■『仮面ライダーW』感想まとめ5■


“右と左 完璧な バランスで Progress
That's so Extreme! Extreme Dreams”


 ブログ「ものかきの繰り言」の方に連載していた『仮面ライダーW』 感想の、まとめ3(27〜32話)です。文体の統一や、誤字脱字の修正など、若干の改稿をしています。そこはかとなくルナトリガー色。


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〔まとめ1〕 ・ 〔まとめ2〕 ・  〔ビギンズナイト〕 ・ 〔まとめ3〕 ・ 〔まとめ4〕
〔まとめ6〕 ・  〔まとめ7〕 ・ 〔AtoZ〕 ・ 〔まとめ8〕


◆第27話「Dが見ていた/透明マジカルレディ」◆ (監督:坂本浩一 脚本:三条陸)
 ゲストのどじっ子マジシャン・リリィ白銀がえらく美人だと思ったら、長澤奈央でした。
 木下あゆ美ゲスト回の次が、長澤奈央ゲスト回とか、何この坂本監督のVIP待遇?!
 劇場版の撮影を終えてTVシリーズの復帰祝いが裸の王様で、次の回は男メンバーの入浴シーンだった竹本監督 (in『烈車戦隊トッキュウジャー』)に謝ってください!(関係ない)
 余談ですが実のところ過去に長澤奈央に引っかかった事が無かったので思わず画像検索してみたのですが、なんかこの、 リリィ役が一番可愛いのではないかという気がする(笑)
 で、長澤さんという事は、冒頭のステージ上でのバック転は、吹き替えでは無く本人かしら。
 シュラウドから新ガジェットの設計図がまたも送られてきて、フィリップの手によりあらゆる光の波長を検出できるデンデンセンサーが完成。
 カエルとかカタツムリとか、シュラウドが、鳴海探偵事務所に抱いているイメージが、なんとなく透けて見えます。
 ところで差出人不明の封筒がすっかり「シュラウドから」という事で既成事実と化してしまっていますが、素直に信じていいのやら。 他に誰が、というのはあるとはいえ。
 そのデンデンセンサーが反応し、鳴海探偵事務所に入ってきたのは、透明になったリリィ白銀。美人マジシャンにぶつかって跨がられて、 ニヤニヤする主人公(ハードボイルド)。
 「なんかいいっすね、こう、ははは、はは。いやー、ビックリしたぁ。さすがマジシャン。あ、うぉっほん、……今のマジック、 どうやったんだい?」
 「違うんです。あの、マジックじゃなくて……その……私……本当に消えるんです」
 底辺を這い回る主人公だった気がする何かにリリィ白銀が見せたのは――腕の生体コネクタ。
 「「ドーパントぉ?!」」
 有名マジシャン・フランク白銀の孫娘であり後継者でもあるリリィ(ただしどじっ子)は、 どうしても脱出マジックを成功させる事が出来ずに悩んでいたある日、謎の紳士に透明になれるガイアメモリを渡される。 メモリを使う事で確かに透明にはなれたものの、自分の意志で現れたり消えたりが出来ない上に差したメモリが抜けなくなってしまい、 噂の鳴海探偵事務所を訪れたのであった。
 「すっかりうちもガイアメモリ駆け込み寺ねぇ」
 どうやらドーパントの形態にならないまま透明化の能力だけが発現しているというメモリのバグではないかと、 一行はまずはリリィにメモリを渡した謎の紳士を捜す事に。
 その頃園咲家では、力を制御出来ない若菜の様子に不審を抱いた琉兵衛が、若菜がドライバを井坂に預けた事を聞き出していた。
 「それは、聞き捨てならんな……」
 一方、謎の紳士を追う翔太郎達は聞き込み中に照井と出会い、透明リリィが照井ともぶつかって絡み合うという、 どじっ子機能を発動する。
 「昨日の見習いマジシャン? 重い……どけ!」
 亜樹子以外の女性への反応が注目された照井ですが、あくまでハードボイルド。
 「失礼ね。ちゃんと体重は絞ってます」
 「口は軽いのか……最悪な女だな」
 「こいつはなんだ?!」「この人なんですか?!」
 照井、やっぱり、所長にだけ甘い感じ。
 「リリィさんは、依頼人でぇ、透明人間でぇ、ドーパント」
 亜樹子が口を滑らせ、速攻で手錠を取り出す照井(笑)
 「正気か左……あまりにも限度がある!」
 その場は何とか翔太郎が取りなし、ひたすら《交渉》スキルの経験値だけが溜まっていく主人公。かつてここまで、 話し合いで物事を解決する仮面ライダーが居ただろうか!
 照井を加えた4人は、謎の紳士がよくピアノを弾いているというレストランへ向かうと、そこで遂に謎の紳士――井坂深紅郎の姿を見る。 《交渉》スキルなど所持していない照井は、もちろん問答無用で突撃(笑) 公権力、バンザイ。照井は権力を持たせるとまずいを通り越して、 権力を持っていないと駄目なタイプだ(笑)
 「照井……? そうか……照井雄治の息子ですね君は」
 「なぜ、父の名前を知っている?」
 「会いましたから。――去年の8月に」
 「Wのメモリ……まさか?!」
 井坂はメモリを取り出すと躊躇なくウェザードーパントへと変貌し、竜巻で照井を吹き飛ばすと、霧となって店外へ移動し、 追いかけてきたダブルと肉弾戦。
 井坂のキャラクターや形の定まらない「ウェザー」から、もっと奇天烈なデザインになるかと思っていたウェザードーパントですが、 中華武人風というか、白黒の鎧姿っぽいデザインで、意外や真っ当。当面の宿敵キャラという事で、アクションのしやすさなど、 比較的すらりとした見た目を優先したか(ウェザーの初期デザインが、企画のあった『vsシンケンジャー』の為だった関係との事)。
 スウェーバックでダブルの攻撃を軽々とかわすウェザーはヒートメタルもノーダメージで圧倒し、 メタルブランディングを弾き返すという、凄まじい強さを見せる。
 「こいつ……マキシマムが効かねえ」
 必殺技を破られた翔太郎は、二つのメモリでマキシマムドライブを発動する裏技、 ツインマキシマムを用いようとするがフィリップに止められ、そこにアクセルが到着。 だがアクセルが攻撃する前にウェザーに駆け寄ったリリィはウェザーにメモリの修理を頼み、 ウェザーは稲妻を放つとリリィを連れて姿を消してしまう。
 翔太郎がまたも裏目ポイントを溜めましたが、もはや宿命なので仕方がない。
 もし翔太郎と 役立たずさん 橘さん(『仮面ライダーブレイド』)が接触したら、 裏目エネルギーが対消滅を起こして世界が崩壊しそうな勢いです。
 なお裏目ポイントを30ポイント溜めると、ハードボイルドLVが1上がります。
 「Wのメモリの正体は――ウェザーだ」
 かつて風都を震撼させた連続凍結事件と同じ頃、感電死や溺死など、不審な連続殺人事件が他にも発生していた。
 「それ……全部あの男の仕業だったのか」
 様々な気象現象を操るウェザー……亜樹子がバットカメラで撮った写真を手にした照井は復讐に逸り、 独りで事務所を飛び出していこうとする。
 「殺される? 上等じゃないか。家族の仇を討てるなら俺はどうなってもいい。死んでも構わん!!」
 「死んでも構わんだと? そう思ってんのはおまえだけだ!! 少しは周りを見ろ。心配してる奴等が居るだろ」
 ここで胸ぐら掴んで照井を止めようとする翔太郎は、久々に格好良かった!
 見せ場がまた交渉シーンだけど、そこは深く考えるな!
 「黙れ。君らと和んでいる暇などない!」
 「出会った頃の竜くんに戻っちゃった……」
 照井は1人で出て行き、翔太郎達も翔太郎達で、井坂とリリィの行方を追う事に。
 「待ちたまえ翔太郎。念のため注意しておく。照井竜がああなった今こそ、君には慎重さが必要だ」
 「うるせぇなぁ……おまえ俺のおふくろか?!」
 ここでフィリップが、自分の感情をどう伝えればいいのか、言葉を探す表情になるのは良かった所。フィリップの持つ不器用さと、 フィリップはフィリップで、翔太郎のみならず照井の事も心配している様子がうまく出ました。
 「……わかってる。無茶はしねえよ、相棒」
 そしてそんな相棒の気持ちを翔太郎が汲み、拳を打ち合わせるカットはお約束だけど良かった。
 翔太郎のヒーロー属性というのは、お人好しとか思いやりというよりも、他人の感情に寄り添える男である、と、 それが翔太郎なりのハードボイルドであり、そしてハーフボイルドな所。
 復讐の為なら命を捨てても構わないという照井、独りよがりになるなと諭す翔太郎、改めて確認される相棒の絆、 と一連の流れの台詞もベタなのですが、ここまでしっかりキャラクターや関係性を積み重ねてきた事により、いいベタになりました。
 写真から井坂先生の素性を割り出した照井は、井坂内科医院に突撃。 井坂の治療により自由に出たり消えたり出来るようになったリリィはその場を走り去り、 治療の様子にジェラシーを燃やしていた冴子さんは、衝立の影でこの邂逅を見つめる。
 「正直あの頃は誰でも良かった。私の能力の実験が出来れば」
 「覚悟しろ、井坂。俺はもう自分を抑えられない。――変…身!」
 …………照井、一応、本人の中では、ここまでの所業も抑えていた内なのか。
 「自分を抑えられない……? いいですねぇ、私もですよ」
 ウェザーはアクセルすら軽くいなし、駆けつけた翔太郎もダブルに変身するが、 2人まとめてウェザーの多彩な気象攻撃の前に手も足も出ずに叩きのめされる。
 「人とメモリは引かれ合う……一つの能力では満足できない私は、多彩なパワーのウェザーに出会いました。――だが、 まだ足りない! 研究の末、私は様々なメモリの能力を吸収して進化していく事が出来るようになりました。もうすぐ、 透明にもなれるようになる」
 インビジブルメモリはそもそも、使用者の体内でロックされるように最初から細工されており、井坂の目的は、 リリィの生命力を吸収して残った、井坂が使える仕様になったメモリを手に入れる事であった。
 「私は、それが欲しいだけなんです」
 27話にして、他の能力を吸収してパワーアップするという、最強パターンの能力者が早くも登場。 ただでさえ多様な能力の上に肉弾戦でもダブルとアクセルを圧倒しており、天丼・カツ丼・親子丼みたいな感じですが、 お父さんにも目を付けられてしまったし、むしろ盛りすぎて次回で死んでしまうのか井坂先生(^^;
 ウェザーは伝統の最強攻撃:「⇒バイクで轢く」すら弾き返し、アクセルは変身解除。
 「綺麗なガイアメモリですねぇ。こんな純正化されたメモリやドライバを使っているような者が、私に勝てる筈がない。 家族と同じ死に方をプレゼントしましょう」
 照井の涙を見た翔太郎は、ヒートトリガーで禁断のツインマキシマムを発動する覚悟を決める。
 「何をするんだ。やめろ翔太郎。ツインマキシマムは不可能だ。そんな事をしたら君の体は――翔太郎!」
 「もう、手はこれしかねえんだよ!」
 「やめろ、やめてくれぇっ!」
 右半身の制止を振り切ったダブルは、トリガー銃にトリガーメモリに続き、ヒートメモリを差し込む――

