■『仮面ライダーW』感想まとめ8■
“If I wasn't hard, I wouldn't be alive.
If I couldn't ever be gentle, I wouldn't deserve to be alive.”
ブログ「ものかきの繰り言」の方に連載していた『仮面ライダーW』
感想の、まとめ8(45〜最終話)です。文体の統一や誤字脱字の修正に加え、「ビギンズナイト」を受けてほんのちょっぴり加筆。
そこはかとなくサイクロンジョーカー色。
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〔まとめ1〕 ・ 〔まとめ2〕 ・
〔ビギンズナイト〕 ・ 〔まとめ3〕 ・ 〔まとめ4〕
〔まとめ5〕 ・
〔まとめ6〕 ・ 〔まとめ7〕 ・ 〔AtoZ〕
- ◆第45話「Kが求めたもの/悪魔のしっぽ」◆ (監督:諸田敏 脚本:三条陸)
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冒頭、破壊された風都タワーの工事をしている映像が入り、映画版と時間的に連動。
それを見つめる翔太郎は、迫り来る薄ら寒い気配を感じていた。
「シティボーイ、独り言なら家でなさい!」
うん、そうですね。
鳴海探偵事務所を訪れたのは、鞭を振り回す探検家ルックの女、轟響子。風都博物館の学芸員である響子は、憧れの恩人である館長、
すなわち園咲琉兵衛を助けたいと、琉兵衛が発掘現場で無くして困っているという大事なもの――イービルテール探しを依頼してくる。
「こいつはきっと……運命だ」
危険ではあるが、琉兵衛の秘密に迫る機会とばかり、依頼を受ける事にする翔太郎。
翔太郎達にとっては悪の大ボスである琉兵衛にも表の顔があり、依頼人からすると尊敬すべき恩人、
というのはちょっとしたスパイスの利いた構図。
その頃、ミュージアム最終計画の実現が近づき上機嫌の琉兵衛は、それを発動する為に必要なイービルテールの捜索を命じ、
ニックをスミロドンへと変身させる。琉兵衛が加頭に、「大事な魔法のアイテムを地殻変動でなくしちゃった、てへっ」
と言っているのですが、これは劇場版で風都タワーが転げた影響、という事でいいのか(別にそこを気にしなくても問題は無い成り行きですが)。
翔太郎と亜樹子は、響子の案内で星降谷発掘現場へと向かう。園咲琉兵衛はかつてその発掘現場で様々な発見を成し遂げて名声を成し、
付近の土地を買い取って園咲家の邸宅を建設。園咲家の地下には、発掘現場から繋がる広大な地下遺跡が広がっているのであった。
響子さん、恩人の落とし物を捜す為に、恩人の敷地に不法侵入。
この人あれだ! 恩返しの為なら恩人をも殴り倒すタイプだ!
亜樹子がダウジングスリッパで何かを感知し、古い発掘跡に辿り着いた翔太郎達は、
わかりやすくEvilTailと書かれた鍵のかかった鞄を見つけるが、そこへスミロドン。続けてテラーが現れる。
「それは我らの、ガイアインパクトに、どうしても必要だ!」
ダブルはエクストリームの分析を超えるスミロドンの反射速度に苦戦し、更にそこへテラーまで現れた事で鞄を手に退散……
120%不法侵入の上に窃盗なので、このままブタ箱に御案内されても文句は一切言えません。
事務所に照井を呼び出し、ガイアメモリと琉兵衛の関係について響子に説明する翔太郎達だが、
響子はイービルテールの鞄を持って事務所を飛び出していき、琉兵衛の元へ。後を追った翔太郎と照井は、
“ミュージアム首領”としての園咲琉兵衛と対面する。
そして――
「初めて私の姿を見た時から、君は既に負けていたのだよ。私の恐怖――テラーにね。ははははは、
はっはっはっ、はーっはははははは!」
琉兵衛に一睨みされただけで、体が震え、動けなくなる翔太郎。
テラー―それは恐怖そのものの力。人の心が当たり前に持つ恐怖という感情を支配する、闇の帝王。
琉兵衛がエクストリームの力を分析する為に敢えてダブルを泳がせていた一方、
翔太郎が明らかに疑わしい園咲家そして園咲琉兵衛にこれまで深く踏み込もうとしなかったのは、
翔太郎が既に知らずテラーの恐怖に囚われていたからだった!
と、テラーとダブルの初顔合わせがあり、お互いの素性に繋がるヒントがばらまかれたスイーツ回が思った以上の重要回であった事が発覚。
これまで、ミュージアムが翔太郎を直接狙わなかった事だけではなく、
翔太郎の側が園咲霧彦や園咲冴子がミュージアムと繋がっている事を知りながら深く調べてこなかった事にも理由を付け、
それを大ボスの強大な力に繋げたのは、お見事。
スミロドンは鞄を抱える響子を狙い、それを追うアクセル。その姿を見せた時から、既に敵ではなかった翔太郎を、
路傍の石のように無視して嗤いながら姿を消す琉兵衛。恐怖に支配され膝から崩れ落ちる翔太郎は、
その姿を目で追う事すら出来ないのであった……。
その頃、若菜の差し金によりミュージアムに関わる本を読めるようになっていたフィリップは、覚悟を決めて「園咲・来人」
の本を手に取る。そこに記されていたのは、園咲家の過去……園咲琉兵衛が地下遺跡で地球意志との接触ポイント
《泉》を発見し、一家がその調査を進めていた事。その作業中、5歳のフィリップが《泉》に落ちた事。
そして――
「嘘だ……そんな事が!」
鞄と響子を守ってスミロドンと戦うアクセルはトライアルを発動するが、スミロドンの反射速度はトライアルすらも上回る。
テラーの影響を受けたままふらふらと歩いてきた翔太郎はその戦いを呆然と見つめるだけだったが、
やってきたフィリップの言葉で我に返り、ようやくダブルに変身。
対面後もテラーの後遺症で正気を失ったまま、という重ねての描写はテラーの凶悪さが出て良かったです。
自分の本を読んだ事で、スミロドンの正体がかつての飼い猫である事を推測したフィリップは、
メタルシャフトの動きでミックを大人しくさせると、メタルクワガタバサミにより、メモリブレイク。
「猫が……組織の、幹部だと……?」
スミロドンの正体を知り照井呆然……て、なるほど、フィリップが本を読むまでは、誰もスミロドンが猫とは思っていなかった、と。
考えてみれば当たり前なのですが、これは視聴者の盲点を巧く突いてきました(笑)
ちょこちょこと存在感を出していたスミロドンはこの最終盤でネコ型ドーパントゆえの力を見せたものの、割とあっさりリタイア。
ネコだから割と勢いで爆殺される危惧がありましたが、メモリから解放されるという形で済んで良かったです。
「おめでとう、来人! ようやく己の使命を知ったな。はははは」
自分の本を読んだ事を翔太郎に告げるフィリップだが、そこへテラーが降臨する。
「来人、おまえとイービルテールが揃えば、私の望むガイアインパクトが誕生する」
地球と一体化する事により、人類という種を永遠に存続させようという園咲琉兵衛のガイアインパクトとは何か――
変身しようとするフィリップだが、テラーを前にした翔太郎は〔毒・マヒ・混乱・眩惑・暗闇〕のバッドステータス祭で一歩も動く事が出来ない。
「彼はもう、終わっているよ来人。二度と私に立ち向かう事は無い」
園咲夫妻から揃って、穀潰しの生ゴミ扱いを受ける翔太郎。
やはり、劇場版で、人生の輝きを全て使い尽くしてしまったのか?!
<対精神攻撃:◎>を持つアクセルがテラーに飛び道具で攻撃するが、テラーの頭部の飾りからミクロネシア系の神獣めいた獣が出現すると、
アクセルを捕まえてがしがし。
「終わりだよ、仮面ライダー諸君。はははははは」
そして若菜が、事の成り行きを呆然と見つめていた響子からイービルテールの鞄を奪い取る。
「来人、一緒にいらっしゃい。読んだ筈よ自分の本を」
「あんなの……あんなの嘘だぁぁぁ!!」
「嘘ではない。おまえは死んだのだ。12年前にな」
「園咲・来人」の本に記されていた真実――そう、フィリップ/園咲来人は、12年前に《泉》に落ちて、死んでいた。
かじられるアクセル、動けない翔太郎、絶望に沈みゆくフィリップ……果たして、風都の未来はどうなってしまうのか?! そして、
琉兵衛の求めるガイアインパクトとは?!
急展開で遂にフィリップの秘密が明かされましたが、合わせて、冴子30歳、若菜21歳、フィリップ17歳、と判明。
冴子さん、まさかの三十路だったーーーーーー!!
誕生日の関係で、ギリギリ、29歳という可能性もあるけど。
霧彦さん、30超えには見えなかったけど、年下だったのかしら。
あと、井坂先生(40ぐらいという言及があったような)と随分と年の差カップルだと思っていたのですが、案外、
そうでもなくてこちらはなんか納得。
ミックはフィリップが3歳の時に買ってもらったという事で、当時0歳だと計算しても、劇中時点で14歳。
ネコの14歳は人間の70〜80歳程度なので、かなりの老ネコでした。
スミロドン、超反応で動き回っていますが、ビジュアルを人間化すると、白髪の老師、みたいな感じか。
或いは、若菜姫をお姫様抱っこしたりミュージアムの始末人だったりするし、
ミックは普段は能力を隠しているロマンスグレイのメガネ執事的な位置づけだったのか!! ネコだけど!
