■『仮面ライダーW』感想まとめ3■


“何もかも振り切って
悲しみさえも throw away
絶望まで運んでいく Leave all behind”


 ブログ「ものかきの繰り言」の方に連載していた『仮面ライダーW』 感想の、まとめ3(15〜20話)です。文体の統一や、誤字脱字の修正など、若干の改稿をしています。そこはかとなくアクセル色。


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◆第15話「Fの残光/強盗ライダー」◆ (監督:柴崎貴行 脚本:三条陸)
 若菜のラジオでボクシングについて興味を持ったフィリップは、モスキート級を目指して減量していた。
 「あーもう! 暴走特急しかいねえのかよ、この事務所は?!」
 倒れたフィリップは恐竜型の小型メカを一瞬目にするが、減量地獄による幻覚だと振り払う。そこにやってくる、銀行員を名乗る依頼人。
 「仮面ライダーを探して欲しいんです」
 これは元手いらずで依頼料をいただくビッグチャンスですよ! とニヤニヤする翔太郎と亜樹子だったが……
 「仮面ライダーはこの街の敵、憎むべき犯罪者です!」
 「「ええ?!」」
 仮面の怪人が職場である銀行を襲撃したのを見たと語る依頼人の女だが、えーそれ、ニュースになってないのか(笑)
 「俺たちの、偽物……?」
 久々にモノローグで事件を追う翔太郎は、コウモリカメラで現金輸送車を襲う偽物を発見し、ダブルに変身。
 「さあ、俺の名前を当ててみなぁ?」
 決め台詞とポーズまでそこはかとなく真似る偽物の正体は、赤いボディに右手マシンガンのドクロ仮面。 前回今回と少々アメコミテイストの強いデザインですが、バイクがハーレーだったりサブタイトルからして、 意識的に『ゴーストライダー』がモチーフなのでしょうか。
 偽物に逃げられてしまい、銀行員というのは嘘だとわかった依頼人と接触した翔太郎と亜樹子は、 女の正体が指名手配中のコンビ怪盗ツインローズの1人だと知る。予告状を送り、 血を流さずに綺麗な盗みを行うという古風な怪盗のツインローズだったが、 女はたまたま目撃した銀行強盗を行う怪人の正体が相棒の倉田だと気付き、それを止めようと嘘をついて仕事を依頼したのだった。
 依頼人の不自然極まりない言動の秘密が判明しましたが、今作は何か、女性の二面性を描く事に深いこだわりがあるのでしょうか(笑)
 二面性というか……

 女の外面を信じるな!

 という、熱いメッセージとパトスを必要以上に感じます。
 指名手配犯からの依頼を断ろうとする亜樹子だが、翔太郎は調査の続行を宣言。
 「ただし俺の欲しい報酬は一つ。奴を捕らえたら、2人で自首すること」
 「あんた……」
 「依頼人はみんな訳ありだ。そんなの気にしてたら、探偵なんて出来やしねぇ」
 3話ぶりの見せ場だし、相手は若い女の子だし、翔太郎、帽子に手を当て気取ったポーズで格好つける。 ひたすら格好つける。
 きっとローズ女は、(どうしてこの男は、斜めに立っているのだろう……?)と思っている。
 ローズ女から新たに得た情報で検索を試みるフィリップだが答を絞りきる事が出来ず、苛立つ翔太郎。
 「いいか亜樹子、「仮面ライダー」って名前はな、この街の人達が、自然と俺たちに名付けてくれた名前なんだ。 けっこう愛着湧いてんだよ。その名を、遊び半分で汚す奴は許さねぇ! 絶対にな!」
 ここで、劇中定義付けを行った「仮面ライダー」という言霊を、改めて強調。
 サブキャラがヒーローを名付ける、というのは古来の手法ですが、そこで正義の基盤となる大衆の支持と名付けを紐付けし、 その名前(ひいては大衆の支持)をヒーロー自身が大事にしている、という構造は、作り手のこだわりが見える所。
 今作における、“もう一度、仮面ライダーを組み立て直そう”という意識が強く感じられます。
 逃走した偽ライダーが落とした何かの部品を亜樹子が「形がリンゴのお尻?」と閃き検索してみた所、 それがロッカーキーの一部である事が判明し、まさかのリンゴがビンゴ。
 「インスピレーションの女王様とお呼び!」
 ローズ男が潜伏している可能性が高いビルが判明し、もう少し事件の背景を調査しようというフィリップを振り切って、 焦る翔太郎――この事務所には暴走特急しか居ない――はビルへと突っ込んでいく。
 「仮面ライダーは2人で1人! 俺とおまえなんだぞ。俺たちの名誉挽回しないでどうする。対策なんざ、動いてから立てりゃいいんだ」
 その頃、園咲家では霧彦と冴子が、何やらそれぞれに秘密で暗躍していた。
 「そろそろね、ショーの時間」
 亜樹子とローズ女をともなってビルの地下駐車場で待ち受ける翔太郎の前に現れる、ドクロ仮面。その正体はローズ女の推測通りにローズ男であり、 既にその精神はガイアメモリに浸蝕され暴走していた。
 「ひゃははっ、メモリ捨てるぐらいだったらな、人間を捨てるぜぇ!」
 ドクロ仮面は、アームズドーパントと判明。左腕はマシンガンだけでなく剣にも変わり、 白兵戦を自在にこなすかなり戦闘向きのドーパント。その放つロケット弾を、駆けつけたW車がガードし、 ヒートトリガーの射撃からヒートジョーカーの連続攻撃を決めるダブルだったが、 アームズは堪えた様子もなく立ち上がるという強さを見せる。
 「倉田、遊んでないでそろそろ本気出しなさい」
 クライアント(冴子)から電話を受けたアームズが合図を送ると、亜樹子とローズ女を捕まえてぞろぞろと現れる、覆面の戦闘員達。 前々回、若菜に求婚して焼却されたマスカレードドーパントは出オチ要員の省コスト怪人かと思っていたら、 ミュージアムの戦闘員扱いでした。
 人質を取られ、変身解除すると見せかけてルナジョーカーで逆転を狙うダブルだったが、 メモリを入れ替えようとした所をアームズの鳥もち弾で妨害されてしまう。銃撃を受けて変身の解けた翔太郎は叩き伏せられ、 アームズは視線をW車へと向ける。偽物による仮面ライダーの挑発、わざと落とされたヒント…… 全てはフィリップを狙う組織の罠だったのだ。
 変身が解除された事で目を覚まし、翔太郎の叱咤でW車から逃げ出したフィリップの前に現れたのは――園崎冴子。
 「私についてくればいいのよ」
 一気の直接遭遇となりましたが、お菓子ドーパント回で翔太郎のダブルへの変身が冴子と霧彦に目撃されており、 同時期に屋敷に居た亜樹子が堂々と「鳴海探偵事務所」を名乗っていたのを関連づけて考える可能性は高いので、これは納得のいく展開。
 「さあ、いらっしゃい、来人(らいと)」
 そして前回の、フィリップと若菜は姉弟? という引きを受ける形で、急展開。果たしてフィリップは“来人”なのか?  冴子の思惑とは――ハーフボイルド探偵は、再び2人で1人になれるのか!
 ところで、スリット入りタイトミニスカとか冴子さんの人妻セクシー光線が朝から激しすぎるのですが、よくよく考えると、 古典的セクシー女幹部の、現代風アレンジという事なのか。それは霧彦さんも、色々心配です。
 園咲家では、「地球に選ばれた家族」という発言や、「新しいガイアメモリの研究開発」など、伏線がちらほら。 そしてフィリップを狙っていた冴子さんに対し、婿殿はいったい何を目論むのか。
 今回から予告に、テロップであおりが入るように。
 そ、そういうのは、出来ればこちらで入れたいんですが!!(笑)
 あと、映像だけでも見せすぎの時があるのに、テロップで説明を加えてしまうのはさすがにどうなのだろう(^^;
 基本的に、ナレーション含めて次回予告には次回予告の芸があると思うので、次回予告って好きなのですが、 これはちょっときついかなー。予告飛ばそうかなー。あおりそのものが面白かったりあおりを利用した予告詐欺とかもあるかもしれないけど。
 (※この15話の次回予告がテロップ過剰なのは、年末年始で放映期間が1週空く為の、スペシャル予告であったとの事。 16話予告から、平常に復帰)