――『ヒート』――
「マキシマムドライブ」
「マキシマムドライブ」
「マキシマムドライブ」
「マキシマムドライブ」
「マキシマムドライブ」
「マキシマムドライブ」

 果たして、ツインマキシマムは如何なる力を放つのか、ウェザーの凍結攻撃を止める事は出来るのか、翔太郎と照井の運命や如何に?!
 ツインマキシマムにより、ナビメッセージが壊れたように繰り返される、というのは格好いい演出。
 かつてない強敵vsダブルの裏技、で非常に盛り上がってきた所で、以下次回。

◆第28話「Dが見ていた/決死のツインマキシマム」◆ (監督:坂本浩一 脚本:三条陸)
 禁断のツインマキシマムを発動したダブルは灼熱化し、ヒートトリガーのツインマキシマムドライブ・“余のメラだ”を放つが、 ウェザーは照井への攻撃こそ中断するものの、片膝を付いただけで立ち上がる。
 ツインマキシマムの反動で変身が解け、倒れる翔太郎。
 「凄いわ先生……あの仮面ライダーを、まるで寄せ付けない」
 絶体絶命のその時、だがそこに恐怖の帝王が現れる。
 「見てわからんかね。お茶の誘いだよ井坂くん」
 「ふ、それは光栄です。お伴しましょう」
 テラーはウェザーを伴って姿を消し、取り残される3人。
 「後は頼んだぜ……! 照井……。リリィの事、助けてやんなきゃな。俺たちは…………この街の……仮面ライダーなんだからさ」
 大ダメージを負った翔太郎は、帽子をかぶってから、気絶(笑)
 普段から熱心に行っている、ハードボイルドな死に方、のイメトレの成果が出ました!
 「ドーパント女の心配まで……馬鹿が!」
 「なんだって? 照井竜ぅ!」
 翔太郎が倒れた事でかつてなく感情を剥き出しにするフィリップ、怒る。
 フィリップの検索によると、リリィを救う方法は一つだけであり、それが出来るのはアクセルのみ。だが、照井はそれを拒否する。
 「そんな事より……井坂の居場所を検索しろ」
 「誰のせいで翔太郎が倒れたと思っている?! この街に居る仮面ライダーは、今君1人なんだぞ!」
 「俺の復讐が先だ」
 照井竜のモチーフの一旦となっているであろう『快傑ズバット』のみならず、 復讐とヒーロー性が一体となっている作品世界というのも色々ありますが、今作においては、 “ヒーローであろうとする事”と“私的な制裁”というのは一貫して対立項であり、ここでハッキリと、 人を救う事と復讐の相克が打ち出されます。
 そしてヒーローのシンボルとして「仮面ライダー」という定義が持ち出される。
 「なあ、君にとって仮面ライダーとは何なんだ?」
 「俺に――質問をするな」
 ヒーローを名乗る事の責務を問うフィリップを殴り、立ち去る照井。
 その頃、井坂先生は本当にお茶していた。ついでに、食事もご馳走になっていた。1人で平然と何十皿も平らげる異常な食事量で、 井坂の異様さを更に補強。
 「冴子と何を企んでいるのかね、井坂くん? 若菜も困惑していていね。我が家族を乱す者はこの地上には存在を許さない」
 琉兵衛に威圧された井坂は…………脱・い・だ!
 自慢の婿の誕生です……じゃなかった、井坂が見せつけたのは、胸に刻まれた幾つもの生体コネクタ。 ちょっと『北斗の拳』入っているのは、わざとな気がします(笑)
 自分はミュージアムの支持者であり、ガイアメモリの真実を解き明かす為には何でもやるから好きに使ってくれて構わない、 と言ってのける井坂を面白く感じた琉兵衛は、井坂に屋敷の部屋を貸し与え、病院を失った井坂先生は立派な居候に。
 意外に早く素性が割れたのでどうなる事かと思いましたが、思わぬ形で獅子身中の同居状態。
 これはフィリップも、若菜姫にアプローチする時は、お義父さんの前でどうやって脱ぐか、今から検索しておかないとなぁ……。
 「お義父さん、見て下さい、これが僕の、ヘブンズトルネード脱衣!」
 リリィを救う為、亜樹子は照井を捜して超常課に乗り込み、井坂へ繋がる線として白銀家を張っていた照井と共に、 フランク白銀に家の中に招かれる。フランクは、リリィが何やらおかしな方法で大脱出魔術をしている事に薄々気付いては居るものの、 手品師であろうとするリリィの姿を喜び、しかし孫娘としては心配、と複雑な心境を吐露。
 そこへリリィが帰宅し、照井と追いかけっこで、華麗なバック転を披露。透明化したリリィをアクセルスチームで炙り出した照井は、 メモリによる生命の危機を忠告してリリィを止めようとする。
 それにしても照井は、割とどうでもいい時でも、「変…身!」って、臍の下に力込めて言わないと変身出来ないのか(笑) 難儀な体質。
 「お爺ちゃんの晴れ舞台なの。だから私は、消える大魔術をやってみせて、安心して、引退させてあげなきゃいけないの」
 「諦めろ。死にたいのか」
 「それが何よ! 私はどうだっていいの。死んだって構わない!」
 「そう思っているのはおまえだけだ! 少しは周りを見ろ。心配している家族が居るだろ!」
 ……おい、照井、おい(笑)
 (――!)
 あ、気付いた(笑)
 (俺が左と同じ言葉を言うとは……)
 自分の中のハーフボイルドを認めた照井はリリィに猶予を与え、フランク最後のステージの後に、メモリを取り出す処置をする事を約束。
 照井は全く意識していない、という事ではあったのでしょうが、物語の重ねとして、翔太郎と全く同じ言い回しにしてしまった為、 一瞬、どこかで聞いたいい台詞の受け売りみたいになってしまいました(笑)
 3−4話で描かれたように、悪の園咲家に対し、翔太郎−フィリップ−亜樹子は鳴海探偵事務所という疑似家族、 という構図なのですが、話数的にも全体のターニングポイントであろう今回、改めてここで「家族」がキーワードに用いられています (園咲の方も琉兵衛がアピール)。
 そして園咲の家には異物が入り込み、“家族を失った者”である照井が、鳴海探偵事務所との距離を詰める、というのも示唆的。
 リリィを救う為、照井に呼び出しを受けたフィリップは、とりあえず照井に全力パンチ。
 「これは翔太郎から教わった。殴られた後の、仲直りの儀式さ」
 「左も粋な事を知っているな」
 ……翔太郎からポーズ取り除いたら、燃え滓しか残らないから。
 フランク白銀最後のステージを見つめる3人だが(撮影の都合という要素が大きそうですが、 これが大きくもなければ客の入りも少ない野外ステージというのが、孫娘の愛を強く引き立たせるところ)、 そこへ透明メモリを回収する為に井坂が現れる。
 井坂は前回は顎の下、今回は首の後ろにメモリを突き刺して変身しており、これは毎回変えるのか。
 ついでに消してやる、と照井を挑発するウェザー、だが
 「おまえなどの相手をしている暇はない。俺はリリィを救いに行く」
 復讐よりも人の命を救う事を優先し、ここで照井竜が口だけではなく「仮面ライダー」になる。
 主人公達の定義付けばかりでなく、追加ライダーがヒーローになる姿をしっかり描いてくれた、というのはかなり良かった。
