■『仮面ライダーオーズ』感想まとめ1■
“大丈夫。 明日はいつだって白紙
自分の価値は自分で 決めるものさ”
ブログ「ものかきの繰り言」の方に連載していた『仮面ライダーオーズ』感想の、
まとめ1(第1話〜第6話)です。文体の統一や、誤字脱字の修正など、若干の改稿をしています。
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〔まとめ2〕 ・ 〔まとめ3〕 ・
〔まとめ4〕 ・ 〔まとめ5〕
〔まとめ6〕 ・ 〔まとめ7〕 ・
〔まとめ8〕
- ◆第1話「メダルとパンツと謎の腕」◆ (監督:田崎竜太 脚本:小林靖子)
-
美術品強盗を目論む2人組の男達が倉庫を物色していると、
それに反応するかのように物陰で動いた“メダルで出来た右手”が古ぼけた棺の蓋を開き、中からメダルの怪物達が出現する――。
それを待ち構えていたかのように出撃した謎のバイク部隊は、思いっきり美術館を爆破(笑)
だが4体の怪物達は全くの無傷で外へと歩みだし、それを阻もうとするバイク部隊は次々と蹴散らされてしまう……。
どこかビルの一室で蓄音機にかけられたレコードをBGMに、それに合わせてど派手な赤いスーツの中年男が高らかに「HappyBirthday」を歌い、
メダルの怪物――グリード――とバイク部隊の戦闘は全くSE無しで描かれるという、大胆な演出。
中年が奥でケーキを作っている間に、画面手前に置かれたノートパソコンの画面上で、バイク部隊のアイコンが次々と通信途絶していく、
という表現は凝っていると同時に、物語の焦点はそこに存在しない事を示しているようで面白い。
そして薬を盛られて眠りこけていたバイト警備員の青年は目を覚ますと、
足下に転がっていた赤いメダルをバイト代と勘違いしてポケットに収め、いきなりのパンツ一丁を披露した所で美術館の崩壊に気付き、
物語の蓋が開いた所で、OPに。
「大丈夫かなぁ……」
「付き合い長いの?」
「今朝からです」
救急車に運ばれていく警備員仲間(実は強盗目的だった2人組)を本気で心配してのこの一言が、青年の人の好さと、
表裏一体の配線のズレ具合を極めて短い言葉とやり取りで示していて、秀逸。
小林靖子は、計算して狂気を描くタイプだなぁと。
青年の名は、火野映司、住所不定無職。
その持ち物、替えのパンツと小銭だけ。青年は、着の身着のまま気の向くままに放浪の旅を続ける、パンツの大将だったのです。
「行けますって、ちょっとのお金と、明日のパンツさえあれば」
日本に居ない事もある、と言う割にパスポートを所持していない事にちょっぴり不安が漂いますが、大丈夫、
パンツは国境を越える無限へのパスポート。
警察から解放された映司は、赤いメダルを自動販売機の下に落とした事で、自販機を持ち上げる怪力美少女と、
メダルを自分の物にしようとする“宙に浮かぶ右手”と遭遇。「返せ。俺の体だ」とメダルを求める、謎の手から逃げる事に。
その頃、宝石店に出現した緑グリードが、客の後頭部に銀のメダルを投入するとミイラのような怪物が出現。
「これはおまえの欲望が生んだ、おまえの姿そのもの」
店の宝石を食らったミイラ怪物はカマキリの怪人に変身すると、「コアメダル」なる物を求めて動き出し、遊園地で映司&右手と遭遇。
しばらく、カマキリ怪人と戦う右手という面白映像が続き、思わず割って入った映司はカマキリに投げ飛ばされ、
そこにやってきた刑事コンビもあっさり叩きのめされてしまう。
カマキリの一方的な暴虐を見るに見かねた映司は、気絶した刑事の銃を手に取り、カマキリを後ろから銃撃。
「なんだか知らねぇけどもうやめろって!」
両手でしっかりと拳銃を保持し、目の高さで構えて射撃しており、とても素人と思えないのですが、何者なのだパンツの大将。
銃は必ず両手で撃て――右手で突き出し、左手で引きつけろ。そうすれば銃身はぶれない。目は絶対に閉じるな、両方開けていろ。
そして、銃爪は必ず二度引け――!
