース回?)、 という流れを下敷きにしていたのかなとも思うところ。
 「それは違う! ……地球は、人類を見捨てないよ」
 「どうしてそう言えるの?」
 「それは……」
 言い淀む我夢に対して振り返った未来はしかし、からかうような笑顔を浮かべる。
 「説明できないんじゃない。昔から我夢はそうだった。いつだって、直感ね。……研究室へ戻るわ。滅びた者達の、声を聞くために」
 背中を向けると手を振り去って行く未来は雰囲気の出た好キャスティングでしたが、 研究所の周囲にバリアーを張り巡らせいったい何を研究しているのか。
 服に付着していた共生怪獣の細胞組織から遺伝子を取り出すと薔薇に組み込んで(以下略)とかしないか心配になります(笑)
 「それは……人類を見捨てるつもりなら、ウルトラマンは居ない」
 未来の背に向けて小さく我夢は呟き、遠い過去に滅びた者達の声を聞いた未来、青い巨人と交感して筋トレに目覚めた藤宮、 そして光のうにょんで繋がった自分……我夢が自分なりの、自分とシンクロしたウルトラマンの意味を掴み始めたところで、つづく。
 前半、説明を必要とする用語が多くてややテンポが悪くなったのは気になりましたが、古代生物の復活というアイデアを、 今作の重要なファクターである量子力学と絡める事により『ガイア』的な味付けで成立させてラストのやり取りまで綺麗に繋げ、 力の入った一編で面白かったです。
 今回は敵怪獣が甦った絶滅生物という事で、怪人ポジションが絶滅生物である『ビーファイターカブト』(1996)、中でも、 2億年前に地上の覇権を巡って争った二大植物の一方が人間に憑依して花の戦士に、一方が絶滅怪人として激突し、 その狭間で自分たちに都合良く大上段から「自然の摂理」を語る人類とは何かを問う第18話「絶滅花2億年の復讐」 (監督:三ツ村鐵治 脚本:鷺山京子)をちらほら思い出しながら見ていたのですが、怪獣ものの古典を土台にしつつ、 今作は実に90年代的なドラマ性とテーゼが色濃く出ている作品なのであろうな、と改めて。
 『BFカブト』は迷走期間が長くて、その辺りのテーゼ的な掘り下げは弱いまま終わったのですが、 そこに真っ正面から切り込んでいる『ガイア』がどんな場所に辿り着くのか、7−8話と好みのエピソードが続き、今後も楽しみです。

◆第9話「シーガル飛びたつ」◆ (監督:村石宏實 脚本:太田愛 特技監督:村石宏實)
 久しぶりに宇宙からやってきた気がする謎の巨大石塊が、ビル街に着陸。メルトダウン状態の高熱を発しながら地下へと潜っていき、 その直下には都市ガスの配管が! 壊滅的なガス爆発を食い止めるべく、液体窒素弾を撃ち込む事による一時的な冷却が立案されるが、 実行した場合は急速冷凍の余波で周辺に破壊的な熱風が巻き起こる事が予測される。
 逃げ遅れた市民のものと思われる携帯電話の電波が確認され、飛来体の干渉で正確な場所が特定できないまま、 XIGは液体窒素弾による攻撃を前に、レスキューチームを現場へと急行させる。その名は――
 「チーム・シーガルだ」
 冒頭のシーガル顔出しから、出現した破滅招来体への対応、そして緊急出動まで怒濤の勢いでテンポ良く進行し、 機体両側に回転翼を広げ、滞空能力に優れたシーガルマシンが発進。
 必死の捜索を行うも表面に赤い光を纏った飛翔体が潜行を加速し、重い決断を迫られるXIG。 我夢が周辺被害を最小限に抑える攻撃方法を提案して一時冷却には成功するが、潜行を止めた飛翔体は周辺に根のような触手を伸ばす、 という不気味な動きを見せる。
 一方、二名の要救助者を発見したシーガルは倒壊の危険性もあるビルに乗り込むと、 負傷した要救助者に声をかけながらトーチでシャッターを焼き切る作業開始、と渋い展開。 XIGでは飛翔体が自らの重量を急速に増加させる事で周辺に重力場を作り出している事が分析され、 少しずつ明らかになっていく飛翔体の正体と、現場でのレスキューシーンを交互に展開する事で、絵空事の怪獣撃破ミッションと、 地に足の付いた人命救助ミッションを、タイムリミットサスペンスとして組み上げる面白い構成。
 飛翔体の重量の増加が続けば、その生じさせた重力場は関東一円を飲み込んでしまう……それを防ぐ為、 リパルサーリフト効果を持ったミサイルで飛翔体内部にマイナスの質量を発生させて相殺させる、という作戦が立案されるが、 その前に今度こそ生存者を救出しなくてはならない。
 「……何もしてやれないのか……」
 「……神山くんは、必ず、生存者を救出して帰ってくる。彼は、18の時からレスキューをやってきた、ベテランだ」
 平泉監督はてっきり、2名の命の為に関東全域を危険にさらすわけにいかない、 と最終的なシビアな判断の背中を押す役回りだと思っていたのですが、苦渋の表情を浮かべるコマンダーを励ましたり、 我夢の面倒くさい説明を黙って聞いていたり、今回は常日頃より対応が柔らかく、上官としての貫禄を見せます。
