■『仮面ライダーキバ』感想まとめ1■


“ウェイクアップ! 運命の鎖を解き放て――”


 ブログ「ものかきの繰り言」の方に連載していた『仮面ライダーキバ』 感想の、まとめ1(1〜6話)です。文体の統一や、誤字脱字の修正など、若干の改稿をしています。

戻る

〔まとめ2〕 ・ 〔まとめ3〕 ・ 〔まとめ4〕 ・  〔まとめ5〕
〔まとめ6〕 ・  〔まとめ7〕 ・ 〔まとめ8〕




◆第1話「運命#ウェイクアップ!」◆ (監督:田崎竜太 脚本:井上敏樹)
 1986年――葬儀会場で棺の中から目を覚まして、蜘蛛の怪人と化す男。
 パイプオルガンがBGMとして響く中、ステンドグラスを体表面にあしらったような怪人のデザインが格好いい。 列席者達が次々と襲われる中、怪人に燭台を投げつけ、戦いを挑む喪服の女。
 「神は、過ちを犯した。おまえのようなファンガイアを此の世にあらしめた過ち。あたしがただす!」
 女は、分割された刃が鞭状にしなって伸びる、みたいないわゆるガリアン・ソードっぽいファンタジーな武器で怪人に戦いを挑むが、 蜘蛛怪人は姿を消す。
 2008年――協会の扉に残された蜘蛛怪人の爪痕に触れる1人の青年……。
 完全武装で花粉症?
 はさておき、かなり格好いいアバンタイトル。
 パイプオルガンの響く中、鞭状の特殊武器で怪人に挑む女戦士、と一風変わった入りで独自色を強く押し出す事に成功。……まあ、 前年がイマジン祭だったので、雰囲気の変更はかなり意識したと思われます。そこから繋がるOPの前奏も格好いい。
 OP最後の怪獣城は微妙に不安をあおるけど(笑)
 マスクとゴーグルで完全武装の青年は、紅渡。魚の骨を回収して歩く謎の変質者であり、 屋敷から漂う人でも埋めているのではないかという異臭で警官を呼ばれる近所迷惑な困ったさんであり、 装備を外すと激しく苦しむ自称「この世アレルギー」の社会不適合者であった。
 ただし、女子高生に優しくされているので、特に人生に困っている風ではなかった。
 一方、1986年――…………2年続けて、面倒くさい基本設定のパイロット版をやらされているなぁ、田崎監督(^^;  そういえば、ミラーワールドを出たり入ったりする『龍騎』の1・2話も田崎監督だったので、面倒くさいパイロット版担当なのか、 田崎監督(笑)
 「君は、バブルという言葉を知ってるか? 今の日本の異常な好景気をそう言うらしい」
 『島○作』的後知恵展開(笑)
 そのバブル景気に乗って絶好調の不動産会社社長。彼の周辺で、5人の秘書が行方不明になっているという。
 「ファンガイア……」
 2008年――22年後の同じ喫茶店で、食事を終えた皿からこっそり魚の骨を回収していった件を問い詰められている変質者。 どうやらモデルらしいその女に、強引に眼鏡とマスクを剥がされ、深呼吸させられる。
 1986年――ターゲットの社長をマークしていた女は、馬のファンガイアである社長のお食事を邪魔したところ、 普通にボディガードに追われる(笑) まあ、はたからみると、青年実業家への襲撃犯なので仕方ない。 通りすがりの男と恋人のふりをしてボディガード達をやり過ごすが、「人生は短い。けど、夜は長い」とナンパされ、 突き飛ばして社長を追跡。しかし馬社長との戦闘中に何故かナンパ男が乱入してきて、結局社長を逃がしてしまう。
 「寂しかったろう。1人にさせて、悪かった」
 「あんた……何? 自分が何したかわかってる? この、馬鹿!」
 ここまで、鞭使いの女が一番言動も行動もヒーローっぽく、過去も未来も男はわけがわからないという、 かなりひねった展開。
 まあ、この女もやっている事けっこう酷いので若干の自業自得な感じも漂うのですが、 よりによって物凄い変質者を釣り上げてしまった大当たり感。
 そんな中で、馬社長の車を強襲するバイクアクションはかなり気合いが入っていて格好良かったです。
 また、倉庫内で1階から、2階通路の馬社長の腕に鞭を引っかけ、その高低差のあるアクションを引いたカットで撮ったのは面白かった。
 2008年――モデル女の強制深呼吸により、もしかして自分は真人間なのではないかと気付いてしまった社会不適合変質者(通報案件)は、 風呂場で体育座りをしていた。
 「問題は、実は僕がこの世アレルギーじゃないかもしれないって事なんだ」
 「それならそれでいいじゃねえか」
 「そうかなぁ……こんな汚れた世界の空気を吸っても生きていけるってことは、僕も汚れた人間だったんだ。そう思うとなんか、 ショックで」
 「あほ」
 話し相手は、こぶし大のメダルっぽい形をベースにしたコウモリ的生物・キバット(CV:杉田智和)。前作の人気を受けて、 ユーモアもシリアスも出来る相棒役という所でしょうが、それでアメデオ・モディリアーニの描く女性の絵が好きだ、 とか設定付けてしまう辺りが井上敏樹っぽい(笑)
 ご近所を騒がせている異臭の元は、魚の骨その他を煮詰めたものであり、バイオリンのニスの材料……の実験であった事が判明。
 「一体いつになったらこんな色が出せるのかなぁ……」
 部屋に飾られたバイオリンを見つめる主人公……と、OPで強調されていたバイオリンがキーアイテムという事なのか、 ここで本編にもバイオリンが登場。主人公がバイオリンを奏でるのに合わせバイオリンソロ…… と音楽もクラシック調のものが使われています。
 その頃、22年後の世界にモデルとして生き延びていた馬社長が、ひっかけた女を襲おうとしていた。
 ここで、急に緞帳が落ちて暗闇になる演出も格好良かった。
 「よく来てくれました……歓迎しますよ。君の美しさに、乾杯」
 しかしファンガイアは、こういう変態ばかりなのでしょうか。
 否が応でも、某黒岩都知事閣下を思い出さずには居られないわけなのですが。
 知っているか! 『超光戦士シャンゼリオン』は1996年に放映された特撮TVシリーズであり、全39話中、 全37話の脚本を井上敏樹が執筆したという。なおヘルプで入って第30話を書いた木下健が荒川稔久の変名であるのは、 当時は禁則事項だったようだが、現在は公式に認められている……という!
 馬社長に食われるかと思われた女だったが、至近距離からの銃弾が馬に炸裂。
 「残念だったわね。人間だったらデートぐらいしてあげても良かったのに」
 「貴様、何者だ」
 「神は過ちを犯した。あなたのような存在を赦した過ち。あたしがただすわ」
 どこかで聞いたような台詞と共に、女は銀の小銃を構える。
 なおここでようやく、この女が、変質者に魚の骨を取られて怒っていた女と同一人物だと気付きました(^^;  初回から登場人物が多すぎて、髪型とか変えられるとさすがに何が何だか(Youtubeの画質と画面の大きさの問題もありますが)。
 そして……まるでその戦いに呼応するかのように、紅家に飾られたバイオリンの弦が自然に震え出す。
 渡の世話を焼く女子高生がキバットの存在を知っているのかどうかはまだ描写されていませんが、キバットが顔を出し、場面変わると、 倉庫街にやってきた渡、キバット変身。特殊装備を駆使しつつも追い詰められていたモデル女と馬ファンガイアとの戦いに、割って入る。
 キバは動くと鎖がしゃらしゃら鳴るのと、デザインがスマートな割に、体型は筋肉質なのが格好いい。
 1話という事もあってか、戦場ギミックなどを活かし、迫り来る車のボンネットを転がったりと、かなり凝ったクライマックスバトル。
 過去と未来を行ったり来たりする構成の複雑さと話の分かりにくさは意識があったでしょうから、その分、 目を引く為の戦闘には全体通してかなり力が入っています。初回のアクションシーンの凝り方と面白さは、 歴代で見てもかなりのものではないかと。右を向いても左を向いても変質者ばかりだけど、 盛り込まれているアクションがやたらに格好いい、という、実に風変わりなスタート(笑)
 馬ブレードをベルトで受け止めたキバは、「ウェイクアップ!」。
 〔ベルトのパーツをキバットにセット→へーい、ばっちこーいばっち!ファンガイアぶるってるー?のポーズ→ 周囲が闇夜に包まれ空に浮かぶ月→それをバックに大リーグボール2号のフォーム→キバットが右足の鎖を解放→ エビ投げハイジャンプ魔球→飛び蹴り→壁に叩きつけて浮かび上がる紋章→ビルに偽装していた怪獣城が覚醒して飛翔→ 粉砕された怪人の魂?をぺろり〕
 と、物凄く大がかりな必殺キック。

