■『仮面ライダーオーズ』感想まとめ6■


“Ride on! Right time Ride on! Right time
荷物は要らないさ
あきらめて 錆びた瞬間 走れなくなる”


 ブログ「ものかきの繰り言」の方に連載していた『仮面ライダーオーズ』感想の、 まとめ6(第31話〜第36話)です。文体の統一や、誤字脱字の修正など、若干の改稿をしています。

戻る

〔まとめ1〕 ・ 〔まとめ2〕 ・  〔まとめ3〕 ・ 〔まとめ4〕
〔まとめ5〕 ・ 〔まとめ7〕 ・  〔まとめ8〕


◆第31話「恩返しとたくらみと紫のメダル」◆ (監督:諸田敏 脚本:小林靖子)
 映画撮影にも参加せず久々に登場したウヴァは、出番の無い間にクズヤミーをヤミ金の社員に取り憑かせ、 チンピラを受け子にして1日1枚、2日で2枚、塵も積もれば山となる、 とちまちまセルメダルを集めていた!(涙)
 「人間もクズヤミーも使いようだな。メズール、ガメル、お前達を取り込まなくとも、俺は俺で力をつける。このセルメダルで」
 妨害を受けずに大事なHPをかき集めるという点ではかつてなく巧妙で実際に高い成果もあげているのですが、 せせこましすぎて涙が止まらないよ……!
 そんな事だから、ラスボスダービーから存在そのものを忘れてしまうんだよ!
 一方、鴻上ファウンデーションと訣別したドクターは退職金代わりと称して、 鴻上会長がヨーロッパから持ち帰った物を奪い去っていた――それは、10枚一揃いの、紫のコアメダル。
 「そしてメダルを抜く事で、欠けた穴を埋めようとする欲望が生まれ、生命体グリードとなる」
 ドクターがケースからコアメダルの1枚を抜き取ると、残り9枚のメダルが妖しく蠢き出す……!
 その頃、比奈の友人・三原鈴香から相談を受け、三原家のポストに毎日お金を入れていく男・坂田を捕まえた映司は、 クスクシエで鈴香と坂田を引き合わせる事に。教師であった鈴香の父親にひとかたならぬ世話になったという坂田は、 その恩返しでお金を入れていたというのだが……
 「お願いです! もうお金はやめて下さい」
 「へ?!」
 「うちのお母さん、すっかり甘えちゃって。仕事休んだり、買い物で借金まで。このままじゃ駄目になって……本当にすみません。 今までのお金も返せませんけど、本当にもう、やめて下さい」
 一方的に押しつけていた厚意を感謝どころか拒絶されてショックを受けた坂田のポケットからセルメダルが転がり落ちた事で、 事態はややこしく急展開。ウヴァが使いっ走りに使っていたちんぴらこそが坂田であり、坂田はそこで手に入れた金を、 三原家に渡していたのである。
 鈴香を追って飛び出した坂田を、映司、比奈、アンクが追いかけ、一気に店員の密度が減るクスクシエ。
 「ちょっとみんな! はぁ……後藤くん戻ってきて〜」
 ・
 ・
 ・
 後藤さんの中のワニ男「おいおいおい! 知世子さんにお願いされてちゃってるよ後藤! これってもしかして脈あり?!」
 後藤さんの中のカミ男「やべーーー、でも今の後藤の上司は里中くんじゃん? どっちも選べね〜〜〜」
 後藤さんの中のサイ男「というか、後藤ちゃんが誰かに期待されるのって、劇中で初めてだと思うんだよね」
 ・
 ・
 ・
 …………すみません、最近の流行にちょっと乗ってみました。反省しています。
 アンクに首根っこを捕まれた坂田は、店を出た鈴香が、見覚えのある金融業者に謝っているのを目撃。
 「えーーー、なんだろうこれ。え、俺が金渡して借金させて、その会社から俺が金貰って、また……冗談じゃねえって?!」
 とんでもないサイクルに一枚噛んでいた事に気付いた坂田はヤミ金に乗り込んで借金の融通を頼み込むが、 その干渉で社長と社員一同の中からクズヤミーが飛び出し、追いかけてきた映司&アンクと戦闘に。そして、 比奈に連れられて外に逃げた坂田は、ウヴァにメダルを投入されてヤミーの親になってしまう。
 「なーんだこれ……俺、何やってたんだ……」
 ひとまずクズヤミーを片付け、坂田から事情を聞く映司達。真摯に反省したのかと思いきや、 比奈に「たまたま悪い方向に転がっただけですよ」と励まされて、すぐに気を取り直してしまう辺りが凄く駄目な感じなのですが、 見た目からして視聴者が好感度を持ちにくい方へ持ちにくい方へ持っていくのが、今作はとにかく徹底しています。
 「人を助ける時は、そのたまたまがあるって事を、忘れない方がいいですかね」
 善意で伸ばした手が報われるとも、期待した通りの良い方向に進むとも限らない。
 坂田を諭しているようで、どこか映司の諦観も感じさせますが、だから映司は「手を伸ばすだけ」なのかなぁ……後編も含めて考えると、 坂田というのは、過去の映司の一部分の投影なのかな、とは思われますが。
 その坂田から生まれたヤミーは、銀行から奪った金をばらまいて欲望を満たすと、クロアゲハヤミーに成長。 オーズ@タカウルとバースが戦いを挑む所に、セルメダルで重課金したウヴァが参戦。 重課金ウヴァは豊富なHPで優位に戦闘を進めるが、オーズがタジャドルを発動して火であぶり、 飛び出たコアメダルをアンクが数枚ゲット。……久々に戦いに出てきたと思ったら、コアメダル供給する役目だ……!(涙)
 クロアゲハは、ひひひそいやーーーで撃破し、ウヴァ一転大ピンチとなったその時、 ドクター屋敷から飛んできた5枚のコアメダル紫が、オーズの体に吸収される!
