■『仮面ライダーキバ』感想まとめ2■


“バキバキBurnin’ heart
キミこそOne&Only”


 ブログ「ものかきの繰り言」の方に連載していた『仮面ライダーキバ』 感想の、まとめ2(7〜12話)です。文体の統一や、誤字脱字の修正など、若干の改稿をしています。

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◆第7話「賛歌#三つ星闇のフルコース」◆ (監督:田崎竜太 脚本:井上敏樹)
 みんな知っているか!
 バイオリンの日本伝来は、戦国時代の事と言われている!
 前回、入院した恵が退院……の病室に、真っ赤な薔薇の花束を抱えてやってくる名護さん、もうこれだけで、 ちょっと正気ではない感じがして凄いな名護さん!
 鬱陶しいからもうしばらく入院していなさい、と花瓶に花束飾ってしまう名護さんと恵は、渡と女子高生をそっちのけで大人げなく揉め、 渡は床に散らばる薔薇の花びらに興味を示すのであった……。
 1986年――
 「300年間、よく尽くしてくれた」
 老執事ファンガイアの最期を看取る、髭ダンディなファンガイア。
 「ファンガイアにも寿命があるのはわかっている。だが、やはり別れは悲しいものだ。――いや、甦らせる。おまえ達を必ず」
 22年を隔てて髪も薄くならず皺も増えずに登場するファンガイアですが、一応、普通に死ぬ生き物らしいと判明。
 喫茶店では、今日もガルルさんがコーヒーを堪能していたが、そこに嶋が来て急な閉店。 嶋はこの喫茶店の常連客が何人も行方不明になっている事から、その調査をゆりに指示する。前回、 役立たずであった音也はNPO法人への入会を拒否され、“わかりやすい活躍”を見せる為、ゆりと共に調査に参加する事になる。
 2008年――でも、嶋が喫茶店に名護と恵を集めていた。調査を指示したのは、1日2組限定で、 今注目の集まっている高級レストラン。恵はその調査の為に渡を誘い、嫉妬に燃える女子高生。
 女子高生には女を感じていない様子の渡ですが、恵からのデートの誘いには、意外なほどにんまり。
 年上派か!
 だが、そこへ現れた名護さんに声をかけられ、もっと嬉しそうになる(笑) 名護さんから、 弟子として指令を受ける渡……敵が多いな、女子高生。
 1986年――“常連客”である、ガルルさんを護衛の為に尾行する、ゆりと音也。ゆりは真剣だが音也はやる気がなく、 音也の手品に気を取られている間に、ゆりはガルルを見失ってしまう。
 口から旗を出した上に鳩まで出す音也が多芸を披露し、それを見て思わず笑ってしまうゆりの可愛げを1ポイント付けるとともに、 前回を経て、若干心を許した感じを描写。……まあその後、石、ぶつけられますが。
 2008年――恵の待ち合わせ場所に現れたのは、渡ではなく名護。高級レストランのシェフは髭ダンディ伯爵であり、渡は、 名護の指令を受けてウェイターとしてレストランに潜入していた。
 「何それ、危険な目にあったらどうするの。この子はね、どちらかというと、出来の悪い素人なのよ」
 デートの誘いで騙した恵と、説明をした上で危険な場所へ潜入させた名護と、どちらが渡に対して酷いかで揉めだした二人は、 大騒ぎの上にレストランを追い出される(笑)
 結論:嶋が一番酷い。
 お約束の展開なのですが、渡の社会不適応設定は、どうも話の都合に合わせた使い方になっていて、残念。お客が一日二組といっても、 渡に接客業が出来るとは思えないのですが。そしてまず、面接が無理なような。まあ、 名護さんへのラブパワーで乗り切ったのかもしれませんが。
 レストランでのバイトを終えた渡は、恵にからまれる。
 「名護さんはいい人です。強くて、優しくて……」
 「騙されてるのよ、君は! あの男はね、根っっからの偽善者なんだから」
 そして特に異状は無いと名護に報告した渡は、名護の「キバを倒す」発言について問う。
 「人類の、敵だからだ」
 「あの……それ、違うと思うんですけど……」
 「なぜ、そう思う?」
 「それは……」
 「言ったばかりじゃないか。俺の言う事だけを信じなさい」
 名護は果たして、キバに対していかなる想いを持っているのか。家に帰った渡は、風呂場で恒例の体育座り。
 「なんで人間同士って喧嘩するのかな……なんでみんな仲良く出来ないんだろう。どうして傷つけあったりするのかな」
 1986年――嶋さんいきなり、喫茶店常連客連続行方不明事件についてガルルさんに説明し、囮を要請(おぃ)