 そして、野球。

 怪人を倒し、満足して帰って行くキバの背に、モデル女は銃を向ける。
 「キバ……!」
 ファンガイアとは何か、キバとは何か、紅渡とは何者か、過去と現在は如何に繋がるのか、ナンパは成功するのか――。 山盛りの謎と変態を抱えながら今、運命が目覚める!
 1986年と2008年、22年の間を置いて過去と未来の同時進行、という大胆な構成で初回から登場人物も多いですが、 テンポ良く進んでそれほどややこしさは感じませんでした。人の顔と名前を覚えるのがあまり得意ではないので、 過去と未来を繋ぐ人物などがあまり出てくるようだと、「これ誰だっけ……?」となるかもしれませんが(^^;  初回の感触としてはかなり上々で、どんな風に転がっていくか楽しみ。

◆第2話「組曲#親子のバイオリン」◆ (監督:田崎竜太 脚本:井上敏樹)
 知っているか! アメデオ・モディリアーニとは、1884年生まれのイタリアの画家である。肖像画と裸婦画を好み、 顔と首を長く描く独特の表現が特徴的である。
 愛好するモディリアーニの解説から入るキバットさん(笑)
 洋画家の解説をバックに前回ラストの戦闘を振り返る、という物凄い入り。
 そのナレーションのまま、キバは背後からの狙撃を弾き、去っていく。モデル女はその写真とキバの登場を上役 (過去に登場した嶋さん?)に報告。家に戻った社会不適合変質者の方では、ニスの実験に失敗。 父親がヴァイオリン造りの名人であった事が明かされ、不在の間に女子高生が勝手に受けたヴァイオリンの修理をする事に。
 1986年――女性ヴァイオリニストばかりを狙うファンガイアを倒す為、 麻生ゆりは次のターゲットになりそうなヴァイオリニストのマネージャーとして密かにその警護にあたるが、そこで、 変質者と再会してしまう。
 「運命って、やつだな」
 ナンパ男の名は、紅音也。かつて有名なヴァイオリニストだったが今は一線を退き、彼女の専属コーチを務めていたのだった。
 嶋(1986)の髪型がなんか不自然だったのは、22年間の歳月の差を出す為か。で、1986年でやたらに体脂肪率を気にしているのと、 2008年でウェイトトレーニングしているのが、キャラクターとして繋がっているという事なのかしら。
 2008年――穴の空いたヴァイオリンの修理に最適な古い木材を探す渡と女子高生は、 蕎麦屋の看板を勝手に切り取ろうとして見つかり、逃走。社会不適合変質者から、まごう事なき犯罪者へと坂を転がり落ちようとしていた。
 にしてもあっさり、マスクとゴーグルは止めたのか(^^;
 むしろどうして、1話であんな無理をしていたのだろうレベル。
 続けて、喫茶店の店頭に飾ってあったテーブルが気に入り持ち去ろうとするが、そこは例のモデル女が常連の喫茶店で、 身柄を確保されてしまう。
 「君、いったいどういう生き方してんの?」
 「渡のお母さん」発言で擁護に回った女子高生も撃墜されて機能停止し、店内が微妙な空気になる中、なんとか口を開いた渡は、 店長に直球でテーブルの天板を無心。……どうやら、知らない人とコミュニケーションを取るのが苦手な天才肌タイプ、 といった感じの模様。
 女子高生はモデル女にごく真っ当な説教くらって黙り込んで涙ぐんでしまうなど、ごくノーマルな世話焼きで、 今のところあまり良いキャラとは言い難いですが、もう少し変化ついてくるといいなぁ。逆に、 涙ぐまれて追撃しきれないモデル女の根っからきついわけでもない、という描写になっているわけですが。
 1986年――コンサート会場から姿を消した女ヴァイオリニストが公園で響かせるヴァイオリンの音色に誘われた男が、捕食される。 女ヴァイオリニストはファンガイアのターゲットどころか、この事件を引き起こしているファンガイアそのものだったのだ。 彼女をガードするつもりでその後を追っていた麻生ゆりは武器を引き抜いて対峙するが、そこに割って入る紅音也。
 「よせ! 俺の為に争うな! 2人同時に、愛してやる」