◆第16話「Fの残光/相棒をとりもどせ」◆ (監督:柴崎貴行 脚本:三条陸)
 フィリップを「来人」と呼び、自分の元へ戻るように促す冴子。
 「あなたは運命の子。あなたを手にした人間が、この地球の勝者。さあ、帰りましょう」
 「僕は物じゃない!」
 「私を誰だと思ってるの? 私はあなたの」
 「貴女が誰かはわからない! その冷たい目だけで、敵と判断するには充分だ」
 そ、そういうジャンルが好きな人だって居るんですよ、フィリップくん!!
 フィリップは無事に家に帰れたら「踏まれたい」「詰られたい」「婿殿」で検索するように。
 タブーに変身した冴子に追い詰められるフィリップは、小型恐竜――ファングを再び目にするが、甦るビギンズナイトの記憶に、 「おまえの力なんか、必要ない!」と追い払うと、W車を遠隔操作。やってきた車はタブーの攻撃も跳ね返してフィリップを乗せ逃走し、 強いぞ車。
 「まあいいわ。人質もいる。……シャワーでも浴びて待ってましょう」
 アームズドーパントはかつての相棒であるローズ女を置き捨てると、翔太郎と亜樹子を拉致。 フィリップはファングの力を拒否しながら何とか事務所へ帰還するが、仮面ライダーダブルと鳴海探偵事務所はかつてない危機に陥る、 と盛り上がる後編。
 『W』は1話から複数のフォームチェンジを次々と見せてしまうという構造で、必殺技などは随時披露するけれど、 装備とフォーム自体は1〜15話まで同一。近作では『電王』にしろ『キバ』にしろ、 最初の1クールの中で小出しにフォームを増やしていくという形が主流だった流れに大きく変化を付け、 劇場版との絡みもあったようですが、16話にして新メモリの登場を、大きな波として仕掛けてきました。
 組織に捕まるわけにはいかないが、ファングの力も使いたくない……悩むフィリップの元へ、人質を助けたければ来るように、 とローズ男から連絡が入るが、電話の向こうで声を張り上げる翔太郎。
 「来んな! ぜったい来んなよフィリップ! 俺の事はもう忘れろ! これも相棒の忠告を聞かなかった罰だ。もし来やがったら、 俺たちの仲もそこまでだと思え」
 「死んだら、絶交もくそもねえよな? じゃ、あ・と・で」
 翔太郎の腕の傷を踏みにじるローズ男がいい感じにサディスティック。
 そして、否定する間もなく翔太郎と一蓮托生にされてしまう亜樹子。
 翔太郎がフィリップ最優先で、「亜樹子だけでもなんとか……」というのが一切無いのは、ちょっと酷い(笑)
 「見捨てるわけにはいかない。でも……」
 そんな時に、事務所にやってくる刑事とウオッチャマンとサンタちゃん、と翔太郎愛されアピール。フィリップは普段出歩かない為か、 あまり親しくはない模様。刑事の言葉から、ローズ子が捕まっていない事を知ったフィリップは、警察に追われていたローズ子と接触。 倉田の情報を求めるが得られるものはないも、ローズ子がなんとかして倉田を説得しようとしている事を知る。
 「無意味な危険をなぜ冒す?」
 「理由なんてない。相棒だからだよ! 私達は、2人で1人だったんだ」
 ローズ子の言葉に、翔太郎の言葉を思い出すフィリップ。
 「……ありがとう。一つ結論が出た」
 こう見ると、大惨事だった7−8話は今回のエピソードの参考になったのかもしれないとか思うわけですが、 今回がうまく繋がっているだけに、7−8話はどうしてあんな事になってしまったのか、改めて疑問が膨らみます(^^;
 この間に翔太郎から亜樹子に、ファングがダブル第七のメモリである、と説明。 ファングは自分の意志で動き回る特殊なメモリであり、ビギンズナイトで脱出する時に一度使われた、と劇場版との絡み。 だがファングの使用はフィリップの中に何かを失わせ、「あれ以上戦ったら、僕が僕でなくなる」とフィリップはファングを拒否し、 翔太郎もまた、その意志を尊重していたのだった。
 そして、結局、一日放置される2人。
 さすがに待ちくたびれたのか、ロープで吊した翔太郎を亜樹子に支えさせ、落ちたら哀れ串刺し、 というえげつないゲームでフィリップを待ち受けるアームズドーパント。
 「亜樹子! もういい、それ離せ……。ありがとな、俺……俺おまえに会えて良かった」
 「言うなそういう事! それ、死ぬ人の台詞だから!」
 死ぬ寸前でも、ひたらずにはいられない。それがロマン、それがハードボイルド。
 必死に耐える亜樹子が遂に力尽き、滑り落ちるロープ。哀れ翔太郎、穴だらけ、の寸前、ロープがギリギリでファング恐竜によって支えられ、 そこにバイクでフィリップが乗り込んでくる。
 「絶交でも何でもしたまえ。させないけどね」
 現れるマスカレード軍団を力強く見据えるフィリップ。
 「後悔するなよ、倉田剣児。――僕はもう、知らないぞ」
 ちょっと浮き世離れした所を強調する為にやや大仰なフィリップの台詞回しがはまり、非常に格好良くなりました。
 「フィリプ、おまえ、まさかファングを?! おい、何か策があるんだろうな?!」」
 「対策なんか、動いてから立てればいい。僕も、君や麻生冬美のように、理屈でなく動いてみる事にした」
 それでいいのか(笑)
 この後の展開も見ると、フィリップなりの考えがあった上で“翔太郎を信じる”という裏付けが一応あった事がわかるのですが、 過去に色々と悪い例があるので、フィリップが道を踏み外したのかとドキドキしました(笑)
 「フィリップ……」
 「地獄の底まで、悪魔と相乗りしてくれ、翔太郎! ――来い、ファング!」
 ファング恐竜は変形して恐竜の頭のモチーフがついたメモリとなり、フィリップはそれをダブルドライバーにセット。 いつもとは逆パターンで翔太郎が意識を失い、白と黒のファングジョーカーに変身したフィリップは獣の咆吼をあげる!
 冴子「あのガジェットは、まさか……」
 ファング――それは、来人を守る為のメモリ。来人に害をなす全てを蹂躙し、殲滅する為に力を振るうファングジョーカーは、 野獣のように暴れ回り、次々とマスカレード軍団を薙ぎ倒していく。素手でも高い戦闘力を誇るファングだが、 更に肘からブレードが飛び出し、マスカレード軍団をまとめてずんばらりん。派手に爆発していますが、 どういう扱いなんだろうマスカレード軍団(^^;
 ファングの猛威に狼狽したアームズは亜樹子を人質に取るが、ただ一つの目的しかないファングはそれを意に介さず刃を向け、 翔太郎は必死に声を張り上げる。
 暴れるファング、止めようとする翔太郎の声、アームドーパントの声、が入り交じって、それぞれ軽くエフェクトかかっている (気がする)事もあり、ここは若干、誰が何を言っているのかわかりにくくなってしまいました(^^;
 (止まれぇ! 止まれってんだよ相棒!!)
 絶叫した翔太郎はフィリップの意識――燃え盛る星の本棚に辿り着く。フィリップの理性と知識を食らうファングの暴威の中、 翔太郎は本に埋もれて倒れるフィリップを見つけ出し、引き起こす。
 「信じていたよ、翔太郎。僕を見つけてくれると」
 「あったりめえだろ。俺たちはなんだ?」
 「はは、そうだね。僕たちは……」
 「「2人で1人の、仮面ライダーだ!」」
 強すぎて暴走する力、の抑え方として、実に今作らしい解答。
 単体ヒーローでありながら、完成されたヒーローではなく、半熟同士が心を合わせる事でヒーローとなり大きな力を生む。 この今作コンセプトの描き方は面白く、またハードボイルド趣味の末期患者であるものの、 放っておくと根っこのヒーロー属性が高い翔太郎は、あくまで「おやっさんの背中を追いかけている存在」、 とする事で未完成さを強調しているという、構造も活きています。
 「亜樹ちゃん、もう大丈夫だよ」
 フィリップは理性を取り戻してファングのブレードは亜樹子の寸前で止まり、ここからいつもの音楽で、本当のダブルの反撃がスタート。
 「「さあ、お前の罪を数えろ」」
 ブレードが肩に移動して放つブーメランで残りのマスカレード軍団を片付け、ファングジョーカーは逃げるアームズを追い詰める。
 「メモリブレイクするには、左右の呼吸を合わせねえとな。あー、ファングの必殺技だから……ファングストライザーでどうだ!」
 「名前は君の好きにしたまえ」
 以前にコメント欄で教えていただきましたが、ここで、翔太郎とフィリップが左右の呼吸を合わせる為に、 ダブルは大技の時には技名を叫ぶという事が判明。ただこれ、事前に聞いてなかったら、「いきなり何を言い出しているんだ?」 と思ったかもしれない(笑) 設定の理由付けとしては面白いけど、発想としては、変(笑)
 そして、全部、翔太郎の命名なのか。
 という事は一歩間違えると、ダブルの必殺技は「暗黒飛翔脚」とか 「炎皇爆裂拳」とかになっていたかもしれないのか。逆に翔太郎に一切の洒落っ気が無かったら、 あらゆるフォームの必殺技が「1・2の3!」とかになっていた可能性もあるのか。
 もし翔太郎が弾北斗だったら、「ゴールデンスパーク! ドリームギャラクシー!!」だったかもしれないのか。 もし翔太郎が良太郎だったら、「電車蹴り!」だったかもしれないのか。
 ……うん、いける、いけるよ翔太郎! 君が主役で、良かった!!
 一瞬下がった翔太郎の株が、かつてない勢いで上昇し、足にブレードを出して放つジャンプ回転蹴り・ファングストライザーでメモリブレイク。 前回かなりの強敵として描写されたアームズが今回は逃げ惑っているだけだった、という恐ろしい落差。
 「あいつはやばい」
 ファングの危険性を感じた冴子は逃走し、追いかけようとしたフィリップが体力の限界で翔太郎に選手交代、 とファングの登場で便利な使い方が出来るようになりました。ここまでかなりシリアスに来ておいて、 ここで意識の抜けている翔太郎の肉体を亜樹子が引きずって持ってきて一悶着、という辺りが今作らしい間合い。
 改めてサイクロンジョーカーに変身した翔太郎ダブルが冴子を追いかけ、バイクからなんか撃って車を破壊。 普段から使用しているバイクに、見つかったら番組終了まで娑婆に出てこられなくなりそうな武装が付いていました(^^;
 タブーに変身して逃げる冴子にルナトリガーの弾丸が迫ったその時、飛び込んできたナスカドーパントがタブーをかっさらって窮地を救い、 逃走。様子のおかしかった霧彦は、ナスカの《高速移動》を発動する為に、秘密の特訓をしていたのだった。
 「僕にも意地というものがあってね。訓練を重ねていた。君の為に」
 不穏な動きの正体が、「政治的暗躍」ではなく、「秘密の特訓」の辺り、霧彦さんには芯まで邪悪ではない感じが漂います。
 もしかしたら冴子さんは、(そんな特訓している暇があったら仕事しなさいよこのノロマな亀!)と思っているかもしれませんが、 それはそれで、霧彦さんにはご褒美です(おぃ)
 またこの一連の戦闘で、タブーは幹部クラスのイメージほど強くない事が判明。思えばこれまでの戦闘は、生身のおやっさん達を襲う、 ナスカと協力して攻撃、生身のフィリップを襲う、だったので見た目のインパクトで結構誤魔化していたのか。
 再生能力があるもクレイドールもそれほど強そうな描写では無かったですし、園咲家はテラー以外はそれ程際立ってはいないのか。 スミロドンは戦闘特化ぽいですし、タブーにも何かしらの特殊能力はありそうですが。
 ナスカの介入でタブーを見失ったダブルは、戦闘の余波で崩れた道路の崩落から、女の子を救出。
 「仮面ライダーっ……さん」
 ここで騒ぎで駆けつけた警官隊の中から、仮面ライダーと刃野刑事が初接触。 翔太郎の前では「仮面ライダーは悪いヤツだと思っていたから、ぎったんぎったんにしてやるぜ」と言いいながら 「いやー、やっぱり正義の味方だったんですねー。私は始めから信じていました」と調子のいい刃野にいきり立つ翔太郎サイドの拳を抑え (ダブルらしい好演出)、フィリップサイドは偽ライダーの居場所を伝える。
 冴子(タブー)の追撃シーンは最初やや蛇足気味で変な構成だなと思って見ていたのですが、なるほど、偽物騒動の後始末の為に、 世間や警察の前で本物の善行と活躍を広く見せる必要があった、と(チェイスシーンでもギャラリーがやたら多い)。 この辺りを流して後日談で処理してしまわないのは、今作らしい所。……それにしても、そこはかとない自作自演(笑)
 かくして仮面ライダーの汚名は雪がれ、ローズ男は連続強盗犯として逮捕。ローズ女は翔太郎との約束を守って自首し、 事務所には束の間の平穏が訪れる。だが、ファングが1年ぶりに姿を見せた事に、前途に漂う暗雲を予感する翔太郎。 果たして“組織”は、如何なる動きを見せるのか――シリアスに浸ろうとした所でフィリップがリバウンドによりでっぷり体型となり大騒ぎ、 タイプライターをいじるファング、それに近づく謎のカブトムシ?でオチ。
 かつてない危機を乗り越える新フォーム登場編。ビギンズナイトとファングという劇場版からの要素に、 「悪魔と相乗り」という1話冒頭の台詞を絡めた上で改めて「ダブル」の意味を描き、物語の始まりから現在地が綺麗に繋がりました。
 劇場版と本編をリンクさせつつ、TV単独でも充分に理解可能で、その上で劇場版の良いアピールになっているという、お見事な構成。
 ファングの白黒(イカノイド!)は、狂気のスパイスがまぶされ、アームブレードが格好良くて(まあこれは、 大概格好良くなるのですが、ストレートに取り込んで来たのが良い)いい感じ。 戦闘能力も高くサイクロンがますます要らない子になりそうなのが不安ですが、ファングはフィリップ専用なので使い所が限られる、 という事になるのかな……?
 次回、不穏すぎるサブタイトル。
 嫁とちょっといちゃいちゃしたぐらいでフラグ立つんですかこの世界?!