 あまりにいきなりなので、これは、ゆりが尾行に気付かれるシーンがカットでもされたのか。
 ゆりの推薦もあって素晴らしき青空の会へ勧誘されるガルルさんだが、「犯人は俺の手で捕まえてみせる」とガードは拒否。
 2008年――渡はバイオリンを弾きながら、仲の悪い名護と恵について悩んでいた。
 その頃、街を闊歩する、シルクハットに黒マントの伯爵。渡のバイオリン演奏をBGMに、無駄に格好いい事に(笑)
 「いかがでしたか、私の料理は。最高だったでしょう。丸々と太ったお二人の魂、今度は私が――いただきますよ」
 ファンガイアの正体を現した伯爵は……葱坊主?(それはないと思います)
 レストランの客であったカップルの男が食われ、ガードしていた恵が駆けつけて銃撃を浴びせるも、女の方も食われてしまう。 毎度のように標的以外はあっさり無視して帰ろうとするファンガイアだが、その前にキバが立ちふさがる。
 ネギファンガイアは口から泡を飛ばし、武器はポールウェポン、というのがなかなか格好いい。 口のデザインを見ると虫系っぽいですが、ムカデとかでしょうか。
 長物を振り回すネギに苦戦するキバは、ガルル召喚。ガルルセイバーでネギを追い詰めるが、そこへ名護さんが姿を見せ、その間にネギは逃亡してしまう。 ……名護さんは今のところ優先順位が〔キバ >>> ファンガイア >>>>> 恵の安全〕なのですが、 それでいいのか(笑)
 名護にキックを入れられたキバは一目散に逃走。(あー……やばいやばい、名護さん……)と、キバ状態で、素の渡の声が入ったのは、 劇中初でしょうか。興奮剤、切れたのか。
 負傷したネギは、レストランへと帰還。
 「待っていろ私の可愛い執事達よ。もうすぐ甦らせてやる」
 そう呟くネギが見つめるのは、地下に並んだ五つの棺であった……。
 ファンガイアが人間を襲うのが純粋な捕食で、余計な殺人は基本的にしないというのは、貫かれていて面白い所。今回に関しては、 青いもやもやが集まっている描写があり、いつもの捕食とは多少違うようでありますが。
 1986年――喫茶店の常連客の前に立つガルルさんは、「いいコーヒーを飲んだ人間からは、いい匂いがする」と狼化すると、 常連客を襲撃、その牙の餌食とする。

 真犯人だった。

 ガルルさん、ざっくり人間を食い殺すという、けっこうハードめの描写……その調子で常連客をペロリといただいていると、 店、潰れないか。
 というか最終的には、「いいコーヒーを作る人間からは、いい匂いがする」と、寂れた店のマスターをいただいて終了、 という伝承生物みたいな存在なのでありましょうか。
 衝撃の展開から、次回へ続く。
 ここまで少々、演出陣がやりすぎだと思ったのか、今回は田崎監督が抑えめに演出。 ゲストキャラの髭伯爵が雰囲気のある好キャスティングという事もあり、落ち着いた感じでまとまりました。このぐらいの路線の方が好み。

◆第8話「ソウル#ドラゴン城、怒る」◆ (監督:田崎竜太 脚本:井上敏樹)
 今回の蘊蓄は、世界三大料理について。
 1986年――会のネーミングにこだわりがあるらしい嶋は音也の適当な発言に机を叩き、 真犯人は今日もコーヒー一杯1万円を払って出て行く。…………常連客の10人や20人が行方不明になっても、 しばらくは潰れずに保つかもしれない。
 「男の後をつける女は、スリか或いは、恋をしているかのどっちかだ」
 「馬鹿言わないで」
 ガルルの護衛を続けようと尾行するが、挑発されるとすぐに出てくるゆりさん(笑)
 だがそこで突然、ゆりが物陰から狙撃を受ける。犯人はいったい何者で、何が狙いなのか……
 「安心しろ。俺が守ってやる。俺は荒波を防ぐ防波堤のように、役に立つ、男だからな」
 そして音也が、役に立つ日はやってくるのか。
 2008年――喫茶店では今日も恵と名護が盛大に揉めていた。意を決した渡は、尊敬する名護さんの事をどうして恵が嫌うのかを問う。
 「……あの男は、名護啓介は、自分の父親を死に追い込んだのよ」
 かつて名護は、政治家であった自分の父親の書類上の些細なミスを告発。それが元で汚職疑惑が取り沙汰される事になった名護の父は、 自殺に至ったのであった……。
 1986年――今度はゆりを警護する、と妙な対抗意識を燃やす男2人だったが、ゆりに話しかけてきたナンパ男を一方的にしばいて、 音也は逮捕の危機に。ドタバタの間にガルルは新たな犠牲者をその牙にかけ、意を決した音也は自ら囮になろうと、 苦手のコーヒーの一気飲みを試みる。
 「これ飲み残したら、しばくよ」
