■『仮面ライダーオーズ』感想まとめ7■


“一か八か 最後の手段 試す時だろ”


 ブログ「ものかきの繰り言」の方に連載していた『仮面ライダーオーズ』感想の、 まとめ7(第37話〜第42話)です。文体の統一や、誤字脱字の修正など、若干の改稿をしています。

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◆第37話「眠りと1億とバース転職」◆ (監督:諸田敏 脚本:小林靖子)
 「ちゃんと病院に行かなきゃ駄目でしょ!」と伊達の隊長を気遣う後藤さんが、オカン状態。だがそんな後藤に伊達は、 「後藤ちゃん、ちょっとめんどくさい」とコンビ解消を通告。
 (俺のボケを最大限に活かせるツッコミは誰なのか……)
 独り悩む伊達の前にドクターが現れ、なんと前金と成功報酬の合計1億円で事務所移籍と新コンビ結成を持ちかける……!
 伊達と後藤が決裂した流れで、伊達の状態について知る事になる映司。 脳に入った弾丸がいつ致命的な凶器に変わるかもしれないのに戦い続ける伊達が求める1億円はいったい何の為に、 というのが改めてクローズアップ。
 「俺達が居なくなっても残る医療支援でねぇと……」
 伊達と一緒に戦地で働いた経験を持つ医者の言葉から、映司と後藤は、 伊達が医療従事者を養成する学校を建設しようとしているのではないか、と想像の翼を広げる。
 「自分が居なくなっても残る。凄い事ですよね」
 主人公のトラウマに、アフリカの内戦という要素を持ち込んだ責任を、物語として取る一つの形として、 メインキャラの一角である伊達も、現実の国際的な紛争とそれにまつわる問題にリンク。
 この、紛争や貧困という、“ヒーローが直接戦えない敵”(むしろ、メタファーと戦い続けているが故に)と主要人物を直接向き合わせ、 それを重要な芯の部分に据える、というのは今作のかなり挑戦的な部分であり、《平成ライダー》が構築してきた作劇の、 更に一歩先へ踏み込もうとしたのかな、と思うところ。
 前作『W』が、<仮面ライダー>(石ノ森ヒーロー)的なるものを、 古典を意識的に踏まえながら次の10年に向けて再構築しようとした作品だとすると、今作は年間を通して現実の課題を直接提示し、 白でも黒でもない世界を積極的に描く事で敢えて既存シリーズの作劇フォーマットを崩し、ヒーロー物の新たな作劇を志向する事で、 《平成ライダー》第1期からの脱皮を目指したのではないか――と感じます。
 いわゆる狙った“問題作”ではなしに、世界にはヒーローの手が届かない問題がある、という事を基盤に据えて繰り返し向き合う事で、 ドラマ性を新しい舞台に持ち込もうとしたのかな、と。
 結果としてそれが、スッキリ着地しないエピソード群、その一方で過剰にエンタメしようとしている部分の見え隠れ、 という年間を通してバランスの試行錯誤を引きずるという今作の短所にはなったのでしょうが、 未来へ向けた目の付け所としては面白かったと思いますし、その挑戦がラスト1クールでどんな結末に辿り着くのか、 楽しみにしたいと思います。
 (そういえば、半分同期の『天装戦隊ゴセイジャー』も、かなり実験的な作品でありました)
 その頃、グリード達はコアメダルを集める為に結託し、 カザリの入れ知恵によってメズールとガメルが作り出した融合ヤミー・ウニアルマジロヤミーが出現。 針を浴びせた大量の人間を不眠症にした上で一気に眠らせる事で、セルメダルをがっぽり回収。
 アルマジロの装甲に苦戦するオーズだが、突然、地面から斧を取り出す(笑)
 ……え、プトティラの特殊能力ではなかったのですか(^^;
 いい加減さに拍車がかかりましたが、オーズはタウバにチェンジすると電撃アックスでヤミーを粉砕。 斧が急に『タトバ〜』と喋り出したり、この辺りの下りは正直よくわからず、とにかく斧をアピールしろ、 という財団Bのオーダーを感じます。
 大量のセルメダルに大喜びするアンクだったが、そこへ突然バースサソリ(出番があった!)が現れるとセルメダルを回収。それを、 現れたグリード達に与えてしまう。
 「突然で悪いんだけど俺、こっちに転職したから」
 「え?」
 「何言ってるんですか?!」
 「まあとにかくそういう事でよろしく――変身!」
 ドクターと共に姿を見せた伊達がバースに変身し、戦いが新たな構図になった所で、つづく。
 本来なら衝撃の裏切り展開の筈なのですが、予告からサブタイトルから転職前提だったのでクライマックスの衝撃が全くなく、 これはさすがに引っ張りすぎた感じ(^^; せめてサブタイトルはもう少しどうにかならなかったのか。

◆第38話「事情と別れと涙のバース」◆ (監督:諸田敏 脚本:小林靖子)
 「伊達さん、嘘ですよね?!」
 「俺今まで後藤ちゃんに嘘ついた事ないでしょ」
 後藤はバースに腹パンされ、アンクはカザリに追われ、オーズはガメル・メズール・バースの集中攻撃を受け、 圧倒的な戦力差で大ピンチに追い込まれる映司達だが、後藤がバイクを爆破し、大量の缶ドロイドで目くらましをしている内に、 なんとか逃走に成功。
 「はんっ、夢なんてのは、おまえら人間が欲望を都合良く言い換えただけだ。綺麗も汚いもあるか」
 伊達の裏切りを不思議な事ではないと嘲るアンクに対し、夢の為に金が必要というなら何とか捻出してみせる、 と鴻上会長に頭を下げてお金を借りようとする後藤だが……算出された前借り可能金額は、78,000円(ちーん)
 「君の欲望は、いつもここに留まっている。ここで感じたまえ!」
 この期に及んで、頭でっかちで魂が篭もってない小さな男扱いを受ける後藤さん、ちょっと哀れ(^^;
 「なあドクター。世界を終わらせるって、本気なの?」
 「終わらせます。人も世界も、終わってこそ完成する」
 「そうかなー? ずーっと続くからいいんじゃないの? 自分が死んだ後も何か残る。ドクターだってその人形を残して……」
 「残れば醜い残骸です。美しい内に終わらせなければ」
 ここで中盤、伊達がドクターに絡んでいた事が活き、人間/グリードであるドクターを少し掘り下げ。伊達の言葉に耳を傾ける事なく、 ドクターは終末の為の行動続行を告げ、伊達と2人で、映司とアンクを誘い出す。だがオーズvsバース直接対決の寸前、 そこに後藤が現れ、伊達の口から、1億円の使用目的が明かされる……それは、 脳に入った弾丸を取り出すという超難度の手術を成功可能な闇の医者――ブラック○ャック先生への依頼代金だった!