まあガイアメモリでドーパント化している時点で実年齢はあまり関係無い可能性もありますが、10年ぐらい前のスミロドンとか、
全盛期で超強かったのかも。
この最終盤で妙に濃いゲストキャラ・轟響子は、どうも翔太郎と同じキャラ作り系の人のようですが、
脚本段階ではもう少し面白みを見せるシーンがあったけどそれどころではなくてカットされたとか、ありそう(^^;
基本的には遺跡への突入の理由付けとして振り切れ気味のキャラクターにしたのでしょうが、少々、話を転がす都合が優先されすぎた感じ。
逆に、脚本段階だとあまりに都合だけだったので、演出でちょっと過剰にキャラ付けしたという可能性もありますが。次回、
何か意味が出るのか出ないのか。
今作におけるテラーの、大ボスとしての存在感の見せ方は序盤から面白かったのですが、
大ボスとしての力と物語の都合の理由付けがしっかり噛み合ったのは、お見事でした。そしてシュラウドが、
屋敷の見取り図を見た途端に犯人がわかってしまうミステリ小説のように翔太郎を毛嫌いかつ役立たず扱いしていた理由も、
これで納得。
確かにこれでは、どうしようもありません。
そしてそれらの流れの中で、ただの戦闘力の強い弱いとは別に、“翔太郎が立ち向かわなくてはならないもの”が、
わかりやすく示されたのは、とても良かった所。今作における翔太郎が、“弱さと良心を併せ持っている当たり前の人間”
の一つのシンボルであるからこそ、人間として抗えない闇(恐怖)が存在する、という意味が引き立ちます
(そういう点でやはり照井は、“狂気”の側に足を三歩ぐらい踏み込んでいるキャラクター)。
Nobody’s perfect――ハーフボイルド探偵・左翔太郎が、
この根源的な恐怖に対して如何なる戦いを見せるのか、クライマックスを楽しみにしたいと思います。
- ◆第46話「Kが求めたもの/最後の晩餐」◆ (監督:諸田敏 脚本:三条陸)
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園咲来人は5歳の時に死亡し、今居るフィリップは、地球意志によって形成された、データの塊にしか過ぎなかった。
「僕は物じゃない!! 翔太郎! 変身だ」
何とか翔太郎が変身してエクストリーム化するダブルだが、恐怖による支配を物理的に具現化するテラーの力により、
当て身一発で派手に吹き飛び、変身解除。
「君はもう終わりだ。一生、恐怖の中で生きる」
照井は怪獣にぺっと吐き出され重傷、翔太郎は再起不能の廃人、フィリップは園咲家へ連れ去られ、かつてない危機に陥る仮面ライダー。
園咲家ではフィリップが目を覚ますと、お父さんの手料理で夕食の席が設けられていた。そしてそこには、琉兵衛からの招待状を受け取った、
冴子とシュラウドの姿が。
(これが……家族の、食卓)
園咲家の象徴として、頻繁に登場した食事シーン。徐々にその食卓に座る人々が減っていく姿を描き、
最後の最後でそこにまた家族が集う、というのは良い構成と絵でした。
だが、その食卓は……黒ずくめで顔を隠した母、敵意全開の長女、2人の態度など気にせず楽しそうに家族の思い出を語り出す琉兵衛……
重い、空気が重い! 若い頃の母さんとダンスをした思い出をいきなり語り出す父とか、
一般家庭でもハードル高いのに、目覚めたばかりのフィリップに、人生がベリーハード!!
「これを機に、争いをやめるべきだ!」
だが、自分自身のよすがを「家族」に求めるフィリップは、そんな暗黒園咲家にも和解を願う。
しかしそれは冴子さんの胸のエンジンにガソリンをガロン単位で注ぎ込み、ナスカV3とクレイドールが戦闘開始。
シュラウドも、引き留めるフィリップに
「おまえの家族は、もう園咲ではない、左翔太郎よ。忘れないで。切り札は――左翔太郎」
と言い残してその場を去ってしまう。
だが、その混乱に乗じて、屋敷に忍び込んだ轟響子がイービルテールを盗み出していた(おぃ)
ゲストキャラがまさの潜入任務。亜樹子の「行動力の人」という台詞で強引に理由を付けていますが、この人、
博物館の学芸員というのは表の顔で、実は博物館お抱えの女怪盗では?! でりんじゃー。
ナスカV3はクレイドールに完全敗北し、X土偶に踏まれて逃走。
最後の晩餐を終えたフィリップは翔太郎に電話をする事を若菜に許され、自分が地球の御子たる若菜の生け贄になって消滅する事を告げる。
「でも忘れないでくれ相棒。僕は消えない。君の心に……悪魔と相乗りする勇気が、ある限り」
園咲琉兵衛のガイアインパクト――それは、《泉》と連結した若菜に地球の記憶の全てを流し込み、
フィリップをその制御プログラムとして組み込む事。風都におけるガイアメモリ流通は、
地球の記憶の一部と融合する事でドーパント化した人間を実験台とした、制御プログラムの為のデータ集めであった。
そして今、若菜は地球の御子――生きたガイアメモリ製造器となろうとしていた。
「貴方はそれでいいんですか? 僕が、消えても」
「おまえは一度死んだ。もはや、救えない」
「僕は貴方を救いたい………………父さん」
ここはただの情や綺麗事ではなく、今作のテーマとして「罪と罰」が積み重ねられてきたからこそ、
「許しと救い」というのが大きな意味を持ち、良い台詞になりました。
「二度目の、お別れだ。さらばだ来人」
だが琉兵衛はもはや足を止めず、それでもフィリップの肩を抱き、そして《泉》へとその体を突き落とす。フィリップを呑み込み、
《泉》から迸る、地球の記憶――!
「エクストリーーーーーム!!」
《泉》直上の部屋に控えていた若菜もクレイドールエクストリーム化し、神の器たるその身に、地球の記憶を宿していく。だがそこへ、
亜樹子に肩を借りながらも乗り込んで来る翔太郎。ほんの僅かな物音にすら怯えて、恐怖に身動き取れなくなっていた翔太郎をここまで辿り着かせたもの、
それは、響子が持ち出してきたイービル・テール。
それは、発掘に用いる刷毛だった。
「返せ! 私の家族だ……!」
園咲一家の名前がそれぞれ書かれた、お守りの刷毛を目に、初めて動揺を見せる琉兵衛。
「あんたは自分の道を誤り、家族を犠牲にし続けてきた。でも、そうなっていく自分が恐ろしかった。
だから幸せだった頃の象徴であるこの刷毛を、家族自身とすり替え、自分の気持ちを誤魔化したきた。違うか?」
「貴方にも、怖い物があったんだ」
「馬鹿を言うな。そんな事は無い」
恐怖の帝王が内に秘めていた恐怖の揺らぎ。それは、己の計画の為に全てを踏みにじってきた筈の男が、
心の底で守ろうとしていたもの――家族。
他人から見たらなんてことの無い物が、冷酷非情な悪魔に人間の部分を取り戻させる、というのはまあ悪くない流れなのですが、
実は、“園咲琉兵衛が如何にして全てを犠牲にしてガイアインパクト計画を推進するに至ったか”という背景が劇中で描かれていないので、
やや、パンチ不足になりました。
地球意志との接触ポイント《泉》を見つけた事、来人が死んだ事、ガイアインパクトが人類という種を永続的に存在させる為の計画である事、
という起こった出来事と計画の概要は説明されているのですが、「どうしてガイアインパクトを計画するに至ったか?」
という部分が描かれていないので、翔太郎の台詞を借りるなら何故「道を誤った」のかがわからず、
家族を犠牲にしてでも完遂したいガイアインパクト と 幸せだった頃の家族の象徴である刷毛
の意味のバランスが劇中で取れませんでした。
この後の話の都合があったのかもしれませんが、ここで刷毛をキーに使うなら、琉兵衛の理由が先に置かれないといけませんでした。
もしかしたら45話の、人類種を永遠に存在させたい、というガイアインパクトの説明でそれを済ませたつもりだったのかもしれませんが、
今作における「家族」の重さを考えると、あのシーンだけでは弱くてやはりバランスが悪い。
琉兵衛はテラーへ変身し、その姿に震える翔太郎だが、フィリップの言葉を思い出す。
――でも忘れないでくれ相棒。僕は消えない。君の心に……悪魔と相乗りする勇気が、ある限り――
「そうだった……あいつが俺を相棒と呼ぶ限り…………俺は折れない。約束だった」
二人がエクストリームになった、その時の誓いを思い出す翔太郎。
「さあ来い……相棒!!」
翔太郎はドライバーにジョーカーメモリを突き刺し、フィリップに呼びかける。そして……その呼びかけに応えて、
サイクロンメモリが転送。若菜に制御プログラムとして組み込まれようとしていたフィリップの意識がベルトへと移動し、
2人は仮面ライダーダブルへと変身する。シュラウドの言い残した「切り札は左翔太郎」とは、
ダブルの変身システムを利用したこの裏技の事だったのだ。
「街を泣かせてきた諸悪の根源、園咲琉兵衛! 「「さあ、おまえの罪を数えろ」」
ダブルとテラーは外へ転がり出し、怪獣を放つテラーだが、そこに劇場版で出番のカットされたリボルキャリーが駆けつけ、
中からすっかり存在を忘れていたアクセルタンクが出撃。
「俺が操り人形? 上等だ! それで悪を砕けるなら、人形でもなんでも構わん!!」
照井、振り切りすぎだ(笑)
タンクを撃破されたアクセルバイクは飛行メカを換装し、怪獣と空中戦を展開すると、
更に上半身だけ人間形態に変形するという超絶アクロバットを披露。上半身・人間、下半身・飛行メカ、という、
ガンダムMAモードみたいな姿に。
「絶望がおまえの、ゴールだぁ!!」
アクセルスカイハイは、加速忍法・火の鳥を発動して、怪獣を撃破。まさかすぎる合体変形でしたが、
照井の脳の振り切れぶりが凄すぎます。
映像的には、タンクだとフルCGの撃ち合いになってしまうので、アクセル上半身のアップ(実物)を挟みつつの空中戦から、
アクセルバードアタックというのは、勢いと盛り上がりがあって良かったです。
インストール中の不正な処理でエラーを起こして藻掻き苦しんでいたX土偶から、
エクストリームメモリがフィリップの肉体データを回収し、制御プログラムを完全に失ったX土偶は遂に大爆発。
ダブルはエクストリーム化し、フィリップは完全に自分の姿を取り戻すと、再び一心同体となった2人で1人の仮面ライダーは、
テラーとの決戦に挑む。
相棒との約束で絶対の恐怖を乗り越えた翔太郎は、テラーの打撃を無効化し、激しい殴り合い。
ダブルの魅力とちょっと違う、というのはあったかと思うのですが、どうも演出陣がプリズム剣と盾を気に入ってない節がありましたが、