 どんどん怖くなっていく、マスター(笑)
 そして大量のコーヒーを一度に飲み干した音也は……倒れた。
 2008年――恵から聞いた過去について、名護に尋ねる渡。
 「親といえど、罪は、償わなくてはならない」
 「でも、小さなミスだったって……」
 「ミスは、罪だ。罪は許されない」
 回想シーンでは、告発を受けて怒れる父親の後ろで名護さんが正座しており、極めて厳格な家庭だったのか、 和やかとは言い難い親子関係であった模様。そして殴りかかってきた父と掴み合いになった際に、 父親の背広のボタンが千切れて名護の手に残った事から……名護さんは変な性癖に目覚めたのであった。
 キャラ付けの為の特徴を、過去のトラウマ的出来事と繋げたのは、らしい所。また、名護と父親の関係は、 親への想いが強い恵と渡との対比となっているのかと思われます。
 1986年――苦手なコーヒーを大量に飲んでぶっ倒れた音也を店に放置して帰路に着いたゆりは、半魚人と遭遇。
 「ねえねえ、一人歩きは危ないよ」
 陽気で無邪気な感じの割には、問答無用で口から水弾を飛ばしてくる半魚人。 ゆりの見ていない背後で音也が水弾の餌食になったりしたものの、最終的にはガルルさんがゆりを助けて追い払う。……が、 ゆりが気絶した後で、人間の姿で顔を出す半魚人。
 「どういうつもり? どうして人間を助けるの? ねえねえねえ?」
 「俺に考えがある。任せておけ」
 「もしかしてさ、喫茶店のお客さんを襲ってたのって、あんたでしょ。ねえねえ」
 「ああ、だがもう止めだ。ばれたら都合が悪い」
 顔見知り……とまでは断定しかねる台詞ですが、少なくとも同属意識はある模様の2人。なにやら、 ガルルさんにはガルルさんの思惑がある様子。
 2008年――ここから先は、正直かなり雑(^^;
 レストランで鍋の中を覗いた渡は、「この色、この艶、もしかしてバイオリンに使えるかも」と、スープをおたまで拝借して逃走。 渡の、浮き世離れ素っ頓狂芸術家キャラとしてはありかもしれませんが、前回今回と、接客業で社会に対応していただけに、 どうにも発動の都合が良すぎます。その辺りを納得させる仕込みが弱い。
 途中で出会った恵が家にやってきてようやく渡の職業を知る所となり、スープをニスに混ぜてバイオリンに塗ってみたところ、 何故かバイオリンが発火。そして家に飛び込んできたダンディシェフによってスープは回収され、渡はバイトをクビになってしまう。 あまりに怪しい……と恵に自ら協力を申し出た渡は、妙な変装でレストランへ。 これを盗み聞きしていた静香が派手なドレスで恵に取って代わり2人は客としてレストランに入るが、何か面倒くさくなってきたのか、 いきなり正体を見せるシェフ。
 今日もぼてくりまわされる恵さんは、遂に水落ち。
 静香を逃がした渡はキバに変身し、ネギファンガイアにキックを決めるキバットさん。続けてキバの攻撃で大ダメージを受けたネギは、 「今まで溜めたライフエナジー、それに私の命を合わせる。今こそ甦るのだ、我がしもべたちよ!」と自ら消滅するが、 屋敷の地下で棺の蓋が開き、下僕ファンガイア達のエネルギーが合わさって巨大な怪物が出現する。
 これに対してキバットさんがキャッスルドランを紹介し、いきなりの怪獣大決戦。
 しかしキャッスルあっさりやられた? と思ったら、海から小ぶりな2号機が出現し、パイルダーオンして再起動。 火球とミサイルで怪物を滅多打ちにすると、最後はキバが火球で加速しながらのキックで撃破する。
 怪物出現から怪獣大決戦まで、全てがいきなりすぎて意味不明(^^; 特に悪いのは、“物語”に繋げる気が全く見えず、 ただ玩具を出す為の展開に終始してしまっている事。ある程度いきなりでも、話の流れに組み込まれていればいいわけですが…… フォームチェンジもそうでしたが、あまりにも、ギミックを劇的に見せようという意識が感じられません。 全体として面白くないわけではないのだけど、今作の、非常に良くない部分が露骨に出ました。
 1986年――
 (ゆり、俺にはわかる。おまえはもうすぐ俺を愛するようになる。おまえに捧げるぜ。この、メロディ)
 バイオリンを奏でながら、音也は、完全にストーカーな妄想にふけっていた。
 一方、愛しのゆりさんは、とうとうガルルさんとハグ。
 仮にその気になっても、いきなり抱き付くような性格にも思えなかったのですが、果たして、本気なのか、何か意図があるのか。 音也はこのまま、モテない空回り男として過去編の主役の座を奪われ、マスター以下の存在意義になってしまうのか!
