■『仮面ライダーキバ』感想まとめ8■


“僕は今 変わってく……
運命の中 小さな星生まれるみたいに”


 ブログ「ものかきの繰り言」の方に連載していた『仮面ライダーキバ』 感想の、まとめ8(43〜最終話)です。文体の統一や、誤字脱字の修正など、若干の改稿をしています。

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◆第43話「結婚行進曲#別れの時」◆ (監督:舞原賢三 脚本:井上敏樹)
 1986年では凄い蛾を真夜が撃退し、2008年では渡が変身を解除して戦闘を拒否。太牙は帰宅し、嶋は渡に護衛を依頼する。
 嶋の異変……それは太牙により、ファンガイアの力を移植された為であった。
 「貴方に学んでいただきたかったんですよ。ファンガイアである事がどういう事か。僕を育ててくれた貴方への、せめてもの恩返しですよ」
 「酷いよ兄さん……」
 「おまえになにがわかる! これもファンガイアを守る為だ。人間が人間を守るように、俺はキングとして、ファンガイアを守る義務がある!」
 前回、人格を持って出てきたのに、さくっと嶋と同化させられてしまったセンザンコウファンガイアは可哀想(^^;
 それにしても、渡はいったい何がしたいのか。「人間とファンガイアの共存」を目指し、 「ファンガイアは絶対悪ではない」というスタンスの渡には、嶋センザンコウに対する独自のアプローチがあると思うのですが、 そういう気配は全くありません(太牙の行為そのものは人間視点でもファンガイア視点でも酷いけど)。
 育ての親であり仇敵に凄絶な意趣返しを行った若社長は、深央から「なるべく早く式をあげたい」とか言われて、どっきどき。
 「いずれ、渡もきっと僕の側に来てくれる。そこからが僕の本当の人生なんだ」
 「私も、新しい人生を始めたい……」
 ここに来て、若社長の本音の部分がクローズアップされてきましたが、どんどん弱い男になっていきます……(^^;
 まあ、育ての親がアレだから、仕方ない。全部リセットしたくなっても、仕方ない。本当に、仕方ない。
 嶋は喫茶店で最後のコーヒーを飲むと、そこへやってきた名護と対峙。イクサへ変身した名護は無抵抗の嶋に拳を向けるが――戦う事ができない。
 「甘いな君も。戦士失格だ」
 夕陽の沈む中、凄いロングのカットで盛り上げようとはしているのですが、重ねて渡の立ち位置を考えると、 ここまで切羽詰まらなくてもいい気がして仕方がありません(^^; 嶋が切羽詰まるのは仕方ないとして、 周囲はそんな嶋をどう支えていくのか……という考えになるのが“渡の存在による転機”だと思うのですが。まあ、 イクサが首領Sを殴り倒さなかったのが渡の影響という事なのかもしれませんが、主人公が世界に与える影響としては、少々弱い。
 そしてとうとう、二人だけの結婚式を挙げる太牙と深央。だがその儀式の最中、深央の手が深々と太牙の腹を突き刺す!
 そっちが刺されたか(笑)
 逃げ出す深央の前に陰で見ていたビショップが立ちはだかるが、太牙は「彼女は何もしていない」と深央をかばい、 その間に深央は逃亡する――。
 1986念――魔城に囚われ生命力の尽きかける音也は最後の頼みを聞き入れられバイオリンを弾くがキングのお気に召さず、始末されそうになる。 しかしその音色は真夜の耳に届き、ギリギリの所で駆けつけるゆりと真夜。
 ダークキバとクイーンが戦闘となり、その間に音也を連れ出したゆりの前には凄い蛾ファンガイアが立ちはだかるが、 傷だらけの音也はイクサに変身すると近距離イクサ火炎ハンドで凄い蛾を撃破。しかしその一方で、 真夜はダークキバに為す術もなく倒されていた。
 「ファンガイアの力を抜き取った。もはやおまえはクイーンでなければ、ファンガイアでさえもない。亡霊のように生きろ。 それが死よりも重い刑罰だ」