この決戦は素手ごろで、非常に良かったです。
落ち着いて考えると、若いチンピラが中年男性を一方的に殴りつけているのですが、深く考えない方向で。
……テラーの打撃が多少効いていればまだ良かったのですが、完全無効化されているので、妙に絵面が酷い(笑)
完全にテラーを上回ったダブルの放ったダブルエクストリームにより遂にテラーはメモリブレイクされ、X土偶の爆発と、
怪獣の落下により、炎上し崩壊していく園咲家と遺跡。
「やっと……やっと悪魔のメモリから、みんなを引き離せたのに」
屋敷に近づこうとするフィリップを翔太郎は止め、燃え盛る屋敷の中へ入った琉兵衛は、そこで緑色の光に包まれた若菜の姿を目にする。
「若菜! 若菜はまだ……そうか、今、地球の未来は、確かに、女王に託されたのだ! ははははははははは! 私の人生に、
後悔はない。踊ろう、母さん、あの日のように。ははははははは、はははははははは……」
琉兵衛は崩れ落ちていく屋敷の中で笑顔でダンスのステップを踏み、その姿は炎の中に消えていく……。
お父さん、遂にリタイア。
見事な高笑いと深みと貫禄、寺田農の演技が素晴らしく、いい悪役でした。最終的に反省しないまま死んだのは少し気になりますが、
琉兵衛の背景、そして贖罪あるいは救済は、残りの物語で描かれるのかどうか。最後のダンスシーンはとても良かったです。
かくて園咲琉兵衛は斃れ、フィリップは事務所へと帰還。しかし……
(地球の記憶を巡る一つの家族の愛憎劇は、幕を閉じたかに思えた。だが、事件はまだ終わっていなかった。
若菜姫が焼け跡から見つからなかったのだ)
財団Xの加頭が若菜を抱きかかえ、ミュージアムの地下施設を静かに歩んでいた――。
さすがに死ななかった?けど、ボスキャラ撃破のあおりを食って大爆発した若菜姫が割と可哀想(笑)
フィリップと同じ状態(データ人間)になっている可能性もありそうですが、琉兵衛の言葉を聞いて急に豹変した理由なども明かされていませんし、
フィリップにとって残された若菜の救済が、クライマックスの鍵となりそう。
加頭は琉兵衛と並行したボスキャラぐらいかと思っていましたが、一躍、ラスボス候補に。ちゃっかり生き残っている冴子さんも加え、
物語の結末がどうなるのか、楽しみです。
- ◆第47話「残されたU/フィリップからの依頼」◆ (監督:石田秀範 脚本:三条陸)
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最後の晩餐シーンに見当たらなかったので心配していたのですが、翔太郎が探してきて、ミック、事務所に。それを喜ぶフィリップだが、
肉体に異変を感じていた。
「翔太郎、頼みたい事があるんだ。若菜姉さんを探して、助け出してほしい」
フィリップのただならぬ様子に、約束をする翔太郎。
「勿論引き受けるさ。若菜姫は必ず俺が助け出す」
「どんなに辛い事が……待っていたとしても?」
「おまえのために耐えられねぇ事なんてねぇわ……相棒」
大きな戦いを乗り越え、ここに来て、急速にラブ度の上がる2人(おぃ)
いやだってこれ、いくら戦友とはいえ、男に向けて言う台詞としては突き抜けすぎだよ翔太郎!
そして――
これが、フィリップの最初で最後の依頼だった。
ずっと2人で1人のつもりだった俺たちが、あんな事になるなんて、思いもしなかったよ。
なあ、フィリップ……
その頃、加頭が手中に収めたミュージアムのメモリ製造工場を、財団Xの上役であるネオン局長が訪れ、
ミュージアムへの投資中止を通告していた。ここでちらっと、劇場版のNEVERに言及。
ネオン局長は働き者でとても忙しいらしく、ストップウォッチのタイマー機能で会話時間を限定する事で、
財団Xが大規模に活動している事を描写しているのですが……トライアルと被り気味でいいのか。後この演出、
会話の途中でタイマーが鳴って話を打ち切ってこそ面白みが出ると思うのですが、加頭が会話をきっちり時間内に収めてしまう為、
微妙に物足りない(笑)
加頭は確保した若菜を材料に、ミュージアムへの投資継続を求める。加頭の計画、それはミュージアムの新たな頭目に冴子を据えて崩壊した組織を立て直し、
若菜の力により改めてガイアインパクトを起こすというものだった。だがその為には、若菜の体内に融合したクレイドールメモリを甦らせる必要があった……。
その冴子は、何故かサーキットで走っていた。
(私の証明……それは私が若菜に勝っているという事。でも認めさせるべき父はもう居ない。若菜……)
若菜を探す翔太郎達はウォッチャマンからの情報でその所在を突き止め、ちょっとしたチェイスシーン。この辺りは、
『仮面ライダー』としてレース出場している協賛関係でしょうか? この時期もやっていたのかは知りませんが。そして翔太郎は実は、
バイク乗るがの一番得意なのではという気がする(笑)
フィリップの言葉で若菜の生存を知る冴子だが、そこへ加頭がやってくる。
「酷いですよ冴子さん。1人で居なくなるなんて。さあ、貴女を迎えに来ました」
「私がどこへ行こうが勝手でしょ」
冴子さんはどうやら、ミュージアムの追っ手を気にしなくて良くなった以上、
あんな男の取ったホテルの部屋なんて真っ平御免と大脱出していたようで、超、嫌そう。
「貴様、どこかで」
「財団Xの加頭順、と申します」
「財団X……?」
「ミュージアムのスポンサーよ。闇の巨大資本」
出てきた時から大雑把な雰囲気の漂う財団Xでしたが、物凄くざっくりとまとめられました(笑) 作品全体としては、
一般市民を闇にそそのかすガイアメモリを流通させているミュージアムが、
世界各地の闇の夢追い人達に資金提供をしている財団Xの投資を受けているという、入れ子構造。
冴子と共にミュージアムの悲願であるガイアインパクトを達成すると告げる加頭は、一本のメモリを取り出す。それは、
園咲の人間だけが使う事を許される筈の、ゴールドメモリ。
「スポンサー特権というやつですね。これは私と適合率98%。まさに――運命」
――『ユートピア』――
劇場版でマキシマムドライブに使われたユニコーン辺りかと思いきや、ここでこの名称は、なかなか面白い。
メモリが発動するとバイクや人が浮き上がって吹っ飛び、その能力は重力操作? 変貌したユートピアドーパントは、
金色の鎧姿にマントを羽織り、手持ち武器は杖。飾り気のない真っ直ぐな杖なので、微妙にハスラーも思わせ、それとなく、
ハードボイルド。
変身したアクセルが切りかかるが、ユートピアは重力操作によって、その攻撃を防御。アクセルの攻撃は、
文字通りにユートピアの体に届く事もできない。
「フィリップ、俺たちも変身だ」
「まだ出来ない……」
「なんでだよ?!」
「次のダブルの変身は、若菜姉さんを助けるその瞬間に取っておかねばならない! 今度ダブルに変身したら…………僕の体は、
消滅してしまう。この地上から、永遠に」
ユートピアはウェザーっぽい能力も使用し、炎に嵐の連続攻撃で、触れる事も出来ずにアクセル完敗。
突発的な戦闘で説明を受けるタイミングがなかったとはいえ、照井はかなり可哀想(^^;
「来人、今頃お父さまもきっとお墓で泣いてるわ。お墓でね」
「行きましょう。貴女の夢を、叶えるために」
加頭は冴子を連れ去るとミュージアムの新たな総帥として上司に報告し、改めてガイアインパクトの実行を宣言。
ガイアインパクト――それは、メモリ適性を持たない人間を瞬時に消滅させる、人類選別の儀式。
加頭は風都市内を対象に行われる予定だったこの計画を、データ化した若菜を財団Xの人工衛星にインストールする事で、
一挙に地球全域で行おうともくろんでいた。
ここで、ガイアインパクトの詳細が判明。この構成上仕方なかったのでしょうが、
琉兵衛の口からガイアインパクトの具体的な話が無かった為に、琉兵衛の背景周りの説明が不足する事になってしまったのは、
やはり勿体なかったところ。
そしてこれ、地球全域でやると、財団Xの偉い人が「あれ? 俺、メモリ適性無かったの? いやっはーーー」
って消滅する可能性があると思うのですが、それでいいのか財団X。
上司の許可が下りたので、それでいいんだ財団X。
「遂に貴女が、ミュージアムのトップですよ」
局長は財団Xからの投資再開の可能性を示唆し、加頭は冴子にタブーのメモリを渡す。
その頃フィリップは、冴子の残した「墓」を最後のキーワードに、若菜が囚われているミュージアムの施設の絞り込みに成功。
それは表向きは玩具会社、CHARMING RAVEN。
最終決戦の場が玩具会社とはまた、メタな邪推を招きたいとしか思えません(笑)
若菜を助ける為にそこへ乗り込み、加頭と決着をつけようとするフィリップだが、翔太郎は突然の衝撃発言に混乱していた。
「おまえが消えるって、どういう事なんだよ」
前回、若菜と融合させられたフィリップは地球の記憶に近づきすぎた影響で、再構成されたデータの肉体が、
加速度的に崩壊を始めていた。次にダブルになった時、それが最後の一押しとなり、フィリップは地球の記憶と一体化してしまう。
「でも姉さんを救ってからであれば、悔いは無い」
「馬鹿野郎! んな事諦められっかよ!!」
これを回避する方法はない、と覚悟を決めているフィリップに対し、残酷な現実を受け止められない翔太郎は、シュラウドの森へ。
……すっかり、森の住人扱いです(笑) 翔太郎がさんざんわめき散らしてから、ようやく姿を見せるシュラウド……どう考えても、故意。
フィリップを助ける方法は本当に無いのか、シュラウドに激しく食ってかかる翔太郎だが、シュラウドもまた首を左右に振る。
「冗談じゃねえよ! あいつを救う事は、おやっさんから託された、俺の一番でっかい依頼なんだ! なのに!」
「鳴海荘吉に、来人を救う事を依頼したのは、この私」
「あんたが依頼人……」
ここでビギンズナイトから繋がる点と線。
「そしてあの子は救われた。もはや来人は、復元されたデータの塊ではない。……おまえのお陰だ」
祝・翔太郎、とうとう、お母さんに認められる。
「でも消えちまうんだろぉ!!」
「あの子が、安心して、笑顔で消えられるようにしてあげてほしい。それが今、あの子を救うという事。頼む、左翔太郎」
「勝手な事言うなよぉ!」
絶叫する翔太郎だが、シュラウドは陽炎のように姿を消してしまう。シュラウドとおやっさんの繋がりがハッキリとし、
探偵事務所の隠し部屋にあんな秘密施設を作ってしまったのは、やっぱりこの人か!!!