 それによってベルトからタジャドルセットが強制的に弾き出されてしまい、ウヴァは1枚を強奪して退散。 倒れる映司の瞳は紫色に妖しく輝く……というまさかの急展開で、つづく。

◆第32話「新グリードと空白と無敵のコンボ」◆ (監督:諸田敏 脚本:小林靖子)
 「渦巻いている」
 「渦巻いてるな、欲望が」
 「人の命の、源が」
 「では、全てを無に――」
 「無に」
 前編でヤミー1体片付けてしまったと思ったら、後編で2体のヤミー追加という、大盤振る舞い。 色違いのプテラノドンヤミーカップルは街へ向けて飛び立つと、触れた人間を消滅させるプテラノ暗黒ガスを放出し、 街ではかなりの大被害。
 一方、病院で精密検査を受けるも異常なしだった映司は、目を覚ました事で退院。心配で様子を見に来てくれていた原田は、 クロアゲハヤミーの姿に自分を省み、己の行状を前回よりは反省。
 「俺も同じですよ。いっぱい失敗してます。貧しい国に募金してたつもりが、悪い人に使われちゃってたり。酷い時は、 内戦の資金になってたり。それで思ったんですよね。人が人を助けていいのは、自分の手が、直接届く所までなんじゃないかって。 俺は――こんぐらい。まあ、届かない事ありますけど。欲望だとしても、こんぐらいなら、手に負えますしね」
 「そっか…………こんぐらいか」
 自分の両手を広げる、映司と坂田。
 ここで面白いと思ったのは、自分の生んだヤミーを見て考えを改めるというのは第11−12話の妄想ブロガー回(脚本:米村正二)、 人助けをする(力を使う)のは自分の手の届く範囲というのは第21−22話のジャスティス回(脚本:毛利亘宏)、 とサブライター回の要素をそれぞれ拾っている事。
 妄想ブロガー回に登場するのがアゲハヤミーで、前回塗り替えのクロアゲハヤミーが登場する辺りの流れからなのかもしれませんが、 恐らく意識的に、これまでの『オーズ』を統合したのだろうなと。
 シリーズ構成を務める場合、メインライターとして良くも悪くも単騎駆けが目立つ小林靖子ですが、 少し作劇を変えてみようとしたのだろうか、と思う所です。そういう点では『オーズ』そのものが、 セオリーに対して揺らぎを入れていく作風で、けっこう大胆な構造をしているとは言えますが(今回もやはり、原田の出番はここまで、 鈴香に至っては出番無しで、三原家の問題はフレームの外に追いやられてしまい、 そこはもはやヒーローの手の届く範囲ではなくなってしまう)。
 街で動き出したヤミーの気配に気付いて現場に急行した映司達は、二体のプテラノドン相手に、オーズ@タトコと、バース変身。
 「我々は、消し去る者」
 「メダルもまた欲望。無に還れ」
 ビルの壁にタコ足張り付きを披露するオーズだっが、「コアメダルは欲望。我らの前で、 欲望は無効」というプテラノドンヤミーの無欲光線を受けて、変身を強制解除されてしまう。 見た目微妙なのに強力なプテラノドンカップルにバースも変身解除に追い込まれ、追い詰められる2人。その時、 逃げ遅れた人々を助けようと我が身を省みずに駆け出した映司は、プテラノドンの攻撃を受ける直前に伊達に引きずり戻される。
 「馬鹿やろぉ……死にてぇのか!」
 「ほっとけませんよ! 伊達さんだってそうでしょ!」
 「あいにく俺は医者でな! 医者の仕事は、まず自分が死なない事だ! でなきゃ、誰も助けられない」
 「じゃあ……俺に医者は無理ですね」
 伊達の制止を振り切って再び飛び出す映司だが、プテラノドンカップルの超音波攻撃に巻き込まれ、大爆発。ヤミーは飛び去り、 幸い軽傷で済んだ映司は、クスクシエで治療を受ける事に。
 「前から危なっかしいと思っていたが、原因はこれだ。他人は助けようとする癖に、自分の命は無視してる」
 「そんな……俺は別に死ぬ気だったわけじゃ!」
 とことん自覚のない映司。だが――