 要救助者2名が、人のためを思って怪獣災害基金を運営するNPO法人(?)の職員だったり、 レスキュー活動のシビアな面を活写しつつ、そのバランスを取るという意図もあってか、 周辺人物達の善性と良心が強調されているのは一つ、今回の特徴になっています。
 「レスキューって仕事はな、救助を待ち望んだ人間の、力尽きて、息絶えた遺体を運ばなければならない時もある。 ようやく助け出した人の命が、自分の腕の中で消えていくのを見なければならない事もある。……それでも、自分の手で、 一つでも命が救えるなら。そう思わなければやっていけない」
 シーガルを率いる神山(こうやま)は部下にレスキュー隊員の志を諭し、立ち直った部下と共に生存者を発見。 飛翔体が活動を再開してビルが完全に倒壊する寸前、離脱に成功し、 待機していたライトニングファイターから放たれたリパルサーミサイルが、飛翔体に突き刺さる。
 続けて空中からアタックを仕掛けるチームライトニングだったが、飛翔体が突如変形して立ち上がり、久々に撃墜されるぽっちゃり隊員。 脱出装置が作動せずに万事休すかと思われたその時、サポートとして同じく空中待機していた我夢が変身し、 墜落寸前のファイターをキャッチ。
 戦闘チームの裏方(冒頭の、出番がないならそれが一番、というスタンス表明が素敵)としてのレスキュー部隊の活動を描きつつ、 現実とリンクさせながらその心情に迫るという渋いエピソードに加えてチーム・ライトニングも活躍し、 危うく出番なしかと思われたガイアだったが、ぽっちゃり機を地面に置くと、 重力怪獣に先制の飛び蹴りを決めてここからはウルトラマンのターン。
 岩盤状の表皮の割れ目から触手を伸ばす伸縮自在の攻撃にガイアは苦戦するも、 それを交わして格好良く飛び蹴りを決めたと思ったのも束の間、背後から触手で足を絡め取られ、 地面を引っ掻きながら引きずられていく姿の、絶妙な我夢っぽさ。

 ??「だから言ったろう我夢。机上の計算は育て上げた筋肉には勝てないんだよ!」

 しかしガイアは、槍のように突き出される触手で足に絡んだ触手を切断させる、という頭脳プレイで体勢を立て直すと反撃開始。 懐に飛び込んで殴る蹴るの連続攻撃を加えるが、調子に乗っていると今度は至近距離での発熱攻撃を受け、 強火でじゅーじゅーと炙られてしまう。
 奇襲による先制攻撃 → 大技の余韻に浸っている内に文字通りに足下をすくわれる(これは藤宮もやった) → 機転を利かせて反撃 → すっかり忘れていた敵の特殊能力でまたも苦境
 という流れに、(まあ、中身、我夢だしな……)と納得できるのは、今作のいい所だと思います(笑)
 ウルトラダイナマイトならぬウルトラ鉄板焼きにされて大ピンチに陥るガイアだが、 こんな時の為に密かに自室で鍛えていた僧帽筋にストレッチパワーを溜めると怪獣を高々と投げ飛ばし、 無防備な空中でうにょんバスターを叩き込み、朝焼けを背に勝利するのであった。
 最後は、救出した男性がTVでインタビューされているニュースを見て(わざわざ病室にレポーターが入って救出の顛末を語らせる辺り、 ガードによる広報活動の匂いがぷんぷんします!)喜ぶチーム・シーガルの面々、を和やかに描いてつづく。
 第9話にして遂に筋トレの成果を披露した我夢/ガイアですが、藤宮と出会わなくても、あの環境(エリアルベース) で周囲と友好度が上がっていくほどに筋トレの圧力からいつまでも逃げ切れるとは思えず、我夢もやがて、 地球ばかりでなく筋肉の声も聞こえるようになっていくのでしょう。
 「戦い方を、僕は、無意識に知っていた……。筋肉の力、筋肉の刃……マッスルエッジ」
 深夜に基地のオペレーションルームでキレてるポーズを決める我夢の姿を見た敦子さんがどう思うかは、また別のお話。
 梶尾リーダーの一日とか、筋トレ→ランニング→飛行訓練(パトロール)→シミュレーター→筋トレ…… の無限コンボな気がするのですが、まあ、ストイックそうな梶尾が意外な趣味を、とかも定番なのでそれは今後の描写に期待するとして、 次回、そんな筋トレ集団、じゃなかったファイターパイロット達が大集合でハルマゲドンに挑む!

◆第10話「ロック・ファイト」◆ (監督:村石宏實 脚本:小中千昭 特技監督:村石宏實)
 「コマンダー、チーム・クロウに関しては、自分には考えがあります」
 「……任せる」
 演習では好成績だが、堤チーフの腹案により実戦投入が見送られている、 女性パイロットだけで構成されたチーム・クロウが食堂で検討中、側を通りがかるチーム・ライトニング。
 「研究熱心ですね、稲城リーダー」
 梶尾さん、なぜ貴男は、そこでわざわざ挑発しにいきますか。
 「あたし達は実戦の度に機体を落としたくないから」
 案の定、痛烈なカウンター攻撃を受け、背後で沈痛な面持ちになるぽっちゃり。
 「……そんなに墜としてないよな?」
 「結構……」
 「未知のターゲットを相手にしてるんです。命張ってね」
 部下をかばう梶尾だが、横に立つクロウ03に鼻で笑われる。
 「――安い命ですね。あたしは犬死にはしたくないです。勝つ為に飛ぶ」
 「立派だな。いつになるか知らないが、その意気を実戦で見せてくれ」
 めっちゃ感じ悪いぞ梶尾!
