■『ウルトラマンガイア』感想まとめ1■


“ギリギリまで がんばって
ギリギリまで ふんばって”


 ブログ「ものかきの繰り言」の方に連載していた『ウルトラマンガイア』 感想の、まとめ1(1話〜6話)です。文体の統一や、誤字脱字の修正など、若干の改稿をしています。

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◆第1話「光をつかめ!」◆ (監督:村石宏實 脚本:小中千昭 特技監督:佐川和夫)

 なんか、頭から、うにょんと伸びた!

 城南大学・量子物理研究室で研究を行っている主人公・高山我夢(たかやま・がむ)は、 人の意識を粒子加速領域にシンクロさせるシミュレーターの使用中、そこで赤い光の巨人――ウルトラマン――と交感する。
 一方、ワームホールから地球に飛来した巨大な水晶のような物体の中から、巨大生物が出現。 出撃した防衛隊の戦闘機を事も無げに撃墜すると、街を破壊のるつぼへと叩き込んでいく……。
 「これの事か……これの事だったのか?!」
 突然の巨大生物の襲来を、90年代大学生ライフ・前のめりな報道クルー・謎の秘密部隊、の3つの視点から描くという凝った構成で、 特に秘密部隊は、前半は口元か目元のアップだけしか見せないという演出なのですが、中盤に入るとごく普通に全身が映り、 どうせそういう演出をするのなら、もっと劇的な切り替えのタイミングがあった方が良かったかな、と。
 既存の防衛隊の攻撃が全く通じない巨大生物に対し、飛行要塞から六角形の立方体が射出されると、それが空中で新型戦闘機に変形する、 というギミックは印象的で面白かったです。
 だが新型戦闘機は巨大生物に多少のダメージを与えて足を止めるも次々と撃墜され、何やらその開発に関わっていたらしい主人公、 パイロットにダメ出し。
 「間に合わなかったのかよ?! 僕たちが、今までやってきた事は……全然、間に合わなかったのか?!」
 どうやら、ある種の天才頭脳集団が来たるべき災厄に向けて準備をしており、主人公もその一員であった、という事のようなのですが、 主人公は秘密部隊とは直接の面識がなく、その辺りの背景は詳しく説明されないまま次回以降に持ち越し。
 ファイター部隊は撤退を余儀なくされ、巨大生物の猛威の前に逃げ惑う人々、降り注ぐ大量の瓦礫……反撃から一転、 悲劇へというシーンでのBGMの色調の変化が、主人公の感情への同調を助け、破壊の映像を印象づけつつ次の叫びに巧く繋がったのが秀逸。
 「どうしたらいいんだーーーーー?!」
 まるでその叫びが、何かの蓋を開いたかのように、突如、静止した時間の中に入り込んだ主人公は地面に吸い込まれ、 そこで再び赤い光の巨人と出会う。
 「ウルトラマン……。地球が危ないんだ。僕は君になりたい。君の光が欲しい。僕に力を!」
 冒頭の実験シーンの後、「ウルトラマン」という単語に覚えはない、と口にしていたので、どうやらこれは脳内記憶のようなのですが、 ものすっごく唐突な告白(笑)
 ここまでかなり一つ一つのシーンを丹念に描いてきていたので、主人公のいきなりの飛躍に面食らいましたが、 この辺りも次回うまくはまってくれる事を期待したい。
 ウルトラマンと重なり合い、光を宿した我夢は、ウルトラマンの姿で地上へ。
 「光の、巨人……?」
 でつづき、〔ワームホールから飛来した謎の巨大生物・市民の反応とパニック・秘密部隊の秘密兵器出撃!〕 を非常にじっくり描いた上で、謎のウルトラマン誕生!のシーンで戦闘がないまま終わってしまう (そのフォローとしてか冒頭の脳内世界で軽い戦闘あり)、という、かなり大胆な第1話。
 物語としては色々、次を見ないとなんともという作りですが、ミニチュアの大規模な浸水破壊、ファイター出撃、 と力の入った特撮でフックとなるスペクタクルは十分に用意されており、その中で何より目を引くのは、 エキストラが滅茶苦茶多い。
 物凄く気合いの入った第1話だったのか、放映当時(1998年)の円谷にはTVシリーズでこのぐらいできる体力が普通にあったのか、 はわかりませんが、今見ると、劇場版レベルのエキストラ数が衝撃。
 近年の『ウルトラ』シリーズはファンクラブ会員からエキストラを募集しているようで、 比較的多めのエキストラで怪獣バトルにリアリティを付加していますが(やはりモブ市民エキストラの扱いは、 戦隊やライダーと比べて全般的に巧い)、それと比べても非常に多く、よくこんなにエキストラ招集して撮影できたな…… という所に一番目が行ってしまいました(笑)
 時代のトレンドとしては、ポスト『ガメラ 大怪獣空中決戦』(1995)の時期なので、 絵作りや劇中におけるリアリティの持ち込み方に意識している部分があるのかなと感じますが、その中でどう、 秘密部隊とウルトラマンを見せていくのか、主人公のうにょにょー体験がどう関わるのか、次回を楽しみにしたいと思います。

◆第2話「勇者立つ」◆ (監督:村石宏實 脚本:小中千昭 特技監督:佐川和夫)
 「負けない! 僕は、ウルトラマンなんだ!」
 いまいち戦い慣れないながらも巨大生物に挑むガイア(我夢)が、小刻みに震えながら(武者震い、と見たい)構えを取る、 というのが状況・心情・新たなウルトラマンの誕生、を合わせて示して、巧い。
 初陣のガイアは果敢に接近戦に持ち込むと、
 素因数分解ラッシュ!
 電子スピン共鳴キック!
 ハイゼンベルクの運動方程式チョップ!
 と次々繰り出し、物理学者舐めんな! と連続攻撃を浴びせるが、怪獣舐めんな! と光線をぶつけられてひっくり返ってしまい、 大ピンチ。マウントからの攻撃にあわやのその時、謎の空間で見たうにょーん光線を思い出すと(我ながら、 変な語感が第一印象で固定されてしまいました……)、間一髪で跳ね起き、後頭部にエネルギーを溜めて、 うにょぉぉぉん!
