■『仮面ライダーW』感想まとめ7■


“Cyclone Effect Don't stop it
君は1人じゃない yeah...”


 ブログ「ものかきの繰り言」の方に連載していた『仮面ライダーW』 感想の、まとめ7(39〜44話)です。文体の統一や、誤字脱字の修正など、若干の改稿をしています。 そこはかとなくサイクロンジョーカー色。

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◆第39話「Gの可能性/バッドシネマパラダイス」◆ (監督:柴崎貴行 脚本:三条陸)
 見所は、映画館に来るとテンションが上がるのか、いつも以上に変なポーズを連発する翔太郎。
 駆け落ち失敗から数日――若菜について心の整理が出来た、と強がるフィリップ。そこへ、映画館で働いている依頼人・虹村がやってくる。
 「劇場で、覚えのない、私の主演映画がかかってるんです!」
 始まったら最後、出入り口が壁になって出る事も出来ない謎の映画……調査に向かう翔太郎と亜樹子だが、劇場の支配人に拒否されてしまう。 どうしたものかと思ったその時――翔太郎の目に飛び込んできたのは、
 『風の左平次 3D』
 の立て看板。こういうネタの連動は好きです(笑)
 大興奮の翔太郎と亜樹子は、仕事なのか、建前なのか、チケットを買ってノリノリでシアターへと乗り込むが、そこで始まったのは、 問題の謎の映画『ジェシカの彷徨と恍惚(以下略)』。
 7時間20分の大長編(そして未完)を強制的に見せられ、怒り心頭の翔太郎の前に姿を見せたドーパントは、壁を植物に変えて逃走。 その情報からフィリップが検索し、ドーパントの正体が、遺伝子を組み換えて物質を別の物に変換する能力を持ったジーン(遺伝子) と判明する。
 ルナでしばいて捕まえたジーンドーパントの正体は、極端な人見知りでドジな、虹村の同僚・川相。 川相はジーンの能力を用いて自らの姿を虹村に変えると、監督・脚本・主演:自分の自主制作映画を撮っていたという、 高度な変態であった。
 文学気取りで無駄に長いタイトル・入れたいものを全部入れてまとまりのない構成・未完、 と学生サークルの自主制作映画ぶりが非常に生々しいのですが、何かスタッフの体験が入っているのでしょうか(笑)
 翔太郎は川相を照井に突き出そうとするが亜樹子がそれに待ったをかけ、何故か照井達も巻き込んで、本物の虹村を主演にした、 川相の自主制作映画作りに協力する事に。
 「何故そんな余計な世話を焼くんだ」
 「言いたい事言えない誰かさんみたいな子は、放っとけないんですー」
 「だ、誰のことだ」
 若菜との件で強がるフィリップと川相を重ねているらしい亜樹子は、同時に、 川相を社会復帰させる事で人間がガイアメモリの誘惑に打ち勝てる事を証明しようと張り切り、 ついでに川相と虹村の恋愛を成立させようとしていた。
 7時間20分の原作を90分にまとめ直す亜樹子プロデューサー、割と有能。かくして――
 (俺たちは、『聖戦士ジェシカ』の完成に、全力を注ぐ羽目になってしまった)
 どシリアスな悲恋展開だった前回から一転、スピック回ばりの、バカ展開。どうして三条さんは、 井坂退場回も財団X登場回も長谷川さんに任せて、このエピソードを書いているのか(笑)
 翔太郎とフィリップがギャグの世界に片足を根元まで突っ込んでいる頃、若菜は琉兵衛から、プレゼントを渡されていた。
 その名を、有機情報制御機関試作タイプ・ガイアプログレッサー。
 琉兵衛はガイアプログレッサーを用いて若菜が完璧になる為に1人のドーパントの名前を挙げる。それはジーンメモリの使い手……川相。
 前半早々に今回のドーパントの正体が判明したと思ったら、そこからある種の人情話(怪人の事情を知って協力、 だがその怪人に迫る悪の影)に繋ぐという、有りそうで無かった変則的な構成。
 若菜は自ら撮影現場に乗り込んで川相をさらおうとし、フィリップと再会。
 前回の今回で弟が深刻に悩むどころかバカな自主制作映画の撮影に協力していて、 お姉さんは真剣に地球の未来について考えずにはいられません。
 クレイドールは珍しく接近戦を展開するとサイクロンジョーカーを上回る戦闘力を見せるが、ダブルはエクストリームになって反撃。
 「クレイドールの能力は見切った。プリズムソードは、再生能力自体を斬れる」
 ……え、そんなトンデモだったの。
 と、これ最初は、プリズムに能力封じの能力があるのかと思ったのですが、ビースト戦を思い返すと、 《対再生能力》という事でしょうか? 能力封じの能力だと今作の世界観では強すぎるし、《対再生》限定なら、 それはそれでどうしてそこに特化? となって、どちらにしろやや唐突な宣言ではあるのですが(^^;
 もしかすると、そもそもビースト戦がここへの伏線という意図だったのかもしれませんが、だとするとちょっとわかりにくかった。
 再生能力を封じられ、転がって這いつくばるクレイドールをメモリブレイクしようと迫るエクストリームの牙! だがその時――
 「あっははははははは」
 高笑いを響かせ、崖の上に立つのは……
  「ズバッと参上! ズバッと解決! 人呼んで、さすらいのドーパント! かいけ」
 腕組みして仁王立ちする園咲冴子であった!
 「今見せてあげる、姉の意地を」
 「あれは、霧彦のナスカメモリ……」
 「井坂先生……」
 霧彦さーーーーーーん(涙)
 スミロドンによりタブーメモリとドライバを失った冴子は、社長室に密かに隠していたナスカメモリを手にし、 覚悟を決めて生体コネクタに直接突き刺すと、オレンジ色のナスカ(L)V3に変身。
 「5月23日、井坂深紅郎を殺したのは貴様だな?!」
 格好いいデザインに対して本編での使われ方がやや消化不良だったナスカが、ここで再利用というのは盛り上がる展開。 霧彦さんの愛が死後も空振りしているのがまた、容赦なさすぎて涙で前が見えません。
 どうして、今作は、ここまで、霧彦さんに厳しいのですか?!
 井坂先生への愛の力で《超高速》を使いこなす冴子のナスカV3はそのスピードでエクストリームを凌駕する戦闘力を見せ、 駆けつけたアクセルトライアルと激突。今回、変な衣装で登場しただけで終わるかと思われた照井課長でしたが、 早回し?を使ってのナスカV3との高速戦闘は、トライアルの特性も生き、格好良かった。
 ナスカV3の範囲攻撃にダブルライダーは手も足も出ずに苦戦し、爆発に巻き込まれそうになるカメラを回収しようと飛び込もうとする亜樹子だったが、 川相に止められる。実は亜樹子P主導の映画製作に全く満足していなかった川相は、ビデオを回収する事よりも、 ジーンメモリの返還を亜樹子に求めるのだった……。
 大暴れするナスカV3、それを見つめる加頭、空回りだった亜樹子の善意と熱意――果たしてGの可能性は、 転がっているクレイドールに一体いかなる力を与えるのか?! 混沌としたまま、次回へ続く。
 クライマックスは今エピソードでのバランス取りを悩んでか、前はギャグ・背景はシリアス、 という映像的に二重構造になっていましたが、個人的にはもう少し、シリアス寄りで良かったかなぁ。