そうなると、フィリップが主に過ごす隠し部屋は、いわば母の胎内であり、間接的にフィリップは母親に守られていた、と。
そしてそこから外へ出る事で、フィリップは他者と交わり世界と関わり、復元された園咲来人ではなく、
フィリップという個として新生する、という作品構造であった事が最後ではっきり見えました。
失意の翔太郎が事務所に戻ると亜樹子の呼びかけで、フィリップが海外留学するという名目のパーティーが開かれ、
刑事コンビと情報屋達が勢揃いしていた。
「フィリップくんに、思い出沢山あげなくちゃ」
覚悟を決めてせめて前向きに出来る限りの事をしようとする亜樹子(おやっさんの血)と、納得のいかない翔太郎。
「フィリップから貰った」
えらく唐突に、フィリップからのプレゼント(多分マグカップ)をアピールして割って入る照井(笑)
繋ぎが凄く不自然なので、恐らくこの前に、照井が翔太郎を諭す言葉があったのが尺の都合でカットされたのかと思いますが。結果、
落ち込む翔太郎に、おまえの相棒からプレゼント貰ったぜ〜と自慢するみたいで、照井が凄く不自然に(笑)
「僕は、人との付き合いに興味がなかった。……悪魔みたいな奴だった。でも、翔太郎に連れられて、この、風都に来て」
「今では、どうなの?」
「――大好きさ……街も、みんなも」
“人との関わり”を通したフィリップの変化と成長、1年間の物語で徐々にやってきた事を、
主要サブキャラとの絡みで象徴的に描いたのですが、惜しむらくは、フィリップがほとんど、刑事や情報屋と関わってない所(笑)
どちらかというと、翔太郎不在の事務所に真倉達がやってきて、翔太郎愛されアピール、フィリップとは皆それほど親しくない、
という16話辺りのイメージが強いです(^^; こうなると、フィリップが情報屋達のトラブルを解決するようなエピソードが、
一つぐらい欲しかった。
(後に視聴した最初の劇場版「ビギンズナイト」では、情報屋達を交えた事務所でのクリスマスパーティが描かれており、
このシーン自体がそれになぞらえる意図があった模様。また、鳴海荘吉がフィリップに対してした事を考えると、
非常に綺麗に繋がっており、つくづく、「ビギンズナイト」は劇場版なのが惜しい)
「翔太郎、プレゼントだ。後でいいから、開けてみてくれ」
気持ちの整理のつかない翔太郎は無言のまま、しかし時間は個人の感情など無視して刻まれていき――翌早朝、工場へと乗り込む4人。
翔太郎と照井が生身で組織の構成員を片付けていき、照井が追っ手を食い止めている間に若菜を見つける3人。だがそこへ、加頭が現れ、
フィリップは加頭のもくろみに気付く。
「これがふざけている顔に見えますか?」
「翔太郎、いよいよその時だ。こいつを倒す。……その後は、頼むよ」
サイクロンメモリをはめるフィリップだが、翔太郎が取り出したジョーカーメモリを用いる覚悟が付けられない内に、
ユートピアに若菜の身柄を奪われてしまう。止めに入ったアクセルだが、やはり重力操作を打ち破る事ができない。
ユートピアの重力ガードは、攻撃の寸止めにカット割りと効果音で見せていて、地味に面白い芝居。
アクセルはトライアルを発動するがユートピアは軽々とその攻撃をしのぎ、飛び上がったユートピアに地面に叩きつけられたアクセルは、
何故かトライアルが解除されてしまう。
「ユートピアとは、希望の力のメモリ。君の生きる気力を貰い、私の力とした。その結果を味わいなさい」
人の持つ希望の心そのものを操るユートピア……はいいとして、トライアルの原動力、「希望」なの……?(笑)
極めつけのラスボスという事でかなり何でもありですが、ウェザーぽい能力を使ったのは、照井の気力を吸い取る事で、
照井の持っている「絶望」のイメージを具現化したとか、そういう事なのかしら。
気力50になり装甲値が激減したアクセルは、気力150ユートピアのインテリヤクザキックで吹っ飛び、大炎上・爆散。
かつてなく燃えて死にそうになる。
「照井竜ぅぅぅ!!」
フィリップが絶叫すると、緑色に輝き出す若菜の体。フィリップと若菜が精神的に繋がっている事で、
フィリップの感情の揺らぎが若菜の覚醒を促し、クレイドールの力の発動値を上昇させていくのだった。
フィリップを失う決断に耐えられず、生身で突撃する翔太郎はユートピアにあしらわれ、更に揺れるフィリップの心、
そして上昇していく若菜の力。
「素晴らしい、若菜さんの復活法が見つかった。来人くんの精神的苦痛が、若菜さんを呼び覚ます。ちょっと死んでみてください。
来人くんの前で」
「やめてくれぇぇぇぇぇ!!」
あまりに圧倒的なユートピア、首をねじりあげられる、翔太郎の運命や如何に?!
節目の宿敵で、ナスカ、ウェザーの系譜という事か、素直に格好いいデザインのユートピアは、重力ガードのアクションが非常に秀逸
(能力の理屈としては、希望を吸収する事で攻撃を無効化している?)。棒を持った片手を、背中に回している余裕のポーズも素敵。
琉兵衛に比べて迫力不足になりそうで心配だった加頭ですが、事ここに至っても延々と淡泊なまま、しかし圧倒的、
というのがなかなか面白いラスボスになってきました。
フィリップの心の痛みは、フィリップが「――大好きさ……街も、みんなも」となったからこそ生じる、
という構造が実に皮肉でえげつなく、人間の持つ弱さと優しさをキーとする今作らしいですが、果たして、
その優しさは人を街を救う事が出来るのか?! 次回、ハーフボイルド探偵、最後の「変身」。
- ◆第48話「残されたU/永遠の相棒」◆ (監督:石田秀範 脚本:三条陸)
-
翔太郎をごきっとくびり殺そうとしたユートピアだが、タブーの奇襲攻撃を受け、変身解除。ユートピアにタブーの攻撃が通じるのは、
飛び道具だからなのか、それとも一周回って属性の近そうな《禁忌》の特性なのか。
「冴子姉さん……まさか?! 僕らを助けて」
「まさか。こいつの方が気に入らなかっただけよ」
そういえば、45話で園咲家の姉弟の年齢が判明した時は冴子さん三十路に気を取られてしまいましたが、
来人に対する冴子と若菜の距離感や感情の違いは、13歳の時に生まれた弟と、4歳の時に生まれた弟、
という違いは大きいのだろうなぁと、今更思ってみたり。
貴様は、思春期真っ盛りに弟が生まれた姉の気持ちを、考えた事があるか?!(誰)
肉親間の憎しみというのは、余人には量りがたいねじくれ方をする事が多々ありますが、
その憎悪の対象から解放された時に残っていた物が「園咲家の長姉」という立場と誇りだった、
というのはこの2話における冴子さんの変心に、ただ物語に都合が良いだけではない面白みを与えています。
ちなみに調べたら、冴子を演じた生井亜実さんは当時27歳でだいたい劇中の冴子さんに近い年齢でしたが、
キャスティング見る限り回想シーンでは多分セーラー服に挑戦させられており、ほぼ一回り分の年の差を演じていました。
生身の加頭にも容赦なく、「生理的に受け付けないから身の回りをうろちょろしないで頂戴」光弾を浴びせるタブーだったが、
爆炎の中で加頭は平然と立ち上がる。
「私、ショックです、冴子さん。死んでいるところですよ。私がNEVERでなかったら」
なんと加頭は、蘇生された死者の兵隊、不死身の兵士・NEVERだったのだ。
加頭がNEVERである事に物語上の意味は薄いのですが(財団が投資していない筈の研究ですし)、
劇場版とのリンクを補強したかったのか。
加頭は再び若菜と冴子を連れ去り(この際、ユートピアがタブーの光弾を重力ガードしているので、その特性上、
相手をロックオンしていないと能力が発動できず、長距離射撃に弱いのか?)、3人は何とか照井を確保し逃亡。
照井は全身火傷で集中治療室に運び込まれ……もう、照井課長に見せ場は無いのか。まあちょっと、
第44話が格好良すぎたのでシカタナイ。
フィリップの補足解説によるとユートピアは“生きる為の感情を吸い取って力にする”という事で、
アクセルが炎上したのはあくまでイメージで、実際の火傷とは少し違う模様。
《精神耐性》持っている照井だから致命傷の一歩手前で済んだような事を言っていますが、
むしろ照井が振り切れすぎている為にダメージが激しかったような気もしないでもなく。
「君が変身を躊躇ったばかりにこのざまだ!」
なお照井はフィリップと翔太郎、双方から被害を受けている事をここに付記しておきます。
亜樹子が気を利かせて先に事務所へ帰り、砂浜で拾ったボールでぞんざいなキャッチボールをする2人。
「どうせ消えるなら、姉さんを助けてから消えたいんだ。なんでわかってくれない」
「聞きたくねえっ……どぉしても飲めねえ! こいつを差したら、おまえが消えちまうって思ったら!」
だが、ダブルへの変身いかんを問わず、フィリップの肉体には嫌でも限界が迫っていた。
「翔太郎……優しさは、君の一番の魅力さ。でも、このままじゃ僕、安心して行けないよ。なあ……約束してくれ。
たとえ1人になっても、君自身の手で、この風都を守り抜くと」
「約束なんてできねぇ……俺は……自分に自信が持てないんだ」
翔太郎、ここに来て、ひたすら女々しい。
まあ実際、自分の手で相棒を殺すような行為を迫られているわけで、非常に厳しい状況ではありますが。
そこにかかってくる、刃野からの電話。受け取る前に、咳払いして声のトーンを普段に戻すのが翔太郎らしく、細かい良い芝居。
だが、刃野の携帯からかかってきた筈の電話の主は、加頭順であった。加頭はユートピアの能力により、
フィリップの知己から次々と生きる為の感情を奪い取っていく。電話越しにその光景を突き付けられてフィリップは苦しみ、
覚醒していく若菜。ユートピアは若菜を財団の天文研究所に連れ込んだ事を教えると、フィリップの極めて近しい人間、
亜樹子からもその生きる力を奪い取る。
ユートピアの攻撃を受けたサブキャラ達は、CGによるのっぺらぼうで表現。生きる力を失った抜け殻のイメージ、
という所でしょうか。
事務所で倒れる亜樹子の姿に、自分の甘さが招いた残酷な結果を思い知る翔太郎。フィリップは激しく嘆き悲しみ、
その心の痛みが若菜を覚醒させる――。
「俺のせいだ…………。ごめんな、フィリップ」
亜樹子を抱えて慟哭するフィリップを見つめる翔太郎は、最後の最後でフィリップを笑顔にするどころか身を裂くように悲しませた自分への怒りを胸に、
鳴海荘吉の白い帽子を手に取り、そっと事務所を出て行く。
――男の目元の冷たさと……優しさを隠すのがこいつの役目だ。おまえにはまだどっちも、ねえだろ。俺が認めるまで被るな。
よしてくれ……俺に帽子は早い。まだはえぇよ!!