 立ち上がってから、怪獣の連続光線を打撃で砕くアクションと映像が格好いいのですが、必殺うにょーん光線が炸裂すると、 怪獣がアップになった顔面から弾け飛ぶ映像が、今見ると一部洋ゲーノリなゴア表現に見えて、思わず笑ってしまうえぐさ(笑)
 カラータイマーの鳴ったガイアはその場で縮小して我夢の姿に戻り、我夢は廃墟で見つけた小さな光を手元の真空管のようなものに回収する (前回冒頭で登場した装置のパーツだと思うのですが、なんだったかは忘れてしまいました)。
 地上へ降りてきたチーフに質問され、とりあえずガイアの事を誤魔化した我夢は、 その飛行機に同乗して空中要塞――エリアルベースへと向かうと、コマンダーに対災厄防衛組織シグへの入隊を希望するのであった。
 「僕をシグに入れてください! 僕はここに入るべきなんです。いや、入りたいんです」
 我夢は、前回、大学の友人がちらりと口にしていたアルケミスターズ(詳細はまだ不明だが、若き天才集団?)の一員であり、 シグを支える超技術の開発に関わっていた事が、シグの人々に認識されるという形で視聴者にも明確に伝えられるのですが、 今作パイロット版の大きな特徴といえるのが、全ての情報が視聴者に対して断片的にのみ提示され、 詳細な説明シーンが存在しない事。
 しかも主人公は初期から多くの情報を持っていて説明をされる立場では無い為、 端から見ていると主人公の言行が極めて突飛という事になっているのですが、 その作劇でも視聴者がついてきてくれるだろうという、映像スペクタクルへの信頼が見て取れます。勿論、 それだけの予算をかけている、という事でもあるのでしょうが。
 その上で、納得している人達だけで話を進めず、リアリティの補強+“世界の急変についていけない人達”を代表する視点として、 随所にディレクター+カメラマン+レポーター、のTVクルートリオの姿が挟み込まれている、という構造は、 (『ティガ』『ガイア』に続く3作目という洗練もあるのでしょうが)丁寧かつ秀逸。
 防衛隊から転属してきたエースパイロット達のプライドなど構う事なく、 あっけらかんと六角ファイターの操縦方法についてアドバイスを送る我夢は反発も買うが、 シミュレーターで高得点を叩き出す事で一定の評価を勝ち得、特に訓練も受けていない筈なのに対G適性が高いのは、 ウルトラマンとシンクロしているからなのでしょーか。
 ところがハイテンションの我夢は調子に乗りすぎてGによるブラックアウトでも起こしたのか、 シミュレーターの中で再びうにょんうにょん空間に入り込み、そのウルトラマンと接触。
 「君は今、僕の中に? 君は、僕なんだね? 破滅を招くものから、地球を守るもの。だから僕は、シグに入ったよ。 でもウルトラマン、君は、どこから着たの? 君は、誰?」
 明らかに神秘体験のトリップ中で、ドキドキします!
 世間では、極秘に整備されていた地球防衛連合の存在が公表され、我夢はシグへの入隊を認められる事に。
 「破滅を招く存在が、ついに現れてしまった。もう僕は、研究室にこもってるなんて、我慢できない」
 「そうか、頑張ってくれ」
 アルケミスターズの同輩らしきダニエルくん、超クール。
 オペレータ−女子ズに挨拶をするも、最初のクレーム電話の印象が悪かったのか、ショートカットの方にはすげなくされてしまう我夢だが、 気まずい空気を打ち破り、地下から新たな巨大生物が都市に出現。
 「僕たちがまだ知らない種族の巨大生物が存在した、と考えるべきでしょう」
 「それが今なぜ甦る?」
 災厄は宇宙から飛来するばかりではなく、ウルトラマンが倒した怪獣には地球に眠る災厄を目覚めさせる機能があったのか……?  と疑問を呈する形で、今作における怪獣存在の出現パターンを提示。最初の宇宙怪獣は地球に対する刺激物であり、 そもそも地球には幾つもの災厄が眠っていたという可能性が示唆されて、興味を引きます。
 対するシグからは六角ファイターのみならず地上兵器の六角タンクが送り出され、次々と戦闘メカが登場するのも今見ると豪華。特に、 戦闘メカはファイターだけだと思っていたので、タンクの登場は個人的に嬉しい。
 地上からの攻撃でひっくり返った怪獣にファイターが追い打ちをかけようとするも腹部に隠されていた熱線口が開き、緊急退避。 どさくさに紛れてこっそり地上に降りていた我夢は無差別熱線攻撃に巻き込まれるが、タンクに守られて難を逃れ、 巨大なタイヤの陰から姿を見せる我夢、というのが巨大兵器と人間の対比がびしっと決まって、今回の一番好きなシーン。
 戦闘メカが足下の人命を守る、というシチュエーションもグッと来ますが、我夢の生死を心配する基地のシーンを挟んで、 人格への好き嫌いはともかく命の心配はしてくれるシグクルーの人間性が示され、一方で怪獣の破壊活動にTVクルーがぽつりと 「地獄みたいだ……」と呟く視点も忘れない、と濃厚な情報量でぐいぐいと攻めてきます。
 ところで、我夢に対する好感度が−100から始まったショートカットのオペレーターさんは事あるごとに我夢を「子供」「子供」 と言ってもはやフラグを立てているようにしか見えないのですが、2クール目頃にはデートイベントとか発生したりするのでしょうか?!
 「坊や、すぐ離れろー!」
 怪獣が進撃を再開し、ぶっつけ本番の出撃前にコ・パイロットと拳を打ち合わせて気合いを入れたり、 命令違反の単独行動まっしぐらの我夢に配慮したりと、叩き上げ感溢れるタンク部隊長がなかなかおいしい。
 「僕が今は……ウルトラマンなんだ」
 迫り来る怪獣に対し、自らに宿る光の力を自覚した我夢は、光量子カプセルを取り出して変身。 今回も苦戦するが連続バック転キックから反撃すると、ファイターの援護射撃が腹部の熱線口に突き刺さった隙を突いて必殺うにょーんビームを炸裂させ、 今回2回目のゴア爆殺。
 立ち上がりである程度仕方ない役割とはいえ、役立たずで撤退→我夢に反発して憎まれ口、 のファイター隊長がいい所なしだとあんまりだったので、戦闘経験の少ないガイアを助ける殊勲の一撃、というのは良いバランスでした。
 ガイア(我夢)は格好良く飛び去る事を覚え、
 「ウルトラマンか……」
 にっこり笑ってその背に好意的な敬礼を送ったチーフは、地上の我夢を回収に向かうと、きつーいお灸を据える事を宣告。 色々と詰め込みすぎて尺が足りなかったのか、第2話にしてEDの8割ほどに本編が侵食し、帰還シーン(主に、 お仕置き予告シーン)が描かれて、つづく。
 おらおらアルケミスターズの天才科学者様よー、シグ名物、根性プロティンマラソン3時間コースで、来週から君もマッスルだ!
