■『仮面ライダーW』感想まとめ2■


“熱く燃える痛みが その標的を焼き尽くす
Breaking the silence Free your Heat”


 ブログ「ものかきの繰り言」の方に連載していた『仮面ライダーW』 感想の、まとめ2(7〜14話)です。文体の統一や、誤字脱字の修正など、若干の改稿をしています。そこはかとなくヒートメタル色。


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◆第7話「Cを探せ/フィリップはそれを我慢できない」◆ (監督:田崎竜太 脚本:荒川稔久)
 星の図書館の検索中に鍵が掛かっていて閲覧できない本に出くわしたフィリップは、 その本のタイトル――「ヘブンズトルネード」に強い興味を抱き、大暴走。隠し部屋のホワイトボードだけでは飽き足らず、 事務所の壁にまでメモを書き続けた挙げ句、1人で外へと飛び出していく。
 「馬鹿! おまえ、組織に狙われてるんだぞ。不用意に出歩くな」
 前回、ナスカドーパントの腰のベルト(メモリドライバー)を見て「組織の幹部」と言及がありましたが、 「ガイアメモリを売りさばき、フィリップを狙う組織が存在する」という所までは認識している模様。まあ、 1話冒頭でどこかからフィリップを助け出しているので、ある程度の認識はしているのが自然です。
 翔太郎の制止も聞かずに外へ出たフィリップが、追いかけてきた亜樹子を連れて見つけ出したのは、 ヘブンズトルネードの使い手であるカリスマ高校生ストリートダンサー。「鳴海探偵事務所」という言葉に反応を示す少年だが、 ヘブンズトルネードは1人では出来ない、と言い残して走り去ってしまう。
 その頃、事務所への投げ文により不審者が現れると予告された高校へ向かった翔太郎は、校長先生を襲う怪人と遭遇する。
 「街の害虫は、私が駆除する。おまえは1人の男子生徒を、深く傷つけた」
 それは、若菜姫のラジオで新たな噂になっている、闇の仕置人・ゴキスター。……まあつまり、 Gのドーパントであった。
 てらてらした皮膚感がいちいち強調されて、とても嫌な感じです。苦手な人には、無駄に辛い回(^^;
 「この風都に、ヒーローは2人もいらない」
 ヒーローを自認するGドーパントはダブルに敵愾心を燃やして戦闘に。その高速移動はトリガーの射撃すら回避するが、 ルナトリガーの誘導ビームを背中から直撃させる事に成功。しかしトドメを刺そうとした所で、 カリスマダンサーを尾行中だったフィリップの意識が逸れ、逃げられてしまう…… とこれまで翔太郎をサポートしてきたフィリップが他の事に夢中になると割と自由で大迷惑、という展開。
 Gにかわされて一発も当たりませんでしたが、光のエフェクトがかかったサイクロンの回し蹴りは格好良かったです。 当たりませんでしたが。
 園咲家では、フィリップを見つけた猫が、お父さんにメモリを入れてもらって、 スミロドン(サーベルタイガーの一種)ドーパントに変貌。これまでも暗に匂わせる描写はありましたが、明確な変身シーンは初。この、 猫まで変身して幹部、というのは非常に面白い。
 そして霧彦さん、猫と較べられる。
 ……む、婿殿、まだ一桁、まだ話数一桁ですよ婿殿?!
 その頃、翔太郎は女子高生といちゃいちゃ、もとい、女子高生ネットワークに精通する情報屋、クイーンとエリザベスから、 「闇の害虫駆除」という闇サイトの情報を得、校長が襲われたのは同姓の為の人違いであり、本当の標的は星野千鶴という女生徒であったと知る。
 この後、
 フィリップ達が尾行していたカリスマダンサーはG襲撃事件があった学生の元生徒で、「千鶴」「千鶴」 と連呼しながらいきなり踊り出して教師に叩き出され、ヘブンズトルネードが2人のコンビ技だと理解したフィリップが私利私欲のために2人を揃えようとするがスミロドンドーパントに見つかって亜樹子と逃走する事になり、 千鶴を探す翔太郎は千鶴を襲うGを発見、今はシンクロナイズドスイミングをやっているという千鶴を探すダンサーがそこに居合わせ…… と悪い意味でバタバタと展開。
 とにかく、ダンサー少年の青春の感情が迸りすぎて、何となくわかりはするけど説明不足というか、 説明の省略が話の面白さに繋がっていません。荒川稔久の基本的な技術を考えるとかなり酷い出来で、 作品世界が全くピンと来なかったのか、ダンスとかAKBとか、何かそうとう厄介な縛りでもあったのかと、首をひねりたくなるレベル。
 フィリップがなんとかスミロドンを振り切り、翔太郎はダブルに変身してGと戦うが、 Gの「千鶴を襲うように依頼したのはダンス少年」という言葉から千鶴と少年が揉めるのを見たフィリップの意識がまたも戦闘から離れ、 ダブルはGの高速移動により、ルナとトリガーのメモリを盗まれてしまう!
 果たして目的が分裂気味の2人で1人の探偵はこの危機を乗り越える事が出来るのか。一つ言える事は、先生が渡洋史なので、 たぶん犯人だ!(待て)