 「悪いね後藤ちゃん。俺最初っから欲望まみれなんだ。まだ死ぬわけにはいかねぇ、てさ」
 伊達の言葉に、凄くいい笑顔で勝ち誇るアンク(笑)
 「だったら……だったら俺が伊達さんを止めます」
 伊達を死なせないという約束の為に、伊達の継承を目指す後藤は伊達に銃口を向け、伊達はバース変身。……しかし、 バースは構えた銃口をドクターへと向ける。
 「すまねぇな、ドクター。こんな仕事は俺にしか出来ねぇ。あんたをグリードにするなってよ、会長が」
 まあ今更、伊達が裏切るという展開そのものがどうしても茶番風味が強かったのですが、実は会長の差し金でした、 とあっさりバース反転。
 「伊達くん。私にあそこまで近づいてきたのは、姉以外にはあなたが初めてでしたよ。 そうでなければ本当に協力して貰いたかったのですが。――バースには自爆装置がついています。マニュアルに書いてあった筈ですが」
 自爆――それは、機密保持の為の当然のセキュリティ。MAYDAY! MAYDAY!
 「……マニュアルは苦手なんだ」
 登場時の台詞が用いられ、ドクターは自爆スイッチをぽちっとなするが……バースは爆発しない。
 「悪かったな。俺はマニュアルが大好きなんだ!」
 バースの自爆装置は、何かとコンピューターをいじるシーンのあった後藤が、既に解除済みだったのだ!
 色々と不遇な扱いの多い後藤さんですが、すっかりメダル銃を生身で撃てるようになっているし、メカに強いし、本来、 常人レベルでは滅茶苦茶有能な人なのだろうなぁ……。
 「後藤ちゃんナイス! ――悪いな、ドクター」
 引き金を引くバースだが、そこにドクターが待機させていた3グリードが登場。3属性攻撃を受けたバースは、 番組史上最高レベルの爆発でど派手に吹っ飛ぶ!
 この際、ドクター(半分グリード)が、こっそり車のドアの影に隠れているのですが……ちょっと素?
 大ダメージを受けたバースは変身が解けてしまい、倒れ伏す伊達に駆け寄る後藤。
 「後藤ちゃん、俺を死なせないってやつ、痺れたわ」
 「しっかり、今病院へ!」
 「医者はここに居るっつーの。でも、もういいや。……後藤ちゃんが受け継いでくれれば、俺は死なないって事だ……そうだろ?」
 「何言ってるんですか?! 俺にはまだ……」
 「自分を……信じろ」
 常に人生崖っぷちだった伊達に「受け継ぐ/残る」という言葉を前回今回で何度か重ねて乗せ、 最後に後藤に渾身の激励を残した伊達明……リタイア? これまで後藤に数々の指南をしてきた伊達さんですが、 今回冒頭の「俺今まで後藤ちゃんに嘘ついた事ないでしょ」という言葉が、ここでまた効いてくるという構成。
 オーズ@サゴーゾはグリード相手に3対1で苦戦し、またも変身解除。だがそこに、苦節3クール、あの後藤慎太郎が、遂に、 ヒーロー登場からのヒーロー歩行からの変身を決める!
 「伊達さん……一緒に戦って下さい。――変身」
 伊達の形見のバースベルトを装着した後藤は、セルメダルをぽきゅっとな。
 今こそ誕生した後藤バース=略してごバースは、咆哮と共にウイングを装着して突撃し、 その出鱈目な勢いに戸惑っている内にやられるグリード達。
 ……これも、ノリか、ノリなのか?!
 「あいつ……伊達より酷い」
 周辺のあちこちにぶつかって余計な被害を撒き散らしながら、ごバースはフルアーマーからブレストキャノンを炸裂させ、 巻き込まれそうになる映司(笑) 危うく突然のライダーバトルから残り1クールで主役交代する所でしたが幸い外れ、 アンクは吹き飛んだ3グリードから適当にコアメダルを回収するが、そこに子アンクが現れて炎を撒き散らしドクター組はまとめて退却。
 工場に戻って倒れ伏す伊達に駆け寄る映司だが……
 「あ……言い忘れた。退職金、俺の口座に振り込んどいて」
 伊達明、復活。
 ……うん、まあ、そんな事だろうとは、思いました。
 かくして、伊達明は今回の潜入作戦の危険手当+後進育成の報償+退職金、しめて5千万円を鴻上ファウンデーションから、 そこにドクターからの前金を合わせて、きっかり1億円を手に入れるのであった。
 「素晴らしい! 君の欲望ミッションコンプリーーートだ! おめでとーう!!」
 鴻上ファウンデーションが諸々合わせて5千万円だとすると、ぽんと5千万円渡しているドクター、凄く、気前いい……(笑)
 そして、普段の活動の儲けが全く加算されていない気がするのですが、やはりバースは赤字続きだったのか。
 「生き残らなきゃ学校も作れないからな。火野、おまえもいつか来い」
 「え?」
 「おまえの欲、思い出せよ。……おいアンコ! たくおまえは……別れの言葉ぐらい無いのかよ」
 「…………俺はアンクだ」
 1億円を手に入れた伊達は手術を受ける為にブラッ○ジャックの元へと飛び立ち、後藤は黙々と特訓を続けながら飛行機を見送るのであった……。
 伊達明退場編でしたが、「突然薄幸のヒロインと化した伊達さんがブラック○ャックに手術を受ける為に去って行く」という話の骨子は、 正直いまいち(^^; そこは弱い自覚はあったのか、ドクターとの絡みと後藤さんの引き上げを合わせて、 バース交代編も兼ねましたが、その為のギミックであるバース転職も、いまいち面白くならず。
 伊達&後藤コンビへの思い入れによっても感想のだいぶ変わるエピソードかなとは思いますが、個人的には正直、 後藤さんには小さいままで居て欲しかった(え)