 そう、筋肉は、光量子コンピューターすら越えて真理に辿り着く為の手段だから!(『ビーファイター』理論)
 天才科学者がウルトラ魂に触れるのと、昆虫・植物・動物学者が昆虫魂に触れるのは似ているのではないか、 という不穏な疑問は置いておいて、敢えて整理した説明をしないまま突き進む、という大胆な構成のパイロット版でしたが、 20年後の今見ると、端々のお金のかかり方に目を奪われます(笑) 実際、当時でもかなりの規模の制作費を投入した上で、 番組自体は好評にも関わらず円谷プロの慢性的な経営問題に更なる拍車をかけてしまった作品との事ですが、それはまあ忘れて、 今後もどんな映像を見せてくれるのか、楽しみです。
 次回――早くも第二のウルトラマン?! OPから明確に存在してはいるのですが、ちょっと驚き。

◆第3話「その名はガイア」◆ (監督:高野敏幸 脚本:小中千昭 特技監督:神澤信一)
 アルケミスターズとはなにやら、世界中で同時多発的に生まれた天才少年少女達である、という説明が加えられ、 「根源的破滅招来体」というキーワードが登場。パイロット版よりは明確に用語の説明が入ったものの、 引き続き、断片的な情報を小出しにして、少しずつ世界の輪郭を見せていくという手法です。
 「戦い方を、僕は、無意識に知っていた……。光子の力、光の刃……フォトンエッジ」
 夜間、シグのオペレーションルームでガイアの戦闘記録映像を見ていた我夢は、おもむろに、
 必殺技の名前決定。
 そして、シャドーうにょんしているところを、オペ子ショートに見とがめられ、今回も気まずい! あと10秒ほど遅かったら、 夜中に、基地で、気合いを入れてポーズを取りながら、「フォトンエーーーッジ!!」 と絶叫しているところを目撃されてしまうところでした!
 幸い、オペ子の注意は映像のウルトラマンに逸れ、話題は「ウルトラマンとは何者か」に。
 「根源破滅の危機となった今、彼は現れた。地球自身が遣わしたんじゃないかなって、そう思うんだ」
 「まるで、地球が生き物みたいな言い方だね」
 「そういう考え方もあるんだ。……地球はガイアっていう生き物だっていう」
 「ガイア?」
 「巨人の名前……ウルトラマンガイアってのどうかな」
 折角、女子が、興味を持ってくれたのに、選択肢を間違えて視線が氷点下に!
 それはまあさておき、そういえば無かったウルトラマンの名称(仮)がガイア理論をベースに決まり、 第1話で我夢が自分の研究を進めると「地球と会話できるようになるかも」と言っていたのが、きっちり伏線として機能。 一応まだ仮定段階ですが、ウルトラマンが異星人ではなく地球遺志の力、というのは歴代でもかなり珍しい設定でしょうか……?
 17歳で量子物理学の博士号を獲得した天才・高山我夢(20)は科学分析担当として正式にシグの一員となると、 自室でオリジナル装備の開発にいそしみ、光電子管の中に収納していた光を、それに移動。
 ここでようやく、第2話感想でαくんさんにいただいたコメントの意味を理解したのですが、 ベーターカプセル似のアイテムで変身するのは第2話限定のスペシャルだったようで、成る程それに実物使用は非常に贅沢。確かにまあ、 これ、変身アイテム玩具どうするのだろう……? と思っていたのですが、主人公が改めて制作するという形で、 科学者型ヒーローの特性を披露。
 拳に填めるタイプの変身アイテム・エスプレンダーの完成を喜ぶ我夢だが、僕の格好いい決めポーズの反復練習中にエマージェンシーが発生。 未知の飛行物体が観測されてシグの出撃が決定し、ファイターだと航続距離が足りないので、 ベースキャリーにファイターを積んで現場まで輸送する、という細かいディテールの描き方にこだわりが見えます。
 「コマンダー、あの我夢という子をどうするつもりだね。科学分析なら、ジオベースのラボにだって」
 「この地球を一体、何が襲おうとしているのか、それさえも見極められず、我々は戦いを始めています」
 「それは……そうなんだが……」
 「根源的な破滅……光量子コンピュータが予想しえたのは、そこまでです。アルケミスターズの一人が、このエリアルベースにいます。 その事は、決して無駄ではありません」
 大人同士の言葉を絞ったやり取りの中で情報を断片的に示す、という手法が渋いですが、その中に組み込まれた、 劇中の人類が置かれた未曾有の危機的状況の表現が、切迫感に説得力を持たせて格好いい。
 ピンチの ピンチの ピンチの連続 そんな時 ウルトラマンが欲しい
 主題歌、最初に入りを聞いた時は何事かと思ったのですが、すっかり耳についてしまいました。
 一方その頃、TV局では謎の男が、アナウンサー女性にやや変質者気味に声をかけていた。
 「ウルトラマンか……いい名前だ」
 「誰?」
 「振り向くな! TVの人に言っておきたかったんだ。ウルトラマンの姿、世界にあますところなく伝えてほしいって」
 謎の男は顔を見せぬまま姿を消し、出撃したベースキャリーは東京へ向かう謎の金属生命体を阻止するべくチーム・ライトニングを出撃させ、 今回は砂上の空中戦という趣向。
 3機編隊によるコンビネーション攻撃を見せ、急降下攻撃で金属生命体の撃墜に成功するチーム・ライトニングだが、 鋼の巨人に変形した生命体の反撃により、3号機と2号機が立て続けに離脱を余儀なくされてしまう。
 (こいつは……ウルトラマンの姿を、宇宙のどこかで見ていたんだ。だから、東京に向かって)
 金属生命体がウルトラマンの姿を真似ようとしている事に気付いた我夢は、今回もこっそり離脱するとベースキャリーのハッチを開け、 第3話にしてダイビング変身。
 「この星は、滅びたりしない!」
 何かと前のめり気味な我夢ですが、アルケミスターズの一員として破滅の到来を予期し、その対策に関わってきたからこそ、 現実の災厄を前にそれを食い止めようとする義務感と責任感を人一倍持っている、というのが巧く繋がっています。
 本日は大人しめの着地から波動関数キック! そして、量子エンタングルメントスローを放つガイアだが、立ち上がった騎士巨人は、 攻撃に適応したかのように装甲を強化。見た目に反して打点の高いハイキックは辛うじてかわずガイアだったが、 量子エンタングルメントスロー返しで投げ落とされてしまう。
 スターラボで武者修行を積んだ量子物理格闘術を真似られて対応が後手に回るガイアに対し、 騎士巨人は分裂すると複数の槍状に変形する豊富な攻撃パターンを見せ、その槍の輪の中にガイアを閉じ込める。 熱線であぶられて窮地に陥るガイアはキャリーの援護射撃で脱出するも地面に倒れてしまい……今回、 ガイアと怪獣の睨み合いを上空からの視点でしばらく撮り続けるなど、戦闘シーンで非常に間を重視する演出になっているのですが、 好みとしては少々長すぎ。
 特にここが最も顕著なのですが、脱出してからふらついて倒れるまでに間を取り過ぎて、むしろ緊張感を削いでしまった印象。
 胸のタイマーの点滅はエネルギー切れのサイン? とシグの認識を通す形で説明され、再び合体した騎士巨人に対し、 とにかく手から光線を撃ってみるガイアだが、倒れたかに思われた騎士巨人は悠然と立ち上がる。 一方のガイアはエネルギーを使い果たして倒れ込み、迫り来る串刺しの危機……だがその時、 青白い光線が騎士巨人を貫いて一撃で粉微塵にし、振り返ったガイアが目にしたは、もう一人の青いウルトラマン!?