「邪魔するな。おまえに関係ない」
「ある! あるよ。刑事さんも、そいつも、朝からの長い付き合いだから」
“朝からの付き合い”を「長い」と表現するのは、人と人の出会いを大事にしているというよりも逆に、
人間関係の捉え方が刹那的すぎるのではないかという恐怖が背筋を走り抜けますが、
これを利用しようとする右手。
「あいつ……ただの馬鹿だ。使える。いや、今はこの手しかない!」
銃弾の通じないカマキリにまたも投げ飛ばされた映司を、壁に叩きつけられる直前に助けた右手はアンクと名乗り、
この場を切り抜ける為の手段を持ちかけて体内から変な石(棺の蓋の留め具?)を取り出すと、それは映司の腰でベルトに変形。
「早くやれ、映司。変身しろ」
「よせ!」
妙にカマキリの腰が引けていて面白い(笑)
「あちこち行ったけど、楽して助かる命が無いのは、どこも一緒だな!」
アンクに指示されて3色のメダルをベルトの穴にはめた映司が手にした輪っかでそれをなぞると、響き渡る串田アキラボイス。
『タカ! トラ! バッタ! タ・ト・バ・タトバ・タトバ!!』
すると映司は、赤・黄・緑の派手な配色の、異形の姿へと変貌する。
「なんだ? 今の歌? タカ・トラ・バッタって、これが?!」
「歌は気にするな。それはオーズ。どれだけのものかは、戦ってみればわかる」
串田ボイスは視聴者にだけ聞こえるメタSEではなくて、劇中世界で実際に流れているという設定にちょっとビックリ(笑) いや、
よく考えるとライダーの音声ギミックは大体そういう設定な気はしますが、あまりにも高いネタ度がそのまま世界に飲み込まれていて動揺しました(笑)
この変身ギミックは知っていましたが、メダルを輪っかでなぞる際の鈴の鳴るような音が非常に格好良く、
成る程これは使ってみたくなる変身アイテムだなぁ、と当時のメダル馬鹿売れに今更ながら納得。
映司の変身した異形の存在――オーズはカマキリを圧倒し、攻撃を浴びせる度にカマキリから飛び出す銀色のメダル。
真ん中のメダルを交換してタカマキリバッタとなったオーズは、カマキリ怪人をカマキリブレードで一刀両断し、
怪人は大量のメダルとなって消滅するのであった。
ところが一難去ってまた一難、アンクが倒れっぱなしだった泉刑事の体に勝手にインヴェードしてしまい、
眠そうな顔だった刑事はエキセントリックな髪型に変貌。その光景を見つめるバイクの男、刑事の携帯電話を鳴らす怪力美少女、
そして新たなバースデーケーキを作る赤スーツ……。
「Happy Birthday to you,Happy Birthday to you,Happy Birthday Dare……――オーズ」
重なる歯車が回り始めた所で、つづく。
オーズそのもののデザインやギミックを知っていたというのはありますが、第1話としては割と地味な印象。謎の人物(存在)の多さや、
メダルと怪人の関係性など、ストレートにわかりにくい要素が多いのも輪を掛けているように思えます。
それは監督の方も意識があったのか、各グリードのイメージカラーの布が垂れ下がってくるシーンなどは、割と大胆に幻想的な演出。
異形の存在が印象深くなりました。
色々な撮影技法をミックスしているのでしょうが、アンクの映像にほとんど違和感が無いのは凄い。
- ◆第2話「欲望とアイスとプレゼント」◆ (監督:田崎竜太 脚本:小林靖子)
-
OP、「Come on!」に合わせて地面から大量のメダルが噴き出してくる場面が格好いい。
「この体は俺が貰った。あの格好じゃ不便だからな」
アンクは瀕死の泉刑事の肉体を奪うが、大量の銀色メダルは飛来した缶ホークに回収されてしまい、ホークは鴻上コーポレーションへ。
そこでは赤いスーツの男――鴻上コーポレションの会長が、メダルを集めていた。
「やはり私のライフワークの為には必要なのかもしれないね、グリードも……オーズも」
グリード、それは、800年ほど前に作られたコアメダルを元に生まれ、長い間封印されていた存在。色つきのメダルをコアメダル、
銀色のメダルをセルメダルといい、コアにセルがくっついているのがグリード、セルだけの存在がメダルの怪人ヤミー、
と説明されるのですが、正直、流れで聞いているだけではピンと来ませんでした(^^;
グリード達は封印されている間にどこかへ行ってしまったコアメダルを求めて動き出し、
アンクを泉刑事から引きはがそうとする映司だが、「俺が離れたら、10分も持たないぞ、そいつの命」という事情で、