 いや、今作で一番、成長要素……というか、世の中の裏と表をあるがままに認める事を強いられているのは後藤さんなので、 展開としては納得なのですが(笑) 後藤さんが不遇なのって、メインキャラの中で後藤さんが一番“真っ直ぐ”だから……という所に、 今作のひねくれ具合を見る所であります。

◆第39話「悪夢と監視カメラとアンクの逆襲」◆ (監督:石田秀範 脚本:小林靖子)
 見所は、モデルチェンジした後藤さんの変なジャケット。
 タケノコを掘りに行きそうな映司に対抗したのか、渓流に釣りに行きそうな服装になっていますが、 何もそこまで襟を立てなくても良かったのではないか。相変わらず色が重い(モスグリーン)ので、 このぐらい違和感を出さないと画面に埋没してしまう、という判断だったのかもしれませんが(^^;
 慣れないミリタリーショップに入って、タチの悪い店主に不良在庫を掴まされた感が漂います。
 そんな後藤は会長命令により、里中をサポートに付けられる事になり、新コンビ結成。休憩時間には平然とゴリラの電源をOFFにする、 どこまでもビジネスライクな里中のペースに振り回される事になり、念願の変身を果たしても後藤さんの苦難は続くのであった。
 と、前回で栄光のルートに入ったと思われた後藤は、里中という強力な機雷の洗礼を浴び、あっという間にヒエラルキーの下層に再転落(笑)  ごバース誕生ケーキを頬張る姿には早くも哀愁が漂い、前回から約3分ぐらいの、短すぎる栄光でした。
 その頃、アンクは子アンクに吸収される悪夢にうなされていた……夢に出てくる白目映司が超怖い(笑)
 “夢を見る”という異変に動揺し、映司の腹に抱える紫のコアメダルに対して神経質になるアンクだが、 そこを訪れる町内会長・下田。町内の至る所に監視カメラを設置したと何やら異常な気配を見せる下田は、 町の不審者として、映司とアンクに退去を要求(笑)
 屋根から出入りする鳥頭と、店の看板にパンツを干す住所不定の2人組には、凄く、反論しにくいです。
 町内の様子をくまなくカメラで監視する下田が見つけたマナー違反者にヤミーが次々と襲いかかり、その気配に気付く映司とアンク。 橋の上から河川敷に投げ飛ばされた一般人に
 「逃げて下さい!」
 って無理じゃないかと思うのですが、割と普通に立ち上がって逃げたので、何か特殊な訓練を受けている人だったのか。
 オーズがヤミーを殴ると、軍鶏ヤミーに成長。軍鶏ヤミーはいきなりワイクルー・ラムムアイ(ムエタイの試合前の踊り) めいた動きを見せるなど、どこかコミカルだが格闘戦に強く、苦戦するオーズはシャゴータ変身で、まさかの頭からライダー水流(笑)
 続けてゴリラパンチを浴びせるも逃げられてしまい、その行方とヤミーの巣を探す映司とアンクは、町の異変に気付く。
 その頃、クスクシエ付近の監視カメラを無効にして回っていた知世子と比奈の前に軍鶏ヤミーが出現し、比奈ちゃん、 持っていた梯子でヤミーを迎撃(笑)
 なんか、短い梯子を駆使して戦う格闘術があった記憶があるのですが……ジャッキー?
 そこに映司達が駆けつけ、オーズ変身。軍鶏のリボン攻撃に拘束されてしまうオーズだが(拘束攻撃は鳥形ヤミーの共通能力?)、 続けて後藤が駆けつける。
 改めて後藤さんのバース変身と相成りましたが、変身用のセルメダルをリストバンドに収めているのは格好良かったです。また、 武装用のメダルもミルク缶ではなくそれらしいバッグに収め、細かく伊達さんと差別化。 後藤さん絶対、形から入るタイプだから!
 戦闘でも、ドリルアームとカッターウイングの合わせ技を見せてだバースとの違いを見せるごバースだが、2対1でも軍鶏に苦戦し、 またも拘束されてしまうオーズ。やむなく自らオーズをフォームチェンジさせようと泉刑事の体を離れるアンクだが、 軍鶏リボンの流れ弾が刑事ボディに被弾。今更ながら、泉刑事の肉体を脅かす危険性に気付いた映司は自らプトティラを発動し、 そこにバッチリ着替えとメイクをしていた里中が遅れて到着。プトティラ×ごバース×里中、の連携攻撃を受けた軍鶏は、 バリアを張ると逃亡するのであった。
 里中に関しては中盤に戦闘力を見せていましたが、基本、ほぼ『オーズ』世界の外縁に存在する無敵キャラなので、 ノーコメントで(^^; 元々はもう少し物語に絡める予定があったのかもしれませんが、もはや開き直ったというか何というか、 むしろここから終盤、変に背景とか付けられても反応に困るのでこのままで居てほしい。
 「気持ちがいい。人を支配するって、本当に。この家だけじゃ足りない。もっとこの町を……もっとこの町を…… もっとこの町をぜーんぶ、支配する」
 ヤミーの親であり監視カメラの黒幕は下田の妻であった事が明かされ……
 「僕は、僕は全部手に入れる……」
 右手を取り戻す為に蠢く子アンク、でつづく。
 分裂アンク、アンクと泉刑事、という二つの定まらない主と従の関係に焦点を合わせ、泉刑事のレンタル期間延長を許可した比奈が (あの時、私がアンクにああ言ったのは……)という台詞が、思わせぶり。
 ……にしても、泉刑事の体に関して、映司とアンクの会話を廊下で耳にする比奈、映司と比奈のやり取りを部屋の中で聞くアンク、 と何故そこでヒロイン力で対抗するのだアンク(笑)
 次回、誕生を祝われるのは、泉刑事か、アンクか、それとも……?!

