■『仮面ライダーW』感想まとめ4■


“くるくるくるくる 風車が回る
くるくるくるくる 君が来る”


 ブログ「ものかきの繰り言」の方に連載していた『仮面ライダーW』 感想の、まとめ4(21〜26話)です。文体の統一や、誤字脱字の修正など、若干の改稿をしています。そこはかとなくアクセル色。


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◆第21話「還ってきたT/女には向かないメロディ」◆ (監督:坂本浩一 脚本:長谷川圭一)
 アバンタイトル前回のあらすじが、まとめ方のせいで、話を聞かないアクセルが、ドーパントを斬殺したようしか見えない(笑)
 ガイアメモリ流通組織に警察の情報を流す内通者を追う、超常犯罪捜査課。マスカレード軍団に囲まれた照井は、 真倉が気絶してから変身。「これで心おきなく」という台詞があり、一応、部下には秘密らしい。
 逃げ出した内通者・氷室刑事の耳に響く口笛の音色。
 「この口笛、まさか……」
 「久しぶりだな、氷室」
 「溝口くん……いや……おまえ、おまえ死んだ筈じゃ!」
 マスカレード軍団をA斬りで成敗したアクセルは氷室を探すが、その氷室は紫色のドーパントにより殺害され、ドーパントは逃亡。 生き残りのマスカレードが物陰から照井に銃口を向けるが、そこへ現れた女刑事によって撃ち殺される。
 ……マスカレード軍団ざっくり爆死しているけど、どういう扱いなのだろうホント(笑)  ミュージアムとしても末端の構成員からの情報洩れは警戒しているでしょうから、 自爆装置付きというのはありそうですが、それにしても容赦なく攻撃しているしなぁ(^^;  ロボットやアンドロイドとかいう可能性もありそうですが、それだと、若菜姫に求婚していた中年が居たのが、合わないですし。 ……まあ、恋愛するぐらい高度なロボットという事でもいいけど。
 「九条綾です。本日付で、風都署、超常犯罪捜査課に配属されました。Nice to meet you」
 女刑事・九条綾を演じるのは、スタッフがみんな大好き、木下あゆ美。
 ……数日後、事務所に駆け込んでくる真倉。頭を下げて捜査への協力を依頼してくる真倉に上から対応する翔太郎だが、亜樹子、 通常の3割増しでハードボイルドの魂を売ろうとする。
 ロス市警帰りの九条綾に夢中な真倉の、照井を出し抜いていいところを見せたいという動機が判明し、 途端に興味を失うフィリップと亜樹子。が、
 「いや……わかるぜ。俺にはわかる。照井には一度がつんと思い知らせておく必要が、ある」
 邪な心で手を組む、翔太郎と真倉(笑)
 ここまでずっと、翔太郎に嫌な態度を見せる駄目刑事、でしかなかった真倉がフィーチャーされても正直どうでもいい感じしか漂わないのですが、 まあ、サブキャラの使い方がおざなりよりは、いいか。
 ウォッチャマンから話を聞いた一同は、きな臭い噂の多い捜査一課の悪徳刑事・阿久津を見張るが、照井と綾も既に目を付けていた。 暴走した真倉が功を焦って正面から阿久津に接触してしまい、阿久津は逃亡。追跡シーンで照井が無駄に格好良くジャンプしたりは、 初見参の坂本監督あたりの趣味でしょうか。
 照井は阿久津を取り押さえるが、そこに響く口笛、そして現れる紫色のドーパント(トリケラトプス?)。
 「地獄から戻ってきたのさ。お前達を迎えに!」
 アクセルに変身しようとした照井は吹き飛ばされ、追いついた翔太郎がダブルに変身。固い装甲と怪力に押されるが、 ヒートメタルに変身して反撃するも、ドーパントにも阿久津にも逃げられてしまう。 阿久津が落としたキーホルダーの検索をフィリップに頼むために一行は事務所に集い、そこで綾の口から、 氷室と阿久津の口にしていた「溝口」というのが元捜査一課の刑事だと判明する。
 収賄事件で懲戒免職となり、後に自殺した溝口だが、元同僚の綾によればそれは濡れ衣だという。全ては、 実は生きていた溝口による復讐なのか――
 「やっぱり最低だ! 立派な警察官なら、犯人達を逮捕し、裁きは法にゆだねるべきだ! それをドーパントになって、復讐だなんて!」
 「おまえに何がわかる!」
 割と芯のある事を言った真倉だが、照井に殴られる。
 「正論は時として、暴論より相手を怒らせる」
 「そんなぁ……」
 作品としては真倉の言い分が支持されていい筈なのですが、照井に殴られたという事は、真倉の発言は「空気を読まずに綺麗事を言った」 扱いなのか。……ちょっと不憫。
 そして、ムッとしたので問答無用で部下の顔面を殴る照井は、アクセルだけにブレーキが見当たらず、 今後の不安が募ります(笑)
 自警団的ヒーローの方が法治を尊重していて、公権力ヒーローの方が法の壁をぶち破りそうな勢い、というのは何とも皮肉な構図。
 フィリップがキーホルダーを検索した事で阿久津の潜伏場所が個人所有のクルーザーと判明し、そこへ向かう翔太郎、照井、真倉、綾。 翔太郎と照井は確保した阿久津の口から、阿久津と氷室が身寄りの無い無職の人間などを、 ガイアメモリの実験台として組織に斡旋していた事を知る。それを知った溝口は正義感から2人を止めようとして、 口封じに始末されていたのだった。
 「俺を守るのは……あの化け物だ!」
 冴子に連絡を取った阿久津にはスミロドンがガードにつけられており、変身するダブルとアクセル。強敵スミロドンを前に、 特に引っ張る事なく、2人のライダーが共闘。ルナトリガーの追尾弾すらかわすスミロドンに対し、 アクセルがスチームの蒸気による目くらましから空中斬りを浴びせるが、その間に阿久津はクルーザーで逃亡してしまう。
 が、飛来した棍棒がクルーザーを貫き、阿久津、大爆死。
 「溝口……」
 「いや、溝口じゃない」
 (ああ)
 「て、どういう事だよ?!
 「君なんだろ、九条刑事」
 そう、トリケラトプスドーパントの正体は、恋人であった溝口の復讐の為にドーパントとなった、九条綾であった……。 事務所を訪れた際に「右足をかばって歩いている」(ヒートメタルの攻撃を受けた箇所)とフィリップから露骨な指摘があったのですが、 特に引っ張る事なく正体を明かしてきました。そして1人だけ気付いていなかった翔太郎(笑)
 本格登場2回目のスミロドンはやはり戦闘特化型のようで、スピード&パワーでダブルとアクセル相手に2対1でも匹敵。 ルナトリガーの追尾弾をかわすスピード…………て、ちょ、ちょうこぉそく…………。
 ところで、
 鉄パイプに足を滑らせてかなり高い位置からアスファルトに後頭部を打ち付け気絶。照井の顔面パンチを食らって鼻血。 トリケラトプスドーパントに殴られてまたもアスファルトに後頭部を打ち付けて気絶。
 …………次回、真倉が突然意識不明になって還らぬ人にならないか、ちょっとだけ心配です。