やむなく行動を共にする事に。
似たような状況だった小太りの相棒刑事の方は大丈夫なのか不安になりますが……一歩間違えると、アンクはあちらに入っていたのか。
そこへ、映司が持ち逃げしてしまった泉刑事の携帯電話に届く、妹・比奈(怪力美少女)からのメール。
「ちなみに今度のバイトはパワー系じゃないです!」
という文面なのですが、先月まで、一人で石材を運んだりしていたのでしょうか。
ところが、世界の可愛い衣装を着られる筈の面接先のレストランは、何故か玄関扉を重量物で閉じ、
それを打ち破るパワーを待ち望んでいた。
「合格! 待ってたのよー、あなたみたいなパワー系☆」
素っ頓狂なコスプレ店長により、海賊の衣装を着せられる妹。
「うち、リアル志向だから、ただ可愛いだけじゃ使えないのよ」
店長さん(女性)の、「可愛いだけじゃ使えない」の言い回しが凄く、
「可愛いだけで世の中渡れると思っている女とか海に埋めたい」みたいな勢いで怖いんですが(笑)
前作(『W』)のレギュラー女性キャラが〔マスコット・セクシー人妻・小悪魔〕という陣容だったからか、
今作ヒロイン(?)はアビリティこそ《怪力》なものの、見た目は細身の正統派美少女。筋肉がついている感じがしないので、恐らく、
物体の重心を無意識に見抜く達人クラスです。
その頃、前回の美術品強盗から誕生したヤミーが、現金輸送車と銀行を襲撃。
欲望を満たしてセルメダルが貯まる音に気付いたアンクは映司を連れて現場に向かうが、メダルを大量ゲットする為に映司の変身を止める。
「セルもコアも、メダルの元は、人間の欲望」
「欲望! 純粋で素晴らしいエネルギー! ケーキも、テーブルも、家もビルも、街も国も、全て人の、欲しいっという想いから出来た、
欲望の塊!」
所変わって、生クリームを振り回しながら演説を行う鴻上会長。
「赤ん坊は生まれた時に、欲しい!といって泣く。生きるとは、欲する事なんだ。その最大にして最強の力から生まれたメダルを、
最大限に集めた時! 手に入るものは、無限大ぃ……よりも……更に大きい……オーーーーーーーーズ!!」
無限大のマークの横に○をもう一つ足して、○○○というタイトルのなぞらえ。
正直な所、役者として宇梶剛士はあまり好きではなかったのですが、ハッタリの効いた好演で、
うまく物語のテンションにアクセントをつけてくれました。4グリードと鴻上会長周りは、舞台演劇ぽい演出。
ヤミーから巨大なシロアリのような虫が生まれて高層ビルを襲うが、あくまでメダル集めの為にそれを放置するアンク。
「確か、楽して助かる命は無いって言ったな。タダで助かる命もないんだよ。俺の言う通りに動け」
主導権を握って映司を巧く手駒にしようとするアンクだが、その時、泉刑事の電話が鳴り、そのベルに映司はかつての出来事を重ねる。
「泣いてる……」
「なに?」
「泣いてるんだ」
爆発する廃墟の中で泣く少女と、それに向けて伸ばされる手、というイメージ映像が入り、現実の紛争地帯を思わせる映像は、
ヒーロー物としてはかなり踏み込んだ要素を入れてきました。
ビルへ向けて走り出した映司は、逃げ遅れた人を助けるも自分が落下しそうになるが、それを追いかけてくるアンクの手。
「さっさと変身しろ」
「その前に約束しろ。俺が変身したい時は、絶対変身させる。人の命より、メダルを優先させるな。でなきゃ、二度と変身しない」
文字通りの命がけの説得にアンクもしぶしぶ折れ、結局落下しながらもオーズは変身。
そこへやってきたバイクの男から「ある方からの誕生日プレゼントだ」と剣とセルメダルのセットを受け取ると、
自販機バイクの使用法を教わる。
自販機バイク&サポートメカは、日常にありふれた物がヒーローの秘密装備になるとワクワクする!
という発想は理解できるのですが、実際に映像にしてみたら思ったより間抜けになった、という印象(笑)
タコ缶が橋を作り、バイクで屋上へ向かったオーズは、平成ライダーでままある、
とりあえず第2話で巨大な敵を倒すミッションをこなし、降り注ぐメダルを一生懸命拾っているアンクの姿には、
餅まきを思い出して何故か涙がこぼれそうになります。
映司は比奈からのメールに、お兄さんは極秘任務に旅立った、と適当な返事を打って誤魔化すが、実に運悪く、
アンクと比奈がばったり出会ってしまう。このままでは通報待ったなし、果たして映司は明日のパンツを履く事が出来るのか?!