 そして現在編の空回り男、今回も過去が明かされただけで全く役に立たなかった名護さんは、尊敬される男の座を取り戻せるのか。 次回――今度こそ変身。多分。

◆第9話「交響#イクサ・フィストオン」◆ (監督:石田秀範 脚本:井上敏樹)
 今回の蘊蓄は、バブル期のオークションの話。背後では前回のおさらいでお城が暴れているのですが、あらゆる角度で漂う、 怪獣城に関するどうでもいい感。
 そして主人公も前回の怪獣大戦争など特に何事も無かったかのように、バイオリン作りに苦悩していた。
 本人にとってはどうでもいい事なのかもしれませんが、とにかく主人公を始めとして誰も、 戦いとそれに関するギミックについて一切言及しないので、作品としてそれらがどうでもいいように見えてしまいます。 実際にどうでもいいと思って作っているのかもしれませんが、やはりそこは、どうでもよくない事にしていただきたい。
 これが戦闘シーンそのものと怪人に対して一切の愛が無くなると『ブレイド』前半になるわけですが、 今作は怪人とアクションに関してはやる気があって、しかし物語と戦闘関係のギミックを繋げようとする意志は非常に薄いという、 歯車が幾つか欠けた状態。物語そのもののギミックが非常に凝っているだけに、どうにもこの偏りが、見ていて落ち着きません。
 1986年――ガルルさん、素晴らしき青空の会に就職。
 意気揚々とやってきた音也は改めて入会を拒否され、喫茶店の全員からゾウリムシのような扱いを受ける。
 2008年――悩める渡の為に、一体どういうコネを駆使したのか、女子高生が高名なバイオリン修復師・大村を紅家に連れてくる。
 「君は、これと同じものを作ろうとしてはいけません。君は、君のバイオリンを作ればいいんです。君にしか作れないものを」
 一度はバイオリンは1人で作りたい、と告げる渡だったが、父の遺したバイオリンを見た大村の言葉を聞き、 改めて弟子入りを志願する……。
 1986年――ブラックスターというバイオリンを落札した者が次々と謎の襲撃を受けており、 ファンガイアの仕業ではないか……とゾウリムシに情報を流す嶋。
 嶋いわく「面白いから」音也へ情報提供を続けているそうですが、 命がけの状況に何のバックアップもなく「面白いから」他人を放り込むって、この人、ポンコツとかガラクタ通り越して、 吐き気のする本物の悪なのではないだろうか。
 また、2008年では既に名前の出ているライダーシステムについて初の言及があり、この時代では開発中。 ゆりがイクサの装着者を目指しているという発言。
 2008年――母の思いを引き継ぎたいのか、イクサの装着者を目指す恵が名護の追い落としを画策していた。
 「イクサを纏う者はイクサ自身が決める。文句を言うなら、イクサに言いなさい」
 紅家では、大村が渡にバイオリンの作成を指導していたが、女子高生がコーヒーをひっくり返した騒音に苦しんだ大村は家を飛び出していってしまう……。
 1986年――ブラックスターを競り落とすべく、秘密オークションに参加するゆりとガルル。だがそこへ、 天狗のお面をつけた音也が乱入し、競売をエキサイトさせていく。その結果、価格は20億円までつり上がり、 連絡を受けた嶋の指示は……「黙らせろ」。ガルルさんが実力行使で音也を気絶させ、ブラックスターは20億とんで1円で落札される。
 ライダーシステムを開発していたり、20億円ぽんと出せたり、表に出ている関係者が極端に少ないセル構造の組織形態っぽかったり、 セルリーダーが冷酷非情だったり、やたらに組織の名前にこだわったり…………今わかった、素晴らしき青空の会は、間違いなく 、悪の秘密結社だ。
 ガルルさんに警護されながらブラックスターを手にファンガイアを待ち受けるゆりは、自信満々の表情でバイオリンを弾き始めるが…… 凄く、下手だった。そもそも、弾き方が間違っている(笑)
 「俺には聞こえる、そのバイオリンの悲鳴がな。おまえにそれを持つ資格はない。こっちによこせ」
 音楽が絡んだ事で久々に真剣な表情で登場する音也だが、ガルルさんのパンチ一発でノックダウン。 場所を移してひたすら冒涜的な音を奏でるゆりの前に再び現れるが、そこにカエルファンガイアも出現し、 ざっくりと海へ投げ込まれてしまう。駆けつけたガルルさんがカエルと戦闘を始め、武器を使っても格好良いアクション。
 ゆりと2人でのダブル鞭攻撃も決まるが、カエルの飛び装具でゆりが気絶し、ガルルは狼へと変身。カエルは海に逃亡するが、 その変身を、音也は目撃する……。
 「ねえねえ、いったい何考えてんのさ? 人間なんかと組んじゃって。どういう事。ねえねえねえ」
 そこに現れたのは半魚少年、ともう1人、妙な歩き方の青年。
 「人間は餌だ。ガブリと喰うだけだ」
 「俺の種族はファンガイアによって滅ぼされつつある。おまえらの種族と同じようにな。おまえらもファンガイアを憎んでいる筈だ。 違うか?」
 ここで、ガルルさんがファンガイアでも人間でもない、異種族である事が判明。また、 半魚と新たな男(OPとお城に居る3人目と思われます)も、別の異種族であるとわかりました。 そしてガルルさんがゆりに近づいているのは、打倒ファンガイアに人間を利用する為であった……。
 なるほど、従来ベースとなっている、人間/怪人(今作ではファンガイア)の対立構造だけではなく、 そこに他の異種生命体を絡める事で、“人間も含めた様々な種族”という構図で物語を展開する、というのが今作のもくろみでしょうか。
 2008年――恵は一回だけでいいからイクサに変身させてほしいと名護に定食を奢っておだててみるが、 本職であるバウンティハンターの標的を見つけた名護は途中で退席してしまう。名護が追う標的……それは、 路上ライブの若者に突然殴りかかる大村であった。
 高名なバイオリン修復師にして連続暴行犯で賞金首リストに登録されているって何か色々おかしい気がしますが、 凄く狭い世界での有名人なのか、逮捕と保釈を繰り返している常習犯なのか、警察が居所を掴めないさすらいのバイオリン修復師なのか(^^;
 まあこの世界観におけるバウンティハンターの設定がはっきり語られているわけではないので、逃亡犯を追いかけているわけではなく、 ハンター免許保持者には逮捕特権とかあるのかもしれませんが。
 カエルファンガイアに変身した大村は名護が取り出したナックルダスターから放たれる衝撃波で吹き飛ばされ、キバと交戦。 バッシャーマグナムのダメージで大村の姿となり、それを見た渡も変身を解く、と知らずに撃ち合っていた事を知る即席師弟。 逃げ出した大村の前には再び名護が現れ、カエルになった大村に対し、名護は腰にベルトを巻き付けると、 ナックルダスターをフィストオン。
 割と流暢に喋る事も多い歴代の変身アイテムに対し、イクサベルトは物凄く機械の合成音っぽいのが特徴的。
 そして名護は、光に包まれ、素晴らしき青空のライダー――イクサへと変身する!