――似合う男になれ。
「聞こえるだろう、この星の嘆きが」
「ええ。お父様の嘆きも。だから……私なります、地球の御子に」
「それが、姉さんの決断だったんですね」
「来人?」
「ごめん、僕にはもう、姉さんを救えない」
「来人ぉ!!」
覚醒寸前の若菜は、闇の中で琉兵衛との会話を思い出し、琉兵衛がガイアインパクトを目論んだ背景と、
風都を逃げだそうとしていた若菜姫が父の真意を聞きミュージアムの女王として豹変した理由が、強引にちらっと挟み込まれました。
正直かなり強引ですが、若菜に関しては、ときめいた男の子が血を分けた実の弟、しかも死んでいた!
という運命に対する憎悪と諦観は恐らく影響していて、まあその辺りは描写しにくかったのでしょうが。
そして環境テロリスト的発言の出た琉兵衛ですが、ブログでaaさんにいただいたコメントは成る程と思ったのですが、
琉兵衛が口にしていた「地球に選ばれた家族」というのは、裏を返せば「地球に選ばれてしまった家族」であり、
《泉》と接触した事と息子の死を関連づけて考えざるを得なかった園咲琉兵衛にとって、地球の為に人類の浄化と選別を行うというのが、
「運命」を肯定的に捉える為の狂気であった、という事なのかな、と。
まあレディオ回の若菜姫の回想を見る限り、《泉》と接触してかなり早い段階でガイアメモリに関係する行為に手を染めており、
もともと悪の総帥としての素養はあったようですが。
「さあ冴子さん、約束を果たす時です」
目を覚ました若菜と冴子の前に現れる加頭。
「約束?」
「出会ったときに言いました。貴女が好きで逆転のチャンスをプレゼントする。達成しました。愛ゆえに」
「本気だったていうの。あれで」
これまでの加頭の言動を思い出し、百戦錬磨の冴子さんも呆然(笑)
「良く言われるんです。感情が篭もってないから、本気だと思わなかったって」
どう見ても冴子さんへの嫌がらせとしか思えなかった加頭の求愛行動は、全て、本気だった。
ガイアインパクトに興味があるわけでも、そもそも財団Xがミュージアムを利用しておいしい所をかすめ取ろうとしていたわけでもなく、
ただただ純粋に、加頭は冴子をミュージアムのトップに据える為に行動していたのだ。
如何にもな見せ方を180°逆手に取った衝撃の展開で、これはしてやられました。
悪を倒したと思ったら実はそれを利用していた更なる巨悪が〜というお約束の回避ではあるわけですが、それにしても、アクロバット。
加頭は愛する冴子の裏切り行為を許すと告げてタブーメモリを差し出すが、冴子はその受け取りを拒否。
「なぜです? なぜそこまで私を拒絶するのです!」
「あなたが園咲を舐めてるからよ。こんな形で若菜に勝っても、死んだお父様は絶対に認めない。――若菜、逃げなさい」
冴子は初めて感情を露わにした加頭からメモリを奪い取るとタブーに変身し、若菜を逃がす時間を稼ぐ為にユートピアに戦いを挑むが、
一方的に殴り倒された末に、全ての力を吸い取られ、敗北。
タブーは折角最後に出てきたので何か特性攻撃をしてくれるかと思いましたが、結局最後までふわふわ浮いて光弾打つだけで、
ちょっと残念。あとナスカV3はクレイドールXに一方的に敗北したのが最後の出番だったようで、これもちょっと残念。
「結局一人きりの理想郷か」
とうとう最期を迎えた冴子さんですが、
見た目と営業成績だけが良かったへたれのM男
人間の皮には興味のない変態紳士
と来て、
非モテからの脱却を夢見て愛の為に人類を大科学実験できるサイコさんと、
つくづく男運が悪かった。
「私……若菜を助けようとして死ぬなんて。あんな憎んでいた妹を……最…低……」
どこかから鐘の音が響き渡る中、花畑に倒れ、園咲冴子、死亡。ヒロイン化した若菜姫との対比もあり、
作中の「悪」の部分をかなり担ってきましたが、最期はかなり美しい散り際で、スタッフに愛されていた気配が窺えます。
井坂先生との駆け落ち失敗後、しぶとく生き延びていたのは面白く、悪のセクシー女幹部の現代アレンジとして、
最終的にかなり面白いキャラクターでした。
「若菜姫は任せろ」
事切れた冴子に近づき、その瞼を閉じたのは、白い帽子を被った――左翔太郎。
覚醒した若菜を装置にくくりつけ、データ化して人工衛星に送信しようとするユートピアの前に、翔太郎は主題歌をバックに独り立つ。
「君か。何の用です?」
「邪魔しに来た」
これは、なんというか凄くヒーローの台詞で、素晴らしい(笑)
猛ダッシュした翔太郎はユートピアの火炎攻撃をかわし、竜巻で機材に叩きつけられながらも何とかその懐に飛び込むと、
ユートピアの感情吸収を、まさかの帽子ガード。
「終わりはそっちの野望だ」
翔太郎がユートピアを蹴り飛ばした所に、サポートアニマル軍団が大挙して現れ、ユートピアを縛り付けると、
装置を破壊するという大活躍。なるほど、ユートピアの弱点は、感情を吸収できない機械だった!
玩具の販促が終わると空気になりがちな細かいアイテムを、最後の最後で使ってくれたのはとても良かったです。
翔太郎は若菜を救出し、天文研究所はユートピアを巻き込んで大爆発。翔太郎の行動に気付き、
フィリップがエクストリームでやってくる。
「酷い顔だ」
「男の勲章、ってやつさ」
「1人でよくやったね。凄いよ」
「約束を守っただけだよ」
「君の友である事は、僕の誇りさ」
多分、色々な人が思い出したのではないかと思うのですが、なんだか『ドラえもん』の、ドラえもんが未来に帰る回みたいな事に(^^;
1人で若菜姫を救出してフィリップに誉められる、って、こちらが思っている以上に、作り手の中では翔太郎はぼんくら扱いなのか。
今作の特徴である社会性を強く意識したヒーローとして、翔太郎の年齢ならひよっこで当然、という意識もあったかもしれませんが、
その辺りは、ヒーロー番組準拠で良かったような。
構造としては、特撮的には『ウルトラマンタロウ』の最終回も思い出される所ですが、
折角の見せ場の直後に翔太郎が何か随分と情けなくなってしまいました(^^;
これまでのシュラウドによる翔太郎への数々の罵詈雑言は、作り手の中では至極妥当なものだったのか(笑)
「馬鹿な……この程度で、私の計画が止まるとでも思うのか」
もはや愛を失いながらも、爆発の中から這い出すユートピア。
「止めるさ。何度でも。この左翔太郎が、街に居る限り」
「なに……?」
「例えおまえ等がどんなに強大な悪でも、風都を泣かせる奴は許さねえ。体一つになっても食らいついて倒す。
その心そのものが仮面ライダーなんだ! この街には仮面ライダーが居る事を忘れんなよ」
「仮面、ライダー?」
人の心の希望を嘲ろうとするユートピアに、今、2人で1人の探偵は、尽きない希望を見せつける。
「財団X・加頭順!」
「「さあ、おまえの罪を数えろ!」」
仮面ライダー――それは、この街の希望。
「行くよ、翔太郎! 最後の……」
「ああ……最後の!」
――『サイクロン』――『ジョーカー』――
「「変身!!」」
メモリを構えた2人は、ダッシュから一気にエクストリームに変身。プリズム盾でユートピアの攻撃を受け止めつつ、素手でパンチ。
ダブルの希望を吸い尽くして自分の力に変えようとするユートピアだが、その力を転化しきる事ができない。
「このダブルにはなぁ、フィリップの最後の思いが篭もってんだよ。てめえなんかに食い切れる量じゃねえんだよ!」
最後の力を振り絞るユートピアに対し、サイクロンジョーカーエクストリームは、
プリズムマキシマムドライブ×エクストリームマキシマムドライブのツインマキシマムを発動。
最高パワーの飛び蹴り・ダブルプリズムエクストリームにより、ユートピア失恋大回転キックを打ち破ると、怒濤の空中連続キック、
フィーバーダブルまっしぐらを浴びせて遂にユートピアを撃破する。
「おまえの罪を……数えろだと? 人を愛する事が、罪だとでも……」
しぶとくメモリを構える加頭だったが、マキシマムブレイクの作用により、細胞が崩壊して消滅。ユートピアメモリもブレイクされる。
なるほど、加頭がNEVERなので、劇場版同様、マキシマムブレイクで消滅させてOK、というのは、納得と言えば納得。
「財団は、これで正式に、ガイアメモリから手を引く」
そして戦いの結末を見届けたネオン局長は、風都から姿を消すのであった。
財団Xに関しては出てきた時点で、今作の作風からいって作中では特に片付かなさそうだなぁとは思っていましたので、
これはあまり気にならず。ただラストにわざわざ加頭の上役を出したのは、次のMOVIE対戦への引きだったりしたのかしら?