 社食にラーメンやお寿司が無い事を嘆く我夢のお気楽なぼやきとは対照的な、 ファイターパイロット同士のプライドが火花を散らすエリアルベースに緊急警報が鳴り響き、 地球圏に出現する巨大なワームホールとそこから姿を見せる巨大物体。
 「これは……怪獣か?! 宇宙船なのか?」
 「大きさは?」
 「およそ……800メートル」
 ライトニングが迎撃に出動し、始めての宇宙空間(大気圏上層?)でのドッグファイトとなるが、 物体の放つ強力な電磁攪乱により無線による連携が取れない事から、一時帰投。綿密な打ち合わせの元、 ライトニング・ファルコン・クロウの3チームを一挙に投入し、レーザー通信によって互いの連携を取るオペレーションが発令される。
 冒頭から強調されていたにも関わらず、クロウ初の実戦投入に何の前振りもない事に首をひねったのですが…… チーム・クロウ関係のドラマは、オチまで見て呆然とする事に。
 「稲城リーダー。自分のチームだけがチームではない」
 「わかってます」
 出撃直前に堤がクロウ01を呼び止め、無表情で淡々と任務をこなす一方、背後で我夢が姿を消していてもまるで気付かないなど微妙に無能疑惑のあるチーフの、 秘めた細かい気遣いとか明かされたりするのだろうか、とこの時は思っていたのですが……チーム・クロウ関係のドラマは、 オチまで見て呆然とする事に。
 「この波形が通信だとしたら、何かを伝えようとしているのか?」
 9機のファイターが勇躍出撃していき、物体の放つ妨害電波を解析しようと考え込んでいた我夢は、おもむろにその場で倒立(笑)
 後の東映作品『特捜戦隊デカレンジャー』(2004)は随所に《ウルトラ》シリーズへの意識を感じる要素がありましたが、 センちゃんのシンキングタイムは、これが元ネタだったのでしょーか(※どちらも恐らく、ドラマ『あばれはっちゃく』ではないかとの事)。
 ……つまりわかってきたよ藤宮! 筋肉は、脳を活性化させるんだな!!
 量子加速体験を始めて3ヶ月、貧弱だった僕も、今では支え無しでその場で倒立できるようになりました!
 ジョジーの一言から「音楽」という閃きを得た我夢は、音に符号化する事で人類にも理解可能な形で電波を解読し、巨大物体の正体が、 内部にコッヴの卵を詰め込んだ、巨大なコッヴ工場である事が判明する。
 このままでは、地球環境向けに改良を施された大量のコッヴが地球で誕生してしまう……次々と攻撃を仕掛けるも、 強力な妨害によりレーザー通信さえ封じられてしまうファイターチームだったが、 チームクロウがロックのリズムに合わせたコンビネーション攻撃でこの状況を打破。
 ところが墜落していくコッヴ工場が、アメリカ西海岸シアトル直撃コースの軌道に入り、解析したデータを手に我夢はEX機で出撃。 チーム・クロウの言葉から、クロウ03の愛聴するロックンロールのメロディをデータ化してコッヴ工場に送り込む事で工場を内部から大爆発させ…… 問答無用で破壊プログラム扱いされるロックンロール、とは(笑)
 攻撃の初動時、
 「あたし達でケリをつける。他のチームより深く入る」
 など露骨に勇み足かと思いきや、機転を利かせたチーム・クロウがここまで圧倒的な活躍で実力を見せ、 幾つか散りばめられていた不安要素みたいなものは何だったのか、と困惑するのですが……チーム・クロウ関係のドラマは、 オチまで見て呆然とする事に。
 機能を失ったコッヴ工場にライトニングとファルコンが攻撃を仕掛けた事で落下地点が変わり、 工場はアラスカの無人地帯に墜落して大爆発。だが既に製造済みの卵が残存しており、その内の一つから新型のコッヴが誕生。
 我夢はオートパイロットでアリバイを作ってガイアに変身すると、華麗なステップで光線技をかわし、 前転から中段へのディラック方程式キック! そして、2つ以上のフェルミ粒子は同一の量子状態を占めることはできないショルダーアタック!  組み付かれて押し込まれると蹴り技で振り払って掌底を浴びせ、かなり人型に近い怪獣という事もあってか、力の入った格闘戦。
 顔面への連続パンチからヘッドロックで怪獣を叩き伏せたガイアは、 僅かに逡巡めいたものを見せながらも卵から孵化したばかりの幼生体を焼き払おうと構えを取るが、 立ち直った怪獣に背後から組み付かれたところに、正面から幼生体のビーム攻撃を受け、蜂の巣にされて崩れ落ちてしまう。
 これは1クール目の締めを控えて訪れた地球最大の危機に、久々に藤宮が登場する前後編か?! と思ったその時、 怪獣に突き刺さってガイアを救うファイターチームの援護射撃。
 幼生体も次々とファイターチームが焼き払い、立ち直ったガイアは反撃のブラケット記法ハイキックから尻尾スイングを決めて怪獣を工場の残骸へ投げ飛ばすと、 スペシウム的な光線で全てを焼き尽くし、地球破滅の危機は辛くも回避されるのであった。
 …………藤宮はどうやらまだ、大技で怪獣を切断して(決まった……!)と余韻にひたっている時に反撃をくらって「ふぉ?!」 とリアクションしてしまった姿を全国のお茶の間に中継されたショックから立ち直れないでいるようです。
 強く生きろ。
 「これが……戦い」
 初めての実戦を終え、帰投したクロウの3人は音楽に合わせて廊下で我夢とステップを踏み、オペレーションルームに整列。 それらしい呟きで何か感じる所があったのかと思いきや……
 「チーフ。見直していただけました?」
 「……チーム・クロウには男性のチームでは出来ない女性らしい任務がある筈だ…………と考えていた。 しかしそういう時代でもないようだな。どうも俺は古い人間らしい」
 冒頭から、女性蔑視ではなく深い考えがあっての事なのだ、みたいなポーズを取っていたチーフが、 別にろくな考えはなかった事を告白すると、評価して褒めるでも謝罪して頭を下げるでもなく立ち去ってしまい (悪意があるわけでもなんでもなく「古い人間」としてその必要性を全く感じていない模様)、目が点。