 ここで現代編に繋がる形で、真夜はクイーンの力を失う事に。この流れだとそもそも渡の体の中のファンガイアの血はかなり弱くて、 それ故に食性なども人間に近いという事でしょうか。ただその渡はキバとしての強い力を秘めている、 という事で残るキーパーソンはここまで焦点が当たりそうで当たらなかったキバットバット親子か。
 2008年――海辺のお墓の前で暴れる嶋センザンコウの前に、重傷を負った太牙が現れる。
 「太牙、決着をつけよう」
 咆吼と共にセンザンコウに変身する嶋だったが、サガはこれを秒殺し、首領Sは見事な爆死を遂げる。 …………あ、あれ?(^^; これから過去編で背景が明かされるのかもしれませんが、二つの時代に跨がって登場し、 1話から登場する主要キャラにも関わらず、様々な因縁が語られる事もなければ末期の台詞の一つも無く飛び散ってしまいました。
 まあ、状況的にほぼ自殺であり、太牙がキングとしての激情を吐露した時の表情を見るに、 どうせ死ぬなら太牙に殺されよう……という考えだったのかもしれませんが、それが怨念を浄化するどころか、 憎悪を加速させている辺り、最期まで役立たず。
 渡を裏切って謀略により嶋を追い詰め、挙げ句の果てに爆殺した太牙に対する怒りで覚醒した渡はエンペラーキバへと変身。 キバとサガは激しくぶつかり合い、それを見つめる深央。出血多量のサガは本調子でないままキバに追い詰められ、 躊躇無くフィーバーキバまっしぐらを発動するエンペラー。太牙が自分をビショップからかばった事に動揺する深央は発作的に飛び出し、 サガを守ってその直撃を受ける――。
 ……渡には、「殺る」「戦わない」かの2択しかないのか。
 渡は吹き飛んだ深央を抱き起こし、あの指輪を手にすると、深央は二人だけの幸せな結婚式の幻を見ながら砕け散るのであった……。
 後半戦を引っ張ったクイーン深央、リタイア。
 うーん……ここに来て、渡が何をしたいのかが致命的にわからなくなってしまいました。
 ハーフファンガイアである事を自覚し「人間とファンガイアとの共存を目指したい」と口では言うものの、別に誰と話し合うわけでもなく、 対処療法に終始した挙げ句に殺意全開の必殺技を発動。
 勿論ここの所の太牙の行動、特に前回−今回の嶋への所行は非道と言っていいものですが、しかし、 これまで戦う事すら拒否していた太牙に殺すつもりのキックを放つ動機としては、正直、「嶋が殺害された」は弱すぎます。
 一応和解はしましたが、別に嶋さん、長く渡を支えてきた理解者とかそういうわけでもないですし。怒りの感情そのものは自然ですが、 「共存を目指す」筈の渡が憎しみの連鎖を全く止める気がなく、自ら言うように“中途半端”な位置で暴れているだけで、 とてもタチが悪い。
 そんな渡の未熟さゆえの悲劇、という所まで織り込み済みなのかもしれませんが、 迷いに迷いを重ねた挙げ句にこの最終盤に至ってもまだ主人公が延々と未熟、というのは辛い。
 せめて渡が共存を目指す為の行動を取っていて、能力不足ゆえにそれが巧く行かない、という展開ならわかるのですが、 渡の行動も言動もどこを取っても共存を目指しているように見えないのが、極めて厳しい点。
 また今作は、音也の性質、渡の立ち位置、ガルルさん達の描写など諸々見るに、「ファンガイアである事=悪」、 という世界観ではないと思うのですが、そのファンガイアを「邪悪」と言い切る嶋の死を渡覚醒のスプリングボードに使うというのも、 物語の積み上げとしては納得がいきません。非常にひっかかります。
 はっきり言えば、殺しやすい人物を殺して強引に渡の動機付けをした、という下策(勿論これは、 なら例えば静香が不幸な目に遭えば良かった、という意ではありません)。
 ……ふと今、思いついてしまったのですが、これは、物語上の下策ではなく、登場人物による下衆の策であったらどうしよう。
 墓前で太牙と出会った事など(この墓自体は、まだ伏線が隠れているっぽい雰囲気ありますが)色々と偶然の要素が多かったですが、 わざと目の前で太牙(サガ)に殺される事で渡(キバ)の怒りをファンガイアに向けさせる、 という首領S最後の謀略!