前回に比べて激しく弱体化した感じのユートピアですが、これ、あれですよね……敗因は、
失恋の痛手。
つまり、陰のMVPは冴子さん。
最終的に、崇高な理想でも巨大な組織の野望でもなく、個人的にモテたい、という極めてパーソナルな目的がラスボスの動機だったのは、
“人の心の中の闇”を主題としてきた今作らしくて良かったと思います。その点では、加頭がNEVER、という付加要素にはちょっと引っかかるのですが(^^;
劇場版とリンクさせつつ最後のカタルシスに繋げられるという計算だったのでしょうが、加頭にはどこまでも、
人間であって欲しかったな、と。
人間が人間であるがゆえに時に歪んでしまう、というのが今作のテーマであったと思うので。
「別れの時が来た。翔太郎、姉さんには、この事内緒にしておいてくれ」
「……わかった」
「じゃあ、行くよ」
フィリップの手を止め、自らドライバを閉じようとする翔太郎。
「俺の手で、やらせてくれ」
「任せるよ」
Cyclone Effect Don't stop it
きっと強くなれる yeah...
Cyclone Effect Don't stop it
次のステージへ
Cyclone Effect Don't stop it
風が連れて行くよ yeah...
Find someone that you want
「大丈夫。これを閉じても、僕たちは永遠に相棒だ。この地球が無くならない限り。……泣いているのかい、翔太郎?」
敢えて気取ってみせるフィリップ、格好つける余裕がなく、泣き顔をさらす翔太郎。
「……馬鹿言うな。……閉じるぜ」
「……さよなら」
「…………おう」
男泣きしながら翔太郎はドライバを閉じ、最後は言葉に詰まりながら、消えていくフィリップ、エクストリームメモリ。
そして――仮面ライダーダブルは居なくなる。この地上から、永遠に。
Cyclone Effect Don't stop it
君は1人じゃない yeah...
Cyclone Effect Don't stop it
かならず行けるさ
Cyclone Effect Don't stop it
風の向こう未来 woh...
Find someone that you want
2人で
かなり長く時間を取った別離シーンは、バックで流れる「Cyclone Effect」(サイクロンジョーカーのテーマ)
のアコースティックアレンジが非常に素晴らしくて、とても良い演出になりました。また、自分の手がフィリップを消滅させる事になる、
という厳しい決断を散々躊躇っていた翔太郎が、ここで自らの手で最後のそれを行うという事で、
翔太郎の決断と成長が描かれてくるっとまとまったのも良かったです。
(――若菜姫は病院に保護された。俺はフィリップが残した最後の依頼をやり遂げた)
照井は車椅子に全身包帯姿で何とか復帰するが、フィリップが去り、沈鬱な空気に包まれる事務所。
思い立って翔太郎がプレゼントの箱を開けると、そこには、フィリップの本と、ロストドライバーが入っていた。
白紙の本をめくる翔太郎は、その内の1ページに残されたフィリップからのメッセージを目にする。
僕の好きだった 街をよろしく
仮面ライダー 左翔太郎!
君の相棒より
「ありがとよ……フィリップ。大事にするぜ」
(俺はこれからもずっと街を守る。仮面ライダーとして。見ててくれよ…………なあ……フィリップ)
次回――最終回。
- ◆最終話「Eにさよなら/この街に正義の花束を」◆ (監督:石田秀範 脚本:三条陸)
-
女々しぃぃぃぃぃ、翔太郎、女々しぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!
居なくなって1年経つのに、事件の情報を手に入れたらフィリップに検索を頼もうとしたり、変身する時にフィリップに呼びかけたり、
痛々しいぃぃぃぃぃ!!
ユートピアドーパントが滅び、加頭の手によるガイアインパクトが阻止されて1年――相棒の事を思いながら、ペットショップで猫缶
(ミック用と思われる)を買う翔太郎。
(フィリップ……おまえが消えてもう1年になるな。風都タワーもようやく再建されたぜ。でもな、俺はおまえに合わせる顔がねえ)
−−−−−
事件の決着後、Xクレイドールの後遺症か、長く眠ったままだった若菜が目を覚まし、面会する翔太郎だが若菜の態度は頑なだった。
「命の恩人のつもり? それとも来人の差し金?」
自分が消えた事を若菜には秘密にしてほしい、というフィリップとの約束を守る翔太郎は、若菜の心を開けずにいた――。
−−−−−
(街の危機は終わる気配がねぇ。なあフィリップ、おまえの力が欲しいよ。ハードボイルドじゃないね、って、また笑われそうだが、
俺には今でも、おまえがすぐ側に居るような気がしてならないんだ。今も俺の近くに)
そんな翔太郎を見つめる瞳――。
「なんだ坊主、うちに、用か?」
事務所の前でのこの台詞は、第1話で亜樹子に向けたものの対比でしょうか(他のキャラクターの台詞も、
初登場時との対比が仕込まれているとの事)。
「姉さんを、取り戻してくれる?」
おずおずと切り出した少年は、小学6年生、青山晶。姉の唯が三日前から行方不明で、それを探して欲しいという晶は、
姉が居ないと何も出来ないと堂々と宣言し、翔太郎は見事にコーヒーを噴き出す。
「いいか。いかなる事態にも心揺れず、1人で耐え抜く。それが、ハードボイルド、てんだ」
「それって、いい事なんですか?」
甘えた上に小生意気な少年の言動に暴発した翔太郎は、少年を調査に強制連行。唯の失踪の背後に、
高校生を中心とした不良グループが関わっているらしい事を突き止める。その名を、“EXE”
……通称「エナジー」と言われる人物をボスに、ガイアメモリの売買をしているという集団であった。
晶と共にEXEの溜まり場へ向かった翔太郎は、そこで思わぬ事実に直面する。実はEXEのメモリ販売は、
唯が始めたものだったのだ。唯がたまたま見つけたメモリが高値で売れた事をきっかけに、若者達は徐々に組織化、凶暴化し、
EXEを名乗りガイアメモリを流通させるようになっていたのである。
晶少年の姉・唯は、最終回だけの登場でメイン扱いというわけでもないゲストヒロイン(ちょっぴり悪女)
にしてはかなり可愛いと思ったら、後のアイム姫(『海賊戦隊ゴーカイジャー』)でした。
今作は過去の戦隊レギュラー含め(見てわかっただけで、ルナジェル、ジャスミン、七海、山崎さん、メレ)、全体的にゲストキャラ
(特に女性)のキャスティングに力が入っていたのは、非常に良かったと思います。
「俺たちはミュージアムを継ぐ者。偉大なカリスマも居る」
「カリスマ?」
「今は街で静かにしているあの方を迎える為、俺たちは残りのメモリをかき集めるのさ。再起動の日は近い」
へらへらとしながらも、どこか狂信的な様子の若者達の姿は、バードメモリ回のドラッグ的描写を思い起こさせる所。
メンバーの1人がアノマロカリスに変身し、その隙に唯はリーダー格の若者とメンバー達に連れ去られてしまう。
「行くぜ、フィリップ。…………いけね、また癖が」
1人になった探偵は、託されたロストドライバーに、ジョーカーメモリを突き刺す。それは街の希望、黒い切り札。
――僕の好きだった街をよろしく 仮面ライダー 左翔太郎!――
「俺は仮面ライダー――ジョーカー」
正真正銘、鳴海荘吉を継ぐ者となった左翔太郎は、さすがにLVの違いを見せつけアノマロカリスを一蹴、
最後はライダーパンチでメモリブレイク。
劇場版の切り札だった翔太郎の単独変身が、綺麗にTV版と連動。
劇場版を見ていればあのロストドライバーとわかるし、見ていなくても、
自分が消える事を覚悟したフィリップが翔太郎の為に作ったのかな? と思えるのは、いい構成。というよりも劇場版を見ていると、
ロストドライバーがいつの間にかフィリップの手に渡っていた事がちょっと謎なので、TVオンリーの方が納得度が高いような気も(笑)
劇場版でユニコーン食らった時に壊れたのをフィリップが修理していた、とかなら綺麗に繋がりますが
(ただ特にそういう明確な破壊描写が記憶に無い)。
「晶、姉さん追うぞ」
「もう嫌です。何も知りたくない、したくない」
大好きな姉が犯罪に荷担していた事を知り、それ以上の真実を知ろうとする事を拒む晶。
「おい晶、殻に篭もってる場合か!」
「僕は、あなたみたいに強くないんだ」
「いいか、俺は強くなんかねえ。おまえと一緒だ。本当は1人じゃなんもできねえけど、無理矢理1人で踏ん張ってるだけさ」
「それがハードボイルド? わかんないよ」
−−−−−
警察病院へ向かった翔太郎は、生身のままでクレイドールの力を振るって暴れ回る若菜の姿を目にする。
「私は再起動し、この汚れた街を浄化する!」
「この街は汚れてなどいない! そう思うのは、おまえの心が歪んでいるからだ! 風都を危機にさらす者はこの俺が許さん!」
アクセルに変身した照井が若菜を力尽くで止めようとするが、身を挺して割って入る翔太郎。
「頼む……待ってくれ照井。今彼女を傷つけたら、フィリップは何の為に命を投げ出したんだっ」
口が滑ったーーーーーー
「来人が命を……? いったいどういう事?! ねえどういう事?!」
「フィリップは消えた……君を守る為に、最後の力を振り絞り……地球の中へと」
自分が眠っていた間に起きた真実を知り、悲嘆にくれる若菜はデータ化?してその場から姿を消してしまう――。
果たして、街で静かにしている偉大なカリスマとは、若菜の事なのか?