 イクサは、白をベースに金色が入り、光沢ブルーがアクセント(下半身は黒ズボン)、と“白騎士”のイメージでしょうか。 顔のデザインも、そこはかとなく西洋甲冑の兜を思わせますし。キバが召喚獣も含めてファンタジーのモンスター寄りなので、 それと対抗するのは、騎士の役目という事か(モチーフは聖職者、との事)。
 「ファンガイア、その命、神に返しなさい」
 顔が割れたら、範囲攻撃の爆炎が発動。
 予告で期待させた割には、出てきた所で終わってしまいましたが(ままある話)、次回、その真価が発動する――多分。

◆第10話「剣の舞#硝子のメロディ」◆ (監督:石田秀範 脚本:井上敏樹)
 イクサとカエルが戦ってるが、とりあえず、バイオリンに塗るニスの話(おぃ)
 カエルを一方的に撃ちまくるイクサだったが、渡が飛び込んできてカエルをかばい、カエルは逃走。
 「貴様、自分が何をしたのかわかっているのか」
 変身を解く名護を見て渡が驚かないのですが、どこかで変身を見ていたのか(^^; まあ実際、相手が名護だとわかった上でもないと、 一緒に蜂の巣にされかなねい実弾の前に飛び出せない気はしますが。
 平謝りする渡だが、「もういい。君の顔は二度と見たくない」と、クビ宣告。
 前回のアルバイトに続き、立て続けのクビで真人間への道のりがまた遠のきましたが、名護さんの弟子、 は既に踏み出す方向を間違えている気もするので、これはむしろ、真人間に近づいたのか。
 1986年――音也はゆりにガルルさんの正体について話すが、当然のように信じて貰えない。
 「これではっきりしたな。おニャン子ファンには、化け物はいない」
 2008年――お互いの正体を知りながらも、引き続きバイオリン作成に励んでいる、どこかトんでる2人。 新しい師匠が手に入ったから名護さんを裏切ったのかと思うと、渡がけっこうドライです(おぃ)
 「もう22年間、人間のライフエナジーを吸っていません。これは本当です」
 大村が人を襲うのを辞めた理由、それは、ある人物との約束であった。
 かつて自らの魂を込めてブラックスターというバイオリンを作り上げた大村であったが、名器の評判があまりに高まってしまった結果、 ブラックスターは投資目的や道楽で購入した資産家の手を渡り歩く事になり、大村の満足する弾き手に巡り会う事がなかった。 1986年におけるブラックスター所持者の襲撃事件は、「俺のブラックスターに触るなぁぁぁ」的な、大村の犯行だったのである。
 長寿ゆえに偏執狂の傾向が強まるのかもしれませんが、自分の作ったバイオリンの所有者が気に入らないから襲撃、 と今回のファンガイアは変態捕食者ですらなく、キチガイ芸術家路線(笑)
 1986年――カエルの襲撃を受けたゆりをかばってしばかれた音也は、手癖の悪さを発揮してケースの中身をすり替え、 ブラックスターをまんまと入手。
 「ファンガイアのくせに、なぜファンガイアと戦う」
 「俺はファンガイアじゃない。ま、似たようなもんだがな」
 「ゆりには指一本触れさせない。俺の命に替えてもな」
 ガルルとのやり取りで、たとえ自分の言葉が信じてもらえなくてもゆりを守り続ける、と宣言する所は久々に格好いいのですが、 その実態は意味不明な発言を繰り返すストーカーなので、ゆりさんの男運の悪さがひたすら輝きます。
 そんな音也の元に大村が現れ、ブラックスターを弾くように迫る、が……
 「バイオリンには弾くべき時と聴かせるべき相手がいる。その二つとも、俺が決める」
 そこで大村が音也のバイオリンを修理し、その代わりに音也が演奏を聴かせるという取引が成立し、 音也は自らのバイオリンを奏でる――。

 
「あの男の演奏を聴いて、私は変わった」

 2008年――大村がウォークマンで聴いていたのは、音也の演奏だった。
 「この曲を聴いていると、人を襲おうとする衝動を、抑える事が出来るんです」
 「凄い……なんて優しくて、暖かいんだ。こんな演奏が出来るなんて、まさか……」
 「そうです。私が、この演奏を聴いたのも、まさにこの場所だった。22年前、私は約束したんだ、君のお父さんと」
 今作のキーである音楽を軸に過去と現在が繋がる、ここの流れは今回良かった。出来ればもう少し、 ここまでの物語で音也の演奏の説得力を積み上げておいて欲しかった所ではありますが、そこは主人公特権で誤魔化せる範囲か。
 1986年――
 「ようやく、ブラックスターを預けられる人間を見つけた。どうか、大切にしてやってくれ」
 「こいつは俺が持つべきものではない。こいつは俺を求めていない。悪いな」
 2人のキチガイは芸術で繋がり、大村はもう人間を襲わない事を約束。それを信じた音也は、 大村を襲撃したゆりとガルルに消火器で立ち向かい、大村を逃がすのであった。