……感想でこんなにパンツと沢山書いたのは初めてで、パンツがゲシュタルト崩壊しそうです。
パイロット版の感想を一言でまとめると、“重い”。
人外バディであるアンクの人間とは違う倫理観などを押し出さなければならない、
その為には不可分であるメダル関係の設定もある程度まで説明しなくてはならない、
現代におけるそれらの背景として鴻上関係も描かなければならない、おまけに怪人とその発生プロセスも少々ややこしい、
とあらゆる歯車が大きすぎて、回り出したものの重々しくゆったりとしたスタート。
その為、新しい物語が始まった! というワクワク感よりも、一つ一つの歯車にまつわる情報量の重さが目についてしまい、
個人的にはこの出だしの流れに乗りきれませんでした。この重さが吉と出るのか凶と出るのかはわかりませんが、
面白くなってくれるといいなぁ。
- ◆第3話「ネコと進化と食いしん坊」◆ (監督:柴崎貴行 脚本:小林靖子)
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泉刑事の記憶を探り、突然抱きついてきた少女がその妹・比奈だと知ったアンクは、面倒くさいので首を絞めて殺してしまおうとするが、
達人に普通に投げ飛ばされる(笑)
その拍子にアンクの腕がすぽっと抜け(手袋……?)、宙に浮いて喋る腕を見た比奈は気絶をし、なんだかんだ、
すっかり普通に腕と喋っている映司のちょっと配線ズレた感じを更に補強します。
「消しといた方が面倒がない」と比奈を殺害しようとするアンクに対して、
ベルトを海に捨ててやると脅した映司は何とかアンクを思いとどまらせ、比奈をバイト先の多国籍料理店クスクシエへと運び込む。
今回は基本的に、人間の命に頓着せず映司をメダル集めの道具にしようとするアンクと、やや度の過ぎたお人好し感のある映司の、
ヤミー退治を巡る押し引きを中心に展開。
何かと「いい加減どっちが命令する立場か覚えろ!」と凄むアンクですが、そこまで有利な立場とも思えず、
お互い全力で押し合った末に、迫り来る映司の顔面の迫力に負けてアンクがちょっと引くみたいな事になっていますが(笑) 故に、
駆け引きというより、押し引き。
グリード達はセルメダルの補充に動き出し、食いしん坊の男が黄色グリードにコインを入れられると、ヤミーが出てくるのではなく、
自らヤミー化して食欲が暴走。外見は人間の姿のまま怪力を得ると、そこら中で食べ物を求めて食い荒らす(今回次回と、
この男の食事シーンの映像が汚いのが難)。
「中に居るんだよ。あれは人間に寄生するタイプだ」
映司はオーズに変身するが外に出てこないヤミーに困り、メダル集めを優先しようとするアンクが邪魔に入って居る内に姿を消してしまうが、
そこにバイクの人が現れ、タカ缶でヤミーを追跡できるとヘルプ。
「お前達が寝ていたのは800年。その間に、たかが人間も進化したという事だ。お前達グリードに対抗できる程度にはな」
バイクの人の言葉に、泉刑事の脳を探ったアンクは現代文明の情報を得る為に、泉刑事の家に向かうとパソコンを使用。そして、
泉刑事が比奈に秘密で購入して隠していたiPhone4を入手する。
……こっそり買って棚に隠していた、てiPhoneの意味無いよお兄さん……!