 最後の最後まで吐き気のするほどの邪悪。

 今回でリタイアとなった深央さんは、同じ刺すなら煮え切らない渡を刺して二人の世界フォーエバー派かと思いましたが、 太牙を刺して渡に強制的に覚悟を決めさせにいきました。トドメを刺しきれなかったり、直後に激しく動揺したり、徹しきれない辺りが、 良くも悪くも渡と“似たもの同士”という事でしょうか。あと、残念ながら、渡はそんな切羽詰まった女を無自覚に見捨てそう。
 お父さん(ビショップ)はどうして物陰から覗き見しているのだろうと思ったら、 信用できない深央にすっかり転がされている若社長を心配していたのだろうか、と考えると涙ぐましいですが、 育て方を間違った気はします。育てた人は……爆死して責任を取ったのでもう追求できない。
 次回、魑魅魍魎跋扈するこの地獄変に素晴らしき青空を取り戻す為、 名護啓介はラスボスになる!(?)

◆第44話「パンク#バックトゥファーザー」◆ (監督:長石多可男 脚本:井上敏樹)
 前回のあらすじから続いて冒頭、砕けた深央の欠片を手に取る渡、はなかなかえぐい。
 1986年――退院しようとした音也を止めた医者……の顔はどう見ても渡であった。 退院した音也に「このままだと不幸になる」と告げる占い師……もどう見ても渡であった。
 「必ず、運命を変えてみせる」
 深央を殺してしまったショックで彷徨っていた所を宇宙人ジローによって回収され、22年前に送り込まれた渡は、 度重なるトラウマ案件の末、よくわからない方向に弾けていた。
 恵に襲いかかる、など鼻で笑って吹き飛ばして忘れてしまうレベルの惨事だったのでどうなる事かと思いましたが、 また鬱々とするのではなく、まがりなりにも渡が主体的に動いている、というのは良いと思います。
 渡は荷物をまとめて自ら同棲解消したゆりの前に立ちはだかると、音也とゆりをどうにかくっつけようとする。
 「貴女は、紅音也と結ばれるべきです。貴女は魅力的です。自信を持ってください」
 それやると、恵さん、消えないか。
 まあもう、ほぼ錯乱状態で、深央さえ助かれば他の人の運命がどうなろうが知った事ではない、という事なのでしょうが、 それにしても酷い(^^;
 渡に誉められてその気になったのか、音也を呼び出すゆり。
 「あんたにプレゼントがあるんだ」
 「なーんだ、おう、くれるものなら、なんでも貰うぞ」
 「別れをあげる。返却不可能だ」
 「ゆり、俺は……」
 「いい。何も言わなくていいんだ。私はあんたと出会って幸せだったし、今でも幸せだ。音也だってこれから、 もっともっと幸せになれる。だから……これでいいんだ」
 むしろハッキリと別れを宣言したゆりは、去り際、音也の足を思いっっっっっっきり踏みつける。
 「ごめん。――わざとだ」
 落としたネジをつけ直したゆりさんは、ひたすらいい女であった。
 ヒールの踵でないだけ、加減したしな!
 ここで、しめしめと盗み聞きしていた渡が、ゆりのお別れ宣言に思わず机を叩いていたのは、普段の渡らしからぬ仕草が、好演出。
 その頃、力を失ったクイーンに迫る、北極熊ファンガイア。
 「会いたい、音也、会いたい……」
 その危機を助けたのは、ゆりさんだった。
 音也と話せと言い置いて、去って行くゆりさん、格好良すぎる……(笑)
 だが、男女の機微などわからない渡はそんなゆりを強引に連れ戻し、音也と真夜の元へと戻る。
 「とにかく駄目なんです、父さん、母さん」
 もう、面倒くさくなった。
 「二人がラブラブになっちゃったら、僕が生まれちゃうんです。僕は生まれちゃいけないんです。この世から消えなきゃいけない」
 どうして、この局面で、その単語チョイス。
 「僕が生まれると深央さんが、深央さんが死んじゃうんです」
 ここで、握りしめていたガラスを見せる、というのも良かった。
 その後、未来から来た証拠として呪いのアイテムもとい名護さんのボタンを見せたり、 鍵を使って紅家に侵入したり、紅家秘伝の特技を見せたりして音也に受け入れられた渡は、北極熊から母を守る為、キバ変身。 イクサ変身した音也と親子共闘で北極熊を撃破すると、そのまま第二ラウンドで親子喧嘩へ突入。音イクサが貫禄勝ちを収めるが、 そこへジェラシーキングが現れ、音也を殺すべくダークキバへと変身する……。
 2008年――
 嶋の後釜に座り、世界に恒久的平和をもたらす為に戦うとラスボス宣言をした名護が、 大いなる意思の声を聞く為に体脂肪率を落とそうとトレーニングしていた所、ビショップと遭遇。
 「出来損ないのクイーンは死に、紅渡はもう立ち直れない。キングの邪魔をするものは、青空の会だけだ。イクサの装着者よ、 ここで死んでもらう」
 「貴様に言っておく。青空の会は永遠に不滅だ」
 絶好調のライジングイクサは、ほぼワンサイドでビショップに勝利。逃亡するビショップは、正直、 実力差を見誤りすぎて何をしにきたのかわからないレベル。貴方この前も、正面から思いっきり負けていたじゃないですか(^^;
 そして深央を殺された悲しみから、太牙は憎しみの炎を渡に向けてたぎらせていた……。
 前回の今回で渡が過去へ跳ぶという展開でどうなる事かと思いましたが、いい女として再起動したゆりさんが格好良く、 話が締まりました。やはりこう、“格好いい”というのは必要な要素だと思うわけです。
 「私はあんたと出会って幸せだったし、今でも幸せだ」
 は素晴らしい名台詞。