 「それが軽いんだよ。……死ぬつもりならいいさ。賭ける命の重さがわかってるからな。おまえは賭けてさえいない。 昔はちゃんと賭けてたのに。そうだろう?」
 ボクシング回で映司の事を間接的に「人助けドランカー」だと評していた伊達ですが、ここで改めて、人助けと自分自身、 それぞれの軽重がわからなくなっている、“こんぐらい”の範囲なら誰にでも手を伸ばそうとする映司の「壊れた天秤」に正面から言及。
 「火野映司……映司、思い出したよ」
 かつてアフリカで内戦に巻き込まれ、友達となった少女を救えなかった映司。その時、 映司は政治家の父親が払った身代金により解放され、日本に帰国していた。結果として一つの村が戦火を逃れる事となり、映司は、 内戦を止めた日本人青年という美談の材料にされ、父親と兄はそれをイメージ戦略に用い……渦の中心から切り離された映司には、 何もできなかった失意だけが残された。
 「火野の意志は無視、って事ですか。きついですね。俺なら多分……」
 「怒るヤツも居るし、じめじめ腐るヤツも居る。で、たまに妙に乾いちまうヤツも居る。火野はそれだ。乾いちまって、 自分への欲が無い」
 伊達は後藤と比奈に自分の知っている事を教え、一方、屋根裏部屋の映司とアンク。
 「おまえの方がよっぽど欲望の渦に居たとはなぁ……」
 「まあね。でももう忘れた。いつまでもこだわる事じゃないでしょ」
 遂に謎だらけだった映司の過去が完全に明かされ、巨大な欲望に飲み込まれて、失意の中で自分の価値を見失った男であったと判明。 映司は自分の価値がわからないから、自分に対する欲が無い。ところが、「死ぬほど後悔するのが嫌だから手を伸ばす」という、 行為だけには執着している。
 何故かといえば、それが、本当の意味で“生者”だった頃(賭ける命の重さがわかっていた頃)の映司が、 成したかった最後の事だから。
 以前の感想で映司について、例えるならはぐれ外道が近いのではないか、と書きましたが、 今の映司は人間だった頃の最後の思いに執着し、特定の「行為」をする為だけに死にながら生きているといえ、 やはり一種の化け物なのであろう、という印象が深まりました(そしてそれは、 今作においては「欲望」の為に生きるグリードの鏡写しなのでしょう)。
 欲望が無いから見返りも成果も求めないのに手は伸ばす――故に、
 「知らなくても、聞かなくても、戦えるのが君だろう」
 だが、そんな映司の新たな転機は思わぬ形で訪れる。
 「HappyBirthday! 紫のメダルのグリード! そしてそのヤミー!」
 クスクシエを訪れた鴻上会長は、映司は欲望が空虚だったからこそ、メダルの力の暴走を招かずにオーズとして戦えていたと説明。 しかし……
 「絶滅したり想像上でしかない動物を使ったメダル! その欲望は……無だ。Nothing……!  それがオーズに惹かれて映司くんの欲望の隙間に入ったぁ! 欲望の空白が埋まれば、暴走の危険性は高くなる!!」
 その空虚に紫のメダルが入り込んだ事で、果たして映司はどうなってしまうのか。
 「おまえわかってんだろ? 自分にコアが入ったて事を」
 「まあ……なんとなく。でもやる事は変わらないし。とにかく今は、目の前の人を助けるだけ、かな」
 伊達さんにあれだけ言われてもこの言動で、第32話にして、過去の事件により物語のスタート地点から映司が壊れていた事が明確にされるという、 凄い構成。
 「……ふんっ、おまえがバカで良かった」
 「誉めてるつもり?」
 「さあな」
 翌日、プテラカップルが遊園地に出現し、手を緩めない大量虐殺。オーズ@タトバとバースは立ち向かうが、 逃げ遅れた子供を見つけたオーズは背後からプテラヤミーの攻撃を受けてしまう。
 (映司くん、いつも、誰かの為に手を伸ばして……。お兄ちゃんにも、私にも……。じゃあ、映司くんには誰が?)