 「あの女は間もなく死にますよ。無駄な事をなぜ」
 「彼女もマジシャンの端くれ。そして俺も、仮面ライダーの端くれだからな!」
 「はははははっ、これだから青臭いドライバー使いは!」
 前回のラストといい、井坂はやたらに、綺麗なメモリやドライバーに対して敵意を向けるのですが、これは単なる趣味の問題なのか。 今後に向けて、ちょっと気になる所。
 照井はアクセルマシンを呼び出してウェザーの相手をさせ、見事に大脱出マジックを成功させたリリィの元へと向かう(まあ、 透明になっているだけなので、お爺ちゃんはまったく安心して引退できないのですが、 祖父が気付いている事にリリィが気付いていないのは意図的な擦れ違いでしょうし)。
 ステージ裏でガイアメモリに生命力を奪われ、メモリの暴走で姿の消えていくリリィ。
 「君は俺が守る――変…身!」
 心の棚に決め台詞を沢山用意している翔太郎はともかく、この言い回しがどうも素で出てくる辺り、 照井は翔太郎より重症なのかもしれない。
 デンデンセンサーでリリィの姿を確認したアクセルは、エレクトリック剣でリリィを成敗。 アクセルマシンを蹴散らしてやってきたウェザーが目にしたのは、排出された透明メモリと、息を吹き返したリリィの姿だった。
 「逆転の発想さ。殺さずにメモリを抜く方法が無いなら、死ぬのを前提に考えればいい」
 フィリップが辿り着いたリリィを救う方法――それはリリィを仮死状態に置いて「リリィが死んだ」と認識したメモリが排出された後に、 リリィを電気ショックで蘇生させる事。これらを成し遂げるには、アクセル/照井竜の、能力と度胸と戦闘技術が必要だったのだ。
 最近ちょっと真っ当になっていたフィリップですが、「死ぬのを前提に考えればいい」の時の言い方が軽くて素敵(笑)
 透明メモリを砕かれ、怒りのウェザーはアクセルに猛攻。
 「もはや凍らせて砕くなど生ぬるい。塵になれっ!」
 ここで取り出すウェザー電撃鞭が格好いい。
 追い詰められたアクセルを救ったのは、ファングメモリ。そして流れ出す主題歌。
 「行くよ――相棒」
 「ああ、フィリップ」
 フィリップは、意識を取り戻した翔太郎とファングジョーカーへと変身し、構成上の都合で《平成ライダー》では珍しい、 主題歌でのバトル。ここは非常に格好良くはまりました。挿入歌の方が主題歌より格好いい場合もありますが (『キバ』の「SuperNova」とか)、いい所での主題歌はやはり燃えるので、個人的にはもう少し素直にやってくれてもいいのに、 とはしばしば思うところ。
 そして翔太郎はめでたく、死の淵から甦る事でヒーローとしての階段を一歩登りました。
 ファングの高速攻撃、アクセルの大回転蹴りがウェザーを捉え、ステージ上から蹴り飛ばされたウェザーは、大技をチャージ。
 「アクセル、マキシマムで行こう。行けるよね」
 (いいか、タイミング合わせて、「ライダーツインマキシマム」だ!)
 「は?! 俺もか?」
 「君もだ」
 フィリップ、重々しい。
 「今こそ呪われた過去を――振り切るぜ!」
 「「「ライダーツインマキシマム!!」」」
 文句を言いつつ、しっかり自分の決め台詞をねじ込むアクセルとダブルが同時に放ったマキシマムキックが迫り来る竜巻を切り裂き跳ね返し、 ウェザーは撤退。
 禁断のツインマキシマムに始まりダブルライダーのツインマキシマムで締める、という鮮やかな流れにして、 3人の心が一つになれば、どんな敵でも打ち破れると、強敵撃破かくあるべしという納得の展開。
 お陰様で翔太郎の株価がまた下がりましたが、その事についてはそっとしておく方向で。
 一応、裏技(ひとりツインマキシマム)の方も、ここで見せておく事で今後使う余地はありそうですし。
 「強くなってきた。いいわ、竜。……来人」
 フィリップと照井は改めて互いの能力を認め合うが、そんな2人を見つめて呟くシュラウドの影……。
 「いいわ、竜」までは明らかに照井を利用している感じ全開の台詞回しなのですが、 「……来人」の言い方には情がこもっており、今回のキーワードに「家族」があった事を考えると、シュラウドの正体に、 フィリップの身内説が急浮上。照井と同じ悲しみ=家族を失った? とも推測でき、 園咲家に欠けたピースと合わせるとかなり怪しいポイントも見えてきますが、さて、素直にそこにはまるのか。
 園崎家には、大きなダメージを受けた居候が帰還。
 「危なかったな。もう少しでメモリをブレイクされる所だった。彼等、仮面ライダーも、なかなか侮れないな」
 「良かった、無事で。もう1人で無茶しないで……」
 セクシー衣装で冴子さんが抱き付くが、
 (それにしても……腹が減ったなぁ)
 井坂先生は孤独だった。
 井坂先生の前では乙女モード全開の冴子さんですが、肝心の井坂先生に全く伝わっていないのが非常に面白い。まあ、 冴子さんが本音なのかどうかもわかりませんが(^^; 悪女キャラは物語の都合でどちらにも転がせてしまうのが、 いい所でありズルい所でもあり。
 (事件は終わり、リリィ白銀は救われた。まだあの危険な男は見つかっていないが、照井の中で何かが一歩進んだ気がする。 ……それが、俺たちの一番の収穫だ)
 例によって例の如く翔太郎が浸っている所にリリィが訪れ、事務所に来ていた照井に抱き付くと、ほっぺにキス。
 「軽い……やはり、軽すぎる……」
 「興味深い。今のは、どういう行為なんだ?」
 「俺に、俺に質問するなぁぁぁ!!」
 照井も少し風都に染まって崩れ出すのであった……これは、進歩なのか?
 これまでも捜査上の協力には躊躇の無かった照井ですが、心理的にも鳴海探偵事務所と距離を詰め、 結果として精神的に少し汚染される事に。表情には出さないけどこんな事を考えているかもしれないと視聴者に思わせる演技、 というのは難度高いので仕方ないのですが、照井は、不機嫌なのか狼狽しているのか照れているのか、 表情と仕草だけでは区別が付かないのが、今後崩しを入れて笑いを作るにあたっては課題か。
 満足の行く、課長格好いい祭でした。翔太郎も嫌いではないけど、照井は格好いい。 人間の時の格好良さを変身後にもしっかり乗せているという点で、アクセルはシリーズのライダーの中でもかなり好きかも。
 一気の退場も危ぶまれた井坂先生ですが、アピールタイムを活用して、屋根のある寝床を無事にゲット。 極めつけの必殺攻撃を受けて撤退、しかしまだパワーアップの余地がある、と、敗北も下げすぎない扱いとなりました。 暗躍キャラとしては色々使えるでしょうし、園咲家の人間関係を波立たせる存在としても、今後の使い方が楽しみです。
 フィリップが翔太郎への友情をアピールする回だったのに、 終わってみればフィリップと照井がコーヒー飲んで和んでいるというウルトラCの着地を受け、 最後の主人公特権だと思われたモテスキルですら完全に敗北を喫した翔太郎ですが、えー……まあその、 なんだ……「打倒・橘朔也!」を合い言葉に、ガンバレ。