−−−−−
事務所へ戻ってきた翔太郎は、中から聞こえてきたフィリップの声に大騒ぎして事務所中を探し回るが、
それはサポートカエルの中に残っていた音声データだった。
カエルを使って晶にフィリップの事を説明していた亜樹子は大失敗に落ち込み、激しく沈んだ翔太郎は隠し部屋のホワイトボードに残されたフィリップの最後のメモ、
「CHARMING RAVEN」を見つめる。大人達の様子が理解できずに呆れる晶に、自分で自分をスリッパで叩いた亜樹子は、
フィリップが海外留学したわけではない、という事実を教える。
「あれ嘘。本当は、この世から消えちゃったの」
「え?」
「フィリップくんは、翔太郎くんの大事な相棒だったの。君にとってのお姉さんと同じ。居てくれないと何も出来ないぐらい、
2人で1人だったの」
何故みんな、よってたかって翔太郎をぽんこつ扱いしたがるのか(笑)
おかしいな翔太郎、前半の翔太郎は割と、大人の視点を持った職持ちライダーだった気がするのに。
「ずっと、やせ我慢してるんだよ」
「やせ我慢……それが、ハードボイルド」
――If I wasn't hard, I wouldn't be alive. If I couldn't ever be gentle, I wouldn't deserve to be alive.
「しっかりしていなかったら、生きていられない。やさしくなれなかったら、生きている資格がない」
(『プレイバック』/レイモンド・チャンドラー)
成る程、そんな男の生き方は、つまり痩せ我慢である、と。
今作における「ハードボイルドとは何か」という問いに対する答として、面白く着地しました。
最近若干忘れられがちな気配があったので、最後に回答を持ってきてくれたのも良かったです。
表向きおちゃらけて見える翔太郎の内に秘めた悲しみを知る晶だが、その携帯に、EXEからのメールが届く……。
今作第1話からのテーマに一つの答を出したシーンですが、合わせて、亜樹子がとても良い味を出しているシーンでした。
翔太郎への気遣いや、自分への反省のスリッパ、そして少年へ向けた言葉。基本、騒がしい巻き込まれ型マスコット、
みたいなキャラクターが苦手なので亜樹子の存在には当初不安があったのですが、自立した上で都合の良い人質キャラになる事もなく、
早々にヒロイン路線を諦めた事も功を奏したのか、とても良いキャラになりました。この手のキャラクターにしては個人的にかなり珍しく、
嫌いではありません。
照井課長とのカップリングは許さないけどな!!!!!(待て)
−−−−−
病院から姿を消した若菜は、森でシュラウドと出会っていた。最終回記念という事か、シュラウド、コートを脱いで登場。
帽子+サングラス+包帯はそのままなので、非常に不思議なコーディネートになっていますが(笑)
「それで、何を望むの?」
「再起動。そして、私なりのガイアインパクト」
「そう。貴女の知りたい事は、星の本棚にある」
「意外。貴方がこんなに素直に協力してくれるなんて」
「家族だもの」
「え?」
そっと、若菜の手を取るシュラウド。
「若菜、貴女は、思うようにするといいわ。…………あなた……今、いくわ……」
「お母様……!」
琉兵衛への復讐という憑き物が落ち、愛する息子の最期を見届けた事で糸が切れたのか、若菜の腕に倒れ込んで息絶えるシュラウド。
シュラウドはひたすら謎の人でしたが、開発能力に関しては“天才だから”で済ませるとしても、出たり消えたりするのは何だったのか(^^;
まあ今作には、ガイアメモリの能力、という理由付けが幾らでも効きますし、《泉》と接触した影響による何らかの特異体質だったのかもしれません。
シュラウド自身が、ある種の怨霊であった、というぐらいの解釈も許される作品世界だとは思いますし、若干、
都合良く使い過ぎた所はありますが、ファンタジーで許される範囲ではあり。
−−−−−
メールで呼び出された晶は、勇気を振り絞って1人でEXEの別のアジトへと向かう。EXEが唯をさらったのは、
唯が隠し持っているメモリの場所を聞き出して奪い取る為であり、唯はメモリを晶の鞄の中に縫い込んで隠していたのだった。
オーシャン(レアらしいが、出番無し)を始めとしてメモリを奪われた唯と晶は隙を見て逃げだそうとするが、男達に囲まれてしまう。
姉を守ろうと必死に鞄を振り回す晶、それを囃し立てる男達。Gなあれのドーパントが2人に迫るが、
その時――駆けつけたバイクがGを轢く。
1人でも、ヒーローだから。
最終回にどうして、アノマロカリスとこれというセレクトなのか、と言いたい所ですが、どうしようもない無軌道なチンピラ達なので、
出来る限り格好悪いのを選んだのでしょうか(笑)
誰にも言わずにEXEの溜まり場へ向かった晶だったが、亜樹子がいつの間にやら靴に発信器を仕掛けていたのだった、
と最終回で久々に探偵アイテムも使用。
「よお晶、1人で踏ん張ったんだな。見直したぜ」
「翔太郎さんも、1人で踏ん張ってるから」
肩をすくめ、ハードボイルドなポーズを向け合う二人。
「行くぜ。――俺、変身」
なぜ、電王(笑)
連絡を受けたのかそこに照井も駆けつけ、華麗に素手でチンピラ達をしばき倒すと、姉弟を救出。
「なんだおまえ?」
「俺に質問をするな」
良かった、このままだとラスト3話、ユートピアにぼこぼこにされる→燃やされる→緊急手術→車椅子→
アクセル踏み込みすぎて若菜に切りかかる、で終わる所だったので、照井の見せ場がまだあって本当に良かった(笑)
「さあお片付けだ」
ジョーカーはGを叩きのめすと、ライダーキックでメモリブレイク。
女々しくてちょっと痛くてやせ我慢の翔太郎ですが、ジョーカーは、ひたすら格好いい。ここで「仮面ライダー」が、
悲しみを隠す為の仮面として、原点に似た機能を見せているというのは、お見事。
リーダー格はメモリを構えるも使う間も無くデコピン一発で気絶。後の処理は照井が請け負ってEXEは一斉に検挙され、
街に潜む一つの危機の芽は摘まれる。
「ありがとう晶。あんたがあんな勇気出すなんて」
「覚え立ての、――ハードボイルド、だよ」
「こんにゃろー、たくぅ、調子のいいやつめ〜」
晶少年とはしゃぐ翔太郎、前途ある少年に、なんて悪い影響を(笑)
まあ今作は、割と人間関係のドロドロした裏表を描く事が多い為、翔太郎と年少の子供の関わる機会が少なかったので、
それを描けたのは最後に清々しくて良かったと思います。これまでの端々の描写から見るに、翔太郎、割と子供好きそうですし。
もっとも翔太郎の場合、最初の内は
面倒をよく見てくれるいいお兄さん(二枚目)
と保護者に有り難がられていたのが、次第に
余計な事(ハードボイルド)を教える社会不適格者(残念)
の烙印を受けて遠ざけられそうですが。
笑顔で帰路に着く4人だが、その前に、一人の男が立ちはだかる。それは、冒頭で翔太郎がクレームをつけたペットショップの店員だった。
「偉そうに。なーにが街の顔だよ」
「下がってろ!」
不気味なその様子に警戒する翔太郎の前で、男は鼻の穴にガイアメモリを突き刺して変身。――その名を、エナジー。
3人をかばった翔太郎の背中に、エナジードーパントの放った光弾が突き刺さる!
「ははははは、はっはっは、誰も知らない。俺がこの街で一番強い事を。EXEの真のヘットだという事を!」
地面に倒れてピクリとも動かない翔太郎に背を向け、高笑いするペットショップ店員。
まあチンピラの逮捕を終えて、遅れて追いかけてきた照井にばっちり見られたので、この後、
あの世まで振り切られそうですが。
街を守ってきた希望、ハーフボイルド探偵・左翔太郎は、街に潜む悪意の前に、呆気なく命を落としてしまったのか――
−−−−−
「再起動の為の全てを閲覧した。来人――」
シュラウドを看取り、ガイアインパクトを行う為に星の本棚を検索していた若菜は、必要な全ての知識を手に入れ、
工事中の風都タワーを見つめる。
−−−−−
エナジーの光弾を生身に受け、伝統と信頼のなんじゃこりゃーーーーー展開かと思われた翔太郎だが、何故か、生きていた。
どこからか飛来したエクストリームメモリが寸前で、光弾を受け止めてその命を救ったのだ。
「はっはーん…………え?」
フィリップと共に消失した筈のエクストリームメモリを呆然と見つめる翔太郎。
その目の前で、エクストリームメモリから吐き出されるフィリップ。
「やあ、翔太郎」
「なんでだよ……」
「一年前、若菜姉さんが僕に体をくれたんだ」
−−−−−
一年前――再建中の風都タワーを見つめながら、園咲若菜はガイアインパクトを発動した。
「来人! これが私の決めたガイアインパクトよ。――来人」
真っ白な空間、星の記憶の狭間で、若菜に揺り起こされてフィリップは目を覚ます。
「来人、私の体を貴方にあげる」
「え?」
「貴方の相棒の泣き顔、見てられなかったんですもの」
若菜なりのガイアインパクト……それは、フィリップという意識/記憶に、自分の肉体という器を提供する事。
「人類の未来の為に、地球を変えるのは園咲の使命。でも一番ふさわしいのは私じゃない。誰よりも優しい貴方よ、
来人」
人類選別の儀式ではなく、未来をフィリップに託す事。それが、若菜の選んだガイアインパクトの形だった。
ここで一つ注目というか引っかかるのは、若菜が「人類の未来の為に、地球を変える」と言っている事。
これまでの琉兵衛の言動・行動及び、計画されていたガイアインパクトの正体を考えると、琉兵衛の思想は「地球の未来の為に、
人類を変える」であったと思うのですが、これは若菜の解釈――或いは、“本当の若菜”の心という事なのか。
全ての真実を知ってフィリップを選んだ若菜の変化、であるかもしれませんが。
「姉さん……でも僕、どうやって」
冴子「答はそのうち見つかるわ。とりあえずこれからも、風都を守る風でいなさい」
真っ白な空間に現れる、園咲家の人々。
「みんなは……?」
琉兵衛「私達は、地球に選ばれた家族だからね。この星の中から、おまえを見守っているよ」
「父さん……母さん、姉さん!」
駆け寄るフィリップを、無言で手を突き出して止める琉兵衛。
ここで何故か皆、突然の衣装チェンジ。
文音「来人、来ては駄目」
冴子「さよなら、来人」
若菜「さようなら……ありがとう」
「若菜姉さん……初めて貰ったポストカードと、同じ笑顔だ」
若菜「馬鹿……」
衣装チェンジ後の4人は、琉兵衛が色眼鏡をかけていなかったり、フィリップの若菜への台詞などから見るに、
一つだった頃の園咲家の投影、という事なのでしょうが、地球の記憶のイメージ映像にも関わらず、
この期に及んでシュラウドだけサングラス+包帯なのは、地球の記憶にも限界がある事を感じさせる所です。
フィリップが、理想の母さんのハードル上げるから!!