◆第40話「Gの可能性/あなたが許せない」◆ (監督:柴崎貴行 脚本:三条陸)
 最初にざっくりまとめると、川相透の人格改善と社会復帰への道と、フィリップが家族を取り戻す可能性への希望を見いだす事、 を映画作りネタを通して繋げ、ついでに亜樹子の力を描いたのですが、コンセプトは悪くなかったものの、 物語としては上手く収まりませんでした。
 まず、川相が変化する成り行きにドラマ的な面白さが無い。
 前後編の内20分ほどかけて亜樹子の熱量が押し切ったのですが、最終的にはたいて決まりだったり、 そこが今ひとつ物語として面白くなりませんでした。
 次に、川相が変わっても別に見ていて嬉しくも楽しくもない(笑)
 これは結構重要な所で、物語における川相の変化を見て「おお変わった! 良かった!」となる事でカタルシスや面白さが生じるわけですが、 それが全然ない。ド変態が真人間への道を一歩踏み出したのはともかく、その最初の発言が逆ギレ気味演技指導では、 好感の生じようがありません(^^;
 亜樹子が凄い好きだと、「亜樹P報われた!」となって嬉しいかもしれませんが、亜樹子は亜樹子で良いキャラだとは思いますが、 特別思い入れはないので(^^;
 そして上と繋がりますが、ゲストヒロインの虹村さんの造形がてきとう過ぎ。
 自分に変身して勝手に主演映画作って上映していたド変態の映画作りに改めて協力するという39話の時点でかなりネジは飛び気味だったのですが、 その上、口を開いたと思ったら「明るすぎるからもっとダークにやれよ!」とか叫び出す相手には、 右手のブロードソードで兜割りしても許されると思うのですが。
 “善人”で済ますには描写の説得力があまりに足らず、話を転がす為のダシ以上でも以下でもないキャラクターになってしまいました。 まあ、風都の悪女力の反作用で生まれた聖母のような存在なのかもしれませんが!
 そんなこんなで、軸になっている二人のキャラクターにどちらも感情移入するとっかかりが薄いので、 この二人の関係が上手く転がっても特に盛り上がりがなく、しいてはフィリップの心境変化への連動も説得力が薄い。
 こういった連動は、理屈よりも、劇のダイナミズムで発生するものなので。
 そういった訴求力の弱さは感じたのか、川相の変化をより劇的に見せる為に、 クライマックスで川相が亜樹子を流れ弾から守るシーンを描いてポイントを与えていましたが、極端に言うと、 そのシーンを付加しないといけない時点で負け戦というか、これまでの流れと関係なく誰がやってもポイントを稼げる行為なので、 誉められた展開ではありません。
 というわけで、フィリップにとっては再起のエピソードだったのですが、あまり上手く噛み合わなかった、というのが正直な所。 以下、かいつまんで。
 「笑わせないで……。おまえは物なのよ来人。家族じゃない」
 家族とは戦えないというフィリップに対し、冴子は冷たく告げ、一度退いた後、再び若菜を襲撃。
 「死んだ男たちの未練に縛られた亡霊よあなたは!」
 「クレイドールなんて護身用の玩具みたいなメモリしか与えられてないお子様に、大人の女の何がわかるの」
 「なんでっすてぇ?!」
 まあ要するに“姉妹喧嘩”で少々子供化しているという事なのでしょうが、自分で自分を「大人の女」とか言ってしまう冴子さん(笑)
 「川相透を変えるなんて、絶対に不可能だ」
 「おまえはまだ、うちの所長様の凄さを理解してねえよ」
 その所長様は、スリッパでクレイドールにダイレクトアタック。
 「何がミュージアムの女王よ……どいつもこいつも! 流されてばっかで! それ、ホントにあんた達のやりたかった事なの?!」
 「言ったでしょう。私は女王になる。姫は卒業よ」
 だが、クレイドールはジーンの力により全身に融合させたガイアプログレッサーを起動し、 その力はダブルとアクセルを2対1でも上回り、更にプリズム剣の《対再生能力》を無効化する。
 「残念ね、来人。私変わったの。見せてあげる。お姉様もそこでよく見てるといいわ」
 ガイアの力が今、クレイドールから迸り――
 「えくすとりぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃむ!!」

 わ・れ・た!

 個人的にはクレイドールのデザインなら、腕をぐおーんとやって、『大魔神』的な変身が見たかったのですが、 割れずにはいられないらしいエクストリーム。
 クレイドール=土人形はそもそも、神への祈りの器。クレイドールを究めた時、若菜が地球という神の御子になる…… それこそが琉兵衛の狙いであり、ミュージアム最終計画の一環であった。
 ここで琉兵衛は、エクストリームへ至る分析の為にこれまでダブルを泳がせていた事と、加頭が冴子を拾った事を知っているのを示唆。 終盤で黒幕が「お前達は私の手の中で踊っていたに過ぎないのだ」的な発言をするのは好きではないのですが、今作の場合、 明らかに素性の割れている翔太郎達にミュージアムの直接攻撃が無い理由は必要だったので(冴子さんは、“勝てないから”だったけど)、 許容範囲。
 むしろそのクッションの為に、9−10話という、かなり早い内に素性割れしたと見るべきか。
 地球という神の御子、クレイドールエクストリームは、格好良…………くはない(笑)
 もともと幹部怪人としては格好悪い上に弱そうで、早期リタイアか強化変身のどちらかと思われたクレイドールですが、 エクストリーム化したその姿は、ぷかぷか浮かんで触手を伸ばす超凶悪な土偶。
 「なんだこいつは?! 圧倒的すぎる」「どうすりゃいいんだ、こんな相手」
 その破壊力とパワーは桁違いでもはやドーパントのくくりに収まらず、RPGのイベントボスみたいな扱い(笑)
 エクストリームが防御特化のシールドを展開して何とかX土偶の光弾を防ぎ、背後でビルが吹っ飛ぶ中、 X土偶は嗤いながら時空の亀裂を通って去って行く、と全てにおいて規格外な力を見せつける。
 玩具だと思っていたクレイドールが実は最強の可能性を秘めたガイアメモリであった事を知り失意の冴子だが未だ怨念の炎は消えず…… 今回の勢いで退場も危惧した冴子さんですが、ポジションが様変わりしつつまだ踏ん張ってくれるようで良かった。今後、 ガイアメモリ直差しの影響による狂気の部分も出てくるでしょうし、楽しみです。
 そして、クレイドールについて星の図書館で調べるフィリップの前に、若菜が姿を現す。
 「若菜さん。本心を言います。今でも僕は思っている、貴女は大事な家族だと。だから僕も諦めない。必ず貴女を救う。僕は、 僕の家族を取り戻す!」
 「うふふ、ふふふ、馬鹿な子……地球一頭がいいくせに」
 川相は人を傷つけてこそいないものの、映画館にかなり損害を与えた気がするのですが、逮捕までされなかったようで、 映画館の同僚達と映画を作る日々……まあ、映画館を解雇されて借金を背負っていない、 とは言及されていないし今作の世界観としては責任取っていてしかるべきなのですが、 もしかしたら虹村さんが資産家の令嬢で借金の肩代わりとかしてくれたのかもしれない。
 そんなわけで今回の結論は、風都の男達は虹村さんを女神と讃える、聖ジェシカ教団を設立するべき。
 だが次回、ゴッデス虹村の反動で、風都史上最強の悪女現る……?!