◆第40話「支配と誕生会と消えるアンク」◆ (監督:石田秀範 脚本:小林靖子)
 軍鶏ヤミーが警官や警備員など制服の人間に手当たり次第に羽を飛ばして洗脳し、ますます過激になっていく奇怪な監視町内。
 クスクシエでは負傷が癒えずに血を流すアンクの体を手当しながら、泉刑事の体に及ぶ危険性を認識した映司が、 アンクをこのまま憑依させておいていいのか、という問題を蒸し返す。
 「ちょっと待って! 映司くん、私、答は変わってないから。ただ……どうしてそうなのかは、実はずっと考えたりして。だから、 映司くんにも聞いてみたかったんだけど」
 もしあの時、自分がアンクを追い出せと言ったら映司はどうしていたのか。
 「………………追い出してたよ。約束だから。……刑事さん助けるって」
 改めての問いに、映司は迷いを漂わせながらも答え、アンクは苦虫を噛みつぶしたような表情に。
 エスカレートしていく妻の差し金で、町内会長は夢見町住人規則を発表し、 踏み込んできた警官らに退去を強要された映司とアンクは自らクスクシエを出て行く事に。 残された知世子がキレて警官らを叩きのめしたり、町内会のあれやこれやは、前後編ともに石田監督が恒例の悪ノリ気味(^^;
 ヤミーの巣である町内会長宅に辿り着く映司とアンクだが、邸内からリボン攻撃を受けてオーズに変身し、 なんだか凄く久々な気がするメダル剣を使用。門の中に入り込むオーズだが、そこに立ちはだかったのは、 ヤミーに操られる警察官ら人間の壁。これでは戦えない、と駆けつけた後藤と共に一時撤退した映司達は、 ヤミーが餌を求めて外に出る所を狙うしか無いと、大量の缶ドロイドに屋敷を監視させる事に。
 ……今回、メダル剣の他、缶ドロイド大活躍で最後の?小道具大放出キャンペーンなのですが、 町中に監視カメラを仕掛けた怪人の元締めをヒーローが監視するという構図は、狙った皮肉なのかなんなのか(^^;
 「そういえば里中さんは?」
 「………………支度が間に合わなかったそうだ」
 「……あ〜……大変ですね」
 クスクシエに戻れない映司とアンクはファンシーなBGMで時間を潰し、久々に、川でパンツを洗う映司。
 ……そういう事をしているから、捕まると思うんです。
 「なんか……最初の頃みたいだな。ずっと、野宿で。最初は、戦いもいっぱいいっぱいで、おまえもすぐ乱暴な事するから、大変だったよ」
 「……はんっ、それが今じゃ、俺を追い出せる気でいるとは、偉くなったもんだな」
 「偉くっていうか、今の俺なら出来るでしょ」
 映司、恐竜メダルで、ナチュラルに脅迫(笑)
 やはりこう、表向きMだけど本性がSだと思う所です。
 「……ちっ、バカが。そうやって力を過信して、800年前の、王も暴走した」
 アンクが珍しく、自分から王様について言及。この800年前の王(オーズ)がどんな人だったのかはちょっぴり気になる所ですが、 なんとなく、性格悪そうなイメージがあります(笑)
 アンクの性格がねじくれた原因は、王様ではないかというか。
 「そっか……まあ比奈ちゃんが嫌だって言ったらの話」
 「だからそう言ったらだ! 本気で出来るつもりか」
 「……そう言わないで欲しいって思った。……今はまだね。おまえは、おまえの偽物に狙われてる。ちょっとでも不利になれば、 全部持ってかれる」
 映司の言葉を聞き、……あれ? いつの間にか俺、こいつにガードされるヒロインの立場? という事に気付き、 ちょっと動揺するアンクが、ピクピクしながら背中を向ける芝居が細かく上手い(笑)
 まあ、気持ち悪いメガネに告白したように、映司には映司の理由というのがあるのですが、この根幹の所で、 映司がアンクに全てを話してはいない、というのも今作の面白いというか、ねじくれた部分。
 「…………それがおまえに何の関係がある」
 「……困る。アンクだって困るでしょ」
 そこに食事を持った比奈が訪れ、弱くなった立場、体の異変、変化する距離感、思うままにならない状況に苛立つアンクは、 傲岸でインテリジェンスの光る俺様キャラを守らねばならぬと、突然、比奈の首を締め上げる。
 「うぬぼれんな映司。おまえも比奈も、俺はいつでも潰せる。最初の頃とおんなじだ」
 「アンク……」
 アンクに首を絞められた比奈はしかし、抵抗する事なく、あえて体の力を抜く……。
 「違うと思うけど。アンクなに焦ってるんだよ」
 無抵抗の比奈と、慌てない映司の姿に、アンクはそれ以上どうする事も出来ず、更にそこへ、 クスクシエの看板その他を台車で引いた知世子が登場。
 「みんなー! うち営業停止だってー!! だからここでパーティしましょー!」
 知世子さんが、格好いい。
 「……アンク、誕生日おめでとう」
 そして、ここで兄の体に居座った厄介者というだけでなく、そこにあるアンクという個の存在を認める比奈ちゃんも、格好いい。
 かくして河川敷の即席クスクシエで開かれる、アンク/泉刑事の誕生パーティ。
 (あの時、私が思ったのは、お兄ちゃんなら戦いに協力したいんじゃないかなとか、意識の無いお兄ちゃんをずっと見てるのが辛いって、 勝手な事とか。でも、たぶん大きな理由はなくて、ただ一緒に居る時間が積み重なっちゃったのかなって。嫌いとか、 好きとかより前に。―― 一緒に居る時間が)
 一言でまとめれば“情が湧いてしまった”という事ですが、ここで、一種の化け物である映司だけではなく、 比奈がアンクの個を認めるという大きな前進がなされ、またアンクがそれを理解してしまう事で、3人の関係性が新生。 これを『オーズ』全体のイメージソングともいえる「HappyBirthday」と絡めたのが巧くはまりました。
 ――翌朝。
 「…………餌わかった!!」
 ヤミーの餌が監視カメラによる支配の映像そのものだと気付いた映司は大量の缶ドロイドに監視カメラを攻撃させ、 それに激怒した親の意識に反応した軍鶏が出撃。
 「――行こう」
 「ああ」
 「刑事さんの体! 気をつけろよな。あんまり酷かったら、やっぱり取り上げるから」
 「やれるもんならやってみろ」
 オーズ&ごバースは軍鶏ヤミーと再戦し、オーズが剣で近接攻撃、ごバースが銃で援護攻撃と見事な連携を決めるが、 今回もリロードが不得手なごバースの隙を突かれ、ピンチに。だがその時、 「ギャラの5%」による後藤の懇願を聞き入れた里中がタクシーで駆けつけ、弾丸を補充すると支援攻撃に参加。
 体勢を立て直したオーズは、いつ以来か思い出せないラトラータを発動し、 軍鶏バリアーを外部から無理矢理焼き払うとタイガー突撃殺法でせいやーーー。
 ……久々だったのに、短かった(笑)
 ヤミーが消滅した事で町内会長の妻は正気に戻り、町もクスクシエも元通りに。
 「大丈夫かなぁ……」
 「家の中でやってる分には、問題ないだろ」
 折檻される町内会長の悲鳴を、他人事で済ます映司とアンクであった……。
 クスクシエでは比奈がアンクに誕生プレゼントを渡し、一旦は拒否するような素振りを見せるも結局受け取ったアンクは、 屋根裏部屋でその中身を覗こうとした時、待ち構えていた子アンクの存在に気付く。
 「戦いの後って一番油断するよね。隙だらけだよ――僕」
 見た目のギャップが激しすぎて重なりにくい2人でしたが、ここでまさしく根が同一人物と納得(笑)
 子アンクの気配に気付いて屋根裏に駆け込む映司と比奈だったが、伸ばした手を掴むも虚しく、 3枚のコアメダルは子アンクの体に吸引され、床に倒れ伏す泉刑事の体。
 「おかえり、僕」
 右手アンクを吸収した90%アンクは遂に完全体となり、2枚の翼を広げるのだった……。
 映司・アンク・比奈の関係性を一歩近づけたと思ったのも束の間、とうとうアンクが吸収合併されてしまうという衝撃の展開。 守られるヒロインから、さらわれるヒロインへ!  着実にイベントをこなしてめきめきとヒロイン度を急上昇させるアンクの運命や如何に?!