 「俺は生まれ変わる。紅音也。これからの俺は、おまえの音楽の中で生きよう」
 大村は重しをつけたブラックスターを湖に沈めると、音也の音楽を胸に何処かへ姿を消す……。
 2008年――大村の話を聞いた渡は、それとなく名護を説得しようとしていた。
 「ファンガイアっていったい何なんですか? ファンガイアは、全て人間の敵なんでしょうか」
 「奴等は人類の天敵だ。そう言えばわかるでしょう」
 「でも、人間を襲わないファンガイアもいるかも。心の優しいファンガイアだって」
 「あり得ないな。悪は悪だ」
 だがそれは名護の正義に対して火に油を注ぐ事になり、激高した名護は「俺は常に正しい。 俺が間違う事はない!」と器の小さい台詞を吐き捨てて、去ってしまうのであった。
 その頃、大村は工事現場の騒音に苦しんでいた。
 どうしてわざわざ騒がしい所へ行くのか(笑)
 若干、「ウォー、ダメだー、苦しいー、人間襲いたくなってしまうー」というプレイを楽しんでいる気配さえあり、 この人もこの人で、凄く、駄目な人です(笑) 基本、キチガイ芸術家だから仕方ないけど。
 「ほぅ、ファンガイアが音楽をたしなむとはな。無駄なことを」
 そこへ現れ、大事なウォークマンを踏みつぶす名護さん。
 一方、名護と決裂した渡は、バイオリン製作に勤しんでいた。
 「僕、凄く嬉しいんだ。ファンガイアでも、あんな素晴らしい人も居るんだってわかって」
 素晴らしい……かな?(笑)
 その時響く、ブラッディローズ。動揺しながらバイオリンを作り続けようとするが、キバットにせかされて出撃した渡が目にしたのは、 工事現場で暴れるカエルの姿であった。制止の声も届かず、やむなく変身したキバはカエルを必死に止めようとするが振り払われてしまう。
 ダッシュから振り返ってジャンプキックとか、凄いぞカエル。
 「やめて……やめて…………やめてぇ!」
 キバ、久々の月面野球キック。故意に外されたその一撃に、若干の正気を取り戻したらしいカエルは逃走。 ここで流れるBGMは、渡の哀しみとシンクロしていて格好良かった。
 思い出の湖畔にまで逃亡した大村だったが、そこへ現れた名護がイクサ変身。イクサのテーマ曲も非常に格好良く、 キバの音楽は全体的に好きなのですが、今回はうまく使われました。
 「ファンガイア、その命、神に返しなさい」
 今日は剣を取り出したカエルとの斬り合いの末、キバと同じようにお薬を注入したイクサは、 背景にフレアを背負った何か凄い勢いの必殺剣・イクサダイナミックによりカエルを成敗。
 イクサベルトの音声は、「フィストオン」以外、いまいち何を言っているのかわからないのが困りもの(^^;  最初に左手で握ったナックルダスターを右の手の平に当てる静脈認証? も「レジイ」と聞こえるけど、何の事やら。
 必殺剣を決めたイクサは満足して立ち去り、爆死寸前の大村の元へ駆け寄る渡。
 「君なら出来る。自分の力を信じなさい。君の中には、あの、偉大なお父さんが住んでいるんですから」
 大村/カエルファンガイアは湖に足を踏み入れて砕け散り、その魂は、ブラックスターと共に永遠に湖底に眠るのであった……。
 ようやく物語の構図と軸が見えてきた事もあり、今回は面白かったです。色々とっちらかっていた過去編で音也が主役である理由と、 ガルルさん達の登場が物語の中で意味を持ち始めました。……少々、引っ張りすぎた感じはありますが(^^; まあただ、 同時に現在編で渡とファンガイアとの交流、対立存在としての名護/イクサを出さなくてはいけない為、 あまり最初からは出来なかったのでしょうが。
 渡にしろ音也にしろ、感性の人であって、意図的に非論理な話の繋がらない部分を盛り込んでいると思われる今作ですが(やりすぎて、 幾らなんでも無茶な所が多々あるのですが)、その“理屈でない部分”が、過去と現在で対立の根として見え隠れてしてきたのは面白い。
 まあ、渡もここまでのファンガイアは割と問答無用で滅殺しているわけですが、大村との出会いが如何なる変化をもたらすのか、 そして名護さんはこのまま、独善の人になってしまうのか――。
 大村さん役はどこかで見た顔だなぁ……と思ったら、スマートブレインの社長か。あと、恵さんが今回、初のお休み。
 それから、監督ローテ1巡(1〜6話)した所で、やりすぎだ、という話になったのか、前回に比べると演出は抑えめ。 オークションのシーンは少し遊んでいましたが、シーン的にはやりすぎないバランスで面白くなったと思います。 全体としてこのぐらいのトーンで、少し遊びを入れる、ぐらいが演出の方向性としては有り難い。

◆第11話「ローリングストーン#夢の扉」◆ (監督:舞原賢三 脚本:井上敏樹)
 知っているか!