 青い巨人は無言で砂塵の中に姿を消し……つづく。
 終わってみれば予告で見せすぎ案件でしたが、この話数で初登場という事を考えると、そもそも当時「二人のウルトラマンが登場する」 事を番組として事前に売りにしていたのでしょうか……? 謎の黒服は明らかに青い巨人の正体でしょうが、ここからどう絡んでくるのか、 楽しみです。映像としては、鋼鉄巨人の強化や変形が格好良く、それを謎のウルトラマンの踏み台で消費してしまうのが、大変贅沢。
 次回、あっさりとフェードアウトするのかと心配していた大学のお友達が関わってくるようで、 我夢の背景として拾っておいてほしい要素だったので良かった。

◆第4話「天空の我夢」◆ (監督:高野敏幸 脚本:長谷川圭一 特技監督:神澤信一)
 砂と化して崩れていくオブジェ、そして高層ビル群……と派手な特撮でスタートし、瞬く間に直径約1kmが砂漠化する謎の現象で、 臨海地区が壊滅。
 「水際で防衛もできず、街一つ失うとは……」
 映像からこれを分子レベルでの崩壊現象と判断した我夢はチーフと共に現場上空へと出撃し、 そこで半透明の巨大なクラゲ怪獣を発見する。だが六角ファイターのミサイル攻撃は何故かクラゲをすり抜けてしまい……クラゲ怪獣は、 量子飛躍する不連続的存在だったのだ!
 XIGのファイター部隊は一時帰投し、天才物理学者たる我夢が怪獣について解説。
 「奴を僕らが手の届くマクロの世界へ引きずり出せれば、攻撃は可能です」
 波動生命体である怪獣はこの時空間においては同時に複数の場所に存在しているといってよく、 人間が視認できるのは異次元に存在する本体から投射された影のような物のみ。それに対して我夢は、 反発する波をぶつける事で怪獣の存在を一点に収縮させる、という作戦を提案する。
 天才物理学者である我夢のフィールドにスポットを当て、難解な説明を思い切って突っ込んで来つつ、 “怪獣の特性”と“対処方法”に関しては具体的に示す事でわかりにくさを低減し、 総合的に怪獣がキャラクターになっているのが好印象。
 敵の特殊能力に物語内での理屈を与えて分析、それに対抗する手段を考案する、という展開も好みです (ちなみにここ何年かで触れたヒーロー作品でそのフォーマットを非常に巧く組み上げていたのが、 事あるごとに褒めている海外ドラマ『FLASH』)。
 少し余談になりますが、近作と『ガイア』を比べて見えてくる要素として、 過去怪獣の再利用を前提としている近年の《ウルトラ》シリーズにおいては、怪獣をゲストキャラクター化する事が難しくなっている為に、 良くも悪くも物語の連続ドラマ的性質を強めると同時に怪獣ではなく「怪獣を操る」 存在にキャラクターとしての焦点を当てる傾向が強まっているのだな、と改めて(過去作における、 ヤプールやブラック指令が下敷きなのかもですが)。
 それでも『オーブ』はそれなりに、怪獣のキャラクター化を意識していた節はありましたが、 ある程度の規模で分析・対策を行う背後組織(防衛隊ポジション)が不在の為に〔ヒーロー/仲間・組織〕 というチームアップ構造には至らず……そう見ると『ジード』は、大規模な防衛組織を出せないなりにチームアップ構造をやろうとしていた事が窺えますが、 その点はあまり巧く行かなかった感。
 それぞれ、時代時代の流れや要請、制作環境の事情などが諸々あるわけですが、同じ《ウルトラ》シリーズとはいっても、 『ガイア』〜『ルーブ』まで20年の歴史の中で、作劇の基本構造そのものの変化を見て取れるのが興味深く、一周回って、 『ガイア』が新鮮です(勿論、この20年の中にも様々な変遷があったのでしょうが)。
 チームアップと言えば、クラゲ対抗装備の作戦を友人達に依頼した我夢が、かつて在籍していた研究室との関係が途切れていなかったのは良かった一方、 丁度良い機材があるからという理由はつけるも、組織の体面と指揮系統、そこに所属する人々の誇りを 個人的正義で踏みつけにするのは相変わらずで、夜中にエリアルベースから窓外投擲されないか心配になります。
 これは我夢の天才ゆえに最善手に飛びつく際の無神経さにして、未曾有の緊急事態において枠組みを突破していくヒーロー性でもあり、 物語中においては「ウルトラマンに選ばれた事」(と命がけの姿勢)によりその正当性が担保されてはいるのですが、 “最善手を選び続ける事が最善とは限らない”事もあるわけで、我夢の周囲への配慮不足が生む陥穽と挫折、 みたいな展開まで踏み込むと面白そうですが……大学の友人達の姿を見る感じでは、どちらかというと、 周囲の人間が自然と我夢をフォローする形でまとまっていくというタイプのキャラクターになっていくのか。
 できれば、頭が良くて責任感も使命感もあるが故に「後は任せました。お願いします」が出来ない人物をそのまま肯定的には描かないでほしいところですが、 そういう点では、オペ子さんショートが事あるごとに「子供」「子供」とボールをぶつけに行くのが、 多少なりともバランス取りとして有効に機能しているといえます。後、かつての同輩には信じて任せているといえるので、 単純にXIGとの関係性は時間的問題なのかもしれませんが。
 大学で対クラゲ装備を受け取った我夢は、移動を開始したクラゲ怪獣を止める為に、独断でEXファイターに乗り込んで発進。