 比奈ちゃんの思考回路は割と真っ当なので仕方がないのですが、映司が手を伸ばすのは「誰かの為」ではないので、比奈ちゃんは、 ちょっと、騙されている(笑)
 少女はオーズから後藤さんにキャッチされるものの、無欲光線を浴びたオーズは変身が強制解除されてしまい、大ピンチに。 ……だがその時、映司の体内から紫のコアメダルが飛び出すとプテラ火球を防ぎ、勝手にベルトに収まってオートスキャン。

プテラ! トリケラ! ティラノ!
プ・ト・ティラノザ〜ウルス〜

 「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
 「この力は……」
 「この力は同類」
 「同類にして、敵!」
 映司は咆哮をあげ、800年前に存在しなかった新たなフォーム、プトティラに変身。
 恐竜パワーの集合体であるプトティラコンボは、プテラの翼で空中戦、ティラノの尻尾で打撃、 肩から飛び出すトリケラの角で中距離攻撃、と一通りの性能を見せると、炎・雷・風・水・重力に続く第6のグリード属性:冷気により、 氷付けにしたプテラヤミーメスをあっさり粉砕。
 そしておもむろに地面から恐竜顔の斧を取り出すとセルメダルを収納し、プ・ト・ティラノー必殺ーーー砲により、 プテラヤミーオスを爆殺、とその圧倒的な力を発揮する。
 まさかの、紫色の最強フォーム。
 フォージャスティス!
 (だからすぐそのネタに走るのをやめなさい)
 まあ厳密にはまだ最強フォームかはわかりませんが、相当の強敵として描かれていたプテラノドンヤミーを蹂躙した描写から、 既存5コンボ以上の戦闘力を持っていると見て良さそう。……それにしても、前作で半分こにして大丈夫だったから、 と何かのブレーキが壊れているのかもしれませんが、頭が光り、腕から触手、足に吸盤、に続いて、遂に尻尾が生えるとは。
 格好良いか格好悪いかでいうと第一印象は微妙なのですが、翼と尻尾にやや前傾気味の姿勢と、 人間のフォルムを崩しに来ている部分も含めて、インパクトはあります。
 あと、斧ですが、地脈エネルギーを物質化したとか、そんな感じ……? 拾ったプテラノドンの原材料(セルメダル1枚) でバーストしていましたが、あれだけ暴れ回ったプテラノドンヤミーが体内にセルメダルを発生させていない、 というのは紫ヤミーの特徴、という事でしょうか。
 ヤミー二体を瞬く間に葬り去ったプトティラだが、その勢いでバースを攻撃。危うく真っ二つにたたき割られそうになるバースだが、 比奈が割って入り、その一撃はギリギリで止められる。
 「映司君……私、映司くんの気持ちがわかるなんて言えないけど、でも、手を伸ばす事は出来ると思う。映司くんが辛い時は、 私が映司くんの手を掴む! お願い、元に戻って……映司くん、お願い!」
 ここに来て、比奈ちゃんにまさかのヒロイン効果が発動。斧を振り下ろそうとして止めた、 というポーズの問題で真っ正面から抱きつく事が出来ず、腰にしがみつくという微妙に変な絵になっている辺りに、 若干ヒロイン力の弱さは感じますが。
 「比奈ちゃん、ありが……と……」
 変身が解除された映司は気を失って倒れ、ビックリするほどの正統派ヒロインムーヴが発動したのですが、これも、 映画撮影回のネタを拾ったといえるのか。いや個人的には、比奈ちゃんは嫌いではないので、ヒロイン効果が発動したのは良かったですが。 基本、真っ当にいい娘ですし。
 ここでプトティラを元に戻すという形で、“向こう側”に居る映司に手を伸ばす存在の必要性が示唆され、 その端緒に気がついた比奈ちゃんが今後どういう位置づけになっていくのかも、楽しみにしたい所です。
 一方ドクター屋敷では、ドクター真木もまた、5枚目のコアメダルを体内に取り込んでいた。
 「人がグリードになれるなんて、面白いよね」
 そしてドクターはなんと、無機物からヤミーを生み出すという掟破りを発動。プテラノドンヤミーを作り出していたのは、 新たな紫のグリードとなったドクターだったのだ! ……と、衝撃に次ぐ衝撃の展開で、続く。
 立派に社会生活を営むウヴァ、新たな紫のグリード、明かされる映司の過去……と色々山盛りでしたが、なんといっても、 混沌のラスボス戦線にニューカマー現る! これは、映司がラスボス化し、アンクも伊達も鴻上会長も倒れた世界で、 後藤さんがラストヒーローになるという夢の展開なのか?!