◆第41話「Jの迷宮/猟奇的な悪女」◆ (監督:石田秀範 脚本:長谷川圭一)
 刃野幹夫、宝石泥棒の容疑で逮捕。
 「俺は予感がしてたんだよな〜。いつかこんな日がくると、ははは」
 真倉は、“憎めないお調子者”を遙かに通り超えて、すっかり“いつか天罰を受けそうなお調子者”になっていて、ホント酷い(笑)
 今作の場合、翔太郎と亜樹子がかなりコミカルパートも担当しているので、必ずしもコメディリリーフが必要ではなく、 照井の増員により警察メンバーの役割分担を強調した結果、好感度をドブに投げ捨ててでもこう色分けするしか無かったのでしょうが(^^;
 刃野によると馴染みのバーで一杯やった帰り道、帽子とサングラスで顔を隠した謎の女に襲われ、 ポケットにダイヤモンドを突っ込まれた所を通報を受けて駆けつけた警察によって逮捕されたのだという。
 「ダイヤモンドの女、ねぇ……」
 女が身につけていた特徴的なダイヤの指輪を手がかりに、刃野の無実を証明する為に調査を進める翔太郎と亜樹子は、 「怪物が人間を宝石に変える」という噂を耳にする。被害者は若く美しい女ばかりで、既に7人。そして現場付近ではいずれも、 ダイヤを指にはめた帽子の女が目撃されていた……。
 何故か聞き込みシーンのBGMに「Nobody’s Perfect」が流れ、 冒頭の留置場シーンでの変わった照明効果に続いて石田監督がまた変化球を投げているなぁと思ったら、 翔太郎にとって割と重要と思われる回想シーンに繋がり、まあ納得。
 「確かに刃さんは冴えない中年だけど、本当はすげえ男なんだぜ」
 「どうすげえのよ?」
 「ずばり――騙され上手だ」
 警官時代の刃野に追いかけられては「UFOだ!」と叫んで逃げていた学生時代の翔太郎だが、その内に何故か二人は、 UFOとコンタクトを取ろうと風都の空に呼びかける事に。
 「あまりに見事に騙されてくれるお陰で、逆にこっちが嘘に付き合う羽目になる。ま、でも、不思議に悪い気はしないっつーかぁ……ま、 それが騙され上手だ」
 これまで端々でそんな雰囲気はありましたが、学生時代の翔太郎が定期的に警官に追いかけられる程度にはやんちゃしていた事が回想でハッキリと描写され、 刃さんとはその当時からの長い付き合いであった事も判明。
 物語ここまで、いまひとつ有能とも無能ともとれない刃さんでしたが、ある種のはぐれ者の心を掴む才能がある模様。
 サンタちゃんから7人の被害者が全て、会員制のクラブ・ブルートパーズに通っていたモデルだったという情報が入り、 翔太郎と亜樹子はそのクラブへ。入り口でお断りされそうになるが、超人気モデルの上杉誠と知り合った事で、 エキストラ大量投入のクラブ内部への潜入に成功する。
 冒頭のシーンでも何故か、水着の女性達が闊歩する屋上プールで聞き込みとかしていましたが、何かこの時期、 モデル事務所とコネクションでもあってタイアップ回か何かだったのでしょーか。
 クラブで見つけた帽子の女にこれは怪しいと詰め寄った亜樹子、投げられ、蹴られ、 踏まれる。
 という、珍しい所長の被弾シーン。……まあ亜樹子だとギャグ気味になってしまうのですが(笑)
 「私は美しいものが好き。みんな宝石になって、この私を飾るといい」
 照明が落ちるとドーパントが姿を現し、噴出されたガスを浴びた女達は次々と宝石に変わってしまう。
 「私は美しいダイヤ。誰にも傷付ける事は、できない」
 「どうかなぁ? 試してみるか?」
 変身したダブル、変なポーズ対決。なんだか今度の敵は、 霧彦さんばりに翔太郎とのシンクロニティを感じます。
 殴りかかるサイクロンジョーカーだが硬度10ダイヤモンドパワーには打撃が効かず、ヒートメタルの燃える棒で殴っても無効。 ルナトリガーの射撃もダイヤモンドバリアーで跳ね返され、余裕綽々の宝石ドーパントに逃げられてしまう。
 ドーパントの能力を調べようと検索するフィリップだが、星の図書館に現れた若菜に本を奪われ、 動揺から星の図書館にアクセスできなくなってしまう。風都署に向かった翔太郎はそこで上杉誠と再会し、 事件の犯人が上杉の親友・城島泪(るい)だと聞かされる。
 「城島泪……はっ、まさかな翔太郎、そりゃねえや」
 「僕と智と三人でつるんでた……あの、泪です」
 翔太郎と同じように刃野に“世話になった”事がある誠、智、泪の3人は学生時代からの親友同士だったが、一月前、 智が泪に恋愛感情を告白。お似合いのカップルだと祝福しようとした誠だが、泪は誠に告白するという見事な三角関係に発展。 親友同士の関係を壊したくなかった誠は泪を拒絶するがそれから泪の様子がおかしくなり、泪は怪物へと変わり、 智が行方不明になってしまう……。
 自分を悲劇のモテ男ポジションにおいてべらべらと喋る上杉が、凄く怪しい(笑)
 なお、一気に名前が増えた為に最初、「智が誠に告白した」のかと思って、それは友情、 壊れるな……と思ったら、だいぶ違いました(^^;
 泪がドーパントだと思われる事で本格的な捜査を始める照井だが、その泪には、加頭に「勝利の確率を高めるメモリがある」 と吹き込まれた冴子が接触していた。
 ここで冴子が、非常に珍しい生身の肉弾戦。さすがに迫力不足を「回る」事で補う殺陣になりましたが、意外性に加え、 冴子のなりふり構っていられない状況も示す面白いシーンになりました。
 照井達がやってきて、逃げた泪を追った真倉は、泪の強烈な三角蹴りを食らって気絶。アクセルはナスカV3と激突し、 超高速対決は前々回に続いて、格好いい。
 上杉からの情報で泪と接触した翔太郎は、その身につけている指輪が、 一ヶ月前から行方不明の智を変化させたものではないかと問い詰めるが、踏まれる。
 泪は宝石ドーパントに変身し、ダブルも変身。エクストリーム発動からプリズム剣を振るう、が、しかし!
 「ダイヤは美しく、決して傷つかない! あはははは!!」
 プリズム剣、チャージブレイク、そしてダブルエクストリーム、何と全ての必殺技がダイヤモンドを砕けないという、非常事態。 やはり、風都では悪女こそ最強のフォームなのか?!
 その頃留置場の刃野は、かつての泪の言葉を思い出していた。
 「好きになればなるほど、最後には壊したくなる……」
 果たして、最後に狙われるのは、上杉なのか? 愛憎渦巻く三角関係の行く末や如何に…………という所なのですが、 泪が女装にしか見えないのは私だけでしょーか……?(^^; 物語中では女性だけど、 アクションシーンで男性が吹き替えているのでそう見えるという可能性もあるし、 諸々含めて意図的に男性っぽい体格の女性をキャスティングしたのかもしれませんが、どうしても暴れている泪が、 “女装した智”にしか見えない。
 予告から本編から「悪女」を強調しすぎなのもどうも怪しく思えて仕方ないのですが、これはメタに穿ち過ぎか。とにかく今私の中では、 上述の勘違いも含めて、“本当は上杉を好きな智が同じく上杉の事を好きな泪を宝石に変えてしまった上で指輪として身につけ、 泪そっくりに女装して上杉の周囲に出没している”という物凄く倒錯した物語が展開しているのですが、 えー……早く後編を見ろ私。
 でも先に後編を見てしまうとこの辺りのライブ感が薄れるので、敢えて後編を我慢して感想を書きました!
 あと、単に旧知だからというだけかもしれませんが、刃さんが妙にはっきり「城島泪……はっ、まさかな翔太郎、そりゃねえや」 と断定しているので、そもそも城島泪は男という可能性も否定できないとか思うわけであります大佐!