 次回――泉刑事、今度こそ帰還。

◆第41話「兄妹と救出と映司去る」◆ (監督:舞原賢三 脚本:小林靖子)
 Count the Medal’s! 現在、オーズの使えるのメダルは……ほぼ0!
 「これで僕は、僕になる!」
 遂にアンクを取り込み、大空に2枚の翼を広げる真アンクだが、右手に違和感を覚えてコアメダルが1枚足りていない事に気付く。 吸収される寸前、アンク姫はコアメダルを一枚、比奈へと託していたのだ。
 前回ラストの手を伸ばす・繋ぐ、というのが、今作のテーマに合わせた意味だけではなく、 アンク姫のトリックにも繋がっていたという、巧い展開。またそのメダルを受け取っているのが比奈、というのも、 比奈の存在感が出て良かったです。
 ……あ、長らく困っていた2体のアンクの呼び分け問題にようやく天啓がもたらされたのですが、以後、 餡子の事をと呼称したいと思います。これは姫だ。
 コアメダルを手に逃げる映司と比奈を追う、悪(い王子)アンク。映司は覚悟を決めてプトティラに変身し、 悪アンクの中にわずかに残るアンク姫の気配に気付く。
 (まだ消えてない……少しだけど、アンクの気配はある)
 その頃、クスクシエでは泉刑事が目覚めていた。
 「初めまして、比奈の兄の、泉信吾です」
 ……なんか、泉刑事が名前を名乗るのって、劇中初めてのような。いやあまあそもそも、 物語の中でフルネームを名乗る機会というのは意図的に用意しないと存在しないわけではありますが、そういう意味では、 ここでとうとう「泉信吾」が『オーズ』という物語の舞台に上がってきたというニュアンスは感じます(これまでは、 あくまで主に比奈ちゃんの背景だった)。
 ところでやはり、泉刑事の名前は葛山「信吾」から来ているのでしょうか。
 なおこのシーンで、知世子さんの顔にパンチマークみたいなのがついていて首をひねったのですが…… 前回の警察軍団との乱闘騒ぎで負傷したけど、その後の登場シーンが夕暮れから夜(しかも野外) でハッキリ見えなくて翌朝の登場では後頭部しか映らなかったので、今回ここに至るまでメイクが活かされる機会が無かったのか(^^;
 困惑して思わず前回どうだったか確認してしまったのですが、もう、無かった事にして良かったような気も。
 プトティラと悪アンクは激突し、水道施設みたいなトンネルの中で、派手に炸裂する火薬が格好いい。 これまで数多のグリードを圧倒してきたプトティラと互角の戦いを繰り広げる悪アンクだが、右腕に異変を感じて撤退。
 「早く全部手放せばいいのに……意識も、何もかも。悪あがきはやめなって言ってるんだよ!」
 思春期の右腕が疼きまくって、押さえ込むのが大変です。
 ここで自ら右腕を岩に叩きつけてセルメダルを飛び散らせる悪アンク、というのはグリードならではで面白かった描写。
 一方、ひとまずクスクシエに戻った映司と比奈は、復活したお兄ちゃんと再会。
 「相変わらず、驚くと、子供の頃とおんなじ顔になるな。……やっと戻った。心配かけたな……ごめん」
 ……これ、なんだかんだ、色々食わせていたので、本体の体力が回復したという事なのか(笑)
 「お兄ちゃん……お兄ちゃん、お兄ちゃん!」
 感極まった比奈ちゃんが飛びついた所で、お兄ちゃん吹っ飛ぶ、というギャグはさすがにやらなくてホッとしました(笑)
 「戻ったんだ、刑事さん。……良かった……」
 そして泉刑事により、アンク姫は、メダルホルダーも咄嗟にベッドの下に隠していた事が判明。
 「土壇場で、出来る限りの可能性を残したんだよ。自分が消えない為の」
 「……あいつらしいですね」
 「映司くん、これからは、俺も戦いに協力させてくれないか」
 姫が憑依していた間の事はだいたい把握しているという泉刑事は映司に協力を申し入れ、 正義感に溢れ公権力に所属する妹想いの好青年との新コンビがここに誕生する……のだが、お兄ちゃんは……

 メダル投げがド下手だったのです。

 実戦では、志より実力でしょ?! と、アンク姫と泉刑事を物凄い形で区別(笑)
 姫のメダルトスは、ファンタジー表現ではなく、長年鍛え上げた技術の賜物であるという事も判明し、 居なくなって初めてわかる大切さ状態。
 この映司と泉刑事の訓練シーンでは、色々試してみようという流れでお遊び気味に、ラウバ、サゴリーター、タカウゾ、ラゴリタ、 が1カットずつ登場。ここまでも結構、取っ替え引っ替え3色フォームを見せてきた今作ですが、 これが出番の無かった形態という事でしょうか。一発ネタなので立ち姿に困ったのか、ウナギになると、 手をくねくねする映司(笑)
 鴻上達はこの光景をバッタ缶で盗撮し、アンクの消滅と泉刑事の復活を確認すると共に、 プトティラに頼らざるを得なくなるだろう映司の状況に不安を募らせる……。
 泉家では帰ってきたお兄ちゃんを前に比奈ちゃんが女子力をアピールし、和やかな家族の食卓のご相伴にあずかる映司。
 (戻ってきてるんだよな、比奈ちゃんの日常。本当だったら、今までだって続いてた筈の、お兄さんと一緒の生活)
 苦節3クール、一つの約束を果たした映司は、比奈と信吾の笑顔に覚悟を決める。
 (もう、この二人がメダルに関わる必要なんかない。俺や、アンクにも)
 アンクの事がわかったら教えてほしい、と比奈に告げられる映司だが……。
 (アンク……比奈ちゃんは、おまえを助けようとしてくれてるよ)
 心の中で姫に語りかけながら、映司はマンションを振り返ると、泉兄妹に別れを告げる。
 「……じゃあね」
 (戻ったら、おまえはまた、信吾さんの体使うかもしれないのに。……だから、あの二人にはもう近づかない)
 映司はクスクシエにも置き手紙を残し、アイス代を踏み倒して、夜逃げ。
 (ただ……)
 「――おまえは助けなきゃな」
 手を伸ばしたあの時の、姫の表情を映司は思い出す。
 「あの時おまえは助けを求めてた。そんなの初めてだよ。……はぁ、パンツの雨でも、降るかもね。――居た」
 ここで、“お互いを利用し合う共闘関係”であった映司とアンクの間に、「助け」という映司を構成するキーワードが入り込む、 というのはお見事。同時に、色々な理由はあるのですが、比奈がアンクの存在を認めるに至った「積み重なった時間」を共有しつつも、 自ら泉家やクスクシエから離れていける、映司の強さと怖さ、 そして改めての「手を伸ばす事」への病的な執着が綺麗に組み込まれています。
 アンクの気配を捉えた映司は、比奈や泉刑事には何も告げず一人で姫の救出へ向かうが、そこへもう一人の王子様志望――後藤が姿を見せる。
 「でも俺、アンクを助けに行くんです。グリードの。後藤さんにそれは……」
 「俺はおまえを助ける」
 そう、伊達さんが去った今、映司(ヒロイン候補)を助けるヒーロー役を担うのは、ごバースしか居ない!