◆第45話「ウィズユー#最後の変身」◆ (監督:長石多可男 脚本:井上敏樹)
 音イクサを痛めつけるキングだが、割と思いっきり、エンペラーのフィーバーキバまっしぐらを食らう。
 「貴様……真夜と、音也の子供……許せん、許せん、許せん!!!」
 嫁と浮気相手の子供が青年になって目の前に居るって想像を絶する心の痛みで、 キングは劇中で描写された悪事の200倍ぐらいの精神的ダメージを受けているので、どんどん、 可哀想になってきました(涙)
 怒りの咆吼でキバットバット2世を弾き飛ばしたキングは、ダークキバの変身を解除し、 ファンガイアとしての本来の姿?キングなバットファンガイア(キングだけにオオコウモリ?)へと変貌。 過去編のラスボスという事もあってか、いっそ、ダークキバより格好いい(笑)
 親子は怒りのキングバットから何とか逃走し、音也は渡の制止を振り切って真夜とのデートに向かう。 そこでキングの変身アイテムではあるが、むしろ真夜ラブなキバットバット2世から、「もう会えない」という真夜の伝言を聞いた音也は、 真夜がキングから「音也と会ったら太牙を殺す」と脅迫されている事を知り、太牙を救いに行くと宣言。
 ここで結局、真夜と普通に会って事情を聞いているので、キングの脅迫はジェラシーポーズの可能性が高く、 ますます可哀想になっていきます。作劇としては、上記の様にキングがただの可哀想な元夫になりつつあるので、 キングの悪辣さの強調という意図でしょうが。
 2008年――太牙は深央の写真を見つめ、すっかりダメな人になっていた。
 そんな若社長に立ち直って貰おうと「実は深央にトドメを刺したのは私です! 役立たずのクイーンは粛清したので、 元の立派なキングに戻ってください!!」と力づけたビショップは当然不興を買い、殴る蹴るの暴行を受けて逃亡する。
 渡が深央を殺しているとさすがに救いが無い(そして太牙との和解の可能性も限りなく低くなってしまう)という事もあってか、 吹き飛んだ深央にトドメを刺したのはビショップだったと、真相が判明。渡が飛び出してきた深央を見て必殺キックにブレーキをかけていた事もわかりました。 ……どちらにせよ、太牙には殺意満々でしたが。
 1986年――キングと対峙した音也は、キバットバット2世の力により闇のキバを纏い、ダークキバへと変身する。
 「貴様、裏切るのか?」
 「おまえが真夜にした事が気に食わん。そういう事だ」
 成り行きの注目されたキバットバット2世は、「俺、真夜の事は好きだけどキングは割とどうでもいい」 というシンプルにわかりやすい動機が判明。思えば真夜の初登場時に、シルエットでそれらしい姿が同行していましたが、 さすがにこれは、もう少し前振りが欲しかった所。例によって例の如く、カットシーンに2世と真夜の会話があったりとかしそうですが、 クライマックスの肝心な所だけに、数話かけて端々で接触させておくべきだったと思います。
 息子の前でいつも以上に格好つけ続ける音也は、真夜と太牙を救う為に命を削りながら闇のキバを纏い、 ドラゴン城へ潜入するとオブジェ化していた妖怪三銃士を回収。
 ここに来て、音也最大の武器である「生命力」がその真価を発揮。思えばイクサの欠陥さえ、 ここに至る伏線だった気がしてきます(笑)
 悩める渡はゆりと音也の言葉を聞き、生き続ける事を決意。
 「深央さん……僕、いいのかな、生きて」
 名残のガラスから浮かび上がった深央は笑顔で昇天し、深央さん、(たぶん)お役御免。『555』から5年、 すっきりした美人に育った芳賀優里亜というキャスティングにも助けられましたが、後半戦を引っ張ってくれたヒロインでした。
 ダークキバがキングに挑んでいる間に渡は太牙を助け出し、戦闘中の衝撃でオブジェから解放された妖怪三銃士は、 状況がよくわからないのでとりあえず逃亡(笑) キングが召喚した巨大ファンガイアがドラゴン城に融合して暴れだし、 太牙を真夜に託した渡は、エンペラー変身。そのままダッシュでキバドラゴンへ、というシーンはスピード感があって格好良かった。
 エンペラーはザンバットソードで巨大ファンガイアを成敗してドラゴン城を開放するが、ダークキバはキングバット手裏剣の直撃を受け、 変身の解けた音也は倒れてしまう……。
 渡不在の2008年では、使えない上司に見切りをつけたビショップが叛逆を決意し、街に繰り出して大量のライフエナジーを集めていた。 その前に立ちはだかるのは、勿論あの男。
 「この体、その全ての細胞が、正義の炎に燃えている。イクサ――爆現」
 名護さんは、もういい加減、ツッコミ不能の領域に、いってしまわれました……。