◆第22話「還ってきたT/死なない男」◆ (監督:坂本浩一 脚本:長谷川圭一)
 「俺にメモリを渡せ。もう復讐は終わった。これ以上罪を重ねるな」
 正体を見せた綾のメモリを回収しようとするアクセルだが、“組織”の存在を知った綾は、復讐の続行を宣言。
 「私は復讐する。このメモリの力を使って」
 「そうか……なら仕方ない!」
 アクセル、またも生身の人間に切りかかる。
 駄目だこの人ぉぉぉぉぉ!!
 照井は報告書に平気で、「犯人を追い詰めましたが、自爆しました。ついでに10億円が燃えました」 って書きそう。
 慌ててダブルが止めに入り、その間に綾は逃亡。
 綾に同情的な翔太郎は、綾の精神力ならガイアメモリを押さえ込めると考えるが、フィリップは照井の判断を支持。 既に2人の人間を殺した綾を野に放ってはいけない、「僕たちには、彼女を止める責任がある」と諭された翔太郎(辛子色)は、 綾を止める為の捜索へ向かう。
 「私は全て無くしてしまった。だから生きる為の答が必要なの」
 溝口が死んだ岬で綾と出会った翔太郎は自首するように説得を試みるが、組織を追い込む為にもう一晩待ってほしい、 と言われて結局綾を見逃す事に。
 一方、綾の行方を追っていた照井はWのメモリの持ち主から電話を受け、呼び出された工事現場で罠にはまり鉄骨の下敷きになってしまう。
 冴子の会社に乗り込んだ綾は冴子を追い詰めるが、冴子を殺すのではなく、自分を阿久津の後釜に据える事を要求。……と、 怪しげに変わってくる風向き。
 最近、翔太郎の裏目ぶりが、某役立たずさんを彷彿とさせつつあるのは気のせいでしょうか。 気のせいだと思いたい。まちょっと覚悟はしておけ。
 冴子は綾を信用する条件として、同僚である刃野の始末を求め、自分に全く責任の無い所で、 凄くどうでも良さそうに命を狙われる事になる刃野(笑)
 翌朝、翔太郎と亜樹子は綾が風都署へやって来たのを見届けると、約束を守って自首しに来たのだと満足し、街へ。 そこでクイーン&エリザベスと合流し、そのままカラオケに雪崩れ込む。 事務所に飛び込んできたカブトムシの映像ファイルで照井を罠にはめたのが綾だと知ったフィリップは翔太郎に連絡を取るが、 ノリノリでカラオケ中の翔太郎、電話に気付かず。超常課では昆布茶が切れて真倉を買い出しに向かわせ、自ら1人になる刃野。 買い物へ向かった真倉はエレベーターがなかなか来ないので階段を使い、超常課へ向かう綾とすれ違う。
 と、無駄に凝った展開で刃野に迫る命の危機(笑)
 翔太郎と連絡がつかない為、やむなく自ら風都署へ向かったフィリップは、入り口で真倉と出会って超常課へ。 そこでは綾が刃野を狙い、トリケラトプスドーパントへと変身(メモリは、「トライセラトプス」と発音)。 刃野と真倉は吹き飛ばされてまとめて気絶し、フィリップはスライディング回避を見せると、 なんとか翔太郎と連絡がついてファングジョーカーに変身する。
 「阿久津を始末した時に気付いたのよ。私が本当に復讐すべき相手は、こんな虫けらじゃない。風都という、街そのものだっていう事に」
 「風都? 街に復讐するって……」
 「溝口は、心からこの風都を愛し、守ろうとした。でもこの街は、彼を守ってはくれなかった。それどころか、彼の誇りをズタズタにし、 蔑んだ。許せない。絶対に許せない。こんな街、無くなってしまえばいいのよ!」
 綾の憎しみは、溝口を手に掛けた個人や、その背後に存在していた“組織”よりも、溝口を救えないどころか追い詰めた、 雑多な人々の悪意――その集合体である“街”へと向けられていた。
 人々(街)の善意と良心を信じて仮面ライダーをやっている翔太郎と、 人々(街)の悪意を憎んでガイアメモリの力に呑み込まれた綾が対比され、そして同時に、“仮面ライダーの裁き”の正当性が問われる。
 仮面ライダーに託された人々の思いは、本当に、翔太郎が美しく考える「罪を憎んで人を憎まず」なのか? そしてもし、 人々が違う事を望んだなら、風都のヒーローである仮面ライダーはそれに応えるのか?
 もっとも、溝口は最終的には街に追い詰められて自殺したのではなく、そう見せかけて氷室と阿久津に始末されたのですが、 綾の中でその辺りが混濁しているのは、意図的なものと思われます。
 その、憎しみの対象を見つける事こそが、「生きる為の答」であるが故に。
 補足として別シーンの冴子の口から、ガイアメモリの毒素は負の感情に反応して人間を暴走させ、 やがて心まで完全な化け物へと変貌させる、と説明。
 完全に暴走して荒ぶるトリケラトプスは、ファングに猛攻を浴びせながら、照井を罠にはめて始末した事を告白。復讐相手を装ったら、 あれだけ用心深く、あれだけ死にそうにない男が簡単に引っかかった、と高笑いする、が――
 「よくわかってるじゃないか。俺は死なない。まだやらなきゃならない事が……あるからな」
 ボロボロの姿ながらも、照井竜、復活。
 なんという、ヒーロー体質。
 照井のモチーフはやはり、宮内洋っぽいなぁ(笑)
 Wに対するV3というよりも、ズバットなども含めた宮内洋感。
 「復讐に飲まれた悲しい女。俺が救ってやる。変… 身!!」
 まずいなぁ、翔太郎。何がまずいって、ハードボイルドは脇に置いておいて、ヒーロー体質で完全に負けています。翔太郎もそろそろ、 “サブマシンガンの斉射を喰らって死んだと思われたが実は生きていた”、ぐらいの芸を見せるべき。
 アクセルと戦うトリケラトプスは、風都タワーの破壊を宣言し、巨大化。肥大した憎悪に呑み込まれていく、 とでもいった感じの巨大怪物への変貌は格好良かった。
 「愛した男との、思い出までぶち壊すつもりか!」
 アクセルはバイクに変形して後を追うが弾き飛ばされ、攻撃を受けそうになった所にアクセルメカが登場してガード。
 「こいつが俺の、新しい力か」
 シュラウドの姿を認めたアクセルは再びバイクに変形し、キャノン砲モードになったメカと合体。 アクセル戦車へとトランスフォームし、すっかり、人間――振り切りました(笑)
 「振り切るぜ!」
 恐竜VS戦車、というトンデモ対決の末、最後は大型ビーム砲でメモリブレイク。
 「おまえの心は、俺が背負って生きる……」
 人の善意を信じる男――左翔太郎。
 人の悪意を背負っていく男――照井竜。
 何となく、劇中における仮面ライダーアクセルの立ち位置が、見えて来ました。
 あらゆる見せ場を完膚なきまでに奪い去られた翔太郎ですが、締めのモノローグだけは残りました。
 「こんな仕事をしていると、やりきれない事件にぶつかる事がある。人の悪意を見せつけられるような、そんな事件だ。 でもこの仕事は多くの人の善意とも出会う。だから俺はこの仕事を続けようと思う。この風都の仲間達と――」
 あ、真倉は生き延びました。むしろ、刃野さんが死にそうにというか、後半、違う意味で刃さんの方が目立った(笑)
 次回、ぜーーーーーっと!