 馬・鹿・だーーーっ

 何が凄いって、「馬鹿だーーー」としか、ツッコミようがないのが凄い(笑)
 良くも悪くも、世界が一瞬、マンガのコマみたいに静止した、恐ろしい破壊力。
 ヴァイオリン女はタコに変身し、ゆりと戦闘開始。
 公園の噴水池の真ん中にギリシャ風舞台?があるという印象的なロケーションなのですが、噴水池の中で派手な格闘戦。というか、 凄く普通に怪人と格闘戦していて恐ろしい。ゆりの鞭の一撃がバイオリンを壊し、タコはそれを拾って逃走。蜘蛛も馬もそうでしたが、 食事さえ済めば、あまり目の前の敵を倒す事にこだわりは無い様子。
 「やれやれ。これでやっと二人きり。だよな?」
 「あんた、どうかしてんじゃないの?」
 人間からファンガイアへの変貌を目の当たりにしても平然としている音也はゆりからキ○ガイ扱いされるが、「俺は君の事しか、 見ていない」と言いつつ、ゆりがベルトに収めた武器をこっそり奪う手癖の悪さを発揮。
 そして、逃走し、人間の姿に戻ったバイオリニストの前に立ちはだかる音也。
 「許せねえな。おまえ、音楽をなんだと思ってるんだ」
 音也はゆりから拝借してきた特殊警棒でタコ怪人と華麗に戦闘するが、結局は逃げられてしまう。
 2話で多少は背景(というか思考回路)が見えてくるのかと思ったら、むしろどんどん謎になっていく音也ですが、まああれか、 早川健(※『快傑ズバット』主人公)とか静弦太郎(※『アイアンキング』主人公) みたいな生き物だと思えばいいのか。
 2008年――渡が修復したヴァイオリンを受け取りに来たのは、 22年前に麻生ゆりと紅音也が取り逃がしたあの女ヴァイオリニストだった。
 女がヴァイオリンを奏でると、その音色に誘われるように撮影現場を後にするモデル女。
 「可愛い子……よく来たわね」
 タコファンガイアの牙がモデル女に迫るが、渡が屋敷で奏でるヴァイオリンの音色がタコファンガイアのそれと混じり合い、 誘いの調べを断ち切る。正気を取り戻したモデル女は特殊武器を構え、ここで「おまえの母にも、世話になったな」と、 過去と未来の女戦士の血縁関係が言明。
 ……お母さんはファンガイアを取り逃がしすぎではないのか。
 まあ、ファンガイア相手に決定打になる装備を持っているのかわかりかねますが、決定打も無しに戦いを挑むほど、 無謀でもないだろうし、母の不始末の蹴りを頑張って娘がつけようとしているのか。
 それにしても、母娘揃って、よく吹っ飛びよくしばかれ、よく転がり回って大変そうです。
 前年のヒロインが確かに打撃系でしたが、あくまで日常パートの扱いなので、 女性キャラが生身で正面から怪人ときったはったするというのは、色々やってきた平成ライダーでもかなり独自ラインでしょうか (戦隊・メタルヒーローも含めて考えれば、特に珍しいというわけではないけど)。
 2人の交戦にヴァイオリンの弦の震えを感じ、バイクで出撃する渡。

 た ぶ ん 無 免 許

 どう考えても教習所に通えたと思えないですし。きっとキバット辺りが、 こども銀行券みたいなドリーム免許を渡してその気にさせている。
 キバとタコの戦いは、ハーレー系という異色デザインのキババイクに対し、足が車輪に変形したタコとのハイスピードバトル。 最後は月面野球キックが炸裂し、今回もぱっくんちょ。そして怪獣城の中では、OPに居た3人の男がチェスを打っていた……。
 もう少しファンガイアやキバの背景を出していくのかと思われた2話ですが、ひたすら謎だらけ。渡と音也の職業と、 麻生母娘の関係がはっきりした以外は、さっぱり見えてこないどころか、むしろ謎が増えました(^^;
 音也は86年の仮面ライダーかと思っていたのですが、作品の味付け考えると、どうもそうではない感じ?
 渡のキバへの変身が少しファンガイアっぽいのも気になりますが、コウモリがモチーフなのは、そういう事かしら。
 タコファンガイアがヴァイオリンにこだわっていた理由は特に描かれませんでしたが、あれはミステリ要素というより、怪人も、 人間的執着を持っている、という事でしょうか。先を見ていかないと何ともですが。
 次回、告訴?