◆第46話「終止符#さらば音也」◆ (監督:石田秀範 脚本:井上敏樹)
 湖畔の変なオブジェが気になる。
 明らかに意図的に画面に入れているのですが、なんだあれ。
 父を助ける為にキングに挑むエンペラーも敗れるが、音也は立ち上がると、イクサ変身。
 「――変身」
 からOPに入ったのは格好良く、ここで改めて、“もう一人のヒーロー”としての音也が格好良く決まりました。
 だがイクサも遂に分解し、湖底に沈む(?)イクサナックル。父の死闘に渡は再びエンペラーへと変身し、 音也も三度目のダークキバとなると、親子は共にキングへと立ち向かう。
 (渡――人に流れる音楽を守れ。その為に戦え。渡、大切なものを守る為に……男は戦うんだ)
 (渡、あなたは私の代わりに、あの人から受け取らなければならないの、命を)
 (そうだ、僕は父さんの声に導かれてずっと戦ってきた。父さんと一緒に戦う事が、父さんと一緒の時間を生きる事が、 命を受け取るって事なんだ)
 親子共闘自体は熱い展開の筈なのですが、きっかけが次狼が渡を適当にタイムマシン部屋へ投げ込んだ事なので、どうも、 素直に盛り上がりません(^^; 今更、タイムパラドックスがどうのとか言う気は全く無いし、多分これ、 渡が居ない歴史では音也一人(と妖怪三銃士の手助け?)で勝っていたという事なのでしょうが。
 ダブル月面野球キックが炸裂し、遂に倒れるキング。
 「真夜……おまえは、俺のものだ……一緒に、地獄へ行こう……」
 瀕死のキングは太牙を抱える真夜に光を放つが、太牙がバリアを張って反射し、その炎に呑み込まれる。
 「新しいキングの誕生だ。いつの日か必ず、俺の息子が……お前達を倒す」
 どうやらこの攻撃は、むしろ太牙の覚醒を促す為のものだったようですが、タチの悪い呪いといえば呪いとはいえ、 最後に真夜に執着する辺り、キングはむしろ、泣ける人になりました(笑)
 あと一応こちらも、親の因果が子に巡っているというポイントを入れてきました。
 2008年――前回の戦いはすっ飛ばされ、名護さんは青空の会の会長になるべく、集票活動に励んでいた。
 そして……
 「太牙――長年尽くしてきた私にあの仕打ち。奴はキングにふさわしくない」
 ファンガイアの頂点に立つチェックメイト・フォー――好き放題に暴れるだけ暴れて天国へ逝ってしまったルーク、 仕事せずに男と遊び呆けてばかりのクイーン、そんな女に転がされながら引きずっているキング、 ……これまで数多のトラブルと事務仕事を処理し、たぶん陰では一般ファンガイアの人生相談とかにも乗っていたビショップ、 こんな職場やってられっかぁぁぁぁぁ!!と、遂にキレる(笑)
 ビショップは集めたライフエナジーで大量のファンガイアを復活させると、新たなキング誕生の為に更にエナジーを集めさせようとする。
 (渡――人の中に流れる音楽を守れ。美しいものを守れ。行け、戦え、渡)
 現代に帰還した渡はファンガイアを倒す為に外へ飛び出し、久々の登場で階段落ちを披露した静香を救出。 更に名護と恵に迫るファンガイアを生身で叩きのめし、その迫力で退散させるなど、変質を表現。
 すっかり因縁の敵となったビショップと戦うライジングイクサは恵をかばって大ダメージを負い、その影響か、 目に異変を感じる名護……某作品で某キャラが似たような事になり、結局そのネタは投げ飛ばされて無かった事にされた事がありましたが、 今回は活用されるのか(笑)
 渡は深央の墓に花を捧げる太牙と再会。自分達が弱かったから深央を不幸にしたのだと、 それぞれの弱さを認めて深央の死を乗り越えた二人は、しかし見つめる未来の違いから、決着をつけるべく対決する。 だがそこへ大量のファンガイアが乱入し、ビショップは「自分が新しいキングを決める」と下克上を宣言。
 女に溺れた若社長、とうとう、金と権力の危機!
 1986年――別れの挨拶に、ゆりや妖怪三銃士の元を訪れる音也。ここは半ば霊体のような、思い切ってファンタジックな演出。
 妖怪達は主が居なくなった影響で暴れ回るドラゴン城を押さえる為に城内で暮らす事となり、音也との友情が一番の理由でありましょうが、 「散々悪さしてきたのだし借りを返せ」と、一応、劇中での因果を収める形になりました。
 「頼んだぞ……次狼」
 いずれ生まれてくる息子=渡の事を託され、黙って頷く次狼。過去編の、ある種もう一人の主役として、最後まで、 格好いい役どころでした。特に台詞の無いラモンと力は、ちょっと可哀想(^^;
 「逝っちまったか……」
 そして――ゆりから教わった愛情たっぷりのオムライスを作り、真夜の為だけのバイオリンを奏でた音也は、 その膝の上でゆっくりと目を閉じる。
 (聞こえるか? 俺の音楽が)
 (聞こえるわ。あなたの音楽は、私の胸の中で、ずっと鳴り響いている)
 (そうだ。それでいい。それが俺の本当の、音楽だ……)
 紅音也、使ったら死ぬ、と言われたダークキバを3回ぐらい装備した挙げ句、その後で渡を仕込む。
 恐るべき、ヒーロー力。
 音也に関しては、最終回後にでも。あと2話か3話という所でしょうか、次回、渡、コスプレ。