◆第23話「唇にLを/シンガーソングライダー」◆ (監督:田崎竜太 脚本:三条陸)
 劇中歌番組の審査員役がえらく固い演技だと思ったら、主題歌を歌っている2人で、OPはその2人の歌唱シーンという特別版。
 開始早々、事務所に依頼を持ち込んでくるクイーン&エリザベス。
 2人は3週勝ち抜くと無条件でCDデビューできる視聴者参加型歌謡番組『フーティックアイドル』で3週目まで進んだのだが、 そこでとんでもなく歌の下手な挑戦者に負けてしまう。審査に不正があったに違いないという2人の剣幕に、まずはその、 ジミー中田の歌を聞きに行く翔太郎と亜樹子。
 ジミーの歌、それは路上ライブを始めた途端、周囲の大道芸人が逃げ出し、近所の店はシャッターを下ろし、鳥は落ち、腹が痛くなり、 呼吸が苦しくなる――という兵器レベルの破壊力であった。
 (確かに、この殺人ソングが合格したのだとしたら、どんな奴だってまず番組の不正を疑うのが自然だ……)
 「ジミー、ちょっと聞きたいんだが、今の音楽は何なんだ? ジャンルがまるでわからん」
 「スピックです」
 「「スピック?」」
 「スフィニングトゥーフォークの略です。フォークをベースに、ロックやラップなどの高揚感をブレンドしてます」
 新しい魔球だった。
 ジミーの台詞の所は、ぶっ飛んだ感性を表現する為か、変なカメラワークでノリノリ。
 周囲で倒れた人々が藻掻き苦しむ中、1人だけにこやかなジミーファンの女が翔太郎と亜樹子に手作り資料を渡すと、 サインを貰って帰っていく。
 (この野郎……どうも見ててイライラすると思ったぜ。なんか……俺に似てやがる)

 え(笑)