 ロックンロールとは、1950年代半ばに現れた、アメリカの大衆音楽である。その起源は、 ソウルミュージックとケルト音楽の融合だといわれている!
 今回の最注目ポイントは、静香、キバットとごく普通に話す。
 以前から、キバットは今ひとつ隠れている感じがしないけど、静香はどこまで認識しているのかという疑問がありましたが、 今回初めて静香とキバが同じ画面に入って会話し、 静香は少なくとも喋るメダルコウモリであるキバットについては認識している事がハッキリしました。
 謎のコネクションも持っているし、凄く大物なのかもしれない、この娘。
 1986年――麻生ゆりはその母、あかねの墓参りをしていた。
 あかねはイクサの設計者であり、素晴らしき青空の会の創設メンバーでもある嶋の同志だったが、 2年前にファンガイアに襲われて死亡していた……という所から、ゆりの回想シーン。
 …………え、待って、ゆりさん、2年前、女子高生だったの?!
 瀕死の母に駆け寄るも、伸ばした手が届く寸前で、ライフエナジーを吸い尽くされた母の手が硝子のように砕け散る、 というのは印象深い。
 職員を皆殺しにして研究所から走り去ったバイクのファンガイア……ゆりがファンガイア撃滅に力を傾けるのは、 母の仇への強い憎しみ故であった。
 と、イクサと絡めてゆりの背景がようやく判明。そしてますます、悪の秘密結社以外の何物でも無くなっていく素晴らしき青空の会。
 2008年――
 「凄い……! なんなんだこの音楽」
 バイオリン作りに悩んでいた渡、ロックにカルチャーショックを受け、正座(笑)
 公園で練習をしていたロッカーと仲良くなり、借りたエレキギターを練習してほどほど上手くなった渡は、 初ライブを前にメンバーに逃げられてしまったロッカーに「俺と一緒にバンド組まへんか!」と誘われる事に。
 父さん、母さん、遂に、友達が出来ました。
 「じんじん来るで」が口癖の気のいい関西弁ロッカーは、実はファンガイア、ではない事を祈らざるを得ません(^^;
 「人呼んで、嵐を呼ぶドラマー、野村静香!」
 で、女子高生が新たなスキルを披露しバンドに参加。肩書きがえらく古いですが、この娘、 戦前から人間社会に溶け込んでいるファンガイアとかではなかろうか(もう何も信用できない)。
 名護さんと和解した渡は、
 「キバを探してほしいんだ。俺はこの手でヤツを倒さなければならない」
 と、名護から頼まれる。果たして、名護はどうしてそこまでキバにこだわるのか。
 「俺がキバを倒したい理由は一つだけだ。ヤツを倒す事で、俺の正義が完成する。そう、絶対正義がな」
 ……何か濃い自分ルールが設定されている事だけはわかりました(^^;
 めぐみをストーキングする蜘蛛男が再び現れ、名護はイクサに変身。
 「その命、神に返しなさい」
 1986年――母の形見ともいえるイクサシステム完成の報が入り、ファンガイアにぼっこぼこにされても、 ゾウリムシに付きまとわれても、ひたすら上機嫌のゆり。だが好事魔多し、 突然ファンガイアの襲撃を受けて危機に陥った彼女を救ったのは、そのイクサ!
 「どうして……。どうしてイクサが。あたしの……イクサが!」
 シャイニングイクサフィンガーが炸裂し、1986年で初のファンガイア撃破。 完全にイクサ1986の噛ませ犬という事でか見せ場も何もないファンガイアでしたが、ハサミムシ?
 なおこの間、音也はずっと気絶していた。
 2008年――イクサに圧倒されて逃げ出した蜘蛛ファンガイアの前に立ちはだかるキバ。イクサはバイクで蜘蛛を吹き飛ばすと、 キバへとその剣を向ける。名護さんの脳内では「キバこそ人類最大の敵」という設定のようですが、今回も徹底的に、打倒キバ優先。 イクサは銃の連射でキバを追い込むと、バイクに乗りながらの擦れ違いざまの一閃イクサエンドを炸裂させ、キバは海へと落下する……。
 「勝った……俺はキバに勝った……勝ったんだぁぁぁぁぁぁ!!」

◆第12話「初ライブ#黄金のスピード」◆ (監督:舞原賢三 脚本:井上敏樹)
 OPに、イクサ追加。
 イクサエンドを受けて海に落ちたキバは命は取り留めるものの、左腕を負傷。このままではライブが……て大事なのそこ?!