◆第8話「Cを探せ/ダンシングヒーロー」◆ (監督:田崎竜太 脚本:荒川稔久)
 先生は犯人ではなかった!
 まんまと騙されましたが、名無しの教師役に渡洋史とは、なんだったのか。
 Gドーパントの高速機動に翻弄されるダブルは、何とかヒートメタルでカウンターを決めるが、その二つのメモリも奪われ、 Gに逃げられてしまう。
 千鶴と決裂して黄昏れていたダンス少年は、突然理由も言わずにダンスを辞めて水泳部に入った千鶴への怒りでつい闇サイトに依頼を書き込んでしまった事、 Gの仕置きが本当だと知って鳴海探偵事務所に手紙を投げ込んだ事、所長が頼りなさそうな亜樹子だと知って慌てて学校へ向かった事、 などを白状。
 まあそんな所だろうな、と筋は繋がったのですが、前回の少年が走り回る展開が特に面白くなかった上に無駄にドタバタしたのと (特にバスの尾行シーンが面白いというより無理がありすぎた)、改めて繋がった真相も特に面白くはない、という冴えない展開。
 翔太郎はGを止める為に情報屋と接触し、闇でGの活躍を描いた同人誌が出回っている事を知る。Gドーパントの正体は、 自らの活躍するドリームマンガを実現化しようとする、歪んだヒーロー願望の持ち主だったのだ。
 一方ヘブンズトルネード以外に興味が無いフィリップは、男女の仲直り方法を検索(笑) ……絞りきれなかったので、 適当に手に取ってみた一冊を参考に、千鶴とダンス少年をアジトに連れ込み、車の中に閉じ込めるという荒療治を敢行。 最初は激しく揉める2人だったが、千鶴がシンクロを始めたのはダンスの練習の為だったと判明し、仲直り。
 色々、面倒くさい、青春のはしかでした。
 同人誌に描かれたリアルな街の風景を辿り、Gの住処を突き止める翔太郎だが、Gは逃走。 これまでほぼ手裏剣扱いだったクワガタに追跡機能がついている事が判明するが、 Gは逆にクワガタを確保して電話機能で亜樹子から情報を聞き出し、千鶴を狙う。 怪我をした千鶴の口にした「波」というキーワードからフィリップはヘブンズトルネードについて読み解き、 駆けつけた翔太郎とダブル変身。
 「「さあ、おまえの罪を数えろ」」
 ノリノリのフィリップは華麗にステップを踏み、Gを翻弄。その動きに触発されたダンス少年が合わせて踊りながら攻撃に参加し、 一般人を巻き込んでのバカダンス攻撃は突き抜けていて面白かったです(笑)
 確か『電王』の時にR電王のダンスステップに苦戦したという高岩さん、今回も大変だったのでしょうか。
 波に乗るダブル(フィリップ)と少年はヘブンズトルネードを炸裂させ、ガイアメモリを取り返す事に成功。 ルナトリガーのフルバーストでGを撃破し、メモリブレイク。かくてダンスカップルは仲直り、闇の仕置き人は退治され、 霧彦さんの立場がまた一つ、悪くなるのであった。
 特異なポジションのフィリップはともかく、主人公の翔太郎が“未熟なりに自分の流儀を持って自活するオトナ(なりかけ)”であり、 職持ちライダーという事を強調する為か、対比として少年少女の青臭さを描く意図があったのかもしれませんが、 その青臭さが物語としては全く面白くなりませんでした。少年少女がただ面倒くさいだけ、となってしまい残念エピソード。
 ……これはあれか、「アイドルデュオの話を書いて下さい」とオファーを受けた荒川さんが超ノリノリで書いていたら、 途中で「すみません、男女カップルのダンスユニットでお願いします」という変更があって、 血の涙を流しながら一晩でシナリオ書き直したとか、そんな悲しい裏話でもあるのか。