◆第3話「英雄#パーフェクトハンター」◆ (監督:石田秀範 脚本:井上敏樹)
 今回のOPは、「バイオリンについて」。さてこれ、どこまでやりきれるのか。やるならやりきってほしいけど(笑)
 2008年――
 社会復帰と真人間への脱皮を目指そうとする渡は、保護者(女子高生)同伴で喫茶店のマスターにテーブルのお礼を言いにいくが、 やさぐれモード中のモデル女・麻生恵にからまれる。母と同じく犬が苦手な恵だが、動物には好かれる渡。
 「こんな風にすぐ懐いたの、貴方で二人目」
 と、たぶん音也の事だろうなーと思わせる、マスター発言。
 恵に「どんな風に変わりたいのか?」と問われ、渡は「父みたいになりたい」と返す。
 「母が言ってたんです。父は、素晴らしい人だったって。心清く、誠実で、真面目で、曲がった事が大嫌いな、純粋な人だって」
 渡の苗字を知り、難しい顔になるマスター(笑) ここはマスターを縦糸に過去と現在を繋げる、上手いやり取り。
 「ねえ、お父さんの名前、なんて言うの?」
 「紅、音也」
 1986年――
 心清く、誠実で、真面目で、曲がった事が大嫌いな(※個人の印象です)紅音也は、 片っ端から色々な女をナンパしていた。 その最中、武器を取り戻しにやってきたゆりに腕をひねられて嬉しそうにしていた所、突然、蛾?のファンガイアに襲われ、 音也は今回も鮮やかな立ち回りで、人並み外れた戦闘力を見せる。蛾は火薬鱗粉をばらまいて逃走し、この様子を見ていた嶋は、 音也を「組織」にスカウトできないかと、その身辺調査をゆりに命じる……。
 2008年――
 紅家を訪れた女弁護士が抱えてきた「紅音也による被害調査書」を目にした渡と女子高生は、 それを元に22年前の父親の狼藉の数々を知る事に。
 音也にそそのかされて銀座にクラブ作って大失敗とか、ラスベガスでカジノを買ったが音也に支払い踏み倒されて落ちぶれたとか…… 意図的な描写だとは思うのですが、音也酷い、というか、バブル怖い。
 聞き取りシーンや回想シーンの演出は、石田監督悪ふざけモードなのですが、石田×井上は、どうも悪ノリが過ぎます(^^;
 「父さんが、あんな無茶苦茶な人だったなんて……」
 妙に格好いい音楽で、岸壁でがくっと膝をつく渡。
 女弁護士は、「もし音也が一つでもいい事をしていたなら許す」と被害者達が言っていると告げるが……何その、 昔話みたいな展開(^^;
 その頃、悪徳金融会社を襲撃する1人の男が居た。社長の首にかかった50万ドルの賞金を狙うバウンティハンター・名護啓介。
 「そういう言い方は好きじゃないな。正義の味方と呼びなさい」
 名護はちんぴら達を鮮やかに制圧するが社長に逃げられてしまい、落ち込みモードの渡と一緒に居た女子高生が人質にされてしまう。 が、名護さんパンチから竹刀による連続攻撃で改めて制圧。
 こーいうシーンはギャグにしなくてよいと思うのですが、毎度書きますが、石田監督は真っ当にやっても上手いのに、ひねくれすぎ。
 どうやら『キバ』世界では、日本国内でもバウンティ・ハンター制度が存在している模様(現代アメリカには、実際、存在している)で、 日本の警察にも名を知られている名護さん。賞金は全額寄付、というその姿に、脳内妄想だった父イメージが被ってしまったのか、 「父さん……」と錯乱した事を口にしだす渡(笑)
 名護は、相談に乗りたいけど今は忙しいので、と自分のよく行く喫茶店(多分、例のマスターの店)を渡に教えて去って行く。
 どんな変人なのかと構えていたら、今のところ物凄く普通にいい人だ、どうしよう!
 その後、蛾ファンガイアが陸上選手を襲い、恵がそれと戦って今回も大ピンチになり、キバが乱入。渡視点だと今のところ恵は、
 「なんでこの女、弱いのにまた巻き込まれているの?」
 状態ですが、果たして2人の立場はいつ繋がるのか。
 ジャイアントスイングから蛾を追い詰めるキバだったが、至近距離で鱗粉攻撃を喰らって逃げられてしまう。そして1人の男が、 その背後に迫っていた。
 「キバ、おまえのボタンはいらない。命をもらう」
 名護啓介、果たして彼はいかなる理由でキバを狙うのか。そして、恵に嫌われているのはどんな性癖ゆえなのか。次回、キバ、 フォームチェンジ。
 過去も現在も、蛾がいきなり出てきすぎて、ちょっと雑(^^; 元来、細かい技巧を張り巡らしていくのが持ち味の脚本家なので、 雑だと悪目立ちします。
 後、渡がキバに変身するとやたらにアグレッシブになるのですが、あれで結構、ストレスが溜まっているのでしょうか。 変身前と後を繋げる意識が強いシリーズ(特に前作がそこを特徴にしていた事もあり)だけに、 まるっきり別人のようなギャップの大きさは引っかかるところ。