 翔太郎の自己評価が今ひとつわからないのですが、社会から滑り気味という事でいいのか。
 その頃、園咲家。
 「おい、冴子。どこ行くんだ?」
 先日顔を合わせたWのメモリを持つ男の元に、いそいそと出かけていく冴子さん。
 「新しい恋か……ふむ、随分早いな」
 き り ひ こ さーーーん(涙)
 若菜姫はお気に入りの『フーティックアイドル』にチャンネルを合わせてワクワク顔。
 「はぁ……それに引き換え、おまえはまだまだ子供だなぁ若菜」
 完全に狙って演じ分けてもらったのでしょうが、今日の琉兵衛は、凄く普通のお父さんぽくて面白い(笑)
 そして『フーティックアイドル』では……ジミー中田が世界を破壊していた。
 観客席の悲惨な反応とは真逆に、審査員席はジミーをべた褒め。
 番組が大好きという若菜姫はジミーの歌声に耐性があるのかと一瞬思ったのですが、辛そうな顔をしていたので、 どうやら先週は見逃していた模様(笑)
 飛び入り挑戦者バトル回という事で、客席から選ばれ、覆面で飛び入り参加する事になるフィリップと翔太郎。
 「僕たちは2人で1人の仮面シンガーだ!」
 驚く翔太郎に対し、事前に検索したフィリップが、飛び入りに選ばれやすいように仕込んでいた事が発覚。
 次回予告から全く期待しておらず、ここまで凄く馬鹿回なのに、けっこう面白いぞ(笑)
 そんなスタジオの様子を天井裏から見つめる謎のドーパント。
 「ふっふははははは、誰が来ても勝てないよ。ジミー中田は、天才だ」
 「電波塔の道化師とかいう、悪党はおまえか」
 そこへ現れた黒ジャンパーの照井が、場所を選ばずセットの上でアクセル変身。
 なお今回、照井が黒ジャンパーになったからか、翔太郎がワインレッドのシャツ+黒い袖無し皮ジャケット+いつもの帽子+スカーフ代わりの白ネクタイで、 完全に早川ルック(笑)
 そんな回に、歌唱力がネタとはどういう事だ、飛鳥ぁーーーーーー!!
 ……そういえば物凄く頻繁に忘れるけど、早川健の職業は一応探偵なので、探偵ヒーローというくくりでは翔太郎の先輩にあたるのか。
 意外とこういうノリが苦手なのかギリギリまで躊躇していた翔太郎だったが、腹をくくってやむなく仮面シンガーデビュー。
 凄く普通に歌い出しました(笑)
 掟破りの男性アイドル回!
 歌の途中で翔太郎の覆面が外れ、その相方として、TV越しにフィリップらしき人物の面影を知る事になる若菜姫。 冴子さんが同席していたら、大変な事になっていそう(笑) 琉兵衛さんはジミーの歌の時点で退散したと思いたい。
 その頃、アクセルは公務員として真面目に働いていた。
 「おまえのメモリはなんだ。答えろ」
 「ラブ、愛、愛の戦士だよ」
 アクセルは変な吹きだし?を飛ばすラブドーパントにアクセル二等辺三角形斬りを炸裂させてメモリブレイクに成功するが、 犯人は逃亡。
 『フーティックアイドル』では自分の時とは全く違う客席の反応に動揺するジミーだったが、結局は勝ち抜け。 翔太郎は事件の裏に何か――恐らくはドーパント――が関わっている事を確信し、ジミーに現実を見つめるよう忠告する。
 正体不明の詐欺師、電波塔の道化師を追っていた照井はブレイクしたメモリを持って事務所を訪れるが、 ガイアメモリだと思っていた物はいつの間にかすこんぶに変わっていた。どうやらドーパントは暗示をかける能力を持っているらしく、 照井はフィリップに協力を要請し、翔太郎は心の痛みがシンクロする所があるのか、どうも放っておけないジミーを探しに。
 「センスねえくせに格好ばっかつけやがって」
 「その言葉、言ってて自分に刺さんないの?」
 いつのも広場にジミーは見当たらず、サンタちゃんの仲介でストリートの顔役である詩人の社長から、色紙をいただく。

 「半人前でもいいじゃん」

 ありがとうございました。
 ジミーファンの女を思い出した翔太郎と亜樹子はサンタちゃんの情報で仕事先へ向かい、無理がたたって倒れた彼女を病院へ連れて行き、 事情を聞く。
 「ジミーを合格させたのはあんたか?」
 「彼の為じゃないわ。私の為よ! 私は他に楽しい事が一つもないの。私の人生に、ジミー君が必要なの!」
 走り去った女を追った翔太郎は、女が何故かトロッコに乗って現れたラブドーパントと接触するのを目撃。
 女自身がドーパントだったのではなく、女は金を払ってドーパント――“電波塔の道化師”――にジミーの勝利を頼んでいたのだ、 と一ひねりして面白い展開。だがラブドーパントは支払いが足りないと、3週目の勝ち抜きをさせる事を拒否し、 女が必死に貯めた金をぶちまけてせせら笑うと、一方的に契約を終了する。
 売れないミュージシャンを支援する事で充足を得る暗い女の情念、そんな女の希望を打ち砕いて嘲笑う詐欺師、 と馬鹿回から思わぬえぐい展開。
 アバンタイトルのジミーの殺人ソングの演出は過剰に過ぎた(というかエフェクトで遊び過ぎた)と思うのですが、 演出もこの辺りから面白い感じに。
 「いい事を教えてやろう。『私はおまえのご主人様だ』」
 ドーパントの口にした暗示の言葉がマンガの吹きだし状から針に変化して飛び、翔太郎に突き刺さる寸前、 なぜかダブル活躍のテーマで、その針を寸前で横から止めるアクセル(笑)
 翔太郎、まさかの、ヒロイン化!!
 もう、そちらへ行くしかないのか……!(待て)
 フィリップが検索で導き出したドーパントの正体は、「ライアー」。口にした暗示を針状にして飛ばし、 標的に信じ込ませるという厄介な能力の持ち主であった。
 さすがに「ラブ」はどうなのだろう、と思ったのですが、ここでサブタイトルのイニシャルをメタな視聴者引っかけに使ってきました(笑)  「I」をツッコんだ所だっただけに、これはやられました(^^; 「I」の時点からの仕込みネタとしか思えません。
 翔太郎はダブルに変身し、反撃に転じた仮面ライダーは、2人がかりで殴る蹴る。2人とも怒っているので容赦がありません。
 「俺を馬鹿にした報いだ」
 特にブレーキの無い人は発言が明らかに刑事を逸脱しており、査問を、早く査問を!
 アクセルがエレクトリックで斬りつけ、ダブルが背後からルナトリガーで撃つ、というのは格好いい連携。 立場が射撃サポートキャラ(脇役)になっている気がするけど、深く考えたら負けだ!
 ライアーを追い詰めた2人はトドメを刺そうとするが、そこへ走ってきたファンの女がジミーを勝たせようと必死にそれを止める。
 「無理に決まってるでしょ! どれだけ彼を見てると思ってるの?! あの子は、あの子は、信じられないぐらい才能が無いんだから!」
 そしてライアーによって呼ばれていたジミーが、事の真相を耳にしてしまう――。
 ライアードーパントが、徹底的に性格が悪いのは、かなりいい感じ。
 その頃、翔太郎達がファン女を運び込んだ井坂内科医院を、思いがけない人物が訪れていた。
 「今日の診察の時間は終わりましたよ。……園咲のお嬢さん」
 「裏の診察はこれからでしょう。井坂先生」
 人の良さそうな町医者・井坂深紅郎、彼こそが、恐るべき“W”のメモリの持ち主。その力は――ウェザー。
 アイドルが歌っていたり、水木一郎が審査員席に居たりとネタ回っぽい予告から全く期待しないで見始めたのですが、 軽妙な展開から事件の裏で剥き出しになる人間の暗い感情、それを嘲笑うドーパント、と意外な方向に転がり、 Wのメモリを持つ男の登場、えらく可愛い冴子さん、フィリップと若菜の間接的接触、と先へ繋がる要素もてんこ盛り、 何だかいたたまれない翔太郎、ダブルとアクセルの格好いい連携など見所も多く、思わぬ面白さで動揺するレベル(笑)
 次回、予告がまた凄いのでどうなる事やらわかりませんが、今回はかなり良かった。