◆第42話「Jの迷宮/ダイヤモンドは傷ついて」◆ (監督:石田秀範 脚本:長谷川圭一)
 ダブルvsジュエルの戦闘に、アクセルTとナスカV3の高速戦闘が乱入し、 エクストリームのシールドビームが反射されてジュエル以外3人の変身が解除されて痛み分けで水入り。
 こと防御力に関してはここまでの劇中で最強っぽいジュエルですが、“防御が最大の攻撃”という描写は数多の怪人の中でも、 なかなか珍しいような。
 泪、誠、智、毎日不良達と大げんかしていた三人組の事を思い出す刃野。
 「刃野、あたしらが喧嘩するのは、この街が大好きだから」
 ところがある日、子供達が作った土手の風車を泪が破壊してしまう。
 「おまえ、この街が好きだって言ってたろう」
 「好きよ。でもあたし、好きになればなるほど、最後には壊したくなる」
 回想シーンを見る限り、泪はちゃんと女でした。男3人の倒錯した友情とか無かった……!
 翔太郎に、「上杉が危ない」とその情報を伝えた刃野の前に、泪が姿を見せる。ここで格好良く説得するわけではなく、 「俺を宝石に変える気だな?!」と本気で怯えて後ずさる辺りが実に刃野刑事というか、物凄く意表を突く展開です(笑)
 刃野という男の存在が、間違いなく一人の人間を救うにも関わらず、その刃野は劇中でさっぱり格好良く描かれないという空中殺法は、 なかなかお見事。
 「あんな単純で騙されやすい男、宝石にする価値もない」
 「おい、勘違いするなよ。刃さんは騙されやすいんじゃねぇ、騙され上手なんだ。昔っから刃さんに世話になりながら、 そんな事にも気付けねえのか。情けねえぜ」
 泪は、刃野も翔太郎も自分に騙されている、と言い残して逃走し、その言葉に考え込む翔太郎。 フィリップはジュエルの能力を知る為に再び星の本棚へ入るが、そこでまたも若菜に弄ばれ、クレイドールに変身した若菜に、 踏まれる。
 かつてここまで、主人公達が前後編で踏まれまくる作品があっただろうか……!
 既に若菜の星の本棚とのシンクロ率はフィリップを上回り、フィリップの検索を感知した上で、 フィリップよりも自在に本棚の中を動き回れるようになっていた。下手をすればそのままミュージアムに拉致されてしまう、 と思い悩むフィリップだが、亜樹子の「半分こ」発言に何かを閃くと、再び本棚へと向かう――。
 一方、泪から会いたいと連絡があった、と事務所を上杉が訪れ、翔太郎と亜樹子はそれに同行するが、 上杉を罠へ誘い込もうとした泪が3人の目の前で爆死。泪は愛する上杉と爆死心中を目論むもミスにより死亡し、 事件はこれで幕を閉じたのか? 報告書を作る翔太郎だが、そこには事件の真相、最後の1ページがまだ欠けていた。
 「じゃあ行こうか」
 「行くって、どこに?」
 「……報告書の、ピリオドを打ちにさ」
 わざわざ亜樹子の前でこれ見よがしに報告書をタイプする辺り、いつか使いたかった秘蔵の台詞ナンバー18 ぐらいだったと思われます。
 翔太郎達はフェリーに乗り込むと、そこに居た上杉を事件の真犯人でありドーパントの正体として糾弾し、 そこへ粉々に吹っ飛んだ筈の泪も姿を現す。
 翔太郎達が目撃した、泪のドーパントへの変身は、ジュエルの能力により空気中に鉱石の粒子を散らばらせる事で作った鏡の映像であり、 フェイク。女達を宝石に変えていたのは上杉であり、恋人であった智を宝石に変えて人質にされた泪は、 その命令に従ってわざと現場で目撃される怪しい女を演じていたのだった。かつて風車を破壊したのも上杉であり、 当時上杉に惹かれていた泪はそれをかばうが、やがて上杉の性質に恐れを抱き、見るからに三下ちんぴらだった智と結ばれる。だが、 泪が自分を愛していると思っていた上杉はそれを許さず、己の凶行に二人を巻き込んだのであった。
 …………あれ? これだと、上杉は本当は智を愛していたという解釈も成り立つような(待て)
 「僕はね、完璧主義者なんだよ。愛せば愛すだけ、その不完全さが目につく。それが次第に、我慢できなくなる。 全部消してしまいたくなる。おまえの事もそうさ、泪」
 とんだサイコさんだった上杉は、智の指輪を海に投げ捨てるが、そこへ飛び込んできた青い疾風が指輪をキャッチ。そうそれは、 時々戦闘中にトライアルになれる事を忘れていないか心配になる照井竜の、アクセルトライアルであった!
 このタイミングの為に待機していたらしい課長、今回は凄く小間使い。でも仕事だから文句言わずに自分の役割を果たすのが課長のいい所。 なお爆死寸前の泪を救ったのも、現場で待機していたアクセルTであった。
 「「さあ、おまえの罪を数えろ」」
 人間のクズではあるがここまで最強クラスの力を誇るジュエルに苦戦するダブルとアクセル。だがフィリップは既に、 ジュエルの能力とその弱点について検索を完了していた。フィリップは故意にシンクロ率を下げて星の本棚へ入ると、 X土偶を擦り抜け、若菜が開いたジュエルの本だけをまんまと閲覧する事に成功していたのだ。
 先に、シンクロ率の低かった若菜が本棚には入れるけど本とフィリップに触れない、というのを伏線として利用し、 フィリップが頭脳プレイ。どうやって意図的にシンクロ率を下げたのかは謎ですが、まあ、そう出来るという事なのでしょう。
 ダブルはエクストリーム化すると、鉱石の弱点である、割れやすい方向――“石目”を正確にプリズム剣で貫き、ジュエルを撃破。
 「るい……おまえが……刃野みたいな、あんな刑事かばわなきゃ……こんな奴等、呼び寄せる事なかったのに。なぜ刃野を……?!」
 「あの人だけは傷つけたくなかった。昔から、どんな嘘にもすぐに騙されて……馬鹿な人」
 ここで、「Nobody’s Perfect」が流れ、泪と刃野の回想シーン。
 「おまえもう絶対喧嘩しないって約束したろ」
 「ダチが人質に取られたんだよ」
 「――そんな事が! よしわかった。いいか、でももう二度と、喧嘩すんじゃねえぞ。わかったか」
 あまりに簡単に、嘘を信じる刃野。その姿に泪は、その嘘を守る。
 「なんだかあたし、騙されたあいつに、付き合わなきゃならない気がして……本当に、二度と喧嘩しなかった。だから、あの人は、 私の恩人」
 「僕の……完璧な計画が…………あんな、間抜けで騙されやすい、刑事の為に……」
 「上杉、一言云っておくぞ。刃さんは騙されやすいんじゃねえ――騙され上手だ」
 「Nobody’s Perfect」で翔太郎と泪の回想を重ね、今回のキーとして「騙され上手」で締める、という構成。 BGMというのは基本的に、シーンの意味を方向づける為に用いるわけですが、今作の切り札中の切り札である 「Nobody’s Perfect」を用いるのは少々ズルながら、綺麗にまとまりました。
 終盤のサブキャラエピソードで、普通に作ると刃野が格好良い所を見せて(最後に説得に現れたり) わかりやすくいい話にしてしまいがちな所を、刃野がかなり間抜けな所は弄らないまま、 そんな刃野の影響で周りのちょっと折れ曲がりそうになっている若者達が真っ直ぐになる事がある、そして刃野は終始蚊帳の外、 というか檻の中、という形の変化球にしたのは面白かった所。
 特に、刃野を急に格好良くしてしまうのではなく、格好悪いけど、そんな大人の真っ直ぐな格好悪さが人を救う事もある、 としたのは良かった。
 史上最もマキシマムドライブ〜メモリブレイクに長時間耐えた男・上杉誠も遂に倒れ、ジュエルメモリが砕け散ると、 指輪から元に戻った智は泪としっかり抱き合う。
 (女性達も全て元に戻り、今度こそ、事件は終わった)
 ……で、全員、船でどこまで行くんだ(笑)
 調子に乗りまくっていた真倉は180°態度を改めて下っ端に戻り、「もう俺は簡単には騙されねえぞ」と宣言する刃野だが、 翔太郎の「あ、雪男!」という言葉に走り出して中年男の人格は一朝一夕では変わらず、 しかし突然の冷気と共に風都署の前に雪男らしい怪物が通りすがって嘘から出た真……? でオチ。
 まあどう考えてもドーパントなので、驚いてクラクラしている場合ではないぞ、翔太郎。
 犯人が悪女だと思ったら、その背後にとんでもないクズ男が居た、という風都=悪女 という約束事を逆手にとってミスディレクションに使うという、ある種の禁じ手エピソード(笑)  真っ当にやるとアンフェアになりすぎると考えたのか、予告から「悪女」を強調する事で、 むしろ悪女ではなさそうという流れを作って物語を組んだのは、良い配慮だったと思います。
 気になった点としては、少々ジュエルが強すぎた事。各ドーパントの特殊能力に焦点を当てる事で単純なパワーインフレを巧く避けてきた今作ですが、 防御特化型とはいえビームも出せるし、真っ向勝負でもジュエルがやたらめったら強くて、一般市民ドーパントが、 どう見てもナスカ婿殿より強そうなのはどうだったのか(笑)
 この星は、霧彦さんに厳しい。