◆第9話「Sな戦慄/メイド探偵は見た!」◆ (監督:柴崎貴行 脚本:三条陸)
 ヘブンズトルネードなんて、無かったらしい。
 それはさておき、人生のバイブルたるハードボイルド小説を事務所の経費で落とそうとして、亜樹子に領収書を投げつけられた翔太郎は、 おやっさんの事を聞かれ、挙動不審に。そこへ、5人の依頼者がまとめて駆け込んでくる。 それは風都で有名な5人のパティシエの家族であった。
 こうして、パティシエの連続失踪事件を追う事になった鳴海探偵事務所。翔太郎、 黒スーツ黄色シャツ白ネクタイという、凄いコーディネート。
 ところで亜樹子20歳は、翔太郎を「翔太郎くん」「君」扱いですが、翔太郎、幾つ設定なのか。25ぐらいだと思っていたのですが、 もう少し若いのか。確かに1年前、バミューダパンツみたいなの履いてすね出しているけど!
 この辺り、翔太郎の服装の変化というのは、おやっさんとの別離による翔太郎の変化にまつわる仕込みなのかもしれませんが。
 情報を集めて回る翔太郎の前に浮かび上がったのは、警察も捜査できない園崎家の存在。 園咲家の主は週替わりで一流パティシエを屋敷に招いており、失踪した5人のパティシエは全て、園咲家を訪れた事があったのだ。
 状況的には真っ黒すぎますが、風都の警察はどうなっているか……という所に、地方の名士の力をまざまざ見る思いです。
 失踪した風都ベスト1パティシエの娘であり、依頼人の1人がパティシエとして園咲家へ招かれ、 亜樹子はその紹介でメイドとして園咲家に潜入する。
 今回、「おやっさん」がキーになるエピソードという事で、「不在の父」を軸に亜樹子とパティシエ娘が仲良くなるのですが、 パティシエ娘の演技が、少々びみょー。登場人物が多かった影響かもしれませんが、中心になるゲストキャラだけに、ちょっと残念。
 亜樹子メイドパートは、ペンと手帳を持って屋敷内をうろついていても咎められないなど、リアリティをぐっと下げて、 ほぼ割り切ったギャグシーンとして展開。やや過剰演出気味な部分もありましたが、 “肩の力を抜いて楽しむシーン”とする事で亜樹子の顔芸も生き、いい判断だったと思います。
 亜樹子の突拍子もない行動を楽しむフィリップから話を聞き、 慌てて亜樹子の様子を窺いに園崎家へ向かった翔太郎は屋敷から言いしれぬ不穏な気配を感じるが、 亜樹子には散々虚仮にされて追い返されてしまう。
 「そろそろ亜樹ちゃんに、真実を話さないのかい? 如何にして僕たちがダブルになったのか。あの日――ビギンズナイトの事を」
 「言えるかよ! …………俺が……この俺がおやっさんを殺しちまったなんて事」
 それは果たして如何なる意味なのか――亜樹子に対して負い目と責任を感じる翔太郎は園咲家の周囲をうろつき、すっかり不審者状態。 そこへフィリップから、次に狙われるのは雑誌で特集された風都ベストパティシエの6位に選出されていた娘に違いない、 と連絡が入り急ごうとするが、いきなり取り押さえられる。
 「当てよう! 君は若菜ちゃんのストーカーだな」
 ハイ、その通りです。
 「聞きたまえ。私はね、こよなくこの風都を愛している」
 ねじりあげた翔太郎に、蕩々と語り出す霧彦さん、何故か合間合間に遠くを見るのが素敵。
 ナスカで活躍できない霧彦さん、生身で翔太郎と接触、そして活躍。この人、色々な意味で、 生身の方が戦闘力高いのでは。
 その頃、屋敷の厨房ではパティシエ娘が謎の粘液に襲われていた。
 「おまえは私の舌先に乗る資格を得た」
 粘液が壁に「オメデトウ」と文字を書くというのは面白い。壁の中に引きずり込まれそうになった娘の悲鳴に、 翔太郎は霧彦を振りほどくと屋敷の門を乗り越え、ダブル変身。
 「なんだこいつ、お菓子の化け物か?」
 「化け物とは無礼な。私は味覚の化身だ」
 娘を救出し、壁の中から引きずり出した怪人は………………メトロン星人?(from『ウルトラセブン』)
 お菓子の妖精メトロンドーパントが口から吐き出すクリームで動きを封じられるダブルだが、メタルの棒にコウモリを合体させ、 超音波でクリームを破壊。
 ダブルは結構、その場その場で都合良く特殊能力を発動して危機を突破する事が多いのですが、 フォームチェンジを含めそれを矢継ぎ早に行う事で、“そういう仮面ライダー”として、成立させています。 半分こチェンジの組み合わせで、色々と能力を想像させる遊びの余地があって、設定と物語が巧い方向に噛み合っているのが面白い。
 反撃に転じるダブルだったが、戦闘を目撃した霧彦さんがナスカに変身して乱入する。脱ぎっぷりはともかく、 特に男らしいわけでもないらしいナスカは2対1でも気にせずダブルを切り刻み、一転、危機に陥るダブル。
 「ずいぶん屋敷が騒がしいな……」
 その時、園咲家当主がおもむろにドーパントへと変身する――という所で続く。
 《平成ライダー》シリーズは、原典における「正義の改造人間」(主人公と敵怪人が同根)という要素を如何なる形で入れるか、 という所にまずポイントが置かれる事が多いのですが、今作では基本の変身アイテム(ガイアメモリ)が主人公と怪人で共通し、 最初から、“普通の人間がガイアメモリを差して超人へと変身する”所までは見せています。
 その上で、ダブルと幹部クラスはベルトで差別化、主人公であるダブルは2人で1人という個性化。
 ダブルが2人で1人の特殊なドライバーなので、敵幹部クラスが堂々とベルトで変身してみせる、 というのはなかなか大胆な逆算の仕掛け。
 この辺り、敢えて序盤から見せてきたのは、今作ではそこに軸を置かないという事なのか、或いはこれから捻りが入ってくるのか、 というのも楽しみな所です。1−2話では、ガイアメモリの使用者がメモリに精神を蝕まれていくという描写がありましたが、 その辺りもどう影響してくるか。
 あとミュージアムの、一般人にガイアメモリを販売する事で怪人化するという形態は、 犯罪者と契約して怪ロボットをレンタルするというバドー犯罪組織(『ロボット刑事』)の系譜。 “自ら手を下すのではなく人間の悪意をそそのかす秘密結社”というスタンスが、 00年代のヒーロー物の中でどう描かれていくのかも、期待したい所。