 渡は根本的に、後ろを振り返らなすぎるのですが、これは、血統的問題なのか。
 1986年――ゆりの前で変身を解いたイクサの中身は、次狼であった。ゆりは嶋に抗議するが「イクサは人類のものだ」とにべもなくあしらわれ、 きーっ、この泥棒猫!みたいな捨て台詞を次狼に叩きつけて喫茶店を出て行く。
 素面で「人類」を神輿にできる嶋さんは、キチガイか宗教家か極悪人の、どれか或いは全て。
 2008年――名護はキバを撃破した事を嶋へと報告。
 「後はファンガイアを全て殲滅するのみ。その為にはもっと、青空の会を大きくする事を提案します。私が組織の長となり、 ゆくゆくは世界の在り方を管理したいと考えています。いかがですか?」
 「こりゃまた、大きく出たもんだな」
 急に誇大妄想じみた発言が出てきましたが、まあ、素晴らしき青空の会=悪の秘密結社だと考えれば、 むしろごく自然と言えましょう。
 天敵の撃破の次は人類の管理です。当たり前です。
 左腕の怪我の事を言い出せない渡はバンドの練習が上手くいかず、ロッカーと一緒に芝生に転がっているのは、 なんだか友達ぽくていい感じ。そこに上機嫌で現れた名護は二人にミネラルウォーターを恵み、そこで渡の怪我が発覚。 首に巻いていた変なストールを躊躇いなく包帯代わりに使い、久々にいい人アピールをする名護さんだが、 エレキギターを見て顔をしかめる。
 やっぱり、ロックは悪魔の音楽なのか。
 水のお礼に、とエレキをデケデケいわせ始めたロッカーを、実力行使で殴り飛ばして歩み去る名護さん……多分、 「おっさん」呼ばわりが許せなかったので、議会は満場一致で名護さんの無罪を認めようと思います。
 人間を襲う蜘蛛を断罪しようとしたイクサは、キバが生きているという情報を得て、蜘蛛を脅しつける。
 「貴様、命が欲しかったら俺の言う事を聞きなさい」
 蜘蛛は弱体化が激しすぎて、すっかり三下属性になりつつありますが、変態の行き着く先はどこなのか。3回目の登場になりますが、 ネタ的に引っ張って楽しい、というキャラでもないのが困りもの。
 1986年――自棄になったゆりは音也をデートに誘い、ハイテンションなゆりに振り回される音也。ゆりの悲しみを知った音也は、 イクサをゆりに渡してやってほしい、と次狼に土下座を敢行。続けてゆりも、並び土下座。
 「次狼……お願い、イクサをちょうだい、あたしに。お願いだから。イクサの力があれば、 あたしは…………きっと……お母さんの手を握る事ができる」
 「それは違うぞ、ゆり」
 並んだ土下座の前で不意に倒れた次狼は、そのまま病院に運ばれてベッドに横たわる。イクサは未だ完全ではなく、 装着者の身体に負担の大きすぎるシステムだったのだ……て、さらっと人体実験したぞ、 この外道。
 ベッドの上の次狼は不完全なイクサで戦う自分のサポートをゆりに頼み、いい雰囲気レベルが上昇する二人。
 その頃音也は、画面のどこにもいなかった。
 2008年――渡の代わりにバンドに参加する事になった恵が蜘蛛にさらわれ、渡はキバに変身して駆けつけるが、 そこに現れる名護さん。描写としては匂わせるにとどまっていますが、これは名護さん、 蜘蛛(恵)を囮に使って一線踏み越えてしまったという事なのか。
 名護のストールが飛び去ったのは、二人の決裂か。バイクにまたがったイクサに対抗してキババイクも久々に登場し、 新しいお薬を注入するキバ。
 「凄いのが来るぜぇ!」
 お城から飛んできた顔面のようなパーツがバイクと合体し、マシンゴウラム化。そのまま普通にバイク対決なら盛り上がったのに、 キバの方がCGになってしまい、非常に残念。
 最後は空中でライダーキックがぶつかり合い、吹き飛んだイクサの変身が解けて名護さんは泥水の中を転がる羽目に。
 「馬鹿な……俺が、イクサが負けるなんて! 嘘だ! 嘘だぁっ!」
 半分女子になってしまったイケメンズの初ライブでは、渡がなんとかボーカルを務め、また一つ、真人間への階段を上るのであった。 しかし数話前に、「自宅」で「得意のバイオリン」で「近所の人」相手のミニコンサートでも大失敗した渡が、 ロックバンドのボーカルというのはレベルアップが飛躍的すぎて、いいシーンとは言い難くなってしまいました(^^;
 ロッカーとおずおずと友達になっていくくだりは面白かったのですが、 渡のコミュニケーション不全は急に階段すっ飛ばしてエレベーター使うので、今ひとつ積み重ねのドラマが成立していません。 嫌々書いている感じというか、どうも物語の軸として成立していないのが、現代編の気になるところ。
 ところで今回のサブタイトルに「初ライブ」とありますが、このバンドネタは引っ張るのか。
 演出面では前回、変態蜘蛛でかっとばした舞原監督も、今回は控え目で、全体としてやり過ぎ禁止令が出た模様。今作は極端な話、 流れが停滞してきたら過去編を挟むと空気が変わるので、全体としてはテンポ良くカツカツ進んで見える、という特性があるのですが、 もう一押し、全体の安定感が欲しい。

→〔その3へ続く〕

(2014年9月3日)
(2017年9月17日 改訂)
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