◆第29話「悪夢なH/眠り姫のユウウツ」◆ (監督:田崎竜太 脚本:長谷川圭一)
 「眠ると夢の中で怪物に襲われて目が覚めなくなる」という依頼を受け、大学の研究室に向かう翔太郎と亜樹子。 そこでは某『動物のお医者さん』を思わせる変人・赤城教授の元、明晰夢に関する研究が行われていた。 教授の開発した装置を付けて眠った学生6人が次々と額にHの刻印が浮かび上がったまま目覚めなくなってしまい、 研究室には照井も捜査に訪れる。
 依頼人・雪村姫香は昨今流行りの“サークラの姫”(この場合、ゼミクラ?)とでもいった造形で、翔太郎に抱き付いたり、 照井に抱き付いたり、大忙し。同じ研究室の生き残りによると、「姫香ちゃんの優しさ」との事。……それにしても、 翔太郎は“女に弱い”を通り越して段々、“節操がない”になってきていないか(笑)
 相手が他人の夢の中に入れるドーパントだというなら、夢の中で叩き潰せばいい。
 相変わらずブレーキは故障気味の照井と、それに対抗意識を燃やす翔太郎が、装置を借りて眠ってみる事に。 なかなか寝付けない翔太郎はナイト・キャップ代わりにと、亜樹子がはまっているDVD『風の左平次 パニック×リベンジャー』 を視聴。「時代劇は苦手だから5秒で眠くなる」と断言していた翔太郎だが……もちろん裏目。
 そもそも時代劇はむしろ翔太郎好みのハードボイルドに溢れている気がするので、どうして苦手と主張していたかの方が知りたい(笑)
 裏目2号がすっかりDVDに夢中になっている間に順調に眠りに落ちた照井は、亡き妹が刃野と結婚するという悪夢を見る事に。 アクセルに変身し、姿を現したナイトメアドーパントを切り伏せるが、夢を操るナイトメアに言いように翻弄され、 謎の網をかぶせられて意識不明に陥ってしまう……。
 そして翔太郎は、徹夜していた。
 一方園咲家では、ニックが丸まっているだけでおかしくて仕方ないなど、若菜が異常な多幸感に包まれ、 やや正気を逸脱したテンションではしゃいでいた。
 「あれも、君のした悪戯の、影響かね井坂くん」
 若菜はガイアメモリとより高いレベルで適合した事により幸福になっている、と語る井坂に凄む琉兵衛。
 「若菜に何かあったら、その時は、覚悟しておきたまえ」
 序盤から悪の大物の貫禄たっぷりの琉兵衛ですが、それを受け流す井坂先生もいい味を出しております。 そしてますます先行きが心配になってくる若菜姫。二面性の強い小悪魔キャラだった初期からは、とても考えられないヒロインぶり。
 検索で犯人を絞り込めなかったフィリップが、ダブルになった状態(翔太郎の体に意識が移った状態)で眠るという妙案を思いつき、 装置をつけたダブルは何故かグラウンドの真ん中で眠り込む(笑) 今回コミカルな映像演出が多いのですが、ここが最もシュール。 そして意味不明(^^;
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 (風の中――誰かのむせび泣きが聞こえる時、ズバリ、名推理が冴え渡る。俺はこの街を愛する、ハードボイルドなぁ岡っ引きでぇ)
 翔太郎の夢――そこは、『風の左平次』の影響で、時代劇と化していた。
 予告から太秦回だとわかってはいましたが(平成ライダーで太秦回は割と珍しいか?)、これがまさかの、 割と本格的な太秦回。
 翔太郎は岡っ引き、亜樹子はその女房、フィリップは子分のフィリッ八、照井は赤いマフラーの同心という配役。
 そんな気はしていましたが、照井課長は時代劇向きの顔。
 町娘のお姫(姫香)が眠り病の事件を持ち込んでくる……と何故か夢は現実と同じ導入で始まり、 そこへ大道芸人の三太(サンタちゃん)が土左衛門としてあがり、犯人の正体を口にしようとした所で吹き矢で口封じに殺されるという、 お約束。
 サンタちゃんを始末したナイトメアは、お姫を小型化するとさらって逃げ、それを追う翔太郎とフィリッ八はダブルに変身。
 ガイアメモリは木札、ナビボイスは「疾風」「切り札」に代わり、 和風な効果音と共に翔太郎が歌舞伎調メイクの後サイクロンジョーカーに変身、と楽しい小技。
 理屈はわかりませんが、バイクは、普通に出てきました(笑)
 江戸の町並みをバイクが駆け抜けるシーンは、恐らく実物のセットを突き破ったり、手持ちカメラで疾走感を出したりで、 面白くなりました。
 「全ては、彼女の為だ。運命の出会い。私こそが、彼女の王子様だからね」
 姫香に対する執着を見せるナイトメアにバイクを自転車に変えられ(さすがに、馬は難しかったか)逃げられそうになるが、 そこに検索奉行・フィリップ登場。
 眠っている当人ではない為にナイトメアの影響を受けないフィリップの登場で、一気に形勢逆転と思われた、が……
 「ナイトメアを尋ねてきたのに、面白いものを見つけたぞ」
 スタジアムの真ん中でお昼寝中のW、井坂に見つかってしまう(笑)
 井坂は耳の中にメモリを差して、ウェザー変身。なるほど、モチーフに入っているという事でわかりましたが、 ウェザーの首回りは風神の袋のイメージなのか。
 ウェザーの攻撃でフィリップは目を覚まし、夢の中から退場。フィリップが夢の中から消えた事でナイトメアはダブルに反撃をし、 フィリップは井坂に襲われて……と夢と現実でダブルピンチという、ダブル主人公を利用した面白い構成。
 ウェザーの攻撃からフィリップを守るファングだが竜巻で吹き飛ばされ、遂にライディンの直撃を受けるフィリップ。 そして翔太郎は……寝ていた。
 照井は倒れ、翔太郎は役に立たず、フィリップは瀕死の重傷、と当面の最大の敵を打ち破った筈の次の回で仮面ライダー達に訪れる、 かつてない危機!
 これが、サークルクラッシャーの力なのか?!
 前回が照井上げだったので、今回はそろそろ翔太郎のターンかと思っていたのですが……えー……女子大生の脚を見ていたり、 遊女に誘惑されてドキドキしていたり…………あー…………全く活躍していないわけではないけど、なんだ…………次回こそガンバ、 てあれ、亜樹子のターン?