◆第17話「さらばNよ/メモリキッズ」◆ (監督:諸田敏 脚本:長谷川圭一)
 いきなり、ナスカと戦っているダブル、というちょっと変則的な入り。
 (話はほんの30分ほど前に遡る。それはまさに、運命の悪戯だった……)
 行きつけの床屋が一緒だった翔太郎と霧彦、タオルがかかってお互い誰だかわからない状態で意気投合。 風都のイメージキャラクター風都くんは、小学3年の時にコンテストで優勝した霧彦のデザインであった事が判明する。 周囲がちょっと引くレベルで風都への愛を語り合2人だが、そこでお互いの正体が発覚。
 (運命の悪戯――この偶然の出会いは、決して忘れられない別れの始まりだった)
 外に出て、寺の境内で殴り合っていた2人だが、床屋のマスターがやってきて水入り。マスターの相談を受けた翔太郎は、 一昨日から戻ってこない中学3年の娘・茜探しを依頼として受ける事に。
 クイーン&エリザベスから情報を得て、茜と同級生の4人組を発見した翔太郎だが、茜を連れ戻そうとした翔太郎の前で、 1人の少年がバードメモリを使ってドーパントに変身。ダブルに変身して容赦なくおしりぺんぺんする翔太郎だったが、 もう1人の少年がメモリを使い回して、茜を連れて飛び去ってしまう。
 本来、ガイアメモリの使用には専用のコネクタ手術が必要で、メモリの使い回しは不可能な筈。何が起きているのか困惑しながらも、 翔太郎はメモリの副作用で苦しみだした少年を、ひとまず病院へ連れて行く事に。
 この様子を見ていた霧彦は、バードメモリがどうして15歳の少年少女の手に渡ってしまったのか、冴子に調査を指示。
 ここでミュージアムによるガイアメモリの販売目的は、人間を理想の生命に進化させる事、その為の人体実験であった事が判明。
 「だが、このケースはルール違反だ」
 人体実験の材料は、あくまで欲望に従って自ら力に手を伸ばした大人だけ。未成年者にメモリが販売された事に霧彦は怒りを燃やす……。
 バードドーパントとなって襲撃事件を起こしていた少年を止めるべく、翔太郎はバイクで体当たり。
 ドーパントだから、大丈夫☆
 最近、翔太郎のバイクの使い方が荒っぽくて、その内官憲のお世話にならないか心配です。
 行方不明のファングを探していたフィリップが現場に現れ、ファングは自分がピンチになると姿を見せるのでは?  という仮説を確かめる為に自らバードの攻撃を受けようとすると、ファングがそこに現れ、2人はファングジョーカーに変身。
 いつものノリでフィリップを受け止めようとした亜樹子(何か、この仕事にやり甲斐を感じつつある模様)、倒れたのが翔太郎で空振り。
 「そっちか」
 (亜樹子ぉ!)
 「さあ、お」
 「「まえの罪を、数えろ」」
 ファングジョーカーは終始戦いを優位に進めると、ファングストライザーでメモリブレイクに成功する。だが、 少年から抜けたメモリは何故か砕けず、別の少年と同じように苦しむ少年。そこに現れ、メモリを拾う霧彦。
 「我々は! 過去に未成年者にメモリを売った記録はない!」
 未成年者を巻き込んだ事を否定する霧彦だが、それはそれとして戦闘開始……と、要素てんこ盛りしすぎて、終始ドタバタ気味(^^;