 「空だ……これが、現実の空……」
 シミュレーターでは高得点を叩き出していた我夢が現実の空の光景に圧倒され、実際のGに思うようにファイターを飛ばせない、 というのは今作らしいディテール描写ですが、同時にサブタイトルでもある天空を翔る我夢の姿を彩るBGMは、 非常にヒロイックで格好いい。
 「素人がいったい何考えてる! すぐ引き返せ! 実戦は遊びじゃない!」
 「僕はこの翼を、平和を壊す奴らと戦う為に作ったんです」
 「そんな事はわかってる!」
 顔を合わせると火花を散らす仲のライトニングリーダーが、決して後方の人間を軽んじているわけではない、 むしろその気持ちを背負って飛んでいる、というのは良いフォロー。……まあどちらかというと、 前線の隊員達を軽んじてなんでも自分でやらないと気が済まないのは我夢の方なわけですが。
 「戦うすべを持たない人達を守る為に、こいつのした事は許せない!」
 クラゲのビームを回避するも急上昇によるブラックアウトで墜落しかける我夢だが、ギリギリで体勢を立て直して復帰し、 無謀な行動はともかくその心意気についてはどうやら認めるライトニングリーダー。
 「簡単に墜とすな。空に出たからには、おまえも自分の仕事をやり遂げろ」
 「了解!」
 空の戦友補正により勢いで絆レベルを上昇させた我夢は対クラゲパルスの照射に成功し、 一点に収縮して観測される事で実体を与えられるクラゲ。
 「上出来だ!」
 ファイターのミサイル攻撃を受けたクラゲは炎上しながら地上に落下すると、 首長竜の化石のような頭部を揺らす地上形態にフォームチェンジし、その反撃を受けて3号機は今日も景気良く離脱。 それを見た我夢はガイアに変身するも遠距離ではビーム、近距離では触手攻撃を受けて苦戦するが、 ライトニング1号の支援射撃が突き刺さった隙にバック転で距離を取ると、概念化された光の頭突きことうにょんバスターを炸裂させる。
 最後は燃え上がるクラゲに空中からビームを吹きかけて消滅させ(消火活動?)、今回も帰投シーンがEDを浸食。
 「……我夢の、無断発進については、後で厳しく処分します」
 「ん」
 横に並んだ監督から無言のプレッシャーを受けたコマンダーは、処分を確約してお引き取り願うと(あ、俺これ、 減給処分かも……)と胃もたれしているみたいな顔になって椅子に座り、キャリーのチーフは今頃きっと(母ちゃんごめん、俺もう、 今年のボーナスは無いかも……)とあふれ出る涙をぬぐっているのであった。
 なお、墜落もしていない内からコックピットで変身、という荒技を見せた我夢が操縦していたEXファイターは自動操縦で健在であり、 初代『ウルトラマン』の頃から難しい要素だった「戦闘機が墜落しないと主人公が変身できない」問題は量子と科学の力で解決されました (今作以前にも、この問題の解決策を示した作品はあったかもですが)。
 そして怪獣の被害にあった地区を報道していたTVクルーは、被害地域で想定よりも遙かに多数の生存者が発見されたという吉報を受け取っていた。
 「気にいらねぇのは……その全員が同じ証言をしてるってことなんだよなー」
 「て、なんて?」
 「誰かに、頭ん中覗かれてたような気がしたそうだ」
 思わせぶりに姿を見せた謎の黒シャツの男が多くの市民を助けた事を匂わせつつ、同時にそれにまつわる不穏な情報も提示して、 全ての情報をXIGに集約する事なく、無理なく分散して視聴者に伝える、というのは今作の複数視点が巧く機能しています。
 果たして、黒衣の青年は何者なのか……次回――青い巨人、再び。
 もう少し、我夢とXIGの足場を固めてから第二のウルトラマンが本格登場するのかと思っていたのですが、ぐいぐい来る作劇が、 吉と出るか凶と出るか、そして、半年後のコマンダーの給与は幾らなのか?!
 切実に我夢には、戦うすべを持たない人達だけではなく、チーフとコマンダーの給料明細を守る為にも、 もう少しだけでも周囲への気遣いや事前の連絡を覚えてほしい。

◆第5話「もう一人の巨人」◆ (監督:原田昌樹 脚本:小中千昭 特技監督:北浦嗣巳)
 「純粋に技術的な関心」からLX機(前回乗った機体?)を弄っているのをオペ子B(ジョジー)に見咎められた我夢、 口止め料を要求される(笑)
 というちょっとコミカルな導入から、コマンダーの呼び出しを受けた我夢は、家族について質問される。
 「君の命を私は預かっている。本来居てはならぬ者を、私の権限で認めさせたんだ」
 「……ありがとうございます」
 話の成り行きの見えない我夢に対し、コマンダーはXIGに参加している事を家族に「ちゃんと話してこい」と命じ、 電話で適当に済ませようとする我夢は「ちゃんと顔を見せて話してこい」と叱られて地上行きの輸送便に乗せられる事に。
 子供扱いにむくれる我夢ですが、大人を名乗るならば筋を通して周囲の人間に対して大人の責任を果たさなければならない (1−4話を通して描かれている、我夢に明確に欠けている部分)、という規範をコマンダーが自ら示し、我夢と組織の関係性の進展 (我夢の学び)が描かれて良かったです。
 かくして嫌々ながら実家のある千葉県へと向かう我夢の私服は、ボタニカル柄のアロハシャツだった。
 …………い、今まで見てきた特撮ヒーローの私服の中でも、トップクラスの破壊力だよ我夢!!