◆第47話「ブレイク・ザ・チェーン#我に従え!」◆ (監督:石田秀範 脚本:井上敏樹)
 再生ファンガイア軍団を蹴散らし再び刃をぶつけ合うキバとサガだが、武器の差か、戦いの趨勢は徐々にキバに傾き、 無様に地面に転がるサガ。……ふと思ったけど、ジェラシーキングは勢いでザンバットソードを壁に埋めなければ、 親子キバに勝てていたような(笑) 何だかつくづく、可哀想な人です。というか「キング」の称号に、《幸運−50》とか、 属性が付いているのでは。
 「キングである兄さんより僕の方が強い!」
 「貴様ぁ、俺を侮辱する気か?!」
 「事実を言っただけだよ!」
 音也との邂逅を経て男として新たな領域に到達した渡は、生身でも太牙を叩きのめすと、そのまま置き去りにして歩み去る――。
 一方、ビショップは激しくパイプオルガンを奏で続けていた。
 「真のキング――今こそ復活の時」
 集められたソウルエナジーが飛んでいったのは、どこかで見たようなオブジェの転がる、乾いた大地。なるほど、 親子キバvsキングバットファンガイア最終決戦の時の変なオブジェは、涸れた湖を同じ場所だと認識させる為の仕掛けでしたか。
 ソウルエナジーにより、キングバットはかつて倒れた地で、徐々に実体を得ていく。
 すっかりキレてしまったビショップは格好良く、ソウルエナジーを集める再生ファンガイア軍団により、街ではかなりの大被害。 最終盤らしく登場した再生ファンガイア軍団は、量産型ではなく(その為のネズミだと思っていた) オリジナル着ぐるみを大量投入しているのがいい所。
 そんな中、視力に異常を感じる名護は渡を青空の会の新会長に推薦しようとするが拒否される。 暴れるファンガイア軍団と戦おうとするも逆に危機に陥った名護と恵を助けたのは、渡、そして――復活の首領S。
 それとなくおかまっぽかったマスター、首領Sに抱き付いて大はしゃぎ(笑)
 よくわからないが復活した首領Sはいきなり名護の目の異常を指摘し、名護啓介、電撃引退。だがそれを、恵が引き留める。
 「私があなたの目になる」
 そして、渡に叩きのめされた太牙は社長を解任され、とうとう地位と金を失ってしまう。
 立派な無職となった太牙を始末するべく、ファンガイア軍団をけしかけるビショップ。 戦闘に介入し恵に指示を受けながら戦う名護イクサだが、やはり無理がありすぎ、人生どん底に追い詰められる2人。
 これだ、これが逆境だ!!
 その時、目の据わった渡が、そこへ現れる。
 「ここに宣言する。今から僕が新しいキングだ!」
 エンペラーキバはファンガイア軍団をばっさり成敗すると、反抗するビショップを斬りつけて撃退。 愛する弟からゴミ屑同然の扱いを受け、社会的にも無能と化した太牙は錯乱状態で真夜を刺殺し、 唯一残ったキングの座にしがみつく為に、強引に闇のキバをその手にする。
 「どうやら、おまえには俺が必要なようだな。おまえほどの哀しみを見せた男はいない。気に入った。 おまえなら最強のキングになれるかもしれん」
 ちゃっかり生きていたキバットバット2世により、太牙、ダークキバへ。
 「闇だ。闇の歴史がここから始まる」
 結局、闇のキバ=キバットバット2世、という事でいい様子。3世が軽いまま、 特に物語上の焦点が合わずにここまで来てしまったのでハッキリしませんが、キバットバットの一族は、 ファンガイアの血を持つ者にキバを纏わせる能力を持っている、という事で良いのか。 2世が真夜を殺した太牙に協力する理由はわかりかねますが。
 あとタツロットは…………どういう辻褄合わせる設定があるのでしょうか(^^;
 同じ頃、渡は嶋と遭遇し、あの日の真実を聞いていた。
 「太牙は殺せなかったんだ、この私を」
 センザンコウファンガイアとして爆散したと思われた嶋だったが、太牙の一撃は故意に急所を外しており、 倒れた嶋を人間として治療し直していたのだった。
 太牙は純血のファンガイアであるが、口で言うほど人間に対して冷酷非情になりきれず、 心の底に優しさを隠している――その優しさを認めた嶋は、改めて渡に、太牙の事を頼む。
 ……うん、別に、この人は始末しておいた方が人間社会の為でもあったと思うけど(笑)
 後、サガによる嶋の爆殺直後にエンペラーキバとの戦いに雪崩れ込み、深央死亡、両者大ショック、 という展開のどこに嶋を助ける余裕があったのかはかなり疑問ですが、爆殺後に見えない所に隠した後は、 事前に指示を出していた部下が回収したとかなんとか、そういう落とし所でいいのかどうなのか。
 嶋の話を聞いた渡は、たぶん城のクローゼットに入っていた先代キングの衣装に身を包み、ドラゴン城の玉座に座る。
 「今から、僕がキングだ」
 ……部下は、妖怪三銃士オンリーですが。
 そしてビショップは、一生懸命、オオコウモリを復活させようとしていた。
 思わぬ三つどもえの果て、キングの座を手に入れるのは誰か、渡は太牙を救う事が出来るのか、 そして人間とファンガイアの行く末は――次回、運命の血の物語、フィナーレ。

◆最終話「フィナーレ#キバを継ぐ者」◆ (監督:石田秀範 脚本:井上敏樹)
 改めてイクサナックルを返上しようとする名護に不満を抱く恵は、2人のコンビネーションを磨くしかないと、 名護を引っ張って特訓を開始。
 「あたしさ、あんたがこうなってから、気付いた事があるわ」

 傲岸不遜な男が弱っている姿を見るのって、超快感☆

 ……ではなくて、
 「あたし、心の中であんたを尊敬していたって」
 「俺もわかったことがある。おまえ、優しい女だったんだな」
 闇のキバを持って渡の元を訪れた太牙は、真夜を殺したと宣言し、激突する2人のキバ。そこへ乱入してきたのは、 2人のキングを認めない、ビショップ率いるお邪魔虫軍団。
 「無能なキングと紛い物のキング、兄弟仲良く死ぬがいい」
 最後の最後でビショップが面白いのは、あくまでキングメーカーに徹し、自分がキングになろうとは考えていないという事。 能力不足の自覚があるのかとも思いますが、「ベンチが阿呆だから野球にならん」状態で、 先代社長の返り咲きを必死に成し遂げようとするその姿には、業務上のストレスの深刻さを感じて胃が痛くなる思いです。
 乱戦に駆けつけたのは、妖怪三銃士。
 まさか、三銃士に、最後の見せ場があるなんて……!(笑)
 三銃士の奮戦もあり、範囲攻撃で再生ファンガイア軍団を蹴散らした兄弟は、再び一騎打ちへ。そして追いすがろうとするビショップを、 食い止める名護。
 「決着をつけよう。その命、神に返しなさい」
 ここに来て、決め台詞持ちという事もあり、やたらめったら格好いい名護さん!
 戦闘だけですが、イクサとビショップを繰り返し接触させる事で、因縁が成立していたのも良かった。
 ライジングイクサとビショップの格付けは既についており、「目が見えなくて丁度いいハンデだ」という勢いではあるものの、 さすがに滅多切りにされるイクサは爆発鱗粉を浴びるが、しかし耐え、立ち上がる。
 「天魔伏滅――」
 恵の指示でカウンターを決めると連続攻撃を浴びせ、飛び上がるイクサ。
 「イクサ・爆現!」
 とうとう、必殺技の名前となり、回転斬りがビショップを両断するという、物凄い名護さん祭(笑)

 名護さんは、最高だから!!