◆第30話「悪夢なH/王子様は誰だ?」◆ (監督:田崎竜太 脚本:長谷川圭一)
 表向き軽いトーンでまとめながら、重い部分も軽い部分も見所多し。それにしても、太秦回のついでに大阪でロケしてきた、 というのは初めて見たかもしれない(笑)
 本体の事情で夢の中からナイトメアが退散し、目覚めた翔太郎だが、現実ではフィリップがウェザーによって倒されていた。 トドメの雷撃がフィリップに迫ったその時、飛んできた鳥メカ(前回にちらっと伏線あり)が雷撃を防ぐと、竜巻攻撃を弾き返し、 ウェザーは撤退。鳥メカは重傷を負ったフィリップを収納(データ化?)すると、何処ともなく飛び去っていく。
 「今回の事件の真相が何となく見えたぜ」
 犯人は恐らく、姫香の「運命の王子様」発言を真に受けて恋敵達を眠らせた研究員……最後の1人、福島を問い詰める翔太郎達だが、 その福島も眠りに落ちて倒れてしまう。
 「鳥の形をしたガイアメモリ? あはははっ、やだーっ、超うけるーーー」
 園咲家に戻ってきた居候の報告に、ピントがずれた笑い声をあげ続ける若菜。
 無表情で山盛りのスパゲティを平らげる井坂先生が素敵。……井坂先生は、兵糧攻めしたら割と簡単に倒せそうな気が。
 「エクストリームのメモリか……」
 「エクストリーム? お父様、それは何なのですか?」
 「そうか……遂に動きだしたのか、あいつが」
 背後でひたすら若菜が、けたたましく笑い続けているのがなかなか辛いのですが、もう充分、 “何か”起きているような気がするのですが、お父さん!
 その頃、フィリップは謎の空間――エクストリームメモリの中――で、シュラウドと出会っていた。 前々回のラストで思わせぶりな言葉を残したシュラウドが、一気にフィリップと接触。この辺りは相変わらず、 あまり引っ張りすぎない作風です。
 そこでフィリップは、シュラウドから衝撃的な言葉を告げられる。
 「左翔太郎。あの男は、あなたにとって不吉な存在。一緒に居てはいけない」
 一方、ナイトメアドーパントを誘き寄せる為、亜樹子が眠りに落ちる事に。その外への連絡手段は――
 「ここは大阪――うちの生まれ故郷や」
 「すげえクリアな寝言だなおい」
 亜樹子、変な特殊スキルを発動(笑)
 タコ焼きの被り物でタコ焼き屋を営む亜樹子、やけに似合うチンピラ姿の照井とフィリップ、そしておやっさんルックの翔太郎が登場し、 通天閣の足下に、ナイトメア発見。
 「翔太郎くん、うちと一緒に変身や」
 亜樹子はメモリを取り出すと、なにわの美少女仮面・仮面ライダーだぶるりんに変身する!
 変身の際にタコ焼きが周囲を舞ったり、好き放題。
 「さあ、おまえの罪を、数えろー」
 スリッパ構えた美少女仮面だぶるりんは太陽の塔や大阪城をバックに戦い、リボルキャリーまで召喚するが、 夢を自由に操るナイトメアの反撃を受け、変身解除。追い詰められた亜樹子は正面突破をはかり、ナイトメアを口で挑発。 網を被せられて意識不明に陥るも、その正体を寝言で翔太郎に伝える事に成功する――。
 「王子様ー、早く姫香を迎えに来てー」
 「……それが君の夢なんだな」
 子供の頃から繰り返し王子様の夢を見る為に、優しくしてくれた男性に「王子様」と言って抱き付いてしまう癖がついたという姫香に、 格好良く真相を伝えようとする翔太郎だが、気取った前振りしている内に姫香、寝落ち。
 夢の中で王子様を捜す姫香の前には、ナイトメアドーパントが姿を見せる。
 「今日こそ君を、捕まえちゃうぞー」
 監督が同じなので演出ラインを合わせたのかもしれませんが、ナイトメアにはどうも、三条回のライアーを見た長谷川圭一が、 「よーし私も思いきった変態ドーパントを出すぞー」と盛り上がったように見えてなりません(笑)
 デザインに横向きの鳥の意匠が入っており、本体頭部の左側に突き出した鳥の頭から光弾を放ったりもするのですが、 どうして鳥なんだろう。そんな昔話あったっけ、と考えてみたけど、特に思いつかず。
 「かよわき乙女を――泣かせるもんじゃ、ねえぜ」
 姫香に迫るナイトメアを止めたのは、ドリームコスプレ回の締めを飾る、銃士ルックの翔太郎。
 「あなたはもしかして、運命の王子様?!」
 「――いや、違う。俺は……この街を愛する、探偵だ」
 現実の翔太郎はナイトメアの実体のもとへと乗り込む。亜樹子が告げたナイトメアの正体……それは、 自分の額にHのシールを貼って眠り病の犠牲者であると偽装した福島だった。姫香の発言と態度を、 自分への一方的な好意と解釈した福島は、姫香が他の男にも同様の行為をするのを逆恨みし、 歪んだ愛情の発露として姫香に眠れぬ苦しみを味わわせた上で、共に永遠の夢の世界へ閉じこもろうとしていた。
 福島ナイトメアを止めようとする翔太郎だが、さすがに生身でドーパントにかなうべくもなく、ピンチに。 とりあえずドライバをはめると、謎空間のフィリップもベルト装着。
 「来人。もう、あの男とは別れなさい。そうしなければ……大変な事になる」
 フィリップを止めるシュラウドの言葉が、駄目な男に引っかかった娘を諭す母親のようになっていますが、 あまり間違っていない気がするので困る。
 「僕は行くよ。相棒がピンチなんだ」
 サポートアニマル軍団で抵抗するもナイトメアに全て吹き飛ばされる翔太郎だが、 飛んできたエターナルメモリがナイトメアの光弾を弾き返し、フィリップを排出。
 「やあ翔太郎、遅くなったね」
 変身したダブルを見て、ナイトメアが「本当の仮面ライダーだったのか?!」と驚くのですが、あーそうか、 ナイトメアからすると翔太郎は、時代劇な夢の中に主人公気取りで姫香を連れ込み、 噂の仮面ライダーになりきっている痛い奴だったのか(笑) ……半分ぐらい間違っていない気がするので困る。
 ダブルは逃げるナイトメアを一方的にぼてくり回すと、最後はルナメタルのマキシマムブレイク、 空中輪っか攻撃「メタルイリュージョン」でメモリブレイク。
 「姫香りん。ふたりで……楽しい、夢を……」
 「これで、みんな目が覚める筈だ」
 砕けたメモリに手を伸ばしながら福島は崩れ落ち、夢の中の姫香には、銃士の帽子から翔太郎の声が響く。
 「王子様ー? どこですかー? 王子様?」
 「さあ、君もそろそろ目を覚ますんだ」
 「え?」
 場面変わって、連行される福島、という珍しい後始末シーン。
 「お前のお陰で久しぶりによく眠れたよ」
 照井、怖いよ照井。内部告発で懲戒免職になる前に、取り調べは他の警官に任せよう、照井。
 パトカーへ乗せられた福島の元へ、駆け寄ってきたのは、目を覚ました姫香。
 「福島くん……ごめんなさい。待ってます。運命の王子様じゃなくて、福島くんが帰ってくるの」
 涙を浮かべて福島は連行されていき、姫香はそれを手を振って見送る。
 「ビックリ。これどういう事?」
 「ま……なんにしても悪くないラストシーンだ」
 「夢から覚める」と、「少女の成長」が重ねられた綺麗なオチ…………かと思いきや、同じく目を覚ました学生達&教授(おぃ) が姫香の元へ集い、すかさず全方位に大好きビームを振りまく姫香(笑)
 「姫香、みんな、同じぐらい大好きですー。えへっ」
 ここは風都だからそんな事はあり得ないのだった!
 「まったく変わってないじゃん」
 「さあ、おまえのつみをかぞえろー」
 ナイトメア相手に決め台詞を使わないと思ったら、本当の咎人はここに居た、という実に今作らしい酷いオチ(笑)  悪夢から覚めた男達も、甘美な白昼夢からはなかなか目覚めないのでありました。
 ウェザーにやられた怪我もエクストリームメモリの中で何故かすっかり治ったフィリップは、シュラウドの言葉を気にしつつも、 改めて翔太郎との絆を誓う。
 「今は……まだ言えない。でも、これだけは言える。僕のパートナーは、翔太郎、君1人だ」
 ――だが次回、
 「翔太郎では僕のパワーについてこれない……」

 左翔太郎、遂に、捨てられる?!