 故郷の砂浜を、周囲の子供と馴染めなかった幼い日を思い出しながらそぞろ歩きするアロハシャツの我夢は、 実家の玄関先で入りづらそうにもじもじしていた所、買い物帰りの母親と出会って強引に家の中へ。
 今回、監督の特色なのか、実相寺オマージュなのか、キャラの部分的アップや光源を用いた画面の陰影をやけに強調した映像が続くのですが、 我夢の故郷では夏の情緒を強調した叙情的なタッチに代わり、どちらもここまでの作風と、テンポが変わりすぎて戸惑い先行。 演出に変化を付けるのは面白いですが、今回は一話完結性の弱いエピソードですし、もう少し作品の方向性が落ち着いてからでも良かったような。
 心配はしているが必要以上に口は出さない(出せない)という、母親と我夢の微妙な距離感は、天才児であった我夢との接し方、 に親の側でも悩みや葛藤があった事を匂わせるのですが、子供っぽいのに大人のつもりである事を疑っていない我夢の、 天才ゆえのいびつさ、というのは今後も少しずつ拾ってくれる事を期待。
 一方、壁に貼り付けたガイア関連の記事の切り抜きや週刊誌の表紙を鋭い視線で見つめながら、激しい筋トレに励む怪しい男が一人。 どうやら20年前にも存在していた黒い粘着さんは、千葉県沿岸に怪獣上陸のニュースをキャッチして、ニヤリと笑う。
 「母さん! ……僕さ……この街って、あんまし好きじゃなかった。でも、今は凄く帰ってきて良かったって思ってる!」
 自分の守るものを具体的に見つめ直した我夢は、ファイターと連携して怪獣の組成を分析し、 その肉体がほぼ海水と同じ成分で出来ている事を確認。いわば、二足歩行の巨大生物という姿で意志を持った海水ともいえる怪獣は、 その体内に湛える水分ゆえに通常のミサイル程度の火力では全く役に立たない。
 「……やっぱり僕が……」
 主題歌通り、ギリギリまで踏ん張って人間の力で立ち向かおうとするも、どうにもならないそんな時、 ガイアに変身しようとした我夢だが、いつの間にか海岸に佇んでいた黒服の男に気付く。我夢と目を合わせた男は尖ったブレスレットを掲げると、 新たな光の巨人――青い巨人――に変身し、地表にぐさっと急降下。
 第3話で顔見せ登場した青いウルトラマンがいよいよ本格登場し、がに股でどすーーーんと降臨するガイアに対し、 大地に突き刺さる錐のようにぐさっっっと垂直落下しての登場でまずは差別化。
 「ガイアじゃない……」
 「ウルトラマンは一人じゃないのか」
 立ちポーズがちょっとスタイリッシュな青い巨人は、橈側手根屈筋ビームで怪獣を転ばせるとその尻尾を掴み、 鍛え抜いた広背筋による振り回しから、渾身の背負い投げ。そして右腕に蒼い光の刃をまとうと袈裟懸けで胴体を、 返す刀で首を鮮やかに切断する!
 クールなライバルキャラ(多分)として華々しいデビュー戦を飾る青い巨人……と思った次の瞬間、 海水体質の怪獣の傷口は瞬く間に塞がってしまう。
 「ふぉ?!」
 驚く青い巨人は怪獣に組み付かれて一転して大ピンチとなり、お、おかしいな……30秒前まで、 今週はガイアお休みの勢いだったのにな……!
 青い巨人のタイマーが点滅するのを見た我夢はブレスを掲げ、「ガイアーーーーー!!」から、満を持してのどすーーーん降臨。 ダッシュで援護に入ると、ペンローズの過程飛び蹴りからの、左上段スピンネットワーク蹴り、 そして必殺の意識は原子の振る舞いや時空の中に既に存在している回し蹴りで頭を吹き飛ばすも、怪獣の損傷はまたも復元してしまう。
 量子物理格闘術を見切られて追い込まれたガイアもタイマーが点滅を始め、これは後編に続いて次回共闘か? と思ったその時、 すくっと立ち上がった青い巨人の必殺光線で怪獣は無惨に吹き飛び、大爆死。
 (君なのか……君だったのか……?)
 辛うじて怪獣もろとも爆死をせずに済んだガイアの呼びかけを無視して青い巨人は飛び去っていき、 続けて飛び去るガイアを見送るライトニングリーダー。
 「……あの、どちらかと戦う事になるのか」
 という呟きは、成り行きとはいえこれまで完全にガイアと共闘路線だった流れからは唐突さが否めないのですが、 シンプルに『ゴジラvsビオランテ』オマージュ? 勿論、現場の温度差や、正体不明の巨人への警戒意識はあって当然なのですが、 この後の前振りの為にやや強引になった印象。
 「くっそー……頭の中じゃもっと動けてるのに……!」
 海岸でふらつく我夢は自分自身に憤り、使命感と責任感先行で技量や経験が伴っておらず、頭は良いが肉体言語には慣れていない、 という高山我夢というヒーローの現在地を象徴していて、大変良い台詞。
 手に入れた力を未だ使いこなせない我夢は、“もう一人”の気配に気付いて振り返り、そこに旧知の男の姿を見る。
 「我夢! 君が二番目だったんだ?」
 「藤宮! 藤宮博也くん、だろ? どうして君がウルトラマン――」
 「根源的破滅招来体を阻止できるのは、アルケミースターズなんて仲良しグループじゃない。 鍛え抜いた筋肉だ それがわかったから俺は辞めた」
 ……今なにか混信しましたが、知性×筋肉に昆虫魂を融合させたビーファイターは、90年代における極めて優れた、 ヒーロー像の分解と再構成からなる具象化だったのでなかろうか、と改めて。