我慢できずに買ってしまったけど、ボーナスのタイミングまで隠しておくつもりだったのだろうか……。
クスクシエに乱入して食料品を悔い漁る食いしん坊をタカ缶が発見し、外へと誘き出す映司だが、
アンクはあくまでメダルの為にヤミーを育てようとする。
「映司、やめとけ、おまえの方が先に死ぬぞ!」
「それでも……それでも、何も出来ないよりは……!」
このままでは食べ過ぎで男の体が保たない、と何度振り払われながらも映司は懸命に男に組み付き、
面倒くさくなってきたのか遂に出現するデブネコヤミー。アンクは仕方ないのでメダルを投げて映司は変身するが、
デブネコの柔軟ボディには剣もトラクローも通用しない。
戦闘中、いつの間にやら高い所からアンクが見下ろしている、というのは素敵。腕力やジャンプ力など、
そこかしこでアンクが人間の肉体能力を引き上げている描写が入ります。
オーズはようやくバッタキックが通用する事を発見し、有効打の度にセルメダルが飛び散る、というダメージ表現は前回に続いて面白い。
バッタエネルギーが溜まって足先がバネ状に変形し、スキャニングチャージでスプリングバッタキックを放つオーズだったが、
飛んできた石柱に邪魔され、ネコを倒し切る事に失敗。そしてそこに、石柱によって妨害を仕掛けた黄色グリードが姿を見せる……。
「久しぶりだね、アンク」
パイロット版に続き、人外の相棒とヒーローの倫理観の摺り合わせを中心に展開。
目的の違いから怪人退治がすんなり行かないというのが独自のアクセントなのですが、同時に物語のペースを落としており、
その合間合間に鴻上サイドやグリードサイドの事情を挟み込んでくるという見せ方は、やはりちょっと進行が重く感じてしまいます。
- ◆第4話「疑いと写メと救いの手」◆ (監督:柴崎貴行 脚本:小林靖子)
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「オーズなんか捨てて、グリード同士、僕と組まない?」
黄色グリード――カザリはアンクに共闘を持ちかけ、その間にネコは再び食いしん坊に寄生して逃走。
進行の重さがちょっと気になる今作ですが、アンクがオーズ/映司にこだわる必要はあるのか、
という点を早めに突いてきたこの展開は面白い。
人間は面倒くさいがグリードは信用できない、とアンクは解答を保留し、その力を見せつけたカザリは姿を消す。
カザリはコアメダルがトラで風属性ぽく、青は見るからに魚類(2016年現在見ると『動物戦隊ジュウオウジャー』
のセラの同族に見えますが、むしろセラはホント悪の怪人ぽいデザインだよなぁと改めて)、黒は前回ゾウみたいに鼻を伸ばしており、
緑がオーズのメダルから昆虫系だとすると、オーズの能力と繋げつつ、グリードとヤミーの属性・種別をかなりわかりやすく色で分類している模様。
私は割と、ギミックのこういう“子供っぽさ”って好きなのですが、なんだか『ブレイド』の反省を感じます(笑)
アンクは一度姿を消し、泉刑事の携帯を所持しているのを比奈に見られた映司、大ピンチ(社会的に)。
戦いの負傷から気絶してしまった映司は比奈にクスクシエに運び込まれ、 素直に吐かないと指を一本ずつ握りつぶすと脅され
応急処置を受けてこれまでの経緯を説明する事に。
「でも、諦めたわけじゃないから。いつかお兄さんを……それまでは絶対に近づいちゃ駄目だよ。ね」
「どうやって信じればいいんですか。あなたの事」
ヒーローの根幹を問う、凄くいい台詞。
「どんなに親切な人だとしても、どうやってそれを」
「……親切じゃないよ、全然。だから、信じろなんて言えないな。誰もを助けられるわけじゃないしね。
ただ……手が届くのに手を伸ばさなかったら、死ぬほど後悔する。それが嫌だから手を伸ばすんだ。それだけ」
それに対し、親切でも、無償の善意でもなく、自分が後悔をしたくないからやっているだけだ、と返す映司。
「どうすれば信じられるのか?」という問いに、「俺を信じろ」と言わない(言えない)映司は、
英雄的正義を無意識の前提にするのではなく、個人的正義の背景を構築する事に重きをなす《平成ライダー》のヒーロー像においてもより人間的といえますが、
同時に、自分の行為が誰かの信頼に応えられるかさえわからないエゴに過ぎない、と言いながら、そのエゴの為に命を懸けられる姿には、
どこか人生を達観したような、自分の命に対する感覚の軽さが見えるような気もします。
主人公にしては謎が多い映司ですが、人生を楽しんで生きているのだろうか? と少々不安になってきました。
どうにも映司の「朝からの長い付き合い」には、“心優しく他者への思いやりが強い”のではなく、
“人間、5分後には五体満足かどうかわかりはしない”といった死生観を感じて仕方がありません。
クスクシエ店長から、食いしん坊男が近所に現れた事を聞いた映司は現場に向かい、アンクと再会。
「答は出たのか映司。俺はこれを、すっかりマスターした」
iPhone4を構えるアンク、ちょっと自慢げ(笑)
「答は同じだ。俺はおまえの道具にはならない」
きっぱりとした否定を聞き、カザリが姿を現すが、アンクは映司に迫るカザリを不意打ち。
「馬鹿でも面倒でも、人間の方がまだましだな」
アンクはインターネットの情報サイトで、自分を監視するカザリの姿を確認していたのだ、と前回触れた人類の進化と絡める形で、
グリードの猜疑心をクローズアップ。