園咲家は皆、現世の因果から解放されてすっきりした感じになってはいるのですが、
存命時に特に自分の悪行を反省したわけでもない冴子さんが妙にいい台詞を貰っているのは、やはりスタッフの愛を感じる所です。
綺麗すぎる感じは若干あるものの、泣きじゃくる若菜を冴子さんが抱きしめ、その冴子の肩に文音が手を置いている、
というのは良いカット。
「ありがとう……」
新たなガイアインパクトによってフィリップを生かし、4人は地球の記憶と一体化して消えていく。
中盤までは積極的でなかったといえ、若菜もミュージアムの犯罪に関わっていたわけで劇中の因果応報として何らかの清算はしなくてはならなかったのですが、
ここで、琉兵衛、冴子、シュラウドを含め、園咲家の贖罪としてのフィリップの救済を行う事で、
綺麗にまとまりました。
そのフィリップに、地球と人類の希望を託すという形で単なる個人的感情以上の意味を付加し、また、
阻止されるべき悪事だったガイアインパクトを、別の良き形で行われた、としたのも面白い。
再び甦ったフィリップは随分と重い荷物を背負う事にはなりましたが、思えばフィリップの死と復元が全ての始まりの一因ではあったわけで、
これはフィリップが現世で背負う、園咲家としての贖罪なのかもしれません。
−−−−−
――こうして肉体崩壊と地球の記憶との一体化による消滅を免れたフィリップは、1年の間、
エクストリームメモリの中で肉体を復元しながら翔太郎をストーキングしていたのだった。
……一歩間違えると、フィリップ女体化する所だったのか。
(多分、若菜の肉体データをフィリップのそれに変換するのに1年間かかったのではないかと思われる)
「うおーーー、フィリップぅ! おまえ!!」
「おっとっと、相変わらず全然ハードボイルドじゃないねぇ」
「翔太郎くんは完成された、ハーフボイルドだからね!」
「んな完成したかねぇ! ははは、うぉーーーーー!!」
歓喜爆発し、テンション高くフィリップとはしゃぐ翔太郎。亜樹子も勢いで、照井に抱き付く。青山姉弟もこれを喜び、そして、
忘れられた男が1人。
「こらー! さっきからなんだ、無視すんなぁ!!」
それは、この街で一番強い男(自称)。
「おっといけねえ。忘れてたぜ。さあ行こうか、フィリップ」
「ああ、相棒」
――『サイクロン』――『ジョーカー』――
「「変身!」」
ここから主題歌が流れだし、ダブルvsエナジーの戦闘をバックに、キャスト&スタッフロール。
復活したダブルは基本の各フォームでエナジーを滅多打ちにし、最後は半分こキックでメモリブレイク。
「決め台詞は、忘れてないだろうね、翔太郎」
「当たり前さ、フィリップ。街を泣かせる悪党に、俺たちが永遠に投げかけ続ける、あの言葉――」
「「さあ、おまえの罪を、数えろ!」」
くるりと回って、派手にアップで決めて、完結。
満足の最終回でした。
独りで戦う翔太郎と締めのダブルの活劇のみならず、少年と翔太郎の交流にハードボイルド、
フィリップと園咲家の別離のシーンも感動的になり、エンタメとして非常に盛りだくさんかつ、綺麗にまとまりました。
翔太郎が感じるフィリップの気配、翔太郎を見つめる緑色の複眼、とフィリップ復活の振りは露骨に行った上で、
幾つかのキーワードで物語が真っ直ぐ繋がっているように見せながら、実際には過去(若菜の登場シーン)と現在が混ざっていた、
というトリッキーな構成。
いくら翔太郎でも猫缶持ったままお見舞いに行かないよな……という所で最初に違和感を作りつつ、
構成上の仕掛けを石田監督が巧く処理。
少し可哀想だったのは、ラスト3話サブキャラ全員に出番を作っているのですが、
この構成の為に刑事コンビは現在の時間軸での出番がありませんでした(笑)
あと、最初に翔太郎が若菜を見舞うシーンで「ずっと眠っていた」と時間軸を誤魔化しているのですが、フィリップが消えて1年、
若菜のガイアインパクトも1年前、という事は若菜が意識不明だったのはせいぜい1〜2週間程度と思われ、
48話ラストで全身包帯ぐるぐるで車椅子だった照井が、若菜を追いかけるシーンで完全復活しているのは
さすがに納得がいかない(笑) 「俺は死なない」にも、程があるぞ照井!
一見、平凡で地味な男(ペットショップ店員)の中に、街を汚す強烈な悪意が潜んでいる、というのも今作らしい劇中最後の敵で良かったと思います。
一応、47−48話で加頭が地球規模のガイアインパクトを起こそうとしたものの、あれは刺身のつまのようなもので
(フィリップはともかく、翔太郎がどこまで、ガイアインパクトの規模を知って戦っていたかも疑問ですし)、
あくまで“街のヒーロー”を貫く形でラストを飾ったのはとても良かったです。
と同時に、物語を“街のヒーロー”でまとめる事でこぢんまりとし過ぎてしまいそうな所を、
街の平和の為に2人で1人での仮面ライダーは戦い続け、いつかそれは地球と人類の未来を変える希望になるかもしれない……と、
フィリップを通して大きな広がりの可能性を提示したのは巧い。
劇中においては「悪」を担っていた園咲家と、「正義」を担っていたヒーローの戦いが、
翔太郎とフィリップを通して「仮面ライダーダブル」の中で統合される、というのはお見事な構造でした。
最終話はラスト直前までフィリップ不在なものの、鳴海探偵事務所にとっては日常的な事件を描いて終わりましたが、
派手方面でやれる事を劇場版に回して、TV本編は日常に即した、という、劇場版とTV版の二重構造、とも思えます。
劇場版の感想で、TV本編でどうやってこのクライマックスバトルを超えるのか? と心配しましたが、劇場版超えを目指すのではなく、
“劇場版と違う方向性”のエンディングを描いた、というのは面白いアイデア。
TV最終回の約一ヶ月前にTV本編とリンクした劇場版を公開する、というハードルの高い企画がどの時点で持ち上がったのかわかりませんが、
劇場版のクライマックスバトルはもともとTV本編用のアイデアだったのではないかな、とは思ってみたり。
“街の希望”をユートピアドーパントにぶつけて倒す、というのはしっくり来ますし。
それを劇場版とTV本編と二つに分ける事で、街とヒーローの繋がりを深く描いた劇場版に対して、
フィリップと翔太郎の絆を中心に人と人の繋がりをより深く描いたTV本編のラスト、という事になったのかな、と。
その点では劇場版を踏まえているかどうかで、結構印象の変わる最終回かもしれません。
映画のストーリーそのものは感想で書いた通り微妙だったのですが、こうしてみると、お薦め通りに劇場版を見て良かったな、と。
……まあこの辺り、全部適当な推測の話ですが(^^;
作品としては、どだいスケジュールと予算の都合であちこち飛び回れるわけではなく、
“なんとなくどこかの地域”になってしまうという撮影舞台の制約を逆手に取り、
“風都”という街を設定してその街のヒーローとして仮面ライダーを置き、「正義と悪の戦い」を、
ローカルヒーロー+都市伝説の構図に落とし込んだのは面白いコンセプトでした。
特にそれにより、00年代も後半に「仮面ライダー」という名称の劇中定義付けという離れ業をやってのけ、
「ヒーローとは何か?」という根源的命題に深く迫ったのは、個人的なツボもあり、非常に良かったです。
実質的なダブルメインライター体制がかなり高いレベルで機能し、シリアスとギャグの振れ幅がかなりありながらも、
全体的に軽妙なタッチでまとまりつつ、持ち込んだ幾つかの主題をきちっと描ききりました。特に、
手が届かないかと思われた琉兵衛やシュラウドの贖罪と清算も最後にまとめきったのは、高評価。
ギミックも見せる、テーマも描く、というのを見事にやりきった作品だと思います。
面白かった。
本編見ながら感想書きながら、書きたい事が色々と思い浮かんでは消えたりするわけなのですが、ラスト3話、
書く事書きたい事が多すぎてだいぶ長くなりつつ頭も煮えてきたので、とりあえずの所、最終回感想はここまでで。
他に何か思いついたら、まとめ……にすると道のりが長いので、何か突発的にメモ的に書くかもしれません。
あー、特に好きだったキャラは、翔太郎と照井と霧彦さんと井坂先生と冴子さんと琉兵衛です!
照井は超好き。あと、散々ネタにしてきましたが、翔太郎は結構好きです。いやホントに。
照井が居なければもっと好きだったと思うのですけど、照井課長が格好良すぎて。照井、妹扱いならOKだけど、所長は振り切れ!!(おぃ)
や、所長、多分この世界でトップクラスのいい女だと思うので、くっついたらくっついたで照井の判断は全く間違っていないとは思いますが。
ががが。……この話題は更に何を書いているかわからなくなりそうなので、えーまあそんな感じで、本当に大満足でした。感想、
長々お付き合い、ありがとうございました。
「「さあ、おまえの罪を、数えろ!!」」
(2016年1月19日)
(2017年3月21日 改訂)
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