 なるほど、アクセル登場から一連の照井のターンがひとまず終わったのに、翔太郎がさして持ち上げられないなぁと思ったら、 挫折を経てのパワーアップ編で再浮上する、という流れでしょうか。……と信じたい。……ガンバレ。……駄目だったら、 タコ焼き屋に転職だ。

◆第31話「風が呼ぶB/野獣追うべし」◆ (監督:諸田敏 脚本:三条陸)
 かつておやっさん――鳴海荘吉に世話になったというムショ帰りの男・尾藤勇が鳴海探偵事務所を訪れる。
 「父は……父は……死にました」
 ……あれ?
 そういえばTV本編ではいつのまにかお茶を濁されていましたが、劇場版で亜樹子に詳細はともかく、 おやっさんの死は伝えられたという事でしょうか(最初の劇場版で触れられたとの事)。
 おやっさんが尾藤の出所祝いになるように何かを調べていたという話を聞いて事務所のファイルを確認するが、何も無し。 後を引き継いで自分が事件を調べると申し出る翔太郎だが、
 「半人前に用はねえよ」
 とデコピン食らって帰られてしまう。
 「がーーーん。会ったばっかりなのにぃ!」
 まあいきなり、地上げ屋扱いしたしな!
 めげずに翔太郎は後を追いかけ、それを見送りながら思い悩むフィリップ。
 (シュラウドは……翔太郎の、どこが不吉だというんだ……)
 ……女に弱い上に節操ない所とか……金勘定が苦手そうな所とか……将来設計が危うそうな所とか……。
 尾藤の後をついていく翔太郎は、モノローグがうるさいとデコピン。刑務所に入る10年前、 一帯の出店を仕切っていたという尾藤はかつての弟分・丸と再会するが、丸の妻であり旧知の訳あり風和服美人・ 有馬鈴子とは親しげであるものの、土建屋の社長に成り上がった丸には尊大な態度で扱われる。
 と、ムショ帰りで時代に取り残された男がかつての弟分などにすげなくされるという王道パターン。尾藤が草履履きなのが、 一発で昔気質のキャラクターを匂わせていて、いい味出しています。肉体的にも精神的にも肥大化したチンピラ、といった風情の丸、 二時間ドラマだったら真犯人間違いなしの鈴子と、ゲスト3人がそれぞれ雰囲気の出た好キャスティング。
 勇=サム、鈴子=ベル、という互いの呼称は、何か映画オマージュとかかしら。
 「帰ってもらえませんかねぇ。あんたみたいな人に来られると、変な噂になりますから」
 「俺も変な噂を耳にしたぞ……野獣のな。いいか、今でもベルを泣かしているようなら、俺にも考えがあるぞ」
 10年前に風都を騒がせた都市伝説にして、今また巷を騒がせる“野獣人間”。尾藤はそれについて丸に匂わせ、 おやっさんから預かったものがある、とかまをかけた翔太郎は、有馬家を出た後、巨体のドーパントの襲撃を受ける。
 「熊はどこだぁ?! 熊をよこせって言ってんだ!」
 獣毛の意匠やマントなど、今回のドーパントは、ストレートに『美女と野獣』と言った所でしょうか……て、ああそうか、 「ベル」はそこからか。ちなみに確認して初めて知ったのですが、「ベル」というのはもともと個人名ではなく、 フランス語で「美しい」の意味で、そのまま「美女」を表していたそうで。
 変身するダブルだが、サイクロンの変調で左右のパワーバランスが崩れ、強力なビーストの前に苦戦。 助けに来たアクセルがエンジンマキシマム飛び三角形斬りを浴びせるが、ビーストの強靱な再生能力の前にメモリブレイクする事が出来ず、 ビーストは丸の正体を見せると、一時撤退。
 変身を解除したダブルだが、すぐに肉体に意識の戻らなかったフィリップは、星の本棚で見た事のない姿のダブルと出会う……。
 (エクストリームと……出会ったせい、か?)
 時間は前後しますが、野獣人間に関する事件の依頼に来た照井を交えた事務所で、おやっさん――鳴海荘吉が、 かつて“組織”と戦っていた男として説明され、TV本編では、顔写真もたぶん初登場。 劇場版との最低限の情報の擦り合わせと思われます。
 鳴海荘吉は、服装といい名前といい、必殺技:《主役強奪》の白い鳥人オマージュという事でしょうか(向こうは「壮吉」だけど)。
 フィリップは尾藤勇に関する事件を検索し、10年前に尾藤が犯人として自首した現金強奪事件を鳴海荘吉が追跡調査していた事を突き止める。 事件は尾藤の自首により一応解決したが、犯行に使われた車も奪われた現金も行方不明であり、 現場には人間離れした野獣のような力による跡が残るなど、多くの謎が残されていた……。
 ビーストの襲撃を受けた翌日、翔太郎がおやっさんに関わる木彫りの熊の事を思いだし、翔太郎、亜樹子、尾藤の3人は、 おやっさんが訳ありの依頼人を匿っていた山中の別荘へと向かう。
 ……ああなんか、昭和の探偵だなぁ、おやっさん(笑)
 一方、地下基地ではフィリップが体の変調を感じていた(バチバチと、腕の辺りを電光が覆うような演出)。
 「感じる……やはり、僕に新しい力が宿っている」
 そしてそこに、フィリップよりずっと前から「ここを知っている」と現れるシュラウド。
 割と謎だったけどツッコミ所ではないしと放置していた地下基地ですが、劇場版で既に語られているのかもしれませんが、 フィリップが来る以前から存在していたという事でしょうか。それとも、“ここ”はあくまで鳴海探偵事務所を指すのか。
 「来人、あなたはもうすぐ進化する。エクストリームメモリを使って。でも、 そこに到達できる真のパートナーは――左翔太郎ではない」
 「翔太郎ではもう、僕のパワーについてこれない……」
 その頃山荘では、コルクボードに貼られていた10年前のサム・ベル・丸の写真を見つめる尾藤に、翔太郎が茶々を入れていた。
 「はぁ〜ん、尾藤さん、今でも、ベルさんの事、好きなんだ」
 「心底薄っぺらいなおまえは。ホントに旦那の弟子か」
 ……すみません、今回ホントに、薄っぺらいわ……(笑)
 目標であるおやっさん、そして渋い大人の男である尾藤との対比を強調する意図はあったのでしょうが、 大人の男女の過去に黄色いクチバシを挟むのはさすがにちょっと引くレベルで軽い。海月のように軽い。
 再浮上の前に翔太郎を落とすフェーズというのはわかるのですが、ここまでの翔太郎の流れから見ても、少々軽すぎた気はします。
 まあ翔太郎、チンピラ体質が根深いので、「オヤジー」とか「アニキー」とかいうタイプに対する親しみの表現が、 遂こうなってしまうのかもしれない。
 むしろ小突かれたい、みたいな。
 そんな翔太郎に尾藤は10年前の真実を語る。10年前、丸にぞっこんの鈴子の「この人が居なくては生きていけない」 という言葉を聞き、尾藤は丸の身代わりに出頭したのだった。
 「まさかあんた、それで有馬の罪をかぶったのか。惚れた女の為に」
 「だから、そういう事を言葉にすんじゃねえよ坊主」
 まあ尾藤のアニキも自分から語りに入る辺り、似たような体質です。
 「あの人は……分厚い男だった。坊主、薄っぺらい男の人生はいてえ。今にでかいもん失うぞ」
 (おやっさんよりでかい失くし物なんて、他にあるかよ……)
 そこへ亜樹子が木彫りの熊を見つけてくるが、丸に興味を持って接触していたウェザーが来襲し、尾藤を凍らせると熊を奪い取る。 変身を躊躇うフィリップはシュラウドの制止を振り切ると、リボルキャリーを発進させ、現地でファングに変身。 だがフィリップの体をベースにしたファングでも力のバランスは取れず、ウェザーに大苦戦。
 「不調ですねぇ。診察しましょうか?」
 戦闘中、何かぼてっと落としたと思ったら、熊か(笑)  追い詰められたダブルはマキシマムドライブを発動するが、バランスが悪すぎて空中分解。とうとう変身が解除されてしまい、 悲しそうな瞳で翔太郎を見つめるフィリップ。
 どなどなどーなーどーなー♪
 「そんな……ダブルに……なれねぇ」
 感情面はともかく、論理的な判断として、フィリップが翔太郎の力不足を認識してしまっているというのが、なかなかきつい。
 「終わりよ、左翔太郎。おまえには――ダブルは無理」
 そしてシュラウドは、無人の事務所で、勝手にダーツとかしていた(笑)
 おまわりさーん。
 力不足云々とは別に、シュラウドが個人的に翔太郎を凄く嫌いな感じなのですが、なんなのだろう、 コアな本格ミステリ派なのか。
 今回散りばめられた情報をこれまでの諸々と考え合わせて現在私の脳内で展開しているのが、 シュラウドは琉兵衛さんの別れた妻で後に鳴海荘吉と結婚という、恐ろしくドロドロした絵図なのですが、どうしよう。
 で、翔太郎をリストラするにしてもフィリップ友達居ないけど代わりの相棒はどうするのか、と思ったら、 予告を見る限り照井が浮上する模様。なるほど、シュラウドが照井に力を与えたのは、フィリップの相棒に仕立てる為だったのか、 と28話のラストの台詞と繋がりました。これでシュラウドがここまで姿を見せていなかったのも、 フィリップの真の相棒の育成期間だった為、と理由がつきそうです。
 はたして、翔太郎はこのまま戦力外通告を受けてドナドナされてしまうのか。それとも男の厚みを見せる事が出来るのか。 崖っぷちのハーフボイルド探偵の運命や如何に?!