◆第18話「さらばNよ/友は風と共に」◆ (監督:諸田敏 脚本:長谷川圭一)
 ファングに匹敵する戦いを見せるナスカだが、《超高速》の連用で体に異変が起こり、膝をつく。 そこへ放たれたフィリップのトドメの一撃を、寸前で止める翔太郎。
 「言ったよな、おまえも。この街を愛してるって。もしそれが本当なら、子供達にもう、あんな涙は流させるな」
 翔太郎達は少年を病院へ運ぶが、その時フィリップが、茜の手に正式な生体コネクタがある事に気付く。
 「メモリの名称はバード。やっぱり、そういう事か」
 これまで、バードに変身した少年が襲撃していたのは全て、茜の陸上のライバルの親が働いている場所だった。 少年が襲撃を行っていたのは茜への好意の暴走――そしてバードメモリを最初に手に入れたのは、他ならぬ茜であった。
 陸上の記録が伸びずに悩んでいた茜は、ある日、黒衣の女からメモリを渡されて生体コネクタの処理を受け (片手で持てるような機械で簡単に手術できる事が描写)、メモリの保持者に。 最初は空を飛べて気持ちいい程度に使っていたメモリだったが、やがてドーパント化の影響か陸上の記録が伸び始める。 メモリを手放せなくなりつつも怖くなってきた茜はそれを仲良しの少年に見せるが、コネクタ手術を受けていない少年も、 何故かメモリでドーパント化。それをきっかけに仲良しグループで使い回している内に、 4人はメモリの魔力から引き返せなくなっていたのだった……。
 「悪いのは君じゃない。何も知らない君達に、ガイアメモリを渡した奴等だ」
 ここ数話、ガイアメモリの副作用、メモリが人間の健全な精神を破壊していくという部分が強調されていましたが、 前回の倉田の「メモリ捨てるぐらいだったらな、人間を捨てるぜぇ!」など、ガイアメモリはドラッグ(に類するもの)の隠喩、 という要素があると思って良いようです。
 その頃、霧彦は園咲の屋敷内部に隠し部屋を見つけ、謎の地下空間とジェネレーターを発見する。そここそがミュージアムの中枢、 地球の記憶と接触する場所であった。霧彦はそこで琉兵衛から、バードメモリが意図的に未成年に渡されていた事を知る。 大人になりきれない年代の子供にメモリを渡す事でより多くのデータを得、 そして純粋無垢な精神と肉体によりメモリはこれまでにない進化を遂げ――やがて限界を迎える。
 「相手はまだ、子供ですよ!」
 「だから?」
 「そんな事はさせない!」
 霧彦はナスカに変身して琉兵衛に剣を向けるが、その体を再び苦痛が襲う。園咲家に婿として迎えられた霧彦もまた、 ナスカメモリの実験台であり、《超高速》の力を引き出すも、その肉体は限界を迎えようとしていたのである。
 冴子さんが優しいと思ったら、これかーーー(笑)
 「残念だよ。家族が減るのは」
 琉兵衛はテラーに変身し、闇に呑まれかけるナスカは何とか《超高速》で逃亡するが、スミロドンの追撃を受けて追い詰められ、 そこを通りすがりの若菜に助けられる。
 「霧彦お兄様。いつのクールな姿は見る影もないわね」
 「ありがとう、若菜ちゃん。てっきり君には、嫌われてると思ってたよ」
 「そうねえ、何故かしら」
 フィリップとの出会いによる変化、というニュアンスもあるのでしょうが、どんどんヒロインゲージを高めていく若菜姫。
 信じていた人間に裏切られたと知った時、どうするか? 若菜の「本当の自分の心に従う」という言葉を聞いた霧彦は、 本当の自分がしたい事をする為、バードメモリの破壊方法を仮面ライダーに伝えに立ち上がる。
 「じゃあね、若菜ちゃん。――君のラジオ、好きだったよ」
 “本当の自分”というのが若菜のキーなので繋げたのでしょうが、霧彦さんの最後の一押しとしては、 ちょっとチープな会話になってしまいました。若者同士ならこれでもいいのだけど、霧彦さんのポジションからするとどうなのだろう、 という。
 一方、翔太郎が床屋に連絡に行っている間に、バードメモリを求めて暴れだした茜は事務所を飛び出し、外で黒衣の女(冴子)と接触。 再びメモリを手に入れた茜はバードドーパントへと変身し、ダブルはフライトメカに換装して、風都上空で大空中戦。 ここの空中戦は画面を広く使って、格好良くなりました。
 戦いの最中にバードメモリが進化して攻撃力が上がり、ダブルが撃ち落とされた所にナスカが駆けつけ、戦いをフォロー。 体内のバードメモリの場所を見つけて直接破壊する――というバードメモリの破壊方法を伝えると、自ら身を挺してバードの動きを止め、 ダブルはトリガーの銃にコウモリメカを付けて放つマキシマムドライブ、トリガーバットシューティング(精密狙撃モード?) でメモリブレイクに成功する。
 「気を付けろ。ミュージアムという組織は、君らが想像している以上に、底知れない闇を抱えている」
 茜は正気を取り戻すが、限界に達する霧彦。
 「この街を、よろしく頼む」
 琉兵衛の言葉通り、自らの死期を悟った霧彦は、約束通りに風都くんのレアものキーホルダーを翔太郎へ渡すと、 最後に愛する街の未来を託して、その場を立ち去っていく。
 (なんだい、これは……)
 (大切な宝物だ)
 そして――。
 「綺麗な夕陽ね。どうしたの、こんな所に呼び出して」
 「冴子。私と一緒に、園咲の家を出てくれないか。そうしてくれ。私を、愛しているなら」
 ………………あれ霧彦さん、冴子さんには裏切られていないつもりだったのか(笑)
 いやまあ、死期を悟っていますし、わざわざ呼び出した場所といい、半ば覚悟の上だったとは思えますが、 素だったら素だったで面白い。
 「わかったわ。……貴男がもう私には必要無いって事が」
 タブーの一撃を受けて吹っ飛ぶ霧彦。