そして、映司が後悔よりも行動を選択したように、アンクもグリード(欲望)ではなく人間(馬鹿)を選択する。
映司はオーズに変身し、カザリと激突。戦闘中の交錯でカマキリメダルを奪われてしまうも、
クロスカウンターでカザリのコアメダルを3つ奪い取り、弱体化したカザリは逃走。
グリードはどうやらコアメダルの数によって外観が変化するようで、装甲がより薄くなるという描写は面白い。
第1話の《射撃》に続いて、《スティールアタック》を披露した映司は、土壇場の度胸の良さ・紛争地帯?に居た経験あり・
素人とは思えない射撃姿勢・高度なスリ技術・パンツがあれば大丈夫なサバイバル能力……今のところわかっている情報を総合すると、
その正体は、戦場に疲れた元工作員なのか。
カザリを撃退するオーズだったが、食いしん坊を飲み込むような形で、デブネコヤミーが再登場。
「欲望に飲み込まれたってとこだ。あの醜さが人間の本性だよ。あんなのに助ける価値があると思うのか」
「……人の価値は、俺が決める事じゃない」
「ふん、俺は決めるぞ。価値なしと見たら、すぐにお前を捨てる」
「俺はおまえの隙を見つけて、比奈ちゃんのお兄さんを助ける。――おまえを倒しても」
「やれたら褒めてやる」
映司とアンクの関係は、心を一つに手を取り合うのではなく、お互いの目的の為の共闘、を継続。
アンクが映司にほだされるのではない代わりに、映司もアンクの寝首を掻く宣言をする事で天秤のバランスを取りました。
アンクは台詞だけだと、本当は人間を信頼したいキャラ、みたいになっていますが、さてさて。
オーズは先ほど奪ったカザリのコアメダルでタトチーターを発動すると、
高速移動からストンピング連打を浴びせてセルメダルを掻き分け、内部に埋もれていた食いしん坊を救出。
残ったネコヤミーは次元断で成敗し、セルメダルの雨が降るのであった。
前年『W』の、初期からフォームチェンジのバリエーションを矢継ぎ早に見せていく手法は継承され、
第4話にして3つ目のフォームパターン。代わりにカマキリが奪われてしまいましたが、メダルの出入りとフォームの関係がわかりやすく、
これも『ブレイド』の反省を生かしたか(笑)
またこの構造だと、基本的に増えていく一方のフォームを、ストーリー展開に応じて抑制する事が可能でしょうから、
よく考えられていると思います。
戦い終わり、救急車に運ばれていく食いしん坊を見送る映司とアンク。
「ほら、一度欲望に負けたって、人間はもう一度やり直せる。あんな目に遭ったんだし、今度は大丈夫だよ」
「……あのー、できればー、病院食が美味い所に」
「フフ、そういう事だ。人間は欲望一つコントロール出来ない。俺の言った通りだろ。俺の勝ちだな」
「……別に、勝ち負けとかじゃねーし」
一気に小学生レベルのやり取りになった二人だが、その行く手を黒塗りの高級車が塞ぎ、ディスプレイ越しに姿を見せる紫の薔薇の人、
じゃなかった、鴻上会長。と、メダルを欲するもう一つの勢力がコンタクトしてきた所で、次回へ続く。
歯車の大きさと重さが気になっていた今作ですが、3−4話で、とんとん拍子に各勢力を映司と接触させてくれたのは好印象。
- ◆第5話「追いかけっこと巣とセレブ」◆ (監督:金田治 脚本:小林靖子)
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アンクは鴻上から、色々サポートをしてあげる代わりにセルメダルと交換しようと商談を持ちかけられ、
映司は貰った玩具ではしゃいでいた。一方、人間の姿を手に入れたグリード達は打ち捨てられたバーのような所に集まり、
女子中学生姿になったメズールは、買い物大好き女にセルメダルを投入し、その欲望を餌に“巣”が成長していく……。
グリードが、個人としては強い力を持っているがそれを十全に発揮する為には下準備が面倒くさい為、
寄り集まってはいるが組織だってはいない互助会状態、というのは《平成ライダー》の敵勢力としてはなかなか珍しいでしょうか。
怪人とは別の幹部集団の明示化、というのは敢えて古典的悪の秘密結社像を取り込んできた前年の『W』に続く流れと思われますが、
組織にはなっていない緩い繋がりは、『555』辺りが近いイメージか(鴻上ファウンデーションの存在含む)。この辺り、
『W』が《昭和ライダー》のオマージュなどを積極的に取り込みながら“次の10年”の土台を作ろうとしていたのに対し、
今作は初期《平成ライダー》を再構築しながら同じ事をやろうとしているように見えます。
散歩中のメズールと一当たりした後、アンクの反応から“巣”があるとおぼしきマンションを訪れた映司は、
専門学校のクラスメイトを訪ねてきた比奈と再会するが、メダルを狙うウヴァに襲われ、逃走。
メダルが無いため変身できない映司は新アイテムである緑の缶(……バッタ?)で別行動のアンクと連絡を取り、アンク、
初めての自販機バイク。映司も逃走中にバイクに乗り、今作の特色を巧く織り込みつつ、この辺りで一つ、バイクフィーチャー回。
見た目ごつい自販機バイクは取り回しがもう一つなのか、バイクアクション、という程ではなく。
その頃、クラスメイトであり、メズールにメダルを投入された買い物大好きお金持ちである山野と出会った比奈は冷たい対応を受けていた。
「居るのよね。観光気分でマンション見に来る人。気持ちはわかるけど、ハッキリ言って迷惑だから」
……居る?