 次回、そんな後藤さんは皆の期待に応える事が出来るのか。栄光の(?)劇場版を取り返せ!

◆第33話「友情と暴走と残されたベルト」◆ (監督:石田秀範 脚本:毛利亘宏)
 いきなり、バースとプテラノドンヤミー紫の戦いからスタート。それを見つめるカザリの前で、駆けつけた映司はオーズに変身。
 (紫のメダルの力を借りれば、俺の体を取り戻せるかもしれない。その為には、映司をもう一度あのコンボに)
 オーズはまたも無欲光線を受けて変身解除してしまい、 アンクは防衛反応で映司の体から飛び出してきた紫のコアメダルを横からかっさらおうとするが、紫のメダルの力に負け、失敗。 発動されたプトティラはヤミーを瞬殺するが、やはり暴走状態で、振り返るや否やバースへ突撃してしまう。
 ここでは後藤さんがカザリを巻き込む頭脳プレイを見せ、プトティラはスタミナ切れで変身解除。
 映司の、白目剥く感じで倒れる演技がなかなか強力です。
 「私とオーズ。どちらが終末を呼び込むのにふさわしい存在なんでしょうねぇ」
 瞳を妖しく輝かせるドクターもまた、この戦いを見つめているのであった……。
 前回を受ける形で、ポンポンと強力ヤミーを送り出せるドクター、物凄く強いけど敵味方の区別が無いプトティラ、 映司を心配する伊達&後藤、紫の力を利用しようと考えるアンク、それらを見つめるドクター&カザリ、と現状を整理。 整理は良いとして、同じパーティみたいな位置で、普通にバースとヤミーの戦いを見物しているカザリの存在はちょっと不自然になりましたが(^^;
 気絶した映司はクスクシエに運び込まれ、知世子から手紙を受け取る。その中には、高校時代の親友・北村雄一、 を名乗る男から送られた、レジャーランドのチケットが収められていた。
 「お友達?」
 「北村……誰だっけ?」
 素っぽいのですが、映司!!!(笑)
 よくわからないまま、つるんで遊びに行く5名(映司・アンク・比奈・伊達・後藤)。伊達さんはともかく、後藤さんは現在、 里中の部下ではなかったのか。
 レジャーランドで待ち受けていたのは、怪しいセミナーの勧誘……ではなく、背広姿の青年・北村。自称映司の親友である北村は、 高校時代は引きこもりで、面倒見のいい映司によくプリントを届けてもらっていた関係であり、映司はほぼ記憶に無かったが、一方的に、 深い感謝の念を抱いていたのであった。
 今や急成長中のベンチャー企業の社長であり、このレジャーランドのオーナーでもある北村のはからいで早速遊びに繰り出す5人だが、 その途中、比奈が姿を消してしまう。比奈を探して散る男達を何故か双眼鏡で見つめる北村。
 「映司……これは君への復讐なんだ。もう君達は、ここから出る事は出来ないのさ……」
 ……なんて事はなかったが、アンクを追ってかレジャーランドに姿を見せた子アンクにメダルを投入され、ヤミーを生み出してしまう北村。 カザリに何やら吹き込まれた北村は映司に接触し、映司の手をぎゅっと握りしめると、激しくチャージされていくヤミーの欲望ゲージ。
 えーーーーーーーーーーーーーーー。
 成長したシロフクロウヤミーに拘束された伊達はベルトを残して連れ去られてしまい、一方、 比奈を探そうと映司を連れ回す北村は、熱心なアタックを仕掛けていた。
 「なあ映司、うちの会社来ないか? 世界の子供達を救う事業を立ち上げたいって、ほら、高校時代からそれが夢だって言ってただろ」
 あのクジャク頭とか遊園地にネクタイとか無精髭のおっさんとか、 友達というには取り合わせが謎な上に若い女の子が1人だけ混じっているのが異常に不自然だけど何してんだよ映司?!  コスプレサークルのオフ会なのかよ!? 姫かよ?! むしろ僕が姫だろ?! と熱弁をふるう北村。(※若干の誇張表現を含みます)
 「映司がより映司らしく居られるために、全力を尽くしたいだけだ!」
 「どうしてそこまで」
 「利害関係とか無しに、なんでも出来るのが本当の親友だろ?」
 興奮状態の巧みな演技なのか、単純に滑舌が悪いのか判断つかないのですが、 まくし立てる際の早口で微妙にろれつが回り切っていないのが、絶妙に気持ち悪い。
 タカ缶に呼ばれた映司は一旦北村と別れ、アンク達と合流。ヤミーが出現し、伊達がさらわれてしまった事を知る。
 「それでも比奈ちゃんを助けるのが先だ!」
 映司とアンクはまたも人命か赤いコアメダルかで仲違い。比奈ちゃん最優先は心理としては当然なのですが、 赤いコアメダルの方に居る筈の伊達さんが、どの天秤にも乗っていなくて酷い(笑)
 確かに伊達さん人質にされても、複数の意味でモチベーション上がらないけどさ……!(何より勝手に帰ってきそう)
 「映司の前から、消えてくれないか。おまえに映司の何がわかる。おまえに映司を支える事ができるのか」
 北村に挑発されたアンクはまんまとブービートラップで吊り上げられる羽目に。
 「おい、何の真似だ?!」
 「おまえ邪魔なんだよ」
 ひたすら気持ち悪いよ……。
 アンクを行動不能にした北村は素知らぬ顔で映司と後藤に情報を伝えて比奈を発見するが、そこへシロフクロウヤミーが姿を現し、 大ピンチになる2人。
 「じゃあ後藤さんがバースに!」
 「俺がバースに…………いや、今の俺じゃ無理だ!」
 結局、後藤はプテラノ缶で時間稼ぎするもヤミーの拘束攻撃を受けてしまい、あれだけ煽っておいて、 予告から罠か! むしろもう、映司がバースで良かったのでは!