◆第4話「夢想#ワイルドブルー」◆ (監督:石田秀範 脚本:井上敏樹)
 今週のOP解説は、ストラディバリウス4億円。
 2008年――
 名護はスカッシュに励む嶋に、キバを倒したいと陳情していた。
 「キバよりも私のライダーシステムの方が優れている」
 とどうやら、名護さん、第二の仮面ライダーの模様。
 一方、父の所行を知って深く落ち込んだ渡は、喫茶店を訪れた名護に父親についての悩みを相談していた。 近くに居た恵は名護から「いじけると面倒な人」扱いを受けるが、結局面倒くさかったのか、 場所を変えて話す2人(笑)
 口調や迷える青少年の相談に気軽に応える所など、名護さんは牧師/神父のイメージでしょうか。
 そこで名護が見かけて確保した賞金首(おじさん、綺麗なハイキック)が、音也の被害者の1人であった事が判明。 バイオリンの演奏で35万円を踏み倒した上に、企画されたコンサートをドタキャンして男の人生を狂わせたという音也の振る舞いに、 激しく土下座する渡。
 前回よくわからなかったのですが、名護さんの「記念にいただきます」は、確保相手の服のボタンを集めているのですね…… これはちょっと嫌だなー(笑) おっさんのボタンばかりだし。いや、若い女のボタンばかりでもそれはそれで嫌ですが。
 1986年――
 音也は今日もゆりに殴られながら、Mの悦びを噛みしめていた。
 「さいっこうだ……女に殴られるのも、悪くはない」
 1・2話は格好良く戦っていたゆりですが、3・4話は、音也の監視でコスプレしているだけで扱い酷い(笑)
 2008年――
 名護から「悩むより行動」と教えを受けた渡は音也被害者の会の人々を手伝い始めるが、 その様子を見て「そんな事をやる必要はない」と法理を説いてくる恵。だがそこに名護がやってきて、 「気持ちの問題なのだ」と恵を止める。
 「さぞ気持ちがいいでしょうね」
 「なんのことかな」
 「知ってるわ。あなたは弱い者が必要なのよ。弱い者の面倒を見る事で、自分が上に立てるから。あーー、気持ち悪い」
 「馬鹿な事を言うのはやめなさい」
 「その、なさいなさいって言うのもやめなさいよ。そういう口癖も、自分が上に立ちたいって証拠じゃない」
 「君は俺を分析している。何故か。分析する事で、俺より優位に立とうとしているのだ。悲しいよな。 何をしても俺には勝てないという事がわかってるだけに」
 「はぁぁぁぁ?!」
 つまり、2人とも説教好きなのか。
 馬が合わない、というのは、このシーン一つで、凄くよくわかりました(笑)
 今後の焦点は、渡はこのまま名護さんに懐くのか、恵の逆転があるのか、という所でしょうか。
 工事現場でよたよた働く渡、の姿を紹介する女子高生の説得を受け、態度を和らげていくおっさん達。
 (父さん、会いたい……ねえ教えて父さん、本当は、どんな人だったの?)
 1986年――
 ゆりから遊び歩く音也の報告書を受けた嶋さんは、あっさりとスカウトを断念していた(笑)
 恐らく組織名義の領収書を心配したのかと思われますが、嶋さんは今のところ、過去も現在もけっこう適当そうです。
 2008年――
 女弁護士に、音也をしつこく恨んで渡にあたるのは止める、と言いに来たおっさん達の前で、女弁護士はファンガイアに転じる。
 「甘いな。私は許さない。決して」
 人生の切り替えを認めた途端にファンガイアに食われてしまうおっさん達、割と可哀想(^^;
 ファンガイア反応に渡は出撃してキバに変身、殴られた蛾は人間の姿を見せる。
 「夏川さん……どうして……」
 「紅音也は、一つだけ、いい事をした。彼は、あの時、花の為に、バイオリンを弾いていた。私は、彼を愛した」
 植物園で自分の世界に浸っていた音也に一目惚れした夏川は、街で音也にナンパされて喜ぶが、そこにゆりが登場して袖にされ、 その事を深く静かに恨み続けていたのであった。
 「私は、花にはなれなかった。許せなかった。私の前で、立ち止まらなかった、紅音也を」
 前回、音也がナンパしていた二人目が蛾ファンガイアの人間体で、蛾がいきなり音也&ゆりに襲いかかったのは、 フられた腹いせだと判明しました。判明してもこれは、あまり美しいとは言い難いですが(^^; その後22年かけて、 紅音也被害ファイルを作った上で息子の所に持ち込んで息子を虐めて楽しむというねじくれ方が凄いですが、 そちらの病みっぷりを強調した方が話としては面白かった気もします。それで面白いのは一部の人間だけという気もしないでもないですが。
 夏川は再び蛾ファンガイアの姿に戻り、滅多打ちにされる生身渡。キバットは強引に渡を変身させると、更に勝手にフォームチェンジ(笑)
 「娑婆の空気でも吸いに行くかぁ」
 怪獣城から1人の男が飛び出し、ガルルセイバーを手にしたキバは、狼の力で、青いキバに。青キバは剣の柄からハウリング怪音波を放ち、 剣を口にくわえての斜め回転斬り、必殺・ガルルバイトで蛾ファンガイアを両断する。
 渡はけっこう動揺していたのに、キバに変身した途端に躊躇なくファンガイアを殺りにいきましたが、キバットさんの牙はあれか、 興奮剤を注入しているのか。
 そう考えると、変身した途端のアグレッシブなファイティングスタイルなど、もろもろ納得行くんですが(笑)
 ベルトに差している必殺技アイテムもなんか微妙に、お薬っぽいなと思っていたのですが、最高にハイな野球キックだったのか。
 渡の自称「この世アレルギー」は、クスリのやり過ぎによる副作用だったのではないか(そろそろやめなさい)。
 前作の今作で、前作の流れを受けつつひねりも加えてといった感じのフォームチェンジですが、 正直第一印象としてはあまりパッとしません(^^; 現状でキバ本体が謎すぎるのと、 あまりパワーアップ展開での盛り上げに力の入らないタイプの脚本家と、色々と食い合わせが悪かった感じ。音楽は格好良かったですが。 『キバ』は全体的に、音楽は好き。
 「父さん……。聞こえるよ、父さんの音が、父さんの心が」
 家に帰った渡はバイオリンを弾きながらなんか嬉しそうだけど、それでいいのか(^^;
 父がファンガイア引っかけていたせいで息子が酷い目に遭うという話だったのですが、過去と現在を繋ぐキーが“女の嫉妬”、 というネタ自体があまり面白くなく、いまいちな出来。次回以降の名護さんの活躍に期待したい。