 最期まで、脱衣。

 「これは返してもらうわよ。ミュージアムの、いえ、私の崇高なる目的の為に。さよなら、あなた」
 冴子はナスカのメモリを回収すると歩み去り、
 「風都……やっぱり……いい風が吹くなぁ」
 霧彦、消滅。
 衝撃の全裸ベルトから16話、本当に、2クール保たなかった(^^;
 (俺が依頼された事件は終わった。でも……この街を愛した人間が、また1人――消えた)
 「凄く大切なもの、託されちゃったみたいだね」
 「ああ」
 霧彦死亡の新聞記事を目にして、翔太郎は風都くんキーホルダーに目を移す。そんな事務所では、季節外れのカブトムシ騒動が。 事務所の外へ飛んでいったカブトムシ型のメカを手にしたのは、赤いジャケットの男。
 盗 撮 魔?
 「やな風だ……だから嫌いなんだよ、この街は」
 男はカブトムシを回収すると歩き出し、その手には、一つのメモリ――
 ――『アクセル』――
 2クール保たずにリタイアしてしまった霧彦さんですが、リアルの時期的には丁度戦隊が入れ替わり、新入学シーズンに向けて、 戦力追加の頃か(笑)
 というわけで幹部が1人リタイアし、新ライダー登場、と次回から新展開。
 盛り上げ所のエピソードなのですが、出来としては、正直、いまいち。こちらがボルテージ上がって期待し過ぎた、 というのもあるかとは思いますが、
 ・風都ラブで繋がり奇妙な友情で結ばれる翔太郎と霧彦
 ・園咲家の更なる闇
 ・ガイアメモリの新たな性質
 ・ファングの見せ場
 ・霧彦リタイア
 ・端々で新ライダー登場の伏線
 と、詰め込みすぎてバタバタしてしまいました。
 理髪店におけるお互いの正体に気付かないまま意気投合する翔太郎と霧彦、のくだりは面白かったのですが、面白かっただけに、 これならもう少し、複数のエピソードに跨がって少しずつ見たかった気もします。というか、 翔太郎とフィリップの相棒関係を優先した事で本編には入れている余裕がなかった“本当はやりたかった事”を冒頭数分に強引に入れた感じ。
 今作としてフィリップを優先したのは正解だと思いますが、総じて、霧彦さんに割けなかった尺を一気に埋めようとした結果、 かえって霧彦さんの扱いが中途半端になってしまった気がします。
 どうも役者さんのスケジュールの都合などもあったそうですが、子供を大事にする霧彦さんの譲れない一線とか、 本来は積み重ねで描写していく部分を全て一気に行ってしまい、悪も理想も友情もあらゆる部分が半端な描き方になってしまったのは、 霧彦さん好きだっただけに残念。
 園咲家の方では、新しいガイアメモリの開発と、来人の確保が繋がっている事が暗示され(これは劇場版で明示済みとの事)、 ガイアメモリは星の図書館のデータから作られている、という可能性はありそうです。そうするとフィリップが、 図書館の検索で簡単にガイアメモリの正体やその適性者に辿り着けるのも納得行きますし。
 そして冴子には、ミュージアムとは別の、個人的動機がある事が匂わされました。若菜も含めた微妙な親子関係も交えて、 後半への布石になりそうです。
 主人公と当座のライバルの間を「風都LOVE」で結びつけたエピソードの後に、「風都が嫌い」と言うキャラを出してきたのは面白く、 いったいどんな風を運んで来てくれるのか、次回、楽しみ。