そして、気持ちはわかるのか(笑)
性格の悪いお金持ちとして描かれるゲストキャラの山野ですが、携帯電話が鳴って「ごめん、父から」とわざわざ断るし、
案外といい人な気はします。だがその電話は、父の会社の倒産を告げるもので、彼女の運命は大きく変転する……。
ウヴァの雷攻撃に追われていた映司はアンクと合流し、バイクに乗ったままのオーズ変身。
「俺のメダル! 俺のメダルを! 返せ!!」
猛然とオーズに襲いかかるウヴァの迫力に、首をひねるアンク。
「ウヴァの奴、もしかして知らないのか……?」
確認してみる。
「ウヴァ! おまえのメダル1枚は、カザリが持ってたって聞いてるか!」
――知らなかった。
怒りのやり場に悩んでウヴァが棒立ちの間にオーズはタトチーターに変身し、連続蹴りが炸裂。アンクは首尾良く、
ウヴァのコアメダルを更に2枚手に入れ、ニヤリと笑う。
「揃ったなぁ……3枚」
どうするウヴァ、大ピンチ!
……敵幹部(相当)のピンチで次回へ続くって、
凄く斬新かもしれない(笑)
今回からグリードに人間体が登場。カザリは性格の悪そうな20前後の青年、ウヴァはもう少しヤクザの鉄砲玉寄り、
ガメルはつぶらな瞳のタンクトップ、メズールは制服姿の美少女中学生……と、メズールだけ激しく浮いていますが、
深くツッコんではいけない案件の気がするので、スルーです、スルー力を発揮するのです。
ハッキリ言及されないのですが、変身時にセルメダルが周囲に散らばる描写があるので、アンクとは違い、
化けている(肉体を変換している?)という解釈でいいのかなぁ……。カザリが「メズールはお気に入りを探しているのかも」
的な事を言っていますが、コピーのモデルという事か。毎度その辺りに器が倒れていると回収係が必要で面倒くさいですし。
- ◆第6話「お洋服と契約と最強コンボ」◆ (監督:金田治 脚本:小林靖子)
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「俺たちの名はグリード! 欲望だ! 欲しがらなくてどうする!」
ウヴァを嘲弄するアンクの姿に、俺、本当にこいつの相棒でいいのだろうか……みたいな挙動になるオーズ(笑)
逃走したウヴァは拠点でカザリに掴みかかるがいなされ、アンクは映司にメダルを3枚レンタルすると、
映司をヤミー退治に追い払って鴻上の元へ。再びマンションへと向かった映司は、鴻上の配下であるバイクの人――後藤から、
ヤミーの巣が何号室にあるかを教えてもらう。
「こんな化け物がはびこっていいわけがない」
後藤さん、高圧的だけど割と正義の人?
「アンク、だったか。あんなグリード一匹押さえ込めなくて、世界が救えるか」
それはそれとして、特に手伝うわけではなく走り去るのは、交渉中なので上司命令でしょうか。
「世界か……大きく出るなぁ。ま、俺は、目の前の事から」
マンションの中へ入った映司は、比奈と山野が揉めているのを目撃し、札束を叩きつけられる比奈、札束を拾う映司。
「助けられる人に手を伸ばすっていったのに、お金に手を伸ばすんですね」
美少女からの好感度が激しく下がった!