 しかしダメージが大きく、その場に倒れる名護、だが……その時に頭を打った衝撃か、ビショップの攻撃の影響か、視力を取り戻して、 名護さん復活。
 「ばーか」
 そのまま抱きしめ合い、なんだかいい雰囲気になってしまう名護さんと恵。……うんまあ、名護さん格好良かったからいいや。
 元々、性格と相性の悪さを除けばスペック的に恵の好みでA判定だったという名護さんですが、「かばう」イベントもあっただろうけど、 最終的な決め手は、弱っている名護さん、がぎゅんぎゅん来たのだろうなぁ(笑)
 一方、宿命の兄弟は一騎打ちの果て、お互いの変身が解けたボロボロの状態で向き合っていた。
 「どうしたぁ?! 戦わないのか、俺は母さんを手に掛けたんだぞ」
 「わかる……兄さんの孤独が。僕が側に居るよ……ずっと」
 こちらも、弱っている姿にぎゅんぎゅん来ていた(おぃ)
 絶叫する太牙を抱きしめる渡。
 「渡くんはお前を守る為に、キングを名乗ったんだ!」
 いい場面が回ってくるのを待ち構えていた首領S、ここで登場。
 渡が新しいキングを名乗ろうとしたのは、太牙から全てを奪い去る為ではなかった。命を狙われる太牙を守る為に、 自らがその盾となろうとしたのだ。渡の真意――求めていた愛情を、遂に手に入れる太牙。だがその時、 イクサに倒されたビショップのライフエナジーを最後の糧とし、復活を遂げたジェラシーキングが飛来する!
 「戦おう、兄さん」
 「一緒にな!」
 渡と太牙は揃って変身し、22年前の因縁の地で再び、2人のキバとキングバットファンガイア対決する! とこれはハマりました。 そしてこれは、父殺しの(父を越える)戦いでもある、と。
 だが、ジェラシーキングは圧倒的な力でダブルキバを粉砕。吹っ飛ばされた渡は急斜面と化したかつての湖底を転がり落ち、 深い穴に呑み込まれる寸前、伸ばした手が何かを掴む。
 ――それは、22年前の戦いで砕け散り、湖底の泥の中に沈んでいたイクサの腕パーツであった。
 東映Youtubeの画質と画面の大きさだと、何か落ちた演出はあったけど何が落ちたのかよくわからなかったのですが、イクサの腕でした。 崖から落ちそうになった時に誰かが手を掴んで……というネタをこう持ってきて、既に故人である父親と最終決戦で繋げたのは、お見事。 また、「手を伸ばす/手が届く」というのは、ゆりとゆり母で使われたモチーフでもあります。
 (渡、諦めるな。おまえの中には――俺がいる。俺たちは一つだ)
 「父さん……」
 その頃、兄さんは見事に死にかけていた。それを助ける、合体生物軍団(除くサガーク)。そして、父との絆を胸に、復活する渡。
 「兄さん、まだ戦える?」
 「当たり前だ」
 「行くよ、兄さん」
 「行くぞ、渡」
 ここでエンペラーキバのテーマでもある格好いい挿入歌「SUPER NOVA」が入り兄弟は再びキバへと変身。 もうこうなったらテンションの勝利だ、と電撃ハエ叩きトラップでキングバットを痛めつけると、 ダークキバの三味線攻撃で釣り上げた所にエンペラー野球キック、そして最後に必殺! という合体奥義で遂にキングバットを滅却する。
 「渡……俺は多くの罪を背負った。決して許されない罪だ。おまえでも俺を救う事はできない」
 「兄さんの罪は僕の罪だ。一緒に背負うよ、僕も」
 そこへやってくる真夜。実は、太牙は真夜に当て身をしただけだったのだ……兄さん、結局誰のトドメも刺せない人(笑)
 まあ、本当に殺していたら真夜ラブのキバットバット2世が協力するのはおかしいので、この方が自然でもあります。なんかもう2世も、 見ていられなくなったというのはわかる(笑)
 「兄さんならきっと、ファンガイアと人間に明るい未来を作る事が出来る筈だよ」
 太牙の人間に対する心境の変化というのは特に描かれていないのですが、愛を知らぬ孤独さ故にキングという殻にすがり、 内に秘めた優しさを押し殺して冷酷非情なファンガイアのキングであろうとした太牙が、 肉親の情愛を知る事でファンガイア至上主義を捨て己の優しさを認めるに至った、とでも思っておけばいいか。
 首領Sの方は、散々いたぶられた上に三途の川を覗き、リアルに思い知らされた自分を死ぬほど憎んでいる相手に命を救われて、 改心したという事でいいのか。
 この物語がここまでこじれた原因の半分ぐらいは首領Sにあるとしか思えないのですが、 お母さんは本当にどうして、こんな人間のクズに太牙を預けてしまったのか。 今作終盤最大の謎であるその点が解明されなかったのは心残りです(笑) 誘拐してきたのではないか、 という疑惑を抱いているのですけど。
 「……渡。おまえ、でかくなったな。キングなんてものが、ちっぽけに感じるほど、でかく」
 「兄さん……」