◆第10話「Sな戦慄/名探偵の娘」◆ (監督:柴崎貴行 脚本:三条陸)
 「ビギンズナイト」って自分達の過去の体験にえらく気取った呼び名を付けているなぁと思ったら、 映画のサブタイトル的なものありきだったようで、納得。
 ナスカは背中のマフラーを伸ばしてダブルを拘束するが、メトロンに殴られ、戦いは乱戦模様に。だがその時、 屋敷の壁や地面から漆黒の闇が染みだし、汚染物質のようなそれの危険すぎる気配に、全員撤退……とテラードーパントの力見せ。
 「僕たちは見たのかもしれない」
 「何をだ?」
 「敵の……根源を」
 亜樹子を心配する翔太郎は、依頼人を危険にさらした事をおやっさんなら決して許さない、と亜樹子の無茶を叱り、 珍しくしょげる亜樹子。その姿に、おやっさんの背中を追いかけている者同士のシンパシーを感じてしまった翔太郎は、 自分が過去に同様に叱られた事を語り、勢いでビギンズナイトの真実を話そうとするが……いつの間にか亜樹子は姿を消していた。
 「俺、ちょー大事な話してんのにぃ!」
 自分を頼ってきた依頼人の為に――父の過去の言葉に、翔太郎の期待したのとは逆方向に盛り上がってしまった亜樹子は園咲家当主・ 琉兵衛(りゅうべえ)に、スイーツタイムに屋敷の使用人を集めてほしい、と頼み込む。
 琉兵衛が館長を務める風都博物館の展示物が、これまで遭遇したドーパント達を示しているようで気になる翔太郎は、 ここで琉兵衛と初接触。
 「素晴らしいよねぇ。地球に刻まれた記憶というものは」
 寺田農、圧倒的貫禄。
 このクラスの役者さんを悪役に配置できると、書く方も撮る方も、とても楽しそうです。
 そして翌日――集められる使用人、食堂を外で見張る翔太郎、そこへ現れたのは、モップを持って仁王立ちする美少女メイド探偵・ 鳴海亜樹子!
 「ただのメイドではございません。美少女メイドは仮の姿。その実体は、名探偵・鳴海亜樹子! この中に、連続誘拐事件の、 犯人が居ます!」
 「あいつ、やっぱ無茶しやがったぁぁ」
 その指名した真犯人は……ぽっちゃりメイド。
 なお、証拠は無し。
 亜樹子のあてずっぽうから事態は出来の悪い喜劇の様相を呈し始めるが、 使用人を集める為に亜樹子が適当に作ったお菓子を食べさせられた眼鏡のメイドが怒りを露わにし、その本性を剥き出しにする。
 同時刻、星の図書館の検索によりフィリップが辿り着いた真犯人、それは風都パティシエ特集のランキングをつけた雑誌ライターだった。 お菓子好きが高じてガイアメモリを手にしたライターは使用人として園咲家に雇われ、一流のパティシエを監禁する事で、 その味を自分だけのものにしていたのだ。
 メトロン星人の正体は、スイーツメモリ。……す、スイーツ……(笑) 実に何でもありですドーパント。そしてスイーツも、 風都博物館に飾ってあるのか。
 ここの画面分割の演出は、少々やりすぎた感じ。あと極めて私的な事情として、ヘッドホンで聞いているので、 音声を左右に分けられると、聞こえ方が気持ち悪くなって苦手(^^;
 眼鏡メイドはスイーツドーパントに変身するとパティシエ娘と亜樹子を呑み込んで逃走。 それを追って変身した翔太郎は冴子と霧彦にそれを見られ、2人はタブーとナスカに変身。
 1話冒頭にもタブードーパントが出ていましたが、どうやらフィリップの居た施設は冴子の管轄のようで、 ダブルドライバーについて何か個人的な思惑がある様子。
 タブードーパントは、メデューサ+ラミアみたいなイメージなのか、足が無いという一風変わった着ぐるみ。 戦闘中は基本CGになりますし、それ以外の時は吊ったり角度が限定されたりと撮影が大変そうですが、 思い切った異形デザインで面白い。また、猫がドーパントになると二足歩行になり、 人が変身したドーパントが足が無くてふわふわ浮いているというのは、ちょっとひねっていいスパイス。
 タブーとナスカの夫婦攻撃に苦戦するダブルだが、フィリップ、リボルキャリーで2人を轢く。
 ドーパントだから、大丈夫。
 3つ目のアタッチメントであるターボブースターをつけたWバイクは追走してきたナスカドーパントを振り切り、 さらわれた亜樹子とパティシエの元に駆けつける。
 「私の依頼人に、指一本触れるな!」
 パティシエ娘を人質に取ろうとしたスイーツに椅子を叩きつけ、依頼人を力尽くで守った亜樹子の姿に、 おやっさんを重ねてしまう翔太郎…………えー、それでいいのか(笑)
 ドーパントを煽る割にドーパントに襲われると「聞いてないよー」となる亜樹子の見せ場ですが、急に力技になって、やや強引(^^;  パティシエ娘を体を張って守って殴られる、とかでも良かった気はしますが、それだと見せ場として弱いという判断だったか。ただ、 亜樹子を単なる賑やかし要員にせず、しっかり物語と絡めて3人目のメインキャラとして扱っているのは、今作の良い所。
 「「さあ、おまえの罪を数えろ」」
 ダブルはヒートジョーカーとなり、スイーツと交戦。粘液状態になって隠れたスイーツを、 コウモリにルナメモリを差し込んでのフラッシュで炙り出すと、ヒートージョーカーによるマキシマムドライブ・ ジョーカーグレネードを発動。右手から炎、 左手からハードボイルドなオーラを噴き出すと……

 飛んだー!

 凄くズレたーーー!!

 割れたーーーーー!!!

 左右の乱打でメモリブレイク。隠れ家に監禁されていたパティシエ達も助け出され、事件は無事に解決を迎える。
 そしてダブルを取り逃がした霧彦さんは、冴子さんからお仕置きを受け、お尻を出していた。

 反省。

 亜樹子の中に確かに流れるおやっさんの血を見た翔太郎は、亜樹子を子供扱いしていた事を改め、 亜樹子には亜樹子の強さがある事を認める。
 (強くならなきゃいけないのはこの俺の方だ。いつか……あの日を受け入れなきゃいけない時が来る。あの夜、ビギンズナイトを)
 お菓子が大好きなので一流のパティシエを次々と誘拐する怪人、と中心のネタは割と間抜けながら、 おやっさんの背中を追いかける2人の半熟卵の話にまとめ、ギャグとシリアスのバランスの取れた1本。またそこに、 ビギンズナイトと園咲琉兵衛――テラードーパントの存在を絡める事で、エピソードとしての厚みが増しました。特に、 戦闘抜きでのテラードーパントの脅威の見せ方は、良かった。
 一方心配なのは、元より“前半のライバル臭”が全身から漂ってはいたものの、現状、 ライバルとして認識されていないどころか、2クール保ちそうにない霧彦さん。 冴子さんを「運命の人」としてキラキラした瞳で語っていたので、もとよりM属性だと思われますが、…………あれ? それだと、 お仕置きではなくてご褒美?? ………………以下、 夫婦の間には余人にはわからない色々な関係があるという事で、あまり触れない方が良さそうなので次回へ続く。