「俺いろんなとこ行ったけど、何も欲しくない人なんか居ないよ」
だが慌てず騒がず、万札のシワを伸ばしながら、山野の欲望を肯定する映司。
「大切なのは、その欲しいっていう気持ちを、どうするか、かも」
怪人であるヤミーが“人間の欲望”から生まれる、というのが基本構造ですが、
パンツと小銭があれば生きていけるスタンスの主人公の口から欲望=悪、ではないと言わせ、
あくまでそれは人の営みの一貫である、と肯定。単純化を避けつつ、二つの価値観を並べる、というより、
映司の中では自然に共存している、といった見せ方。
山野の家ではヤミーの卵が孵化し、マンションからあふれ出す大量のクラゲ虫を見て、映司はオーズに変身。
そして比奈がそれを初目撃。あまりにさらっと変身するので、そういえば初目撃という事に驚きました(笑)
一方、アンクは実力行使で鴻上会長からメダルシステムを奪おうとしていた。
「俺はテイクは好きだが、ギブは嫌いだからな」
力強く駄目人間宣言をするアンクだが、メダルシステムは鴻上会長の意向次第で一瞬で無効化され、
鴻上が死ぬような事があれば自動的に機能を停止してしまう。鴻上がシステムを無効にした為に自販機バイクが機能停止し、
自販機の上に馬乗りになるオーズ。
この、アンクと鴻上がディスプレイ越しに見つめる中で、自販機の前で右往左往するオーズ、は凄く面白かったです(笑)
相棒のあまりに間抜けな姿に涙が止まらなくなったアンクは6:4の取り分で鴻上との交渉をまとめるが、
鴻上が事前に用意していたケーキの蓋を開けると、そこには60%の文字がデコレーションされていた……と一枚上手ぶりをアンクに見せつける会長。
メダルを集める目的は「秘密」と誤魔化し、パターンだと悪の黒幕になりそうな鴻上会長、あまりそういう構造は好きではないのですが、
さてどうなりますか。
「あたし……あんなものにすがってたんだ」
オーズに助け出された山野は、自分の欲望から生まれた大量のヤミーの姿に、
金はあるけど田舎者のコンプレックスから東京で買い物を繰り返して着飾っていたという事を、比奈に語る。そして比奈は、
山野がファッションや買い物なら、自分は兄にすがっていた(精神的に依存していた)のだと、自覚。
「欲しいって思うのは悪くない。大切なのは、その気持ちをどうするか。もうすがってるだけじゃ駄目なんだと思う。
……ちゃんとしなくちゃ」
前エピソードでも映司とアンクのやり取りがありましたが、欲望を制御して、如何に善く生きるのか(ちゃんと生きるのか)、
というのが今作の中心テーマという事になるのか、かなりストレートにぐいぐい来ます。
ヤミー虫のあまりの量に対抗する為、オーズはアンクからクワガタ・カマキリのコアメダルを受け取ると、同色3枚揃いのコンボを発動。
『クワガタ・カマキリ・バッタ!』
がったがたきりば! がったがたきりば! がったがたきりば! がーたがたがたきりば!
ガタキリバは大量に分身して数の暴力でクラゲ虫を蹴散らしていくと、最後は合体した虫に分身ライダーキックからの切り込みを決め、
これを撃破。そのとてつもない力を見せつけるが負担が大きく、映司は気絶してしまう……。
(少しやばいか……コンボは)
第6話にして、超強力なフォームが発動して分身する、という急展開。しかしフォームよりも、
挿入歌のインパクトが強すぎます(笑)
Got to keep it real!
コンプレックスを振り払い、地に足を付けた山野はパン屋でバイトを始め、比奈とクラスメイト達もその店を訪れる。
そしてそれを見つめる、若い不審な男が2人。君達毎度その感じで比奈をストーキングすると捕まるから気をつけろ!
立ち上がり、映司とアンクのバディ関係を描写する為、後回し加減になっていた泉比奈をフィーチャーしつつ、グリード達との交戦、
鴻上との交渉、コンボ発動、と詰めに詰めまくったエピソード。
これに各種設定の数々を加え、情報量が多い上で切り替わりがめまぐるしくて、まだちょっと、
今作のどこにピントを合わせて見ればいいのか掴めていません(^^; 表向きの描写は軽快だけど中身はかなり重い、
というのもありますが、その辺りに慣れてくればピントは合ってくるか。とりあえず、比奈ちゃんは美人度高いなぁ。
次回――コスプレ。
→〔その2へ続く〕
(2016年6月13日)
(2017年4月24日 改訂)
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