 フィクションにおけるジェンダー観というのも時代時代でかなり移り変わるものなので、 もしかしたら1998年当時はこれでもかなり意外性をともなった痛快な展開だったのかもしれませんが、2018年現在に見ると、 何の捻りも無いままチーフの株価が垂直落下しただけという、逆方向に意外すぎて大変困惑するオチ。
 手柄にこだわる前傾姿勢や経験不足など、不安要素として描かれていた部分がミスに繋がるのかと思えば全くそんな事はなく、 むしろ実戦では全てプラスに働くので、チーム・クロウはただただ不条理に抑圧されていたばかりとなり、 大人げなく挑発していた男性パイロット陣の好感度が連鎖的に暴落。特に、実力不足でも実戦対応の不安でもなく、 単にチーフの頭が固かっただけで出撃できなかったのに、そうとは知らずに思いっきりイヤミを飛ばした梶尾の立場は。
 そんな男性社会で雄々しく羽ばたく女性チーム、を描くならもっとチーム・クロウに焦点を合わせて感情移入させる作りにした方が良かったと思いますし、 それをしないのは堤側の然るべき言い分が描かれるからなのかと思ったらそんな事はなく、ほとんどただ、堤を張り飛ばすだけの物語になっているのですが、 女性チームを持ち上げる為に男性チームを下げる(その逆もしかり)、という作劇自体が大変下策であったな、と。
 勿論、キャラクター個々の人格や信念はあるので、それによる嫌な部分や衝突はあって良いのですが、 クロウへの対応を通してレギュラーキャラに決定的な憎まれ役を作りたくないという思惑が働いたのか、 「俺は古い人間らしい」と言い訳しながらそそくさと立ち去る堤といい、他人事風な監督とコマンダーといい、 失点を分散させようとした結果、男性陣の好感度が数珠つなぎに揃って下がるという、 むしろより酷い事態を招いてしまいました。
 これならいっそ、チーム・クロウへのカウンターを強い意志として描けば、プラスでもマイナスでもキャラクターの掘り下げに繋がったのですが (我夢と梶尾の間では、ある程度それが成立していた)、中途半端に傷口を浅くしようとした結果、 コツコツと積み立ててきた梶尾リーダーの好感度貯金が溶けて消えてしまうという、とんだ流れ弾。
 そしてファイターチーム間の問題に主人公が一切関わらないのは、パイロット版における複数視点の持ち込みのように、 ある程度は群像劇的な狙いはあったのでしょうが、それ以上に、男性社会vs女性チームという構図に我夢を加えてしまう事で、 好感度下落の誘爆を避ける意識が働いたのかと思われ、それにより「怪獣対策ミッション」と「人間ドラマ」 が悪い意味で分裂してしまって、主人公は終始、前者にしか関わらない、というのは物足りない及び腰であったと思います。
 地球に迫る巨大コッヴ工場と、次々と孵化するコッヴ幼生体、という二段構えのスペクタクルは面白かっただけに、 チーフを含めたファイターチームのドラマと巧く連動しなかったのが残念でした。
 次回――個人的に割と好きなチーム・ハーキュリーズ再登場のようで、楽しみ。

◆第11話「龍の都」◆ (監督:原田昌樹 脚本:古怒田健志 特技監督:満留浩昌)
 『炎神戦隊ゴーオンジャー』(2008)での仕事が大変素晴らしく、いつかまた戦隊に参加してほしい古怒田さんの、 『ガイア』初登板。
 東京が極度の水不足に悩まされ、更にガス・電気・電話などのライフラインに原因不明の障害が多発。 オペレーターズと事態の分析中だった我夢の背後に迫る、筋肉、更に筋肉、 そして筋肉。
 「そ、我夢のピンチを助けたのは、俺たち」
 「「「チーム・ハーキュリーズ」」」
 手を打ち合わせて一斉にサムズアップを決め、これまで無かったノリを見せる筋肉トリオは、 あの時の借りを今すぐ返せと我夢を格納庫に引きずっていき、新型タンク・スティンガーへの弾薬その他の積み込みを半強制。
 「しめて900キロってとこかな」
 エリアルベースで過ごす事2ヶ月余り、周囲の筋肉密度にだいぶ慣れてきたとはいえ、 基本的にはインドア派のインテリであるところの我夢にとって、 親しみをひたすら自分たちの土俵で示してくるパーフェクトに体育会系ノリのハーキュリーズには苦手が先に立つようで、 命の恩人として感謝はしているけど僕はミニスカの(綺麗な)お姉さん達と情報分析をしていたいです! と終始逃げ腰なのが、 エピソード通してほのぼの。
 ファイターチームとはまたノリの違うハーキュリーズの姿が1エピソードでしっかり色分け出来ましたし、 我夢のリアクションの幅が広がり、様々な感覚を持った人々が使命の為に共同体として活動している、 という地球防衛を担う大所帯・エリアルベース内の人間関係の奥行きが広がったのも良かったです。
 一緒に戦う仲間として無条件に意気投合しているというわけではなく、かといって険悪という事もないけれど、 嫌いじゃないけどちょっと苦手、という距離感を描いたのは特に秀逸(改めて前回は、 我夢からチーム・クロウへの視点が欠けていたのが残念)。
 「いや、だってほら、僕って、一応、アナライズ担当ですし」
 「XIGの一員である以上、こういうひ弱っちい体じゃいかん!」
 「そうそう。ウェイトトレーニングのつもりで、みっちりやってくれ」
 我夢と筋肉ネタは、概ね冗談で書いていたのですが、まさか本編でこんな直球が投げ込まれるとは思いませんでした(笑)
 「なんで僕がこんな事を……」
 「ハハ……吉田さんも志摩さんも、陸戦専門の叩き上げだからな。おまえさんみたいな青っちろいのを見てると、 つい鍛えたくなるんだろ」
 前回(おもむろに倒立)と今回が逆だったら、完璧なはまり方だったのが、惜しい。
 ほうら藤宮、僕はもう、背中に力士を乗せながら指立て伏せが出来るようになったから脳細胞までスクワットしているぜ!