 トライアングル的になぞらえるならば〔心・頭・体〕といったところですが、これにもう一つ、科学×肉体×オカルト、 という三角形が重ねられており、優れた知性と優れた頭脳が強き魂を伴う事でヒーローとなり、 科学とオカルトを人間の体と心が繋ぎ合わせて力とする、というのは実に良く出来た構造だったと思います(作品的には、 これに対するネガ存在の扱いをうまく処理しきれなかったわけですが)。
 話を戻して、プロティンの導きに目覚めた怪しい黒服こと、元アルケミースターズの藤宮は……
 「地球にとって人類とはガン細胞だよ! 増殖し続け、地球を汚し続けるだけの存在」
 正統派環境テロリストになっていた。
 以前に『特捜ロボ ジャンパーソン』(1993)の感想で触れた事がありますが、『ゴジラvsビオランテ』(1989) 『寄生獣』(1990〜1995)『機動武闘伝Gガンダム』(1994)など、90年代ポップカルチャーにはエコロジー、 そしてその先鋭化である環境テロリストテーゼが花盛りという印象が強いのですが(他の年代でも相応にあるとは思いますが)、 そんな90年代のフィナーレを飾ろうとするかのような強烈な直球が、今見ると一周回って物凄いインパクト。
 (※軽く調べたところ、それ以前からエコロジーに関わる運動はあったものの、 1988年に地球温暖化説が一般に広まったのが一つの契機となった模様)
 また横道に逸れますが、今作と同年放映の『星獣戦隊ギンガマン』のヒーローが、現代文明から隔絶した隠れ里に暮らし、 山野に親しみ星の力を振るういわばネイチャー系の戦士ながら、「自然と人類文明の衝突」という要素は描かず、 あくまで地球環境を汚染するのは敵である悪の組織バルバンの仕業、を徹底していたのは興味深い差異かもしれません。 もっとも『ギンガマン』の場合、星を守るヒーローもバルバン(悪)と同一になる危険を常に内心に孕んでいるからこそ、 それに打ち勝たなくてはならない、というのが作品の大きなテーマであったので、 星を汚すバルバンそのものが人間自身のメタファーになっている、とはいえるのですが。
 「ウルトラマンは地球を守るものだ。しかし、存在理由を持たない人間まで救う義務はない!」
 藤宮は我夢にびしっと指を突きつけ宣言し、「選ばれし者」の使命感と責任感から暴走したり決めポーズの練習したりは我夢もやりましたが、 どうやら、我夢以上に「選ばれた俺」にはまってしまっている模様です。
 千葉県に出張ってくる前に各局のニュース番組を全て録画セットしてきましたが、全く予定通りに決まらなかったので、 家に帰って多分泣く。部屋の隅で膝を抱えながら(やっちまった……TV局まで行って、「ウルトラマンの姿、 世界にあますところなく伝えてほしい」って格好つけてきたのに、やっちまった……)とフェルマーの最終定理に挑みながら泣く。
 それはそれとして、今作における「ウルトラマン」の定義付け(藤宮主観)が一つ示されている事が大きな意味を持っているのですが、 発言からすると我夢より先にウルトラマンと同調していたらしき藤宮、もしかして、 第1話でいざ怪獣が出てきたぞぉぉぉ今日の為に鍛えてきた筋肉の出番だぞぉぉぉ――はっ!? 万が一の肉離れを避ける為に、 まずは入念にアップして筋肉をほぐさなければ! とかやっている内に降臨したガイアに怪獣を倒されてしまい、 行き場を失った使命感が立体交差でこじれてしまったのでは。
 そう考えると、大変同情の余地のある我夢の影といえるのかもしれません。
 「XIGなんて辞めてしまえ! 俺を手伝う事が君のなすべき事だ」
 「違う! 絶対に君の考えは間違ってるぞ!」
 同じアルケミースターズの一員として根源的破滅に備え、くしくも共に光の巨人の力を得ながら、 道を違えた赤と青――夕陽の光に染まる海岸で対峙する2人の青年、でつづく。
 コミカルな導入こそひと味違うアクセントして面白かったものの、演出の傾向がこれまでとあまりに違いすぎて困惑が先に立っていたのですが (後の作品でいうと『仮面ライダークウガ』7−8話を見た時の気持ちというか(笑))、地球に迫る根源的破滅を前に、 2人のウルトラマンの姿を通して「人間」とは何か――そして「ウルトラマン」とは何か――を問う、という今作の縦軸が明確に示され、 クライマックスは大変盛り上がりました。
 主義主張の違いばかりでなく、様々な意味で脳内理想先行の我夢と、筋トレに励み肉体を理想に近付ける道を行く藤宮、 という対比もクッキリとして良い案配。また、両ウルトラマンのトサカが逆向き、というのはデザインの特性をこれ以上なく活かして大変秀逸。
 我夢−XIGの足場を固める前に第二のウルトラマン登場は早いのでは……? と思っていたのですが、 同じアルケミースターズだった過去を含めて、明確な対立構造が我夢というキャラクターの理想主義に空論だけでないしっかりとした縁取りを与えてくれそうで、 ここからの展開が楽しみです。

◆第6話「あざ笑う眼」◆ (監督:原田昌樹 脚本:川上英幸 特技監督:北浦嗣巳)
 冒頭にわかりやすく、これまでのおさらい。そして、正直全く把握しきれないでいたファイターチームの名前がテロップで次々と入り、 志は志として、もう少しわかりやすく配慮を、という話が内部で出たりしたのでしょうか……?