 ここで後藤さんが、名実ともにヒーローになる格好良さを見せてくれたのですが、正直、初めて、 後藤さんを格好良く感じたかもしれません(笑)
 またこの、「誰かの為に手を伸ばす映司に別の誰かが手を伸ばす」というのは、 第32話でプトティラの暴走を止める際に比奈ちゃんが持ち込んだ重要なテーゼであり、 そしてそれは映司の周囲に「積み重なった時間」の証左といえます。
 一つの関係に背中を向けつつも、映司を独りにさせない関係がまたそこにある。アンクばかりでなく、実は映司も、 命の重さを見失ってしまった自分から変わっていく事と向き合う局面に立たされている、というのは今作の面白い構造。
 ……にしてもどうして比奈ちゃんは、ヒロイン的活動をすると、 周囲の野郎どもに後から上書きされるのか。
 朝焼けの光をバックに出陣した二人は行く手に立ちふさがるアンキロヤミーと激突し、前回に続いて銃と剣で連係攻撃を仕掛け、 とにかく自ら突っ込んでいくスタイルだった、だバースと巧く差別化。しかしアンキロの装甲はライダーの攻撃をものともせず、 アンキロミサイルに追い詰められていく2人。メダル交換に手間取っている内にオーズは変身解除級のダメージを受けてしまい、 それを見たごバースは、ドリルで突撃。なんとか映司をアンク姫の元へと向かわせる。
 囚われの姫の気配を追い、山奥へ踏み入る映司だが、そこに待ち受けてたのは――悪い魔法使いドクター真木。
 「火野くん、アンクくんに会うのは諦めて下さい。完全に吸収されるのも時間の問題です。それよりも、君の中のメダルの話をしましょう」
 紫と紫のメダルが正対する時、果たして何が起きるのか?!

◆第42話「氷とグリード化と砕けた翼」◆ (監督:舞原賢三 脚本:小林靖子)
 映司を先に行かせる為にアンキロヤミーと一騎打ちにもつれ込んでいたごバースは、足下を凍結されて大ピンチ。
 「ここまでだなバース、終わりだ」
 「……悪いが終わるのはお前だ」
 「ほぅ……その状態で、どうやって終わらせるつもりだ」
 「――そろそろ俺の上司の出勤時間なんだ」
 前回今回と後藤さんがフィーバータイムなのですが、終盤で初参加となった舞原監督が、密かに後藤さんを好きだったりしたのでしょうか。
 アンク姫(ヒロイン枠)を助ける映司(ヒロイン枠)を助ける後藤(ヒロイン枠……?)を助ける里中(白い鳥人枠) というヒロイン連鎖反応が発生し、颯爽と現れた里中から今日もリロードを受けたごバースのセルバーストによりアンキロは撤退。
 その頃、山でドクターと出会い、体内のコアメダルの反応に苦しむ映司は、ドクターに恐るべき事実を突きつけられていた。
 「火野くん、君は知ってて見ないふりをしてるんですか?」
 「え?」
 「自分がグリードになろうとしている事に」
  ここまでそれとなく匂わされてきた要素がハッキリと言明され、身動きもままならない映司を相手に、 カラフルに花を散らした山の中で人形の為にティーセットを並べながら、ドクターは“グリードとは何か”について、淡々と語り始める。
 「いいですか火野くん。グリードとはその名の通り欲望の塊です。が、逆をいえば欲望しかない。ただ欲し続けるしかなく、 どれほどの欲望をいだこうとも、それが満たされる喜びを味わう事はできないんです」
 「どういう事ですか?」
 「例えば欲望が満たされたと感じるツールの一つ――感覚。見る、聞く、嗅ぐ、味わう、触れる。つまり人間の五感。 グリード達が見る世界の色は、くすんでいます。音は濁っている」
 ここで、不自然に散らしてあったカラフルな花の映像にフィルターをかける、というのは印象的な演出。
 「君もそろそろ、何かを感じている筈です。いや……感じなくなっていると言った方がいいですか。だからグリードは欲するんです。 ひたすらに。彼らがコアメダルを揃えて完全復活した時には、人間の感じるそれら全てを貪るでしょう。人間ごと喰らって」
 「人間、ごと……?」
 「それを更に大きく暴走させれば、世界そのものを喰らう。それでも満たされない絶望的なまでに深い欲望で。それは、 塵一つ残らない、美しい終末」
 いよいよラスボスぽくなってくる、ドクター真木。かなりオーバーにギャグもさせていたキャラクターだったので、少々意外。 個人的に、人形周りの演出は、やりすぎ感あってあまり好きではなく(^^; ドクターが嫌いというわけではないですし、 “世界と向き合っていない”というキャラ付けとしては面白い表現ではあるのですけれど。
 「……だったら、尚更メダルは渡せませんね」
 「しかし渡せば、君は美しいものを美しいと感じられるままに、終末を迎えられますよ。――こうならずに」
 ドクターの両腕が怪物化するが、そこで里中とバースが乱入し、映司を拾って一時撤退。
 「……なるほど。ドクター真木はもうそこまで」
 里中は鴻上会長にドクターの状況を伝え、後藤も泉兄妹に映司に起こっている筈の変化を伝える。
 「味……味覚だ」
 前回の泉家での食事シーンにおいて映司が変な表情になったのが伏線で、その事に気付く泉刑事。 比奈は映司をこれ以上オーズとして戦わせるわけにはいかないと決意を固め、その映司は、河川敷で魚を焼いていた。
 「なんか……味の抜けたガムみたい」
 機能を失いつつある味覚で魚を頬張りながら、映司はアンクがアイスキャンディーを愛好していた理由に気付く。
 「そっか……刑事さんの体使ったから、初めて味がわかったんだあいつ」
 決して満たされないからこそ求め続けるしかない、というグリードの本質が明らかになると同時に、味覚を失っていく映司という展開は、 体の痛みなどよりも遙かに視聴者に想像しやすいという部分も含め、酷い、実に酷い。