◆第11話「復讐のV/感染車」◆ (監督:諸田敏 脚本:長谷川圭一)
 顔芸路線だった亜樹子、芸の幅を広げるべく、ひたすら風邪演技に挑戦するの巻。ガンバレ。
 「命を狙われているから助けてくれ」という電話で依頼人の元へ向かった翔太郎だが、チンピラ風の依頼人は翔太郎の目の前で、 血管のような模様の浮き上がる車に轢かれてしまう。  これまでと毛色の違うサブタイトル、夜の埠頭でカーステレオで爆音を流しながら人を轢く不気味な黒い車、 と怪奇スリラー色を強めた、面白い入り。
 翔太郎の目の前で確かに轢かれた筈の男だが、死体には轢かれた跡がなく、男はウィルスに感染して死亡していた。 ドーパントの関わり、そして、車から感じた哀しみを気にした翔太郎は独自の調査を開始し、被害者の青木が加わっていた、 風都で幅を利かせているストリートギャングのリーダー・黒須と接触。
 黒須の言動を怪しんだ翔太郎は部下のチンピラ二人を尾行するが、チンピラAもまた、謎の車に殺されてしまう。 ホラー&スリラー&シリアスな展開で格好良く変身しようとした所で、「馬鹿は風邪をひかない」の検証にフィリップが夢中、 というのは今作らしい落とし具合。
 翔太郎はカースタントを披露して車を止めようとするが、失敗。ようやく変身するもナスカドーパントの介入を受け、 チンピラBも殺されてしまう。車に取り憑いて予想外の活動をするバイラスドーパントを追跡検証中のナスカは、 マフラーで半分こキックを防御する、とようやく活躍。
 ようやく活躍。
 ようやく活躍。
 翔太郎が確認した車の運転手は、山村康平18歳。一週間前に姉・幸(さち)が轢き逃げに遭って意識不明となり、 その復讐の為に黒須達を狙っていると推測され、翔太郎は説得を試みる。
 「復讐なんてもうよせ。君の姉さんだってそんな事望んじゃいない」
 凄く、普通です。
 逃げ出した康平を追った翔太郎は、幸の婚約者、売れない画家の湯島と出会って黒須の一味と誤解されている間に康平を逃がしてしまい、 康平は復讐の最後の相手、黒須を狙う。
 湯島と翔太郎の会話シーンで、背後に置かれた架空のバス停の作り込みなどは、今作の良い所。
 亜樹子からの連絡により、復讐車を返り討ちにしようと武器を持って盛り上がる黒須の元へと急ぐ翔太郎に、問いかけるフィリップ。
 「一つ、聞いていいかな? 黒須って男は、僕らが救う価値はあるの?」
 黒須の外道さをここまでしっかり描写した上で、思っても言ってはいけない台詞を、 浮き世の情や社会性とは無縁のフィリップからずばっと。むしろ視聴者の共感を得てしまう爆弾を敢えて置いた所で、 しかしそれを翔太郎は良しとしない。
 「でも俺は黒須を守る。たとえ人間のクズでも、この街の人間だ。殺させるわけにはいかねえんだよ。それに、 復讐なんかで康平の哀しみは消えやしない」
 「ハーフボイルド――とても不合理だけど、君らしい答えだね」
 変身したダブルは、銃撃をものともせずに黒須に襲いかかる感染車をバイクで阻止。
 「一番大切な人を奪われた、その気持ちは俺にもわかる。だからこそ……やらせるわけにはいかねえんだ!」
 メタルサイクロンでバイクが硬化?してひっくり返すが、感染車は片輪が壊れてもなお、執念で黒須を追い詰め続ける。 ダブルは飛行マシンに跨がると、ヒートメタルにチェンジし、メタルブランディングにより車を焼却撃破。だが、 車から転がり出た康平からは、ガイアメモリが排出されなかった。康平はメモリの保持者では無かったのか?! その時、 緑と茶色の入り交じり、人型ではあるが顔らしい顔が無いという奇怪なドーパントが、奇妙な高音を発しながら姿を現す……。
 自動車というのは人間の顔を想起させやすいデザインであり、その喚起するイメージでホラーや時にはロマンスも表現できる面白いアイテムでありますが、 迫り来る無言の恐怖を、巧く演出。3−4話も良かったですが、落とす部分との緩急のテンポなど、諸田監督の演出は、 今作と相性がいい(勿論、演出自体がそれを作っていくわけですが、諸田回が最も、立ち上がりの作品世界を確立したという意味で)。