◆第24話「唇にLを/嘘つきはおまえだ」◆ (監督:田崎竜太 脚本:三条陸)
 ライアーの攻撃によりダブルは「赤い仮面ライダーはドーパントだ」という暗示を受け、まさかのライダーバトル勃発。
 亜樹子はスリッパでライアーに立ち向かおうとするが「私の正体は狸だ」に引っかかって信楽焼の狸にアタックを仕掛け、 カオスな世界に。そのカオスの中で絶望に沈むジミーを嘲笑う性格の悪いライアードーパントは、ジミーの流した涙を紙にすくい取る。
 「いーい色だ。青春の挫折の色だ。たまんないなぁ」
 ひたすらエグい。
 ジミーを絶望に落とし、すがりつくファン女を嘲笑うライアーの背景で、無駄に殴り合っている駄目なライダー2人。
 ライアーは姿を消して暗示は解けるが、ジミーはどこかへ走り去ってしまい、とりあえず翔太郎達はファン女から詳しい事情を聞く事に。 事務所の壁に「半人前でもいいじゃん」が額に入れて飾ってあるのですが、 心に響いたのか(笑)
 「私、間違った事、したのかな!?」
 「ジミーはあんたの玩具じゃない。1人の人間だ」
 その頃、井坂内科医院では井坂先生が冴子さんに迫っていた。
 「君の体を見せてくれないか?」
 「突然、何を……」
 「そのつもりで、来たんだろう?」
 井坂先生は唇をじゅるりと舐め…………タブードーパントにすりすり。
 「ああ……君の肉体は、完璧だな。無限の可能性に満ちている」
 「そう、でもなんだか、複雑な心境。女としての私には、興味が無いなんて」
 「変身前の風体はどうでもいい! 私は、ドーパントの肉体専門のドクターだからね」