 「渡、もう一度戦ってくれ。そんなおまえを乗り越えていきたいんだ」
 兄さんとかザコ(笑)を根に持っていた太牙と渡は真夜に促され、生身、そして変身して心ゆくまで殴り合い、 お互いの命、そして音楽を確かめ合うのであった――――。
 それから暫くの時が経ち……麻生恵は、ウェディングドレスに身を包んでいた。
 「母さん、あたし、結婚します」
 ああこれは、今作にふさわしい、ラストだなぁ。
 イメージで登場したゆりさんが娘に祝福を送り、静香や健吾に妖怪三銃士、やたら目立つ恵弟まで含めて、 オールキャストがおめかしして大騒ぎ。
 その頃、社長に再任した太牙は、人間とファンガイアの新たな世界を作る為にやり直そうとしていた。
 「我が社にとって2009年は勝負の年となる」
 ……ちょっとメタ?(笑)
 恵の結婚の相手は、もちろん、名護啓介。式中、やたらに次狼がエキサイトしているのは、 ゆりの娘をあんなボタン妖怪にやるのは許さーんという感じなのでしょうか。
 「それでは新郎新婦の結婚を祝って、紅渡さんからお祝いの演奏です」
 と渡がバイオリンを構えた所で、式場に飛び込んでくる謎の少年。少年は22年後からやってきた渡の息子・正男 (演じているのは音也役:武田航平)を名乗ると、命を狙われているから助けてくれと、渡達を外に連れ出す。一同がそこで目にしたのは、 上空に浮かぶ巨大な円盤のような物体。正男を狙う新たな敵、その名を、ネオファンガイア。
 会場に太牙が駆けつけ、渡、太牙、名護、正男、4人は一斉に変身し、背後で妖怪三銃士も変貌。 4人のライダーと妖怪三銃士は大空に向けて飛び上がる――でエンド。
 折角いい話でオチかけたのにやり過ぎで台無し感も若干ありますが、道中色々あったけど、 最終回はサービス盛りだくさんで楽しかったです。好みとしては渡の演奏でエンディングに入って欲しかった所ですが、 これは『ディケイド』との絡みの都合があったのか……?
 最終的に兄愛に落ち着いた渡ですが、一応、22年後に息子が居る事が判明したので、静香ちゃん、 コースアウトからまさかの逆転大勝利?! シリアス展開の時にリタイアしたと見せかけて命のやり取りから身を隠し、 物語が落着したおいしい所で顔を出すとは、なんという策士……!
 まあ、更に人間の血が入ってクォーターファンガイアだと正男が弱そうなので、 ぽっと出てきた薄幸そうなファンガイア女性に渡を持って行かれた可能性が、物凄く高い気はしますが!
 そして間違いなく、おじさん(太牙)はまた部下に裏切られた。
 最後にちゃっかり三銃士も突撃要員に加わったのは驚きましたが、物語途中での扱いが次狼除いてかなり悪かったので、 フォローしたという所か。……サガーク!(涙)
 太牙への好感度が高かったというのはありますが、クライマックスバトルは、とても良かったです。
 さて、最終回後に音也について書くと予告していたのですが、割と最終回見たらどうでも良くなってしまいました(^^;  いやちょっと、音也、というか、今作の構造に対する不満点(多分に好き嫌いの部分)があったのですが、最終回は美しかったので、 まあいかな、みたいな。
 さらっと書くと、個人的にはもう少し早く、渡が音也を乗り越えていく展開を期待していたのですが、結局ほぼ最後まで、 渡は音也に守られ音也の思いを受け継ぐ形だったなぁと。良い悪いというよりは、乗り越えていく展開の方が個人的に好き、 という好みの話なのですが、最終盤にノリきれなかった一つの要因ではありました。
 「大切なものを守る為に……男は戦うんだ」というのは格好いいのだけど、 結局そこが着地点になるのではなく、もう少し先が見たかったな、と。
 途中で書いたように渡が自ら行動しない事に疑問があったのですが、それは過去の音也を乗り越えてはいけないという、 劇構成上の要因が大きく、結局ラスト2話、それも父の想いを改めて受け継ぐ形でしか渡が“自分の戦い”を出来なかった(途中 「深央さんの為に」は少しありましたが)のは、今作に関する不満点。
 ……だったのですが、最終回のイクサと手を繋ぐのが良かったのと、太牙の方に父を越えるテーゼが入ったので、まあいいかな、と。
 トリッキーな構成に加えて登場人物の多さで描写が散漫になってしまったり、各種ギミックの扱いがあまりに雑だったり、 作品としての問題は色々とあり、正直人にはお薦めしませんが、「人間はみんな音楽」というのは、とても好き。個人的には、 見えたかと思えば遠ざかり、掴めそうでなかなか掴めない、そんなふわふわとした不思議な感触の作品でした。
 残り諸々、書き残した事が思いついたらまとめの際に総括で。

(2019年4月28日)

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