◆第5話「二重奏#ストーカーパニック」◆ (監督:舞原賢三 脚本:井上敏樹)
 2008年――屋敷から醸し出す悪臭などが原因で、近所の人達から「おばけ太郎」と嫌われる渡は、 真人間復帰計画の一環としてご近所付き合いをしようと、自宅でミニコンサートを開催する。
 (僕は……変わるんだ……!)
 ……が、緊張からいつものような演奏が出来ず、真人間デビュー大失敗。
 渡はバイオリン弾くより、“捨てられた子犬のような目でおばちゃん達を見つめてみる”攻撃の方が有効そうな気がするのですが、 意外と、年上にウケが悪い。
 床にのの字を書いていた渡は、自分レボリューションプロジェクトの為に、一人の人物を思い出す……そうだ、 名護さんに相談しよう!
 その頃、憧れの名護さんは、恵をストーキングしていた。
 もとい、二度も恵の前に現れたキバを狙って、恵を護衛(本人談)して、恵に嫌がられていた。
 「知ってるでしょ。あたしが、あなたのこと嫌いな事」
 「あんたは俺の事が嫌いなわけじゃない。嫉妬してるだけさ、俺の力にな。……もっと正直になりなさい」
 名護さん、ちょっと気持ち悪い。
 「あぁーーー、神様、どうかこの男を、この世から消し去って下さい」
 「神様は俺の味方だ」
 1986年――(バンドの解散ライブのチラシが、デビューライブのチラシに、という面白い演出)
 電話をかけようと(公衆電話!)小銭を探すゆりに、10円を貸す通りすがりの音也。
 「気にするな、俺のおごりだ。で、どこにかけるんだ? そうか、俺んちか」
 全く間をおかずに畳みかけ、勝手にダイヤルする変質者。
 「ほら、留守番電話だ。わかっている……愛している、と言いたいんだろ。さ! 早く」
 留守番電話に「愛している」と吹き込ませようとするという、 レベル65ぐらいの変質者ぶりをみせつける音也だが
 「消えて。此の世から」
 有り難いお言葉を頂戴いたしました・完。
 色々どうかと思う事もある今作ですが、この辺りの言葉遊びと過去未来の絡め方は素直に面白い。それにしてもこの二人、 前回からギャグシーンしか出ていないのですが。
 2008年――
 「僕を、弟子にして下さい!」
 渡はいつもの喫茶店で名護にコンタクトを取っていた。
 「しかし、なぜ私に?」
 「……名護さん、最高だから」
 「聞こえないな。もっと大きな声で言いなさい」
 聞こえてる(笑) 間違いなく、聞こえている顔ですよ、名護さーーーん。
 「名護さんは最高です! どうか弟子にしてください! 僕、何でもしますから!」
 番組の良心かと思われた名護さん、凄いスピードで駄目な人に(笑)
 ……いやまあ、そんな事だろうとは思っていましたけど!
 1986年――
 紅音也、喫茶店来襲。
 「ご注文は?」
 「おまえだ」
 「出て行け」
 「わかった。一緒に帰ろう、我が家に」
 迷惑度120%でゆりをナンパする音也だったが、カウンターに座っていた目つきの悪い男に腕をひねられ、外に叩き出される。 無頼な雰囲気で人相の悪い男は……ガルルさん?
 ガルルさん(仮)はメニューを見るとコーヒーの値段を自分で決める宣言。
 「まずいコーヒーに金は払えない。ちなみに俺は今まで1円も払った事が、ないがな」
 ただのタカリだった!!
 「怖い。でもいいよ。面白そうじゃない」
 だが、予想外にノリノリで、その挑戦を受けて立つマスター。果たして――マスターのコーヒーはガルルさんの味覚を撃ち貫き、 格好良く1万円払って帰るガルルさん。ただのタカリではなかった! 信念のある、タカリだった。
 2008年――名護の指示で恵を陰から護衛する渡は、恵に張り付くストーカー眼鏡と接触するが、 「僕も護衛している者だ」と簡単に丸め込まれてしまう。ここで恵が、1987年12月29日生まれ・山羊座のAB型(あと、 3サイズ)と、プロフィールが判明。逆算すると、過去編で言う所の1年後ぐらいに、お母さんの旦那は確定する模様。 このまま同じ時制で進行(というのも変な言い方ですが)するなら、ちょうど番組クライマックスの辺り(或いはエピローグ後) という事にはなりますが。
 1986年――深夜にジムのプールに浮かぶゆりは、なにか不穏な気配を感じていた。
 2008年――恵が撮影の仕事中、渡は眼鏡の指示で控え室に侵入しようとしていた。 目指すは恵の携帯電話…………どこに行きたいのだろう、この作品は(^^;
 だが、後一歩のところで恵に確保され、名護を交えた話し合いの末、ストーカーの存在が発覚する。
 自分の不手際を知り、今日も風呂で体育座りの渡。
 「おまえ今まで何の為に戦ってきたんだ?」
 「それは……声が聞こえるんだ。父さんのバイオリン、ブラッディ・ローズから。戦え、って」
 ここまで謎だったキバ/渡の戦う動機ですが、それも受け身だった事が発覚。その割には変身するとアグレッシブなので、 やはりストレスが溜まっているのか、キバットさんがお薬を注入しているのか。
 渡及びキバそのものと、キバットさんに関しては、相変わらず謎ですが。
 変な男達に囲まれて、お疲れ気味の恵さんは、ベッドに転がっていた。
 「母さん……」
 1986年――未来の娘も男運が悪い事など知る筈もないが、母の身の回りにも、変な男達が次々と増殖していた。
 不審な気配、そして、怒りに燃えながら喫茶店にやってくる音也。
 「この世で嫌いな物が二つある! 糸こんにゃくとぉ……、俺にたてつく男だ!」
 紅音也、同性に虐げられても興奮できない体質である事が発覚。
 「ここはコーヒーを飲む場所。世界一神聖な場所だ。帰れ」
 盛り上がる音也だったが、マスターのコーヒーが気に入ったらしく用心棒状態のガルルさんに殴り飛ばされ、ストリートファイト開始。 そんな馬鹿男達を放置して出かけたゆりを絡め取る蜘蛛の糸。そして襲いかかる蜘蛛のファンガイア――暗転。
 2008年――恵の前に直接姿を見せたストーカー眼鏡は、羊ファンガイアの正体を見せる。
 見ただけではわからなかったのですが、キバットさんが、羊と明言。毛のもこもこを、ガラガラみたいなパーツで表現しているのが面白い。
 「あたしのファンか。ファンガイアにしては随分いい趣味してるわね。いいわ。優しく殺してあげる」
 台詞は格好いいが、案の定、弱い(笑)
 そろそろ嶋さんに新しい武装を要求した方が良さそうな恵が今日も勢いよくピンチになり、 生真面目に ストーキング 護衛を続けていた渡は、キバット変身。どうやらキバットさんは、恵がお気に入りの様子。
 恵を助けに入るキバだったが、羊のクロックアップもとい高速移動攻撃に翻弄され、ガルルモードになるも、やはり手も足も出ない。 ガルルさんがスピード型なのかと思いましたが、全くそんな事はなく、ただフォームチェンジしてみただけでした(^^;
 恵が背後から羊を鞭で攻撃し、一旦間合いが離れるが、そこでキバの前に現れたのは――名護啓介。
 「ようやく会えた、キバ」
 恵そっちのけでキバに宣戦布告した名護さんは上着の懐に手を伸ばし「変身」しようとするが、響き渡る恵の悲鳴。 駄目男2人が揉めている間に、羊にさらわれてしまう恵。そして1986年でも、ゆりが蜘蛛にさらわれていた――。
 今回、能力ナルシストでもいいましょうか、新しいタイプの気持ち悪さを前面に見せ始めた名護さんが、
 キバを殴る >>>>> 
 すぎて酷い(笑)
 男運が悪すぎる母娘の、明日はどっちだ!