 新しい、変態だった。

 「冴子くん、君の力になりたい。また体を見せに来なさい」
 いずれミュージアムの実権を握る、という冴子の野心を見透かす井坂先生……は、登場2話目にして強烈なインパクト(^^;  またここではタブードーパントに頬ずりする井坂先生もさる事ながら、「え? 人間の私には興味ないの?」 と言いながらもタブーの姿で恥じらう冴子さんとの対比が、井坂先生の変態性を際立たせています。
 霧彦さんは、まあそろそろ、忘れてあげた方が幸せだろうか。
 3週勝ち抜けのかかった『フーティックアイドル』の収録日、砂浜にギターを投棄するジミー。
 「さよなら、僕の青春」
 「それ、格好いいつもりか、ジミー」
 前回の服装で白いギターを手にしていたら少々危なすぎた翔太郎は、砂浜で恥ずかしい追いかけっこの末に、ジミーを確保。
 「どうして……僕が、ここにいると?」
 「おまえ……形から入るタイプだろ? そういう奴はな、挫折したら細波海岸だ。俺も昔よくここに来た」
 「探偵さん……」
 ここで、夕陽をバックに恥ずかしい過去を告白する翔太郎……と思ったのですが、この後の時間経過を考えると、午前中の太陽か?  或いは、ジミー空間が時間すらねじ曲げるという、アニメ的な演出かもしれませんが(^^;
 音楽を辞めるというジミーに、「一番の嘘つきはおまえだ」と、自分の弱さをファンの裏切りのせいにするな、と翔太郎は諭し、 ジミーはファン女の嘘の中にも、真心があった事を思い出す。
 「僕、どうすれば……」
 「自分で決めろ。男の仕事の8割は決断、後はおまけみてぇなもんだ。俺の人生の師匠の教えだ」
 一方、照井が記憶に留めていたジミーの涙をぬぐった和紙から、ライアードーパントの正体がようやく判明。それは、 「半人前でもいいじゃん」の路上ポエム作家であった。
 最初の活躍が終わったら落とされがちなポジションの照井ですが、暴走癖こそあるものの、ひたすら有能。 有能な筈の人物を物語都合で落とすのは好きではないので良いのですが、お陰で翔太郎が、言いくるめ専門みたいになってきました(笑)
 ガンバレ。
 仮面ライダーに目を付けられた事で姿を消す“電波塔の道化師”路上ポエム詩人だが、ライアードーパントが 「ハートがふるふる」というフレーズを使っていた事から『ヒーリングプリンセス』のリスナーに違いないと気付いたフィリップが、 若菜姫に協力を依頼。番組内で「“電波塔の道化師”に会える事になった」と嘘のコメントを流して貰う。
 井坂の事を考えて気もそぞろな冴子を見ていてニヤニヤしていた若菜姫は、フィリップからの電話への反応が、 思った以上に恋する乙女(笑)
 偽物出現に慌てたポエム詩人がライアーに変身して若菜姫を追うと、コンサートホールで若菜姫の前に現れた、 間違ったN教番組的なアホ丸出しの格好をした偽“電波塔の道化師”が踊り出す。
 「ポエムを書いてあげるよ。いまいち、街のみんなには、評判悪いんだけどね」
 「こ、このやろぉ……」
 「詩集も出てるんだ! 全っっ然、売れなかったけどね」
 「いい加減にしろ! あんな本でもな、一生懸命書いたんだよぉ!」
 思わず物陰から飛び出すライアーだったが、偽“電波塔の道化師”の正体は、翔太郎。若菜のマネージャーは照井と亜樹子の扮装で、 そして若菜姫は……フィリップの女装だった。
 視聴者に代わり、自ら、何故あの役割は私ではないのか、とツッコむ生物学的女性。
 「あ、いや……俺は、亜樹子にやらせてくれ、て言ったんだけど……」
 「俺が却下した。所長では無理だ」
 一応、より危なくない役割を亜樹子に振った、と考えられなくもないのですが、照井の遠回しな気遣いなのか本気なのかは、謎(笑)  そしてフィリップは割とノリノリ。3人はコスプレから変身し、バトルスタート。
 「「さあ、おまえの罪を数えろ」」
 サイクロンメタル+スパイダーで、風の鉄糸によりライアーの口を物理的に封じるダブルだったが、飛び道具を受けて吹き飛ばされ、 高層ビルから真っ逆さまに落ちた所をバイクに変形したアクセルに拾われる。いずれやるだろうと思われていた、 アクセルバイクに乗るダブル、ですが、早くも使ってきました。
 アクセルとダブルは、共闘もコンビ攻撃もバイク合体も、出し惜しみもしなければ特に物語の山場に繋げるわけでもなく、 ガンガン見せてくるというのは実に今作らしい所。先のネタを用意しているのかはさておき、 各種フォームチェンジ同様の見せる路線なら見せる路線で、変に引っ張らないのがいい。またその上で、 手抜きせずに格好良く見せてくれるのが、今作のいい形でのサービス精神を感じます。
 溜めに溜めて物語と繋げて盛り上げてくれるのも勿論好きですが、『ダブル』はサービスを徹底しているので、これはこれでアリ。
 ダブルを乗せたアクセルバイクはドーパントの攻撃をかわしながら高層ビルの壁面を疾走し、 最後はサイクロンジョーカーが車輪加速型半分こキックでメモリブレイク。
 一方、『フーティックアイドル』の収録会場にはジミーが遅れて登場し、客席に来ていたファン女を見つめ、覚悟を決めて歌い出す。
 「愛を込めて、歌います。僕を信じてくれた、たった1人の為に」
 その歌は審査員に酷評されるもハートを評価され、ジミーは舞台裏でファン女と対面する。
 「ジミーくん、今日、初めて気付いたわ。これって……ラブソングだったのね」
 「遅いよ。……ファンのくせに」
 2人は何となくいい雰囲気になってしまい、メタ引っかけであった「Love」を、しっかりエピソードの最後に絡めてきたのは、巧い所。
 ところで、ファン女が最後に眼鏡を外すのは、野暮ったい30女だと思ったら眼鏡外したら美人で全日本の眼鏡女子ファン大激怒!  みたいな感じでいいのか(笑)
 こうして事件は解決し、ジミーはファン女の務める工場で一緒に働き出し、クイーン&エリザベスは番組関係者の口利きでCDデビュー。 そして亜樹子は、心の叫びを書につづっていた。
 女の子だもん
 照井、次に仕事を持ち込んできたら、5割増し決定。