 その頃、今回もディレクター不在のTVクルー組は、東京を悩ます水不足問題についてアマチュア風水師の女・黒田恵に取材し、 都市開発によって壬龍(みずのえのりゅう)の地脈が断ち切られているのかもしれない、という話を聞いていた。
 そして3人が向かった工事現場で、地下から忽然と姿を現す巨大な龍の首!
 立て続けに都内六カ所に出現した龍の首により、弱り切っていた東京の都市機能は完全に麻痺。 古い地下水脈やガス・水道などのパイプラインなど、複層的な東京の地下マップに怪獣の出現地点を照らし合わせると、 画面に浮かび上がったのは、東京地下に潜む巨大な龍の姿……虚空のXIGと地上のTVクルー、 2つの視点に分かれていた科学とオカルトが結びついた所で怪獣の正体が明らかになり、しれっと、 風水について語るコマンダー(笑)
 そして何だか、もう事態が解決するなら私は何でもいいです、という勢いでその解釈を受け入れる監督が、 この2ヶ月の間に対応が柔軟になりすぎてむしろ不安です。
 東京の地下で蠢き、今その姿を地上の人間に見せつけたのは、近代の都市開発によって切り刻まれた龍の道を繋ぎ直し、 古代の地脈を回復する事で自らの土地を取り戻そうとする地帝の龍!
 と、最低でも前後編ぐらいには広げられそうなスケールの大きいアイデアを投入して、惜しげもなく1話でまとめてしまうのは、 今作の素敵なところ。
 実質的に東京を占領して首を引っ込めた龍の反応が丸の内の地下に集中している事から、 チーム・ハーキュリーズがスティンガーで出撃し、我夢がEX機で上空から情報支援に当たる事に。
 「俺たちの命、チューインガムに預けたぜ」
 「信頼して、くれますか」
 「俺たちはさ、坊やをXIGに入隊させた、コマンダーを信頼してるんだよ」
 信頼は仕事で勝ち取るものだ、という反応が渋いですが、信頼していいのかどうか結構悩ましいコマンダーに、 部下からの厚い信頼が語られてホッとしました(笑)
 スティンガーは丸の内の工事現場から東京の地下へと乗り込んでいき、地下世界を進むおむすびタンクという、 力の入ったミニチュア特撮に大興奮。
 地下空洞の地底湖において、複数の龍の首を我夢のアドバイスで撃退するスティンガーだが、巨大な龍の本体と遭遇。 その強烈無比な念動力によって地下空洞が崩れ、凄まじい水しぶきをあげながら壬龍の本体が地上に顕現。
 街を洗い流す濁流のシーンは、さすがに第1話の使い回しかもですが、最初に地上に出てきた複数の首は尻尾に過ぎなかった、 という巨大な龍の造形も凝っていて、大変豪華。
 膨大な水流と共に地上へ噴き上げられたスティンガーが行動不能に陥っているのを見た我夢は、 オートパイロットを起動するとガイアへ変身。しかし複数の首による攻撃に苦戦し、 必殺のうにょんバスターの溜めポーズ中に連続攻撃を受けて崩れ落ちてしまう。更に龍の念動力により宙づりにされたガイアは、 筋肉不足で大ピンチ。筋肉さえあれば、うにょんバスターのモーションはあと5秒縮められるし、念動も光の力で破れる筈なのに!
 ガイアの危機に、再起動したスティンガーがグレネードミサイルを放つも、龍の念動バリアーはそれを完全防御。
 「グレネードミサイル、撃ち尽くしました!」
 だがしかし、チーム・ハーキュリーズは諦めない。
 「……武器は……まだある」
 そう、昔の偉い人は言いました。

 筋肉は、最後の武器だ!