◆第6話「リプレイ#人間はみんな音楽」◆ (監督:舞原賢三 脚本:井上敏樹)
 今回のものしりコーナーは、バイオリンの語源は、ラテン語の「ビジュラ」。
 1986年――嶋は、さらわれたゆりの救出を音也に依頼すると共に、自らの素性を明かす。
 「私は、人類の天敵であるファンガイアと戦う、素晴らしき青空の会、会長だ」

 NPO法人?

 「ゆりを助けたら、俺もその、なんとかの会に入れてくれ」
 音也、就職を決意する。
 一方ゆりは、壁に自分の盗撮写真の貼られた、奇妙な部屋(何かのステージ風)に捕らえられていた。その前に姿を見せるのは、 かつて取り逃がした、蜘蛛のファンガイア。
 「気になっちまったんだよ〜、あれ以来。おまえの事をーーー」

 新しい、Mだった。

 2008年――母と同じく囚われの恵が縄をほどこうと暴れていると、その衝撃で壁にかかった布が外れて、 その下から母親の盗撮写真が(笑)
 凄く、厭な状況です。
 「会いたかった〜。ゆーーーり♪」
 羊ファンガイアの背後から変な踊りで現れたのは、22年前と同じ場所に、母の身代わりとして娘を攫った蜘蛛ファンガイア男。
 今回も、母のせいで、大迷惑だ!
 「い〜や、おまえはゆり、そのものだ〜。その美しさ、きつい性格。大好きだーーーーー!」
 蜘蛛の人は、1人ミュージカルというか、常に歌うように節をつけながら喋るのですが、 散らばった奇っ怪な小道具や周囲の舞台装置など含めて、よく知らないので大きく間違っているかもしれませんが、 前衛演劇とかこんな感じなのだろうか、という演出と演技。
 好きか嫌いでいえば好きではないのですが凝ってはいて、各演出陣、なんとか『キバ』世界と変質者達を面白く描き出そうと、 試行錯誤が窺えます。
 1986年――ゆりがさらわれた現場で、割と真面目に証拠を探す音也の前にガルルさんが現れる。そして2008年では渡の前に、 どうやら蜘蛛に顎で使われているらしい羊眼鏡が姿を見せる。
 1986年――閉鎖された遊園地の前。
 「女はこの中に居る。俺は鼻が効くんだ」
 「なんで俺を助けるんだ」
 「おまえには、品がない。おそらく、キリマンジャロとモカの違いもわからないだろう。だがまあ、惚れた女の為に命を賭ける男は、 嫌いじゃない」
 「変なヤツだな。まあいい、礼は言わんぞ」
 「あー、せいぜい頑張れよ」
 囚われのゆりの爪に「おまえは俺の花嫁になるんだ」とマニキュアを塗っている蜘蛛男。その背後に迫った音也が武器を振り上げ……
 2008年――羊男の案内で蜘蛛の前へやってきた渡は、「身代わりになる」発言。
 要らないよ。
 恵の前(他人の前?)では変身したくないし、道中、羊男と一緒で変身できなかったという事でしょうが、何しに来たのか。
 「恵さんは、僕のものだ」と反抗する羊も蜘蛛に追い散らされ、渡も結局、捕まってしまう……。
 1986年――喫茶店のガルルさんは、考えていた。
 「マスター、相変わらず、コーヒーは完璧だ。だがコーヒー店には美しいウェイトレスが必要だ。違うか?」
 そして音也は、さくっと縛られて転がっていた。
 …………嶋さん、武器の一つぐらい貸してあげてください。
 体脂肪率にしか興味のない駄目上司の事はさておき、蜘蛛が花嫁衣装を取りに席を外している間に、 ゆりの身につけていたネックレスの鋭い部分でロープを切断しようとする2人。
 「ところであんた、なんであたしに付きまとうわけ? いくらなんでも、しつこすぎる」
 「人間はな、みんなそれぞれ、音楽を奏でているんだ。知らず知らずの内に、心の中でな。 俺はな……おまえの中から聞こえてくる音楽が、好きなんだよ」
 ここで初めて、音也の行動に、理由が付きました。
 変態で、キチガイな、芸術家の感性の赴くがままなので余人には意味不明ですが!
 まあ、そういうキャラが居てもいいとは思うし、音也はそういう人、というのがここでハッキリ。
 「ふーん……ちょっと、格好いいな」
 「だろう! 惚れただろう!」
 「それはない!」
 「それでいい。その方が燃える!」
 そして、どこまでもMだった。
 ロープの戒めを切断し終える前に、白いドレスを手に戻ってくる蜘蛛男。
 「これで結婚式の準備は整ったーーー♪」
 2008年――何とか脱出の方策は無いかと周囲を見回していた恵は、現場に落ちていた母のネックレスに気付き、 それを用いて渡のロープを切断しようとする。どんな困難な状況でも決して諦めない恵の姿に、尊敬の念を抱く、感化されやすい渡。
 「恵さんはなんでそんなに強いんですか?」
 「……昔、母さんが言ってたの。人間はみんな、音楽を奏でてるって。私は、自分の中の音楽を守りたいの。そして、 みんなの音楽を守りたい」
 「人間は、みんな、音楽……」
 ううーん、発端が、キチガイの変質者でなければ、いいシーンなのに(笑)
 貧弱な武装で格好良くファンガイアに立ち向かうも毎度大ピンチに陥り、しかし懲りずに殺る気満々で何度でも前のめりに立ち向かう恵さん、 物凄く前向きなバカなのか、素晴らしくメンタルがタフなのか、のどちらかと思われましたが、何より精神的にヒーローであり、 その恵に受け身の渡が感銘を受け、その根っこは実は父の言葉である、という凝った構成。