 基本は《平成ライダー》が様々な形で本歌取りとして描いている、ヒーローと怪人が根を同じくする(していく)改造人間テーゼですが、 クスクシエを舞台に繰り返し料理の映像が多かった蓄積も活き、身近な感覚の欠落というのが非常に衝撃的になりました。
 同時に、これがプトティラの力を“借りて”、身の丈以上の力に手を伸ばした映司が負う代償といえ、 『オーズ』の世界観にぴたっと収まったのはお見事。
 「おまえちゃんと言えばいいのに」
 ここで映司が幻の姫に語りかけるのは、ヤミー絡みではない内容に加えてグリードに対する理解が混ざり、 二人の距離感がこれまでよりも近くて良かった台詞(物理的には離れているけど心理的には近づいて、でも姫は背中を向けている、 というのがまたいい)。
 「……まあ、言うわけないか」
 一方、ドクター屋敷では駄菓子をうまいうまいと食べ続けながら、混ざっていた剣玉も平然と食べて同じ言葉を口にするガメルと、 そのガメルに渡された駄菓子にお礼を言いながらも渡された端から投げ捨てるメズール、そんな二人を冷めた目で見下ろすカザリ、 とグリード達の欠落も描写。
 初期からひたすら萌え路線のガメルですが、感情表現が素直な分、むしろアンクよりも哀しい存在に見えてしまい、 ヒロイン度が急上昇だ!!(待て)
 翌日、オーズを誘き寄せる為にドクターの指示を受けたアンキロヤミーは、賑わう広場を襲撃し、 その能力で人々の下半身を凍り付かせる。
 「助けてほしいならオーズに頼め」
 「オーズ?」
 「早く叫べぇ!」
 「オーズってなんだよぉ……」
 アンキロはうろたえる男を全身凍結させた上で粉々に砕き、以前のプテラノドン回もでしたが、今作、 一般人被害の描写でかなり攻めてきます。
 「オーズだ、叫べぇ!」
 「助けて……助けて! オーズ!」
 「オーズ!」「助けて……オーズ」「オーズ……助けてぇ……」
 助けを求める懇願の悲鳴は木霊となって響き渡り、存在を知らないヒーローの名前をただ闇雲に人々が叫ぶという、 凄まじくえぐいシーン。
 「誰でもいいから助けを求める」のでもなく「知っているヒーローに助けを求める」のでもなく、 「わけもわからず知りもしないヒーローに助けを求める」というのが、実に凶悪。
 認知されたヒーローを大衆が応援する事でヒーローに力を与える――「守る」ヒーローと「支える」大衆の関係性―― というテーゼのシチュエーションを裏返した上で、無辜の誰かが害されようとする時に駆けつけるというヒーローの意義を破壊し、 わけもわからずにその名を呼ばせる事でヒーローを強制するという、実に残虐非道な展開で、 ここに来て物凄い弾を撃ち込んできました。
 火野映司は、
 助けたいから助けているのか?
 助けを求められているから助けざるを得ないのか?
 その境目がわからなくなっているのが火野映司という主人公であり、その映司を更なる地獄の底に引きずりこまんとする、声・声・声。
 「心配しないで……大丈夫だから」
 「なんで……なんで笑ってるの? 映司くんの事だよ!?」
 広場へ向かおうとする映司をしがみついて止める比奈だが、そこにも助けを求める懇願の叫びは怒濤のように打ち寄せる。
 「オーズー」「オーズ」「おーず」「助けて」「オーズ」「おーず」「オーズー」「オーズ!」「オーズー」「オーズ」「おーず」 「助けて」「オーズ」「おーず」「オーズー」「オーズ!」「オーズー」「オーズ」「おーず」「助けて」
 「やめて……勝手に呼ばないで。映司くんは神様じゃない!」
 しかしその映司に助けられているので、ちょっと複雑な表情になるお兄ちゃんがワンカット入るのが秀逸。
 「オーズ」「オーズ……」「オーズー」「おーず」「助けて」「オーズ」「おーず」「オーズー」「オーズ!」「オーズー」 「オーズ」「おーず」「助けて」「オーズ」「おーず」「オーズー」「助けてぇ……」
 「……やめて……やめて! やめて!!」
 「比奈ちゃん。ごめんね。でも……ありがとう」
 姿なき群衆に向けて叫ぶ比奈の心を受け止めながらも、映司は走り、オーズ@ラトラータに変身。 ラトラータの挿入歌がイントロから入り、広場に飛び込んだオーズがライオンフラッシュで人々を解放する、 といういっけんカタルシス全開の演出なのですが、凄く、えぐいです。前半の映司の変化も強烈なのですが、 今回は、ここがとにかく凄かった。
 アンキロヤミーは、呼ばれもしないのに走ってきたごバースが、 ヒーローの重要な階梯であるバイクで跳ねるをキめて一騎打ちに持ち込むが、オーズの前には悪アンクが出現。
 「アンクの気配が……」
 「そう。随分抵抗したけど、消えたよ。でも、一つだけ気になってる。ねえ、アイスって美味しいの?」
 「さあ……でも、一つだけ言えるのは、あいつはそう簡単に消えるほど、素直じゃないって事かな」
 「じゃあ、僕を倒して確かめてみれば? でもその前に……僕のメダルを返してよ!」
 「違う。おまえのメダルじゃない。――あいつのだ!!」
 オーズはプトティラを発動し、激突する氷と炎。その戦いを見つめる、泉兄妹。
 「結局、俺達が望んでる通りに戦うんだな、彼は」
 「なんで?! わたし映司くんに戦ってだなんて」
 「比奈は、アンクの事だって助けたいと思ってたんじゃないのか。同時に俺の事も助けたい。けど映司くんが戦うのは嫌だ。 俺も同じだよ。さっきの人達もそうだ。みんな勝手な望みを言う。それを黙って、全部引き受けるんだ彼は。 そんな事が出来る人間だけがきっと……」
 「オーーーズ……!」