◆第32話「風が呼ぶB/今、輝きの中で」◆ (監督:諸田敏 脚本:三条陸)
 ウェザーに仕留められそうになるフィリップと翔太郎だが、忘れ去られそうになっていたアクセル戦車が割って入り、 アクセルがウェザーと交戦。
 「フィリップ、もう一度ダブルに……」
 「もう、君には無理だ」
 捨 て ら れ た ーーー
 ここで無音になるのがショックを強めて良かった所。
 フィリップはサイクロンメモリをアクセルに渡し、アクセルはそれを剣に装着。 凄まじい力を発揮するアクセル剣サイクロン滅多切りにより切り刻まれたウェザーの手から熊は崖下に落下し、ウェザーは撤退。
 微妙に気まずい空気の中、サイクロンメモリをフィリップに返す照井の横でがくっと崩れ落ちる翔太郎。
 「俺はもう、ダブルになれない……」
 廃人になった翔太郎を置いて、凍結ガスを浴びた尾藤を病院に連れて行く為に、残りのメンバーは下山。一方、 井坂の失敗により丸は冴子達と手を切る。と、そもそも井坂先生がビーストをじっくりたっぷり舐めるように触診したかっただけかとは思われますが、 ミュージアムサイドは事件から手を引く事に。
 山荘で、尾藤の言葉を思い返す翔太郎。
 (薄っぺらい男の人生はいてえ。今にでかいもん失うぞ)
 「今度はフィリップかよ……」
 このまま世捨て人一直線かと思われた翔太郎だが、「ダブルがまともにつとまらねえ俺には……探偵しかねえ」と、雨に濡れながら、 熊を捜索。こーいうのは翔太郎の長所であり、職持ちライダーとして「職業への誇り」が描かれているのも、作品として良いところ。
 また、熊探しを手伝うサポートアニマル達が落ち込んだ翔太郎に優しくて、機械の人情がぽっかり空いた心の穴に沁みます(笑)
 翔太郎は熊の中に隠された何かを見つけるがそれについては口をつぐみ、熊と思い出の写真を尾藤に渡してくれと亜樹子とフィリップに託して、 どこかへ。そんな翔太郎の湿気たマッチの様な姿に、大きな決断を下そうとするフィリップ。
 「照井竜。僕と組む気はあるかい?」
 「フィリップ……つまらない質問をするな。俺は1人で奴等を追う」
 だが照井課長は、いい男なのでフィリップを振る。
 もはや別にロンリーウルフだからではなく、2人の絆を強さと思っているからこそ、即座に断るのが照井の格好いい所。
 翔太郎役に立たねーし、と怜悧な選択をしようとするフィリップに詰め寄る亜樹子。
 「弱い弱いっていうけど、それは翔太郎くんが心の優しい奴だからでしょ! でもそれって、あいつのいいところじゃん。それに、 翔太郎くんは戦いの道具じゃ無いんだよ! 翔太郎くんは、ハーフボイルドだからこそ、何かやる男なのよ!」
 「……そうだ――! 翔太郎がああいう顔をする時、それは決まって、何か甘い考えで無茶をする時」
 亜樹子はプラスの意味で「何かやってくれる」と言っているのに、フィリップは微妙にマイナスの意味で「何かやらかす」 と言っているのが、そこはかとなく切ない(笑)
 フィリップが熊の仕掛けとその奥に隠されたメモに気付いた頃、翔太郎は鈴子の元を訪れていた。
 「ガイアメモリについて、聞かせて下さい」
 翔太郎が手にしたメモリを起動すると、鈴子の首筋に浮かび上がる生体コネクタ。鳴海荘吉が木彫りの熊の中に隠していたのは、 かつて鈴子が使っていたメモリ。そう、10年前の現金強奪事件は丸/ビーストの単独犯ではなく、鈴子も共犯だったのだ。 2人は最初から計画ずくで、尾藤の好意を利用して彼が自首するように仕向けていたのである。
 ……どうしてこの作品は、メインテーマが「事件の陰に女あり」なのか。
 もはや定番すぎて驚きもひねりもないのですが、むしろ、これが芸風と割り切っている節があって、問題は、 どうしてそこを割り切ってまで、このテーマにこだわっているのか、です(笑)
 これは、子供達にあらゆる女性に不審の目を向けさせようという、バイ○ロン的な陰謀なのか!
 真面目な話としては、作劇としてはパターン化の傾向が強くてマイナスと言えるのですが、 ここまでこだわっていると仕方のない気もしてくるのが困った所(^^; それで面白くないかといえば、そういうわけでもないですし。
 尾藤に謝罪してほしい、と償いを求める翔太郎だが、不意打ちでメモリを取り返した鈴子はゾーンドーパントに変身。
 ここまで1−2話と幹部クラスの登場回を除けば、1エピソードで2体の着ぐるみドーパントは出していなかったのでどうするのかと思いましたが、 ゾーンドーパントは人間の頭大のピラミッド型の立方体に昆虫のような足が付いている、という非人間型タイプで、造形物とCGで処理。
 基本的にドーパントの共犯による事件が無いというのはやや物語のパターン幅を狭めていたので、 こういったデザインで2体の悪役ドーパントを出した、というのは良かったと思います。
 任意の物体を瞬間移動させるゾーンの能力により翔太郎は吹っ飛ばされ、鈴子はその能力により現金を回収する為、 10年前の事件で現金輸送車を隠したダム湖へと向かう。
 その頃、園咲家の地下空洞には琉兵衛と若菜が集っていた。ミュージアムの未来に繋がる記念すべき一瞬の到来を若菜と一緒に見たい、 と告げる琉兵衛。
 「地球が来人を呼んでいる――」
 丸の動きを警戒し、クワガタメカにダム湖を監視させていた照井は、姿を見せた有馬夫妻と交戦。だがアクセルは、 空間に架空の罫線を引いて盤面を作り出し(将棋好きという前振りあり)、ゾーンが次々とビーストを瞬間移動させるという連係攻撃により、 追い詰められていく。
 亜樹子とフィリップは、川を流れていた翔太郎を拾得。
 「また真犯人に甘さを見せて、殺されかかったね?」
 「相変わらずお見通しか。やっぱ薄っぺらいなぁ……俺」
 「それでいいんだ、翔太郎」
 「え?」
 ここで、黙って二人から距離を取る亜樹子が、とてもいい味。
 「完璧な人間などいない。互いに支え合って生きていくのが――」
 「――人生というゲーム。……おやっさんの言葉」
 フィリップは、熊の中から見つけたメモを翔太郎に見せる。そこに書かれていたのはおやっさんから尾藤へのメッセージだった。