◆第12話「復讐のV/怨念獣」◆ (監督:諸田敏 脚本:長谷川圭一)
 黒須は結局、謎のドーパント(バイラス)にウィルスを打ち込まれて死亡し、ドーパントは逃亡。
 「許しがたい悪人」「それでも守ろうとする翔太郎」という構造にどう始末をつけるのかと思ったら、 翔太郎は翔太郎の信念で(康平の)復讐は止めたけど、思わぬ展開で悪人は死亡して報いを受けました、とやや逃げ腰に。
 まあ、黒須をかなり外道に描いた上に逮捕の難しい設定にしてしまった事で放置するのも見ていて気分が悪く、 どの辺りでバランスを取るか、というのは難しい所なのですが。
 康平がドーパントでなかった事で真犯人として浮かび上がったのは、被害者・幸の婚約者の画家、湯島。 湯島のアトリエを訪れる翔太郎だったが、何とその湯島がドーパントに襲われている場面に遭遇。とりあえず変身して湯島を助けるが、 ドーパントはまたも逃亡し、湯島もどこかへ姿を消してしまう。
 湯島がドーパントで無ければ他にいったい誰が居るのか……亜樹子が閃いた人物は、被害者本人。病院に向かった翔太郎達は、 幸の腕に生体コネクタ(ガイアメモリを差し込む痣がこう呼ばれる事が判明)を発見する。実は幸は、 車に轢かれる直前にガイアメモリを使用しており、意識不明になったまま精神がドーパント化。 現場に居合わせた弟・康平の怒りの感情を取り込む形で特異なドーパントに変質すると、車と融合して康平を操っていたのである。
 ドーパントの正体が幸であるならば、いったいなぜ婚約者の湯島が狙われたのか……クイーン&エリザベスと接触した翔太郎は、 湯島が女たらしの遊び人であり、最近では結婚詐欺にも手を染めていた事を知る。
 ……悲劇の婚約者役にしては、あまりにちゃらかったからなぁ、湯島(笑)  この前の絵画教室のシーンで、生徒が若い女の子ばかりというのは、画だけで見せる巧い伏線。
 あと、情報屋を固定せず、複数出してくる、というのは遊び心と世界の広がりがあって今作の長所の一つ。“街もの”であるからこそ、 街の中のサブキャラ配置にこだわる、というのはゲーム的面白さというか。
 幸を復讐から救おうと奔走する翔太郎の為にフィリップは、幸を星の本棚に呼び出して説得を試みようと、 生体コネクタを通じて精神ダイブをはかる。
 星の本棚に登場する幸が、そこで意識が止まっているという事なのか、轢き逃げされた直後、というメイクと服装でホラー。
 「幸さん、君の事を本気で救おうとしている男が居る」
 どちらかというと復讐を止める事に興味の薄いフィリップが、本気の翔太郎の為に手を貸す、というのはいい所。 1−2話でちょっと詰め込みすぎましたが、この二人のコンビ関係もじわじわと大事に描いていっているのは好印象。
 またこの台詞は前回における「でも俺は黒須を守る」と対になっており、クズも、復讐者も、風都に暮らす人々を等しく助け、 その上で正統な裁きを受けさせるのが正義であると考えている、という翔太郎のヒーローとしてのスタンスを現していると思われます。
 翔太郎の職業設定など、生活感のあるリアリティを志向している今作ですが、 ダブルがここまでのところ法治を尊重するヒーローというのは、面白い。
 前回フィリップが、「私刑でも別に構わないんじゃい?」と述べましたが、翔太郎はそれを否定。 “ヒーローと社会の関係を組み立て直す”というのは、《平成ライダー》初期のテーゼの一つですが、 ダブルはかなり意識的に社会性をともなったヒーローとして描かれおり、またこれは、翔太郎が社会正義を…… それを構成する人々の良心を信じている現れかと思われます。
 ヒーローというのは多かれ少なかれ、既存の枠組みを打ち破る所にこそヒーロー性――フィクションゆえの面白さが存在するわけですが、 翔太郎自身はどちらかというと、(ヒーローにしては)なるべく社会から逸脱しようとしていない。
 救う人間の価値を定める事を厭わない、ある意味で神の視点に立ちかねないフィリップに対して、 翔太郎が“凄く普通”と言えるのですが、この翔太郎が“凄く普通”というのは、もしかしたら今作のキーの一つなのかも。
 また、フィリップが翔太郎について言う「ハーフボイルド」は、「情に流される甘い男」というニュアンスがあるのですが、その実、 翔太郎が目指す結果というのは「法の裁き」というシビアな地点である事が多い、というのは今作の持つ不思議な二面性であります。 出来れば意図的に仕込んでくれているのだとすると、この先に色々使えそうで、面白いけど。
 幸がバイラスのガイアメモリを購入した理由、それは湯島の正体を知った為であった。 湯島に対する復讐を悩みながらも振り捨てようとしたその時、轢き逃げにあった幸のやり場のない憎悪はドーパントを変質させ暴走。 湯島が潜伏中の女の家を襲撃し、駆けつけた翔太郎は湯島に幸へ謝罪するように説得をするが湯島は逃亡し、 フィリップもまた幸の説得に失敗して精神世界から弾き出されてしまう。
 「止めてやるよ俺が……必ず」
 「それを言うなら、俺たちが、だろ」
 しかしフィリップは、変身すると倒れるのに、どうして毎度立ち上がるのか(笑)
 身の安全よりポーズを取る辺り、これはこれでハーフボイルドです。
 その頃、売人からの情報によりバイラスメモリの暴走と変質を知り追いかけていた霧彦さんは、 「精神体のドーパントとか凄いよね?! これを詳しく報告したらご褒美ですか?!」と盛り上がっていた。だが、 ミュージアムでは既にそういった症例は研究済みであり、精神体ドーパントは肉体変異のドーパントより力の劣る粗悪品である、 と結論づけられていると冷たい視線を浴びる安定の酷い扱い。
 「……ただ、怨念というのも、時としてとてもこわーいものだけど」
 逃げ出した湯島が、いやーな音楽と共に辿り着いたのは、幸と式を挙げると話し合った教会だった。その扉が開き、 現れる花嫁姿の幸。
 いい感じにホラーだったのでここはもう少し尺を取って見せても良かったと思いますが、朝から嫌なホラー過ぎるという判断だったか、 この衣装は一瞬。幸の姿は瞬く間にバイラスへと変わって湯島に襲いかかるが、間一髪、突風を起こしてそれを阻むダブル (サイクロンジョーカー)。
 「やめろ。こんな事をしても君の為にならない」
 ハードボイルドを愛し、気取った台詞を好む翔太郎ですが、この11−12話で、土壇場の説得は凄くストレートで普通である事が判明。 まあ、1−2話でも見せたように、左翔太郎という男の本質は、物凄く青臭い熱血漢、という事なのでしょう。
 シンプルなヒーロー物の作劇を出来るようにしつつ、物事への価値観としてフィリップというもう一つの視点を置き、 翔太郎自身もハードボイルド趣味を纏わせる事で(そしてこれは、おやっさんも関わる二重三重の装いであるという推測もされます)、 単純化しすぎないようにしている、というのが今作の一工夫。
 怨念で暴走するバイラスは説得に耳を貸さず、ダブルはやむなくヒートトリガーにフォームチェンジすると、 マキシマムドライブ・トリガーエクスプロージョンによる火炎放射で焼却。肉体変化より弱いという設定に合わせてか、あっさりでした。
 ドーパントの消滅に歓喜する湯島の高笑いを聞きながら、ダブルは無言でフェードアウト。見えない所で変身を解除した翔太郎は、 幸の心を罵る湯島の背後に立つ。
 「おい……おまえの罪を数えろ」
 ここに決め台詞を温存しておいたのは非常に秀逸。“人の悪意”をキーとする今作において、ただ怪人=悪とするのではなく、悪とは何か、 をどこに置くのかが鮮やかに出ました。
 やたらマンガチックな大ぶりで湯島を殴る翔太郎……は最初は違和感を覚えたのですが、コメントで指摘を受けて今作の性質を考えた時、 翔太郎自身が湯島を殴ってスッキリしてはいけないわけであり、翔太郎も揺れながら、 法治と私刑の狭間のギリギリの所でけじめをつけた“形だけのパンチ”という意図だとしたら、非常に絶妙。
 「おまえを殴ったのは俺の拳じゃない……幸さんの、心だ」
 故に、相手に届かない可能性が高い綺麗事ではあるが、それは心の痛みであると。
 法治のリアリズムにこだわりすぎてしまうと、ヒーロー性によるカタルシスが蔑ろになるという本末転倒が起こる事があり、 実際にかつてそういったリアリズムに囚われたすぎた結果、カタルシスの方を放り投げてしまった作品もあったりしましたが、 やはりヒーロー物として一定のカタルシスはあるべきだと思います。問題は、そのカタルシスを、 どういう折り合いを付けて作品の中に収めるかというわけで。その点で、決め台詞を温存しての今回の展開は、 巧く収めたと思います(あと後日談としては語られないけど、湯島は割と杜撰な感じなので、 翔太郎が頑張れば結婚詐欺で警察があげられるぐらいの証拠は集められそう)。
 そして幸は今エピソード内では目を覚まさない、という形で、轢き逃げ犯4人を殺害した事の因果応報はバランス取り。 今作は恐らく「罪の償い」というのは一つのテーマなので、今簡単にハッピーエンドにはしないけど、 いずれ(法的に裁けるかは別に)償いの精神を持って目を覚ますのだろう、と予感させる形で着地しました。
 最初に触れましたが、翔太郎を立てつつ、結局黒須を死亡させた(視聴者にカタルシスを与えた) 帳尻はどこかで合わせなければならなかったので、湯島の扱いと含めて、今作のバランスはこの辺り、 という悪くない所に着地したとは思います。
 さて今回、フィリップによるガイアメモリの分析が無かったので「バイラス」って何……? と思ってとりあえず検索してみたら一番上に、
 『ガメラ対宇宙怪獣バイラス』
 と出てきたので、う、宇宙怪獣?!と動揺したのですが、「Virus」、現在の日本語表記における「ウィルス」との事。 割とそのまんまでした。目を作らず、得体の知れない怪物というイメージを前面に押し出した、 思い切ったデザインがエピソードの雰囲気とも合って面白かったです。
 7−8話で荒川稔久がやらかしたので心配された三条陸以外の脚本でしたが、翔太郎とフィリップの関係、 亜樹子にちゃんと役割を与える、作品世界のバランス判断など、しっかり押さえられていて面白かったです。怪事件を追うという形式上、 複数脚本家でバリエーションがあった方がいいと思うので、今後も参加するなら期待したい。
 翔太郎(馬鹿)はオチで風邪を引いてフィリップに更なる難題を提供し、次回、姫、ストーカーに狙われる。そして、 ときめきメモリアル。