 プトティラ発動寸前、ネットを破って脱出してきたアンクが横からメダルを投げ、久々のサゴーゾ変身。 サゴーゾの攻撃を受けたフクロウは後藤を拾って逃走するのであった……。
 モノトーンのカラーリングと、シルエットは結構好きなのですが、パワー系な為か出番少ないなぁサゴーゾ(^^;

◆第34話「親友と利用とその関係」◆ (監督:石田秀範 脚本:毛利亘宏)
 北村の欲望は「映司に頼られたい」であり、比奈をさらってその捜索に協力する事で映司といちゃいちゃしたかったのだと白状。 宙づりにされた復讐に燃えるアンクは未だかつてない邪悪な笑いで映司にそれを暴露するが、映司は北村をかばい、 自分と北村で仕掛けた悪戯なのだと比奈に謝罪。北村の記憶を頼りに向かった植物園で伊達と後藤を発見する映司達だが、 北村の欲望を察知したシロフクロウヤミーにより、今度はアンクがさらわれてしまう……。
 すがる北村を振り払い、アンクを探す映司はバッタ缶を発見してその背後に滝の音を聞き取る。そこに車で北村が現れ、 滝へ向けて案内する道中、高校時代、映司が繰り返しやってくるのが実は嫌でたまらなかった、と告げる。一方の映司も、 あの頃の自分は思春期の万能感ともいえる傲岸さで、北村を一方的に助けようとしていたのだと告白。
 「……俺、おまえに謝らなきゃいけない」
 「え?」
 「昔の俺、自分の力で世界が変えられると思ってた。みんなを助けて幸せに出来るって。でも……出来なかった」
 ここで2人の抱えていた屈託が明かされたのは良かったのですが、ここに来るまでに、 出没を繰り返して状況を引っかき回すとにかく気持ち悪い北村を中心に、色々とややこしくし過ぎた感じはあります。
 「なんであの男を助ける。利用されてんじゃないのか?」
 「誰かを助ける力が欲しいから、絶対に失いたくない。利用しているのは俺の方なんだ!」
 善も悪も同じ欲望のメダルの裏表、というのは今作の根幹にあるテーゼですが、主人公に「利用している」と言わせる事で、 それを補強。同時に映司は、“互いに利用し合っている”からこそ、アンクを信用できる――前編で北村が口にした 「利害関係とか無しに、なんでも出来るのが本当の親友だろ?」ではなく、互いが互いの目的の為にイーブンな関係である事が、 映司が求める“力”にとっては必要である、という事が示されているといえます。
 何故なら、それなら、自分の手が届く範囲だから。
 映司はアンクと互いに利用し合う関係で居る限り、オーズの力を心おきなく振るう事が出来る。
 それが、アンクの我が儘に振り回されたり、アイス代を払わされたり、囮で海に放り込まれても、 受け入れる事が出来る理由…………ってこれ、凄くマゾヒズムな気がしてきました(^^;
 映司が序盤であっさり鴻上との取引に応じたのも、自分がオーズとして戦う事と鴻上ファウンデーションの助力を、 力関係において妥当であるとみなしたのだと思えば、とても納得がいきます。
 ……明かされた映司の過去を考えるとこれも頷けるのですが、凄く、荒んでいるなぁ。
 山中では子アンクが手乗りアンクを吸収合併しようとしていたが、ギリギリで駆けつける映司。
 「出てきてくれ……俺に力を貸してくれ! ――変身!!」
 映司は自らの意志でプトティラを発動し、カザリ・子アンク・シロフクロウヤミーを相手に大立ち回り。 アンクファイヤーキックを背後から受けて倒れるが、カザリの「やったか?!」から、スモークを背後に斧を握って立ち上がる姿が、 ある日山でレッドマンに出会ったばりのホラーで、カザリとアンクは撤退。