 ラスボスの座はまだまだ諦めない、と嬉しそうに吼える鴻上会長が1カット挿入。
 第1話以降、基本的に比奈ちゃんフィルターのかかった状態でしか登場していない泉刑事ですが、 ここで中間地点からの個人の意見をしっかり言わせて存在感を出したのは巧みで、この後でも効いてきます。
 私の映司観は「はぐれ外道」なので、映司が黙って全部引き受ける事、を映司の善良さとしては受け止められないのですが、この辺り、 個々の映司観によってだいぶ見え方の変わってきそうな展開。
 ごバースは零距離ブレストキャノンでアンキロを撃破するが、オーズvs悪アンクの激闘は続き、 咆哮するプトティラの姿を見ていられなくなる比奈。
 「しっかりしろ! 比奈が映司くんの手を掴むんだろ?! このまま彼を、都合のいい神様にしちゃいけない」
 「……うん」
 ああそうか、映司は自分の欲望が無いから、他人の欲望を受け入れてかなえる無限の器になれるのか。
 境目のわからない映司はヒーローという姿さえ虚ろに届く響きを反響させているだけの空っぽの器であり、 そして中空には神が宿るがゆえに。
 思えば度々、会長やドクターが「器」という言葉を口にしていましたが、その意味がようやく理解できた気がします。 そもそもヒーローとは、神様仏様の代理システムとしての側面を持つわけですが、そのヒーローから個人の欲望を消していき、 システムが遂行する「行為」だけが残った時、それは限りなく神様仏様に近い存在になるのではないか。
 比奈ちゃんが映司を守ろうとするのは基本的に親しい人間への感情論なのですが(それも否定されるわけではないですし、 映司にとっては必要なものなのですが)、ここで近い時間を共有していながらも違う距離感を持った泉刑事が、 “誰かを人身御供にして都合の良い神様に仕立て上げてはいけない”(そういう社会を肯定してはいけない) という理屈で現状を否定してくれたのは、泉刑事の立ち位置が活きて秀逸でした。この最終盤で、 泉刑事というピースが物語の中に綺麗にはまってくるのは、小林靖子がさすがの手腕。
 余談ですがこの、「システムに従い行為だけを遂行する限りなく神様仏様に近い存在」は、 東映ヒーロー作品にも数多く参加している會川昇のヒーロー愛が濃縮された超人幻想アニメ『コンクリート・レボルティオ』(2016) に登場するアースちゃんといえ、アースちゃんは魔女に夢(個人の欲望)を与えられる事でシステムに変調を来してしまうのですが、 個人の欲望を失う事で神様に近づいていく映司とは、鏡面的な描写と言えるかもしれません。
 もう一つちなみに、今回ちょっと思い出したのが、『特捜ロボジャンパーソン』(1993)第1話のこのやり取り。
「最悪だ、絶望だ、神も仏もないのか!」
「助けてぇ、誰か、助けて!」
「ジャンパーソン・フォー・ジャスティス」
 <レスキューポリス>の陥った行き詰まりを打破する為に、古典的なヒーロー像への回帰を目指した作品ですが、それ故に、 シンプルなヒーローへの希求とヒーローの理念が初登場シーンにストレートに凝縮されています。この作品が、紆余曲折の果てに、 とんでもない所へ辿り着いてしまったのも、面白い所(ちなみに小林靖子の脚本デビュー作)。
 プトティラと悪アンクは空中戦に突入し、プトティラは悪アンクの翼を切り裂くと、落下した悪アンクの核となるコアメダルを両断。
 「まさか……僕の、コアが……僕のっっ!!」
 断末魔の悲鳴を残して悪アンクは大量のセルメダルと化し、色々ひっかき回した割に、意外とあっさり消滅。 グリード勢初の完全リタイアとなりました。存在のしぶといグリードも、人格部分のコアメダルを直接破壊すれば倒せる事が判明しましたが、 とにかくグリードは、腹のガードが甘いなぁ(笑)
 悪アンクを倒すも苦しみもがくプトティラが無意識に伸ばした手を比奈が掴み、何とか元に戻る映司。 そして……散らばったセルメダルの一部が集合するとアンクの右手だけが再構成され、復活した姫は、 更に残りのコアとセルメダルを使ってなんと泉刑事@クジャク頭のボディを作り上げる!
 「映司……今度ばかりは礼を言ってやってもいい。目障りな偽物が消えてくれたからなぁ。……後は……」
 悪い王子から解放されたのも束の間、何故か泉刑事に迫る姫、でつづく。
 個人的に、非常にえぐみの強いエピソードでしたが、今作初参戦の舞原監督が手を緩めずにまとめて、お見事。 実質新キャラに近い泉刑事に関しては、アンクをあまり意識しないで撮れる監督の方が逆に良かった、みたいな面もあるのでしょうか。 基本的に好青年要素で構成されている泉刑事ではありますが、真っ当な大人の男の姿が劇中のバランス的にも良い案配でした。 その内、身に覚えの無い倉庫の上に立っていた案件とかで職務質問されるかもしれないけど!(おぃ)
 後合わせて、そんな信吾に育てられた比奈ちゃんが真っ当であるがゆえの身勝手さを自覚し、そこから目を逸らさずに映司に手を伸ばす、 というのも良かったです。
 果たして映司はいったいどこへ辿り着くのか、その空虚を埋める事が出来るのか、最終盤の転がし方が不安とともに楽しみ。
 次回――ヤクザ復活! そして、ヤクザとヤンキーが手を組んだ?! これだけやっておいて、 心を一つにしたアンク姫と映司達が一致団結してドクターの野望を打ち砕く! みたいに簡単に行かない所が徹底していて凄い。

→〔その8へ続く〕

(2016年10月19日,2017年1月15日)
(2017年4月24日 改訂)
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