◆第43話「Oの連鎖/老人探偵」◆ (監督:坂本浩一 脚本:長谷川圭一)
 家族の墓を訪れた照井(トライアル仕様?の青ジャケットが格好いい)は、そこに、既に誰かが供えていた花を見る。 照井の家族が殺されたのが「去年の8月」という事なので、ちょうど命日という事でしょうか。 照井の家族が殺された時期がハッキリしているのは照井のアクセル修行期間に説得力を増させる為だと思っていましたが、そうか、 ちょうど終盤に照井をクローズアップする話を持ってくるという計算もあったのか。
 鳴海探偵事務所を、10歳の娘が老婆になってしまったという依頼人が訪れる。調査の結果背後に浮上したのは、「老けさせ屋」の存在。 ウォッチャマンからの情報で老けさせ屋との接触に成功する翔太郎達だが、その正体はオールドドーパントであった。
 また凄いドーパントが出てきましたが、エジプトの神官のミイラ、辺りをモチーフにしたと思われるデザインが案外と格好いい。
 オールドは手から謎のもやもやを放ち、亜樹子をかばってその直撃を受けるアクセル。
 「おまえ、俺の波動の効果が出てないな、何故だ」
 アクセルはちょっと痛いだけで済んだが、同じもやもやを受けたエクストリームは状態異常となり、変身が強制解除された隙に、 オールドは逃走。照井同様にフィリップは何ともなかったが、翔太郎がもやもやの効果により、老化してしまう。
 「あの攻撃、確か、前もどこかで……」
 オールドのもやもやのエフェクトがタブーの攻撃に似ているなぁと思ったら意図的なもので、タブーの高笑いを思い出すフィリップ。 そこに思わせぶりにシュラウドが通りすがり、フィリップと照井は老化した翔太郎を 放置して 亜樹子に任せてシュラウドを追う。
 何の躊躇いもなくシュラウドを追って、二人ともけっこう酷い(笑)
 「あなた、やっぱり特殊体質ね。ライトと一緒。左翔太郎はもう使い物にならない。あなた達二人で、ダブルになりなさい」
 相変わらず、道端の汚物のように嫌われているな……!
 「あなたは……まだそんな事を!」
 「フィリップのパートナーは左しかありえない」
 「それでは究極のダブルになれないわ」
 「究極の、ダブル……」
 「サイクロンアクセルエクストリーム」
 また凄い名前が出てきました。
 ビースト回の時に、照井はフィリップの真のパートナーとなるべく養成されていたという示唆がありましたが、 そもそもアクセルメモリ自体が、ダブルの究極フォーム用だった模様。
 ジョーカーは……ジョーカーは…………試供品だった!!
 という、哀しいけど、深く頷ける現実。
 「そのパワーの源は、強い憎しみ。二人で最強の戦闘マシーンになれば、あのドーパントに勝てる。 そして――園咲琉兵衛をも倒せる」
 園咲琉兵衛を倒す為、人間の優しさを捨てた究極の戦闘マシーンになる事を求めるシュラウド……て、背景の思想は違うけど、 MX−A1か(笑)
 戦闘マシーンになる事を拒み、「仮面ライダーダブル」として人の優しさを捨てない事でエクストリームへ進化を遂げたフィリップだが、 ここで再び、左翔太郎みたいな夢ばかり見ていてハードボイルド気取りの癖に女に弱くて人間として薄っぺらくて預貯金0で一生うだつのあがらなそうなクズゴミ野郎 (※個人の感想です)は生ゴミと一緒に捨ててしまいなさい論が再浮上。終盤へ向けての重要なエピソードであった31−32話 (「風が呼ぶB」)、エクストリーム誕生編が究極の力と繋がってくるという展開。
 そこかしこにヒーロー物の歴史と様々な作品へのオマージュを漂わせ、また、 従来のヒーロー物において無自覚になってしまっていた部分を作品個別に描き直す事で現代に立脚しえるヒーロー物の再構成を志向した 《平成ライダー》を、更に再構成する事で新たな10年へのベースとなる事を目指したと思われる今作において、最強の力が、 究極正義の執行者ならぬ“究極憎悪の復讐者”にこそ宿るのだと提示されるというのは、過去の歴史を意識的に踏まえている作品だけに、 実に面白い。
 そもそも、“ヒーローの動機付けが「復讐」”という物語は必ずしもイレギュラーというわけではなく、 復讐譚そのものはむしろオーソドックスな劇作の一つであり、“ヒーロー物”に限ってもしばしば見られるスタート地点なのですが、 ここでもう一度改めて、正面からそこに向き合ってみよう、という強い意識が感じられます。
 「今度ばかりは貴方達から頼む事になるわ……究極のダブルになりたいと」
 フィリップはオールドについて検索しようとするが、そこでは若菜がシュラウドの事を調べようとして混乱していた。 琉兵衛からシュラウドについて聞いた若菜はシュラウドを探していたが、「あなた…………まだあの女の正体を知らないみたいね」 と言い残して姿を消す。
 その頃、亜樹子は依頼人の母親を、被害者周辺の聞き込みの時に怪しいと感じていた、ママ友の所へ連れて行くが、そこでどんぴしゃり、 老けさせ屋に謝礼を渡した直後の所に行き合う。事件の背後には、自分の娘を舞台の主役にする為にライバルになる子供を蹴落とそうとする、 親の醜い嫉妬があったのだ……という非常に嫌な展開。
 「ホント、最悪の人間だね。許さないよ」
 老人翔太郎が動き回れないという事で、代わりを務めるフィリップが、珍しくストレートに格好いい正統派のヒーローシーン。
 「翔太郎、ファングに変身だ!」
 「あ〜〜〜、よく聞こえませんが」
 オールドに襲われたフィリップは翔太郎に連絡を取るが、事務所で真倉に面倒を見られる肝心の翔太郎は、 すっかり耳が遠くなりテンポもゆるーくなっていた。
 「早く、ピンチなんだ!」
 だがその一言で切り替わり、切れていたスイッチの入る老翔太郎。
 「おいまっきー、水をくれ、水!」
 水を何に使うのかと思ったら、単純に真倉を台所に追い払う為でした。そういえば、真倉には正体を隠しているから、 目の前で変身できないのか。
 ダブルは依頼人の前では特に気にせずがんがん変身するので、 真倉(&刃野)に正体を隠している理由は今ひとつわからないというか意味をあまり感じないのですが、 官憲には正体を知られたくないとか先代からの方針でもあるのか。
 さすがにこの局面で、秘密のヒーローの方がハードボイルド、とかいう理由ではないと思いたい(^^;
 相変わらずの回避能力の高さをフィリップが見せ、震える手で、翔太郎はなんとか変身。 普段表に出ないフィリップを正統派に格好良く見せつつ、老翔太郎には老翔太郎なりの土壇場での格好良さを出すという、巧い案配。
 しかし、やはり老人翔太郎での戦いは無理があり、オールドの攻勢を許してしまうファングジョーカー。 わざとバランスを崩してのへっぴりキックとか、右半身で左半身を起こそうとするとか、面白アクション演出。
 妙に格好いい音楽で危機に陥るファングと、事件の真相を知って娘の前で醜く掴み合う母親達の争いを同時進行し、 そこへおもむろに現れたシュラウドは、「YOU、素直に土下座しちゃいなYO」と戦いを見つめてニヤニヤしていた。
 「やはりこいつを倒すには……究極のダブル、サイクロンアクセルエクストリームになるしかないのか」
 その頃、風都ホテルでは加頭がアタッシュケースに詰まった大量のガイアメモリを見つめていた。 それはかつてミュージアムを裏切った女が開発し、封印されていたものを、財団Xが次世代型ガイアメモリとして完成させたもの。 そこへやってきた照井は立ち去る加頭と擦れ違い、冴子にシュラウドと園咲家の関係について問い詰める。
 冴子さん、太腿をアピールしながら、おもむろにセクシービリヤードを開始。
 「これが私の父、園咲琉兵衛。これが、シュラウド」
 9番の的球を父に、白の手玉をシュラウドに例えた冴子は、ハードボイルドにブレイクショット。
 「あの女はこの一つの球を落とす為に、周りの球全てを動かした。――あなたも、あなたの家族も」
 「俺の家族だと?」
 「今落ちたのが、あなたの家族」
 「何を言っている」
 「わからないの? あの女が全て仕組んだのよ。あなたの運命も」
 思えば照井竜の本格登場がビリヤードのシーンからだったわけで、これは会話シーンに面白みをつけつつ、 作品全体のテイストを合わせた好演出。
 そして照井は、冴子の口から恐るべき事実を聞く。
 「井坂先生にウェザーのメモリを渡したのは――シュラウドよ」
 照井竜を見舞った悲劇、そして復讐の為の戦い……全てはシュラウドに仕組まれたものだったのか? 園咲琉兵衛を執拗に狙う怨念の塊、 シュラウドの正体は? 二人で一人のハーフボイルド探偵は今度こそコンビ解散してしまうのか?! 次回、 左翔太郎の明日はリアルにどっちだ?!
 それにしても、ビースト回を乗り越えた後なのでさすがに「翔太郎、もう、捨てちゃおうかなー」と口にこそ出さないものの、 オールドに苦戦して少し悩むあたり、フィリップはメンタル弱い(笑) ステータス的に完璧超人に近いフィリップはメンタル弱くて、 知勇兼備の上にメンタルも強い照井はしかし<RC>低くて出目が悪いので衝動判定に失敗しまくりで、 翔太郎は色々アレだけどシティアドベンチャー向きでハートが強い、と今作の三者三様の分け方は面白い。
 地味なポイントとしては、老けメイクと老け演技で無理をさせずに、老人翔太郎を別キャスティングしたのは良かったと思います。 どうしても老けメイクは過剰になってしまい、言い方悪いけど、必要以上に画面が見苦しくなってしまうので。
 そして、案外とお年寄りには優しいまっきー。これは前回で株を地の底に落として取引停止状態にしてしまったので、 せめてものフォローでしょうが(笑)