◆第13話「レディオでQ/狙われたプリンセス」◆ (監督:石田秀範 脚本:長谷川圭一)
 祝・若菜姫、CDデビュー!
 ラジオから流れるデビューシングルをノリノリで歌う翔太郎とフィリップを、亜樹子が冷たい目で見ていた。
 そんな姫のラジオ番組に、ミスタークエスチョンを名乗る男から怪しい電話がかかってくる。若菜が好きな数字の質問に答えると、 プレゼントと称して破壊される、ラジオ局近くの巨大な風車。急ぎ現場に向かった翔太郎は、若菜姫の素を知ってしまう。
 「これはこれでいい!」とか言い出したらどうしようかと思いましたが、一気に熱が冷めてしまう翔太郎。だが、 若菜姫の雑誌記事などを大事にスクラップしているフィリップは相変わらずで、電話の主はドーパントだ、 と調査を続行する。
 一方、園咲家では食堂で、変身姉妹喧嘩が始まっていた。
 よくある事なのか、姉妹の変身とビームの撃ち合いを、無表情に見つめる使用人の皆さんがクール。
 「大丈夫よ……この子は、死なないから」という冴子さんの台詞は、とりあえず死ぬほどお仕置きするという意味に聞こえてバイオレンス。
 (冴子、お仕置きするなら僕を!)と霧彦さんが心の中で叫んだか叫ばなかったか、姉妹喧嘩は琉兵衛によって止められ、 今回のトラブルが解決しなかった場合は今の仕事を辞めて本格的にガイアメモリの流通事業に関わるように、と告げられた若菜は、 警察を呼ぶ事に。
 警察は逆探知を試み、翔太郎はラジオ局に潜り込み、 再び掛かってきた犯人の電話からフィリップが犯人の次の目標を推理してWは現場に急行するが、鉄の塊のようなドーパントによって、 標的となった公園は破壊されてしまう。爆破は止められないわ、怪人は倒せないわ、けっこう散々。
 脚本家が連続という事で意図的かと思いますが、前回が翔太郎の為にフィリップが犯人の説得を試みたのに対し、 今回はフィリップの為に翔太郎がかけずり回る、という構造。
 鳴海探偵事務所に乗り込んできた姫は、フィリップから推理の根拠(以前に雑誌で答えた質問とその回答だった)を聞くと、 ストーカー事件の解決を依頼して嵐のように去って行く。……探偵の名推理というか、 新たなストーカー候補という気はしないでもないですが。
 やたらに強風が吹き込んできて事務所がしっちゃかめっちゃか、というのは何かと思ったら、「嵐のようだった」という比喩を、 実際に映像化してみた模様(^^; まあ、風の街・風都という事でギリギリ合理性も付くという判断だったのでしょうが、 あまり面白くは感じず、石田監督、いつもの悪ノリ。
 普段はマイペースなフィリップが、生の姫に動揺して扉の陰に隠れたり、姫の手に触ってドキドキしたり、可愛げ?をちょっとアピール。 猫と冴子が追っているフィリップですが、演出としては、ギリギリ顔は見ていないという事なのか。若菜はフィリップの事を知らない、 という可能性も充分にありそうですが。
 フィリップが正式に依頼を受けた事により、ラジオ番組のスペシャル編、屋外収録に同行する事になる翔太郎。 3−4話で事件に関わった和菓子屋が登場して番組で紹介されるが、そこへかかってくるミスタークエスチョンからの電話。 電話の質問と若菜からの情報で、次の標的が風都第三ビルだとしたフィリップの推理は的中し、ダブルはビルに迫る鉄球を弾き返す。
 メタリックでマッスルなドーパントはバイオレンスと判明。実に何でもありのドーパントですが、 風都博物館の展示品が気になって仕方有りません。
 ヒートメタルとなってバイオレンスと戦うダブルだが、そこへ自らの手でストーカーを始末しようとクレイドールドーパントが現れ、 劇中初の本格戦闘。土偶は面倒くさいのでダブルとバイオレンスの双方を攻撃し、そのパンチを受け止めたヒート(フィリップ)は、 若菜姫と手が触れあった時の感触を思いだして動揺する。……が、その直後、バイオレンスの鉄球に踏みつぶされ、 粉々に砕け散るクレイドール。
 「若菜ちゃん?!」
 一応心配で見に来た霧彦さんは、素で動揺している辺りが、素敵。
 「……粉々になった」
 果たして、若菜姫の運命やいかに。というわけで、冴子さんの思わせぶりな台詞は引っ張りすぎず、どういう意味かは次回わかる模様。 今作のパターンとしては、事件の黒幕は今回何度か登場して若菜を励ましていた先輩レポーターだと思われますが、さてさて。