◆第25話「Pの遊戯/人形は手癖が悪い」◆ (監督:石田秀範 脚本:長谷川圭一)
 フィリップ宛に疑似メモリと新しいガジェットの設計図が入った謎の郵便物が届き、とりあえず作ってみる事に。……て、 そんな軽いノリでいいのか(^^;
 多分フィリップが作ったのだろうなーと思われつつ、これまで特に言及の無かったガジェットの制作シーンが入り、 既存のガジェットもどうやら、メカに疑似メモリを搭載する事で動いている模様。
 事務所では亜樹子が『少女と人形の家』という小説を読んで号泣していたところ、謎めいた少女・リコから「人形を取り返して」 と言われ、住所を書いたメモを渡される。単身メモの住所へ向かった亜樹子は、動く人形が文芸評論家を襲撃する事件に巻き込まれ、 殺人未遂事件の立派な容疑者に。
 謎めいた少女・怖い顔で人間を襲う人形、とファンタジックなホラー題材なのですが、あまり暗くしたくなかったのか、 演出ラインとしては怪奇よりもコミカル成分が多めで、所長が顔芸で大奮闘。個人的にはストレートな怪奇演出も見たかったのですが、 「復讐のV」でやっているから、という判断だったか。
 超常課に囲まれ、後からやってきた翔太郎にも人形が動いた事を信用してもらえなかった亜樹子は、隙を突いて逃げ出すと、 メモに書かれたもう一つの住所へ向かう。そこでも家の主が動く人形に襲われ、人形とバトルする亜樹子。そこへ駆けつけた照井、 人形をバイクで轢く。
 「所長、大丈夫か」
 翔太郎がやるべき事を全部やってしまいました(笑)
 廃車置き場で2人を翻弄する人形に、大人げない照井は容赦なくアクセルに変身するが、結局は逃げられてしまう。
 「実は今回と似た事件が既に2件発生していた」
 謎の密室傷害事件――その犯人は、人形のドーパント?
 2人は事務所に戻ってフィリップに検索を頼み、4人の被害者がそれぞれ『人形と少女の家』を酷評していた事が判明する。 浮かび上がるのは小説の作者・堀之内……そして著者近影に写る作者の娘の姿は、亜樹子の前に現れた少女と瓜二つであった。
 やたらべたべたしてくる亜樹子に、なんだこれ、みたいな反応の照井(笑)
 別に嬉しくはないが、翔太郎が苛ついているのが楽しいからいいか、みたいな。 まあ照井は亡き妹への思いがあるので、もしかすると、亜樹子が妹分ポジションに入ってくる事はあるのかもしれません。 なんだかんだで、亜樹子には割と甘い気がしないでもない。
 「だって竜くんはとーっても頼りになるんだもん。――どっかの誰かさんと違って」
 意趣返しで嫌がらせをする亜樹子は、翔太郎が自分より照井が頼られているとムカつく、という実にいい所を突いた精神攻撃です(笑)
 いつもの調子で調査に向かおうとした翔太郎は亜樹子に袖にされ、亜樹子は照井と捜査に。サイン会に乗り込んだ照井は作者を挑発し、 その帰路、亜樹子の前に再び現れる少女リコ。
 「お姉ちゃん、人形の声を聴いて」
 だがその姿は、亜樹子にしか見えない……。
 その頃、翔太郎は超常課で刃野に愚痴る、という、ヒーローの底辺を彷徨っていた。
 大丈夫か、翔太郎! なんか、某Mさん(by『仮面ライダー○王』) の姿がダブってきたぞ!
 そこへ人形が送られてきて真倉が襲われ、課長のせいでとんだ迷惑を被る超常課。
 アクセルとダブルは小さな人形に翻弄され、ダブルに至ってはトリガー銃を奪われる始末。 亜樹子の「やめてリコちゃん!」という叫びに反応した人形は一瞬綺麗な顔に戻ると逃走するが、 スパイダーガジェットにより御用……と思われたがナイフで拘束を切り裂いて脱出し、 最後は課長が容赦なくマキシマムドライブ・アクセル旋風脚を炸裂させる。
 が、作者が娘をドーパント化していると思われた人形は、本当にただの人形に過ぎなかった。ドーパントの正体は、 人形のドーパントではなく、人形使いのパペティアドーパントだったのである。
 「待て、もうやめてくれ!」
 変身を解き、正体を現す作者。
 「お姉ちゃん、お姉ちゃん、お姉ちゃん……」
 だが、亜樹子が手にした人形からは、リコの声が聞こえ続けるのであった……果たして、犯人の真意はどこにあるのか。人形の正体は、 本物のリコの行方は? そして、翔太郎はヒーローに返り咲く事が出来るのか?!
 一方、井坂内科医院では、冴子の依頼を受けた井坂先生により、若菜が“完璧なドーパント”として魔改造を受けそうになっていた……。
 次回、所長、走る。