◆第44話「Oの連鎖/シュラウドの告白」◆ (監督:坂本浩一 脚本:長谷川圭一)
 照井課長超格好いい祭で、個人的に大フィーバー。
 「占いしてて気付いたよ。人は自分の幸せと同じぐらい、他人の不幸を願ってるってなぁ。俺はこれからも商売を続けるぜ。 人の恨みを晴らし続けてやる。うへへへへへへ」
 「恨み……」
 エクストリームにはたかれてオールドは撤退するが、その捨て台詞を聞き、何やら暗い炎が点ってしまう依頼人。
 前編のラストでピンチを煽って作った引きを、後編の冒頭でだいたい一度片付ける都合上、 敵の一時退却理由が強引になりがちなのは2話完結形式が多い《平成ライダー》の構造的短所の一つですが、 エクストリームメモリは強すぎます(笑)
 その頃、冴子は照井を精神的に追い込もうとシュラウドに関する暴露を続けていた。
 「あの女が井坂先生を怪物にし、あなたの家族を亡き者にした」
 「シュラウド……奴が俺の、家族を」
 照井の立場からすると冴子の言動をそのまま鵜呑みにするのもどうかとは思いますが、素直にアクセル剣を受け取って修行に励んだり、 井坂の今際の際の台詞を聞いてシュラウドに詰め寄るも「運命はミュージアムと戦う事」と吹き込まれて矛先を変えたり、 課長は課長で割と、転がされやすい体質なのかもしれない。
 ぶちぎれ照井はアクセル剣を引きずりながら、シュラウドが多分ポエムとか作って暇潰しをしている森へ。
 「なぜ俺だった……?」
 照井がシュラウドに選ばれた理由――それは、照井竜が精神干渉タイプのドーパントの攻撃に耐えられる、特殊体質である為だった。 その為オールドの加齢もやもや攻撃が効かず、同タイプのテラーの攻撃にも耐性がある事を見込まれた照井は、 シュラウドにとって願っても無い駒だったのである。
 ライアーは……? と思いますが、あれは違うタイプの精神干渉なのか。この辺り、照井に「選ばれた理由」があった、 というのは良いのですが、その理由付けは如何にも後出しという感じになってしまい、惜しい(^^;
 「憎しみこそが、ダブルサイクロンアクセルエクストリームの源」
 テラードーパント打倒の尖兵としてアクセルの力を与え、照井の復讐心を煽っていた事を認めるシュラウドだが、 井坂にウェザーメモリを渡した件については、ここまで来て何故か口ごもるも、それを認める。
 またしても衝動判定に失敗、むしろしない勢いの照井は生身でアクセル剣を振りかぶってシュラウドに襲いかかるが、 シュラウドの銃撃で剣を弾かれる。
 「とてもいい目をしている。憎しみに満ちた目」
 車検を振り切りブレーキ壊れっぱなしの照井はアクセルに変身するが、シュラウドは銃にボムメモリを装着すると反撃。シュラウド、 けっこう強い。照井の問いに対し、フィリップを追い込む為にオールドドーパントを利用して翔太郎を排除した事も認めるシュラウド。
 「さあ、私を憎みなさい。もっと憎むのよ……!」
 「俺たちは、貴様の道具じゃない!」
 アクセルはトライアルを発動し、銃撃をかいくぐるとシュラウドの喉元に迫る。ハイキックと銃をお互いに突き付けて静止するのですが、 脚を蹴り上げた状態で止まるアクセルTの体勢維持が地味に凄いような。
 「殺れ。私の命を絶てば、おまえは完全なる憎しみの化身となる」
 復讐の超兵器というと個人的にはダイナロボ(『科学戦隊ダイナマン』)を思い出す所ですが、 これだけ憎悪と復讐を煽った末のダブルサイクロンアクセルエクストリームがどれぐらいトンデモなのか、 ちょっぴり見てみたくなってきます(笑)
 指先一つで高層ビルぐらい破壊できそう。
 その時、加頭からの情報で照井を追っていた若菜がクレイドールとして登場し、シュラウドの命を狙う。
 「その女の本名は園咲フミネ。私と来人の、実の母親よ」
 長らく空いていた空白に埋まる、最後のピース。
 アクセルTが割って入ってシュラウドは逃走し、若菜も帰還。衝撃の真実を知り、残された照井は、 森の中に照井家の墓に供えられていたのと同じ白い花が咲いている事に気付く……。
 その頃、鳴海探偵事務所を二人の老女が訪れていた。一人はそもそもの依頼人の娘であり、もう一人はその娘の友達。 娘を老化させられた復讐として、依頼人がオールドドーパントへ意趣返しを頼んだのである。
 人を呪わば穴二つとはいうものの、母親のエゴと嫉妬により、親友同士の子供が老人にされるという事態に、 いたたまれない空気になる事務所、そして怒りの炎を燃やす翔太郎。
 劇団では、やられたからやり返しただけで当然の復讐だ、と娘達の目の前で母親2人が罵り合い、それを照井が一喝する。
 「いい加減にしろ! 自分が何をやっているかわかっているのか」
 「あたしはただ、娘の為に……」
 「違う。あんたは自分の憎しみをぶつけただけだ。見てみろ。子供達を」