 残ったシロフクロウは必殺ダイノガッツ砲の藻屑となり、その勢いで北村を消し飛ばそうとするプトティラの注意を引きつけるアンク。
 「映司!! 俺はおまえがどうなろうと構わない……だがな! 俺は何があっても完全に復活を遂げる。その為に、 おまえの力が必要だ! だから、だから手伝え!」
 アンクは決死のダイブでプトティラの懐に飛び込むと、外部から変身を強制解除。
 「……おまえなら、絶対……止められると思った……」
 気を失った映司は崩れ落ち、膝抱きのサービスシーンで戦いはひとまず終わるのだった……。
 終わってみれば映司とアンクの関係を中心としたエピソードでしたが、もう一つの大きなポイントが 「出てきてくれ……俺に力を貸してくれ!」という映司のプトティラ変身。
 これは、今回と同じ毛利脚本回である第21話の
 「やっと、正義の力を手に入れたんだ。俺は、こいつの力を借りる」
 を意識して繋げたのだと思われるのですが、続く第22話で映司自身が口にした「自分が出来る事以上の事は、 出来ませんしね」という指針に抵触しているといえます。つまり、紫のコアメダルの「力を借りる」という事は、 「こんぐらい」の範囲を超えた「身の丈以上の力」であり、『オーズ』のタブーを、映司自身が踏み越えている。
 いっけん主人公の覚醒強化を描いたように見せながら、実は特大の毒針を仕込んだのは意図的なものだと思うので、 今後この毒がどんな風に回るのか、ドキドキします。
 エピソードとしては、上述もしましたが、後編後半に出てくるテーゼやテーマの見せ方は面白かったのですが、 前編含めてそこに至るまでに蛇行しすぎた印象。もう少し、全体的にスッキリした構成で良かったような。
 あ、結局バースに変身できなかった後藤さんは、代わりにスーパー後藤ターザンキックを決めました。 植物園の窓ガラスを突き破るシロフクロウヤミーの吹っ飛び方が尋常ではなかったのですが、伊達さんに認められて、 そんなにテンションゲージが上がってしまったのか。誰かに期待されるって、大事……!

◆第35話「夢と兄とバースの秘密」◆ (監督:田崎竜太 脚本:毛利亘宏)
 配信ペースが急に週3本に変わったのに気付かず見損ねてしまった為、公式サイトを覗いてストーリーを補完。
 前回の、色々な出来事!
 一つ、服飾学校のコンクールに優勝した比奈は、世界的デザイナー(影丸茂樹!)にスカウトされる!
 二つ、そんな比奈に「おめでとう」と告げるなど、前回吸収合併されそうになった後遺症か、様子のおかしいアンク!
 三つ、カザリと子アンクに襲われたウヴァは赤いコアメダルを奪われてしまう!(涙)
 四つ、ドクターにより人の夢を無にするユニコーンヤミーが生み出される!
 五つ、伊達明の脳には弾丸が入っている事が判明する!
 六つ、兄の事を心配して留学の話を受けるべきか悩む比奈は、ユニコーンヤミーに夢を吸い取られてしまう!
 七つ、ウヴァがカザリと戦い、カザリの持っていたガメルとメズールのコアメダルを奪い取る!
 八つ、どさくさに紛れてそのコアメダルをかっさらうアンクだが、体を離れた隙に、何故か泉刑事が意識を取り戻す!
 …………って、伊達さんの行動・言動がやたらめったら格好いいのって、常に死の淵で脳汁とアドレナリンが出まくりで、 最初から最後までクライマックスだったからなのか!