◆第26話「Pの遊戯/亜樹子オン・ザ・ラン」◆ (監督:石田秀範 脚本:長谷川圭一)
 正体を見せた堀之内に亜樹子が「娘を愛していないのか」と食ってかかり、激高した堀之内はパペティアに再変身するが、 突然生じた霧に包まれ、その姿は消えてしまう。井坂によって助けられたパペティアドーパントは若菜―― クレイドールドーパントを新たな操り人形とする事に……。
 ここで井坂のメモリが、「ウェザー」と明確に。今回の霧の発生、照井の事件における部屋の凍結など、 多様に気象を操れる能力の模様。拡大解釈の幅が広いので、これはかなり強そうなメモリです。
 そして人形使いのドーパントがクレイドールを操る、というのはちょっとした言葉遊びか。
 人形を事務所に連れ帰った亜樹子は、大阪から風都に出てきてすぐの頃、堀之内の娘と出会っていた事を思い出す。 落とした人形を拾った縁で事務所の名刺を渡していた事から、初めて会った公園へ向かった亜樹子は、そこで再び少女と出会うが、 少女は「人形の声を聴いて」と繰り返すばかりで話が通じず、またも姿を消してしまう。
 苛立ち紛れに人形を公園に投棄した亜樹子は照井からの連絡を受けて、堀之内の家に向かい、 そこで堀之内の娘が一ヶ月前に交通事故で死んでいた事を知る。娘の名前は理香子。そして理香子が大切にしていた人形の名前が――リコ。
 「所長、君は疲れている。休んだ方がいい」
 凄く普通の言い回しなのに、照井の渋い声の為に、妙に重い(笑)
 自分の前に現れた少女・リコは、人形だったのか? 人形をポイ捨てしてしまった亜樹子は慌てて公園に戻るが、 人形は目の前でゴミ収集車に回収されてしまい、亜樹子は通りすがりのウォッチャマンから自転車を奪って、収集車を猛然と追跡する。
 「所長を安心させようと思ったんだがな」
 堀之内の娘を心配する亜樹子に優先的に情報を流した照井、普通にいい奴。
 問答無用が合い言葉の照井ですが、実は翔太郎と事件関係者と部下以外にはいい人という可能性も浮上してきました(笑)
 亜樹子には目立って甘い感じですが、ラブとかロマンスとかの気配は、今のところ欠片もありませんが。
 濃い人間達に囲まれて度々怪人に襲われるというショック経験の連続で所長の脳が本当に疲れているのか、 それとも本当に人形が所長に何かを伝えようとしているのか――仮に亜樹子の言葉を信じるとしても、
 「ただの人形だぞ。どうしてそれでもなお、親身になる?」
 「それが……鳴海亜樹子なんだよ。たとえ相手が人形でも、泣いていてほしくない。あいつはきっと、そういう奴なんだ」
 その頃、操られたクレイドールが亜樹子を狙って事務所を強襲し、危機に陥るフィリップだが突然現れたアクセルマシンに救われる。 アクセルマシンの砲撃で思いっきり砕けたクレイドールは再生した事で人形操りから回放され、フィリップに気付かないまま病院へ。 ……割と大事な2人の邂逅なのですが、お互いとばっちりでそれどころではないという(笑)
 井坂に食ってかかったクレイドールは、止めに入ったタブーを上回る火力を発揮し……パワーアップ?
 姫は姉妹喧嘩になると容赦なくクレイドールキャノンをぶっ放すのに、いざタブーにダメージを与えてしまうと慌てて心配する、 と本日も地道にヒロインゲージ上げに余念がありません。
 一方、ゴミ収集車に追いついてリコを取り戻した亜樹子は「お父さんに、泣かないでって」という人形の声を聴く。だが、 娘への愛を侮辱されたと思いこむパペッティアに襲われ、間一髪の所を救ったのはフィリップから連絡を受けて駆けつけた――ダブル。
 「来るのが遅いよ翔太郎くん!」
 「そう言うな所長。左があんたを一番、理解している」
 今回、ひたすらいい奴だな、照井(笑)
 下手すると、憐れみの視線で助ける役をダブルに譲った気が。
 パペッティアは変な笛による音波攻撃を放つとアクセルを操りダブルと戦わせる……と本体は強くないものの、地味に強力ドーパント。 ダブルはフィリップの完成させたカエルガジェットの、“録音した声を他人の声に変換して再生する”機能でドーパントを混乱させると、 アクセルを解放。サイクロンメタルのマキシマムブレイク、メタルツイスターによってメモリブレイクを成功させる。
 メタル棒に風をまとわせて連続攻撃するメタルツイスターが、遅い登場でしたが、格好いい!
 最近すっかりファングに押しやられて隅っこで体育座りしていたサイクロンですが、こんな格好いい技があるならもっと早く見たかった(笑)
 妻と娘を相次いで亡くし、娘への思いを込めた小説『人形と少女の家』を侮辱する人間を殺そうとする程の妄執に取り憑かれてしまった堀之内は、 亜樹子から人形を渡されてその言葉を聞き、ようやくその怨念から解放される……。
 事件は解決したけれど、堀之内の悲しみが消えるわけではなく、亜樹子があっけらかんと笑顔で終わらない、というのは良かった所。
 今回、理香子とリコの混同、本来『人形と少女の家』を大好きな亜樹子が堀之内を糾弾する、 とちょっとした誤解や擦れ違いが事態をややこしくしている、というのがエピソードとして特徴的な所。実際、 今回冒頭で亜樹子が堀之内と落ち着いて話し合えば、ここまでこじれずに解決した気はします(^^;
 亜樹子とリコがなかなか意思疎通できないとか、そういった擦れ違いが劇中で重ねられており、 そもそも事件の始まりが堀之内が自分の愛を認められなかった事である所からも、意図的な作劇と思われますが。 フィクションにおける“擦れ違い”というのは、フィクションであるが故に、むしろ“ご都合”になってしまうのですが、 亜樹子を中心に置く事でそれを緩和し、それなりに巧くまとまったと思います。
 亜樹子の、最初からヒロインを狙わせる事を放棄し、その代わりに“探偵事務所の3人目”としての役割を与え、 主人公達の添え物にしない使い方はこれまでのところ上手く機能しており、今作のいい所。コメディリリーフ分も含めて、 女性レギュラーの使い方としては、シリーズ歴代でもかなり良いのではないかと。
 まあ、理香子とリコに関してはフィリップが真面目に検索すればすぐにわかった気がしますが……それ故のカエルか。
 で、終わってみると最大の謎は、事務所に突っ込んできたアクセルマシン(笑)  もしかすると鳴海探偵事務所は既に、シュラウドさんに盗聴器とか仕掛けられているのか。
 井坂内科医院では、タブーを上回る火力を見せたクレイドールに関して、井坂が恐るべき真実を口にしていた。 井坂は若菜から預かったドライバに手を加え、メモリ直差しと同じ効果を発揮するようにしていたのだ。
 「怒りの感情がメモリの力とよく混じっていた」
 だがそんな事をすればガイアメモリの毒に冒されてしまう……しかし、井坂は冴子の言葉を意にも介さない。
 「ドライバは、ドーパントとしての進化を阻害している。そんな物に頼る限り、貴女も本当の強さは、手に出来ない」
 ダブル、アクセル、そしてミュージアムの幹部が用いるドライバは、ガイアメモリの劇毒に対するフィルターの作用があった事が判明。 若菜姫が少ない出番で着実にヒロインゲージを上げ、そして、存在自体が劇毒の男・井坂深紅郎の言葉に、冴子は何を思うのか――。
 事件は決着するも、時間しか癒す事の出来ない人の悲しみと向き合った亜樹子は、
 「所長、君は美しい。最高の女性だ」
 カエルガジェットを悪用して、照井の声に自分を讃えさせていた(笑)
 悲しい、悲しい遊びだ……。
 そして、どんな馬鹿台詞でも無駄にいい声だ照井……。
 亜樹子回の裏で、照井いい人(声)祭なのは、個人的に楽しかったです(笑)
 限りなくヒーロー界の底辺に近い所を彷徨う男は、窓枠の埃とか拭きながら、 とりあえず格好良くまとめて自分の存在意義を出そうと頑張っていた。
 (真実はわからない。だが、まあいい。この街にはミステリアスという言葉がよく似合う。美しい謎は謎のまま。それも悪くない)
 ガンバレ負けるな翔太郎。目指せ、V字回復!

→〔その5へ続く〕

(2015年4月2日)
(2017年3月21日 改訂)
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