 復讐はいつしか、誰かの為を言い訳に、自分の憎しみをぶつける行為に変質してしまう。
 「愚かだ。あんたは」
 己に言い聞かせるかのように、呟く照井。
 剥き出しになった人間のエゴをゲストキャラを用いて描き、ここで今回のエピソードのお題と、 照井の抱えるテーマである「復讐」が繋がる、というのは鮮やか。
 2人の母親は泣きじゃくる娘達の姿に争いをやめ、そこへやってきた劇団長の老人が頭を下げる。
 「親の子供への愛は、理屈ではないんですよ。もともとは、愛なんです。だから……許してやってください」
 ここは正直、なんだかなぁ、という所。それで済ますには非常に納得しがたく、ぽっと出のサブキャラに強引にまとめさせるには、 場が歪みすぎていました。今回のお題と繋げて亜樹子に「お年寄りの言葉は重みがある」みたいに言わせるのも、 かえってくどくていやらしい(説得力の部分を「老人の言葉」だけに置いているわけで、逃げているといっていい)。
 ここで「親子の愛」を持ち出さないとこの後の展開に綺麗に繋がらない為に多少の無理をしなくてはならなかったのでしょうが、 これなら、困った時のおやっさんを持ち出した方がまだ良かったような気はします。おやっさんは今作全体の親でもありますし、 多少無茶を言っても、世界観、という事で説得力が補強できますし。
 まあここに関しては、照井に「理由」を与える事が必要だったのであり、この親子の揉め事がそれでまとかったかというとそうでもない、 という解釈をして良いのかと思いますが、それにしてもどうしても、持ち出された理屈そのものにもやもやします(^^;
 今回、前後編のエピソードとしても、1年間のドラマのエピソードとしても完成度が高かっただけに、ここが処理しきれなかったのは、 とても惜しい。
 「愛……」
 照井は己の中に一つの答を見いだし、再びシュラウドの元を訪れる。
 「覚悟は出来たの? 究極のダブルになる覚悟は」
 「俺は、ダブルにはならない」
 「なに?! だったら、何をしに来た」
 「貴方を許しに」
 課長・超格好いい。
 以前に、左翔太郎が人の善意を信じる男なら、照井竜は人の悪意を背負っていく男ではないか、と書きましたが、その上で、 その悪意を「憎む」のではなく「許す」事を選ぶ照井。
 ここで照井が、数多の傷を負いながら、負の連鎖を止めようとする男に。
 「貴方は、自分の復讐の為に多くの人間を巻き込み、傷つけた。貴方をそこまで駆り立てたもの、貴方を復讐鬼に変えたもの。 それは――愛だ。息子への愛」
 「そうよ、私は……来人を……愛していた」
 かつて幸せだった園咲家――しかしある時から変質した琉兵衛は、来人を道具のように扱い始める。
 「来人を渡せ。その子はもう、普通の子供ではない。地球の子だよ」
 そうはさせまいと抵抗する妻に対し、琉兵衛はテラーに変身。
 「フミネ、おまえにもう、用は無い。はははははははははは」
 テラーの攻撃を受けて顔と声を失った園咲フミネは、園咲家を出、復讐鬼シュラウドとなる。
 回想シーンで、旅行鞄に荷物まとめて出て行っているのですが、琉兵衛がトドメを刺すわけでも追っ手を放つわけでもなかったのは何か意図があるのか、 それともただの話の都合なのか。出来れば前者であってほしいですが。
 テラーの放つ絶対の恐怖に打ち勝てる強い感情は、研ぎ澄まされた憎悪しかないと信じるシュラウド(恐らく、実体験)は、 愛する息子・来人を取り戻す為、全てを利用し、その日の為の舞台を作り上げてきた。照井についてきていたフィリップがこの真相を知り、 動揺するシュラウドに対し、照井はそれを覆す事を断言する。
 「今から証明してやる。オールドドーパントを倒し、闇の力に打ち克つのが、憎しみなんかじゃないという事を。 ――俺たち3人で」
 課長・超格好いいぃ。
 「3人?」
 「俺と、フィリップと――左翔太郎だ」
 その頃、老翔太郎は老けさせ屋と対面していた。
 「おい、俺に勝てると思ってんの?」
 「勝てる。さあ、お前の罪を、数えるんじゃ」
 老翔太郎は杖で奮戦し、怒りの老けさせ屋がオールドに変身した所に、照井とフィリップが到着して、それぞれ変身。 シュラウドが見つめる中、2人の仮面ライダーはオールドに立ち向かうと、ダブルを狙って放たれたもやもやを、 アクセルが壁となって防ぐ。
 「よく見ていろ、シュラウド。憎しみのダブルなど、必要無い」
 アクセルはそのまま突撃するともやもやを自分に集中させ、ダブルがエクストリームに空中変身して背後からジャンプ斬り。 もはやエクストリーム化する必要も無いのですが、こういう細々したギミックの使い方は好きです(笑)
 オールドは反転して裏面を見せ、アクセルはトライアルを発動。ここで、アクセルのテーマ曲である「Leave all behind」が流れだし、 アクセルはトライアル状態で右手にアクセル剣、左手にトライアルメモリを構える。