◆第19話「Iが止まらない/奴の名はアクセル」◆ (監督:石田秀範 脚本:三条陸)
 事務所下のビリヤード場で格好つける翔太郎。
 「ビリヤード――これぞまさにハードボイルドな男に似合う、大人の競技だ。弾けて散らばる球の行方を計算しつつ、 辛抱強く追い込んでいく様は、探偵の仕事に通じるものがある。……まあ要するに、俺の為にあるようなゲーム、だな」
 初めてビリヤード場が活用されましたが、翔太郎は格好だけで、勿論、下手(笑)
 そこへやって来た、赤い革ジャンの男が華麗なキュー捌きで一打で全てのボールをポケットに沈める。男の名は、照井竜。 探偵事務所に怪事件の調査を頼みに来た依頼人にして、風都署の刑事であった。
 公権力からの一方的な依頼は受けない、と格好つけようとする翔太郎だが、亜樹子が前金の10万円でハードボイルドの魂を売り、 レンタルされる事に。
 「所長、さっそく左の方を借りていくぞ」
 苗字と引っかけていますが、発音は露骨。
 (照井竜……なんだか気に入らないやつだ。なんと言っても一番かんに障るのは、こいつから妙にハードボイルドな匂いがしてるって事さ)
 前回ラストでちらっと顔を見せた赤い革ジャンの男が、本格登場。たまに翔太郎が突飛な服装をするのでインパクト負けしない為か、 “赤い宮内洋”とでもいったコーディネート。
 服装と言えば、撮影時期と季節ネタが無い関係で、冬場の放映の割には涼しげな格好の目立っていた今作ですが、 そろそろ撮影時期が冬にさしかかってきたのか、翔太郎がコートを着始めて、これがなかなか格好いい。
 翔太郎と公道チェイスを繰り広げながら現場へ着いた照井は、風都署に超常犯罪捜査課を設立に来たエリート警視で、 翔太郎と同年輩ながら刃野の上役。ドーパントがらみと思われる事件を追う、いわばガイアメモリ犯罪課であるこのチームには、 刃野と真倉が配属され、チームの初仕事として連続凍結事件を追う事に。
 これまでドーパント犯罪への警察の対応は、本音と建て前を使い分けている感じでしたが(そして巧くバランスを取っていた)、 ここで本格的に正面からドーパント犯罪とぶつかる部署が登場。翔太郎と霧彦が「風都LOVE」で繋がりながら「正義と悪」 だったのに対し、翔太郎と竜は「風都愛/嫌い」と「公権力/探偵」という対比に置かれました。
 「警告しておく。――俺に質問をするな」
 氷まみれとなった現場で紫の花を見つけた照井は激高し、被害者の収容された病院へ向かうと、そこに出現する氷のドーパント。 照井はバイクから超重量の剣を抜き出すと、それを引きずりながら振り回してドーパントに対抗。
 「何してる左! 早く仮面ライダーになって戦え!」
 だがフィリップ、別の事に夢中で、変身拒否。
 「不便な奴等めぇ!」
 ツッコんだ(笑)
 ようやく変身するも冷凍ガスに苦戦するダブルだったが、ヒートジョーカーで反撃し、ドーパントは逃亡。 照井は現場から逃げ去る女を目撃する。
 雪の結晶からイメージしたと思われる氷のドーパントは、ガスを派手に吹いていたり、転がると周囲に白い粉が散らばったりと、 細かいギミックが素敵。
 「左、キーワードは、氷と……花だ。今度は右の方に検索を始めてもらおうか」
 そのまま事務所の隠し部屋に突撃する照井、じ・ゆ・う。
 劇中のレベルでいうと亜樹子ばりの自由度で、これにフィリップも加えると、翔太郎が段々、良識人に見えて来ます(笑)
 その右の方は、犬の着ぐるみを着てセントバーナードについて調べていた。 姫のラジオの影響でセントバーナードを飼いたいと言い出したフィリップ、とうとう、『ヒーリング・プリンセス』禁止令を言い渡される。
 ……背後で大音量で流れているのはそうか、「いぬのおまわりさん」か。
 これなどはギリギリの所ではありますが巧く収まっており、冒頭のビリヤードシーンに始まって、今回は石田監督が冴えています。 いい石田。
 照井はカブトムシメカを取り出し、事務所の盗撮・盗聴を行っていた事を告白。
 「俺はいずれ、仮面ライダーになる男だ」
 アクセルのガイアメモリを見せる照井の「ダブルでは力不足だ」という挑発に乗る形で、フィリップは検索開始。現場に落ちていた、 特殊な着色の施された矢車菊から、販売の他に大規模なフラワーコーディネートなども手がける花屋・コーンフラワーブルーと、 その社長・片平真紀子が浮上する。
 「ダブルも大したものだ。頭脳だけはな」
 据わった目で聞き込みにくいく照井、「ただ話を聞きたいだけだ」とはとても思えません(笑)  情報を得て取引先の風都園に向かう照井、翔太郎、亜樹子(亜樹子のヘルメットに事務所の宣伝が入っているのが、細かく面白い)。 照井は入り口で見かけた謎の人物を追い、亜樹子ははしゃぎながら遊園地の中へ、と自由人2人に振り回されながら真紀子を探す翔太郎。
 亜樹子は好き放題に遊んでいた……と見せかけて、高い所から真紀子を探していた。見事に亜樹子が発見した真紀子、 1人でメリーゴーランドに乗っている絵が、とてもシュール。
 その頃、照井は謎の人物と接触していた。
 「やはりあんたか、シュラウド」
 帽子、コート、サングラス、マスクのフル装備で容貌はわかりませんが、細身と脇に垂れたパーマの髪の為、 THE ALFEEの某王子っぽい(笑)
 シュラウドが指さした先に炎に包まれたアタッシュケースが出現し、照井はその中に新たな装備を発見する。
 「俺の、ドライバが出来たんだな!」
 かなりファンタジックなギミックを見せるシュラウド。なお、名前の意味は、「覆う物、幕」との事。
 一方、翔太郎達は真紀子に接触。
 「あなたたち警察?」
 「探偵です」
 「街の野良犬か、じゃあ無視」
 ……特に、権利ないですしね(笑)
 「そうはいかねえなぁ。野良犬にもプライドがあるんでね。あなたが街を泣かす人間なら、噛みつくしかない」
 食らいつく翔太郎から真紀子は逃げだし、その先に現れる氷ドーパント。今度は最初からヒートジョーカーで立ち向かうダブルだが、 ドーパントの吐き出す冷気はヒートの拳すら凍らせる。ヒートメタルになるも足を凍りづけにされて動きを封じられてしまうが、 そこへ、剣を引きずりながら照井がやってくる。
 「ご苦労。俺が代わろう」
 照井はとにかく重そうな剣を足下に突き立てると、ドライバを取り出し、腰へ。
 「それは……」
 「この日を……待っていた。最強の力を得て、こいつを倒す日を! 変…身!!」
 ――『アクセル』――
 物凄く力の入った叫び声と共にメモリをドライバに装着。バイクのハンドル状のスロットルをふかす事で、 照井はアクセルへと変身する!
 「さあ――振り切るぜ」
 真っ赤なボディのアクセルは、手にした剣でドーパントを滅多切り。超重量の剣を軽々と振り回す乱暴なアクションは、 意外やパワー系。その熱量はドーパントの冷気すら溶かし、更にエンジンメモリで剣を強化すると、火炎剣で氷ドーパントを圧倒、 熱風は立ち見していたダブルを覆う氷も溶かす。
 慌てた氷ドーパントは自ら吐き出した冷気で地面を凍らせると滑って逃亡。
 「これだな、逃がさん!」
 スロットルをふかしたアクセル、空中に舞い上がると、バイクに変形。
 「なんじゃこりゃ」
 半分に割れる奴が自分の事を棚に上げていますが、ライダーが、ギミック的変態しか居ないゾ。
 滑って逃げるドーパント、バイクになって追うアクセル、とここのチェイスシーンは非常に面白くなりました。 ドーパントを追い詰めたアクセルはマキシマムドライブを発動し、火炎旋風脚でドーパントを粉砕。
 「絶望がお前の、ゴールだ」
 「ハードボイルドだ……」
 だがそれは、氷で作った分身だった。改めて、丘の向こうに逃げて行ったドーパントを追ったアクセルは、 丘の下で片平真紀子を発見。何をとち狂ったのか、生身の真紀子にそのまま切りかかろうとする……!
 対ドーパント法第一条・仮面ライダーアクセルは、いかなる場合でも礼状なしに、犯人を逮捕する事が出来る。
 第二条・仮面ライダーアクセルは、相手がドーパントと認めた場合、自らの判断で犯人を処罰することが出来る。
 第二条補足――場合によっては抹殺する事も許される。
 のか?!
 霧彦さん退場でどうなる事かと思われましたが、新登場の照井さんは声が渋くていい感じ。つるっとしたダブルに対して、 自らバイクに変形する事も含めてメカメカしいアクセル、というのは従来作品の要素を盛り込む今作らしいデザインです。
 何より今回は、いい石田監督で良かった(笑)