 スティンガーを降りたチーム・ハーキュリーズの面々は、壬龍のバリアをものともせずに肉弾ラリアット、じゃなかった、 弾薬積み込みシーンで伏線のあった携帯火器で立ち向かい、そういえば今作、戦闘中に隊員がメカから降りる事が無かったので、 歩兵による火力支援は初でしょうか。OPでは光線銃を構えているチーム・ライトニングも使った試しが無いですし、 我夢のアリバイ作りと同様の今作なりのリアリズムを感じますが、そう考えると、シーガルに次いで怪獣に近づいた経験がある (しかも複数)のは我夢で、それはハーキュリーズも心配するわけだなと(笑)
 「壬の龍は、東京という街が生まれる前からここに居たんです。この場所を、人間から取り戻すまで、怒りは収まらないかもしれません」
 ハーキュリーズの攻撃が龍の額の宝玉を砕く事で念動力が解除されて自由を取り戻すも、 がくっと倒れ伏してカラータイマーの点滅するガイア。
 「……でも、怒りからは何も生まれません」
 ガイア絶体絶命のその時、荒ぶる大地の龍に恵の声が届くと徐々にその瞳の光は和らいでいき、 今回はオカルトの領域でふんわりと解決するのですが、こういう役どころに10代の少女ではなく30がらみの妙齢の女性を配置、 というのは珍しいでしょうか。結果的にアネモス回と雰囲気や構図が重なりつつ、片方は人間の一方的な感情移入を厳しく拒絶され、 片方は祈りが聞き届けられるという対照的な結末を迎えるのですが、『ガイア』としては前者の方が劇的であり、 今回は説得力の積み重ねが不足した印象。
 XIGの敵性存在としては「根源的破滅招来体」という名称で一括りにしているものの、 その実態は様々な“人類の敵”のバリエーションである、というのが今作の基本構造で、 今回はその一つとして「古代の神格」が取り上げられており、地底湖に人工物と見られる神殿が存在していたように、 それはかつて祭祀の対象であったからこそ人の祈りを受け止められる存在である、という事なのでしょうが、 そういった理由付けが詰め込んだ理屈の段階で止まってしまって、物語の流れでスムーズに納得できる劇的な場や言葉に昇華しきれなかったのが残念。
 積み重ねのない集約は空虚ですが、積み重ねが集約されなければ断片にしかならないわけで、道中の要素を欲張りすぎて、 クライマックスへ至る計算式を美しく収めきれなかった感。
 「あなたの思いは、ガイアに伝わったわ」
 ……そ、そうなんですか? まあこの場合、“ガイアと同調している我夢”ではなく、 “我夢を通して顕現したガイア――大地を守るもの――”に対して、抗議の意志が伝わったので、書類は本社に持ち帰って検討の上、 出来る限り前向きに善処する所存です、と受け止めればいいのかもですが。
 鎮まった龍は荒魂から和魂へと姿を変えると地下へと戻っていき、ガイアもまた飛び去っていく。
 「何が起きたんだ?」
 「……我々は、自然が本来持つ力というものに……もっと敬意を払うべきなのかもしれません」
 本日もそれらしい事を言って、自分と周囲をなんとなく納得させるコマンダーであった。
 平穏の戻った東京では、静かな公園をそぞろ歩きする、恵とTVクルー。
 「私たちが作ったこの街にも、風の流れがあります。新しい、風と水の流れが。風水では、人が作ったものも、 大地の一部とみなします。人が何を作っても、それは所詮、地球という大きな自然の一部に過ぎないのかも」
 環境テロリスト過激派へのスタンダードな反論である「人間も地球の一部」理論を恵が風水的な視点で語り、 藤宮へのアンチテーゼが我夢も藤宮も居ない所でゲストキャラの口から持ち出されるのですが、 風水師というキャラクター性と繋げる事で唐突さも減じて言葉だけが浮き上がる事もなく、 「一つの物の見方」として説得力を持たせたのはお見事。
 ここで一つの返答が示される事が、この先で我夢がどんな答に辿り着くのかに期待を持たせる仕込みにもなっており、 こちらが綺麗に収まっただけに尚更、壬龍との決着が惜しい事になりました。
 恵の言葉に合わせて、EDのイントロから水辺のカットが次々と切り替わり(ここの映像が美しくて素晴らしい)、風――空から、 カメラはエリアルベースで我夢の肩をバンバン叩く(この如何にも感(笑))チーム・ハーキュリーズに焦点を戻し、 ほらだから僕はミニスカの(綺麗な)お姉さん達と情報分析してこその人材なんですよーと腰の引ける我夢を取り囲む、筋骨隆々の男達。
 「じゃあ行こうかー」
 「え……どこに?」
 「スティンガーに弾丸を積み込むんだよ」
 「全弾撃ち尽くしたからねー」
 「えー?! 勘弁してくださいよ!」
 高山我夢、肉体改造の道のりは果てしなく遠い、でオチ。
 得意不得意でいえば確実に苦手方面なチーム・ハーキュリーズの面々ですが、ガンQショックやテンカイ戦を経て周囲と打ち解けてきたとはいえ、 自分本位で配慮不足の一面を持つ我夢には、このぐらいズカズカ絡んでくる人達に巻き込まれる方がエリアル・ベースに馴染みやすかろう、 という点で、他人事目線としては大変楽しく見る事が出来ました(笑)
 我夢に正確に伝わっているかはさておき、ハーキュリーズ側に、 戦闘員主体のエリアルベースに飛び込んできた異分子といえる我夢に対する大人の配慮が見え隠れするのも素敵。
 また、本来なら突っ慳貪にしたり逃げ出したい我夢が、相手は命の恩人なので逃げられない (ちゃんとその恩を忘れない人間性も持っている)、というのは実に巧い退路の塞ぎ方。序盤の要素をしっかりと汲んで、 我夢とハーキュリーズの関係性は、面白かったです。
 人類破滅の要因になりうるかもしれない古代の神格との激突、その導線となるオカルト要素(風水的視点) を藤宮へのアンチテーゼに繋げる、状況を盛り上げる特殊ミッションに挑むチーム・ハーキュリーズと我夢、 とこれだけの要素を関連させながら詰め込んでいる手腕はさすがなものの、 詰め込みすぎて捌き切れずにクライマックスでの不足に繋がった気配もあり、 古怒田脚本に期待しているハードルからするとやや届きませんでしたが、そこは『ゴーオン』10年前ではあるか。
 次回――久々登場の藤宮に、我夢は肉体改造の成果を見せつける!