 サムへ/ Nobody’s perfect

 「Nobody’s perfect……誰も完全じゃない」
 鳴海荘吉は事件の真の黒幕を伝えるメモリだけではなく、尾藤を励ます言葉をそこに残していたのだった。 それは鳴海荘吉の厳しさであり、優しさ。ただ罪を暴くのではなく、それに関わる人の心をいたわるという想い。
 「君は彼と同じ事をした」
 「でも俺は…………無力だ」
 「だから、Nobody’s perfect、だってば。僕は大事な事を忘れていたんだ。鳴海荘吉の意志を受け継いだダブルは、 戦闘マシンであってはならない。強いだけのダブルに価値はない。君の優しさが必要だ、翔太郎」
 フィリップは翔太郎に手を伸ばし、それを握り返して立ち上がる翔太郎。
 「それがもし、弱さだとしても――僕は受け入れる」
 「……ありがとよ……フィリップ」
 引きこもりだけど運動能力も低くない事がそれとなく描かれていたフィリップですが、 前半はどちらかというと世知に長けた翔太郎の庇護対象という描写だったフィリップの方が、 実は知性と肉体能力においては完璧超人に近い存在であり、翔太郎の立場はむしろそのサポート役、 とここで明確に相棒間の役割ヒエラルキーが部分的に逆転。
 しかし同時に、パーフェクトソルジャーであるフィリップに欠落したもの――“人の優しさ”こそ、 「戦士」ではなく「ヒーロー」であるダブルに必要なものであり、「本当のヒーローって何だろう?」 という今作のテーマへの一つの解が示されてもいます。
 実際、フィリップ×照井のダブルは、戦闘回路が発達しすぎてオーバーキルとジェノサイドを繰り返す破壊の化身になりそうな気がするので、 必要なのは、ブレーキ。
 そう、良太郎は、ダブルの良心回路にして自省回路だった!(笑) (※またメタ的には、現代的ヒーローにおける「社会性」のシンボルでもあると思われます)
 割と怖いのは、言動から解釈する限り、ダブルになれないなら仕方ないよね、とフィリップが本気で翔太郎を捨てようとしていた事(笑)
 翔太郎の必要性がよくわかります。
 「行こう、相棒」
 ここから、鳴海荘吉を演じた吉川晃司が自ら歌うおやっさんのテーマ曲「Nobody’s perfect」をバックに、 タンデムでダム湖に急ぐフィリップと翔太郎。効果音すら入れず、完全に挿入歌だけと、大胆にやりました。

苦しみは優しさを死なせやしない 弱さを知れば人は強くなれる
さぁおまえの罪を数え 魂に踏みとどまれ
愛する物を 守るために
立ち向かえばいい
立ち向かっていけばいい

 アクセルが追い詰められた所に間に合った二人は、ガイアメモリをその手にする。
 ――『サイクロン』『ジョーカー』――
 「「変身」」

Nobody’s Perfect
それだけが 命の証

 「「さあ、お前達の罪を、数えろ」」
 完璧な人間などいない――支え合って戦う、それが、二人で一人のヒーロー、仮面ライダーダブル!
 「何をしているの、ライト。そいつでは何も出来ない」
 心意気はともかく、パワーバランスのズレはいかんともしがたく苦しむダブルの姿を外野から観戦するシュラウド、 とうとう「そいつ」呼ばわりで、手厳しい。
 だが、自分の弱さを認めた翔太郎は、厚さが3mmぐらい増していた!
 「おまえは全開で行け! 俺がついていくから! こんなバチバチ、なんてことはねえ! 耐えきるさ!  おまえが相棒だと思ってくれてる内は、俺は二度と折れねえぞ!」
 サイクロンジョーカーは怒濤の連続キックで猛攻をしかけ、ビーストを徐々に上回っていくとダブルの体に異変が起こり、 そこにエクストリームメモリが飛来する。
 「まさか……あの光は?!」
 ダブルの体から上空に二条の光が伸び、それに導かれる形でドライバに上からくっつくエクストリーム。そして――
 「なんだ? この湧き上がる力は? まるで地球そのものと一体化したような」
 「それだけじゃねえ。俺たちの、心と体も」
 「「一つになる!!」」
 誕生・フィリ太郎!
 ……ではなくて、ダブルは自らその割れ目を左右に開くと、外見がやや角張るとともに、緑・銀・黒の三色からなる新たな姿へと進化を遂げる。
 「だだだだだだダブルが開いたぁ! しかも中見えたぁ」
 園崎家の地下空洞では、これに呼応するかのように、まばゆい光が噴き上がっていた。
 「ははははははは、そうだ、この時を待っていたのだ。エクストリーーーーーーーーーーーーム!!」
 「あの二人が、地球を手にした。今ダブルは、地球という無限のデータベースと直結している」
 進化したダブルは体内から盾と剣のセット・プリズムデッカーを取り出すと、プリズムメモリを装着。 ゾーンによる瞬間移動を先読みして迎撃し、盾にサイクロン・ヒート・ルナ・ジョーカーの4つのメモリを付けると、 プリズムビーム砲でゾーンを撃破。激高したビーストも、その再生能力を遙かに凌駕するプリズムダイナミックの一撃でメモリブレイクする。
 “心と体が一つになった”表現なのでしょうが、必殺技名を叫ばなくなったのが、ちょっと寂しい(笑)
 「新しいダブルになった……俺、おまえについていけたんだな」
 「ああ、翔太郎。君と僕が、完全に一体化した姿だ。サイクロンジョーカー――エクストリーム」
 ……長い。
 えらく吊り目になったエクストリームは顔にバリが付き、の意匠なのでしょうが、今作なので、 風車の羽のイメージも入っているのかしら。
 格好いいか格好悪いかを問われると悩ましい所ですが、とりあえず、強さとしてはこれ以上ない、ど派手なお披露目となりました。 平気で盾に4つメモリつけてマキシマムドライブを発動していたので、通常状態のツインマキシマムに今後出番が無さそうなのが、 個人的にちょっと残念(^^; あれ、裏技としては使い所がありそうで好きだったのですけど。
 「まさかエクストリームにまで到達するなんて。どこまで私の計算を超えるの、左、翔太郎……」
 そして翔太郎はまた、知らない所でシュラウドの憎しみを買うのであった。
 早朝ジョギング中に配達の牛乳を盗み飲みした事がある、ぐらいの勢いで恨まれているけど、本当に何したんだ翔太郎。
 事件は幕を閉じ、尾藤を気遣う翔太郎は、デコピンをくらう。再出発した尾藤は何故か、 クイーン&エリザベスと手を組んでリンゴ飴の屋台を出していた。屋台の中に、おやっさんの形見として、木彫りの熊とメモ、 そして10年前の写真が飾ってあるのがいい。
 「いいか。事務所潰したらいかんぞ……後釜」
 一発軽くはたかれる翔太郎。
 「……おう!」
 なんかやっぱり翔太郎、こういう人に小突かれるのが好きそう(笑)
 (俺とフィリップは新しい力を得た。これからも俺は必死で走るしかなさそうだ。追いつかなきゃいけない人が、たくさん居るからな――)
 元々が、未熟者と未熟者がくっついてヒーローをやる、というコンセプトなのでテーマ的にはやや繰り返しなのですが、 格好つけて誤魔化しがちな翔太郎が自分の弱さと向き合い(ジミーには色々言っていたけど、翔太郎タイプの人間には非常に厳しい試練である)、 力に引きずられそうになっていたフィリップが自分に必要な物を見つめ直し、改めて原点回帰するという形でのパワーアップ。
 いわば翔太郎を良心回路として置く、というのは今作らしい古典へのオマージュを感じる所ですが、その良心回路とはなんぞや、 という所を丁寧に描いてきたというのが、現代的な再構成。
 つまり今作は32話をかけて、正義とは――人の良心とは何か、という部分を描いてきたともいえ、そうやって描かれた良心回路 (翔太郎)を組み込んだパーフェクトソルジャー(フィリップ)こそが、厳しさと優しさの両面を持って人を救う「ヒーロー」 たる仮面ライダーダブルである、という形で、正義の背景を個人の人生とシンクロさせる形で収束。
 かなりアクロバットな手法といえますが、オマージュ的な要素にまとめた部分が強いので、個人的にはもう一歩先を見たい所。まあ、 ある意味ではここが『ダブル』のもう一つのスタート地点であり、後半戦でこの先の一歩二歩があるのだと、期待しています。
 今エピソードでの難を言えば、演出的に盛り上げすぎて、サイクロンジョーカーのままビーストに勝てそうになってしまった事(笑)  翔太郎が計算以上の力を出してエクストリームが発動したというより、エクス鳥がおいしい所だけかっさらった感じになってしまい、 正直、エクストリーム発動よりその前の方が盛り上がった(笑)
 あと、エクストリームどころか、竜巻アクセル剣に完敗したウェザーは、しゃしゃり出てきた為に激しく株価を下げる事に。 そろそろやられキャラっぽくなってきてしまったので、井坂先生の逆襲に期待したい。

→〔その6へ続く〕

(2015年10月27日)
(2017年3月21日 改訂)
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