 少し時間をかけすぎた気もしますが、受け身の主人公のヒーロー的動機付けを、他者から生まれさせる、というのはなかなか面白い作り。 結局は根っこに父の存在がある、というのは、良し悪しではありますが。最終的に、父の想いを純粋に受け継いでいく形になるのか、 父を乗り越えていく形になるのか。まあ今のところまだ、音也が渡に託した想いそのものが、ハッキリしておりませんが。
 「ま、あたしも本当はよくわからないんだけどね」
 そこへ、青いドレスを手にした蜘蛛男が現れる。
 「結婚式をあげるぞーーーーー♪」
 羊は? と思ったら、後から踏み込んできていきなりショットガンをぶっ放し、蜘蛛は逃亡。
 「恵さん、あなたは、ぼくの花嫁だ」
 1986/2008年――ドレスに着替えさせられ、気を失って横たわる、ゆり/恵。
 誰が、どうやって、ドレスを着せたのかは、考えてはいけない!
 2008年、戒めを脱した渡は、連れ去られた恵を探そうと、耳を澄ます――
 「聞くんだ、恵さんの音楽を……」
 1986年では、口づけの寸前、鉄パイプ二刀流の音也が眠るゆりの元に駆けつける。
 「待たせたな」
 ここから先は、過去と現代が入れ替わり立ち替わりしながらバトルシーンが展開するのですが、感想ではまとめて。
 1986年――格好良く現れた音也だが、鉄パイプ二刀流を打ち破られ、蜘蛛に叩きのめされてしまう。今度こそ、ゆり危うし、 というその時、現れたのはガルルさん。ガルルさんと蜘蛛は激しく殴り合いながら外へと移動。蜘蛛の逆さ吊りロープアクションなど、 なかなか面白い戦闘。そしてガルルさん――脱いだ!
 咆吼をあげたガルルさんは、人型の青い狼に変身。
 なんか、滅茶苦茶格好いいゾ。
 青い狼は足を掴んでの叩きつけなど、圧倒的なパワーで蜘蛛を追い詰めるが、目隠しの糸を浴びせられ、逃げられてしまう。
 2008年――恵が捕食される寸前に羊の前に飛び込んでそれを阻止したキバだが、羊の高速移動に今回も苦戦。 更にショットガンの雨あられを喰らってしまう。
 「こういう時には、あいつだぜ」
 キバットさんが緑のお薬を注入し、怪獣城から召喚される、セーラー服に半ズボンの美少年。
 キバは装甲と瞳が緑色に変化し、右手にバッシャーマグナムを装着。飛び道具フォームが緑色というと、 懐かしの『クウガ』を思い出すところですが、バッシャーは、半魚人でしょうか。人間体が物凄く、行く所まで行った感じですが(笑)
 キバはバッシャーマグナムを乱射して森林破壊を繰り広げると、最後は必殺・バッシャーバイトで、羊を撃破。 どうも誘導弾のようですが、CGが大仰な割には、フォームチェンジや必殺技は、どうも盛り上がらず(^^; もう少し、 戦闘の変化は力入れてほしい所です。今のところ、月面野球キックが一番格好いいし。
 過去で蜘蛛、現代で羊、と、2体のファンガイアを使い分けての戦闘、という構造は面白かったのですが、蜘蛛は結局、 過去ではガルルさんに負けて逃げ、現代では羊のショットガンを喰らって逃げ…………また、出てくるのか。
 そして、音也はさっぱり役に立たなかった。
 名護さんは、全く役に立たなかった!
 今のところ、一番格好いいのはガルルさんだなぁ(笑)
 音也は厳密に言えば時間など多少稼いではいるのですが、ようやく見せ場回かと思ったら、やっている事は一応男らしいけど、 結果が全くともなわなかったのは、残念。キーワードで過去と現代を繋ぐ役目でしたが、ヒーロー物としてもう少し、 過去編の主人公らしい見せ場は欲しかった所です。このままでは、ガルルさんに、主役もヒロインも奪われそう(笑)
 そして、第二のライダーが出てくるには早すぎるような……と思ったら華麗に「変身」をすかされた名護さんが、 ライダーの姿を見せられるのは、いつの日か。
 嶋さんに至っては、何者かに頼まれて音也の暗殺を画策していたレベルですが、知恵と勇気だけで戦争は出来ないんですよ?!  ポンコツ通り過ぎて、スクラップだぞこの人……。
 2008年――渡は、入院した恵の前で見事なバイオリン演奏を披露し、喜ぶ女子高生。
 「やったね渡ーーー! 初めてなんですよ。渡が、私以外の人前で、ちゃんと弾けたの!」
 てれってってってててー♪
 わたるはレベルがあがった!
 真人間レベルが、−50から−49になった!
 かしこさがあがったきがする!
 うごきがすばやくなったきがする!
 こころがつよくなったきがする!
 1986年――夜の街を歩くガルルさん。
 ファンガイアが、顎の辺りからモザイクタイル状のものが展開して真の姿になるのに対し、瞳が黒と赤になって変身する、と、 変身からタイプの違うガルルさんですが、その正体はやはりファンガイアなのか、それとも、別の異種生命体なのか。
 今回に関しては恵を助けるのに力を振るっていますが、22年後では、
 「ねえねえ。僕たちさ、ここに閉じ込められて、何年になるんだっけ」
 「まぁ……20年ぐらい、か」
 というお城の中の会話で、何者かによって“閉じ込められて”いるようであり、キバに使役されている理由も含め、 積み重なっていく謎・謎・謎。
 前作『電王』で、個人的にかなり株の上がった舞原監督が参戦。3−4話の石田組ほどではないですが、 5話冒頭などはちょっと過剰演出。全体的にフリーダムな感じですが、『キバ』演出は、もう少しさらっとしてほしいなぁ(^^;  それでも、過去と現代を交差しながらの話のテンポ自体は良く、なんとなくスルスルと見てはしまえるのですが。

→〔その2へ続く〕

(2014年9月3日)
(2017年9月17日 改訂)
戻る