 「馬鹿な! き、君はいつの間にそこまで均整の取れた完璧なシックスバックを手に入れたんだ我夢?!」
 「藤宮! 君も僕と一緒に、XIGでトレーニングしないか?! 地球を守る仕事の傍ら、 プロの軍人が付きっきりでトレーニングを指導してくれるぞ!」
 果たして藤宮は、その誘惑に打ち勝つ事が出来るのか!!
 ……えー、真面目な予告としては、藤宮に野獣疑惑が浮かび上がるも実は……みたいな感じに見えますが、 藤宮が《野獣》属性持ちになったらそれはそれで楽しいので、どう転んでもOKです。

◆第12話「野獣包囲網」◆ (監督:原田昌樹 脚本:川上英幸 特技監督:満留浩昌)
 月の方から地球に謎の球体が飛来し、夜の街では市民が二足歩行する狼、という外見の怪人に襲われる。 チームライトニングは歩兵として出撃し、我夢を加えた4人は哀しげに月に吠える狼男の捕獲を試みる……そう今こそ、 日頃鍛えた筋肉の力を見せる時!
 だがライトニングの銃撃はあっさりと回避されてしまい、アフリカ舞踏っぷいBGMで夜の街を走るライトニング&我夢、 という変化球演出。
 「こっちはサバイバル訓練も受けてるんでね。行動パターンを読ませてもらった! もう鬼ごっこは終わりだ」
 格好つける梶尾リーダーは追い詰めた狼男目がけてトリガーを引くが、その弾丸は明後日の方向に飛んでいく。
 「梶尾さん……ひょっとして射撃は下手?」
 音楽までコミカルなものに代わって弾切れを起こした梶尾は狼男の逃亡を許し、銃を撃つ際の、“如何にも下手そう”な構えが秀逸。
 夜の街にティンパニを鳴らしながら追走劇は続き、迎える夜明け……結局怪人を捕まえられないまま、走り疲れてへたり込む4人の前に姿を見せるチーフ。
 「いくら空が専門とはいえ、基礎体力を一から鍛え直さないとな。――紹介しよう」
 「特殊捜査チーム、リザードの田沼(?)です。後はお引き受けします」
 全ては、堤チーフのパワハラと時間稼ぎだった!
 挨拶されても立ち上がる事もできない我夢(一晩付き合えただけ、筋トレの成果が出ています)、 敬礼を返す時に慣れない射撃姿勢の影響か肩が上がらない梶尾など、微妙な差異の見せ方などは面白いのですが、 チーフの株はまた下がるのであった。
 「運動不足。これから毎朝走った方がいいよ!」
 エリアルベースに戻った我夢は、筋肉痛に苦しみながらも自身の専門分野で狼男を分析しているとジョジーに足を蹴られ、 チームライトニングの面々が射撃訓練にいそしんでいる事を敦子に教えられて小馬鹿にすると耳をねじりあげられ、 筋肉から逃れようとするあまり別の何かに目覚めそうになっていたが、それはそれで幸せそうであった。
 ちなみに、前回のエピソードで公式から筋肉ネタが送り込まれてきたので悪ノリを少々反省し、 しばらく筋肉控え目の感想にしようと思っていたのですが、むしろ公式が追いマッスルしてきたので、もう、 そういう方向性で突き進めというメッセージだと受け止める事にしました。
 「これだけ大規模な捜索が行われている……にも関わらず、未だ発見できない。どういう事だ」
 ジオベースの情報部を中心に構成され、地上で起きた超常現象や怪事件を捜査するリザードの捜査網を逃れる狼男…… 夜行性の怪物の正体は、太陽光線を浴びるとガス化してしまう体質の宇宙生命体と判明。 それは厳しい環境で生き延びる為の進化だったのか、人工的な改造の産物なのか……ウルフガス、 と名付けられた怪人の存在に一抹の哀しさを感じる我夢だが、ガードは怪人の捕獲でなく抹殺を決断。
 ところが、前夜に撃ち込んだ麻酔弾の影響により体質を変化させたウルフガスが、ガスタンク一基丸ごとの天然ガスと一体化し、 巨大化してしまう!
 見た目は狼の怪獣だが、実態は全身ガスの塊、というガス狼男第一号を爆発させては甚大な被害を及ぼしてしまう…… 狼怪獣をガス状に戻す弾丸を用いようとする我夢だが、「安全な場所なんてあるんですか? 今の地球に」とリザードを挑発したり、 「木の葉を隠すなら森に」とウルフガスの正体に辿り着くヒントを残したり、思わせぶりに姿を見せていた藤宮が、 第5話以来となる青いウルトラマンに変身。
 感想書きとしては、そろそろウルトラネームを発表してくれないと書きにくくて困るのですが(なるべく、 本編で登場していない固有名詞は用いないスタンス)、とりあえず、仮称・青トラマンにしておくぞ藤宮!!