◆第20話「Iが止まらない/仮面ライダーの流儀」◆ (監督:石田秀範 脚本:三条陸)
 真紀子をフォージャスティスしようとするアクセルを、すんでの所で止めるダブル。
 「奴は俺の全てを奪った、Wのメモリの持ち主だぞ!」
 「W?」
 (Wのメモリとは、なんだ?)
 「俺に、質問を、するなぁ!」
 ダブルは連続の剣撃で吹っ飛ばされて変身が解けるが、その間に真紀子は逃亡。
 「あんた……仮面ライダーになるんじゃないのか」
 「なんだと……?」
 「罪を憎んでも、人は憎まない。この風都の人々が仮面ライダーに望んでいるのは、そういう心だ」
 「甘い……甘ったるい事を言うなぁ!」
 アクセルはなおも翔太郎に剣を向けるが、割って入った亜樹子の前でその攻撃を止める。
 「いい加減にしてよ! 竜くん」
 亜樹子はもう、誰でも「くん」なのか(笑)
 「この街は腐っている……だから人も腐るんだ!」
 「なにぃ……?」
 「俺はこの街が、だいっきらいだ……!」
 「てるいりゅうっっ!!」
 去って行く照井を追いかけるが、ダメージで倒れる翔太郎……と、実に今作らしい交錯。
 “おやっさんに恥じない大人”であろうとする翔太郎が、“人々の夢のヒーロー”になろうとしている事が窺え、 そしてそれは同時に今作が志向しているのが“夢物語のような真っ直ぐなヒーロー”であるというのも改めて見えます。
 現代を意識したヒーロー物の再構築を命題とし、《平成ライダー》10年、色々とこねくり回してきましたが、 次の10年に向けてここで一つ、罪を憎んで人を憎まず、現実は色々あるけれど、 人々を泣かせない為に戦う熱くて真っ直ぐなヒーローが居てもいいじゃないか、というのは今作の特質。
 そしてそれを、“そういうヒーロー”として描くのではなく、“そういうヒーローになろうとあがいているハーフボイルド”から描くアプローチはは面白い。
 ……こう見ると、向いている方向は違うけど、今作は《平成ライダー》における『特捜ロボジャンパーソン』なのかもしれない(笑)
 (※なんでも『ジャンパーソン』に絡めるのはやめなさい)
 今回からOPに照井/アクセルが追加。事務所トリオが走ってくる所を立ち入り禁止のテープで止めた先でアクセルメモリを構える、 とワンシーンで立ち位置が良く出た映像。
 翔太郎は独自に事件を追うと宣言し、フィリップはWのメモリについて検索。照井は片平の息子を尾行し、 翔太郎も息子について情報を集めていた。息子と接触した真紀子を見つけた照井は、アクセルに変身すると生身の真紀子を襲撃。
 逃げる奴はドーパントだ!
 逃げない奴はよく訓練されたドーパントだ!
 エリート警視というより山賊と化したアクセルを食い止めるファングジョーカー。
 「なぜ邪魔をする。俺は法の番人として、当然の正義を行っているだけだ!」

 アクセル・フォー・ジャスティス!