◆第36話「壊れた夢と身体とグリード復活」◆ (監督:田崎竜太 脚本:毛利亘宏)
 泉刑事は己を取り戻すも気を失い、伊達はウヴァを追い払うも倒れ、そしてアンクは宙ぶらりん。一行は里中の車で病院へ急ぎ、 泉刑事は意識不明ながらも、アンクがついていなくても大丈夫に。ところが、ユニコーンに夢を吸い取られてしまった比奈は、 「学校なら、もう辞めます」と映司に告げるのであった……。
 ここで、意識が無い筈の泉刑事が
 「夢だったじゃないか、比奈……」
 と呟くのは、良いシーン。
 結局この後、泉刑事はアンクに再憑依されてしまうので、あまりに短い復活にして見せ場ここだけでしたが!(笑)
 その頃、ウヴァはカザリから奪ったコアメダルと、内職で貯め込んだセルメダルを用いてメズールとガメルを復活させようとしていた。
 「復活して、俺より強くなられても困るからな……これくらい、抜いておくか」
 いちいち小物です。
 「メズール、そしてガメル……復活の時が来た!」
 ウヴァの小細工により、メズールは3枚、ガメルは4枚のコアメダルで、約20話ぶりの復活。OPにはずっと居ましたが、 長いインターバルでした(^^;
 翌日、再びユニコーンが行動を開始し、映司は一晩雨に打たれながら野宿していたアンクと合流。この後のシーンを見ても、 紫のメダルの影響なのか、どうやら映司はヤミーの気配を感知できる体質になっている模様。
 映司はシャクジャーターに変身し……凄い色彩(笑) 前々回、何故かサウバを凄く嫌がっていた映司ですが、 凹凸の少ないシャチヘッドと、肩が張り出したクジャクボディがミスマッチで、デザイン的には今回の方が酷いと思うんですが(^^;  見た目はともかくシャチヘッドのソナー機能を発揮してクジャクファイヤーをぶつけるオーズだが、ユニコーンは逃亡。
 「夢が無くなったら、人間はどうなるんだろう……?」
 被害者のその後を心配する映司は、泉刑事を見舞った病院で、夢を破壊された人間が昏睡状態になる事を知り比奈の家に急ぐが、 そこでは比奈が大量の服を切り刻んでいた。
 「どうしよう? 映司くん……大好きだったものが、大好きじゃなくなっちゃった。私、何したらいいんだろう……。ねぇ?  何していいか、わかんないよ……」
 比奈も意識不明になってしまう一方、野生のアンクは、メズールとガメルにGETされていた。 コアメダルを奪われそうになったアンクはなんとか逃亡し、再び泉刑事に憑依。
 身体がないと、iPad使う時に不便だから仕方ない!
 またもユニコーンが出現し、映司が夢を具現化されるが、出現したのは、凄まじく巨大な地球。 その巨大すぎる夢に後ずさるユニコーンは思わず具現化を無効にし、その隙に映司はタトバ変身。
 ここで、映司を夢を失ったわけではなく、奥底に隠し秘めているというのが明らかになりましたが、ヤミーが怯えるほどの巨大な夢、 というのがなかなか怖い。
 バースも合流してユニコーンを追い詰めるが、そこにウヴァ組が乱入。映司は自らの意志でプトティラに変身すると戦況をひっくり返し、 ユニコーンを消し飛ばすとウヴァ組は逃亡。映司はなんとか理性を保ったままで変身を解除するのであった……。
 一方、逃げた3グリードの前にはカザリとアンクが姿を見せて襲いかかる。
 「待ってカザリ、アンクとあなたに付くから、ウヴァを倒して、コアメダルを分けない?」
 はいメズールさん、早かった!
 「メズール、そう言ってくれるのを待ってたよ」
 「カザリが俺達を裏切った事を忘れたか」
 「あら? あなただってそうじゃない」
 哀れウヴァは4属性攻撃を受け、こつこつ貯めていた老後の資金を先物取引で溶かした感じで吹っ飛ぶ羽目に(笑)  ウヴァ、出番が飛び飛びすぎてもう一つ存在感に欠けますが、ジェットコースター系悪役としては、 なかなか良い感じになって参りましたので、捲土重来と更なる転落を等分に期待したい。
 病院では比奈が目を覚まし……
 「夢の中に……お兄ちゃんが出てきた。……叱られた」
 「比奈ちゃん……どうする? アンクに、出てってもらう?」
 映司、割とざっくり(笑)
 まあ映司の場合、アンクが手だけでも「別にいーじゃん、あの屋根裏部屋で。ほら、小屋作ってやるから! その代わり、 アイスは一日1本な!」で済ませそうですが。
 「…………もう少し……お兄ちゃんと、一緒に居て」
 比奈はアンクの憑依を許し、3人(4人)の関係は、もうしばらく継続する事に……比奈ちゃんのヒロインレース逆襲編かと思ったら、 前編見逃した為に、後編はほぼ寝ていただけで終わった……!
 そしてまんまとウヴァを転がしたカザリの思惑通り、ドクター屋敷に戦力を増して集うグリード達……だが、
 (このままじゃすまさねぇ)
 どっこい生きてたクワガタメダルがしぶとく転がっていた事を、カザリ等はまだ知らない。果たしてメダルの器は誰になるのか、 ドクターの求める終末の行方は……次回、世の中、お金が大事。

→〔その7へ続く〕

(2016年10月19日)
(2017年4月24日 改訂)
戻る