 青トラマンは、巨大化しても決して好戦的ではないウルフに喧嘩を仕掛け、 これが俺の筋肉の力だ! と渾身の胴回し回転蹴りを浴びせると、前回の反省を踏まえ、 俯せに倒れたウルフが気絶している事をじっくり確認。
 垂れた尻尾を蹴り飛ばすチンピラムーヴの後、至近距離からビームでも叩き込んでやるかと構えを取った瞬間、 マトイ兄ちゃん直伝の死んだフリ戦法だったウルフの蹴りを鳩尾に叩き込まれ、やると思ったよ藤宮ぁ!!(笑)
 あくまでも“ヒーローではない”という扱いなのかもしれませんが、
 初登場:チラリと顔見せでビーム瞬殺
 2回目(本格登場):大技の余韻にひたっている内に不意を突かれる
 3回目:チンピラムーヴまでして気絶を確認したのにやはり不意を突かれる
 という、見た目ウルトラマンとは思えない扱いに、涙が拭いきれません。
 このまま「ふぉ?!」が芸風になってしまうのか、よろめく青トラマンは顔を連続で引っ掻かれ、ショルダーアタックで吹き飛ばされ、 怒りのビームも軽々とかわされ、素人ウルトラマンぶりを露呈。
 それでもあくまで(俺は格好いい……俺は格好いい……俺は強くて格好いい……)と自己暗示にこだわり続ける青トラマンだが、 そのスタイルは段々とスタイリッシュというよりチンピラに近づいていき(立ち姿そのものは格好良いのですが)、 正拳突きを口で咥えて受け止められるも、漲る三角筋のパワーでむしろ動きを止めた! とそのまま地面に叩きつけ、 弱った怪獣の腕を背後からねじり上げるという、悪辣ぶり。
 今度こそトドメを刺そうとする青トラマンだが、EX機で駆けつけた我夢がガイアに変身するとガス爆発を防ぐ為にウルフをかばい、 ぶつかりあって相殺する赤と青のうにょんバスター。
 両サイドのウルトラマンから放たれた二つの必殺光線がぶつかり合うのをロングで撮った印象的な映像なのですが、 私の中ではうにょんバスターことフォトンエッジは、“概念化された光の頭突き”なので、 二人のウルトラマンが頭突きの流れで額をゴリゴリぶつけあって至近距離でメンチを切っている典型的不良マンガの脳内映像が同時に展開しています(おぃ)
 ガイアと青トラマンが対峙している間に、ライトニングの3人が汚名返上の細胞気化弾をウルフに撃ち込み、 ガス状に戻ったウルフは吸い込まれるようにガスタンクの中に。構えを解いたガイアはそのタンクを回収すると、 宇宙空間へと放流するのであった……。
 「ガスに戻して宇宙へ返す。それで奴を助けたつもりか! 我夢、君という奴がつくづくわからなくなるよ」
 むしろ今、君という奴がつくづくわからないよ藤宮!!
 「いつか僕のやり方をわかってもらう。必ず。そのつもりでいてくれ」
 かくして、ハーキュリーズvsライトニング(堤)vs藤宮、我夢の筋肉の育成方法を巡る争いは、ますます激しくなるのであった……!  いずれ、「高山くん。筋トレとは、科学です」と、ジオベースの樋口さんも参戦する予定です。
 EDにはみ出した藤宮の念押しの後、月方面から地球に飛来する物体、という冒頭の映像が逆回しで用いられ(つまり、 地球方面から月方面へと飛び去るガスタンクのイメージ)、月のアップから、 夜空の月に照らされる幻想的な書き割りの街を走るリザードカー、という本編映像に繋がり、 今回の見せ場であったウルトラマン対決の後は、
 ネバー クライ 願いかなえたなくて
 〔月に吠えるウルフガス〕
 ラビン ユー 走り続けて行く
 〔ウルフガスを追走する我夢たち〕
 すべての答えはきっと
 〔我夢の解析〕
 この胸にあるから
 〔ウルフガスの胸に突き刺さる巨大麻酔弾(笑)〕
 と、ED歌詞に本編映像を合わせる、という遊び心溢れた編集が、ユーモアもあって面白かったです。
 敢えて狙ったのか、予算上の制約による工夫だったのかはわかりませんが、月に向かって哀しげに吠えるウルフガス、 の際のセットなりミニチュアなりがやや安っぽいのを逆手に取って、繰り返し挿入される月、書き割りの夜の街など、 現実よりも虚構性を強調した映像により、全体に童話のような空気感を散りばめた演出は一風変わって印象的。
 その一方で、体育座りから立ち直って久々登場の藤宮が何をしたかったのか本格的にわからず (ガス怪獣を利用して都市を焼き払うつもりだった?)どうせ出すならもう少し藤宮のキャラクター性が見えてくるエピソードに出来なかったのか、 というのは残念。
 序盤、割と駆け足気味で出した第二のウルトラマンを主人公と対立させる事で物語の方向性を打ち出し、 こういうテーマが根底にあります、というのを明示した上でバラエティエピソードを展開しながら物語世界の足場を固めていく という構成自体は今のところ巧く行っていると思うのですが、 商業的なハッタリ(?)を踏まえつつ構成の出汁として溶け込ませた第二のウルトラマンの存在が、 出汁ガラにならない内に取り出して欲しいなぁ、とは思うところです。
 ……まあ、無理に出そうとするとそれはそれでバランスを崩しかねないのが難しい所ではありますが、それだけに、 “出した”時はもう少し、藤宮/青トラマンに思い入れが生まれるような見せ場があっても良かったかな、と。 今回のエピソード限りだと、いたいけな子犬を痛めつけるチンピラぶりが強調されただけなので。
 次回――限界まで体脂肪率を下げた新生・藤宮の雪辱にご期待下さい!

→〔その3へ続く〕

(2022年2月23日)

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