 ……やはり知らない所で、闇の公権力が対ドーパント法を制定したりしたのでしょうか(^^;
 「君の行為は正義ではない。個人的な、復讐だ!」
 ここの対決はファングの出番を作りつつ、頭に血が昇って本領を発揮できていない、とアクセルも落とさず。 むしろファングに匹敵するパワーを持つ事を印象づけました。サイクロンジョーカーの要らない子感の加速が物凄いですが、 暖かく見守りたい。
 互いに変身解除し、向き合うフィリップと照井。フィリップは過去に起きた連続凍結事件で、照井の家族が死亡した事を調べていた。
 「何がわかる? あの日の事がどれだけわかるというんだこの検索小僧が! 俺の心の叫びまで検索できるのか!」
 「いや。人の心は検索できない。だから……教えてくれ。君の身に起こった事を」
 「なんだと……?」
 「だって、それを解決するのが、依頼だった筈だろう?」
 自ら「検索の限界」を語るフィリップが、前向きに話を繋げたのは“仮面ライダー”として格好良かった。
 去年の8月……照井竜の両親と妹は氷に閉ざされた部屋の中で凍死し、竜は死の間際の父から怪人とWのガイアメモリの存在を聞き、 現場で紫の矢車菊を目にする。失意の竜の前に現れたのは、謎の女・シュラウド。
 「私が、あなたの復讐を支える」
 同じ哀しみを持つと語るシュラウドは超重量の剣を竜に託し、姿を消す。
 いきなりごつい武器を残されるというハードプレイを要求された照井ですが、振り回せるよう真面目に筋トレとかしたのか。
 「その女が誰かは知らない。だが誰でも構わん! 俺から家族を奪った、悪魔に復讐できるのならな!」
 服装が“赤い宮内洋”っぽいと思った照井ですが、なるほど、背景としてはV3なのか。
 ちーちよ はーはよ いもうとよー (※元祖大惨事ヒーローソング)
 あと、警察関係者っぽい服装の照井父がガイアメモリに言及しているのですが、風都署では実は常識なのか、 上層部の方では把握しているという事なのか。
 「それがお前の……」
 「ビギンズナイト」
 そこの2人、さらっと同じ所へ、引きずり落とすな(笑)
 「この街は悪魔の巣だ。俺はようやく悪魔を……俺の家族を奪った犯人を見つけた。片平真紀子を消す。君たちになど、 俺を止める資格はない」
 「犯人は、片平真紀子じゃない」
 探偵トリオは照井を、片平息子が踊り狂うクラブへと連れて行く。
 「お開きだぜ、お坊ちゃん」
 翔太郎が突き止めた真犯人は、片平真紀子の息子、清。母親の金で遊び歩いていたドラ息子である清はドーパントの力を得ると、 ちょっとした諍いのあった取引先の人間を次々と襲い、母親はその息子をかばっていたのである。
 「俺は危うく、別の人を……」
 「はっ、人を凍えさせるのは面白かったぜぇ」
 画面左側に照井を置き、クラブのスクリーンに大写しの片平息子の顔を右側に置き、会話しているようで会話していない、 互いの距離感を表現したのは非常に秀逸。
 そこへ息子を止めようと母がやってくるが、息子は氷ドーパントに変身して逃亡。
 「彼は俺たちが止める。あんたにもう1人でメリーゴーランドは乗らせない」
 「探偵さん……」
 「木馬に乗ったあんたの切ない顔が忘れられなかった、それだけさ。……行くぜ! フィリップ!」
 何故か、シングルマザーに攻撃力の高い翔太郎(笑) 大丈夫か、翔太郎。それは明らかに、 ナンパだぞ翔太郎。…………そういえば初対面の亜樹子を中学生呼ばわりだったし、そういう事なのか翔太郎?!
 「甘い……甘ったるくて…………耐えられん」
 凄く、嫌そうな顔の照井。性格というか、最後の一言が嫌だった疑惑。
 「ハーフボイルドだから、あいつ」
 ここの亜樹子が、凄くいい表情。顔芸と閃きだけではない所を見せました。
 「……いや。あいつがそういう性格でなければ……今頃俺は」
 氷ドーパントを追い詰めた翔太郎とフィリップはヒートジョーカーに変身するが、ドーパントは池の水を供給源に氷弾の雨を降らせ、 ヒートトリガーも苦戦。そこへ、駆けつける照井。
 「変…身!! さぁ――振り切るぜ!」
 いい所でダブルに決め台詞が無いと思ったら、今回もアクセルのターンでした。
 アクセルは<エンジン>発動から<スチーム>で蒸気の盾を作って氷弾を防ぐと、<エレクトリック>の電撃剣で打ち上げ、 トドメはマキシマムドライブ・間合いの外からの攻撃なら拙者も可能アクセル波動閃。
 「絶望がお前の……ゴールだ」
 いい所全て、持っていきました(笑)
 そして、メモリブレイクした清に迫る修羅のアクセル。
 「こいつが……俺の家族を!」
 「やべっ」
 うむ、予測してしかるべきだったと思います(笑)
 「去年の8月、俺の家族を殺したのは貴様か?! き・さ・まだな!!」 という勢いで清に向けて剣を振り上げるアクセルに向けて駆け寄る、翔太郎と片倉母。だが……
 「行き先を変えよう。お前のゴールは……刑務所だ」
 アクセルは剣を振り下ろす事はなく、照井は清に手錠をかける。
 ……照井さんは、社会的に割と危ない人だけど、台詞の格好良さと喋り方の渋さで物凄く誤魔化してるな(笑)
 「ハーフボイルド……とかいうらしいな。君の流儀」
 「え?」
 「この街に居る内はその流儀に合わせる。俺も…………仮面ライダーだからな」
 どんなに甘ったるくても、自分もヒーローであろう、といういい台詞。
 照井がどうして「仮面ライダー」にこだわっているのかは、今ひとつわかりませんが(^^; 単純に、ヒーロー体質なのか。
 そして照井は、この街に来るまでは(アクセル修行中)チンピラの10人や20人ぐらいはハードに埋めてきたのであろうか。
 「いや、別にハーフじゃねえんだけど」
 ここで映される、それぞれの表情もいい。物語も半分が近づき、だいぶ役者陣も、役柄と一体化してきた感じ。
 母は息子を抱きしめ、上着をかける。
 「母さん…………ごめん」
 この母で、更正できるか疑問ですが(サブタイトルに絡めるなら、「盲愛が止まらない」と云ったところか)。
 これにて一件落着かと思われたその時、清が使っていたメモリの正体がI――<アイスエイジ>だと判明する。ある意味、 サブタイトルでネタ割れしているのですが、誰もここで決着付くと思ってないよね、という事でいいのか(^^; メタ的にはちょっと、 照井が暴走の印象が強くなってしまいましたが。
 「やはりイニシャルが違っていた……Wじゃない」
 「おい、去年の八月、俺の家族を殺したのはおまえではないのか?!」
 そして清がメモリを手に入れたのは、2週間前。
 「俺の家族を殺した真犯人は、別に居る……」
 照井竜の復讐は終わってはいなかった。風都に渦巻くWの闇の正体はいったい――
 その頃、園咲家の地下施設に連れて行かれ正式にミュージアムの幹部となった若菜は、ミュージアムからも特別視される、 ある危険な男と出会っていた。
 「にこやかだけど怖い人。冷や汗が出ましたわ」
 「特殊な男よね。言ってみればガイアメモリが生み出した、突然変異の化け物。私に、いえ、園咲の家にふさわしい」
 「お姉様……?」
 「冗談よ。彼は誰にもなびかない。今大事なのは、敵に回さない事」
 その男の持つメモリのイニシャルは……
 ファングジョーカー登場、霧彦さん退場、アクセル登場、とミュージアムとの戦力バランスがやや悪くなっていった所で、 ちらつく新たな悪意の影。アクセル側にも謎の女・シュラウドと、敵味方に伏線が散りばめられました。
 そんな闇の存在はまだ知るよしもなく、いつものように報告書をタイプする翔太郎。その事務所では何故か、 照井がコーヒーを淹れていた。前回、事務所で出されたコーヒーに顔をしかめていた照井はコーヒーにこだわりがある模様で、 その見事なバリスタぶりで、フィリップと亜樹子の時間を静止させ、翔太郎を唸らせる。
 「なんなら、フィリップの相棒も代わろうか。彼の力は君には不釣り合いだ」
 「なんだとてめぇ……?! ざけやがって、二度と来るな!」
 3人分入れて帰ったので、素直でない個人的なお礼か。
 時々物凄くチンピラ化する翔太郎は照井にソファを投げつけ、いまいちそりの合わない探偵と刑事はうまくやっていけるのか…… という所で、以下次回。
 面白かった。
 あまり近年の、1人の脚本家に固めさせすぎる作りに肯定的ではないのですが(『電王』など、それによる成功例もありますが、 どちらかというと小林靖子がやや特殊な例と思われる)、今作はキャラクターと世界観を作り込んだ作風の上で、 ある程度の余裕を持って書いている事で、三条脚本のアベレージが高い。これは7−8話の大惨事はともかく、 長谷川脚本がある程度の出来を見せた事が大きいかと思いますが、今の所、うまく回っています。
 まあ、長谷川脚本は最初の車回が当たりの後は、そこまで当たりも出していないのですが、少なくとも破綻はしていないし、 世界観との相性は良さそう。
 照井/アクセルは、かなり好印象。割と真っ当かと思わせて、後半で東映刑事ヒーローのエッセンスをふんだんに盛り込んできましたが (ジャンパーソンは刑事ではないけど)、今後はハーフボイルドに合わせる……という事で、信じて……いいのか…………?  割と簡単に法の壁をぶち破りそうで、心配です。法律そのものが、影でねじ曲がっている可能性も否定できないし!
 法を曲げているのを承知の上で復讐を優先しているのかと思ったら、「俺は法の番人として、当然の正義を行っているだけだ!」 と堂々と宣言しているのが怖い。
 で、そんな照井と“法治を尊重するヒーロー”であるダブルが絡む事で、ただの「復讐、良くない」になっていないのは、 今作の面白い所。「贖罪」というのが今作の一つのテーマなのは間違いないですが、この対比を見る限り、「人治」と「法治」というのも、 やはり意図的に盛り込んでいる模様。
 そしてヒーローに私的な裁きをさせず、しかし如何にして物語のカタルシスを生むのか、 というのは作劇のこだわりになっているように見えます。
 次回、風都署にスペシャルポリスが編入。
 物凄い勢いで権力の側から進む風都のディストピア化を、鳴海探偵事務所は食い止める事が出来るのかッ?!

→〔その4へ続く〕

(2015年4月2日)
(2017年3月21日 改訂)
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