◆第14話「レディオでQ/生放送大パニック」◆ (監督:石田秀範 脚本:長谷川圭一)
 バイオレンスは車にはねられて退散し、派手に吹き飛んだ土偶は、破片が集まってあっさりと再生。 次の収録現場は9−10話に登場したパティシエの店だったが、そこにもまた、ミスタークエスチョンからの電話がかかってくる。 フィリップは言葉の端々から、犯人が若菜の身近に居る人間と推定する。
 何故か「若菜姫ー」と盛り上がり、亜樹子が翔太郎の応援に向かうというのは多分に展開の都合になってしまいましたが、 若菜が犯罪者に狙われている事で義侠心に火が点いたというのは、性格設定としては許容範囲か。
 収録現場から姿を消した若菜は再び探偵事務所に乗り込み、慌てて身を隠したフィリップは若菜から過去の話を聞く。
 早くから琉兵衛にミュージアムの仕事を手伝わされてきた姉の冴子は幼い若菜に辛く当たる事が多かったが、そんな若菜を慰める、 今はもういない弟の存在があった、と“もう1人の園咲”が回想で登場。また、前回はややどちらとも取れる演出でしたが、 繰り返してきた事を見るに、“若菜はフィリップの顔を見ていない”という事で良いようです。
 フィリップは若菜への質問から星の図書館を検索して犯人の名前を告げ、「事件が解決したら顔を見せて会いましょう」 と約束した若菜は、収録現場へと復帰。

 フィリップ、姫の残り香を嗅ぐ。

 「なんなんだ、この、息苦しさ……こんな気持ちも、あるのか。若菜、さん……」
 収録現場に復帰した若菜は代役で来ていた先輩からマイクを受け取ると無事に番組を終え、犯人の正体はマネージャーだと糾弾するが、 開き直ったマネージャーが変身したバイオレンスドーパントにさらわれてしまう。
 跳ね回るバイオレンス鉄球を追うダブルは、バイクスタントから、マリンメカに換装。メインにはしないけれど、 ガジェットをちょこちょこ使ってくるのは良い所。個人的にCG全開になるのは、あまり好きではないですが(^^;
 ダブルはルナトリガーによる投網で鉄球を確保し、解放される若菜。若菜にどんなに虐げられても好きだったというマネージャーは、 ある人物にそそのかされてガイアメモリを手にし、その力に呑み込まれていたと告白。ダブルがバイオレンスと戦っている間に、 若菜はその人物――先輩パーソナリティの元へ向かう。そう、ストーカーを裏で操っていたのは、 若菜に仕事を奪われた女の逆恨みだったのだ。
 相当不親切にひねりでもしない限り、ミステリ構造は成立させにくいので、 犯人捜しよりも犯人にどんな物語を乗せるかとその見せ方が重要になるわけですが、そういう点では、可も無く不可も無くという出来。 ただ、先輩の豹変ぶりは、女優さんが好演。
 「なんで私を怒らせるの」
 若菜はクレイドールに変身すると先輩を焼却しようとするが、弟の言葉、そしてフィリップの言葉に思いとどまる。
 ――駄目。そんな事するの、本当の若菜お姉ちゃんじゃないよ。
 ――とても優しい声でした。きっとそれが、本当の貴女です。
 若菜は先輩を放置して立ち去り、このネタをどこかへ売り込もうとする先輩は、そこへやってきた霧彦さんによりデリート。
 霧彦さんが………………凄く仕事した!!
 ダブルが絡まない所では、霧彦さんがしっかり仕事をこなしている所を描いてくれたのは良かった。
 霧彦さんからの情報を元に事件の大体のあらましを把握した冴子さんがこっそり有能なのですが、あっさりと先輩を捨て置く若菜、 霧彦さんに販売相手を洗わせている時の冴子の態度、その後のあれこれ、を見るに、 こういった若菜の尻ぬぐいはこれまでにもやっているという事でしょうか。
 若菜はてきとーな性格というよりも、記憶や人格に何か、空白が出来ているようにも見て取れる演出。フィリップは元よりですが、 若菜の回想も、今後信用していいのかどうか非常に不安な感じになってきました。
 鎖でビル街を飛び回っていたバイオレンス鉄球(『スパイダーマン』オマージュ?)は、 ダブルがトリガーのマキシマムによる分裂ショットであっさり撃破してメモリブレイク。
 こうしてストーカー事件は解決したが、フィリップは若菜が「ガイアメモリ」と口にした事を気にしていた。
 「彼女は、ガイアメモリの存在を知っていた……」
 改めて電話をかけ、「ガイアメモリ」という言葉への若菜の反応を確認したフィリップは、顔を合わせるという約束をやんわりと延期し、 若菜もそれを受け入れる。果たして若菜とフィリップの関係は、そして若菜の正体は。
 若菜が取り落としたクレイドールのメモリを琉兵衛さんが拾ってにっこり笑うラストなど、 若菜の特別扱いはそれ自体が謎を秘めているようで、若菜姫のヒロイン度が急上昇。
 そういえば3−4話のフィリップの家族回想シーンで、子供がもう1人居た気がしますが、その辺りも繋がるのか。 現時点ではピースが少なすぎる上に、幾らでもどうにでもなるという段階ですが、初めて大きく焦点が当たった回で、 若菜が今作においてかなりの重要人物として浮上しました。

→〔ビギンズナイトへ〕
→〔その3へ続く〕
(2014年11月19日)
(2017年3月21日 改訂)

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