 「俺は、ダブルではなく……仮面ライダ― ――アクセルだ!」

 課長ぉぉぉ、超格好いいぃぃ!!!

何もかも振り切って
悲しみさえも throw away
絶望まで運んでいく Leave all behind
音に追いつくほど 時間を抜き去るほど
アクセル 空の果てまで走れ

 憎悪を乗り越え、憎しみの連鎖を止める、罪を受け止め人を許す強さを見いだした仮面ライダーアクセルは、 スピード特化のトライアルで超重量のアクセル剣を振り回して標的を微塵切りにするという、 エンジン剣マキシマムトライアル流星斬りにより、オールドドーパントを千枚おろし。
 「絶望が――おまえのゴールだ」
 トライアルのマキシマムドライブはどうにも微妙でしたが、ここでこの合わせ技は、物凄く格好良かったです。むしろ、 最初からこれをやるつもりだったと言われたら信じる。
 オールドドーパントのメモリブレイクによって翔太郎は元に戻り、そして照井は、墓に供えられていた白い花についてシュラウドに問う。
 「あなたは、井坂に俺の家族を襲わせる所までは企んでいなかった。違うか?」
 照井の言葉にシュラウドは、井坂にメモリを渡したのは、テラーに対する井坂の渇望を利用しようと考えただけであり、 井坂があそこまで暴走するのは計算外であったと告白し、謝罪。
 あくまで自己申告ではありますが、全て計画通りだといやらしいし、イレギュラーをも利用したというほうがしっくりは来ます。
 そしてハッキリするのは、照井竜は、「許す理由」を探していたのだな、と。この「理由」が、劇団長の言葉だけだと白けるのですが、 既にその前のシーンで白い花に気付いており、照井に必要な積み重ねの最後の一押しだったと考えれば、 合わせ技一本でギリギリOKという範囲。
 この辺り少々複雑なのですが、あのシーンで語られた理屈について視聴者としては全く納得できないけど、 物語の中で積み重ねられてきた照井の「理由」としてはわからないでもなく、照井がそこで納得して受け入れられるならそれでいい、 という程度には照井は好き。
 勿論これは既に実行犯であるウェザーはぶっ飛ばし済み、というのも大きいのですが、 その井坂先生に関してもメモリブレイク後は逮捕しようとしていましたし、 照井の復讐に対するスタンスの変化はこれまでの物語の中で描かれています。その上で前回の冒頭では「仲間」について言及しており、 それら全ての積み重ねとして、「貴方を許しに」というのが、罪と罰/贖罪と復讐、という今作のテーマに対する、 照井なりの到達点なのだな、と。
 「もう貴方は……誰も傷つける必要は無い。俺たちが園咲琉兵衛を倒す。――仮面ライダーとして」
 そしてこの、憎しみに囚われず復讐鬼を解放する事が、照井にとってのヒーローの勝利、 仮面ライダーアクセルである事の一つの意味なのでありましょう。
 シュラウドは歩み去り、悩んでいたフィリップは翔太郎に促されて後を追うが、その姿は消えてしまう。
 フィリップと感動の対話中にクレイドールにぼかーんされるのかと思いましたが、そんな事はありませんでした。
 厳密に言うと、照井はシュラウドを逮捕しないといけないのではと思うのですが、この辺り、 ドーパント犯罪がどこまで立件可能なのかは謎。それで無くても背後関係の事情聴取ぐらいしておきたい所ですが、格好いい流れなので、 ツッコまないのが吉か(笑)
 シュラウドの開発能力と資金源の背景については明言されませんでしたが、加頭の言動などから見るに、 財団Xと繋がっていたと考えていい様子。綺麗に退場みたいな流れになりましたが、シュラウドはシュラウドの清算をしないといけないし、 翔太郎の事をタイル目地にこびりついたしつこいカビみたいに嫌っていた理由も明かされていないけど、 そこまで手を回している余地があるのかどうか。
 その辺り、劇場版で拾うのかなぁ……というわけで、
 「AtoZ、26本確かに。必ず財団本部に届けます」
 26本の第二世代ガイアメモリが、加頭の手を離れて財団Xへ送られようとしていた。果たして、その描く運命とは?!
 最終章を前に、照井竜/アクセルに焦点を合わせたエピソードで、非常に良かったです。 与えられた力で亡き妹の言葉を守る為にヒーローたらんとしていた男が、暴走と彷徨と模索の果てに、 自分なりの仮面ライダーアクセルに辿り着く、という姿が素晴らしかった。
 長谷川脚本は井坂リタイア回が今ひとつしっくり来なかったのですが、改めて憎しみとは別の道を選ぶ姿を描き、 それを補って余りある出来となりました。
 前回、思わせぶりに加頭とすれ違っていましたが、アクセルの最後のマッチアップ相手は加頭になるのか。まだ、 冴子/ナスカV3も生きているけど。今度は、照井が復讐の対象になる、というのも今作らしい因縁の組み方。
 今回の前後編、いつにも増して亜樹子が照井にときめきパルスを送りまくり、 最後は照井が亜樹子のボディタッチに普段より柔らかい態度を見せて何となく良い雰囲気というラストなのですが、オチのギャグなのか、 真面目な進展なのかは、今の所判然としません(^^;  ドタバタする事務所の様子に、心のつかえが一つ取れたフィリップは、笑みを浮かべる。
 「相変わらず騒がしいけど、やっぱり、この事務所はこうでなくちゃ」
 次回、遂に琉兵衛の過去に触れ、物語が地球の記憶と園咲家、そしてフィリップの謎に関する核心に迫りそう……の前に、劇場版へ。

→〔「運命のガイアメモリ」へ続く〕

(2015年10月27日,2016年1月19日)
(2017年3月21日 改訂)
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