 チームライトニングとチームファルコンの共同演習はスピード感の激しいドッグファイトで描かれ、ファルコンリーダーは少し年嵩で、 ファイターメンバーの中では落ち着いた物腰の人物であるとキャラ付け(この後の、我夢とのやり取りでもそれが補強)。
 エース同士のバトルが佳境に入る中、地中に埋まった巨大な眼が発見され、演習は中断。
 「笑っていやがる……」
 「……え? どういう事だ?」
 直ちに分析に入る我夢だが、その眼は熱反応を持たない事から生命体ではないと思われ、しかし確かに実在し、 更には周囲の岩石を空中に噴き上げる、という奇妙な能力を発揮する。
 前回に続き、陰影を強調したカットでカメラは我夢の額に浮かぶ脂汗をアップで映し、 正体不明の存在を定義付けようとフル回転する我夢の頭脳はオーバーヒート。答を出せずに苦しみ彷徨う思考はいつしか、 笑う巨大な眼の向こうに、幼年時代のトラウマを浮かび上がらせる……。
 「なんでも僕にはわかりますってつらしてやがってよぉ」
 「俺たちとは違うって、鼻にかけてやがるんだよ」
 周囲に馴染めなかった子供時代の記憶はやがて、巨大な眼をバックにほくそ笑む藤宮の姿に変わり……て、え、 藤宮、そんなキャラでしたっけ(笑)
 前回の藤宮、
 〔公式デビュー戦を華々しく飾ろうと颯爽登場 → 必殺剣、決まったぜ! → ふぉ?! → 大ピンチに陥りガイアに助けられる → そのガイアが苦戦しているところに漁夫の利ビームで勝利 → 環境テロリスト宣言 → 一人で筋トレしているとたまに寂しくなるので、 俺と一緒にプロティンを飲まないか?!と我夢を勧誘〕
 という流れで、むしろちょっと可哀想というか、部屋に戻って絶対泣いてる、みたいな感じで、 我夢が敵意や敗北感を抱く要素はあまり感じられなかったのですが……まあ、少年期の記憶に関わる海岸で出会った藤宮に批難された事が、 極限の頭脳と心理状態において、怪獣の視線を通してねじれた形で繋がってしまったと解釈できなくもないのですけど、 我夢の陥った異常な心理状況、と受け取るにしても凄く雑な悪役的描写で、それはそれで我夢の中の藤宮観が心配になります(笑)
 アルケミースターズ時代、冷蔵庫に大事に取っておいたピーナッツモナカでも食べられた苦い過去とかあるのか。
 「僕のピーナッツモナカを返せ!」
 じゃなかった、
 「あの眼を攻撃して下さい!」
 苦悩する我夢は乱暴な結論に飛びつきファイターは攻撃を仕掛けるが、 ミサイルは眼球の黒目部分に吸い込まれたかと思うと再び飛び出してファルコンリーダーを撃墜し、眼球は忽然と姿を消してしまう。
 「……震えてたね。自分が怖いからって、攻撃するように言ったの?」
 「…………わからなかったんです。あいつは、存在そのものが、不条理の塊で。姿形はハッキリしているのに…………科学的分析が、 通用しない。わからないんです、僕には」
 自分の失態にいたたまれない我夢の姿と心理を強調する意図でか、無言のXIGメンバーに囲まれる我夢を中央に置き、 遠めからブリッジ全体をカメラ固定で映して展開するのですが、斜め後方に仁王立ちのファイターチーム、台詞を言い終わると (舞台袖に該当する)自席に戻っていくオペ子Aさんなど、スポットライトの中央で苦悩する主人公とそれを取り囲む人々の批難の声、 という舞台的な演出が過剰になりすぎて、あまりに芝居がかってしまった印象。
 「どんな相手だろうが、敵が出現したら戦いそして勝つ。それが我々の使命だ。今回の敵が、 どんなに不条理な存在かは俺にはわからん! しかし、これだけは言っておく。怯える者にここに居る資格はない」
 ライトニングリーダーは防衛隊の一員としての心構えから我夢を叱責し、得意分野で立ち向かえない不条理に対する我夢の脆さと合わせて、 独断専行や連携不足など、思考と責任感が先走って不協和を生んでしまう、という我夢の弱点を突いてきたのは良かったのですが (空気を読んで周囲に合わせる処世術の問題ではなく、我夢は基本的に、チームの中の自分、という存在をコントロールできていない)、 演出の方が少々好みから外れてしまいました。
 ところで、ミサイル攻撃の最終的な命令責任はどう考えても、ポケットに両手突っ込んで無言を貫いているそこのコマンダーなのですが、 一切フォローしないコマンダーは(ふふ……これでまた、減給処分かもしれないな……通販で予約していた新作のゴルフクラブ、 キャンセルしないと駄目かな……)とか遙かなるフェアウェイの夢想に浸っているのか。
 同じく無言のチーフは(……これでまた、査定、下がるのかな……冬のボーナスで、新しい泡立て器が買いたかったな……) とそっと涙で瞼を濡らしているのか。
 負傷したファルコンリーダーに謝罪した我夢はエリアルベースを離れ、「地球を守るには、おまえは大胸筋が足りなすぎるんだよ我夢!」 と嘲笑う藤宮の幻影に追い打ちを受け……どうもこの藤宮が、余りにもしっくりと来ません。
 大学の友人を訪れた我夢は、その言葉から眼球怪獣に関するヒントを得、出現予測地点をXIGへと連絡。 飲み込んだミサイルをエネルギーとして地中の鉱石で肉体を作り出した眼球怪獣が地上に出現し、 キャリーのピンチに我夢はガイアへと変身する。
 「もう、怖くない……おまえを恐れる理由など、何もない」
 物理で殴れるなら怖くないみたいな事を言い出した我夢はどすーーーん省略で飛行体当たりを仕掛け、 これが量子物理学の勝利だ!(違う)
 不意打ちを起点に優位に戦いを進めるガイアだったが、眼球のキャプチャービームに捕まり眼の中に吸収されてしまう。 眼球内部で嘲笑う無数の眼に囲まれるガイアだが、飛行による脱出で怪獣を内部から突き破り、ど派手に大爆発、 で勝利を収めるのであった。
 結局、眼球怪獣の正体は最後まで不明なまま、我夢の不安を煽る存在として出現し、我夢がそれに打ち勝った時に消滅するのですが、 古典《ウルトラ》のイメージを思い起こす、不条理怪獣でありました。映像的には、黒目部分ににゅるっと吸い込まれるミサイルと、 最後の爆発シーンが印象的。
 ベースへ帰還した我夢はライトニングリーダーと食事を同席して半強制的に友好度を上昇させようとする進歩を見せ、 ファルコンチームともハイタッチ。
 「勘違いするな。俺はおまえの心配をするほど暇じゃない」
 「そうですよね」
 (……くっ、なんだ、これは……? ただ一緒に食事をしているだけなのに、俺の中の何かのゲージが勝手に上昇していく……?!) 「へらへらすんな」
 と、主人公の特殊スキルに飲み込まれていくライトニングリーダーであった……でつづく。
 あまり掘り下げを期待してはいなかった我夢の人間的問題を過去のトラウマに絡めてつつき、XIGメンバーとの関係性、 我夢自身の在り方の変化、という要素を扱ってくれたのは良かったのですが、シナリオというよりも演出の方向性が肌に合わず、 微妙な印象のエピソードになってしまいました。
 前半の舞台的なシーン構成の他、ラストシーンや途中の「賭け」を巡るオペレーター同士のやり取りなど、 “間合い”を活かそうとした演出が幾つか見られるのですが、それが洒落た会話やキャラクターの魅力を引き出すというよりも、 芝居の経験値やキャラの把握の問題により、 現時点では高すぎる要求になってしまい、理想と出来上がりが大きくズレてしまった気がします。
 要求を引き上げないと上達が見えないのも確かですが、個々のキャラクターの表情をどう見せるかなど、 芝居にもそれぞれの演じるキャラクターにも、全体的にもっと馴染むのを待ってから行った方が良いアプローチだったのかな、と。
 やはり序盤は、役者の拙さをフォローして面白さに変換するのは、脚本や演出サイドの領分だと思うので。
 次回――なんか、こんなプレシャスがあったような……(笑)

→〔その2へ続く〕

(2022年2月16日)

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